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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アレルゲン付着防止剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20241106BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020036134
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138630
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】田畑 優子
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡子
(72)【発明者】
【氏名】逸見 暁子
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-049080(JP,A)
【文献】特許第6877530(JP,B2)
【文献】特許第7083467(JP,B2)
【文献】特開2007-113137(JP,A)
【文献】特開2006-002147(JP,A)
【文献】国際公開第2008/153090(WO,A1)
【文献】特開2018-048085(JP,A)
【文献】特開2020-152700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
B32B 1/00-43/00
D06M13/00-15/715
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有するアレルゲン付着防止剤であって、
前記アレルゲンが、花粉又はPM2.5であることを特徴とするアレルゲン付着防止剤(ただし、食品が含有するアレルゲンを除く。)
【化1】

【化2】
【請求項2】
前記共重合体の含有量が、0.0001質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項に記載のアレルゲン付着防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン付着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境の近代化に伴い、世界中で気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患が増加している。これらのアレルギー疾患は、花粉、PM2.5(大気中有害物質)、ハウスダスト、カビ胞子等のアレルゲン(抗原)が人体の皮膚や粘膜に接触することによって生じるため、アレルゲンの暴露量をいかに低減させられるかがアレルギー症状の緩和や予防の観点で重要である。アレルギー疾患を治療するための医薬品等は数多く販売されているが、アレルゲンの付着を防止することにより、アレルゲンの暴露量を低減させられるものは少ない。
【0003】
特許文献1(特開2017-186276号公報)は、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含む、大気汚染物質による皮膚の損傷を緩和するアンチポリューション剤およびアンチポリューション用皮膚外用組成物を提案されている。たしかにヒアルロン酸はアンチポリューション効果としては優れているが、アレルゲンの付着防止の観点では不十分である。
【0004】
特許文献2(特開2009-91432号公報)には、水溶性高分子と特定のアルコールと水を含有する粘性溶液をマスク用不織布に適用することによって、マスクにアレルゲンを捕捉し、マスクを通過するアレルゲン量を低減させる技術が記載されている。
特許文献3(特開2004-83844号公報)には、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル又はスターチエーテルを主鎖とした特定の多糖誘導体を有効成分とする、各種のアレルゲンを無害化したり捕捉したりするためのアレルゲン低減化剤が記載され、該アレルゲン低減化剤をマスクや化粧料に適用することも記載されている。多糖誘導体をはじめとした水溶性高分子のアレルゲン捕捉能は優れているが、やはりアレルゲン付着防止の観点では不十分であった。
【0005】
特許文献4(特開2006-002147号公報)には、特定の両性イオン基を有するモノマーユニット、および/または、特定のアニオン基を有するモノマーユニットを構成単位として含むポリマーが、毛髪や衣類等に花粉が吸着することを防止するとの記載がある。しかし、本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体のアレルゲンの付着防止効果については記載されていない。また、特許文献4において極めて優れた花粉の吸着防止効果が得られたポリマーの実施例として挙げられているポリアクリル酸ナトリウム(実施例3)では、本発明において期待する効果は得られず不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-186276号公報
【文献】特開2009-091432号公報
【文献】特開2004-083844号公報
【文献】特開2006-002147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れたアレルゲン付着防止効果を有するアレルゲン付着防止剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための主な手段は、次のとおりである。
1.下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体を含有することを特徴とするアレルゲン付着防止剤。
【化1】
【化2】
2.アレルゲンが、花粉又はPM2.5であることを特徴とする1.に記載のアレルゲン付着防止剤。
3.前記共重合体の含有量が、0.0001質量%以上30質量%以下であることを特徴とする1.又は2.に記載のアレルゲン付着防止剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアレルゲン付着防止剤により、PM2.5、黄砂、花粉、ハウスダスト、ダニ等のアレルゲンの付着を防止できる。本発明のアレルゲン付着防止剤は、アレルゲン付着防止効果に優れ、化粧料等として提供することができるため、毛髪、衣類、マスク等に適用するだけでなく、皮膚に直接塗布できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】人工皮革へ付着したPM2.5のSEM画像並びに2値化画像を示す図
図2】人工皮革へ付着した石松子(花粉様物質)の顕微鏡画像を示す図
図3】人工皮革へ付着した石松子(花粉様物質)の数を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)との共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー)を含有するアレルゲン付着防止剤に関する。
【0012】
【化1】
【化2】
【0013】
本発明のアレルゲン付着防止剤において、アレルゲン付着防止剤はメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)とメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含有し、
この共重合体は、全構造単位100質量%に対して、
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)の割合が、50~95質量%、メタクリル酸エチル由来の構造単位(B)の割合が5~50質量%、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である。
【0014】
<共重合体について>
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(A)の割合は、50~95質量%であり、50~85質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(B)の割合は、5~50質量%であり、15~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
なお、本明細書において、「A~B」(A、Bは数値)との記載は、A、Bも含む範囲を表す。
【0015】
本発明の共重合体は、上記メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)及びメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル及びメタクリル酸エチルと共重合できるものである限り特に制限されない。
【0016】
以下に単量体(E)として用いることが出来る単量体を例示する。
例えば、不飽和モノカルボン酸(塩)であり、(メタ)アクリル酸(塩)などが挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステルとして、アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。この場合アルキル基は直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、炭素数は1~12が好ましい。
例えば、上記(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル(メタ)アクリレート類で、置換基を有するものが挙げられる。この場合置換基としては、水酸基、アルコキシ基、オキシアルキレン基、スルホン基などが挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,4-ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類等が挙げられる。
これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明のアレルゲン付着防止剤におけるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の濃度は、アレルゲン付着防止の効果が期待できる範囲内であれば特に制限されないが、濃度の下限値は、アレルゲン付着防止剤全質量%に対して0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましい。また、濃度の上限値は、アレルゲン付着防止剤全質量%に対して30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明のアレルゲン付着防止剤は、アレルゲン付着防止を目的とする添加剤として提供され、また、本発明のアレルゲン付着防止剤は、アレルゲン付着防止を目的とする、皮膚外用剤、化粧品、医薬部外品、医薬品として提供されるものであって、通常使用される製剤化方法にしたがって製造することができ、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の、溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤、また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤とすることができる。このアレルゲン付着防止剤には、植物油、脂肪酸類、高級アルコール、シリコーン類、界面活性成分、水溶性合成高分子、増粘成分、粉体成分、保湿成分、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽物、香料、金属キレート剤、pH調製剤などの公知の化粧料用成分を含有させることができる。さらには、目的に応じて任意成分として美白剤、保湿剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤あるいは、その他の公知の添加剤である有効成分を配合することもできる。
【実施例
【0019】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:10μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:Waters社製 EMPOWER3
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0021】
<PM2.5付着防止確認試験>
PM2.5の検体として、JIS試験用粉体(関東ローム焼成11種)(JIS Z8901、(社)日本粉体工業技術協会)を用いた。
本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体として、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約87質量%、メタクリル酸エチルが約10質量%、アクリル酸が約3質量%であり、分子量が約40000である共重合体(以下、共重合体(1))を用いた。
【0022】
ウレタンエラストマー素材の人工皮革に共重合体(1)1%含有水溶液または精製水を塗り広げ、室温で一晩自然乾燥させた。処理した人工皮革と未処理の人工皮革を1cmに切断し、走査電子顕微鏡(SEM)用試料台に張り付け、JIS試験用粉体10mgと共に50cmの容器に入れ密封し、撹拌した。撹拌後、伝導処理として試料にオスミウム蒸着した後、SEM画像(倍率500倍)を撮影した。SEM像を2値化処理し、画像中に占める粉体の割合を求めた。
【0023】
結果を図1と表1に示す。
【表1】
【0024】
(結果)
本発明の共重合体を塗布した人工皮革は、何も塗布しなかったものと比べて顕著にPM2.5の付着が低減されたことを確認できた。
【0025】
<花粉付着防止確認試験>
花粉様物質として、マスクの性能試験等にも用いられる染色石松子((株)ミツワ)を用いた。
本発明のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体は、前述の共重合体(1)または、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約60質量%、メタクリル酸エチルが約40質量%であり、分子量が約30000である共重合体(以下、共重合体(2))を用いた。
比較例として、同じINCI名である(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー(ジュリマーET-410、東亞合成(株)、重量平均分子量が1万未満)、カルボマー(ハイビスワコー103、富士フイルム和光純薬(株))、ポリアクリル酸ナトリウムを含む増粘剤(TNFR64、(株)テクノーブル)を用いた。
【0026】
人工皮革1cmに各検体1%含有水溶液または精製水を20μLずつ各検体3枚の人工皮革へ塗布し、室温で一晩自然乾燥した。クリアボックス(非帯電スチロールケース)の蓋部に、検体で処理した人工皮革と精製水で処理の人工皮革を両面テープで貼り付け、クリアボックス内に染色石松子10mgを入れ密封し、均等に撹拌した。デジタルマイクロスコープ(VHX-5000、(株)キーエンス)で観察、写真撮影し、画像を2値化処理し、画像中に占める石松子の数を数え、付着した花粉の数とした。
【0027】
結果を表2、図2、3に示す。
【表2】
【0028】
(結果)
何も塗布しない比較例2に比べ、ポリマーを塗布した比較例3~5並びに本発明の共重合体を塗布した実施例2、3は、花粉付着が低減された。本発明の共重合体と同じ化粧品表示名称であるポリマーを塗布した比較例3や化粧料に一般的に用いられるポリマーを塗布した比較例4、5に比べ、本発明の共重合体を塗布した実施例2、3は顕著に花粉の付着が低減されたことを確認できた。
【0029】
(処方例1)アレルゲン付着防止用化粧水
共重合体(1) 1%
1,3-ブチレングリコール 6%
グリセリン 4%
ジプロピレングリコール 1%
ソルビット 1%
クエン酸 0.1%
エタノール 5%
水 残余
【0030】
(処方例2)アレルゲン付着防止用クリーム
共重合体(1) 1%
スクワラン 9%
ワセリン 5%
ステアリン酸 2%
ベヘニルアルコール 3%
1,3-ブチレングリコール 6%
ソルビット 1%
モノステアリン酸グリセリン 2%
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2%
水 残余
図1
図2
図3