(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20241106BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20241106BHJP
G07D 11/40 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
A61L2/14
H05H1/24
G07D11/40
(21)【出願番号】P 2020218051
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520514827
【氏名又は名称】学校法人青葉学園
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】栗原 崇
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
(72)【発明者】
【氏名】末永 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】中井 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大澤 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 篤郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 有里子
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-503781(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0043028(KR,A)
【文献】中国実用新案第2747641(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/14
H05H 1/24
G07D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を殺菌処理するプラズマ処理装置であって、
供給された誘導ガスから大気圧においてプラズマを生成するプラズマ生成部と、
所定の搬送方向に沿って前記被処理物を通過させるプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に設けられ、前記プラズマ処理室内を通過する前記被処理物の一方の表面を支持する支持部と、
を備え、
前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とは、隔離壁により隔てられており、
前記隔離壁には、前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とを連通する1又は複数の貫通孔が形成され、
前記プラズマ生成部において生成されたプラズマは、前記貫通孔を介して前記プラズマ処理室に導入されて前記被処理物
の少なくとも一方の表面を殺菌処理
し、
前記被処理物の一方の表面において前記支持部により支持されない非支持範囲は、前記被処理物の通過に伴って変更され、前記プラズマ処理室内の前記被処理物の通過が完了した時点で、前記被処理物の表面の全ての領域に及ぶように設定されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記貫通孔には、前記誘導ガスの流れ方向を前記搬送方向の排出側に向かうように案内するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記貫通孔の開口面積は、前記誘導ガスの流れ方向の上流側から下流側に向かって拡大するように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記誘導ガスの流れ方向の上流側から下流側に向かって前記搬送方向と直交する幅方向の外側に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載のプラズマ処理装置を内部に備えた貨幣処理装置であって、
前記被処理物は、貨幣であり、
前記プラズマ処理装置は、外部から投入された前記貨幣を殺菌処理することを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項6】
被処理物を殺菌処理するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
供給された誘導ガスから大気圧においてプラズマを生成するプラズマ生成部と、
所定の搬送方向に沿って前記被処理物を通過させるプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室内に設けられ、前記プラズマ処理室内を通過する前記被処理物の一方の表面を支持する支持部と、
を備え、
前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とは、隔離壁により隔てられており、
前記隔離壁には、前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とを連通する1又は複数の貫通孔が形成され、
前記プラズマ生成部において生成されたプラズマは、前記貫通孔を介して前記プラズマ処理室に導入されて前記被処理物
の少なくとも一方の表面を殺菌処理
し、
前記被処理物の一方の表面において前記支持部により支持されない非支持範囲は、前記被処理物の通過に伴って変更され、前記プラズマ処理室内の前記被処理物の通過が完了した時点で、前記被処理物の表面の全ての領域に及ぶように設定されていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びそれを備えた貨幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、ウィルスや細菌等(以下、ウィルス等という)の流行により深刻な社会問題を引き起こすことがある。ウィルス等の流行を防ぐ1つの方法として、ウィルス等が付着した可能性のある物品や箇所を洗浄等して殺菌することが考えられている。
【0003】
一方、我々の社会生活の中では多くの貨幣が流通しており、ウィルス等の保菌者が貨幣に触れることでウィルス等が貨幣に付着し、その貨幣に触れた他人がウィルス等に感染する可能性がある。そのため、貨幣に付着したウィルス等を殺菌するニーズが存在する。
【0004】
例えば、特許文献1,2には、計数機自体を紙幣消毒機の筐体内にセットし、計数機の外部に露出して集積された紙幣に陰イオンを噴射して殺菌する紙幣消毒機が開示されている。また、特許文献3には、大気圧プラズマの殺菌作用を利用して、被処理物に付着したウィルス等を殺菌するプラズマ処理装置技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-2458号公報
【文献】特開2017-23682号公報
【文献】特開2015-72913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された紙幣消毒機では、計数機による紙幣の計数処理とは別に殺菌処理を行う必要があり、紙幣の入出金処理を高速に行うことが要求される貨幣処理装置には適用できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献3に開示されたプラズマ処理装置では、プラズマ生成部から被処理物までの物理的な距離が離れているため、プラズマ生成部で発生したプラズマが被処理物に到達するまでにイオン濃度が減少し、十分な殺菌効果が得られない虞がある。
【0008】
さらに、特許文献3に開示されたプラズマ処理装置を貨幣処理装置に適用して紙幣に付着したウィルス等を殺菌する場合、貨幣処理装置で処理される紙幣は、搬送ローラで送られるとともに搬送路上を摺動するように搬送されるため、大気圧プラズマを紙幣の両面に一度に晒すことができなった。また、紙幣の表裏を反転させて搬送路を往復させることで紙幣の両面を大気圧プラズマに晒すことも考えられるが、紙幣の表裏を反転させて搬送させる時間が必要となり、貨幣処理装置の処理速度が遅くなるという問題があった。
【0009】
そこで、被処理物に付着したウィルス等を高速で殺菌するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るプラズマ処理装置は、被処理物を殺菌処理するプラズマ処理装置であって、供給された誘導ガスから大気圧においてプラズマを生成するプラズマ生成部と、所定の搬送方向に沿って前記被処理物を通過させるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理室内に設けられ、前記プラズマ処理室内を通過する前記被処理物の一方の表面を支持する支持部と、を備え、前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とは、隔離壁により隔てられており、前記隔離壁には、前記プラズマ生成部と前記プラズマ処理室とを連通する1又は複数の貫通孔が形成され、前記プラズマ生成部において生成されたプラズマは、前記貫通孔を介して前記プラズマ処理室に導入されて前記被処理物の少なくとも一方の表面を殺菌処理し、前記被処理物の一方の表面において前記支持部により支持されない非支持範囲は、前記被処理物の通過に伴って変更され、前記プラズマ処理室内の前記被処理物の通過が完了した時点で、前記被処理物の表面の全ての領域に及ぶように設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、プラズマ生成部とプラズマ処理室とが隔離され、大気圧においてプラズマが安定して生成されることにより、被処理物がプラズマ処理室内を搬送される間に、被処理物の全面が大気圧プラズマに晒されるため、被処理物を高速で殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る貨幣処理装置の一実施形態である紙幣処理装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】(a)は
図2のb-b線断面図であり、(b)は
図5(a)のd部拡大図である。
【
図5】(a)は
図2のc-c線断面図であり、(b)は
図6(a)のe部拡大図である。
【
図8】紙幣が支持部に支持されない非支持部範囲を示す平面図である。
【
図9】スリット状の貫通孔を設けた第2の電極を示す底面図である。
【
図10】搬送方向に沿って貫通孔の幅を徐々に拡幅した第2の電極を示す底面図である。
【
図11】搬送方向に沿って貫通孔の間隔を徐々に狭くした第2の電極を示す底面図である。
【
図12】(a)は搬送方向に対して傾斜する貫通孔を示す断面図であり、(b)は傾斜部及び誘導板を設けた貫通孔を示す断面図であり、(c)は漸次縮径する貫通孔を示す断面図であり、(d)は漸次拡径する貫通孔を示す断面図である。
【
図13】1組の第1の支持部及び第2の支持部を搬送方向に2組設けた構造を示す平面図である。
【
図14】第1の支持部及び第2の支持部を搬送方向に徐々に高くなるように形成した構造を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示す第1の支持部及び第2の支持部の側面図である。
【
図16】紙幣をプラズマ処理装置内で側面から視てU字状に搬送する場合の模式図である。
【
図17】(a)は円柱状の支持部を千鳥状に配置した構造を示す平面図であり、(b)は波状の支持部を配置した構造を示す平面図である。
【
図18】搬送路の一部に貫通孔を形成して支持部を形成した構造を示す平面図である。
【
図19】第2の電極に支持部を形成した構造を示す斜視図である。
【
図20】支持部としてローラを用いた構造を示す側面図である。
【
図21】生成される大気圧プラズマを紙幣に作用させる直接方式と予め生成された大気圧プラズマを紙幣に作用させる間接方式とを併用した構造を示す側面図である。
【
図22】本発明の第1の実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【
図24】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈第1の実施の形態〉
本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置1について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
〈貨幣処理装置〉
本発明に係る紙幣処理装置の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1は、紙幣の入出金処理等を行う紙幣処理装置1の構造を示している。紙幣処理装置1は、その前面側の上部に、機外からバラ紙幣が投入されるとともに機内から出金用のバラ紙幣が繰り出される入出金部2を備えている。
【0017】
入出金部2は、その底部を構成する載置板3が後下がりに傾斜した姿勢で昇降可能に設けられており、その奥側の支承面4が載置板3と直交するように後上がりに傾斜して設けられている。入出金部2には、紙幣が長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で載置板3上に集積されることになり、紙幣は載置板3の傾斜により後端縁が支承面4に当接する。
【0018】
入出金部2の上部の後側には、載置板3上に集積されたバラ紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて機内へ繰り出すとともに機内からの紙幣を入出金部2に繰り出す繰出部2aが設けられている。
【0019】
入出金部2の下側には、紙幣処理装置1の前面位置に、受け付け不可と判定された入金リジェクト紙幣が機内から繰り出される入金リジェクト部5が設けられている。入出金部2および入金リジェクト部5の後側には、出金不可と判定された出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト部6が設けられており、出金リジェクト部6の後方の下部には紙幣を識別する識別部7が設けられている。
【0020】
また、出金リジェクト部6の後方の上部には紙幣を整列させて所定の結束枚数集積させる整列部8が設けられており、この整列部8の上部には、整列部8で集積された結束枚数の紙幣に結束テープを巻き回して小束紙幣とする結束部9が設けられている。この結束部9の前側には結束部9で作成された小束紙幣を機外に繰り出す束出金部10が設けられている。
【0021】
また、紙幣処理装置1の下部には、5台の紙幣収納箱11が上下左右の位置を合わせて紙幣処理装置1の前後方向に配列されている。最も奥側に配置された紙幣収納箱11、奥から2番目に配置された紙幣収納箱11および奥から3番目に配置された紙幣収納箱11は、いずれも入金確定後の所定の単一金種のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納するものであり、前から2番目に配置された紙幣収納箱11は、入金確定後のバラ紙幣を金種混合で上下に集積させた状態で収納するものである。最も前側に配置された紙幣収納箱11は、入金された入金確定前のバラ紙幣を上下に集積させた状態で一時貯留するものである。
【0022】
紙幣収納箱11の上部には、その内部に紙幣を繰り出すとともに内部の紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して繰り出す繰出部11aと、繰出部11aで繰り出す紙幣を検知する繰出検知センサ11bとが設けられている。繰出検知センサ11bは繰出部11aの駆動中に紙幣の停滞を検知することでジャム等の繰り出し異常も検知する。紙幣収納箱11の内部には、紙幣を集積させる昇降可能なエレベータ11cと、収納している紙幣が満杯に近いニアフル状態にあることを検知するニアフル検知センサ11dと、収納している紙幣がないエンプティ状態にあることを検知するエンプティ検知センサ11eとが設けられている。
【0023】
紙幣処理装置1の内部には、紙幣を搬送する紙幣搬送路12が各部を適宜繋ぐように設けられている。紙幣搬送路12は、繰出部2aから後上がりに延出した後、後下がりに延出し、さらに鉛直下方に延出し、その後、前側に一端延出した後、下側にて後側に折り返し、後方に延出し、後述するプラズマ処理装置20を通過し、識別部7を通って下方に若干延出する搬送路12Aと、搬送路12Aに連続して下側に若干延出した後に前方に延出し前端から下方に若干延出する搬送路12Bと、搬送路12Bに連続するように最も前側に配置された紙幣収納箱11に設けられた搬送路12Cとを有している。
【0024】
また、紙幣搬送路12は、搬送路12Bの途中から分岐する搬送路12Dと、搬送路12Dに連続するように最も奥側に配置された紙幣収納箱11に設けられた搬送路12Eと、搬送路12Dよりも最も前側に配置された紙幣収納箱11側から分岐する搬送路12Fと、搬送路12Fに連続するように奥から2番目に配置された紙幣収納箱11に設けられた搬送路12Gと、搬送路12Fよりも最も前側に配置された紙幣収納箱11側から分岐する搬送路12Hと、搬送路12Hに連続するように奥から3番目に配置された紙幣収納箱11に設けられた搬送路12Iと、搬送路12Hよりも最も前側に配置された紙幣収納箱11側から分岐する搬送路12Jと、搬送路12Jに連続するように前から2番目に配置された紙幣収納箱11に設けられた搬送路12Kと、搬送路12Jよりも最も前側に配置された紙幣収納箱11側から分岐して上方に延出する搬送路12Lと、搬送路12Lに繋がって屈曲し後方に延出して搬送路12Aの入出金部2と識別部7との間に繋がる搬送路12Mとを有している。
【0025】
また、紙幣搬送路12は、搬送路12Jの分岐位置と搬送路12Lの分岐位置との間位置から分岐して上方に延出する搬送路12Nと、搬送路12Nに連続して上方に延出し搬送路12Mの途中位置に繋がる搬送路12Oと、搬送路12Mにおける搬送路12Oの接続位置と搬送路12Aへの接続位置との間位置から分岐して入金リジェクト部5に繋がる搬送路12Pと、搬送路12Aにおける搬送路12Mの接続位置と入出金部2との間位置から分岐し前方に延出して搬送路12Pの途中位置に繋がる搬送路12Qと、搬送路12Pにおける搬送路12Qの接続位置と入金リジェクト部5との間位置から上方に分岐し後上がりに延出して出金リジェクト部6に繋がる搬送路12Rとを有している。
【0026】
また、紙幣搬送路12は、搬送路12Aにおける入出金部2と搬送路12Qの分岐位置との間位置と、搬送路12Mの接続位置と識別部7との間位置とを繋ぐ搬送路12Sと、搬送路12Aにおける搬送路12Sの接続位置と入出金部2との間位置から後方に分岐して整列部8に繋がる搬送路12Tとを有している。搬送路12Sには、紙幣の表裏を反転させる図示しない表裏反転部が設けられている。
【0027】
ここで、上記した搬送路12A~12Mは正逆両方向に紙幣を搬送可能となっており、搬送路12N~12Tは一方向にのみ紙幣を搬送可能となっている。
【0028】
紙幣処理装置1は、その作動を制御する制御部13を備えている。制御部13には、操作者により操作入力がなされる図示しない操作部と、操作者に向けた報知等を表示する図示しない表示部と、識別部7による紙幣の識別結果に基づく各紙幣の情報等を記憶する図示しない記憶部と、が接続されている。
【0029】
機外から入出金部2に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数する入金処理を行う場合には、入出金部2の載置板3上にバラ紙幣が載置されて、繰出部2aが入出金部2の載置板3上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路12Aで搬送することになる。搬送路12Aでの搬送中に、プラズマ処理装置20内を通過し、識別部7が紙幣を識別計数することになり、識別部7で受け入れ可能と判定した紙幣(取り扱い可能な金種の紙幣)を、搬送路12B,12Cで最も前側に配置された紙幣収納箱11に搬送する一方、識別部7で受け入れ不可と判定した紙幣を、搬送路12Bから搬送路12N、12O、12M、12Pで入金リジェクト部5に搬送する。これにより、受け入れ可能な紙幣を最も前側に配置された紙幣収納箱11に一時貯留し、受け入れ不可な紙幣を入金リジェクト部5に放出する。
【0030】
また、入金処理にて最も前側に配置された紙幣収納箱11に一時貯留した紙幣を奥から1番目、2番目、3番目および4番目に配置された紙幣収納箱11の対応するものに収納する収納処理を行う場合には、最も前側に配置された紙幣収納箱11の紙幣を上端のものからその繰出部11aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路12C、12B、12L、12M、12Aで識別部7に搬送し、識別部7の識別結果に基づいて、搬送路12B、12D~12Kの対応するものによって、奥から1番目、2番目、3番目および4番目に配置された紙幣収納箱11の対応するものに搬送する。これにより、奥から1番目、2番目、3番目および4番目に配置された紙幣収納箱11の対応するものに紙幣を収納する。なお、収納処理にて識別部7で重送等と識別した紙幣については、搬送路12B、12N、12O、12M、12P、12Rによって出金リジェクト部6に搬送し、出金リジェクト部6に収納する。
【0031】
また、入金処理にて最も前側に配置された紙幣収納箱11に一時貯留した紙幣を入出金部2に繰り出す返却処理を行う場合には、最も前側に配置された紙幣収納箱11の紙幣を上端のものから繰出部11aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路12C、12B、12Aによって入出金部2に搬送する。これにより、入出金部2に紙幣を返却する。
【0032】
また、最も奥側に配置された紙幣収納箱11、奥から2番目に配置された紙幣収納箱11および奥から3番目に配置された紙幣収納箱11の指定された金種のものから紙幣を出金するバラ紙幣出金処理を行う場合には、バラ出金処理では、奥から1番目、2番目および3番目に配置された紙幣収納箱11の指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部11aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路12D~12Iの対応するものと、搬送路12B、12Aとで識別部7に搬送し、識別部7の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路12Aで入出金部2に、表裏反転が必要なものは搬送路12Sを介して表裏反転部で表裏反転させた後、搬送路12Aで入出金部2に、それぞれ搬送する。これにより、出金操作に基づくバラ紙幣を入出金部2に繰り出す。なお、出金処理にて識別部7で重送等と識別した紙幣については、搬送路12A、12Q、12P、12Rによって出金リジェクト部6に搬送し、出金リジェクト部6に収納する。
【0033】
また、奥から1番目、2番目および3番目に配置された紙幣収納箱11の指定された金種のものからの紙幣を結束して出金する束出金処理を行う場合には、奥から1番目、2番目および3番目に配置された紙幣収納箱11のうち指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部11aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路12D~12Iの対応するものと、搬送路12B、12Aとで識別部7に搬送し、識別部7の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路12A、12Tで整列部8に、表裏反転が必要なものは搬送路12Sを介して表裏反転部で表裏反転させた後、搬送路12A、12Tで整列部8に、それぞれ搬送する。これにより、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部8に繰り出す。そして、結束部9で結束を行い、束出金部10に繰り出す。このような処理を指定された金種毎に指定された束数分行うことになる。なお、束出金処理にて識別部7で重送等と識別した紙幣については、搬送路12A、12Q、12P、12Rによって出金リジェクト部6に搬送し、出金リジェクト部6に収納する。
【0034】
また、紙幣収納箱11に収納された紙幣を精査処理する場合には、例えば、奥から1番目に配置された紙幣収納箱11内の紙幣を、搬送路12Eに繰り出して、搬送路12D、12Aで搬送し、識別部7の識別結果から奥から1番目に配置された紙幣収納箱11への収納が適正であると識別された紙幣を図示しない振分部により、図示しない収納カセットに収納する。一方、識別部7の識別結果から奥から1番目に配置された紙幣収納箱11への収納が適正であると識別されなかった重送等の紙幣を振分部により、図示しないリジェクトカセットに収納する。このようにして、奥から1番目に配置された紙幣収納箱11のすべての紙幣を、収納カセット又はリジェクトカセットに搬送する。
【0035】
次に、収納カセットの紙幣を繰り出して、搬送路12Aで搬送し、識別部7の識別結果から、奥から1番目に配置された紙幣収納箱11への収納が適正であると識別された紙幣を搬送路12Dで振り分けて搬送路12Eで搬送し、奥から1番目に配置された紙幣収納箱11に収納する。一方、識別部7の識別結果から奥から1番目に配置された紙幣収納箱11への収納が適正であると識別されなかった重送等の紙幣を、リジェクトカセットに収納する。
【0036】
同様にして、奥から2番目に配置された紙幣収納箱11の紙幣をすべて収納カセット又はリジェクトカセットに搬送した後、収納カセットの紙幣を奥から2番目に配置された紙幣収納箱11又はリジェクトカセットに搬送する。また、奥から3番目に配置された紙幣収納箱11の紙幣をすべて収納カセット又はリジェクトカセットに搬送した後、収納カセットの紙幣を奥から3番目に配置された紙幣収納箱11又はリジェクトカセットに搬送する。
【0037】
〈プラズマ処理装置〉
次に、プラズマ処理装置20の構造について、図面に基づいて説明する。
図2は、プラズマ処理装置20の構造を示す概略断面図である。プラズマ処理装置20は、被処理物としての紙幣Bを大気圧プラズマによりプラズマ処理して殺菌する。被処理物は、平面形状又は立体形状等のどのような形状であっても構わず、紙幣の他に、紙等の紙葉類、硬貨、シート状又は薄板状のものが好適である。プラズマ処理装置20は、プラズマ処理室30と、プラズマ生成部40と、支持部50と、を備えている。
【0038】
プラズマ処理室30は、略長方体状に形成されており、紙幣Bが搬送される搬送方向D1の上流側(搬入側)に設けられた搬入口31と、搬送方向D1の下流側(搬出側)に設けられた搬出口32と、が形成されている。搬入口31及び搬出口32は、搬送路12Aにそれぞれ接続されている。
【0039】
プラズマ処理室30の搬入口31及び搬出口32の外部には、図示しない上下一対の搬送ローラがそれぞれ設けられている。紙幣Bは一対の搬送ローラに挟持されて搬送ローラの回転方向に押し出される。すなわち、紙幣Bは、搬入口31側の一対の搬送ローラより搬送路12A方向に押し出されるとともに、搬出口32側の一対の搬送ローラにより搬送路12Aから排出される方向に押し出される。これにより、紙幣Bは、搬入口31側の図示しない一対の搬送ローラ及び搬出口32側の図示しない一対の搬送ローラにより搬送路12Aを搬送方向D1に沿って搬送される。なお、符号33は、紙幣Bから除去されてプラズマ処理室30内を浮遊するウィルス等が搬出口32から外部に拡散することを抑制するためのHEPAフィルターを示す。
【0040】
プラズマ生成部40は、略長方体状に形成されており、プラズマ処理室30を挟んで2つ設けられている。2つのプラズマ生成部40は、何れも同様の構成であるから、以下では、
図2の紙面上方に位置するプラズマ生成部40について説明し、
図2の紙面下方に位置するプラズマ生成部40の重複する説明を省略する。プラズマ生成部40は、第1の電極41と、第2の電極42と、誘電体43と、を備えている。
【0041】
第1の電極41は、プラズマ処理室30の天面全面に設けられている。第2の電極42は、第1の電極41と所定の隙間(例えば、0.5~10mm)を空けて対向して設けられ、プラズマ処理室30内を水平方向に横断するように設けられている。第1の電極41及び第2の電極42は、高電圧(例えば、1~15kV)を印可する交流電源である電源装置44に接続されている。なお、電源の周波数が高いほど放電し易いため、電源の周波数が高い場合には誘電体43を省略することも可能である。
【0042】
電源装置44から第1の電極41に出力される交流電圧と電源装置44から第2の電極42に出力される交流電圧は、一方が接地し、他方が正弦波状又は方形波状の交流電圧を出力する、もしくは位相が互いに90~180度オフセットした正弦波状又は方形波状の交流電圧を第1の電極41、第2の電極42に出力することにより、第1の電極41、第2の電極42の間のプラズマ発生空間Aに大気圧プラズマが生成される。なお、「大気圧プラズマ」とは、第1の電極41と第2の電極42との電位差によりほぼ大気圧下で放電させることにより生成されるプラズマである。大気圧プラズマを安定して生成するためには、第1の電極41と第2の電極42との間の電気容量が安定していることが好ましい。第1の電極41又は第2の電極42の何れか一方が接地する場合、接地された電極を基準にして電位差が生じるため電源回路の設計や設定のし易さという点で好ましいが、第1の電極41及び第2の電極42の何れも接地されていなくても構わない。
【0043】
第1の電極41に隣接して誘電体43が設けられている。誘電体43は、第1の電極41の表面(第2の電極42に対向する面)全面を覆うように設けられている。なお、本実施形態では、誘電体43が、第1の電極41の表面全面を覆うように設けられている場合を例に説明したが、誘電体43は、第1の電極41又は第2の電極42の少なくとも何れか一方もしくは第1の電極41又は第2の電極42の両方を覆うように設けられていればよく、例えば、誘電体43が、第1の電極41及び第2の電極42の各表面を覆うように設けられてもよい。誘電体43が、第1の電極41、第2の電極42との間に介在することにより、第1の電極41と第2の電極42との間の所定箇所に放電が集中することを抑制し、プラズマ処理室30内の広範囲に亘って安定した大気圧プラズマを生成することができる。
【0044】
プラズマ発生空間Aの搬入側には、ガス供給部45が接続されている。ガス供給部45内を流れる誘導ガスが、プラズマ発生空間Aに供給される。誘導ガスは、例えば空気であり、好ましくは水蒸気を所定量含有する空気であるが、これに限定されるものではない。なお、
図2中の太矢印は、プラズマ発生空間A内の誘導ガスの流れ方向を示す。
【0045】
第2の電極42は、プラズマ処理室30とプラズマ生成部40とを隔離する隔離壁としても機能し、第2の電極42には、プラズマ処理室30とプラズマ発生空間Aとを連通する複数の貫通孔46が形成されている。大気圧プラズマは、誘導ガスの流れに沿うようにして貫通孔46を介してプラズマ処理室30に供給される。なお、
図2中の細矢印は、大気圧プラズマの流れを示す。
【0046】
貫通孔46は、搬送方向D1の搬出側に向かって傾斜するように形成されている。これにより、貫通孔46を通過した誘導ガス(大気圧プラズマ)は、プラズマ処理室30内に流入した後に、紙幣Bの搬送方向D1に沿って移動する。そして、紙幣Bの搬送方向D1に沿って移動した誘導ガスは、搬出口32から排出される。
【0047】
また、
図3に示すように、複数の貫通孔46は、搬送方向D1に沿って所定間隔をあけて列設されているとともに、列状に設けられた貫通孔46は、搬送方向D1と直交する幅方向D2に互いに離間して配置されている。
図3に示すように、貫通孔46の開口は、プラズマ処理室30側の底面から視て搬送方向D1の搬入口31側から搬出口32側に向かって徐々に拡径するように設定されている。
【0048】
なお、ガス供給部45から供給された誘導ガスは、プラズマ生成部40内を搬入口31側から搬出口32側に搬送方向D1に沿って移動する間に、搬送方向D1に沿って設けられた複数の貫通孔46から排出されて、搬出口32側に移動するにつれて徐々に流量が減少する。そして、搬出口32側の貫通孔46と搬入口31側の貫通孔46とを略同径に設定すると、搬出口32側の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガス(大気圧プラズマ)の流量が少なくなりがちである。そこで、本実施形態では、貫通孔46の直径が搬入口31側より搬出口32側の方が大きくなるように設定されている。これにより、搬出口32側の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガスの流量を、搬入口31側の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガスの流量と同程度確保することができる。この結果、貫通孔46を介してプラズマ生成部40からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガス(大気圧プラズマ)の量を、搬入口31側と搬出口32側とで略均等にすることができ、紙幣Bの大気圧プラズマ処理をむらなく均等に行うことができる。なお、搬送方向D1に沿って設けられた複数の貫通孔46の各々の直径は、各々の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガスの流量が同じになるように、プラズマ生成部40内を流動する誘導ガスの流量に応じて設定されていることが好ましい。
【0049】
さらに、各々の貫通孔46は、
図4(a)、
図5(b)に示すように、幅方向D2の外側に向けて傾斜している。これにより、プラズマ生成部40から貫通孔46を介して誘導された誘導ガスが、幅方向D2の外側に広がるように噴射されるので、プラズマ処理装置20は、プラズマ処理室30内を搬送方向D1に沿って搬送される紙幣Bの幅方向D2の全域を万遍なく大気圧プラズマ処理することができる。
【0050】
〈支持部〉
プラズマ処理室30内には、紙幣Bを支持する支持部50が設けられている。
図6、7に示すように、支持部50は、第1の支持部51と、第2の支持部52と、を備えている。第1の支持部51と第2の支持部52とは、プラズマ処理室30の底面から突出するようにそれぞれ立設されている。第1の支持部51と第2の支持部52とは、例えばガラスやプラスチック等の絶縁体から成る。なお、
図6では、第2の電極42に形成された貫通孔46を省略している。
【0051】
第1の支持部51は、壁状に形成され、平面から視て搬入口31からプラズマ処理室30内の略中央まで延伸されている。
図4(a)に示すように、第1の支持部51は、幅方向D2に互いに隙間を空けて3つ並設されている。すなわち、紙幣Bは、3つの第1の支持部51により中央及び左右両端の3か所で支持される。
【0052】
第1の支持部51の紙幣Bを支持する支持面51aは、搬送路12Aと略面一になるように高さが設定されている。また、
図4(b)に示すように、支持面51aは、上方に向けて凸状の断面半円状に形成されるのが好ましい。これにより、紙幣Bと支持面51aとの接触面積を小さくでき、紙幣Bが搬送される際の支持面51aでの搬送抵抗が低減される。さらに、紙幣Bと支持面51aとは、
図4(b)の紙面上でほぼ点接触状態で接触するため、紙幣Bのうち支持面51aとの接触部を除く広範囲を大気圧プラズマ処理することができる。
【0053】
第2の支持部52は、壁状に形成され、平面から視てプラズマ処理室30内の略中央から搬出口32まで延伸されている。
図5(a)に示すように、第2の支持部52は、幅方向D2に互いに隙間を空けて2つ並設されている。すなわち、紙幣Bは、2つの第2の支持部52により中央と左端との中腹及び中央と右端との中腹の2か所で支持される。
【0054】
第2の支持部52の紙幣Bを支持する支持面52aは、搬送路12Aと略面一になるように高さが設定されている。また、
図5(b)に示すように、支持面52aは、上方に向けて凸状の断面半円状に形成されるのが好ましい。これにより、紙幣Bと支持面52aとの接触面積を小さくでき、紙幣Bが搬送される際の支持面52aでの搬送抵抗が低減される。さらに、紙幣Bと支持面52aとは、
図5(b)の紙面上でほぼ点接触状態で接触するため、紙幣Bのうち支持面52aとの接触部を除く広範囲を大気圧プラズマ処理することができる。
【0055】
このようにして、支持面51a、52aは、プラズマ処理室30内での紙幣Bの搬送路を形成している。
【0056】
なお、第1の支持部51と第2の支持部52とは、平面から視て各々の中央側の位置が搬送方向D1で重なっていてもよい。これにより、第1の支持部51から第2の支持部52へ紙幣Bを受け渡す際に、紙幣Bの先端が第2の支持部52で引っ掛かるジャムの発生を抑制することができる。
【0057】
〈大気圧プラズマ処理〉
次に、プラズマ処理装置20による紙幣Bへの大気圧プラズマ処理について、図面に基づいて説明する。
【0058】
プラズマ処理装置20が紙幣Bをプラズマ処理するタイミングは、例えば、紙幣処理装置1が入金処理の際に大気圧プラズマによる殺菌処理を行うことが考えられる。この場合には、プラズマ処理装置20が、識別部7より搬送路12Aの上流側に設置されていることにより、識別部7の鑑別結果にかかわらず全ての紙幣Bに対して大気圧プラズマによる滅菌処理を施すことができる。
【0059】
プラズマ処理装置20は、電源装置44から第1の電極41、第2の電極42間に交流電圧を印加し、第1の電極41と第2の電極42との間に大気圧プラズマを生成させる。
【0060】
次に、
図8に示すように、紙幣Bが搬入口31からプラズマ処理室30内に搬入されると、紙幣Bは、片面(裏面)が3つの第1の支持部51に支持されながら搬送方向D1に沿って搬送される。プラズマ処理室30内では、紙幣Bは、第1の支持部51に支持されない非支持範囲A1(
図8中のハッチング部分)が大気圧プラズマに晒される。
【0061】
また、第1の支持部51がプラズマ処理室30の底面から立設されていることにより、紙幣Bの裏面が大気圧プラズマに晒され易くなっている。また、支持面51aが上方に向けて凸状に湾曲していることにより、紙幣Bと第1の支持部51との僅かな接触領域を除いて紙幣Bと第1の支持部51とが隙間を空けて対向する範囲に大気圧プラズマが回り込むため、紙幣Bが大気圧プラズマに晒される領域を広くすることができる。さらに、支持面51aが、上下のプラズマ生成部40の略中間に設定されていることにより、紙幣Bの両面が大気圧プラズマに略均等に晒されるようになっている。
【0062】
次に、紙幣Bが第1の支持部51から第2の支持部52に移動すると、紙幣Bの裏面が、2つの第2の支持部52に支持されながら搬送方向D1に沿って搬送される。プラズマ処理室30内では、紙幣Bは、第2の支持部52に支持されない非支持範囲A2(
図8中のハッチング部分)が大気圧プラズマに晒される。
【0063】
また、第2の支持部52がプラズマ処理室30の底面から立設されていることにより、紙幣Bの裏面が大気圧プラズマに晒され易くなっている。また、支持面52aが上方に向けて湾曲していることにより、紙幣Bと第2の支持部52との僅かな接触領域を除いて紙幣Bと第2の支持部52とが隙間を空けて対向する範囲に大気圧プラズマが回り込むため、紙幣Bが大気圧プラズマに晒される領域を広くすることができる。さらに、支持面52aが、上下のプラズマ生成部40の略中間に設定されていることにより、紙幣Bの両面が大気圧プラズマに略均等に晒されるようになっている。
【0064】
また、
図8に示すように、紙幣Bが大気圧プラズマに晒される非支持範囲A1、A2は、幅方向D2において異なる位置に設定され、紙幣Bがプラズマ処理室30を通過する間にプラズマ処理室30内において紙幣Bの全面に及ぶように設定されている。これにより、紙幣Bは、プラズマ処理室30内を搬送方向D1に沿って搬送される間に全面が大気圧プラズマに晒されるため、紙幣Bの両面を確実に殺菌処理することができる。
【0065】
そして、紙幣Bは、第2の支持部52を通過した後に、搬出口32を介してプラズマ処理室30から搬送路12Aに搬出される。
【0066】
なお、プラズマ処理装置20が紙幣Bをプラズマ処理するタイミングは、紙幣Bがプラズマ処理室30を通過するタイミングであればいつでも構わず、例えば、紙幣処理装置1の電源ON時にプラズマ処理装置20を駆動してもよい。よって、紙幣処理装置1では、紙幣処理装置1の駆動期間中において、プラズマ処理装置20を常に駆動し、常時紙幣Bの殺菌を行うことができる。また、例えば、精査処理の際に大気圧プラズマによる殺菌処理を行っても構わない。この場合には、紙幣Bの搬送速度を入金処理等より低速に設定できるため、紙幣B1枚当たりに大気圧プラズマを作用させる時間をより長く確保できる。よって、紙幣処理装置1の精査処理時に紙幣Bの殺菌処理を行うことで、紙幣Bに付着したウィルス等の滅菌を確実に行うことができる。
【0067】
なお、プラズマ処理装置20は、識別部7より搬送路12Aの上流側に設置されたものに限定されない。
【0068】
例えば、プラズマ処理装置20を入出金部2に設置した場合には、入金時に紙幣Bに大気圧プラズマを作用させて殺菌処理することができる。よって、紙幣処理装置1では、繰出部2aによって紙幣Bが機内に繰り出されるまでの所定時間、入出金部2に集積された紙幣Bをプラズマ処理することができる。
【0069】
また、プラズマ処理装置20を紙幣収納箱11に設置した場合には、紙幣に大気圧プラズマを作用させる時間を長くすることができ、滅菌効果をより高めることができる。
【0070】
また、プラズマ処理装置20を識別部7より搬送路12Aの下流側に設置した場合には、識別部7での紙幣Bの鑑別に影響を与えずに、識別部7を通過した後に紙幣Bに大気圧プラズマを作用させて殺菌処理することができる。
【0071】
また、プラズマ処理室30を経て排出される誘導ガスは、大気圧プラズマが残留していることから、この誘導ガスを紙幣処理装置1内の部材(紙幣収納箱11や図示しない操作パネル等)に誘導することで、これら部材の滅菌処理を行うことができる。
【0072】
また、プラズマ処理室30及びプラズマ生成部40は、積層されるように隣接して設けられる構成に限定されず、例えば、一方が他方の内部に入れ子で収容される構成であっても構わない。プラズマ処理室30を内部に収容するようにプラズマ生成部40を構成した場合には、より多くの大気圧プラズマを生成でき、紙幣Bをさらに効果的に滅菌することができる。また、プラズマ処理室30及びプラズマ生成部40は、略直方体状に形成されたものに限らず、例えば、互いに略円筒状に形成されたものであっても構わない。
【0073】
また、貫通孔46の開口は、円形状に限定されず、例えば
図9に示すように、搬送方向D1の搬入側から搬出側に向かって徐々に拡幅するように設定されたスリット等であっても構わない。
【0074】
また、
図10に示すように、幅方向D2に亘って長く形成された長方形状の貫通孔46を搬送方向D1に沿って配置し、貫通孔46の幅が搬送方向D1に沿って徐々に拡幅するように形成してもよい。また、
図11に示すように、幅方向D2に亘って長く形成された長方形状の貫通孔46を搬送方向D1に沿って配置し、隣り合う貫通孔46の間隔を搬送方向D1に沿って徐々に狭くなるようにしてもよい。何れの場合であっても、貫通孔46が紙幣Bの幅方向D2に亘って形成されているため、貫通孔46を通過した大気圧プラズマは紙幣Bの幅方向D2に亘って送出され、紙幣Bの幅方向D2の全域を万遍なく大気圧プラズマ処理することができるとともに、搬出口32側の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガスの流量を、搬入口31側の貫通孔46からプラズマ処理室30内に誘導される誘導ガスの流量と同程度確保することができる。
【0075】
また、貫通孔46を通過した誘導ガスは、プラズマ処理室30の搬入口31側と搬出口32側の何れの方向にも流れる可能性がある。誘導ガスが搬入口31側に流れた場合には、搬送される紙幣Bをめくれ上がらせてジャム等の原因となる虞がある上に、搬送方向D1の上流側で隣接する貫通孔46から搬出口32側に流れた誘導ガスと衝突して処理後の大気圧プラズマが滞留し、紙幣Bのプラズマ処理が効率よく行われなくなる虞がある。そこで、貫通孔46を通った誘導ガスは、搬送方向D1の搬出口32側に誘導されることが好ましく、例えば、
図12(a)に示すように、貫通孔46を搬送方向D1の搬出側に傾斜するように形成したり、
図12(b)に示すように、貫通孔46が搬送方向D1に対して垂直に形成されるとともに、誘導ガスが貫通孔46を斜めに移動するように貫通孔46の上端(プラズマ生成部40側)の上流側と下端(プラズマ処理室30側)の下流側にそれぞれ傾斜部47を設け、さらに、貫通孔46の下端に搬送方向D1の搬出口32側に傾斜する誘導板48を設けることが好ましい。また、
図12(c)に示すように、搬送方向D1の搬出側に傾斜する貫通孔46の孔径を徐々に絞って誘導ガスの流速を加速させて大気圧プラズマを速やかに紙幣Bに作用させるようにしてもよく、
図12(d)に示すように、搬送方向D1の搬出側に傾斜する貫通孔46の孔径を徐々に拡げて大気圧プラズマを広範囲に拡散させるようにしても良い。
【0076】
また、上述した実施形態では、支持部50が、第1の支持部51、第2の支持部52を搬送方向D1に沿ってこの順で設けて構成された場合を例に説明したが、紙幣Bが支持部50に支持されずに大気圧プラズマに晒される非支持範囲が、紙幣Bの搬送に伴って移動し、大気圧プラズマがプラズマ処理室30内において紙幣Bの全面に作用するものであれば、支持部50は如何なる構成であっても構わない。
【0077】
例えば、
図13に示すように、第1の支持部51及び第2の支持部52を1組として、搬送方向D1に沿って複数組設けるようにしても構わない。このような構成によれば、プラズマ処理室30内において、大気圧プラズマの濃度が場所により異なる場合であっても、搬送方向D1における非支持範囲が少なくとも2回以上重なるように設定される。したがって、搬送方向D1において2以上の異なる位置で紙幣Bの非支持範囲をプラズマ処理する機会が確保され、紙幣Bのプラズマ処理をより確実に行うことができる。なお、
図13では、第2の電極42に形成された貫通孔46を省略している。
【0078】
また、支持面51a、52aは、第1の電極41と第2の電極42との略中間に設定されたものに限定されず、例えば、
図14に示すように、第1の支持部51及び第2の支持部52を搬送方向D1において徐々に高くなるように形成しても構わない。このように支持面51a、52aが傾斜することにより、
図15に示すように、支持面51aが、下方の第2の電極42寄りに配置され、支持面52aが、上方の第1の電極41寄りに配置される。したがって、搬送方向D1の搬入側では、紙幣Bの上方の第2の電極42に対向する面と上方の第2の電極42との間の空間が大きくなり大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなるため、紙幣Bの上方の第2の電極42に対向する面のプラズマ処理をより確実に行うことができ、搬送方向D1の搬出側では、紙幣Bの下方の第2の電極42に対向する面と下方の第2の電極42との間の空間が大きくなり大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなるため、紙幣Bの下方の第2の電極42に対向する面のプラズマ処理をより確実に行うことができる。これにより、紙幣Bの両面を効率良く殺菌することができる。
【0079】
また、紙幣Bの搬送経路と第2の電極42との間隔を局所的に変化させて、紙幣Bの片面を集中的にプラズマ処理する構成は、上述したものに限定されない。例えば、紙幣Bの搬送経路が水平に設定され、上方の第2の電極42が搬送方向D1の搬入側から搬出側に向かって徐々に薄くなるテーパ状に形成されている場合、搬送方向D1の搬入側では、紙幣Bの下方の第2の電極42に対向する面と下方の第2の電極42との間の空間が大きくなり大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなるため、紙幣Bの下方の第2の電極42に対向する面のプラズマ処理をより確実に行うことができ、搬送方向D1の搬出側では、紙幣Bの上方の第2の電極42に対向する面と上方の第2の電極42との間の空間が大きくなり大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなるため、紙幣Bの上方の第2の電極42に対向する面のプラズマ処理をより確実に行うことができる。
【0080】
また、紙幣Bの搬送方向D1は、搬入口31から搬出口32に向かって一方向に設定されたものに限定されず、例えば、
図16に示すように、プラズマ処理室30をUターンするように設定しても構わない。これにより、往路では、紙幣Bが上方の第2の電極42寄りを搬送され、紙幣Bと下方の第2の電極42との間において大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなり、復路では、紙幣Bが下方の第2の電極42寄りを搬送され、紙幣Bと上方の第2の電極42との間において大気圧プラズマの濃度が相対的に高くなるため、紙幣Bの両面を効率良く殺菌することができる。
【0081】
また、
図17(a)に示すように、第1の支持部51及び第2の支持部52をそれぞれ円柱状に形成し、平面から視て千鳥状に設けても構わない。また、
図17(b)に示すように、支持部50を平面から視て波状に形成しても構わない。このような構成によれば、紙幣Bの非支持範囲を搬送方向D1に沿って移動させることができ、紙幣Bのプラズマ処理を全面で行うことができる。
【0082】
また、第1の支持部51及び第2の支持部52は、プラズマ処理室30の底面に立設された壁状部材に限らず、例えば、
図18に示すように、プラズマ処理室30内に配置されたブロック体に部分的に貫通孔53を形成して得られる肉部であっても構わない。これにより、第1の支持部51及び第2の支持部52を容易に製造することができる。なお、
図18では、第2の電極42に形成された貫通孔46を省略している。
【0083】
また、第1の支持部51及び第2の支持部52は、絶縁体から成るものに限定されず、例えば、
図19に示すように、第1の支持部51及び第2の支持部52を第2の電極42の表面に搬送方向D1に沿って畝状に形成しても構わない。
【0084】
また、第1の支持部51、第2の支持部52は、紙幣Bを支持面51a、52a上を摺動させるように支持するものに限定されない。例えば、
図20に示すように、フリーローラ又は駆動ローラ等の回転体54としても構わない。これにより、紙幣Bの搬送抵抗を低減でき、紙幣Bをスムーズに搬送できるとともに紙幣Bが擦れて傷むことを抑制できる。また、ローラで搬送しつつ、搬送方向D1に隣接するローラ間で紙幣Bの非支持範囲が移動するため、紙幣Bのプラズマ処理を全面で行うことができる。
【0085】
また、紙幣Bに作用させる大気圧プラズマは、第1の電極41と第2の電極42との間で予め生成した大気圧プラズマを第2の電極42の貫通孔46を介して作用させる場合(間接方式)に限定されず、例えば、
図21に示すように、第2の電極42を挟んで第1の電極41を上下に1つずつ設け、上方の第1の電極41と第2の電極42との間で生成される大気圧プラズマを紙幣Bに作用させる場合(直接方式)と、下方の第1の電極41と第2の電極42との間で予め生成した大気圧プラズマを第2の電極42の貫通孔46を介して作用させる間接方式と、を併用しても構わない。
【0086】
次に、本実施形態の変形例について、図面に基づいて説明する。
図22は、本変形例に係るプラズマ処理装置20の縦断面図である。
図23は、本変形例に係るプラズマ処理装置20の平面図である。なお、
図23では、第2の電極42に形成された貫通孔46を省略している。本変形例に係るプラズマ処理装置20の構成のうち、上述した実施形態に係るプラズマ処理装置20と共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0087】
第1の実施の形態で説明した第1の支持部51に相当する構成は、上下一対の搬入側搬送ベルト55であり、各搬入側搬送ベルト55は、第1の駆動ローラ55aと第1の従動ローラ55bとに巻き掛けられて周回軌道を周回走行するように構成されている。上下一対の搬入側搬送ベルト55は、1枚の紙幣Bを上下から挟持可能な間隔を空けて設けられている。上下一対の搬入側搬送ベルト55は、紙幣Bを挟持した状態で搬入側搬送ベルト55の回転に伴って紙幣Bを搬送する。
【0088】
搬入側搬送ベルト55は、プラズマ処理室30内の略中央から搬送方向D1の上流側(搬入側)に設けられている。搬入側搬送ベルト55は、幅方向D2に互いに隙間を空けて3つ並設されており、紙幣Bは、3つの搬入側搬送ベルト55によって中央及び左右両端の3か所で挟持される。
【0089】
第1の実施の形態で説明した第2の支持部52に相当する構成は、上下一対の搬出側搬送ベルト56であり、各搬出側搬送ベルト56は、第2の駆動ローラ56aと第2の従動ローラ56bとに巻き掛けられて周回軌道を周回走行するように構成されている。上下一対の搬出側搬送ベルト56は、1枚の紙幣Bを上下から挟持可能な間隔を空けて設けられている。上下一対の搬出側搬送ベルト56は、紙幣Bを挟持した状態で搬出側搬送ベルト56の回転に伴って紙幣Bを搬送する。
【0090】
搬出側搬送ベルト56は、プラズマ処理室30内の略中央から搬送方向D1の下流側(搬出側)に設けられている。搬出側搬送ベルト56は、幅方向D2に互いに隙間を空けて2つ並設されており、紙幣Bは、2つの搬出側搬送ベルト56によって中央と左端との中腹及び中央と右端との中腹の2か所で挟持される。
【0091】
このようにして、紙幣Bが、搬入側搬送ベルト55及び搬出側搬送ベルト56に挟持されながら搬送されることにより、紙幣Bの搬送抵抗が低減され、紙幣Bをスムーズに搬送できるとともに紙幣Bが擦れて傷むことを抑制できる。
【0092】
さらに、紙幣Bが搬入側搬送ベルト55に支持されない非支持範囲A1と紙幣Bが搬出側搬送ベルト56に支持されない非支持範囲A2とは、搬送方向D1において異なる位置に設けられ、大気圧プラズマは、紙幣Bがプラズマ処理室30内を通過する間に、紙幣Bの全面に作用する。
【0093】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置20は、大気圧プラズマにより紙幣B(被処理物)を殺菌処理する装置であって、大気圧プラズマを生成するプラズマ生成部40と、大気圧プラズマが導入されるともに所定の搬送方向D1に沿って紙幣Bを通過させるプラズマ処理室30と、プラズマ生成部40とプラズマ処理室30とを連通する複数の貫通孔46が形成され、プラズマ生成部40とプラズマ処理室30とを隔離する隔離壁としての第2の電極42と、を備えている。
【0094】
この構成によれば、プラズマ生成部40とプラズマ処理室30とが隔離されていることにより、プラズマ生成部40で大気圧プラズマが安定して生成可能であり、紙幣Bがプラズマ処理室30内を搬送される間に、紙幣Bの全面が貫通孔46を介してプラズマ処理室30内に導入された大気圧プラズマに晒されるため、紙幣Bの全面を殺菌することができる。
【0095】
また、プラズマ処理装置20は、プラズマ生成部40及び貫通孔46を介して誘導ガスをプラズマ処理室30に供給するガス供給部45を備えている構成とした。
【0096】
この構成によれば、プラズマ生成部40で生成された大気圧プラズマが誘導ガスによってプラズマ処理室30に導入されやすくなるため、紙幣Bを効率的に殺菌することができる。
【0097】
また、プラズマ処理装置20は、貫通孔46には、誘導ガスの流れ方向を搬送方向D1の排出側に向かうように案内する傾斜部47又は誘導板48が設けられている構成とした。
【0098】
この構成によれば、貫通孔46を通った大気圧プラズマは、搬送方向D1の搬出口32側に流れることにより、紙幣B周辺の大気圧プラズマが常に新しい状態となるため、紙幣Bのプラズマ処理を効率的に殺菌することができる。
【0099】
また、プラズマ処理装置20は、貫通孔46の開口面積が、誘導ガスの流れ方向の上流側から下流側に向かって拡大するように設定されている構成とした。
【0100】
この構成によれば、大気圧プラズマの濃度が低くなりがちな誘導ガスの流れ方向の下流側において、貫通孔46の開口面積を上流側より拡大することにより、誘導ガスの流れ方向の下流側でのプラズマ処理室30内への大気圧プラズマの導入量が相対的に増えるため、プラズマ処理室30全体に亘って均等にプラズマ処理を行うことができる。
【0101】
また、プラズマ処理装置20は、貫通孔46が、誘導ガスの流れ方向の上流側から下流側に向かって搬送方向D1に直交する幅方向D2の外側に傾斜している構成とした。
【0102】
この構成によれば、大気圧プラズマが、紙幣Bの近辺で滞留することなく幅方向D2の外側に流れることにより、幅方向D2に亘って紙幣Bのプラズマ処理を確実に行うことができる。
【0103】
また、プラズマ処理装置20は、誘導ガスが、水蒸気を含む構成とした。
【0104】
この構成によれば、大気圧プラズマが誘導ガスの水蒸気に溶けて減衰時間が遅くなることにより、プラズマ生成部40及びプラズマ処理室30内における大気圧プラズマの滞留時間を長くすることができる。また、プラズマ生成部40内の水蒸気により陰イオンがより多く生成されることにより、高濃度の大気圧プラズマが生成されるため、大気圧プラズマによる紙幣Bの殺菌効果を高めることができる。
【0105】
また、紙幣処理装置1は、紙幣Bが、貨幣であり、上述したプラズマ処理装置20を備えている。
【0106】
この構成によれば、紙幣Bに大気圧プラズマを作用して、紙幣Bに付着したウィルス等を殺菌することができる。
【0107】
〈第2の実施の形態〉
次に、本実施形態の第2の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図24は、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置20の縦断面図である。本変形例に係るプラズマ処理装置20の構成のうち、上述した実施形態に係るプラズマ処理装置20と共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0108】
本変形例に係るプラズマ処理装置20は、プラズマ生成部40を挟んで2つのプラズマ処理室30が外側に設けられている。
【0109】
第1の電極41は、一方のプラズマ処理室30とプラズマ生成部40とを隔離する隔離壁として機能し、第2の電極42は、他方のプラズマ処理室30とプラズマ生成部40とを隔離する隔離壁として機能する。第1の電極41には、プラズマ処理室30とプラズマ発生空間Aとを連通する複数の貫通孔49が形成されている。これにより、第1の電極41と第2の電極42との間で生成された大気圧プラズマは、ガス供給部45から供給される誘導ガスにより、貫通孔46、49を介してプラズマ処理室30内に速やかに供給される。
【0110】
誘電体43は、第1の電極41と第2の電極42との略中間に設けられている。これにより、プラズマ処理室30内の広範囲に亘って安定した大気圧プラズマを生成することができる。
【0111】
このような構成により、1つのプラズマ生成部40で生成された大気圧プラズマを複数のプラズマ処理室30に同時に供給することができる。これにより、2以上のプラズマ処理室30内で多量の紙幣Bを同時に大気圧プラズマ処理することができ、また、何れかのプラズマ処理室30では紙幣Bの大気圧プラズマ処理を行いつつ、他のプラズマ処理室30では硬貨Cの大気圧プラズマ処理を行う等、異なる種類の被処理物を同時に大気圧プラズマ処理することができる。
【0112】
また、例えば、プラズマ処理室30をプラズマ生成部40に脱着自在に構成することにより、プラズマ処理対象の種類や処理量に応じてプラズマ処理室30を増設したり換装することができる。
【0113】
また、本実施形態では、貨幣処理装置として、紙幣を処理する紙幣処理装置を例に説明したが、本発明は、硬貨を処理する硬貨処理装置にも適用することが可能である。硬貨を大気圧プラズマ処理する場合には、誘電体を設けることなく、金属製の硬貨を電極に直接接触させた状態で大気圧プラズマを作用させても構わない。
【0114】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0115】
また、上述した実施形態及び変形例は、適宜組み合わせても構わない。例えば、プラズマ処理室の上部に設けられた搬送ベルトが、紙幣をプラズマ処理室の底面から立設した壁状の支持部に圧接させながら搬送するように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0116】
1 :紙幣処理装置
20 :プラズマ処理装置
30 :プラズマ処理室
31 :搬入口
32 :搬出口
33 :HEPAフィルター
40 :プラズマ生成部
41 :第1の電極
42 :第2の電極(隔離壁)
43 :誘電体
44 :電源装置
45 :ガス供給部
46 :貫通孔
47 :傾斜部(ガイド部)
48 :誘導板(ガイド部)
49 :貫通孔
50 :支持部
51 :第1の支持部
51a :(第1の支持部の)支持面
52 :第2の支持部
52a :(第2の支持部の)支持面
53 :貫通孔
54 :回転体
55 :搬入側搬送ベルト
55a :第1の駆動ローラ
55b :第1の従動ローラ
56 :搬出側搬送ベルト
56a :第2の駆動ローラ
56b :第2の従動ローラ
A :プラズマ発生空間
A1、A2 :非支持範囲