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特許7582607創傷の閉鎖及び局所治療剤送達を監視するための器具及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】創傷の閉鎖及び局所治療剤送達を監視するための器具及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20240101AFI20241106BHJP
   A61F 13/00 20240101ALI20241106BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20241106BHJP
   G16H 30/20 20180101ALI20241106BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
A61F13/02 310R
A61F13/00 301Z
A61M35/00 Z
G16H30/20
G16H50/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023093472
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2020538970の分割
【原出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2023123513
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】62/615,178
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523481001
【氏名又は名称】インクウェル ヘルス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】グロス、マイケル
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534039(JP,A)
【文献】米国特許第3613679(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/0246
A61M 35/00
G16H 30/20
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の閉鎖を監視するためのシステムであって、
前記創傷に適用するためのドレッシングであって、
第1面および第2面を有する弾性膜と、
前記弾性膜の形状の変化を視覚化するために、前記弾性膜の前記第1面に設けられた基準オブジェクトであって、複数のマーキングを含み、前記複数のマーキングは一連の第1の線及び一連の第2の線を含む、基準オブジェクトと、を備え、
前記弾性膜は、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第1の形状を有する第1の構成を有する弛緩状態と、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第2の形状を有する第2の構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、前記複数のマーキングの前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なり、
前記第2の形状が前記第1の形状と異なることは前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化と前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化とを示し、前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第1の方向への変形を示し、前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第2の方向への変形を示し、前記弾性膜の変形は前記創傷の周囲の皮膚領域の腫脹量に関連する、ドレッシングと、
前記第2の構成の前記基準オブジェクトの画像を撮影するように構成されたカメラと、
前記第2の構成の前記基準オブジェクトの前記画像と、前記第1の構成の前記基準オブジェクトの記憶された画像とを比較し、前記創傷の周囲の前記皮膚領域の腫脹の程度を前記比較に基づいて判定するための処理装置と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記処理装置が遠隔に配置され、前記カメラが、ネットワークを介して前記画像を前記処理装置に送信するための送信器を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カメラと前記処理装置がコンピュータデバイスの一部である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記基準オブジェクトは標線であり、前記複数のマーキングの前記一連の第1の線は一連の横線であり、前記複数のマーキングの前記一連の第2の線は一連の縦線である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記一連の横線は、前記第1の方向における前記弾性膜の変形を示す、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記一連の縦線は、前記第2の方向における前記弾性膜の変形を示す、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の形状が前記第1の形状と異なることは、前記一連の横線の物理的寸法の変化と前記一連の縦線の物理的寸法の変化とをさらに示す、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記一連の横線の物理的寸法の変化は、前記一連の横線の幅の変化又は長さの変化である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記一連の縦線の物理的寸法の変化は、前記一連の縦線の幅の変化又は長さの変化である、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
創傷の閉鎖の監視をコンピュータで実現する方法であって、
前記創傷に適用されたドレッシングの弾性膜上に配置された基準オブジェクトの複数のマーキングの第2の形状を表す画像データを患者デバイスから受信することであって、前記複数のマーキングは一連の第1の線及び一連の第2の線を含み、前記弾性膜は、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第1の形状を有する第1の構成を有する弛緩状態と、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第2の形状を有する第2の構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、前記複数のマーキングの前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なる、前記画像データを受信することと、
前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化と前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化とを計算することであって、前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第1の方向への変形を示し、前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第2の方向への変形を示し、前記変形は前記創傷の腫脹の程度を示す、前記物理的寸法の変化とを計算することと、
創傷の閉鎖を監視するために、医師デバイスに腫脹の前記程度及び画像日時を送信することと、
を含む、方法。
【請求項11】
創傷の閉鎖を監視するためのシステムであって、
メモリに結合されたコンピュータ処理装置であって、
前記創傷に適用されたドレッシングの弾性膜上に配置された基準オブジェクトの複数のマーキングの第2の形状を表す画像データを患者デバイスから受信することであって、前記複数のマーキングは一連の第1の線及び一連の第2の線を含み、前記弾性膜は、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第1の形状を有する第1の構成を有する弛緩状態と、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第2の形状を有する第2の構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、前記複数のマーキングの前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なる、前記画像データを受信することと、
前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化と前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化とを計算することであって、前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第1の方向への変形を示し、前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第2の方向への変形を示し、前記変形は前記創傷の腫脹の程度を示す、前記物理的寸法の変化とを計算することと、
評価するために、医師デバイスに腫脹の前記程度及び画像日時を送信することと、
によって前記創傷の閉鎖を監視するようにプログラムされたコンピュータ処理装置
を備えるシステム。
【請求項12】
身体の一部の腫脹を監視するためのシステムであって、
前記身体の前記一部に適用するためのドレッシングであって、
第1面と第2面とを有する弾性膜と、
前記弾性膜の形状の変化を視覚化するために、前記弾性膜の前記第1面に設けられた基準オブジェクトであって、複数のマーキングを含み、前記複数のマーキングは一連の第1の線及び一連の第2の線を含む、基準オブジェクトと、を備え
前記弾性膜は、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第1の形状を有する第1の構成を有する弛緩状態と、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第2の形状を有する第2の構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、前記複数のマーキングの前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なり、
前記第2の形状が前記第1の形状と異なることは前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化と前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化とを示し、前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第1の方向への変形を示し、前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第2の方向への変形を示し、前記弾性膜の変形は前記身体の一部の膨張量に関連する、ドレッシングと、
前記第2の構成の前記基準オブジェクトの画像を撮影するように構成されたカメラと、
前記第2の構成の前記基準オブジェクトの前記画像と、前記第1の構成の前記基準オブジェクトの記憶された画像とを比較し、前記腫脹の下にある前記身体の前記一部の腫脹の程度を判定するための処理装置と、
を備えるシステム。
【請求項13】
身体の一部の腫脹を監視するためのシステムであって、
前記身体の前記一部に適用するためのドレッシングであって、
第1面と第2面とを有する弾性膜と、
前記弾性膜の形状の変化を視覚化するために、前記弾性膜の前記第1面に設けられた基準オブジェクトであって、複数のマーキングを含み、前記複数のマーキングは一連の第1の線及び一連の第2の線を含む、基準オブジェクトと、を備え
前記弾性膜は、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第1の形状を有する第1の構成を有する弛緩状態と、前記基準オブジェクトが前記複数のマーキングが集合的に第2の形状を有する第2の構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、前記複数のマーキングの前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なり、
前記第2の形状が前記第1の形状と異なることは前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化と前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化とを示し、前記一連の第1の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第1の方向への変形を示し、前記一連の第2の線間の物理的寸法の変化は前記弾性膜の第2の方向への変形を示し、前記弾性膜の変形は前記身体の一部の膨張量に関連する、ドレッシングと、
前記第2の構成の前記基準オブジェクトの画像を撮影するためのカメラを有する第1デバイスと、
第2デバイスであって、
前記第1デバイスから前記基準オブジェクトの前記画像を受信し、
前記ドレッシングの下にある前記身体の前記一部の腫脹の程度を判定するように構成されている第2デバイスと、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年1月9日に出願された米国仮特許出願第62/615,178号に対する優先権を主張し、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示される実施形態は、創傷の閉鎖のための器具及びシステムに関し、特に、創傷の閉鎖を監視するためのシステムの構成要素としての医療用ストリップ及び創傷ドレッシングに関し、鎮痛作用を高め皮膚の腫脹を低減するための薬剤を送達する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、異物や感染症に対する防護壁の役割を果たす。表皮は、皮膚を構成する2つの層のうちの外側の層であり、内側の層は真皮である。皮膚の創傷や手術での切開を修復するとき、修復の目的は、表皮の縁をつなぎ合わせて自然治癒が行われるようにすることである。表皮の縁をつなぎ合わせる伝統的な方法としては、縫合糸、ステープル、粘着テープなどの使用が挙げられる。創傷が治った後、これらのデバイスは、通常、開業医、看護師又は医師によって表皮から取り外される。これらのデバイスを除去すると、患者に痛みを生じさせ、及び/又は皮膚に穴が開き、感染及び/又は出血を生じ、その後の保護ドレッシングが必要となることがある。
【0004】
創傷治癒は、人体からの多くの異なる反応が関係する。要約すると、創傷治癒の最初の24時間は、創傷部への血液供給量が増加し、血液を介して創傷周辺組織への他の体液の量が増加し、いわゆる浮腫や腫脹が生じる。このように創傷部に体液が流入することで、創傷やその周辺が赤く腫脹する。さらに、分泌された因子も創傷周辺部に向かって移動し、創傷部へのより多くの腫脹と血液供給の増加を引き起こす。これらの因子は、抗炎症剤を使用して制御でき、従来は術後に経口又は静脈内投与により患者に提供される。腫脹や創傷反応により真皮の痛み受容体が刺激され、これが患者痛みの原因となる。痛みは、通常モルヒネなどの経口剤と静脈内投与の組み合わせで治療される。
【0005】
過度の創傷の腫脹はそれ自体が非常に痛く、患者に不快感を与え、場合によっては、頭頸部手術のように危険であり得る。また、過度の創傷の腫脹は、患者には明らかでない創傷内感染の存在を示す可能性もある。創傷の腫脹の程度によっては、時には感染症の存在や可能性を主治医に注意喚起してもよい。しかし、ほとんどの患者は、腫脹の程度のみに基づいて感染の可能性を判断することはできない。それにより、患者は通常、正常程度の創傷腫脹のために不必要に医師を訪れ、創傷内に感染がすでに確立されているときには、腫脹が大きく遅すぎることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、創傷の閉鎖を監視し、局所治療薬を送達するための器具及びシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、創傷の閉鎖を監視するための器具及びシステムについて記載する。器具及びシステムは、医療従事者及び患者に関連するデータを収集し、そのデータを医療従事者及び患者に提示し、創傷の適用後の監視を改善する。
【0008】
本明細書に記載の器具及びシステムは、一般に、ドレッシング及び温度表示ストリップを含む。ドレッシングは、創傷全体にわたって適用されてもよく、治癒プロセス中に創傷の周囲の皮膚の腫脹量を測定するために提供してもよい。また、ドレッシングは、創傷の周囲の皮膚、例えば創傷に隣接する皮膚領域に鎮痛剤及び抗炎症剤を送達して、治癒及び痛みの制御を促進してもよい。
【0009】
本明細書に記載の装器具及びシステムは、一般に、創傷に沿って適用し、体液を密閉容器に収集し、さらに下にある皮膚の温度を視覚的に測定する温度表示ストリップを含む。
【0010】
本明細書に記載の装器具及びシステムは、一般に、創傷に適用されるドレッシングの弾性膜の2つの面の伸張の変化の測定を含む、創傷の周囲の皮膚腫脹の量及び他の一般的な創傷の健康情報に関するフィードバックを医療従事者に提供する。本システムは、例えば、携帯電話カメラ、及び携帯電話のカメラの操作者が、アプリケーションによる測定のために適切な画像を撮影することが可能になるように、カメラを制御するモバイルアプリケーション又はプログラムを用いて患者によって撮影された画像に基づく。モバイルアプリケーションに関連付けられた測定アルゴリズムは、データ、及びアプリケーションによって得られた画像を分析して、腫脹及び温度に関する創傷の変化の程度を確立できる。例えば、それらの変化が予め設定された基準を超えたとき、通知を担当の医療従事者と患者(例えば:主治医)に送ることができる。
【0011】
本明細書に記載の装器具及びシステムは、腫脹の測定、及び創傷への鎮痛剤と抗炎症剤の投与を提供し、その結果、患者及び医療従事者の双方にとって創傷治癒経験を向上させることができる。上述のように、創傷の腫脹を示す画像を提供するための、アプリケーションを使用してもよい。アプリケーションは、ドレッシング上のマーキングに基づき腫脹の程度を正確に測定し、1つ又は複数の手段(例えば、電子メール、モバイル又はデスクトップアプリケーション)により、測定値を医療従事者に送信してもよい。温度表示ストリップはまた、医療従事者が創傷を評価するためのデータを提供するために使用されてもよい(例えば、温度上昇による感染症の徴候のために)。さらに、温度表示ストリップは、浸したドレッシングの交換を必要とせず、体液が衣服を汚すことを防止でき、患者及び審美的に苦痛のない閉鎖系において創傷からの体液又は血液の排出物の収集を提供できる。
【0012】
一態様では、創傷の閉鎖を監視するためのシステムが提供される。システムが、創傷に適用するためのドレッシングであって、第1面と第2面及び弾性膜の第1面に設けられた基準オブジェクトを有する弾性膜を含むドレッシングを含む。弾性膜が、基準オブジェクトが第1構成を有する弛緩状態と、基準オブジェクトが第2構成を有する伸張状態と、の間で可動性である。基準オブジェクトの第2構成が、創傷の周囲の皮膚領域の腫脹量に関連する。システムが、また、第2構成の基準オブジェクトの画像を撮影するためのカメラと、処理装置であって、第2構成の基準オブジェクトの画像と、第1構成の基準オブジェクトの記憶された画像とを比較し、創傷の周囲の皮膚領域の腫脹の程度を比較に基づいて判定するための処理装置と、を含む。
【0013】
いくつかの他の実施形態では、処理装置が遠隔に配置され、カメラが、ネットワークを介して画像を処理装置に送信するための送信器を更に含む、
【0014】
いくつかの他の実施形態では、カメラと処理装置がコンピュータデバイスの一部である。
【0015】
いくつかの他の実施形態では、ドレッシングが、弾性膜の第2面に結合された少なくとも1つの容器であって、弾性膜に密封結合された第1端部と、第1端部から離間し容器の開口部を画定する第2端部と、容器の容積を画定する第1端部及び第2端部間の連続的な壁と、を有する少なくとも1つの容器と、を更に含む。
【0016】
いくつかの他の実施形態では、基準オブジェクトが一連の線又は繊維を有する標線である。
【0017】
別の態様では、創傷に適用するためのドレッシングが提供される。ドレッシングが、第1面と第2面及び弾性膜の第2面に設けられた基準オブジェクトを有する弾性膜を含むドレッシングを含む。弾性膜が、基準オブジェクトが第1構成を有する弛緩状態と、基準オブジェクトが第2構成を有する伸張状態と、の間で可動性である。基準オブジェクトの第2構成が、創傷の周囲の皮膚領域の腫脹量に関連する。
【0018】
いくつかの他の実施形態では、ドレッシングが、弾性膜の第2面に結合された少なくとも1つの容器であって、弾性膜に密封結合された第1端部と、第1端部から離間し容器の開口部を画定する第2端部と、容器の容積を画定する第1端部及び第2端部間の連続的な壁と、を有する少なくとも1つの容器と、を含む。
【0019】
いくつかの他の実施形態では、容器が、創傷の周囲の皮膚領域にドレッシングを着脱可能に取り付けるために、容器の第2端部に設けられた接着剤を備える。
【0020】
いくつかの他の実施形態では、ドレッシングが、弾性膜の第1端部及び第2端部間に整列した複数の容器を備える。
【0021】
いくつかの他の実施形態では、容器が発泡性材料で作製される。
【0022】
いくつかの他の実施形態では、容器が円形であり2~3mmの高さを有する。
【0023】
いくつかの他の実施形態では、容器が、ドレッシングが創傷に適用されたとき、創傷に送達されるように容積内に配置された薬剤を備える、
【0024】
いくつかの他の実施形態では、容器の薬剤が、長時間作用する鎮痛剤、抗炎症薬、及び/又は皮膚の滑らかさを回復するように設計された皮膚軟化剤を含む。
【0025】
いくつかの他の実施形態では、薬剤が、容器の第2端部に隣接して配置した長時間作用する鎮痛剤の層と、容器の第1端部の皮膚の滑らかさを回復するように設計された皮膚軟化剤の層と、それらの間の抗炎症ゲルの層を含む。
【0026】
いくつかの他の実施形態では、基準オブジェクトが一連の線又は繊維を有する標線である。
【0027】
いくつかの他の実施形態では、ドレッシングが、装着要素により少なくとも1つの容器の第2端部に開放可能に結合された第2膜を更に備える。
【0028】
別の態様では、創傷に適用するためのドレッシングが提供される。ドレッシングが、第1面と第2面とを有する弾性膜と、弾性膜の第2面に結合された少なくとも1つの容器であって、弾性膜に密封結合された第1端部と、第1端部から離間し容器の開口部を画定する第2端部と、容器の容積を画定する第1端部及び第2端部間の連続的な壁と、を有する少なくとも1つの容器と、を含む。
【0029】
別の態様では、創傷に適用するための温度表示ストリップが提供される。温度表示ストリップが、温度表示膜であって、第2端部から離間した第1端部と、第1面及び第2面と、を有し、膜の第1面が創傷の周囲の皮膚領域の温度を示すように構成されている、温度表示膜と、少なくとも1つのチューブであって、温度表示膜の第2面に結合され、第1端部及び第2端部間に延在し、創傷が排出する体液を収集するように構成されている少なくとも1つのチューブと、を含む。
【0030】
いくつかの他の実施形態では、温度表示膜が弾性ベースの膜である。
【0031】
いくつかの他の実施形態では、温度表示膜の液晶が創傷の周囲の皮膚領域の温度を示す。
【0032】
いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つのチューブが、少なくとも1つのチューブにより収集された体液を収集するデバイスに流体的に結合し、閉鎖システムを形成するように構成されている。
【0033】
別の態様では、創傷の閉鎖の監視をコンピュータで実現する方法が提供される。コンピュータで実現する方法が、創傷に適用されたドレッシングを表す画像データを患者デバイスから受信することであって、ドレッシングが第1構成及び第2構成間で可動性であり、第2構成が創傷の腫脹の程度を示す、受信することと、患者デバイスから受信した画像データに基づいて、創傷の腫脹の程度を計算することと、評価ために、医師デバイスに腫脹の程度及び画像データを送信することとを含む。
【0034】
別の態様では、創傷の閉鎖を監視するためのシステムが提供される。システムは、メモリに結合されたコンピュータ処理装置であって、創傷に適用されたドレッシングを表す画像データを患者デバイスから受信することであって、ドレッシングが第1構成及び第2構成間で可動性であり、第2構成が創傷の腫脹の程度を示す、受信することと、患者デバイスから受信した画像データに基づいて、創傷の腫脹の程度を計算することと、評価するために、医師デバイスに腫脹の程度及び画像日時を送信することと、によって創傷の閉鎖を監視するようにプログラムされたコンピュータ処理装置を含む。
【0035】
別の態様では、身体の一部の腫脹を監視するためのシステムが提供される。システムは、身体の一部に適用するためのドレッシングであって、第1面と第2面とを有する弾性膜と、弾性膜の第1面に設けられた基準オブジェクトと、を備え、弾性膜が、基準オブジェクトが第1構成を有する弛緩状態と、基準オブジェクトが第2構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、基準オブジェクトの第2構成が、身体の一部の腫脹量に関連する、ドレッシングと、第2構成の基準オブジェクトの画像を撮影するためのカメラを有する第1デバイスと、第2デバイスであって、第1デバイスから基準オブジェクトの画像を受信し、ドレッシングの下にある身体の一部の腫脹の程度を判定するように構成されている第2デバイスと、を含む。
【0036】
別の態様では、身体の一部に適用するためのドレッシングが提供される。ドレッシングが、第1面と第2面及び弾性膜の第1面に設けられた基準オブジェクトを有する弾性膜を含み、弾性膜が、基準オブジェクトが第1構成を有する弛緩状態と、基準オブジェクトが第2構成を有する伸張状態と、の間で可動性であり、基準オブジェクトの第2構成が、身体の一部の腫脹量に関連する。
【0037】
いくつかの他の実施形態では、基準オブジェクトがマーキングを含み、基準オブジェクトが第1構成である時の身体の一部に対するマーキングの位置が、基準オブジェクトが第2構成である時の身体の一部に対するマーキングの位置と異なる。
【0038】
他の態様及び特徴は、いくつかの例示的実施形態の以下の説明を検討することにより、当該技術分野の当業者には明確になるであろう。
【0039】
本明細書に含まれる図面は、本明細書の物品、方法、及び器具の様々な例を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】一実施形態による、創傷に適用するためのドレッシングの端面図である。
図2】一実施形態による、図1の創傷に適用するためのドレッシングの底面図である。
図3】一実施形態による、創傷に適用するためのドレッシングの基準オブジェクトの平面図である。
図4】一実施形態による、図1の創傷に適用するためのドレッシングの平面図である。
図5】一実施形態による、図1の創傷に適用するためのドレッシングの容器の側面図である。
図6A】一実施形態による、中立状態の構成で創傷に適用するためのドレッシングの基準オブジェクトの平面図である。
図6B】一実施形態による、第1伸張構成における図6Aの基準オブジェクトの平面図である。
図6C】一実施形態による、第2伸張構成における図6Aの基準オブジェクトの平面図である。
図7】一実施形態による、膜及び基準オブジェクトを含む腫脹を監視するシステムの平面図である。
図8】膜及び図7の基準オブジェクトを含む腫脹を監視するためのシステムの別の平面図である。
図9】膜及び四肢に装着された図7の基準オブジェクトを含む、腫脹を監視するためのシステムの斜視図である。
図10A】膜及び図7の基準オブジェクトを含む腫脹を監視するためのシステムの概略上面図である。
図10B】膜及びその下の組織の腫脹を評価するための様々な測定値を示す図7の基準オブジェクトを含む腫脹を監視するためのシステムの概略上面図である。
図11】一実施形態による、創傷から体液を収集するためのドレッシングの側面図である。
図12A】一実施形態による、図1の創傷に適用するためのドレッシング及び温度表示ストリップを含む、創傷治癒を監視するシステムの平面図である。
図12B】一実施形態による、図1の創傷に適用するためのドレッシング及び温度表示ストリップを含む創傷治癒を監視するシステムの側面図である。
図13】一実施形態による、創傷治癒を監視するための創傷管理システムを示すブロック図である。
図14】一実施形態による、図13の創傷管理システムのサーバプラットホームのブロック図である。
図15】一実施形態による、腫脹を監視するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
様々な器具、システム、及び方法を以下に説明して、請求される各実施形態の一例を提供する。以下に記載される実施形態はいかなる請求される実施形態を制限するものではなく、請求される実施形態はいずれも、以下に記載されるものと異なる器具、システム、及び方法を網羅できる。請求される実施形態は、後述の任意の1つの器具、システム若しくは方法の特徴のすべてを有する器具、システム及び方法、又は後述の器具、システム及び方法の複数若しくはすべてに共通の特徴に限定されない。
【0042】
本明細書に記載の実施形態は、創傷を監視し、医療従事者にデータを送信するための器具、システム、及び方法として実施される。データに基づいて、医療従事者は、必要に応じて、評価、診断、治療の推奨及び/又は提供を行い、及び/又は患者とコミュニケーションをとってもよい。
【0043】
より詳細には、患者が創傷、損傷、病変、切り傷、傷、ただれ、擦り傷、裂傷などの画像を遠隔で撮影し、評価のために医療従事者に画像を送信することを提供する創傷管理のための器具、システム、及び方法が記載される。評価を支援するために、画像を撮影する前に、医療用ドレッシング及び/又は温度表示ストリップを創傷に適用する。医療用ドレッシングは、創傷周辺部の腫脹を評価するための基準ガイドを提供し得る基準オブジェクトを有する。基準オブジェクトの支援により、医療用ドレッシングの画像を分析し、損傷の診断に使用できる。基準オブジェクトは、下にある組織の動きに応動するマーキングを含む。撮影された画像に示されたマーキング間の距離を測定することにより、画像は、下にある創傷の治癒を評価するために使用されてもよい。撮像デバイスは、創傷の画像を収集し、後で使用するために記憶してもよい。温度表示ストリップは、創傷の周囲の温度を評価し、創傷からの体液の排出を評価するための医療従事者の基準ガイドを提供してもよい。創傷管理のためのシステム及び方法は、限定はしないが、以下のような種々の外科創傷に使用できる。形成外科創傷、耳、鼻、咽喉(ENT)の創傷(頚部に関する創傷など)、すべての一般外科創傷(限定はしないが腹部にかかわる創傷)、すべての婦人科創傷(限定はしないが腹部にかかわる創傷)、真空補助ドレナージを必要とする組織の喪失を伴わない整形外科創傷(限定はしないが膝置換術及び股関節置換術、並びに皮膚切開を介して行われる血管及び心臓の外科処置など)。
【0044】
他の実施形態では、人体の一部の腫脹を監視するための器具、システム、及び方法が本明細書で記載される。これらのシステム及び方法は、医療用ドレッシング(限定はしないが、ストッキング又は圧縮ストッキングなど)が適用された身体の一部の画像を遠隔で撮影し、処理及び評価のために画像を送信することを患者に提供する。評価のために、医療用ドレッシングは、下にある組織に適合し、複数のマーキングを含む基準オブジェクトを含む。マーキングの下にある組織が伸縮すると、医療用ドレッシングのマーキング間の距離が変化する。画像が取り込まれ、処理のために処理装置に送信された後、処理装置は、マーキング間の距離を測定し、腫脹又は収縮が厄介なものであるかどうかを評価する。これらのシステム及び方法は、以下を含むがこれらに限定はしないが、腫脹を監視する必要がある、様々な病態を評価するために使用できる。限定はしないが下肢の腫脹が一般的であり、しばしば基礎的状態の低下に伴って悪化する心不全及び腎不全のような慢性疾患、並びに限定はしないが深部静脈血栓症を監視し抑制するために四肢手術を受けた患者などの術後状態。
【0045】
ドレッシング
図1を参照すると、一実施形態による創傷に適用するためのドレッシング100が示されている。ドレッシング100は、膜102と複数の容器104とを含む。
【0046】
膜102は、第1面106、第2面108、長さL及び幅W(図2参照)を有する。長さLは、好ましくは、幅Wよりも大きく、それにより膜102は細長い形状を有する。膜102は、可撓性材料で作製され、長さLに沿った方向及び/又は幅Wに沿った方向に伸縮することが意図される。一実施形態では、膜102は、人間の通常の皮膚と同様の膨張係数を有する材料で作製される。このようにして、ドレッシング100は、創傷全体にわたって(以下に述べるように、)皮膚に適用され、創傷に隣接する領域内及びその周辺の皮膚が(例えば、創傷の下の浮腫に起因して)膨潤するとき、膜102は、下にある腫脹中の表皮の伸張と同じように伸張するドレッシング100を提供できる。膜102が伸張しなかった場合、ドレッシングを表皮に着脱可能に取り付ける接着剤は、表皮の1つ又は複数の表層を引き剥がし(例えば、引き裂く)、それによって表皮の残りの層を弱め、水疱の形成を促進する可能性があることに留意すべきである。例えば、これに限定はしないが、膜102は、エラストプラストと同様の材料で作製することができる。
【0047】
図3及び図4を参照すると、膜102のいくつかの実施形態では、膜102の第1面106は、少なくとも1つの基準オブジェクト300(後述の図3参照)を有する。要約すると、基準オブジェクトの一実施形態では、基準オブジェクト300は、創傷を分析する医療従事者のために、伸張の標準化した測定結果を提供できる。一実施形態では、基準オブジェクト300は、既知の寸法及び/又はそれらの間に間隔を有する一連の縦線、横線、及び/又は角のある細線、破線などを有する。デバイスを使用してドレッシングの画像が撮影された後、アプリケーション(例えば、スマートフォンアプリケーション)は、画像中の基準オブジェクト300の寸法(例えば、基準オブジェクトの線及び/又は記号の長さ、基準オブジェクトの線及び/又は記号の幅、基準オブジェクトの線及び/又は記号間の間隔など)を、基準オブジェクト300の記憶された寸法と比較してもよい。基準オブジェクトについては、図6を参照してさらに述べる。
【0048】
一実施形態では、基準オブジェクト300は、膜102内に埋め込まれた(例えば、限定はしないが、刺繍された)黒いバーに基づき、膜102の絶対的長さ及び隣接する容器104間のセグメントの長さの両方について膜102に沿った長手方向の伸張の正確な測定値を提供し、また同様に、膜の幅方向の測定値を提供する(すなわち、2つの平面で)。例えば、これに限定はしないが、隣接する容器104間のセグメントの伸張は、感染症が存在する場合など、創傷の1つの特定の領域で悪化する、又は創傷に沿った皮膚縁部近辺で悪化する創傷の腫脹を示すために重要であり得る。
【0049】
膜102の第2面108は、それに結合された少なくとも1つの容器104を有する。容器104は、第1端部112で膜102に密封結合されている。容器104の第2端部114は、容器104の容積118を画定する連続壁116によって第1端部112から離間している。第2端部114は、ドレッシング100が創傷に適用されたとき、容器104の容積118(図5参照)に格納された内容物を創傷に送達するための開口部120を画定する。容器104は、容積118内にマテリアルを保持できる剛性の連続した側壁116を有する。一実施形態では、壁116は、可撓性材料(例えば、発泡性材料)で作製される。例えば、これに限定はしないが、壁116は、それらの第1端部112で結合された平坦な膜102の方向に伸縮するよう可撓性であってもよい。一実施形態では、容器104は円形であり、円柱形である。容器104は、ドレッシング100が使用されている特定の創傷システム及び/又はドレッシング100が適用されている創傷の種類に応じて、約5mm~約2cmの範囲の直径を有してもよい。
【0050】
図5を参照すると、容器104の壁116は、容器104から放出時に皮膚に送達され得る内部薬剤404、406、408から壁116に加わる圧力によって、(図5に示すように)直立形状に維持される。例えば、これに限定されないが、容器104は、患者の創傷に隣接する皮膚領域に送達する薬剤404、406、408を収容してもよい。薬剤404、406及び408は、創傷治療のために創傷の周囲の皮膚領域に適用するために異なるマテリアルであり得る。例えば、これに限定はしないが、薬剤404は疼痛緩和用の局所剤であっても、薬剤406は抗炎症薬であっても、薬剤408は鎮静スキンクリームであってもよい。薬剤404、406、408の量及び組成は、薬剤404、406、408を管理する現在及び将来の規制を反映してもよい。例えば、これに限定されないが、薬剤404、406、408は、市販で購入可能であってもよいし、医師によって処方されてもよい。そのような1つの例として、キシロカインは、様々な強さで1つ又は薬剤404、406、408として含まれる可能性があり、2.5%の強さのキシロカインは医師によって処方されなければならないが、0.2%の強さのキシロカインは市販で購入されてもよい。
【0051】
図5は、患者の創傷に隣接する皮膚に送達されるように容器104によって収容される3層の薬剤404、406、408を示しているが、3層より多い又は3層より少ない薬剤を容器104が収容してもよいことを留意すべきである。
【0052】
薬剤404、406、408が容器104から出て患者の皮膚に吸収されると、容器104内に保持されている薬剤の量が減少し、マテリアル404、406、408によって壁116に加わる圧力が減少する。それにより、マテリアル404、406、408が開口部120を介して放出され、円柱104の第1端部112を固定している膜102が皮膚に近づき、壁116が崩壊する可能性がある(例えば、図2に示すように、容器104の高さHを減少させるように)。上述のように、皮膚自体が腫脹する可能性があり、容器104が容器104の第2端部114で皮膚に着脱可能に取り付けられているとき、壁118は、皮膚が腫脹する方向にそれらの側壁を変形させるのに十分な可撓性を有しており、これは通常創傷から離れる方向である。
【0053】
容器104の壁116は、第2端部114に着脱可能に取り付けられた装着機構122を有していてもよい。図1には、装着機構122が示されている。装着機構122は、患者の創傷にドレッシング100を適用する前に、容器104の容積118から薬剤404、406、408が放出されることを抑制する。患者の創傷にドレッシング100を適用する前に、ドレッシング102から装着機構122(図1の124に示すように)を取り外すと、固定機構(図示せず)が、創傷の周囲の皮膚領域へのドレッシング100の着脱可能な取り付けを容易にし得る。例えば、限定はしないが、固定機構は、一般的に入手可能なシアノアクリレートの医療グレードの接着剤などの接着剤であってもよい。
【0054】
一実施形態では、薬剤404、406、408は、容器104内で層状になっており、薬剤404は、限定はしないがリグノカイン又はマルカインなどの鎮痛剤の放出製剤を含むゲルであり、薬剤406は抗炎症薬を含むゲルであり、薬剤408は鎮静スキンクリームである。この構成において、各層の薬剤404、406、408は、薬剤404が最初に送達され、薬剤406が次に送達され、薬剤408が最後に送達されるという時間的シーケンスで、創傷の周囲の皮膚領域に送達され得る。
【0055】
一実施形態では、薬剤404と薬剤406は、境界410によって分離され得る。境界410は、例えば、薬剤の成分化合物及び皮膚に対する動きに関するそれらの既知の性能に応じて、溶解可能な膜などであってもよい。それらの薬剤の異なる供給者からの異なる薬剤の使用は、単純な層化又は溶解可能な膜の使用を必要とする可能性がある。
【0056】
一実施形態では、薬剤406と薬剤408は、境界412によって分離され得る。境界412は溶解可能な膜等であってもよい。
【0057】
別の実施形態では、容器104は、ブピバカインなどの独自の鎮痛剤及びジクロフェナクのような抗炎症剤を含む薬剤404、406、408で充填されてもよい。薬剤404、406、408は、有効成分が皮膚を通過するゲル又は同等の製剤であってもよい。上述のように、容器104は、創傷の閉鎖処置時、担当医療従事者によって取り外し可能な装着機構122(例えば、膜)によって、薬剤404、406、408を保持するために一時的に密封され得る。装着機構122を取り外すと、接着剤のリングが露出されてもよい。現在、皮膚に対象物を着脱可能に取り付けるための既知の市販マテリアルがあり、これには、皮膚刺激又は炎症を防止するために、様々な処方のシアノアクリル剤が挙げられるがこれらに限定されない。装着機構122は、容器104の第2端部114を皮膚に着脱可能に取り付ける。
【0058】
様々な数の容器104がドレッシング100上に存在してもよい。例えば、1つ又は複数の容器104が存在してもよい。一般に、容器104は、膜102の中心部分に間隔Gを設けながら、膜102全体にわたって等間隔に配置される。ドレッシング100を人に適用するとき、間隔G(図1を参照)は、ドレッシング100が創傷縁部に直接隣接する位置に着脱可能に取り付けられることを防ぐために、創傷の上を覆って整列されるべきである(創傷縁部に直接隣接する位置に取り外し可能に装着すると、ドレッシング100を皮膚から取り外す時、創傷を引き裂くおそれがあるため)。
【0059】
ドレッシング100は、創傷の皮膚縁部を一緒に保持するのに十分な張力を提供するように構成される。一実施形態では、創傷の両側に同数の容器104を配置することにより、創傷全体にわたって等しい張力を印加する。上述のように、ドレッシング100の寸法や容器104の数は、医療従事者が個々の創傷に応じて変更できる。
【0060】
ドレッシング100の容器104の数は、創傷のサイズ、ドレッシング100のサイズ、創傷の種類などに依存し得る。また、膜102に沿った容器104の間隔は、創傷のサイズ、ドレッシング100のサイズ、創傷の種類などにも依存し得る。
【0061】
一実施形態では、膜102は、各容器104の間で伸張し、各容器104の上方で剛性を有するように構成されてもよい。容器104は、膜102の長さLに沿って整列されてもよい。容器10
【0062】
一実施形態では、膜102は、例えば強力接着剤によって、円柱104に密封結合される。
【0063】
一実施形態では、膜102は、容器間の空間内(例えば、間隔G(図2参照))で伸張できるが、容器104は伸張しないが、発泡壁が剛性を有していないため変形することはできる。容器104の内容物が空になると、容器が変形する傾向が強くなる。その結果、容器104は、腫脹に起因する変形を、覆う膜102に伝達するように作用する。
【0064】
膜102の変形は、アルゴリズムを使用して測定される。特に、アルゴリズムは、膜102の上面の1つ又は複数の基準オブジェクト(例えば、標線)を用いて、膜103の変形を2つの面において測定する。例示的な基準オブジェクト600は、図6A図6Cに示され、以下でさらに説明される。
【0065】
基準オブジェクト600は、様々な形状及び/又は形態を有することができる。例えば、一実施形態では、基準オブジェクト600は、膜102に刺繍されるか、又は(例えば、限定されないが印刷によって)取り付けられてもよく、伸張していない(例えば、中立状態)構成のときには、規定の物理的寸法を有する様々な形状(例えば、円、縦線及び/又は横線など)を備えてもよい。(例えば、膜102の下にある創傷の腫脹によって)膜102の変形が生じると、基準オブジェクトを備える形状の寸法の変化(例えば、横線、縦線又は円の間の長さ、幅及び/又は間隔の変化)を、下にある創傷の腫脹を測定するために使用できる。例えば、横線の長さ及び/又は間隔の変化は、創傷の縦方向の面内の腫脹を示す可能性があり、一方、縦線の長さ及び/又は間隔の変化は、横方向の面内の腫脹を示す可能性がある。基準オブジェクトの物理的寸法の変化(例えば、基準オブジェクトの線及び/又は円の間隔、長さ及び/又は幅の変化)は、伸張した外形の基準オブジェクトの画像をスマートフォンで撮影したとき(後述するように)、モバイルアプリケーションのアルゴリズムによって測定されてもよい。
【0066】
次に図6A図6Cを参照すると、基準オブジェクトの別の実施形態の上面図が図示されている。図6Aは、中立状態の構成における縦線602a、横線604a、及び中心部分606aを備える基準オブジェクト600を示す。図6Bは、下にある弾性膜102の変形により、縦線602b及び横線604bの両方が少なくとも2方向(例えば、横方向及び縦方向)に伸張された基準オブジェクト600の第1伸張構成を示す。さらに、中心部分606bは、下にある弾性膜102の変形に起因して、中心部分606aと比較してサイズが大きくなっている。図6Cでは、縦線602aは、図6Aの縦線602aと比較して変化はないが、横線604bは、下にある弾性膜の一方向(例えば、図1の横線604aに垂直な方向)の変形に起因して伸張される。図6Cでは、中心部分606cは、下にある弾性膜の一方向(例えば、図1の横線604aに垂直な方向)の変形に起因して、一方向に伸張される。
【0067】
一実施形態では、基準オブジェクトの中心部分606aは、別の基準オブジェクト(例えば、中立状態の構成6Aに対する図6B)に対する1つの基準オブジェクトの変形の測定を提供し、一方、縦線602a及び横線604aは、それぞれ、基準オブジェクト600内の変形を測定するために使用できる。このような全体的な測定により、全部及び各配置された膜102に関して、並びに各膜102内での創傷監視が可能となる。これは、皮膚の創傷近辺に集中すると予想される腫脹に起因する予想される変形を測定するためのものであるが、創傷の他の部分で腫脹が正常範囲外に発生した場合、このシステムはその領域と腫脹の程度を識別するであろう。
【0068】
使用時、ドレッシング100は、創傷全体にわたって(例えば、創傷に対して直角に)配置されることを意図されている。膜102は、第1位置と第2位置との間で移動可能であり(例えば、可撓性/弾性であり)、創傷の周囲部の腫脹に起因する下にある皮膚の伸張に伴う膜102の伸張を提供する。いくつかの実施形態では、膜102上の基準オブジェクト(例えば、基準オブジェクト300又は600)は、膜102の伸張に伴って形状が変化する。正常な治癒により創傷が伸張したとき、膜102上の基準オブジェクト300、600を、携帯電話のカメラシステムを使用するアプリケーションを用いてそのような腫脹を測定し監視できる。膜102の膨張係数は、後述するように、測定アルゴリズムを使用して計算し、日時のスタンプを添付して主治医に送信してもよい。次に、医療従事者は、測定された膜102の膨張係数を評価し、測定された値を、知見又は類似の創傷タイプのデータベースからの期待される転帰に関連付けてもよい。測定値と期待される転帰との間に大きな乖離がある場合、医療従事者は、次に例えば、患者の臨床検査を要請してもよい。
【0069】
好ましくは、患者は、定期的に、創傷とドレッシングの画像を撮影するか、又は友人、親族、介護人などに画像を撮影させる事が可能で、医療従事者は、定期的又は患者の不安に基づく緊急的ではなく、観察された結果に基づいて予約をスケジュールできる。
【0070】
次に、図7及び図8を参照すると、膜652及び基準オブジェクト654を含むドレッシング650の別の実施形態が図示されている。本実施形態では、ドレッシング650は、身体の一部分に適用され、身体の一部分の腫脹を監視できる。
【0071】
膜652は、人体の一部に適用されると、人体の一部に適合する任意の膜であってもよい。例えば、図9に示すように、ドレッシング650は、綿繊維を含む糸で巻かれた弾性芯糸を有する糸から作製された四肢(例えば、腕や脚)に着用される圧迫弾性ストッキングであってもよい。
【0072】
基準オブジェクト654は、膜652に適用されるか、又は膜652と一体であり、複数のマーキングを含んでもよい。マーキングは、ドレッシング650の形状の変化を視覚化するために使用され得る個々の又は一組の視覚的指標であってもよい。次に、図10A及び図10Bを参照すると、マーキングの3つの領域654a、654b及び654cを含むドレッシング650の実施形態が示されている。領域654a、654cはそれぞれ、マーキングの複数の列655及び複数の行656を含み、長方形の形状を有する格子状パターンを形成する。領域654bは、縦線657、横線658、及び中心点659を含み、領域654aと654cとの間に配置するように示されている。
【0073】
基準オブジェクト652はまた、境界線660を含んでもよく、基準オブジェクト654の境界を示す実線又は破線であってもよい。図10A及び図10Bに示す実施形態では、境界線660は、上側の破線660a及び下側の破線660bの他に、各行656の外端点を含む。
【0074】
図10Bに示すように、基準オブジェクト652の様々な特徴間の測定を行い、膜652の下にある組織の動きを分析してもよい。一例では、測定は、領域654a、654cのいずれかの角と中心点659との間で行うことができる。これらの測定の例は、図10Bの線662で示される。別の実施例では、測定は、境界線660a、660bのいずれかの部分と中心点659との間で行うことができる。これらの種類の測定の例は、図10Bの線663によって示される。別の実施例では、測定は、縦線657、横線658のいずれかの端点との中心点659との間で行うことができる。これらの種類の測定の例は、図10Bの線664によって示されている。別の実施例では、測定は、領域654a、654cのいずれかの角と縦線657及び横線658の端点との間で測定を行うことができる。この種類の測定の例は、図10Bの線665によって示されている。
【0075】
膜652の変形が起こると(例えば、ドレッシング650の下にある組織の腫脹又は収縮によって)、基準オブジェクト654のマーキングの変化(例えば、横線、縦線又は円の間の長さ、幅及び/若しくは間隔の変化、並びに/又は上述のようにマーキング上の様々な点間の距離の変化)は、下にある組織の腫脹及び/又は収縮を測定するために使用できる。基準の物理的寸法の変化は、画像に取り込まれ、分析のために処理装置に送信されてもよい。
【0076】
図11には、ドレッシング675の別の実施形態の断面図が示されている。ドレッシング675は、弾性膜676と、弾性膜676の上面に印刷された標線677とを含む。ドレッシング675は、2つの薬剤チャンバ681、682の間に配置された収集チャンバ680をも含む。薬剤チャンバ681、682は、図1に関して前述したように、ドレッシング675が創傷を覆っているか、又は実質的に創傷を覆っているときに、創傷に適用される薬剤が充填されてもよい。薬剤チャンバ681、682は、薬剤チャンバ681、682と収集チャンバ680との間の体液の移動を抑制する剛性側壁683、684によって収集チャンバ680から分離されていてもよい。剛性側壁683、684は、上述の側壁116と同様の特性を有してもよい。第1基部685は、薬剤チャンバ681、682のそれぞれの底部を覆い、薬剤チャンバ681、682から創傷への薬剤の送達を制御する。第2基部686が含まれ、収集チャンバ680の底部を覆ってもよい。いくつかの実施形態では、第2基部686は、創傷から収集チャンバ680への体液の吸収を促してもよい。いくつかの実施形態では、第2基部686は、収集チャンバ680内の体液が収集チャンバ680内に保持されることを促してもよい。ドレッシング675は、弾性膜676の少なくとも一部の底面679に設けられた接着剤を使用して、組織に着脱可能に固定されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のドレッシングは、弾性膜が自然状態にあるときの第1構成と、弾性膜が伸張されたときの第2構成との間で変化する、ドレッシングの上面に適用されたホログラムを含んでもよい。ホログラムは、ドレッシングの製造メーカを示すために使用してもよい。
【0078】
温度表示ストリップ 図12A及び図12Bを参照すると、温度表示ストリップ700が図示されている。温度表示ストリップ700は、第1面702、第2面704、第1端部706、及び第2端部708を有する。
【0079】
温度表示ストリップ700は、一般に、創傷に沿って長手方向に適用され、上述のドレッシング100とは独立した器具である。
【0080】
温度表示ストリップ700は、複数のチューブ710を介して創傷からの体液排出物を収集する配置システムに適用される。チューブ710は、700から分離され、限定はしないがシアノアクリル系バイオグルーなどの専有バイオグルーを用いて、創傷の一方の皮膚に結合(例えば、接着)され、チューブ710は、温度感知デバイス700から分離されており、創傷に適用されるときは無菌である。無菌チューブ710の適用は、創傷を密封し、非無菌(例えば、アルコール洗浄)の温度感知ストリップ700を、チューブ710システムの上及びいずれかの側に適用することを提供する。チューブ710は、外科医によって手術室内で、温度表示ストリップ700の第2面704に結合されるようになっている。チューブ710は、創傷から体液排出物を受け取り、体液を端部702及び704のうちの1つに向かって導くように構成されている。一実施形態では、チューブ710は、チューブ710から体液を収集する収集デバイス(図示せず)に結合してもよい(例えば、それによって温度表示ストリップ700と閉鎖システムを形成する)。創傷からチューブ710に収集される体液は、血液、体液、感染性排出物などであってもよい。閉鎖収集システムは、患者と医療従事者にとって明らかな利点がある。
【0081】
図12A及び図12Bに示すように、本明細書で記載されるドレッシング100とともに使用されるとき、温度表示ストリップ700は、一般的に、ドレッシング100の下に、長手方向に創傷に沿って、かつ創傷の上に直接配置される。次に、ドレッシング100は、温度表示ストリップ700上に(例えば、直角に)適用され、創傷の周囲部の腫脹量を測定してもよい。
【0082】
一実施形態では、排出物は、チューブ710内の直線状の毛細管チャネル(図示せず)による毛細管力によりチューブ710によって収集され、毛細管力によりチューブ710を通って導かれ、収集容器(図示せず)の吸収性材料に吸収される。
【0083】
温度表示ストリップ700は、ドレッシング100とともに使用されるとき、医療従事者に直接データを提供してもよい。例えば、ドレッシング100及び温度表示ストリップ700の画像を捕捉すると、別個の温度表示ストリップ700は、異なる物理的外観(例えば、第1面702上に異なる色)を示すことにより、創傷の温度を示す。
【0084】
一実施形態では、温度表示ストリップ700は、それが取り付けられている皮膚の周囲温度に応じて色を変化させることができるプラスチックベースの材料で作製される。一例では、温度表示ストリップ700の温度範囲は、36℃~40℃であってもよい。
【0085】
例えば、いくつかの実施形態では、温度表示ストリップは、下にある面の温度の変化によって色が変化する液晶を備えてもよい。これらの液晶は、サーモクロミック液晶(TLC)、コレステリック液晶などであってもよい。いくつかの実施形態では、液晶は、保護、安定化、及び液晶の使用を容易にするためにマイクロカプセル化されていてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、温度表示ストリップは、フィーバースキャン(商標)温度表示ストリップ(LCRHallcrest(グレンビュー、イリノイ州)社製)である。
【0087】
創傷測定アプリケーション 本明細書で記載される1つ又は複数のシステムは、それぞれが少なくとも1つの処理装置、データ記憶システム(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶要素を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスを備えるプログラム可能なコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムで実装されてもよい。例えば、限定することなく、プログラム可能なコンピュータは、プログラマブル論理ユニット、メインフレームコンピュータ、サーバ、パーソナルコンピュータ、クラウドベースのプログラム又はシステム、ラップトップ、パーソナルデータアシスタンス、携帯電話、スマートフォン、又はタブレットデバイスであってもよい。
【0088】
各プログラムは、好ましくは、高レベル手続き型やオブジェクト指向のプログラミング及び/又はスクリプト言語で実装され、コンピュータシステムと通信する。しかしながら、プログラムは、所望であれば、アセンブリ言語や機械語で実装されてもよい。いずれにしても、言語はコンパイル言語又は、インタプリタ言語であってもよい。そのような各コンピュータプログラムは、本明細書で記載される手順を実行するために記憶媒体又はデバイスがコンピュータによって読み取られるとき、好ましくはコンピュータを構成及び動作させるために、汎用又は特殊目的のプログラム可能なコンピュータにより可読な記憶媒体又はデバイスに記憶されている。
【0089】
互いに通信するいくつかの構成要素を有する実施形態の説明は、そのような構成要素のすべてが必要であることを意味するものではない。これに対して、本発明の様々な可能な実施形態を例示するために、様々な任意構成要素が説明されている。
【0090】
さらに、プロセス工程、方法工程、アルゴリズムなどは、(開示及び/又は特許請求の範囲において)連続した順序で記述されてもよいが、そのようなプロセス、方法、及びアルゴリズムは、別の順序で動作するように構成されてもよい。言い換えると、記載し得る工程の任意のシーケンス又は順序は、必ずしもその順序で実行されるという要件を示すものではない。本明細書で記載されるプロセスの工程は、実用的な任意の順序で実行されてもよい。さらに、いくつかの工程が同時に実行されてもよい。
【0091】
単一のデバイス又は物品が本明細書で記載されるとき、単一のデバイス/物品の代わりに、2つ以上のデバイス/物品が(それらが協働するか否かにかかわらず)使用されてもよいことは容易に明らかであろう。同様に、2つ以上のデバイス又は物品が本明細書で記載されている場合(それらが協働するか否かにかかわらず)、1つのデバイス/物品が2つ以上のデバイス又は物品の代わりに使用されてもよいことは容易に明らかであろう。
【0092】
図13は、一実施形態による、創傷治癒を監視するための創傷管理システム800を示すブロック図である。創傷管理システム800は、複数のデバイス(例えば、上述したように、ドレッシング100及び温度表示ストリップ700)によって示される差異を測定、検出することによって創傷治癒を監視するためのものである。創傷管理システム800は、単一の創傷に限定されるものではなく、それぞれが複数のデバイスを有する同じ種類及び/又は異なる種類の創傷に拡張されてもよい。
【0093】
管理システム800は、医療従事者(例えば、医師、外科医、看護師など)が、患者を直接実際に見ることなく、患者の創傷治癒を測定、監視することを可能とする。これを実現するために、創傷管理システム800は、複数の患者デバイス802を備え、それぞれがカメラ804と処理装置806を有する。例えば、創傷を有する患者は、モバイルアプリケーション808が記憶されているモバイルデバイス802を用いて創傷の写真を撮影してもよい。患者は、モバイルアプリケーション808を使用して、評価のために医師デバイス818に再配布するために、画像をサーバ810に送信してもよい。医療従事者デバイス818は、情報をサーバ810に送り返すか、又は直接モバイルデバイス802に送信してもよい。
【0094】
サーバ810は、ネットワーク816を介して、複数の患者デバイス802、複数の医師デバイス818と通信する。サーバ810は、施設のマップを作成するためのシステム及び方法を実現するために、特別に設計された専用のマシンであってもよい。
【0095】
サーバ810、患者デバイス802、及び医師デバイス818は、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレット、PDA、スマートフォン、又は他のコンピュータデバイスであってもよい。デバイス802、810及び818は、インターネットへの有線又は無線接続などのネットワーク816との接続を含んでもよい。場合によっては、ネットワーク816は、他の種類のコンピュータネットワーク又は遠距離通信ネットワークを含んでもよい。デバイス802、810及び818は、メモリ、二次記憶デバイス、処理装置、入力デバイス、表示デバイス、及び出力デバイスのうちの1つ又は複数を含んでもよい。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は同様の種類のメモリを含んでもよい。また、メモリには、処理装置が実行するための1つ又は複数のアプリケーションを記憶してもよい。アプリケーションは、後述する機能の処理を実行するコンピュータ実行可能命令を含むソフトウェアモジュールに相当してもよい。二次記憶デバイスとしては、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、ブルーレイドライブ、又は他の種類の不揮発性データ記憶が挙げられる。処理装置は、アプリケーション、コンピュータ可読命令又はプログラムを実行することができる。アプリケーション、コンピュータ可読命令又はプログラムは、メモリ又は二次記憶デバイスに記憶されてもよく、又はインターネット又は他のネットワーク20から受信されてもよい。入力デバイスは、デバイス802、810及び818に情報を入力するための任意のデバイスを含んでもよい。例えば、入力デバイスは、キーボード、キーパッド、カーソル制御デバイス、タッチスクリーン、カメラ又はマイクなどであってもよい。表示デバイスは、視覚的情報を提示する任意の種類のデバイスを含んでもよい。例えば、表示デバイスは、コンピュータモニタ、フラットスクリーンディスプレー、プロジェクタ又はディスプレイパネルであってもよい。出力デバイスは、例えばプリンタのような情報のハードコピーを提示する任意の種類のデバイスを含んでもよい。また、出力デバイスは、例えばスピーカなどの他の種類の出力デバイスを含んでもよい。場合によっては、デバイス802、806、810、814は、処理装置、アプリケーション、ソフトウェアモジュール、二次記憶デバイス、ネットワーク接続、入力デバイス、出力デバイス、及び表示デバイスのうちの任意の1つ又は複数を含んでもよい。
【0096】
デバイス802、810及び818は、様々な構成要素を用いて記載されているが、デバイス802、810及び818が、場合によっては、より少ない、追加の、又は異なる構成要素を含み得ることは、当該技術分野の当業者には理解されよう。さらに、デバイス802、810及び818の実施形態の態様は、メモリに記憶されるように記述され得るが、これらの態様は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、若しくはDVDを含む二次記憶デバイス、インターネット又は他のネットワークからの搬送波、又はRAM若しくはROMの他の形態などの他のタイプのコンピュータプログラム製品又はコンピュータ可読媒体に記憶され得る、又はそこから読み取られ得ることは、当該技術分野の当業者には理解されよう。コンピュータ可読媒体は、特定の方法を実行するためにデバイス802、810、818及び/又は処理装置を制御する命令を含んでもよい。
【0097】
以下の説明では、サーバ810、患者デバイス802、及び医師デバイス818などのデバイスが、特定の動作を実行することが記載されている。これらのデバイスのうちの任意の1つ又は複数が、自動的に、又はそのデバイスのユーザによる相互対話に応答して動作を実行してもよいことが理解されるであろう。つまり、デバイスのユーザは、1つ又は複数の入力デバイス(例えば、タッチスクリーン、マウス、又はボタン)を操作して、デバイスに記載された動作を実行させてもよい。多くの場合、この態様は、以下では説明しない可能性があるが、理解されるであろう。
【0098】
一例として、デバイス802及び818は、サーバ810に情報を送信し得ることを以下で説明する。例えば、患者ユーザは、1つ又は複数の入力デバイス(例えば、マウス及びキーボード)を操作して、患者デバイス802のディスプレーに表示されたユーザインターフェイスと対話することができる。一般に、患者デバイス802は、ネットワーク816から(例えば、ウェブページの形で)ユーザインターフェイスを受信してもよい。代替的又は追加的に、ユーザインターフェイスは、患者デバイス802にローカルに記憶されていてもよい(例えば、ウェブページ又はモバイルアプリケーションのキャッシュ)。
【0099】
サーバ810は、複数の患者デバイス802及び医師デバイス810のそれぞれから、複数の情報を受信するように構成されていてもよい。一般に、情報は、患者又は医師をそれぞれ識別する識別子を少なくとも含んでもよい。例えば、情報は、ユーザ名、電子メールアドレス、パスワード、又はソーシャルメディアハンドルのうちの1つ又は複数を含んでもよい。また、サーバは、医師が創傷の治癒を評価するために、創傷の画像及び上述のデバイス100、700を受信してもよい。
【0100】
情報の受信に応答して、サーバ810は、情報を記憶データベースに記憶してもよい。記憶データベースは、デバイス802、818の二次記憶に相当してもよい。一般に、記憶データベースは、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、メモリカード、又はディスク(例えば、CD、DVD、又はブルーレイなど)などの任意の好適な記憶デバイスであってもよい。また、記憶データベースは、サーバ806とローカルに接続されてもよい。場合によっては、記憶データベースは、サーバ806から遠隔地に配置され、例えばネットワークを介してサーバ806にアクセス可能であってもよい。場合によっては、記憶データベースは、ネットワーク化されたクラウド記憶プロバイダに配置された1つ又は複数の記憶デバイスを含んでよい。
【0101】
患者デバイス802は、患者アカウントに関連付けられてもよい。同様に、医師デバイス818は、施設アカウントに関連付けられてもよい。デバイスをアカウントに関連付けるための任意の好適な機構が明示的に考えられる。場合によっては、デバイスは、サーバ810に認証情報(例えば、クッキー、ログイン、又はパスワードなど)を送信することにより、アカウントに関連付けられてもよい。サーバ810は、認証情報を検証(例えば、受信したパスワードがアカウントに関連付けられたパスワードと一致することを判定する)してもよい。デバイスがアカウントに関連付けられている場合、サーバ806は、そのデバイスによるさらなる動作を、そのアカウントに関連付けられているとみなしてもよい。
【0102】
デバイス802、818及びサーバ810は、例えば、Socket IOなどのWebSocketプロトコルの実装を使用して、非同期に通信してもよい。更新は、サーバ810から、割り込みとして(すなわちポーリングなしで)リアルタイムにデバイス802、814のそれぞれに送信されてもよい。同様に、ユーザ相互対話データは、デバイス802、818のそれぞれから、割り込みとして(すなわちポーリングなしで)リアルタイムでサーバ810に送信されてもよい。
【0103】
次に図14を参照すると、一実施形態によるサーバ810が図示されている。サーバ810は、コンテンツ管理システム(CMS)824、及び分析データベースシステム826を含む。サーバ810は、複数のバックエンドデバイス、例えばサーバを含んでもよい。CMS824及び分析データベースシステム826は、サーバ810によってホストされてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、CMS824は、通常、ウェブサービスとして実装されたフロントエンド・インターフェイス・アプリケーションであってもよい。いくつかの実施形態では、CMS824は、創傷画像に関連する情報を含むコンテンツを記憶し、デバイス802、818から受信したコンテンツの更新を処理し、デバイス802、818にコンテンツを提供する。例えば、CMS824は、非構造化問い合わせ言語(NoSQL)データベースアプリケーションであってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、分析データベースシステム826は、分析エンジン832を含むか、又は分析エンジン832に動作可能に接続されている。分析データベースシステム826は、通常、ウェブサービスとして実装されたデータベースアプリケーションであってもよい。分析データベースシステム826は、すべてのユーザ相互対話、例えば、ユーザの選択又は「ヒット」、検索、日付、モバイルデバイスの種類を記憶し、ユーザ相互対話に関連する分析を生成する。有利には、ユーザ相互対話は、デバイス802、818の複数の異なるデバイスに対して記録されるので、比較的大きなサンプルサイズが得られる。さらに、分析データベースシステム826は、分析エンジン832を用いて、創傷固有のデータセット、施設の創傷転帰、個々の外科医と提供者の転帰、及び様々な創傷治療選択肢の分析のための任意の他の機会の分析を可能とし得る集合的なデータセットの統合的なデータ分析を実行し、記憶する。
【0106】
いくつかの実施形態では、アプリケーション808は、患者デバイス802で起動されると、カメラ804を制御する。いくつかの実施形態では、アプリケーションを起動する前に患者の認証が確認される。例えば、アプリケーション808は、モバイルデバイス802上の顔認識ソフトウェア、虹彩スキャン、又は指紋スキャンのうちの1つ又は複数を使用して、患者の認証を確認してもよい。上述のいずれかの認証確認技術に基づいて生成された確認情報は、サーバ810で記憶され、カルテにリンクされてもよい。確認は、アプリケーション808がモバイルデバイス802にダウンロードされたときに行われてもよい。別の実施例では、医師は、例えばライセンス番号を入力することにより、医師デバイス818を介して確認情報を提供してもよい。医師確認情報は、患者は閲覧又は検索できないが、サーバ810に存在する。
【0107】
アプリケーション808が起動され、カメラ804が創傷に焦点を合わせると、アプリケーション808は、例えば、膜102の基準オブジェクト300の特定のマーカーを認識することにより、カメラ804による制御を想定する。次に、アプリケーション808は、方位をモバイルデバイス802のディスプレーに投影し、それによりデバイス802の保持者をガイドして、カメラ804を創傷に最適な位置に整列させ、創傷を表現する画像を得ることができる。
【0108】
一実施形態では、アプリケーション808は、膜102及びストリップ700の端部にそれぞれ埋め込まれた基準バーコード(図示せず)を使用して、ドレッシング100及び/又は温度表示ストリップ700の視野を最適化してもよい。一例では、基準バーコードは、ドレッシングされる創傷の種類及び/又は他の製造データを記述してもよい。
【0109】
アプリケーション808は、例えば膜102の表面に埋め込まれた基準オブジェクト300を使用して、位置決め及び創傷腫脹による膜102の伸張(つまり、延伸)の測定の両方について、デバイス102をガイドできる。創傷に適用されると、膜102は創傷全体にわたる(例えば、創傷を横切って延在する)。したがって、複数の基準オブジェクト300を膜102に沿って位置決めすることにより、伸張(つまり、延伸)は、ドレッシング100の長さLに沿って測定でき、これは、腹部の創傷などの大きな創傷に対して特に重要であり得る。
【0110】
別の実施形態では、患者は、アプリケーション808を介して転送された画像データに誰がアクセスするかを制御でき、それにより、様々な医療従事者が画像データにアクセスできる。データへのアクセスは、画像データが記憶されているサーバ806で構成されてもよい。いくつかの実施形態では、画像データは、デバイス102に記憶されていなくてもよい。むしろ、患者は、サーバ806に画像データを提供した後の一定期間(例えば、サービス利用後2年間)、サーバ806に記憶された画像データの受信を要求できる。
【0111】
皮膚の伸張と皮膚温度の測定を組み合わせることで、医療従事者に有意なフィードバックを提供できる。アプリケーション806は、全体としての膜102の伸張、及び容器104間の膜102の伸張を測定することも可能であることに留意すべきである。アプリケーション806は、画像データ、測定データなどを記録し、同じ創傷の追加画像が撮影されるにつれて経時的な変化(測定データの変化など)を表示でき、それにより、医療従事者にリアルタイムな変化を提供する。
【0112】
図15は、別の実施形態による、腫脹を監視するためのシステム900を示す別の図である。システム900は、ドレッシング上の基準オブジェクトの特徴間の差を測定し、検出することにより創傷治癒を監視するためのものである。
【0113】
システム900は、少なくとも1つの患者デバイス902、少なくとも1つのサーバ910、及び少なくとも1つの医師デバイス918を含む。患者デバイス902は、ドレッシング(例えばドレッシング650)の画像を撮影し、画像を(例えばネットワークを介して)サーバ910に送信する。画像は、サーバ910の画像処理装置930によって受信される。画像デジタイザ932は、処理装置930から画像を受信し、画像を一組のデジタル値に変換する。一旦、画像が一組のデジタル値に変換されると、集められたデータに集合体データ分析を行い記憶する分析エンジン934を使用して分析される。ルール処理装置936は、デジタル画像に様々なルールを適用して、ドレッシングの変形及び下にある組織の腫脹を評価する。
【実施例
【0114】
創傷管理システム
創傷管理アプリケーションは、特定の創傷ケアアプリケーションのために撮影された各画像で数百のデータ点を収集してもよい。例えば、治癒1日目に、創傷を覆う基準オブジェクトの初期点を、デカルト平面上のx、y座標に変換して撮像してもよい。2日目、及びそれ以降の数日間は、新たな画像を撮影し、基準オブジェクトのx、y座標の値を新たなx、y座標にマッピングしてもよい。アプリケーションは、デルタx(dx)、デルタy(dy)の値として、対応する各点間の差を算出してもよい。各点は、一意の「原点画像」を使用して前日の点と照合され、各点の相対位置、つまり対応するデルタ値が確立される。
【0115】
各創傷は、(例えば、身体上の創傷の位置及び実施された外科的処置、並びに他の要因に基づいて)異なって治癒するので、提案されたアルゴリズムは、創傷を分析するための異なる「モード」を有してもよい。例えば、盲腸切除のための腹部の創傷は、創傷の治癒過程を追跡するために、同様の創傷に対してマッピングされてもよい。
【0116】
さらに、基準オブジェクト上の各測定点は、一意であり、基準オブジェクトの中心点から正確に識別され得ることに留意すべきである。基準オブジェクト上の各点間の差は、1/100ミリ単位で測定でき、デカルト平面上の変化方向に基づき、ユーザインターフェイス上(例えば)で正の値又は負の値で表すことができる。
【0117】
機械学習の初期段階では、創傷管理アプリケーションは、正常及び健康なケースで構成され、健康な患者の予想される転帰を特定してもよい。実施形態では、創傷管理アプリケーションは、確立されたアルゴリズムに基づいて異常治癒を識別してもよい。
【0118】
患者に対する複数のデータ点A1、A2、A3~A100の位置の変化を示す例示的なデータテーブルを以下に示す。
【表1】

【0119】
指数関数的減衰回帰を使用して、例えば創傷管理アプリケーションは、創傷が正常に治癒しているか異常に治癒しているかを判定及び/又は予測し、医師(例えば外科医)へ警告を自動的に生成し、創傷及び/又は治癒過程の詳細(例えば感染の可能性)を提供してもよい。一例では、正常な創傷治癒の経時的な回帰の感染の可能性が、一般にゼロに近づくのに対し、他の異常な創傷治癒の回帰はゼロに近づかない。さらに、創傷治癒回帰は、指数関数を、dx及びdyが経時的に依存するパラメータ方程式に変換することにより、正常治癒が達成される時間を予測するために使用することもできる。
【0120】
上記説明は、1つ又は複数の器具、方法、又はシステムの例を提供するが、他の器具、方法、又はシステムは、当業者によって解釈されるように、特許請求の範囲の範囲内にあり得ることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15