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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】蓄電設備
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241106BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/48 Z
H01M10/613
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024500880
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006759
(87)【国際公開番号】W WO2023157258
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】石本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田丸 奏
(72)【発明者】
【氏名】中村 駆
(72)【発明者】
【氏名】棚田 浩
(72)【発明者】
【氏名】原口 和典
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/015001(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0077842(US,A1)
【文献】特開2020-119822(JP,A)
【文献】特開2019-75191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段にバッテリを収容可能であり、内部空間を密閉可能なシール構造を有する箱体からなるキュービクルと、
開閉弁を有する配管を介して前記キュービクルに連結された貯水タンクと、
前記バッテリの異常を検知する異常検知センサと、
前記異常検知センサからの検知信号に基づいて前記開閉弁を開き、前記貯水タンクに貯留された水を前記キュービクルの内部に流入させる制御部と、
を備え
少なくとも最上段の前記バッテリの上面位置に水位センサが設けられ、
前記制御部は、前記水位センサによって水が検出された際に、前記開閉弁を閉じる、
蓄電設備。
【請求項2】
前記貯水タンクは、前記キュービクルの上部に配置されている、
請求項1に記載の蓄電設備。
【請求項3】
前記キュービクルの下方位置に設けられた換気口と、
前記換気口を開閉させる開閉機構と、
を備える、
請求項1または請求項2に記載の蓄電設備。
【請求項4】
前記開閉機構によって前記換気口の閉鎖状態を開口状態にする解除スイッチを備える、
請求項3に記載の蓄電設備。
【請求項5】
それぞれの前記バッテリの上面位置に前記水位センサが設けられ、
前記制御部は、いずれかの前記水位センサによって水が検出された際に、前記開閉弁を閉じる、
請求項に記載の蓄電設備。
【請求項6】
前記キュービクルの上方位置に配索管が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の蓄電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)あるいはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などに搭載されていたバッテリをリユースする設備として、これらのバッテリを、例えば、災害時のバックアップ電源などに活用する蓄電設備がある。
【0003】
ところで、バッテリは、何等かの要因によって熱暴走を起こすことがあり、この場合、バッテリ同士の熱連鎖を防ぐためにも、バッテリの温度を迅速に下げる必要がある。一般的に、蓄電設備では、消火器などの消火設備を備えているが、熱暴走を起こしたバッテリの温度を下げて迅速に安全を担保するためには、バッテリを水没させることが有効である。
【0004】
例えば、特許文献1には、電池に対する試験を行うにあたり、水が貯留された安全槽の蓋に電池を載置させ、電池を安全な状態にすべきときに、蓋を構成する板部材を安全槽の内壁に向けて回転させることによって、電池を安全槽内に落下させる装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2021-140915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ユーザの操作によって蓋を開いて電池を水没させる装置である。このため、複数のバッテリをキュービクル内に収容する蓄電設備において、熱暴走を起こしたバッテリを迅速に検出して水没させ、バッテリ同士の熱連鎖を抑えて安全性を担保するための設備として適用することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、複数のバッテリを収容するキュービクルにおいて、バッテリの異常を迅速に検出して水没させることが可能な、安全性に優れた蓄電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数段にバッテリを収容可能であり、内部空間を密閉可能なシール構造を有する箱体からなるキュービクルと、
開閉弁を有する配管を介して前記キュービクルに連結された貯水タンクと、
前記バッテリの異常を検知する異常検知センサと、
前記異常検知センサからの検知信号に基づいて前記開閉弁を開き、前記貯水タンクに貯留された水を前記キュービクルの内部に流入させる制御部と、
を備える、
蓄電設備。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のバッテリを収容するキュービクルにおいて、バッテリの異常を迅速に検出して水没させることが可能な、安全性に優れた蓄電設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る蓄電設備の外観を示す概略正面図である。
図2】本実施形態に係る蓄電設備の内部構造を示す概略構成図である。
図3A】開口状態の下部換気口を示す概略側面図である。
図3B】閉鎖状態の下部換気口を示す概略側面図である。
図4】蓄電設備の配線構造を示す概略構成図である。
図5A】蓄電設備における水没動作を説明する概略構成図である。
図5B】蓄電設備における水没動作を説明する概略構成図である。
図5C】蓄電設備における水没動作を説明する概略構成図である。
図5D】蓄電設備における水没動作を説明する概略構成図である。
図6】他の実施形態に係る蓄電設備の構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る蓄電設備100の外観を示す概略正面図である。図2は、本実施形態に係る蓄電設備100の内部構造を示す概略構成図である。すなわち、図1は、蓄電設備100を前方から見た図であり、図2は、図1において前面板25を取り除いた図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る蓄電設備100は、キュービクル11と、貯水タンク13と、を備えている。貯水タンク13は、キュービクル11の上部に配置されている。キュービクル11には、その内部空間Sに複数のバッテリ15が収容されている。本例では、4つのバッテリ15A~15Dを収容している。
【0013】
この蓄電設備100は、例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)あるいは外部充電又は外部給電が可能なプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などに搭載されていたバッテリ15を二次利用(リユース)する設備である。
【0014】
キュービクル11は、箱型に形成された金属製の筐体である。このキュービクル11は、底面板21と、一対の側面板23と、前面板25と、背面板27と、天面板29と、を有している。
【0015】
キュービクル11には、その内部に、複数の棚板31が設けられている。これらの棚板31は、上下方向に間隔をあけて配置されており、各棚板31上にバッテリ15が載置されている。これにより、キュービクル11の内部空間Sには、バッテリ15A~15Dが下方から順に配置されている。
【0016】
キュービクル11は、その前面板25に開口部33を有している。この開口部33には、一対の扉35,37が設けられ、これらの扉35,37によって開口部33が開閉可能とされている。一対の扉35,37は、互いに反対側の側縁部が開口部33の内側縁部に回動可能に連結されており、互いに対向する側縁部が突き合わされている。これらの扉35,37は、互いに突き合わされた側縁部側をキュービクル11の手前へ引くことにより、互いに逆方向へ回動し、開口部33を開口する両開き扉である。
【0017】
開口部33の内縁と扉35,37の外縁との間及び扉35,37の突き合わせ部分には、シール部材(図示略)が設けられている。これにより、扉35,37によって開口部33を閉じた状態において、開口部33の内縁と扉35,37の外縁との間及び扉35,37の突き合わせ部分がシールされる。このように、キュービクル11は、シール構造を有する箱体とされており、内部空間Sを密閉可能である。
【0018】
開口部33を開閉する扉35,37の一方の扉35は、その下方位置に、下部換気口(換気口)41を有している。
【0019】
図3Aは、開口状態の下部換気口41を示す概略側面図である。図3Bは、閉鎖状態の下部換気口41を示す概略側面図である。
【0020】
図3Aに示すように、下部換気口41は、複数の開閉蓋43を有している。これらの開閉蓋43は、その上端部が、扉35に対して水平方向の軸線を中心として回動可能に支持されている。この下部換気口41は、開閉機構44を備えている。開閉機構44は、一端が開閉蓋43に連結された複数のリンク44aと、これらのリンク44aの他端が連結されたロッド44bと、ロッド44bを進退させるアクチュエータ44cと、を備えている。この下部換気口41では、アクチュエータ44cによってロッド44bが上下に進退されることにより、各開閉蓋43が回動される。開閉蓋43は、下部換気口41から離間する方向へ回動された状態に配置されており、これにより、下部換気口41が開口状態とされる(図3Aの状態)。この開口状態から開閉機構44によって開閉蓋43が下部換気口41へ向かって回動されると、図3Bに示すように、下部換気口41は、開閉蓋43によって閉ざされた閉鎖状態とされる。また、下部換気口41が設けられた扉35には、解除スイッチ45が設けられている(図1参照)。下部換気口41は、開閉蓋43によって下部換気口41が閉鎖された状態で解除スイッチ45が押下されると、開閉機構44のアクチュエータ44cが作動して開閉蓋43が回動する。これにより、閉鎖状態の下部換気口41が開口状態とされる。
【0021】
図2に示すように、キュービクル11には、上方位置に、ファン46aを有する上部換気口46が設けられている。この上部換気口46は、キュービクル11を構成する背面板27に設けられている。キュービクル11では、上部換気口46のファン46aが駆動することにより、内部空間S内の空気が排気されるとともに、内部空間S内へ下部換気口41から外気が吸い込まれる。これにより、キュービクル11の内部空間Sの換気及び排熱が行われる。
【0022】
キュービクル11の上部に配置された貯水タンク13は、その下部に配管51が接続されている。この配管51は、キュービクル11の内部空間S内に引き込まれ、キュービクル11の下方へ延在されている。この配管51の下端は、1段目(最下段)のバッテリ15Aよりも下方位置に配置されている。また、この配管51には、開閉弁53が設けられており、この開閉弁53によって配管51の流路が開閉される。貯水タンク13には、水が貯留されており、開閉弁53によって配管51の流路が開かれることにより、貯水タンク13内の水が配管51を通してキュービクル11の内部空間Sへ送り込まれる。
【0023】
また、キュービクル11の内部空間Sには、複数(本例では4つ)の水位センサ61A~61D及び異常検知センサ63が設けられている。複数の水位センサ61A~61Dは、キュービクル11の側面板23の内面に固定されている。これらの水位センサ61A~61Dは、バッテリ15A~15Dに対応して設けられ、それぞれのバッテリ15A~15Dの上面位置に配置されている。なお、水位センサ61A~61Dが配置されるバッテリ15A~15Dの上面位置とは、高さ位置が各バッテリ15A~15Dの上面以上の位置であり、1段目~3段目の水位センサ61A~61Cにおいては、上方の段の各バッテリ15B~15Dの下面よりも下方側の位置である。また、水位センサ61A~61Dとしては、電波式や超音波式などの非接触式またはフロート式、ガイドロープ式、静電容量式、圧力式あるいは電極式などの接触式のセンサが使用可能である。
【0024】
異常検知センサ63は、キュービクル11の天面板29に固定されている。この異常検知センサ63は、バッテリ15の熱暴走などの異常によってキュービクル11の内部空間Sで生じる温度上昇や煙の発生などの異常を検知するセンサである。
【0025】
また、キュービクル11には、一方の側面板23における上方位置に、配線引出用の配索管47が接続されて側方へ延在されている。この配索管47は、キュービクル11の上方位置に接続されている。具体的には、配索管47は、キュービクル11に収容された4段目(最上段)のバッテリ15Dに対応して設けられた水位センサ61Dよりも上方位置で側面板23に接続されている。この配索管47には、例えば、各バッテリ15に接続された電力線、各バッテリ15に設けられた電圧センサや温度センサから引き出された信号線等の配線が通される。この配索管47から引き出された配線は、外部の給電装置やバッテリ制御装置等に配索されて接続される。そして、キュービクル11に収容されたバッテリ15は、それぞれ充放電されるとともに、電圧センサ及び温度センサからの検出信号によって電圧及び温度が検出される。なお、各バッテリ15に設けられる温度センサは、バッテリ15の熱暴走等の異常を検知する際の異常検知センサとしても用いられる。
【0026】
図4は、蓄電設備100の配線構造を示す概略構成図である。
図4に示すように、蓄電設備100は、キュービクル11の外部に配置された制御部65を備えている。この制御部65には、水位センサ61A~61D及び異常検知センサ63が接続されている。そして、制御部65には、水位センサ61A~61D及び異常検知センサ63から検知信号が送信される。また、制御部65は、配管51に設けられた開閉弁53及び下部換気口41の開閉蓋43を駆動する開閉機構44に接続されている。そして、制御部65は、開閉弁53及び開閉機構44に制御信号を送信し、これらの開閉弁53及び開閉機構44の駆動を制御する。また、制御部65には、各バッテリ15の充放電等を制御するバッテリ制御装置から各バッテリ15の温度データが送信される。
【0027】
上記構成の蓄電設備100では、制御部65が異常検知センサ63の検知信号及びバッテリ制御装置からの各バッテリ15の温度データに基づいて、バッテリ15の熱暴走などの異常の有無を監視する。そして、バッテリ15の少なくとも一つが熱暴走などの異常を生じていると判定した際に、水没動作を実行させる。
【0028】
水没動作では、制御部65が開閉機構44を駆動させて下部換気口41を開閉蓋43によって閉鎖するとともに、開閉弁53を開く。すると、貯水タンク13の水が自重によって配管51の下端からキュービクル11の内部空間Sへ流入し、バッテリ15が水没される。これにより、バッテリ15の熱暴走などの異常が抑えられ、安全性が担保される。
【0029】
この水没動作において、制御部65は、バッテリ制御装置からの温度データに基づいて異常が生じているバッテリ15を特定し、開閉弁53を以下のように制御する。
【0030】
図5A図5Dは、それぞれ蓄電設備100における水没動作を説明する概略構成図である。
【0031】
(1)1段目のバッテリ15Aの異常時
図5Aに示すように、制御部65は、開閉弁53を開いて内部空間S内に水Wを流入させた後、1段目のバッテリ15Aが水没し、水位センサ61Aによって水Wが検知されると、水位センサ61Aからの検知信号に基づいて、開閉弁53を閉じる。これにより、貯水タンク13からキュービクル11の内部空間Sへの水Wの流入が停止される。
【0032】
(2)1段目及び2段目のバッテリ15A,15Bのうちの少なくとも2段目のバッテリ15Bの異常時
図5Bに示すように、制御部65は、開閉弁53を開いて内部空間S内に水Wを流入させた後、1段目のバッテリ15A及び2段目のバッテリ15Bが水没し、水位センサ61Bよって水Wが検知されると、水位センサ61Bからの検知信号に基づいて、開閉弁53を閉じる。これにより、貯水タンク13からキュービクル11の内部空間Sへの水Wの流入が停止される。
【0033】
(3)1段目から3段目のバッテリ15A~15Cのうちの少なくとも3段目のバッテリ15Cの異常時
図5Cに示すように、制御部65は、開閉弁53を開いて内部空間S内に水Wを流入させた後、1段目のバッテリ15Aから3段目のバッテリ15Cが水没し、水位センサ61Cよって水Wが検知されると、水位センサ61Cからの検知信号に基づいて、開閉弁53を閉じる。これにより、貯水タンク13からキュービクル11の内部空間Sへの水Wの流入が停止される。
【0034】
(4)1段目から4段目のバッテリ15A~15Dのうちの少なくとも4段目のバッテリ15Dの異常時
図5Dに示すように、制御部65は、開閉弁53を開いて内部空間S内に水Wを流入させた後、1段目のバッテリ15Aから4段目のバッテリ15Dが水没し、水位センサ61Dよって水Wが検知されると、水位センサ61Dからの検知信号に基づいて、開閉弁53を閉じる。これにより、貯水タンク13からキュービクル11の内部空間Sへの水Wの流入が停止される。
【0035】
そして、バッテリ15の水没により安全性が担保された後、制御部65は、下部換気口41の開閉機構44を駆動させて開閉蓋43を回動させ、下部換気口41を開口させる。すると、キュービクル11の内部空間Sに貯留している水Wが下部換気口41から排水される。なお、この下部換気口41は、作業者が扉35の解除スイッチ45を押下して開閉機構44のアクチュエータ44cを作動させることによって開口させてもよい。
【0036】
このように、蓄電設備100では、制御部65が、複数のバッテリ15のうちの熱暴走などの異常が生じているバッテリ15を特定し、特定したバッテリ15まで水没させることにより、水没させるバッテリ15を最小限に抑えることができる。
【0037】
なお、複数のバッテリ15のうちの少なくとも一つのバッテリ15が熱暴走を生じていると判定した際に、全てのバッテリ15を一括して水没させてもよい。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態に係る蓄電設備100によれば、異常が生じたバッテリ15を迅速に水没させ、バッテリ15同士の熱連鎖を抑えて安全性を担保することができる。また、キュービクル11に水を流入させてバッテリ15を水没させるので、定期交換を要する高価な液体窒素などを用いる場合と比較し、コストを抑えることができる。
【0039】
さらに、貯水タンク13をキュービクル11の上部に配置したので、開閉弁53を開くことにより、貯水タンク13内の水を自重によってキュービクル11の内部空間Sへ流入させることができる。したがって、水を送り込むポンプなどの機器を不要にでき、構造を簡略にできる。
【0040】
また、キュービクル11の下方位置に換気のために設けた下部換気口41を開閉機構44によって閉鎖状態とすることにより、キュービクル11内に水を貯留させてバッテリ15を水没させることができる。また、キュービクル11に水を貯留させた状態において、開閉機構44によって下部換気口41を開口状態とすることにより、キュービクル11内の水を下部換気口41から容易に排水させることができる。
【0041】
しかも、開閉機構44によって下部換気口41の閉鎖状態を開口状態にする解除スイッチ45を備えるので、この解除スイッチ45を操作することにより、キュービクル11内に水を貯留させるために閉鎖状態とした下部換気口41を開口状態として容易に排水させることができる。
【0042】
また、例えば、バッテリ15に接続される電力線、バッテリ15に設けられる電圧センサや温度センサの信号線などの配線を通す配索管47が、キュービクル11の上方位置に設けられている。したがって、キュービクル11の内部に水を流入させてバッテリ15を水没させた際に、配索管47への水浸入を抑えることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、4つのバッテリ15を収容した場合を例示したが、キュービクル11におけるバッテリ15の収容数量は4つに限定されない。
【0044】
次に、他の実施形態に係る蓄電設備を説明する。
なお、上記実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。
図6は、他の実施形態に係る蓄電設備100Aの構造を示す概略構成図である。
【0045】
図6に示すように、他の実施形態に係る蓄電設備100Aでは、上部の貯水タンク13がなく、異なる場所に設置された貯水タンク71が供給管73を介してキュービクル11に接続されている。この貯水タンク13は、例えば、蓄電設備100Aが設置される施設内において、例えば、消火栓用の水源等として設けられた貯水槽などである。
【0046】
貯水タンク71から延びる供給管73は、制御部65(図4参照)によって開閉制御される開閉弁75を備えており、キュービクル11に設けられた配管51の上端部に連結されている。
【0047】
この蓄電設備100Aでは、開閉弁75を開くことにより、貯水タンク71内の水が供給管73を通して配管51へ送り込まれる。そして、この配管51に送り込まれる水は、配管51の下端からキュービクル11の内部空間Sに流入される。これにより、キュービクル11に収容されたバッテリ15に熱暴走などの異常が生じた際に、バッテリ15を水没させて安全性を担保することができる。
【0048】
なお、他の実施形態に係る蓄電設備100Aにおいて、貯水タンク71からの水圧が低い場合は、供給管73にポンプを設け、このポンプによって貯水タンク71の水をキュービクル11の内部空間Sへ送り込むようにしてもよい。
【0049】
また、キュービクル11の上部の貯水タンク13を設け、この貯水タンク13とともに貯水タンク71の供給管73を配管51に接続し、バッテリ15を水没させる際に、両方の貯水タンク13,71からキュービクル11の内部空間Sへ水を送り込む構造としてもよい。
【0050】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0051】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 複数段にバッテリを収容可能であり、内部空間を密閉可能なシール構造を有する箱体からなるキュービクルと、
開閉弁を有する配管を介して前記キュービクルに連結された貯水タンクと、
前記バッテリの異常を検知する異常検知センサと、
前記異常検知センサからの検知信号に基づいて前記開閉弁を開き、前記貯水タンクに貯留された水を前記キュービクルの内部に流入させる制御部と、
を備える、蓄電設備。
この蓄電設備によれば、キュービクルに収容されたバッテリの熱暴走等の異常を異常検知センサが検知すると、この異常検知センサからの検知信号に基づいて、制御部が開閉弁を開き、貯水タンクの水をキュービクルの内部に流入させる。これにより、異常が生じたバッテリを迅速に水没させ、バッテリ同士の熱連鎖を抑えて安全性を担保することができる。また、キュービクルに水を流入させてバッテリを水没させるので、定期交換を要する高価な液体窒素などを用いる場合と比較し、コストを抑えることができる。
【0052】
(2) 前記貯水タンクは、前記キュービクルの上部に配置されている、(1)に記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、開閉弁を開くことにより、貯水タンク内の水を自重によってキュービクルの内部へ流入させることができる。したがって、水を送り込むポンプなどの機器を不要にでき、構造を簡略にできる。
【0053】
(3) 前記キュービクルの下方位置に設けられた換気口と、
前記換気口を開閉させる開閉機構と、
を備える、(1)または(2)に記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、開閉機構によって換気口を閉鎖状態とすることにより、キュービクル内に水を貯留させてバッテリを水没させることができる。また、キュービクルに水を貯留させた状態において、開閉機構によって換気口を開口状態とすることにより、キュービクル内の水を換気口から容易に排水させることができる。
【0054】
(4) 前記開閉機構によって前記換気口の閉鎖状態を開口状態にする解除スイッチを備える、(3)に記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、解除スイッチを操作することにより、キュービクル内に水を貯留させるために閉鎖状態とした換気口を開口状態として容易に排水させることができる。
【0055】
(5) 少なくとも最上段の前記バッテリの上面位置に水位センサが設けられ、
前記制御部は、前記水位センサによって水が検出された際に、前記開閉弁を閉じる、(1)~(4)のいずれか一つに記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、バッテリが水没して水位センサによって水が検出されると、制御部によって開閉弁が閉じられる。これにより、キュービクルへ適量の水を流入させることができる。
【0056】
(6) それぞれの前記バッテリの上面位置に前記水位センサが設けられ、
前記制御部は、いずれかの前記水位センサによって水が検出された際に、前記開閉弁を閉じる、(5)に記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、異常が発生しているバッテリに対応した水位センサによって水が検出されるまでキュービクル内に水を流入させることにより、異常が発生しているバッテリよりも上方側の異常のないバッテリの水没を抑えることができる。つまり、水没させるバッテリを最小限に抑えることができる。
【0057】
(7) 前記キュービクルの上方位置に配索管が設けられている、(1)~(6)のいずれか一つに記載の蓄電設備。
この蓄電設備によれば、例えば、バッテリに接続される電力線、バッテリに設けられる電圧センサや温度センサの信号線などの配線を通す配索管が、キュービクルの上方位置に設けられている。したがって、キュービクルの内部に水を流入させてバッテリを水没させた際に、配索管への水浸入を抑えることができる。
【符号の説明】
【0058】
11 キュービクル
13,71 貯水タンク
15,15A~15D バッテリ
41 下部換気口(換気口)
44 開閉機構
45 解除スイッチ
47 配索管
51 配管
53 開閉弁
61A~61D 水位センサ
63 異常検知センサ
65 制御部
100,100A 蓄電設備
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6