(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】床衝撃音低減床の通路接続部構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20241106BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E04F15/18 602D
E04F15/00 D
(21)【出願番号】P 2020176914
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000181815
【氏名又は名称】社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】増田 潔
(72)【発明者】
【氏名】西村 顕
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069795(JP,A)
【文献】実開昭63-071345(JP,U)
【文献】特開2006-249688(JP,A)
【文献】特開平10-280662(JP,A)
【文献】特開2001-241179(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0002678(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に敷設されたクッション層と、
床の表面材であるシート層と、前記クッション層と前記シート層とを
直接接着する接着層とを有する
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
前記クッション層が、発泡体であり、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に沈み込み防止材が配置され、
前記
重量床衝撃音低減床と前記通路端部との間に流れ込み防止材が配置されていることを特徴とする
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造。
【請求項2】
床上に敷設されたクッション層と、
床の表面材であるシート層と、前記クッション層と前記シート層とを
直接接着する接着層とを有する
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
前記クッション層が、発泡体であり、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に沈み込み防止材が配置され、
前記シート層の上面端辺に流れ込み防止材が配置されていることを特徴とする
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造。
【請求項3】
床上に敷設されたクッション層と、
床の表面材であるシート層と、前記クッション層と前記シート層とを
直接接着する接着層とを有する
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
前記クッション層が、発泡体であり、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に上方に伸びる凸部を備える沈み込み防止材が配置され、
前記シート層が、前記凸部の上面に接着され、
前記凸部と通路端部との間に、上方に流れ込み防止材が配置され、その下方にシール材が充填されていることを特徴とする
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造。
【請求項4】
前記
クッション層が、側面に防水処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の
重量床衝撃音低減床の通路接続部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量床衝撃音を低減できる床衝撃音低減床の通路接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅では、上階の床から階下へ伝達される床衝撃音の抑制が求められる。床衝撃音には、軽量床衝撃音と重量床衝撃音とがあり、軽量床衝撃音は、床にカーペットなど表面にクッション性を有する仕上げ材を敷くことで低減できる。一方、重量床衝撃音は、床に仕上げ材を敷いても低減することは困難である。これは、重量床衝撃音は、主にコンクリート床の厚さによって定まるためである。そのため、重量床衝撃音を抑制するには、建物設計時にコンクリート床を厚く計画することが重要である。既に建設された集合住宅では、コンクリート床を変更することは不可能であるため、コンクリート床の建設後に、重量床衝撃音の改善が必要な場合、コンクリート床の上に防振浮き床を施工する方法があるが、防振浮き床は非常に高価であり、また、質量が大きいため、補強工事が必要となる場合もある。さらに、既に住民が生活を行っている住宅環境において床仕上げ材を変更する工事を行うことも困難である。
【0003】
本発明者らは、本願出願時には未公開であるが、簡便に設置することができ、へたりにくく、重量床衝撃音を低減することができる床衝撃音低減床を提案している(特許文献1)。この床衝撃音低減床は、クッション性を有するため、転倒時の安全性も向上する。そのため、この床衝撃音低減床は、日常的に飛び跳ね行為を行ってしまうことがある知的障害や発達障害のある子供のいる家庭のみならず、転倒しやすい、あるいは転倒時の危険性が高い高齢者や肢体障害者等のいる家庭での使用が想定される。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の床衝撃音低減床は、床衝撃音低減床を敷設した領域と敷設していない領域とでは床面の硬さが大きく異なる。また、特許文献1に記載の床衝撃音低減床は、クッション性を有するため、端部付近を踏んだ際に沈み込み、隣接する敷設していない領域との間に段差が生じてしまう場合がある。そのため、特に、高齢者や足に障害のある者等が、床衝撃音低減床が敷設された領域から敷設されていない領域へ移動する際に、躓いて転倒してしまうことが懸念される。クッション層の沈み込みを抑える方法として、例えば、特許文献2には、木材と弾性体の二層構造からなる際根太を、層間面を壁から離れる方向に向かって下る傾斜状とし、弾性体側が上方になるように設置した段差を生じない際根太構造の発明が記載されている。
なお、以下、本明細書において、床衝撃音低減床が敷設された領域と隣接する領域(部屋、廊下、バルコニー等)とを行き来する部分を「通路部」といい、床衝撃音低減床における通路部と接続する部分を「通路接続部」、通路部の床衝撃音低減床と対向する部分(隣接する領域の床構造そのもの、敷居、沓摺り等)を「通路端部」という。
【0005】
また、上記した床衝撃音低減床の使用者の中には、飲料等をこぼしたり、失禁してしまうことが比較的多い者もいる。特許文献1に記載の床衝撃音低減床は、その上面にシート層を備えるため、中央部に液体が溢れた場合には容易に拭き取ることができる。また、壁面との端部は、シート端部を壁面に沿って立ち上げて貼る「立ち上げ施工」することにより、床衝撃音低減床と壁面との間への液体の流れ込みを防ぐことができる。しかし、通路接続部では、シート端部を立上げ施工することができないため、通路接続部近傍で液体が流れた場合、床衝撃音低減床と通路端部との間の隙間から液体が流れ込んでしまうが、流れ込んだ液体は完全に拭き取ることが難しく、カビや悪臭の原因となり非衛生である。
【0006】
内装において、液体の流れ込みを防止するために、一般的にシール材が用いられている。しかし、床衝撃音低減床と通路端部との間をシール材で処理すると、床衝撃音低減床はクッション性を有しており、床衝撃音低減床が沈み込むとシール材が切れてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特願2020-072995号
【文献】特開平10-331408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、重量床衝撃音を低減できる床衝撃音低減床において、通路部での躓きの危険性を減らすとともに、床衝撃音低減床と通路端部との間の隙間から下方への液体の流れ込みを防止することのできる床衝撃音低減床の通路接続部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.床上に敷設されたクッション層と、シート層と、前記クッション層と前記シート層とを接着する接着層とを有する床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に沈み込み防止材が配置され、
前記床衝撃音低減床と前記通路端部との間に流れ込み防止材が配置されていることを特徴とする床衝撃音低減床の通路接続部構造。
2.床上に敷設されたクッション層と、シート層と、前記クッション層と前記シート層とを接着する接着層とを有する床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に沈み込み防止材が配置され、
前記シート層の上面端辺に流れ込み防止材が配置されていることを特徴とする床衝撃音低減床の通路接続部構造。
3.床上に敷設されたクッション層と、シート層と、前記クッション層と前記シート層とを接着する接着層とを有する床衝撃音低減床の通路接続部構造であって、
通路接続部において、通路端部の際(キワ)に上方に伸びる凸部を備える沈み込み防止材が配置され、
前記シート層が、前記凸部の上面に接着され、
前記凸部と通路端部との間に、上方に流れ込み防止材が配置され、その下方にシール材が充填されていることを特徴とする床衝撃音低減床の通路接続部構造。
4.前記シート層が、側面に防水処理が施されていることを特徴とする1.または2.に記載の床衝撃音低減床の通路接続部構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床衝撃音低減床の通路接続部構造は、通路接続部において、床衝撃音低減床と通路部との間での硬さの違いが小さく、また、床衝撃音低減床が沈み込んで生じる段差も小さいため、躓きにくい。本発明の床衝撃音低減床の通路接続部構造は、床衝撃音低減床と通路端部との間から、液体が下方に流れ込むことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施態様である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【
図2】本発明の第一実施態様の変形例である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【
図3】本発明の第一実施態様の変形例である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【
図4】本発明の第二実施態様である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【
図5】本発明の第三実施態様である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【
図6】本発明の第一実施態様の変形例である床衝撃音低減床の通路接続部構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、床衝撃音低減床の通路接続部構造である。
「第一実施態様」
本発明の第一実施態様である通路接続部構造11の断面図を
図1に示す。
第一実施態様である通路接続部構造11は、既設床上に敷設されたクッション層2と、シート層3と、クッション層2とシート層3とを接着する接着層(図示せず)とを有する床衝撃音低減床1の通路接続部の構造である。
第一実施態様である通路接続部構造11は、通路部80に引き戸が設置されており、通路端部8は敷居である。第一実施態様である通路接続部構造11は、通路接続部において、通路端部8の際(キワ)に沈み込み防止材41が配置され、床衝撃音低減床1と通路端部8との間に流れ込み防止材51が配置されている。
なお、以下、本明細書において、同一部材には同一符号を付す。
【0013】
・床衝撃音低減床
床衝撃音低減床は、クッション層2とシート層3と、クッション層2とシート層3を接着する接着層(図示せず)とを有する。
・クッション層
クッション層2は、衝撃を吸収し、床衝撃音を和らげるものであれば特に制限されないが、例えば、発泡体であることが好ましい。発泡体は、衝撃音低減性能と、変形に対する修復性に優れている。発泡体としては、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等を使用することができ、これらの中で、衝撃音低減性能と強度のバランスに優れ、かつ、低価格であるため、ポリエチレンフォームが好ましい。クッション層2が、液体が浸透する材質である場合は、通路接続部において、クッション層2の側面には、シート層3端部を折り曲げて覆う、防水テープを貼付する、防水塗料を塗布する等の防水処理を施すことが好ましい。
第一実施態様において、クッション層2は積層体である。積層体からなるクッション層2は、各層の端部をズラして貼り合わせることにより沈み込み防止材41の形状に合わせて成形することができ、さらに、各層の弾性、厚さ等を調整することにより、衝撃音を低減する周波数帯域と低減性能とを調節することができる。また、沈み込み防止材41と同一高さの下層と、上層とに分割し、様々な厚さの上層と組み合わせることで、通路端部8の高さと床衝撃音低減床1の厚さを容易に合わせることができる。なお、クッション層2は、積層体に限定されず、単層であってもよい。クッション層2が積層体からなる場合は、1層の厚さは、5mm以上10mm以下であることが好ましく、各層の厚さは同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
・シート層
シート層3は、床の表面材として使用されている長尺シートを、必要に応じて幅方向端部を接着剤、溶接等により継ぐことにより構成することができる。例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレン-ポリビニルアルコール共重合体等からなるものを使用することができ、ガラス繊維、高分子ファイバー等の繊維材料を含むものを使用することもできる。また、木目調等の各種印刷等が施されているものを用いることもできる。
長尺シートを幅方向端部で継ぐ場合、長尺シート間の継ぎ目は、継ぎ目のない部分と比較して強度に劣るため、継ぎ目上で子供が飛び跳ねたりして大きな力が加わると、継ぎ目が剥がれたり、切れてしまう場合がある。そのため、シート層を2層以上設け、各層を構成する長尺シートの長手方向が異なる向きとなるように積層する、または、各層を構成する長尺シートを長手方向が同一であっても幅方向でズラして継ぎ目が重ならないように積層することにより、継ぎ目の破壊を防止することができる。長手方向を同一として継ぎ目が重ならないように積層する場合、上下のシート層の継ぎ目は、水平方向に5cm以上離れていることが好ましく、10cm以上離れていることがより好ましい。2層以上のシート層を積層する場合、下方のシート層を構成する長尺シートの少なくとも1枚として、繊維材料を含むシートを用いることが、最表面のシート層の継ぎ目の破断防止の点、及び、最表面のシート層を溶接で継ぐ際の耐熱性の点から好ましい。
シート層3の通路接続部以外の端部は、立上げ施工することが好ましいが、通路接続部と同様の構成とすることもできる。また、上記したように、通路接続部において、シート層3の端部は、クッション層2の側面、さらにはクッション層2の下面(クッション層2と沈み込み防止材41との間)まで覆うこともできる。
【0015】
床衝撃音低減床1は、シート層3の少なくとも1層が、JIS K6251に規定されるダンベル状2号形試験片を用いて引張強度を測定したときの破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値が2mm以上であり、かつ、伸びが小さい方の破断または降伏の際の引張強度が80N以上であることが好ましい。この破断伸度または降伏伸度の小さい方の値が2mm未満であると、変形時にシート層3が破れたり、伸びたまま戻らず皺になる場合がある。また、この2mm伸長時の引張応力が80N未満であると、修復力が不足して、クッション層3がへたる場合がある。破断伸びまたは降伏伸びの小さい方の値は、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。また、この2mm伸長時の引張応力の値は100N以上であることがより好ましく、120N以上であることがさらに好ましい。
【0016】
・接着層
接着層は、クッション層2とシート層3とを接着するものである。また、2層以上のシート層を有する場合は、各シート層間も接着する。接着層としては、クッション層2とシート層3とを強固に接着できるものを特に制限することなく使用することができ、感圧型接着剤、感熱型接着剤、粘着剤、両面接着テープ等を使用することができる。この際、シート層3の接着面が、エンボス等の細かな凹凸を有することが、接着力が大きくなるため好ましい。また、接着層は、クッション層2とシート層3とを均一に接着できるものであればよく、全面に設けるだけでなく、点や線を組み合わせたパターン状に設けることもできる。パターン状に設ける場合、接着面積は面全体の50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0017】
床衝撃音低減床1において、シート層3は、クッション層2よりも変形しにくいため、クッション層2の表面にシート層3を接着することにより、クッション層2の変形量を小さくすることができる。また、変形したシート層3は元の形状に戻る自己修復性を有するが、シート層3の形状修復に伴い、シート層3に接着されたクッション層2も元の形状に戻ることができるため、本発明で使用する床衝撃音低減床1はへたりにくい。
【0018】
・沈み込み防止材
沈み込み防止材41は、通路接続部における、通路端部8の際(キワ)に配置される。沈み込み防止材41は、接着剤、両面テープ等で、既設床または通路端部8に固定することが好ましい。沈み込み防止材41とクッション層2との間は、接着してもよく、接着しなくてもよい。通路端部8と沈み込み防止材41との間への液体の浸入を防止するために、沈み込み防止材41と通路端部8との間を、流れ込み防止材41と、通路端部8またはクッション層2とを接着する接着剤、両面テープ、あるいはシール材等でシールすることが好ましい。
沈み込み防止材41としては、人の体重で変形しない程度に剛直なものを特に制限することなく利用することができ、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属、各種プラスチック、硬質ゴム、木材等を特に制限することなく使用することができる。沈み込み防止材41により、通路接続部におけるクッション層2の沈み込み量が小さくなり、床衝撃音低減床1と通路部80との間での硬度の差が小さくなり、また、床衝撃音低減床1が沈み込んで生じる段差が小さくなるため、通路部80での躓きを防止することができる。沈み込み防止材41の断面形状は、クッション層2の厚さが通路端部8から離れても同一であるか、離れるに連れて厚くなる形状であればよい。例えば、
図2、
図3に、それぞれ第一実施態様である通路接続部構造の変形例を示すが、
図2に示す台形状、
図3に示す直角三角形状、さらに、下面を挟む二角が直角である直角台形状等とすることができ、これらの形状とするために複数の部材を組み合わせることもできる。また、その上面形状は直線に限定されず、曲線、または直線と曲線の組み合わせであってもよい。沈み込み防止材41の幅は、例えば、3cm以上20cm以下程度であることが好ましい。また、沈み込み防止材41の厚さ(高さ)は特に制限されないが、沈み込み防止材41の上方に位置するクッション層2の最も薄い部分の厚さが、中央部のクッション層2の厚さの20%以上60%以下程度となることが好ましい。
【0019】
・流れ込み防止材
流れ込み防止材51は、床衝撃音低減床1と通路端部8との間に配置され、液体への流れ込みを防止するものである。流れ込み防止材51が配置される床衝撃音低減床1と通路端部8との間の隙間の幅は、10mm~20mm程度である。
流れ込み防止材51は、クッション層2を構成する部材より柔らかいものを用い、床衝撃音低減床1と通路端部8との間の隙間に、この隙間の幅よりも広幅のものを圧縮した状態で差し込むことが好ましい。このように構成することで、床衝撃音低減床1が変形しても、流れ込み防止材51との間で隙間が生じにくくホコリ等が溜まりにくく、また、床衝撃音低減床1が流れ込み防止材51に押されて変形することを防止できる。このような流れ込み防止材51としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等の多孔質体、ロックウール、不織布、フェルト、吸水性ポリマー等の繊維質体、軟質ゴム等を用いることができ、これらを併用することもできる。多孔質体は、液体を吸収させる場合は連続気泡、液体を堰き止める場合は独立気泡のものを用いる。これらの中で、圧縮変形性に優れ床衝撃音低減床1との間で隙間が生じにくく、さらに、液体が下方へ浸透しにくいため、独立気泡である多孔質体を好適に用いることができる。
【0020】
流れ込み防止材51は、液体がこぼれた際に、掃除や交換が容易に行えるように、床衝撃音低減床1と通路端部8との間に圧縮して差し込むだけで配置することが好ましいが、クッション層2の沈み込みと回復の動きにより流れ込み防止材51がずれるようであれば、容易に取り外せるように、粘着力の弱い接着テープや接着剤等を用いて固定すればよい。
【0021】
「第二実施態様」
本発明の第二実施態様である通路接続部構造12の断面図を
図4に示す。
第二実施態様である通路接続部構造12は、床衝撃音低減床1と通路端部8との間の隙間の幅が、第一実施態様より狭く3mm以下程度であり、流れ込み防止材52がシート層3上面端辺に配置されている以外は、第一実施態様と同様の構成を有する。
【0022】
流れ込み防止材52は、テープ状のものを上面端辺に沿って貼り付ける等により配置できる。流れ込み防止材52は、第一実施態様と同様の材質を用いることができ、独立気泡の多孔質体を好適に用いることができる。流れ込み防止材52は、幅は10mm以上30mm以下程度であることが好ましい。また、その高さは、踏んだ際に圧縮される材質であれば10mm以下程度、踏んだ際に圧縮されない材質であれば3mm以下程度であることが好ましい。
第二実施態様である通路接続部構造12において、クッション層2の側面は、防水処理を施すことが好ましい。
【0023】
「第三実施態様」
本発明の第三実施態様である通路接続部構造13の断面図を
図5に示す。
第三実施態様である通路接続部構造13は、沈み込み防止材43が、上方に伸びる凸部431を備え、シート層3が凸部431の上面に接着されており、凸部431と通路端部8との間には、上方に流れ込み防止材53が配置され、下方にシール材6が充填されている以外は、第一実施態様と同様である。
【0024】
第三実施態様である床衝撃音低減床13は、シート層3の端部が凸部431の上面に接着されている。なお、シート層3の端部は、凸部431の通路端部8側の側面まで伸ばして接着することもできる。
第三実施態様における沈み込み防止材43は、第一実施態様と同様の材質を用いることができる。凸部431は本体と同一に成形されていてもよく、別部材として本体に固定してもよい。別部材の場合は、本体と異なる材質であってもよい。凸部431は、通路端部8との間の隙間が10mm~20mm程度となる位置に設けられる。また、凸部431の幅は10mm~30mm程度である。
【0025】
凸部431と通路端部8との間には、上方に流れ込み防止材53が配置され、下方にシール材6が充填されている。
流れ込み防止材53は、凸部431と通路端部8との間の隙間に、この隙間の幅よりも広幅のものを圧縮した状態で差し込むことが、液体の流れ込みを防止する点から好ましい。このような流れ込み防止材53としては、第一実施態様と同様の材質を用いることができ、独立気泡の多孔質体を好適に用いることができる。
シール材6は、内装用途等に従来用いられている公知のものを特に制限することなく使用することができる。
【0026】
本発明の床衝撃音低減床の通路接続部構造において、上記した第一~第三実施態様は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、第一実施態様の通路接続部構造における床衝撃音低減床におけるシート層の上面端辺に、さらに、第二実施態様で使用したテープ状の流れ込み防止材を設けることもできる。通路端部は、敷居に限定されず、沓摺りであってもよく、隣接する空間の床構造そのものであってもよい。また、床衝撃音低減床と通路端部との間に見切り材を装填することもできる。
【0027】
図6に、第一実施態様である通路接続部構造の変形例をしめす。変形例である通路接続部構造11cは、流れ込み防止材51と床衝撃音低減床1の間に見切り材7が装填されている。見切り材7を設置することにより、端部がきれいに仕上がり、見栄え良くすることができる。
見切り材7は、装填する辺の長さ20~30mm程度、もう一方の辺(以下、上辺という)の長さ10~40mm程度のL字型であり、その材質としては、プラスチック、硬質ゴム、軟質ゴム等を用いることができる。見切り材7は、予め、見切り材71の装填する辺の側面に流れ込み防止材51を両面粘着テープ等で接着し、この状態で装填することが好ましい。見切り材7は、床衝撃音低減床1と通路端部8との間に装填されればよく、流れ込み防止材51と通路端部8との間に装填することができる。見切り材7の上辺がシート層3上に位置する場合は、上辺とシート層3とを両面粘着テープ等で接着することが好ましい。また、第三実施態様では、見切り材を、流れ込み防止材53と通路端部8との間、または、流れ込み防止材53と凸部431の間に装填することができる。
【符号の説明】
【0028】
床衝撃音低減床 1
クッション層 2
シート層 3
通路接続部構造 11、12、13
沈み込み防止材 41、43
凸部 431
流れ込み防止材 51、52、53
シール 6
見切り材 7
通路部 80
通路端部 8