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特許7582597状態変状検知装置および状態変状検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】状態変状検知装置および状態変状検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021056305
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2021162595
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020065363
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(72)【発明者】
【氏名】松村 匡樹
(72)【発明者】
【氏名】土本 真史
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309784(JP,A)
【文献】特表2021-535373(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111317(WO,A1)
【文献】特開2005-192583(JP,A)
【文献】特開平04-349643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ手段と、
前記カメラ手段で撮影した撮影画像を処理する情報端末と、
被測定物に接続された1乃至複数の光ファイバと、
前記カメラ手段のレンズ位置と前記光ファイバの一方の端部位置とを重ね合わせる位置決め治具、
を備え、
前記位置決め治具は、複数の前記光ファイバの端部の整列位置を判別し得るマーカが設けられ、前記カメラ手段の画像センサで撮像する画像内に、複数の前記光ファイバの端部と、前記マーカが映るように、前記端部と前記マーカが固定配置され、
前記情報端末は、前記光ファイバの各端部からの出射光を前記カメラ手段の画像センサが画像処理し、処理した画像内の位置情報から被測定物又は測定場所を特定し、処理した画像の色情報から前記被測定物の状態変状を検知することを特徴とする状態変状検知装置。
【請求項2】
前記情報端末は、複数の前記光ファイバの各端部からの出射光に対応する複数の分割された画像領域の色情報を検知し、検知した複数の色情報から前記状態変状を検知することを特徴とする請求項に記載の状態変状検知装置。
【請求項3】
前記画像センサは、前記出射光のリアルタイム映像を画像処理し、リアルタイムに前記状態変状を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の状態変状検知装置。
【請求項4】
前記情報端末は、前記光ファイバに予め割り当てられた識別タグを入力するタグ入力手段を備え、前記画像センサで処理した画像と前記識別タグを関連付けして記憶することを特徴とする請求項1又は2に記載の状態変状検知装置。
【請求項5】
前記情報端末は、前記色情報に応じたデータ出力を行うための色の閾値を設定する閾値設定手段を備え、前記色情報と前記閾値を比較して前記データ出力を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の状態変状検知装置。
【請求項6】
コンピュータに以下のステップを実行させる状態変状検知プログラム:
被測定物に接続された1乃至複数の光ファイバの一方の端部位置とカメラ手段のレンズ位置とが重ね合わされた状態で、前記光ファイバからの出射光を前記カメラ手段の画像センサにより画像処理された画像を入力する画像入力ステップと、
前記光ファイバに予め割り当てられた識別タグを入力するタグ入力ステップと、
画像の色情報に応じた前記被測定物の状態変状のデータ出力を行うための色の閾値を設定する閾値設定ステップと、
入力画像と前記識別タグを関連付けするタグ関連付けステップと、
前記入力画像の色情報と前記閾値を比較して前記データ出力を行うデータ出力ステップと、
前記入力画像から、複数の前記光ファイバの端部の整列位置を判別し得るマーカを検出するマーカ検出ステップと、
前記マーカの位置に基づいて、複数の前記光ファイバの各端部からの出射光に対応する複数の分割された画像領域の色情報を検知する色情報検知ステップ
【請求項7】
前記撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、前記分割された画像領域の内、予め被測定物と関連付けられた画像領域であることを特徴とする請求項に記載の状態変状検知装置。
【請求項8】
前記撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、前記分割された画像領域の内、特定の領域であることを特徴とする請求項に記載の状態変状検知装置。
【請求項9】
前記撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、所定の光帯域における所定の画素値の範囲内にある領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の状態変状検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然又は人工的な構造物の状態変状の発生、進展、危険度増大をモニタリングするための状態変状検知装置よび状態変状検知プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
豪雨に起因する危険斜面の土砂災害などの災害の予兆を捉えるためのモニタリングシステムは幾つか製品化され導入されている。危険斜面の土砂災害の危険度とその時間的変化をモニタリングするには、図11に示すように、地下水の変動、斜面の表面流の状態、地盤の動き、岩塊の動き、樹木の動き、排水関連設備の健全度などをモニタリングする必要がある。
このような場合、図12に示す従来のモニタリングシステムでは、電気を使用することが前提となっているセンサ(以下、「電気センサ」という)で各種データを取得し、無線技術などを利用してデータをデータロガーに集約し、現場の技術責任者が危険度を判定して、自治体などの行政機関を通して周辺住民に伝達することが多い。このような従来のモニタリングシステムを配備するためには1斜面あたり数百万円の費用が発生するため、小さな自治体や個人が負担して配備することは困難であった。また、電気センサの不具合、落雷など不測の事態が発生する場合があり、配備された複数の電気センサからの情報が正確で迅速に伝達されない可能性がある。
また、従来のモニタリングシステムの場合には、システム導入コストが高いために、土砂災害が生じる可能性のある限られた場所に設置せざるを得ない状況である。
そこで、システム導入コストを低減すべく、電気ではなく、光で状態変状をモニタリングする方法や装置が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。光で状態変状をモニタリングするとは、道路の信号機のように、青、黄、赤という3色の光を用いて、青は安全、黄は注意、赤は危険という概念が浸透していることから、色と状態変状を対応させてモニタリングするものである。
【0003】
一方で、スマートフォンやタブレット端末などのユーザ所有の携帯端末の技術進歩によって、カメラ機能による動画撮影、画像データの記録や画像処理の性能向上が図られ、専用の撮影機器やデータ分析機器の機能性に近づいている。例えば、携帯端末が備える画像センサと光源との上方に配置された試験片用周辺機器内に配置された試験片上の反応領域を携帯端末のカメラ機能で読み取り、カメラでキャプチャされた画像内の反応領域の色に基づいて分析物の特性を決定するといった分析物測定システムが知られている(特許文献3を参照)。特許文献3に開示されたシステムでは、携帯端末のスクリーン又はフラッシュのような光源からの光を試験片上の反応領域に誘導するためのライトガイドの治具を備え、これにより試験片上の反応領域はスクリーンなどの光によって照らされるため、反応領域の色を携帯端末のカメラ機能で読み取ることができる。このように、携帯端末は、専用のデータ分析機器の代替えとして機能でき、システム導入コストの低減に寄与している。
【0004】
例えば、危険斜面の土砂災害の予兆に関連するデータを光情報として収集でき、それをユーザの携帯端末(スマートフォン、タブレット端末など)で画像処理して分析するアプリケーションプログラムが提供されるならば、ユーザが自身の生命を守るために自宅で周囲の危険斜面のモニタリングを実施できることになる。
また、個人使用の目的ではなく、監視業務として行う際にも、作業者が携帯端末を持って、現場に出向き、あるいは、携帯端末を現場に常設して長期的な計測を実施するなど、現場周辺の災害の予兆に関連するデータを光情報として収集し、収集された光情報を作業者の携帯端末で画像処理して危険度をモニタリングできることは有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-309784号公報
【文献】再表2012/111317号公報
【文献】特開2018-105886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光情報を伝送する手段として、光ファイバが活用されている。光ファイバが捉えた光情報は、通常、専用の光ファイバ用センサやデータロガーで分析するが、このやり方では、光ファイバ1本当たり数万円のデータロギングコストが発生するために、多数の光ファイバを同時に使用したい場合にコストが高いといった問題が大きくのしかかっていた。
かかる状況を踏まえ、本発明では、多数の光ファイバを同時に用いた多様なモニタリングを行う際に、それらが捉えた光情報をスマートフォンなどの携帯端末が有するカメラによって、一括処理できる技術を提供し、モニタリング全体のコストを大幅に低減する。1本の光ファイバで実施するモニタリングにも対応させ、スマートフォンなどの携帯端末を持っていれば誰でも光ファイバを通して光情報による状態変状のモニタリングを実施できるようにする。
【0007】
すなわち、本発明は、光ファイバから伝送される光情報を携帯端末などの情報端末で分析して、自然又は人工の構造物の状態変状を検知し、防災、減災、構造物の維持管理など多様な目的でモニタリングを行える装置、方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の状態変状検知装置は、カメラ手段と、カメラ手段で撮影した撮影画像を処理する情報端末と、被測定物に接続された1乃至複数の光ファイバと、カメラ手段のレンズ位置と光ファイバの一方の端部位置とを重ね合わせる位置決め治具、を備える。位置決め治具は、複数の光ファイバの端部の整列位置を判別し得るマーカが設けられ、カメラ手段の画像センサで撮像する画像内に、複数の光ファイバの端部と、マーカが映るように、端部とマーカが固定配置される。情報端末は、光ファイバの各端部からの出射光をカメラ手段の画像センサが画像処理し、処理した画像内の位置情報から被測定物又は測定場所を特定し、処理した画像の色情報から被測定物の状態変状を検知する。
像領域の位置情報から被測定物を特定することにより、検知対象を効果的に特定することが可能となる。ここで、情報端末としては、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末が好ましいが、PCなどを用いてもよい。
【0009】
かる構成により、多様な目的でモニタリングを行う際に光ファイバを有効に活用し、導入コストを抑え合理的なセンシングが可能になる。
ここで、カメラ手段は、必ずしも情報端末に内蔵されたものに限られず、外部接続されたものでもよい。また、光ファイバが被測定物に接続されるとは、直接に接続されることに限られず、光ファイバが、別の光ファイバや、カメラ、インターネット、PC等の情報端末、などを介した上で被測定物に接続されることでもよい。
【0010】
光ファイバとしては、プラスチック製光ファイバ(Plastic
Optical Fiber;POF)が好ましく使用できる。POFは、光ファイバの中でも、心材(コア)がプラスチック製の光ファイバを指し、柔軟性があるため、ガラス製光ファイバに比べて、安価で(直径1mmの光ファイバの材料単価は約50円/m)あり、かつ簡単な治具でケーブルカットが行えることからケーブル設置が簡便に行える。また、POFは、ガラス製の光ファイバに比べると、光の減衰率が大きいことから、長距離のデータ伝送には不向きであるが、200m程度までの短距離データ伝送であれば使用可能である。
【0011】
位置決め治具としては、情報端末のカメラのレンズ位置と光ファイバの端部位置が対向するように繋ぐソケットタイプ(継ぎ手タイプ)や、情報端末自体を設置又は装着する受け台にカメラレンズ用のホール(穴)が設けられ、ホールの底に光ファイバの端部が固定されたホールタイプがあるが、カメラ手段のレンズ位置と光ファイバの端部位置とを重ね合わせるものであればよい。また、画像の色情報としては、R(赤)G(緑)B(青)の3原色のデータ値(0~255の値)とそれらの値から算出するH(Hue)S(Saturation)V(Value・Brightness)の色の3要素の値を活用して光情報の意味を判別し、被測定物の状態変状を検知する。
【0012】
本発明の状態変状検知装置は、複数の光ファイバの端部位置が整列され、画像センサが光ファイバの各端部からの出射光を画像処理し、処理した画像内の位置情報から被測定物又は測定場所を特定し、状態変状を検知できる。
複数の光ファイバの一端を、それぞれ複数の被測定物に接続し、光ファイバの他端の端部位置を整列させ、複数の被測定物の状態変状の情報を光情報として一度にカメラ画像として取り込む。あるいは、複数の光ファイバの一端を、1つの被測定物の異なる箇所に接続し、光ファイバの他端の端部位置を整列させ、1つの被測定物の異なる箇所の状態変状の情報を光情報として一度にカメラ画像として取り込む。これにより、複数の被測定物の状態変状、あるいは1つの被測定物の異なる箇所の状態変状を検知して、より精度の高い危険予知判断を行うことが可能になる。
複数の光ファイバの端部位置は、一定領域に多く配置するために格子状に配列されるのが好ましいが、直線状に配列されても、円状に整列されてもよい。
【0013】
本の光ファイバであれば、その光情報は、光ファイバが接続された被測定物に由来する情報であることは明らかである。一方、複数の光ファイバを用いる場合に、各々の光ファイバの光情報が、どの被測定物のどの測定場所に由来する情報であるのかを特定するためには、光ファイバの端部の整列位置にアドレス等の個々の識別番号を割り当て、画像内で複数の光情報を識別する必要がある。そのため、撮像する画像内に、複数の光ファイバの端部の整列位置を判別できるマーカが映るように端部とマーカを固定配置する。
【0014】
マーカは、例えば、QRコード(登録商標)の読み取りに用いられるような3点マーカを好ましく用いることができるが、これに限定されず、2次元的に並んだ端部のXYアドレスを認識して端部を識別できるものであれば、矢印やL字のような1点マーカや、2点マーカでもよい。直線状に配列される場合や円状に配置される場合には、1点マーカで始点を表すことにより、個々の端部を識別できる。
【0015】
本発明の状態変状検知装置において、情報端末は、複数の光ファイバの各端部からの出射光に対応する複数の分割された画像領域の色情報を検知し、検知した複数の色情報から状態変状を検知することが好ましい。
これにより、複数の光ファイバの個々のファイバ、あるいは、グループ化されたファイバ群について、色情報を検知し、それらの相関を見ながら、状態変状を検知することが可能となる。すなわち、複数の被測定物の状態変状、あるいは1つの被測定物の異なる箇所の状態変状を検知して、より精度の高い危険予知判断を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の状態変状検知装置において、画像センサは、出射光のリアルタイム映像を画像処理し、リアルタイムに状態変状を検知することが好ましい。情報端末のカメラの動画撮影機能によって、出射光のリアルタイム映像を取得する。取得した映像は、情報端末のメモリに記憶されるが、メモリ容量には制限があるため、適宜の時間で映像ファイルを保存し、特に変状等を検知しない場合には、映像ファイルを削除し、メモリ容量を圧迫しないようにする。
多様な情報を捉えた光ファイバを情報端末のカメラで捉えて、リアルタイムで光ファイバの1本ごとのデータもしくは複数の光ファイバが捉えた情報を特定のルールで分析して1つのデータを定義することで多様なモニタリングを行うことが可能となる。
【0017】
本発明の状態変状検知装置において、情報端末は、光ファイバに予め割り当てられた識別タグを入力するタグ入力手段を備え、画像センサで処理した画像と識別タグを関連付けして記憶することが好ましい。
タグ入力手段を備えることにより、1本または複数本のファイバの束をまとめ、割り当てられた識別タグを読み取ることが可能となる。タグを読み取る手段は、特に限定されないが、QRコード(登録商標)をカメラで読み取る、キーからタグコードを入力する、又は、情報端末のアプリケーション画面の操作により選択入力するといった方法を利用可能である。
【0018】
本発明の状態変状検知装置において、情報端末は、色情報に応じたデータ出力を行うための色の閾値を設定する閾値設定手段を備え、色情報と閾値を比較してデータ出力を行うことが好ましい。
閾値設定手段を備えることにより、色情報に応じて、警告、注意などの通知をデータ出力することができる。閾値の設定方法としては、情報端末のアプリケーション画面の操作により設定する方法や、通信を介して設定テーブルをダウンロードする方法などがある。また、データ出力は、画面表示、アラーム音出力、通信を介したデータ送信などがある。
【0019】
本発明の状態変状検知プログラムは、下記1)~)の各ステップをコンピュータに実行させるものである。
1)被測定物に接続された1乃至複数の光ファイバの一方の端部位置とカメラ手段のレンズ位置とが重ね合わされた状態で、光ファイバからの出射光をカメラ手段の画像センサにより画像処理された画像を入力する画像入力ステップ。
2)光ファイバに予め割り当てられた識別タグを入力するタグ入力ステップ。
3)画像の色情報に応じた被測定物の状態変状のデータ出力を行うための色の閾値を設定する閾値設定ステップ。
4)入力画像と識別タグを関連付けするタグ関連付けステップ。
5)入力画像の色情報と閾値を比較してデータ出力を行うデータ出力ステップ。
【0020】
)入力画像から、複数の光ファイバの端部の整列位置を判別し得るマーカを検出するマーカ検出ステップ。
7)マーカの位置に基づいて、複数の光ファイバの各端部からの出射光に対応する複数の分割された画像領域の色情報を検知する色情報検知ステップ。
【0022】
本発明の状態変状検知装置は、撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、分割された画像領域(セル)の内、予め被測定物と関連付けられた画像領域であることでもよい。予め被測定物と関連付けられた画像領域だけを検知対象とすることで、被測定物と関連付けられない画像領域については検知対象から外すことができ、必要な箇所のデータだけを効率的を取得することが可能となる。
【0023】
本発明の状態変状検知装置は、撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、分割された画像領域の内、特定の領域であることでもよい。分割された画像領域の内、特定の領域だけを検知対象とすることで、必要なデータをより効率的に取得することが可能となる。
【0024】
本発明の状態変状検知装置は、撮影画像において、状態変状検知の対象となる領域は、所定の光帯域における所定の画素値の範囲内にある領域であることでもよい。所定の光帯域にある領域だけを検知対象とすることで、必要な箇所のデータだけを効率的を取得することが可能となる。更に、所定の画素値の範囲内にある領域だけを検知対象とすることで、明る過ぎる箇所や暗すぎる箇所については検知対象から外すことができ、必要なデータをより効率的に取得できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光ファイバから伝送される光情報を情報端末で分析して、自然又は人工の構造物の状態変状を検知し、防災、減災、構造物の維持管理など多様な目的でモニタリングを行えるといった効果がある。本発明によれば、従来のモニタリングシステムと比較し、モニタリングにおけるシステム導入コストの大幅な削減を行えるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の状態変状検知装置の構成説明図
図2】状態変状をセンシングできる光ファイバセンサの説明図
図3】構造物内部の状態変状のセンシングの概念図
図4】状態変状検知装置の概念図
図5】状態変状検知装置の機能説明図
図6】本発明の状態変状検知装置を用いた防災管理システムの概念図
図7】位置決め治具の一例の説明図
図8】光ファイバ端部の配置とスマートフォンの撮影画像の一例
図9】マーカの説明図
図10】状態変状検知プログラムの処理フロー図
図11】危険斜面の土砂災害の危険度のモニタリングの説明図
図12】従来のモニタリングシステムの説明図
図13】実施例3の状態変状検知装置の使用イメージ図
図14】光源画像の撮像イメージ図
図15】検知領域画定の説明図
図16】実施例4の通信形態のバリエーション例
図17】状態変状検知装置の構成イメージ図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、自然又は人工的な構造物の状態変状の発生、進展、危険度増大をモニタリングするための状態変状検知技術であり、以下、本発明の実施形態の一例を、自然構造物の一つである危険斜面の例について図面を参照しながら詳細に説明していく。本発明における被測定物は自然構造物に限られず、人工構造物にも適用可能である。
ここで、自然構造物とは、道路脇や住宅地周辺の自然斜面、自然河川堤防、など土質材料および岩盤などで形成されている自然地形の一部を指す。また、豪雪地帯において雪崩の危険性を検討するときの雪も対象となる。また、人工構造物とは、大きく分けて土木構造物、建築構造物およびそれらを建設する際に用いる建設機械を指す。土木構造物とは、橋梁、送電や通信用の鉄塔、ダム、トンネル、盛土、埋立地、人工河川堤防、人工斜面などを指し、建築構造物とは、一般住宅、高層ビル、公共建築物(美術館、学校、駅舎、体育館など)、大規模レジャー施設(コンサートホール、スポーツスタジアム、観覧車、ジェットコースターのレールなど)、イベント会場仮設構造物などを指し、建設機械とは、特に大型クレーン、大型重機のようにオペレータが必要で工事中には周辺に住民もしくは作業員が近づく可能性があるものを指す。
【0028】
本発明の状態変状検知装置1は、図1に示すように、カメラ手段を備える携帯端末10と、被測定物に接続された1本又は複数本の光ファイバ11と、カメラ手段のレンズ位置と光ファイバの一方の端部位置とを重ね合わせる位置決め治具12を含む構成である。図1(1)は、1本の光ファイバ11の一端と携帯端末10のカメラレンズとが、位置決め治具12を介して接続され、光ファイバ11の他端は光ファイバセンサ3として機能し、1つの被測定物2に接続されている。図1(2)は、複数本の光ファイバ11の一端が束ねられたものと携帯端末10のカメラレンズとが、位置決め治具12を介して接続され、複数本の光ファイバ11の各々の他端はそれぞれ光ファイバセンサ3として機能し、1つの被測定物2の異なる箇所に接続されている。図1(3)は、複数本の光ファイバ11の一端が束ねられたものと携帯端末10のカメラレンズとが、位置決め治具12を介して接続され、複数本の光ファイバ11の各々の他端は光ファイバセンサ3として機能し、4つの被測定物2a~2dに接続されている。
図1(1)~(3)において、携帯端末10は、光ファイバ11からの出射光をカメラ手段の画像センサが画像処理し、処理した画像の色情報から被測定物の状態変状を検知する。
【0029】
本発明における光ファイバは、コスト面と設置のし易さから、プラスチック製光ファイバ(POF)を用いるが、これに限定されるものではなく、ガラス製光ファイバを用いることもできる。また、本発明において、被測定物には光ファイバを接続するが、被測定物の表面と距離をおいて取り付ける場合、表面に取り付ける場合、被測定物の内部に差し込む場合、内部に埋め込む場合など様々な接続の仕方があり、被測定物の特性や状態に応じて適宜選択することでよい。また、本発明において、被測定物の状態変状は、それをセンシングできるセンサによって検知されるが、かかるセンサは状態変状に応じて光を出力することが必要とされる。状態変状に応じて光を出力するとは、状態が変われば光を出すものでもよく、状態変状量に応じて光の強度や色が変化するものでもよい。あるいは、通常時は光を出しており、状態が変われば光が遮断されるなど光を出さなくするものでもよい。
【0030】
光ファイバにより、状態変状をセンシングできるセンサとして、例えば、図2(1)~(4)に示す光ファイバセンサがある。図2(1)では、1本の光ファイバでセンサが構成されるものであり、任意の光源から発せられた光が被測定物2に反射又は透過するなどして光ファイバに入ることによりセンサとして機能するものである。光ファイバ先端部周辺で起きる事象がセンシング対象となる。図2(2)~(4)は、2本の光ファイバで構成される光ファイバセンサを示している。図2(2)では、ファイバ1に送り込んだ光Lがその端部からLとして外に出て、被測定物2に反射するなどしてLとしてファイバ2に入ったLが計測される方式のセンサとして機能するものであり、2本のファイバ先端部周辺で起きる事象がセンシング対象となる。図2(3)では、ファイバ1に送り込んだ光Lがその端部からL2bとして外に出て、被測定物2に反射してLとしてファイバ2に向かい、また、ファイバ1から出た光L2aは、被測定物2を透過しながらファイバ2に向かい、L2aとL2bが最終的にLとして計測される方式のセンサとして機能するものであり、2本のファイバの先端間のギャップ周辺で起きる事象がセンシング対象となる。図2(4)では、ファイバ1に送り込んだ光Lはその端面を通過し、屈折してLとして外に出ていき、反射した光Lがファイバ2の方向に向かい、Lの一部はファイバ1を出てL´として側面からファイバ2に侵入し、再び、屈折光Lと反射光Lに分かれる。Lの明るさや色は、周辺物質の光の屈折率に依存することから、このタイプのセンサでは、周辺物質の光の屈折率が変化する事象がセンシング対象となる。周辺物質の光の屈折率が変化する事象とは、例えば、周辺に存在する物質が変化するもの(気体から液体へ、逆に液体から気体へなど)や、周辺物質の相変化によるもの(固体から液体、水の場合には凍結、融解)などである。光ファイバセンサを危険斜面の土砂内に埋め込むことにより、斜面の土砂の状態変状を光情報として取り出すことができる。図3(1)(2)は、それぞれ図2(2)と図2(3)で説明した光ファイバセンサを土砂内に埋め込んだ様子を示している。
【0031】
上述した光ファイバセンサの場合には、光によるセンシングが行われる部位だけに限定して考えると、電力に依存する装置や電源は不要である。本発明では、センサの光情報を光ファイバで伝送し、伝送された光情報を携帯端末のカメラで画像処理することから、システムのコストダウンが可能である。取得したデータ分析は、携帯端末で行えることから、高価なデータロガーや分析用コンピュータなどを導入する必要がなく、大幅なコストダウンが可能である。
【0032】
本発明における位置決め治具は、携帯端末のカメラのレンズ位置と光ファイバの端部位置が対向するように繋ぐソケットタイプの治具や、携帯端末自体を設置又は装着する受け台にカメラレンズ用のホールが設けられ、ホールの底に光ファイバの端部が固定されたホールタイプの治具を使用できる。
【0033】
ソケットタイプの治具は、携帯端末のカメラレンズの周辺を覆うハウジングを備えると共に、携帯端末に固定されるものが好ましい。スマートフォンやタブレット端末のカメラレンズは端末表面に段差なく埋め込まれているため、携帯端末自体にクリップ方式などで治具を固定して、カメラレンズの周囲がソケットのハウジングで覆われるようにソケットタイプの治具を取り付ける。携帯端末に治具を取り付けると、携帯端末のカメラのレンズ位置に対向する位置に、光ファイバの端部位置が来るように、ハウジングをデザインする。例えば、ハウジングが円筒形状であれば、一方の開口部はカメラのレンズに向け、他方の開口部は光ファイバの端部を配置した部材で蓋をする。携帯端末のカメラはオートフォーカス機能によって、ピントが自動調整されるが、本発明においては、ピント調整は不要である。すなわち、光ファイバの端部からは光が出射され、出射光の色情報によって、状態変状を検知することから、ピントが合っていなくても問題はない。複数の光ファイバの端部が整列している場合においても、個々の光ファイバの映像がオーバーラップしない範囲内であれば、それらの映像のピントが完全にあっている必要はない。そのため、円筒形状のハウジングは、外光を遮断できればよく、カメラレンズと光ファイバの端部との間の距離合わせは特段に精密である必要はない。カメラのフラッシュを用いて、光ファイバの端部を識別するマーカを読み取る場合には、カメラレンズとフラッシュ窓の周囲を覆うハウジング形状にする。
【0034】
一方、ホールタイプの治具は、携帯端末自体を設置又は装着する受け台と、その受け台にカメラレンズ用のホールが設けられる。受け台は、携帯端末の形状に合わせた形状にすることにより、ユーザが携帯端末の置き方を把握しやすい。受け台は、水平面で携帯端末を受けるものだけでなく、携帯端末を把持し支えるものでもよい。カメラレンズ用のホールは、携帯端末の形状に合わせた形状であれば、カメラレンズの位置に対応する位置にホールが設けてもよいし、受け台の中央付近にホールを設けて、ユーザがホール位置にカメラレンズの位置がくるように携帯端末を置く運用とすることでもよい。ホールの底部には、光ファイバの端部が配置されている。ソケットタイプの治具と同様に、精密なピント合わせが不要であり、またカメラのフラッシュで光ファイバの端部を識別するマーカを読み取る場合には、カメラレンズのみならずフラッシュ窓まで含むホールの大きさにする。
【0035】
本発明において、複数の光ファイバを用いる場合には、各々の光ファイバの光情報が、どの被測定物のどの測定場所に由来する情報であるのかを特定する必要がある。光ファイバの端部の整列位置に識別番号を割り当て、画像内で複数の光情報を識別するために、複数の光ファイバの端部の整列位置を判別できるマーカを設ける。マーカについては、3点マーカ、2点マーカ、1点マーカについて後述する。
【0036】
本発明において、携帯端末は、光ファイバからの出射光をカメラの画像センサが画像処理し、処理した画像の色情報から被測定物の状態変状を検知する。画像の色に応じたデータ出力を行うため、色の閾値は予め設定されており、携帯端末のメモリに閾値テーブルとして記憶されている。閾値テーブルには、例えば、色を指定するためのRGB値(0~255の値)とRGB値から算出できるHSV値を用いて、色の閾値が指定されている。閾値によって、画像の色に応じて、警告、注意などの通知をデータ出力することができる。データ出力は、画面上のメッセージや図形の表示、アラーム音、バイブ鳴動、ライト点灯、データ通信による外部へのメール送信などがある。なお、閾値の設定については、被測定物の特徴に応じて、RGB値とHSV値の6つの値の何れか一つ、もしくは複数の値を適宜に選択し、最適な設定を行えばよい。例えば、RGB値の3つの値を同時に使って判定することでもよいし、H値(0~360という色番号)を使って判定することでもよいし、V値(単に明るさだけ)を使って判定することでもよい。
以下、具体的な実施例について詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0037】
本発明の状態変状検知装置の一実施形態の構成図を図4に示す。図4に示す状態変状検知装置1は、スマートフォン10と、危険斜面の複数個所に接続された複数のPOF11と、スマートフォンのカメラ110位置とPOF11の端部位置とを重ね合わせる位置決め治具12を含む構成である。スマートフォン10は、POF11の端部からの出射光を、位置決め治具12を通して、カメラ110で画像撮影する。スマートフォン10には、状態変状検知アプリ(プログラム)が搭載されており、カメラの画像センサで処理された画像の色情報から危険斜面の変位、傾斜角の変化、土砂の動きなどの多様な変状を検知し、状態変状検知アプリ画面で、変化量に関する時系列の折れ線グラフを表示し、また必要に応じてアラーム音を出力すると共に外部サーバにデータ出力できる。図4の場合には、2本のPOF11が準備され、1本は被測定物2に対して、スマートフォン10のLED111から白色光を供給し、もう1本は被測定物2からの反射光を光情報として伝送するものである。土砂災害危険箇所内の多数点にPOF11を配置して、土粒子や地下水の動きに関する光情報をPOF11端部から観測する。
なお、スマートフォン10のLED111からPOF11側に白色光を供給する以外に、スマートフォン10もしくはその周辺にLED光源を有する装置を装着して、LED光源から白色光あるいは特定の色の光をPOF11側に供給することもできる。
【0038】
POFの光情報をスマートフォンに搭載されたアプリが分析し、ユーザに斜面の危険度を画面表示すると共に外部のサーバコンピュータにデータ通信するイメージ、すなわち、本発明を用いた防災管理システムのイメージを図5に示す。スマートフォン10は、搭載されたカメラにより複数のPOF11の端部から出射される光情報を光ファイバ端部画像101として取得し、スマートフォン10のアプリが各端部の色情報を分析し、分析結果をリアルタイムで分析し、データ画面102に表示して周辺の危険度をユーザに告知すると共に、クラウドサーバ4にアップロードすることができる。
すなわち、図6に示すように、変位、振動、傾斜、濁度、地下水位、物質移動などをセンシングできるセンサ群を光ファイバセンサ3で構築してモニタリング対象に接続し、多数のPOF11により光ファイバセンサ3から得られる光情報を伝送し、状態変状検知装置1で画像処理して状態変状を検知する。検知した状態変状データは、クラウドサーバ4(ウェブサーバ)にアップロードされ、自治体などでは、アップされた分析データから、周辺地域の安全度を確認し、専用ウェブサイトにアップし、また、必要に応じて住民の携帯端末やPCに対してアラームを告知することが可能になる。
【0039】
次に、位置決め治具について、図7を参照して説明する。図7に示すように、位置決め治具12は、スマートフォン10を載置できる受け台123に、スマートフォン10のカメラレンズをセットできるホール124が設けられ、複数本のPOF11のケーブル束を取り込み、ホール124の底部の配置パネル122にPOF端部120が固定されている。
スマートフォン10自体は、カメラレンズ110位置が受け台123のホール124位置と重なるように受け台123に装着される。スマートフォン10のカメラ機能でホール124内部の配置パネル122に整列されたPOF端部120を撮影する。
【0040】
POF端部の配置とスマートフォンの撮影画像の一例について、図8を参照して説明する。図8に示すように、10×10の格子内に96本の各POF端部120が配置パネル122に配置されている。スマートフォン10の撮影画像(光ファイバ端部画像)101には、96本のPOF端部が10×10の格子内に配列されている様子が映っている。四隅の内、3か所の隅には、QRコード(登録商標)と同様に3点のマーカ121が配置されている。スマートフォン10のアプリがマーカ121を認識することにより画像の向きを確定する。アプリは格子毎に色情報を取得できる。位置決め治具のハウジング(図示せず)により、外光が遮断されるため、マーカ121がカメラ画像に映らず認識できない場合には、スマートフォンのカメラのフラッシュ機能によって、まずマーカ121を認識させて画像の向きを確定させることができる。あるいは、POF端部120の配置パネル122の背面側(カメラ位置側を正面側)に光源を設け、マーカ121の後ろから光を与えてマーカ121を明確に特定させて画像の向きを確定させることもできる。
【0041】
また、光ファイバの端部からの出射光がスマートフォンの表面又はカメラレンズ表面で反射して、光ファイバの端部が配置されたハウジング面にさらに反射することにより、端部からの出射光と反射光が混在して正しく検知できないことを回避すべく、カメラレンズと光ファイバの端部との間に、透明の反射防止フィルムを設けてもよい。
【0042】
スマートフォンのカメラには、リアルタイム映像を表示できる機能が搭載されており、常時カメラを起動してリアルタイムに斜面の状態を連続監視することができる。なお、リアルタイム映像ではなく、一定のサンプリング時間(例えば、30秒毎)で写真撮影して画像処理して状態変状を検知することでもよい。変状の兆候が見られれば、サンプリング時間の間隔を短くする。
【0043】
スマートフォンの状態変状検知アプリは、光ファイバからの出射光をカメラの撮影した画像の色情報から、被測定物の状態変状を検知する。画像の色に応じて出力するアラーム音を変化させるために、例えば、下記表1に示す閾値テーブルに、色の閾値が予め設定されている。表1に示す閾値テーブルでは、2種の正常、注意、警告、危険といったように、状態変状の程度に応じて5段階のレベルに分けられ、アラーム音が設定されている。
【0044】
【表1】
【0045】
本実施例では、POF端部の配置パネルに設けるマーカとして、3点マーカを用いたが、図9(1)に示すように1点マーカ121aでもよい。1点マーカ121aは、マーカの形状に特徴を持たせ、その形状によりX-Y方向を決定できる。また、図9(2)に示すように2点マーカ121b,121cでもよい。2点マーカ121b,121cを用いて、POF端部の整列面のX-Y方向を決定できる。マーカ121bとマーカ121cの位置を画像内で検出し、マーカ121bを基準点(原点)にして、マーカ121b→121cの方向がX軸と認識し、マーカ121bを原点にして、X軸に垂直な方向をY軸と認識することで、それぞれのマーカにより、各POF端部の識別が可能である。
【実施例2】
【0046】
本発明の状態変状検知プログラムの処理フローの一例について説明する。図10は、状態変状検知プログラムの処理フロー図を示している。本発明の状態変状検知プログラムは、実施例1の状態変状検知装置1の携帯端末(スマートフォンなど)10に搭載されるアプリケーションプログラム(以後、単にアプリともいう)である。
図10のフローに示すように、まず、アプリを起動させて、コンピュータに識別タグを入力するステップを実行させる(ステップS01)。識別タグの入力の仕方は、アプリの画面から識別タグの番号を入力(又は選択)するか、位置決め治具12に付されたバーコードタグを読み込む。次に、コンピュータにカメラ画像を入力するステップを実行させる(ステップS02)。実施例1のホールタイプの位置決め治具12に携帯端末10をセットし、位置決め治具12のホール底部のPOF端部120をカメラ撮影し、POF端部画像101を取得し、それを入力する。
【0047】
次に、入力したPOF端部画像101と識別タグの関連付けを行う(ステップS03)。識別タグから、位置決め治具12に接続されているPOF情報を取得できる。POF情報とは、POF11が何本あって、それらの測定対象が何か、すなわち、どこの被測定物のどこの測定箇所を測定しているのかといった情報である。
【0048】
次に、入力したPOF端部画像101に基づいて、複数のPOF端部120に対応する色情報を取得する(ステップS04)。識別タグと関連付けされたPOF端部画像101では、画像上のどの色がどのPOF11から由来するものであるかを特定することができる。そして、個々のPOF端部120の色情報とPOF11に接続された被測定物に関する設定閾値を比較して、必要に応じてアプリにアラーム用画面を表示し、アラーム音を出力する(ステップS05)。
なお、ステップS04で、POF端部画像101に実施例1で説明したようなマーカ121が配置され、複数のPOF11の並び向きやアドレスが特定できるようになっており、複数のPOF端部120がどのPOF11の端部であるかを特定することができる。
【実施例3】
【0049】
図13は、実施例3の状態変状検知装置の使用イメージ図であり、(1)は光源の発光イメージ、(2)はカメラを用いた撮像イメージを示している。図13(1)に示すように、地盤6は斜面となっており地滑りがしやすい形状となっている。地盤6には、光源(9a~9e)が配置されているが、これらは例えば、辺りを照らすために配置された街灯などのライト等である。光源としては、ライト以外にも発光するものを広く用いることができるが、それ自体が発光するものに限られず、例えば、光を受けて反射する構造を有するものでもよい。
図13(1)に示すように、地盤6には光源(9a~9e)が配置されている。そこで、図13(2)に示すように、カメラ10aを用いて変状の検知を行う。具体的には、カメラ10aにより複数の光源(9a~9e)から出射される光情報を光ファイバ端部画像として取得し、取得した画像情報を図示しない情報端末に送信し、当該情報端末のアプリが各端部の色情報を分析し、分析結果をリアルタイムで分析し、データ画面に表示して周辺の危険度をユーザに告知すると共に、クラウドサーバにアップロードすることができる。
なお、情報端末としては、スマートフォン以外に、タブレット端末等の携帯端末を用いてもよいし、PCを用いてもよい。
【0050】
実施例3の状態変状検知装置においても、実施例1と同様に、入力した光源画像と識別タグの関連付けを行う。識別タグの入力の仕方は、アプリの画面から識別タグの番号を入力(又は選択)して行う。識別タグから取得できる光源情報は、光源の数や、それらがどこに存在するかといった情報であるが、実施例1の状態変状検知装置1のように全てのPOF端部が縦横に整列された場合とは異なり、ランダムに配置された光源の画像を取得するため、識別タグから取得する光源情報についても異なることとなる。そこで、実施例3の状態変状検知装置において、識別タグから取得する光源情報について説明する。
【0051】
図14は、光源画像の撮像イメージ図を示している。図14に示すように、光源画像101aには、10×10の計100個のセルがイメージとして表示されている。各セルには全て光源が配置されているわけではないが、各セルに全て光源が整列して配置されると見立てた上で、その中の一部のセルを検知領域として把握している。すなわち、図14に示す例では、セル5aに光源9a、セル5bに光源9b、セル5cに光源9c、セル5dに光源9d、またセル5eに光源9eが配置されることが、光源情報として紐付けられている。
【0052】
画像中において変状を検知する領域を限定することができれば、少ないデータ量で高精度に変状を検知することが可能になる。
図15は、検知領域画定の説明図であり、(1)は9分割による領域画定、(2)は中央部による領域画定を示している。図15(1)に示す例は、実施例3で用いた手法であり、セル5を領域(50a~50i)に9分割することで検知領域を限定する。すなわち、光源が存在する領域だけを考慮することで、光源が存在しない領域については考慮しないことが可能になる。
【0053】
具体的には、セル5中において、光源9fが存在する領域だけを考慮したい場合には、セル5中の領域50aを考慮するものとして定義する。また、光源9gのように、光源が存在する位置が複数の領域に跨っている場合には、セル5中の領域(50c,50f)を考慮するものとして定義する。同様に、光源9hが存在する領域だけを考慮したい場合には、セル5中の領域(50d,50e,50g,50h)を考慮するものとして定義する。
また、本実施例とは異なり、実施例1のようにセル5の中央にPOF端部120aが存在することが判っている場合には、図15(2)に示す領域50jのように、中央部の領域を予め画定することでもよい。中央部の領域50jに限定することで、データ取得したい位置を効果的に限定できる。
【0054】
なお、画像センサが処理した画像において、状態変状検知の対象となる領域を、所定の光帯域における所定の画素値の範囲内にある領域としてもよい。検知対象となる光帯域や明るさを一定の範囲に限定することで、必要な箇所のデータだけを効率的を取得することが可能となる。
【実施例4】
【0055】
図16は、通信形態のバリエーション例を示している。図16(1)に示す例は、実施例1の状態変状検知装置1における通信形態であり、スマートフォン10のカメラレンズを用いて、複数本の光ファイバ11の端部であるPOF端部120を撮影する。
これに対して、図16(2)に示す状態変状検知装置1aにおける通信形態では、スマートフォン10に外部接続されたカメラ10bを用いて、複数本の光ファイバ11の端部であるPOF端部120を撮影する。このように、カメラ手段は、必ずしも携帯端末に内蔵されたものに限られず、外部接続されたものでもよい。
【0056】
また、図16(3)に示す状態変状検知装置1bにおける通信形態では、カメラ10bを用いて、複数本の光ファイバ11aの端部であるPOF端部120bを撮影する。カメラ10bにより撮像された画像は、インターネット7を介してPC8に送信され、PC8のディスプレイ上にPOF端部画像101bが表示される。そして、PC8のディスプレイ上に表示されたPOF端部画像101bを更に複数本の光ファイバ11bの一端と直接または間接に接続する。スマートフォン10を用いて、複数本の光ファイバ11bの他端であるPOF端部120cを撮影する。
このように、光ファイバが被測定物に接続されるとは、直接に接続されることに限られず、光ファイバが、別の光ファイバや、カメラ、インターネット、PC等の情報端末、などを介した上で間接的に被測定物に接続されることでもよい。
【0057】
図16(4)に示す状態変状検知装置1cにおける通信形態では、カメラ10bを用いて、複数本の光ファイバ11の端部であるPOF端部120を撮影する。カメラ10bにより撮像された画像は、インターネット7を介してPC8に送信され、PC8のディスプレイ上にPOF端部画像101bが表示される。PC8は、予めインストールしたアプリを用いて、POF端部画像101bを処理する。
このように、情報端末としてPC8を用いることで、PC8そのものにインストールしたアプリを用いて、インターネット7を経由して届いたPOF端部画像101bを処理することが可能である。
【0058】
図17は、状態変状検知装置の構成イメージ図を示している。図17に示すように、本発明の状態変状検知装置によれば、世界各地に多様な種類のカメラ(10a~10c)を多数配置し、カメラ(10a~10c)により撮像された画像を、インターネット(図示せず)を介して、PC8で処理するといったことも可能である。ここでは1台のPC8のみを図示しているが、システムの規模等に合わせて、複数台のPC8やその他のサーバを利用することも可能である。
このように、世界中の任意の位置で行うモニタリングの結果を、どこにいても分析できる仕組みが構築できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、防災、減災、構造物の維持管理、その他、日常的に必要となるモニタリング、例えば、児童の理科教育や防災教育など多様な分野にモニタリングシステムとして展開できる。
【符号の説明】
【0060】
1,1a~1c 状態変状検知装置
2,2a~2d 被測定物
3 光ファイバセンサ
4 クラウドサーバ
5,5a~5e セル
6 地盤
7 インターネット
8 PC
9a~9h 光源
10 携帯端末(スマートフォン)
10a~10c,110 カメラ
11,11a,11b 光ファイバ(POF)
12 位置決め治具
50a~50j 領域
101,101b POF端部画像
101a 光源画像
102 分析データ画面
111 LED
120,120a~120c POF端部
121 マーカ
122 配置パネル
123 受け台
124 ホール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17