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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】演算回路及び演算プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 60/42 20150101AFI20241106BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20241106BHJP
   G01L 5/167 20200101ALI20241106BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A63B60/42
A63B69/36 541P
G01L5/167
A63B71/06 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024509902
(86)(22)【出願日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2023007744
(87)【国際公開番号】W WO2023181828
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022046927
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古樋 知重
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 敬
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】能澤 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】牧野 純
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-175496(JP,A)
【文献】特開2018-171244(JP,A)
【文献】特開2018-140082(JP,A)
【文献】特開2017-189190(JP,A)
【文献】特開2016-168196(JP,A)
【文献】特開2016-66127(JP,A)
【文献】特開平11-178953(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051277(WO,A1)
【文献】米国特許第5792000(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 60/42
A63B 69/36
A63B 71/06
G01L 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップで取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物が被打撃物に衝突した衝突時刻を特定する時刻特定ステップと、
前記時刻特定ステップにおいて特定した前記衝突時刻より前の1以上の第1時刻及び前記衝突時刻より後の1以上の第2時刻のそれぞれにおけるX軸しなり値、Y軸しなり値及び捻じれ値を取得する信号値取得ステップであって、前記X軸しなり値は、前記X軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記Y軸しなり値は、前記Y軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記捻じれ値は、前記捻じれ信号が示す値に関連する値である、信号値取得ステップと、
前記信号値取得ステップにおいて取得した複数の前記X軸しなり値、複数の前記Y軸しなり値及び複数の前記捻じれ値に対して行列を掛け算することにより、前記衝突時刻における前記被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算する第1演算ステップと、
を実行する、
演算回路。
【請求項2】
前記被測定物は、ゴルフクラブであり、
前記被打撃物は、ゴルフボールである、
請求項1に記載の演算回路。
【請求項3】
前記1以上のパラメータは、
前記ゴルフクラブのヘッドにおける前記ゴルフボールの打点の位置と、
前記ヘッドの水平方位角と、
ヘッド仰角と、
ヘッド速度と、
ヘッド速度仰角と、
ヘッド速度方位角と、
ヘッド垂直回転速度と、
の少なくとも1つを含んでいる、
請求項2に記載の演算回路。
【請求項4】
前記演算回路は、
前記第1演算ステップで取得した前記1以上のパラメータに基づいて、前記被測定物と前記被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を演算する第2演算ステップを、
実行する、
請求項3に記載の演算回路。
【請求項5】
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップで取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物が被打撃物に衝突した衝突時刻を特定する時刻特定ステップと、
前記時刻特定ステップにおいて特定した前記衝突時刻より前の1以上の第1時刻及び前記衝突時刻より後の1以上の第2時刻のそれぞれにおけるX軸しなり値、Y軸しなり値及び捻じれ値を取得する信号値取得ステップであって、前記X軸しなり値は、前記X軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記Y軸しなり値は、前記Y軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記捻じれ値は、前記捻じれ信号が示す値に関連する値である、信号値取得ステップと、
前記信号値取得ステップにおいて取得した複数の前記X軸しなり値、複数の前記Y軸しなり値及び複数の前記捻じれ値に対して行列を掛け算することにより、前記衝突時刻における前記被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算する第1演算ステップと、
を演算回路に実行させる、
演算プログラム。
【請求項6】
演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を取得する初期値取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び捻じれ信号と、前記初期値取得ステップにより取得した前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度とを教師データとして用いることにより、機械学習モデルを生成するモデル生成ステップであって、前記機械学習モデルは、前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を出力する、モデル生成ステップと、
を実行する、
演算回路。
【請求項7】
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を取得する初期値取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号と、前記初期値取得ステップにより取得した前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度とを教師データとして用いることにより、機械学習モデルを生成するモデル生成ステップであって、前記機械学習モデルは、前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を出力する、モデル生成ステップと、
を演算回路に実行させる、
演算プログラム。
【請求項8】
演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を、機械学習モデルを用いて演算する機械学習演算ステップと、
を実行する、
演算回路。
【請求項9】
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び捻じれ信号に基づいて、前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を、機械学習モデルを用いて演算する機械学習演算ステップと、
を演算回路に実行させる、
演算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算回路及び演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の演算回路に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の装置が知られている。この装置は、ヘッドスピード及び打球の飛距離を測定可能な測定装置を備えている。測定装置は、例えば、Interactive Sports Games社製弾道測定器トラックマンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、高価なトラックマンが必要である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、被測定物と測定物との衝突時刻における被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算できる演算装置及び演算プログラムを安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップで取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物が被打撃物に衝突した衝突時刻を特定する時刻特定ステップと、
前記時刻特定ステップにおいて特定した前記衝突時刻より前の1以上の第1時刻及び前記衝突時刻より後の1以上の第2時刻のそれぞれにおけるX軸しなり値、Y軸しなり値及び捻じれ値を取得する信号値取得ステップであって、前記X軸しなり値は、前記X軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記Y軸しなり値は、前記Y軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記捻じれ値は、前記捻じれ信号が示す値に関連する値である、信号値取得ステップと、
前記信号値取得ステップにおいて取得した複数の前記X軸しなり値、複数の前記Y軸しなり値及び複数の前記捻じれ値に対して行列を掛け算することにより、前記衝突時刻における前記被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算する第1演算ステップと、
を実行する。
【0007】
本発明の一形態に係る演算プログラムは、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップで取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物が被打撃物に衝突した衝突時刻を特定する時刻特定ステップと、
前記時刻特定ステップにおいて特定した前記衝突時刻より前の1以上の第1時刻及び前記衝突時刻より後の1以上の第2時刻のそれぞれにおけるX軸しなり値、Y軸しなり値及び捻じれ値を取得する信号値取得ステップであって、前記X軸しなり値は、前記X軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記Y軸しなり値は、前記Y軸しなり信号が示す値に関連する値であり、前記捻じれ値は、前記捻じれ信号が示す値に関連する値である、信号値取得ステップと、
前記信号値取得ステップにおいて取得した複数の前記X軸しなり値、複数の前記Y軸しなり値及び複数の前記捻じれ値に対して行列を掛け算することにより、前記衝突時刻における前記被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算する第1演算ステップと、
を演算回路に実行させる。
【0008】
本発明の一形態に係る演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を取得する初期値取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び捻じれ信号と、前記初期値取得ステップにより取得した前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度とを教師データとして用いることにより、機械学習モデルを生成するモデル生成ステップであって、前記機械学習モデルは、前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を出力する、モデル生成ステップと、
を実行する。
【0009】
本発明の一形態に係る演算プログラムは、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を取得する初期値取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号と、前記初期値取得ステップにより取得した前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度とを教師データとして用いることにより、機械学習モデルを生成するモデル生成ステップであって、前記機械学習モデルは、前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を出力する、モデル生成ステップと、
を演算回路に実行させる。
【0010】
本発明の一形態に係る演算回路は、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び前記捻じれ信号に基づいて、前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を、機械学習モデルを用いて演算する機械学習演算ステップと、
を実行する。
【0011】
本発明の一形態に係る演算プログラムは、
Z軸方向に延びる棒状の被測定物のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号、前記被測定物のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号、及び、前記被測定物のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップにより取得した前記X軸しなり信号、前記Y軸しなり信号及び捻じれ信号に基づいて、前記被測定物と被打撃物との衝突により発生する前記被打撃物の重心速度及び前記被打撃物の角速度を、機械学習モデルを用いて演算する機械学習演算ステップと、
を演算回路に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定物と測定物との衝突時刻における被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算できる演算装置及び演算プログラムを安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、センサユニット100が取り付けられたゴルフクラブ200を示した図である。
図2図2は、センサ12aの上面図及び断面図である。
図3図3は、センサ12cの上面図及び断面図である。
図4図4は、演算装置1のブロック図である。
図5図5は、演算回路10が実行するフローチャートである。
図6図6は、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3の波形図である。
図7図7は、X軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)の波形図である。
図8図8は、ゴルフクラブ200のヘッドとゴルフボール210とを示した図である。
図9図9は、判定条件を示す表である。
図10図10は、実験結果を示す表である。
図11図11は、演算回路10aが実行するフローチャートである。
図12図12は、演算回路10aが実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下に、本発明の一実施形態に係る演算回路10について図面を参照しながら説明する。図1は、センサユニット100が取り付けられたゴルフクラブ200を示した図である。図2は、センサ12aの上面図及び断面図である。図3は、センサ12cの上面図及び断面図である。
【0015】
また、本明細書において、方向を以下のように定義する。図1に示すように、ゴルフクラブ200は、棒状部材である。ゴルフクラブ200が延びる方向をZ軸方向と定義する。Z軸の正方向は、ゴルフクラブ200のヘッドからグリップに向かう方向である。ゴルフクラブ200のヘッドのフェースが向く方向をX軸の正方向と定義する。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向と直交している。
【0016】
センサユニット100は、図1に示すように、ゴルフクラブ200に取り付けられている。センサユニット100は、スイング時におけるゴルフクラブ200の変形を検知する。
【0017】
センサユニット100は、図1に示すように、センサ12a~12cを備えている。センサ12a~12cは、ゴルフクラブ200の変形を検知する。具体的には、センサ12aは、ゴルフクラブ200のX軸方向のしなりを検知する。センサ12bは、ゴルフクラブ200のY軸方向のしなりを検知する。センサ12cは、ゴルフクラブ200のZ軸周りの捻じれを検知する。センサ12a,12bの構造は同じであるので、以下では、センサ12aを例に挙げて説明する。
【0018】
センサ12aは、図2に示すように、圧電フィルム114、第1電極115a及び第2電極115bを備えている。圧電フィルム114は、シート形状を有している。圧電フィルム114は、長方形状を有している。以下では、圧電フィルム114の長辺が延びる方向をx軸方向と定義する。圧電フィルム114の短辺が延びる方向をy軸方向と定義する。x軸方向及びy軸方向に直交する方向をz軸方向と定義する。
【0019】
圧電フィルム114は、第1主面F1及び第2主面F2を有している。圧電フィルム114のx軸方向の長さは、圧電フィルム114のy軸方向の長さより長い。圧電フィルム114は、圧電フィルム114の変形量に応じた電荷を発生する。本実施形態では、圧電フィルム114は、PLAフィルムである。以下に、圧電フィルム114についてより詳細に説明する。
【0020】
圧電フィルム114は、圧電フィルム114がx軸方向に伸張されるように変形したときに発生する電荷の極性が、圧電フィルム114がy軸方向に伸張されるように変形したときに発生する電荷の極性と逆となる特性を有している。具体的には、圧電フィルム114は、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向する圧電性を有する。圧電フィルム114は、d14の圧電定数を有している。圧電フィルム114の一軸延伸方向(配向方向)は、x軸方向及びy軸方向のそれぞれに対して45度の角度を形成している。この45度は、例えば、45度±10度程度を含む角度を含む。これにより、圧電フィルム114は、圧電フィルム114がx軸方向に伸張されるように変形すること又はx軸方向に圧縮されるように変形することにより、電荷を発生する。従って、センサ12aの出力は電荷である。圧電フィルム114は、例えば、x軸方向に伸張されるように変形すると正の電荷を発生する。圧電フィルム114は、例えば、x軸方向に圧縮されるように変形すると負の電荷を発生する。電荷の大きさは、伸張又は圧縮による圧電フィルム114のx軸方向の変形量に依存する。
【0021】
第1電極115aは、信号電極である。第1電極115aは、第1主面F1に設けられている。第1電極115aは、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0022】
第2電極115bは、グランド電極である。第2電極115bは、グランド電位に接続される。第2電極115bは、第2主面F2に設けられている。これにより、圧電フィルム114は、第1電極115aと第2電極115bとの間に位置している。第2電極115bは、第2主面F2を覆っている。第2電極115bは、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0023】
センサ12cは、圧電フィルム114の一軸延伸方向においてセンサ12aと相違する。より詳細には、図3に示すように、センサ12cの圧電フィルム114の一軸延伸方向(配向方向)は、x軸方向と平行である。センサ12cのその他の構造は、センサ12aと同じであるので説明を省略する。
【0024】
センサ12aは、ゴルフクラブ200(被測定物)のX軸方向のしなり量に関連するX軸しなり信号Sig1を出力する。本実施形態では、X軸しなり信号Sig1は、ゴルフクラブ200のX軸方向のしなり量を含んでいる。より詳細には、センサ12aは、図示しない接着層を介して、ゴルフクラブ200に固定される。具体的には、接着層は、ゴルフクラブ200と第1電極115aとを固定する。この際、x軸方向とZ方向とが一致するように、センサ12aは、ゴルフクラブ200のシャフトのX軸の正方向の面に固定される。これにより、ゴルフクラブ200のシャフトがX軸の正方向にしなると、ゴルフクラブ200のシャフトのX軸の正方向の面のZ軸方向の縮み量が増加する。従って、圧電フィルム114のx軸方向の縮み量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に正の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に負の電荷が発生する。ゴルフクラブ200のシャフトがX軸の負方向にしなると、ゴルフクラブ200のシャフトのX軸の正方向の面のZ軸方向の延び量が増加する。従って、圧電フィルム114のx軸方向の延び量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に負の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に正の電荷が発生する。
【0025】
センサ12bは、ゴルフクラブ200(被測定物)のY軸方向のしなり量に関連するY軸しなり信号Sig2を出力する。本実施形態では、Y軸しなり信号Sig2は、ゴルフクラブ200のY軸方向のしなり量を含んでいる。より詳細には、センサ12bは、図示しない接着層を介して、ゴルフクラブ200に固定される。具体的には、接着層は、ゴルフクラブ200と第1電極115aとを固定する。この際、x軸方向とZ軸方向とが一致するように、センサ12bは、ゴルフクラブ200のシャフトのY軸の正方向の面に固定される。これにより、ゴルフクラブ200のシャフトがY軸の正方向にしなると、ゴルフクラブ200のシャフトのY軸の正方向の面の上下方向の縮み量が増加する。従って、圧電フィルム114のx軸方向の縮み量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に正の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に負の電荷が発生する。ゴルフクラブ200のシャフトがY軸の負方向にしなると、ゴルフクラブ200のシャフトのY軸の正方向の面の上下方向の延び量が増加する。従って、圧電フィルム114のx軸方向の延び量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に負の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に負の電荷が発生する。
【0026】
センサ12cは、ゴルフクラブ200(被測定物)のZ軸周りの捻じれ量に関連する捻じれ信号Sig3を出力する。本実施形態では、捻じれ信号Sig3は、ゴルフクラブ200のZ軸周りの捻じれ量を含んでいる。より詳細には、センサ12cは、図示しない接着層を介して、ゴルフクラブ200に固定される。具体的には、接着層は、ゴルフクラブ200と第1電極115aとを固定する。この際、x軸方向とZ軸方向とが一致するように、センサ12cは、ゴルフクラブ200のシャフトに固定される。これにより、ゴルフクラブ200のシャフトがZ軸周りの第1周方向に捻じれると、圧電フィルム114のx軸方向及びy軸方向のそれぞれ45度の角度をなす方向の延び量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に負の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に正の電荷が発生する。ゴルフクラブ200のシャフトがZ軸周りの第2周方向に捻じれると、圧電フィルム114のx軸方向及びy軸方向のそれぞれ45度の角度をなす方向の縮み量が増加する。その結果、圧電フィルム114の第1主面F1に正の電荷が発生する。圧電フィルム114の第2主面F2に負の電荷が発生する。
【0027】
また、センサユニット100は、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3をデジタル信号に変換するA/Dコンバータや、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を後述する演算装置1に送信するための送信装置等を含んでいる。ただし、A/Dコンバータ及び送信装置は、一般的な構成であるので、図示及び説明を省略する。
【0028】
次に、演算装置1について図面を参照しながら説明する。図4は、演算装置1のブロック図である。
【0029】
演算装置1は、パーソナルコンピュータやサーバ、スマートフォン等である。演算装置1は、演算回路10、通信装置12、記憶装置14及び表示装置16を備えている。演算回路10は、CPU(Central Processing Unit)である。通信装置12は、センサユニット100と有線又は無線により通信を行う装置である。記憶装置14は、メモリやハードディスク等である。表示装置16は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等である。
【0030】
以下に、演算装置1の動作について図面を参照しながら説明する。図5は、演算回路10が実行するフローチャートである。フローチャートは、記憶装置14が記憶しているプログラムを演算回路10が読み込むことにより実行される。図6は、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3の波形図である。図7は、X軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)の波形図である。図8は、ゴルフクラブ200のヘッドとゴルフボール210とを示した図である。
【0031】
ユーザは、ゴルフクラブ200を用いてゴルフボール210を打つ。そして、センサユニット100は、図示しない送信装置により、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を演算装置1に送信する。応じて、通信装置12は、センサユニット100から送信されてきたX軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を受信する。通信装置12は、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を演算回路10に出力する。これにより、演算回路10は、図6に示すX軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を取得する(ステップS1,信号取得ステップ)。
【0032】
次に、演算回路10は、ステップS1(信号取得ステップ)で取得したX軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3に基づいて、ゴルフクラブ200(被測定物)がゴルフボール210(被打撃物)に衝突した衝突時刻kを特定する(ステップS2,時刻特定ステップ)。具体的には、演算回路10は、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3のそれぞれに定数を乗算する。これにより、演算回路10は、図7に示すX軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)を得る。iは、時刻である。そして、演算回路10は、X軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)の時間微分が閾値を超えた時刻を衝突時刻kと特定する。なお、演算回路10は、X軸しなり量a(i)の時間微分が閾値を超えた時刻を衝突時刻kと特定してもよいし、Y軸しなり量a(i)の時間微分が閾値を超えた時刻を衝突時刻kと特定してもよいし、捻じれ量a(i)の時間微分が閾値を超えた時刻を衝突時刻kと特定してもよい。
【0033】
次に、演算回路10は、ステップS2(時刻特定ステップ)において特定した衝突時刻kより前の第1時刻k+Δk1及び衝突時刻kより後の第2時刻k+Δk2,k+Δk3のそれぞれにおけるX軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(X軸しなり値)、Y軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(Y軸しなり値)及び捻じれ値a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(捻じれ値)を取得する(S3,信号値取得ステップ)。ここで、X軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(X軸しなり値)は、X軸しなり信号Sig1が示す値に関連する値である。Y軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(Y軸しなり値)は、Y軸しなり信号Sig2が示す値に関連する値である。捻じれ値a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(捻じれ値)は、捻じれ信号Sig3が示す値に関連する値である。
【0034】
次に、ステップS3(信号値取得ステップ)において取得したX軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(X軸しなり値)、Y軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(Y軸しなり値)及び捻じれ値a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(捻じれ値)に対して行列Rを掛け算することにより、衝突時刻kにおけるゴルフクラブ200(被測定物)の状態を示すパラメータB1~B8を演算する(ステップS4,第1演算ステップ)。具体的には、演算回路10は、以下のa1~a9を計算する。
【0035】
a1=a(k+Δk1)-a(k)
a2=a(k+Δk1)-a(k)
a3=a(k+Δk1)-a(k)
a4=a(k+Δk2)-a(k)
a5=a(k+Δk2)-a(k)
a6=a(k+Δk2)-a(k)
a7=a(k+Δk3)-a(k)
a8=a(k+Δk3)-a(k)
a9=a(k+Δk3)-a(k)
更に、演算回路10は、以下の式1の演算を行う。これにより、演算回路10は、パラメータB1~B8を演算する。
【0036】
【数1】
【0037】
B1:ゴルフクラブ200のヘッドとゴルフボール210との打点のη軸方向の位置(mm)
B2:ゴルフクラブ200のヘッドとゴルフボール210との打点のζ軸方向の位置(mm)
B3:ゴルフクラブ200のヘッドの水平方位角(deg)
B4:ヘッド仰角(deg)
B5:ヘッド速度(m/s)
B6:ヘッド速度仰角(deg)
B7:ヘッド速度方位角(deg)
B8:ヘッド垂直回転速度(rps)
ここで、行列R及び定数Cは、例えば、実験により算出される。具体的には、本願発明者は、ゴルフクラブ200によりゴルフボール210を打つ動作を複数回にわたり繰り返した。そして、本願発明者は、X軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(X軸しなり値)、Y軸しなり量a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(Y軸しなり値)及び捻じれ値a(k+Δk1),a(k+Δk2),a(k+Δk3)(捻じれ値)を各動作において取得した。更に、本願発明者は、各動作のパラメータB1~B8を測定及び演算した。そして、本願発明者は、最小二乗法等の演算方法により、演算したパラメータB1~B8が測定したパラメータB1~B8に近づく行列R及び定数Cを算出した。
【0038】
次に、演算回路10は、ステップS4(第1演算ステップ)で取得したパラメータB1~B8に基づいて、ゴルフクラブ200(被測定物)とゴルフボール210(被打撃物)との衝突により発生するゴルフボール210(被打撃物)の重心速度vgc及びゴルフボール210(被打撃物)の角速度ωを演算する(ステップS5,第2演算ステップ)。以下に、重心速度vgc及び角速度ωの演算方法について説明する。
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
【数6】
【0044】
【数7】
【0045】
【数8】
【0046】
【数9】
【0047】
V’:衝突時刻kの直前の接触点のヘッド側の速度
:衝突時刻kの直後の接触点のヘッド側の速度
v’:衝突時刻kの直前の接触点のゴルフボール側の速度
:衝突時刻kの直後の接触点のゴルフボール側の速度
V’gc:衝突時刻kの直前のヘッドの重心速度
gc:衝突時刻kの直後のヘッドの重心速度
Ω’:衝突時刻kの直前のヘッドの重心周りの角速度
Ω:衝突時刻kの直後のヘッドの重心周りの角速度
:ヘッドの慣性テンソル
v’gc:衝突時刻kの直前のゴルフボールの重心速度
gc:衝突時刻kの直後のゴルフボールの重心速度
ω’:衝突時刻kの直前のゴルフボールの重心周りの角速度
ω:衝突時刻kの直後のゴルフボールの重心周りの角速度
:ゴルフボールの慣性モーメント
rh:ヘッド重心から接触点までのベクトル(図8参照)
rb:ゴルフボール重心から接触点までのベクトル(図8参照)
M:ヘッドの質量
m:ゴルフボールの質量
rep:反発係数
Fx:単位長さを持つ、ヘッドのフェースの法線ベクトル
Fy:単位長さを持つ、ヘッドのフェースの水平接線ベクトル(η軸方向)
Fz:単位長さを持つ、ヘッドのフェースの垂直接線ベクトル(ζ軸方向)
演算回路10は、パラメータB1~B8により、V’,v’,V’gc,Ω’,v’gc,ω’,rh,rb,F,F,Fを算出する。更に、演算回路10は、上記式2ないし式9を演算することにより、ΔPを算出する。ΔPは、ゴルフクラブ200がゴルフボール210に与えた運動量である。そして、ΔPを以下の式10及び式11に代入することにより、重心速度vgc及び角速度ωを演算する。なお、本発明において、速度とは、スカラ―量ではなくベクトルである。
【0048】
【数10】
【0049】
【数11】
【0050】
次に、演算回路10は、重心速度vgc及び角速度ωに基づいて、空気中の抗力、揚力及び流体トルクを考慮して、ゴルフボール210の軌道の演算を行う(ステップS6)。演算回路10は、例えば、以下の文献に記載された手法により、ゴルフボール210の軌道の演算を行う。演算回路10は、ステップS4~S6の演算結果を表示装置16に表示させる。この後、本処理は終了する。
【0051】
タイトル:「ゴルフボールの空気力測定と三次元飛翔軌道解析」
学会誌「ながれ」 23(2004)203-211. 日本流体力学会
著者:鳴尾丈司、溝田武人
本願発明者は、演算回路10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。具体的には、本願発明者は、ゴルフクラブ200を用いてゴルフボール210を複数回にわたり打った。そして、本願発明者は、ボールの軌道として、キャリー、ボールスピード、打出角、キャリーサイド、最高到達点及び左右打出角を演算回路10により演算した。また、本願発明者は、トラックマンを用いて、キャリー、ボールスピード、打出角、キャリーサイド、最高到達点及び左右打出角を演算した。更に、本願発明者は、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のη軸方向の位置、及び、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のζ軸方向の位置を演算回路10により演算した。また、本願発明者は、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のη軸方向の位置、及び、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のζ軸方向の位置を、ゴルフクラブ200のヘッドのフェースにあらかじめ貼り付けることにより、ゴルフボール210の打撃により変色する感圧紙(ダイヤゴルフ社製インパクトマーカー)により測定した。そして、本願発明者は、演算回路10による演算結果とトラックマンによる演算結果とを比較すると共に、演算回路10による演算結果と測定結果とを比較した。
【0052】
図9は、判定条件を示す表である。図9において、キャリー、ボールスピード、打出角、キャリーサイド、最高到達点及び左右打出角の6つの指標については、演算回路10による演算結果とトラックマンによる演算結果との差分による基準を用いた。また、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のη軸方向の位置、及び、ゴルフクラブ200のヘッドにおけるゴルフボール210の打点のζ軸方向の位置の2つの指標については、演算回路10による演算結果と測定結果との差分による基準を用いた。図10は、実験結果を示す表である。1行が1回のスイングに対応しており、指標ごとに差分値を記載した。また、図9に示した8つの指標すべてにおいて「厳しい基準」を満たしたとき図10における総合評価を「厳しいスペック合格」とした。「厳しい基準」を満たさない場合において、図9に示した8つの指標すべてにおいて「緩い基準」を満たしたとき図10における総合評価を「緩いスペック合格」とした。更に、「厳しい基準」及び「緩い基準」を満たさない場合には、図10における総合評価を「不合格」とした。図10に示すように、良好な実験結果が得られていることが分かる。よって、演算回路10の演算結果は、トラックマンの演算結果に近い信頼度を有していると考えられる。そして、演算回路10では、ゴルフクラブ200にセンサユニット100を取り付け、演算回路10で実行されるプログラムをパーソナルコンピュータ又はサーバにインストールすることにより、ゴルフクラブ200とゴルフボール210との衝突時刻におけるゴルフクラブ200の状態を示すパラメータB1~B8を演算できる。よって、演算回路10では、高価なトラックマンが不要である。
【0053】
また、トラックマンは、ゴルフボール210(被打撃物)の重心速度vgc及びゴルフボール210(被打撃物)の角速度ωを演算できる。しかしながら、トラックマンは、パラメータB1~B8を演算できない。一方、演算回路10は、重心速度vgc、角速度ω及びパラメータB1~B8を演算できる。このように、演算回路10は、トラックマンで演算できないパラメータを演算できる。パラメータB1~B8は、例えば、ゴルフのティーチングに用いられてもよい。
【0054】
(変形例)
以下に、変形例に係る演算回路10aについて図面を参照しながら説明する。図11及び図12は、演算回路10aが実行するフローチャートである。なお、演算装置1aのブロック図については、図4を援用する。
【0055】
演算回路10aは、機械学習モデルを作成すると共に、機械学習モデルを用いて、ゴルフクラブ200とゴルフボール210との衝突により発生するゴルフボール210の重心速度vgc及びゴルフボール210の角速度ωを演算する。
【0056】
まず、機械学習モデルの作成について説明する。演算回路10aは、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を取得する(ステップS11,信号取得ステップ)。ステップS11は、ステップS1と同じであるので説明を省略する。
【0057】
次に、演算回路10aは、ゴルフクラブ200(被測定物)とゴルフボール210(被打撃物)との衝突により発生するゴルフボール210(打撃物)の重心速度vgc及びゴルフボール210(被打撃物)の角速度ωを取得する(ステップS12,初期値取得ステップ)。取得方法としては、ユーザがゴルフクラブ200を用いてゴルフボール210を打ったときに、ゴルフボール210の重心速度vgc及びゴルフボール210の角速度ωをトラックマンに演算させる。
【0058】
演算回路10aは、ステップS11(信号取得ステップ)により取得したX軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3と、ステップS12(初期値取得ステップ)により取得したゴルフボール210の重心速度vgc及びゴルフボール210の角速度ωとを教師データとして用いることにより、機械学習モデルを生成する(ステップS13,モデル生成ステップ)。この機械学習モデルは、後述するように、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3に基づいて、ゴルフボール210の重心速度vgc及びゴルフボール210の角速度ωを出力する。ステップS13が繰り返し行われると、機械学習モデルが修正される。これにより、機械学習モデルの出力結果の精度が向上する。以上の工程により、機械学習モデルが作成される。
【0059】
次に、機械学習モデルによる重心速度vgc及び角速度ωの演算について説明する。演算回路10aは、X軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3を取得する(ステップS21,信号取得ステップ)。ステップS21は、ステップS1と同じであるので説明を省略する。
【0060】
次に、演算回路10aは、ステップS21(信号取得ステップ)により取得したX軸しなり信号Sig1、Y軸しなり信号Sig2及び捻じれ信号Sig3に基づいて、ゴルフクラブ200(被測定物)とゴルフボール210(被打撃物)との衝突により発生するゴルフボール210の重心速度vgc及びゴルフボール210の角速度ωを、機械学習モデルを用いて演算する(ステップS22,機械学習演算ステップ)。演算回路10aは、ステップS22の演算結果を表示装置16に表示させる。この後、本処理は終了する。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明に係る演算回路は、演算回路10,10aに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0062】
なお、被測定物は、ゴルフクラブ200に限らない。ゴルフクラブ200は、例えば、ゲームコントローラであってもよい。また、被打撃物は、ゴルフボール210に限らない。
【0063】
なお、センサ12a~12cは、ゴルフクラブ200の変形量の微分値を検知してもよい。この場合、X軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)のそれぞれは、変形量の微分値である。そして、ステップS3では、演算回路10は、X軸しなり値A(i)、Y軸しなり値A(i)及び捻じれ値A(i)として、X軸しなり量a(i)、Y軸しなり量a(i)及び捻じれ量a(i)を時間で積分した値を演算する。
【0064】
なお、信号値取得ステップでは、時刻特定ステップにおいて特定した衝突時刻kより前の1以上の第1時刻及び衝突時刻より後の1以上の第2時刻のそれぞれにおけるX軸しなり値、Y軸しなり値及び捻じれ値を取得すればよい。
【0065】
なお、第1演算ステップでは、信号値取得ステップにおいて取得した複数のX軸しなり値、複数のY軸しなり値及び複数の捻じれ値に対して行列を掛け算することにより、衝突時刻における被測定物の状態を示す1以上のパラメータを演算すればよい。
【0066】
なお、1以上のパラメータは、ゴルフクラブのヘッドにおけるゴルフボールの打点の位置と、ヘッドの水平方位角と、ヘッド仰角と、ヘッド速度と、ヘッド速度仰角と、ヘッド速度方位角と、ヘッド垂直回転速度と、の少なくとも1つを含んでいればよい。
【0067】
なお、演算回路10aも、演算回路10と同様に、ゴルフボール210の軌道を演算してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1a:演算装置
10,10a:演算回路
12:通信装置
12a~12c:センサ
14:記憶装置
16:表示装置
100:センサユニット
200:ゴルフクラブ
210:ゴルフボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12