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特許7582622カチオン重合開始剤、末端反応性ポリマー、末端修飾ポリマー、及びグラフトポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】カチオン重合開始剤、末端反応性ポリマー、末端修飾ポリマー、及びグラフトポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
C08G65/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021518395
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018532
(87)【国際公開番号】W WO2020226154
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2019089158
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】長束 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】前原 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 円香
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342326(JP,A)
【文献】特開平09-110975(JP,A)
【文献】VARGAS J. Sierra,Cationic Synthesis of Macromers,Polymer Bulletin,1980年,3,83-89
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカチオン重合開始剤。
【化1】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Yは対アニオンである。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される化合物と超強酸の金属塩との反応物である請求項1に記載のカチオン重合開始剤。
【化2】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、X及びXはハロゲン原子である。)
【請求項3】
前記非求核性有機基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である請求項1又は2に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項4】
前記超強酸の金属塩は、超強酸の銀塩である請求項2に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項5】
前記超強酸の銀塩は、CFSOAg、FSOAg、ClSOAg、AgPF、AgBF、AgNbF、AgTaF、AgAsF、及びAgSbFからなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載のカチオン重合開始剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のカチオン重合開始剤を用いてモノマーを重合して得られる下記一般式(3)で表される末端反応性ポリマー。
【化3】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Rはポリマーセグメントである。)
【請求項7】
前記モノマーは、環状モノマーである請求項6に記載の末端反応性ポリマー。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる下記一般式(4)で表される末端修飾ポリマー。
【化4】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【請求項9】
請求項6又は7に記載の末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる下記一般式(5)で表される末端修飾ポリマー。
【化5】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、R及びRはそれぞれ独立に前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【請求項10】
請求項6又は7に記載の末端反応性ポリマーと、活性水素を2つ以上有する化合物とを反応して得られる下記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するグラフトポリマー。
【化6】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を2つ以上有する化合物から活性水素を2つ除いた残基であり、nは1以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカチオン重合開始剤、前記重合開始剤を用いて得られる末端反応性ポリマー、前記末端反応性ポリマーを用いて得られる末端修飾ポリマー及びグラフトポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸ハロゲン化物と超強酸の銀塩から調製されるアシルカチオンは、カチオン重合開始剤として機能する。
【0003】
例えば、非特許文献1には、メタクリル酸クロリドとヘキサフルオロアンチモン銀から調製されるカチオン重合開始剤を用いて、末端にメタクリロイル基を有するポリテトラヒドロフランを合成することが記載されている。
【0004】
また、ハロゲン化アリルと超強酸の銀塩から調製されるアリルカチオンも、カチオン重合開始剤として機能する。
【0005】
例えば、非特許文献2には、ハロゲン化アリルとヘキサフルオロリン酸銀から調製されるカチオン重合開始剤を用いて、ポリテトラヒドロフランを合成することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. S. Vargas, J. G. Zilliox,P. Rempp, E. Franta, Polymer Bulletin, 1980, 3, 83
【文献】F. J. Burgess, A. V. Cunliffe, D. H. Richards, D. Thompson, Polymer, 1978, 19, 334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1及び2に記載のカチオン重合開始剤では、末端に置換反応及び付加反応が可能な反応性の官能基を有するポリマーを合成することはできない。
【0008】
前記ポリマーは、高分子鎖を各種材料の表面やタンパク質などの薬剤に修飾する場合や、異種又は同種の高分子鎖同士を連結して、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及び星形ポリマーなどの高次構造のポリマーを合成する場合に非常に有用である。
【0009】
本発明は、末端に置換反応及び付加反応が可能な反応性の官能基を有するポリマー(末端反応性ポリマー)を合成するためのカチオン重合開始剤、前記重合開始剤を用いて得られる末端反応性ポリマー、前記末端反応性ポリマーを用いて得られる末端修飾ポリマー及びグラフトポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すカチオン重合開始剤を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表されるカチオン重合開始剤、に関する。
【化1】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Yは対アニオンである。)
【0012】
前記カチオン重合開始剤は、下記一般式(2)で表される化合物と超強酸の金属塩との反応物であることが好ましい。
【化2】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、X及びXはハロゲン原子である。)
【0013】
前記非求核性有機基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0014】
前記超強酸の金属塩は、超強酸の銀塩であることが好ましい。前記超強酸の銀塩は、CFSOAg、FSOAg、ClSOAg、AgPF、AgBF、AgNbF、AgTaF、AgAsF、及びAgSbFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記カチオン重合開始剤を用いてモノマーを重合して得られる下記一般式(3)で表される末端反応性ポリマー、に関する。
【化3】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Rはポリマーセグメントである。)
【0016】
前記モノマーは、環状モノマーであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる下記一般式(4)で表される末端修飾ポリマー、に関する。
【化4】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【0018】
また、本発明は、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる下記一般式(5)で表される末端修飾ポリマー、に関する。
【化5】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、R及びRはそれぞれ独立に前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【0019】
また、本発明は、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を2つ以上有する化合物とを反応して得られる下記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するグラフトポリマー、に関する。
【化6】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を2つ以上有する化合物から活性水素を2つ除いた残基であり、nは1以上の整数である。)
【発明の効果】
【0020】
本発明者らは、超強酸の金属塩に、上記一般式(2)で表される化合物を反応させると、重合開始能力を有するアシルカチオンが高い選択性で生じることを見出した。そして、万が一、アシルカチオンと共にアリルカチオンが生じたとしても、当該アリルカチオンは重合開始能力を有さないことを見出した。つまり、本発明のカチオン重合開始剤は、重合開始能力を有するアシルカチオンと、アリル位に活性なハロゲン原子とを有している。本発明のカチオン重合開始剤を用いて各種モノマーを重合することにより、アリル位に活性なハロゲン原子を有する末端反応性ポリマーを効率よく、しかも副生成物を生じることなく製造することができる。前記末端反応性ポリマーのアリル位のハロゲン原子は、種々の化合物に置換することができるため、前記末端反応性ポリマーに種々の官能基を導入することができる。また、前記末端反応性ポリマーは、高分子鎖を各種材料の表面やタンパク質などの薬剤に修飾する場合や、異種又は同種の高分子鎖同士を連結して、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及び星形ポリマーなどの高次構造のポリマーを合成する場合に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<カチオン重合開始剤>
本発明のカチオン重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化7】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Yは対アニオンである。)
【0022】
前記非求核性有機基は、求核性を有さない有機基であればよく、その他は特に制限されず、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された有機基、脂環式炭化水素基、前記脂環式炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された有機基、芳香族炭化水素基、前記芳香族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された有機基などが挙げられる。前記ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子などが挙げられる。また、前記炭化水素基は種々の置換基を有していてもよい。
【0023】
前記Xは、ハロゲン原子であり、反応性、製造容易性、及びコストの観点から、好ましくは塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0024】
前記Yは、対アニオンであり、その種類は特に制限されない。
【0025】
前記カチオン重合開始剤の調製方法は特に制限されず、例えば、下記一般式(2)で表される化合物と超強酸の金属塩とを反応させることにより調製することができる。
【化8】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、X及びXはハロゲン原子である。)
【0026】
前記非求核性有機基及びXに関する説明は、前記と同様である。前記Xは、ハロゲン原子であり、反応性、製造容易性、及びコストの観点から、好ましくは塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0027】
前記超強酸の金属塩は特に制限されず、超強酸としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロニオブ酸、ヘキサフルオロタンタル酸、ヘキサフルオロヒ素酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びクロロスルホン酸などが挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩、及び銅塩などが挙げられる。
【0028】
前記超強酸の金属塩は、アシルカチオンを選択的に生じさせる観点から、好ましくは超強酸の銀塩であり、より好ましくはCFSOAg、FSOAg、ClSOAg、AgPF、AgBF、AgNbF、AgTaF、AgAsF、及びAgSbFからなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくはCFSOAgである。
【0029】
前記超強酸の金属塩の使用量は、アシルカチオンを選択的に生じさせる観点から、上記一般式(2)で表される化合物1モル当量に対して、好ましくは1.1モル当量以上であり、より好ましくは1.2モル当量以上であり、また、好ましくは1.5モル当量以下であり、より好ましくは1.3モル当量以下である。
【0030】
<末端反応性ポリマー>
本発明の末端反応性ポリマーは、前記カチオン重合開始剤を用いてモノマーを重合して得られる、下記一般式(3)で表されるものである。
【化9】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Rはポリマーセグメントである。)
【0031】
前記非求核性有機基及びXに関する説明は、前記と同様である。前記Rは、各種のモノマーが重合して得られるポリマーセグメントである。
【0032】
前記モノマーは特に制限されず、例えば、ビニルスルフィド、芳香族ビニルモノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテル、及びケテンアセタールなどの炭素-炭素二重結合を有するモノマー;環状エーテル、環状スルフィド、環状(第三級)アミン、環状リン酸エステル、環状亜リン酸エステル、環状スルホン、環状スルホン酸エステル、ラクトン、ラクタム、チオラクトン、チオラクタム、及び環状アセタールなどの環状モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、環状モノマーを用いることが好ましい。
【0033】
前記ビニルスルフィドとしては、例えば、メチルビニルスルフィド、エチルビニルスルフィド、及びフェニルビニルスルフィドなどが挙げられる。
【0034】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、及びその他の置換スチレンなどが挙げられる。
【0035】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
前記ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、及びジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
前記ケテンアセタールとしては、例えば、ケテンジメチルアセタールなどのケテンジアルキルアセタールなどが挙げられる。
【0038】
前記環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジオキサン、及び1,4-ジオキサンなどが挙げられる。
【0039】
前記環状スルフィドとしては、例えば、エチレンスルフィド、トリメチレンスルフィド、テトラヒドロチオフェン、及びテトラヒドロチオピランなどが挙げられる。
【0040】
前記環状(第三級)アミンとしては、例えば、N-メチルエチレンイミン、N-フェニルエチレンイミン、N-メチルアゼチジン、N-フェニルアゼチジン、N-メチルピロリジン、N-フェニルピロリジン、N-メチルピペリジン、及びN-フェニルピペリジンなどが挙げられる。
【0041】
前記環状リン酸エステルとしては、例えば、リン酸メチルエチレン、及びリン酸エチルエチレンなどが挙げられる。
【0042】
前記環状亜リン酸エステルとしては、例えば、2-メチル-2-オキソー1,3,2-ジオキサホスホラン、2-エチル-2-オキソー1,3,2-ジオキサホスホラン、及び2-イソプロピル-2-オキソー1,3,2-ジオキサホスホランなどが挙げられる。
【0043】
前記環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、及び1,1-ジオキソ-テトラヒドロチオピランなどが挙げられる。
【0044】
前記環状スルホン酸エステルとしては、例えば、1,3-プロパンスルトン、及び1,4-ブタンスルトンなどが挙げられる。
【0045】
前記ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンなどが挙げられる。
【0046】
前記ラクタムとしては、例えば、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、及びε-カプロラクタムなどが挙げられる。
【0047】
前記チオラクトンとしては、例えば、β-プロピオチオラクトン、γ-ブチロチオラクトン、δ-バレロチオラクトン、及びε-カプロチオラクトンなどが挙げられる。
【0048】
前記チオラクタムとしては、例えば、β-プロピオチオラクタム、γ-ブチロチオラクタム、δ-バレロチオラクタム、及びε-カプロチオラクタムなどが挙げられる。
【0049】
前記環状アセタールとしては、例えば、1,3-ジオキセタン、1,3-ジオキソラン、及び1,3-ジオキサンなどが挙げられる。
【0050】
前記末端反応性ポリマーの製造方法は特に制限されず、例えば、1)まず、上記一般式(2)で表される化合物と超強酸の金属塩とを反応させてカチオン重合開始剤を調製し、次に調製したカチオン重合開始剤と前記モノマーとを混合して重合反応を行う方法、2)まず、超強酸の金属塩と前記モノマーを混合し、次に得られた混合物と上記一般式(2)で表される化合物を混合して、反応系中にカチオン重合開始剤を生成して重合反応を行う方法、3)まず、前記モノマーと上記一般式(2)で表される化合物を混合し、次に得られた混合物と超強酸の金属塩を混合して、反応系中にカチオン重合開始剤を生成して重合反応を行う方法が挙げられる。前記反応を行う際には、必要により適当な有機溶媒を用いてもよい。前記製造方法のうち、製造容易性及び製造効率の観点から、前記2)の製造方法が好ましい。また、アシルカチオンを選択的に生じさせる観点から、超強酸の金属塩と上記一般式(2)で表される化合物を短時間で混合することが好ましい。
【0051】
<末端修飾ポリマー>
本発明の末端修飾ポリマーは、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られるポリマーである。末端修飾ポリマーの具体例としては、ポリマーの末端の一点が修飾され、前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた1つの残基を有する末端1点修飾ポリマーと、ポリマーの末端の2点が修飾され、前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた2つの残基を有する末端2点修飾ポリマーとが挙げられる。
【0052】
すなわち、本発明の末端修飾ポリマーの一態様である末端1点修飾ポリマーは、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる、下記一般式(4)で表されるものである。
【化10】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【0053】
前記非求核性有機基及びRに関する説明は、前記と同様である。前記Rは、アリル位のハロゲン原子と活性水素を有する化合物との置換反応によって導入された、前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。
【0054】
前記活性水素を有する化合物は、活性水素を有する官能基を1つ以上有する化合物であり、その他は特に制限されない。活性水素を有する官能基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシ基、アシル基、シアノメチル基(-CH-CN)、ニトロメチル基(-CH-NO)、及びスルホニルメチル基(-CH-SO-)などが挙げられる。
【0055】
前記活性水素を有する化合物としては、例えば、前記官能基を1つ有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基;1種以上の前記官能基を2つ有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基:1種以上の前記官能基を3つ以上有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基などが挙げられる。前記炭化水素基は、前記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものであってもよい。前記ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子などが挙げられる。また、前記炭化水素基は種々の置換基を有していてもよい。
【0056】
活性水素を有する官能基を2つ以上有する化合物を用いた場合、反応性官能基(水酸基、メルカプト基、アミノ基、アンモニウム基、及びカルボキシ基など)を有する末端修飾ポリマーを得ることができる。
【0057】
また、本発明の末端修飾ポリマーの他の態様である末端2点修飾ポリマーは、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を有する化合物とを反応して得られる、下記一般式(5)で表されるものである。
【化11】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、R及びRはそれぞれ独立に前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。)
【0058】
前記非求核性有機基及びRに関する説明は、前記と同様である。前記Rは、アリル位のハロゲン原子と活性水素を有する化合物との置換反応によって導入された、前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。前記Rは、ビニル基と活性水素を有する化合物との付加反応によって導入された、前記活性水素を有する化合物から活性水素を除いた残基である。
【0059】
前記活性水素を有する化合物に関する説明は、前記と同様である。
【0060】
活性水素を有する官能基を2つ以上有する化合物を用いた場合、反応性官能基(水酸基、メルカプト基、アミノ基、アンモニウム基、及びカルボキシ基など)を2つ以上有する末端修飾ポリマーを得ることができる。
【0061】
前記末端修飾ポリマーの製造方法は特に制限されず、例えば、前記末端反応性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、そこにアミン化合物(例えば、ピリジン類、及び第3級脂肪族アミンなど)等の塩基性化合物と活性水素を有する化合物とを加えて反応させる方法が挙げられる。
【0062】
有機溶媒は反応が進行する限り特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、及び四塩化炭素等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0063】
反応時間及び反応温度は、使用する活性水素を有する化合物によって適宜調整すればよい。
【0064】
<グラフトポリマー>
本発明のグラフトポリマーは、前記末端反応性ポリマーと、活性水素を2つ以上有する化合物とを反応して得られる、下記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するものである。
【化12】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Rはポリマーセグメントであり、Rは前記活性水素を2つ以上有する化合物から活性水素を2つ除いた残基であり、nは1以上の整数である。)
【0065】
前記非求核性有機基及びRに関する説明は、前記と同様である。前記Rは、アリル位のハロゲン原子と重合活性を有するビニル基と活性水素を2つ以上有する化合物との重合反応によって導入された、前記活性水素を2つ以上有する化合物から活性水素を2つ除いた残基である。
【0066】
前記活性水素を2つ以上有する化合物は、活性水素を有する官能基を2つ以上有する化合物であり、その他は特に制限されない。活性水素を有する官能基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシ基、アシル基、シアノメチル基(-CH-CN)、ニトロメチル基(-CH-NO)、及びスルホニルメチル基(-CH-SO-)などが挙げられる。
【0067】
前記活性水素を2つ以上有する化合物としては、例えば、1種以上の前記官能基を2つ有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基:1種以上の前記官能基を3つ以上有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基などが挙げられる。前記炭化水素基は、前記炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものであってもよい。前記ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子などが挙げられる。また、前記炭化水素基は種々の置換基を有していてもよい。
【0068】
前記グラフトポリマーの製造方法は特に制限されず、例えば、前記末端反応性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、そこに前記活性水素を2つ以上有する化合物を加えて重合させる方法が挙げられる。前記活性水素を2つ以上有する化合物は、予め有機溶媒に溶解させてもよい。第三級アミン、第三級ホスフィン、及びアルカリ金属アルコキシド塩などの塩基、触媒を必要により用いてもよい。
【0069】
有機溶媒は反応が進行する限り特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、及び四塩化炭素等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0070】
反応時間及び反応温度は、使用する活性水素を2つ以上有する化合物によって適宜調整すればよい。
【0071】
前記グラフトポリマーは、ホモポリマーであってもよく、ブロック共重合ポリマーであってもよく、又はランダム共重合ポリマーであってもよい。共重合モノマーは、公知の共重合モノマーを特に制限なく使用できる。
【0072】
<反応性グラフトポリマー>
本発明の反応性グラフトポリマーは、前記末端反応性ポリマーを重合して得られる、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有するものである。
【化13】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は非求核性有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Rはポリマーセグメントであり、mは1以上の整数である。)
【0073】
前記非求核性有機基、X、及びRに関する説明は、前記と同様である。
【0074】
前記反応性グラフトポリマーの製造方法は特に制限されず、例えば、前記末端反応性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、そこに適当な重合開始剤を加えて重合させる方法が挙げられる。
【0075】
有機溶媒は反応が進行する限り特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、及び四塩化炭素等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0076】
反応時間及び反応温度は、適宜調整すればよい。
【0077】
前記反応性グラフトポリマーは、ホモポリマーであってもよく、ブロック共重合ポリマーであってもよく、又はランダム共重合ポリマーであってもよい。共重合モノマーは、公知の共重合モノマーを特に制限なく使用できる。
【実施例
【0078】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0079】
[評価方法]
(IRスペクトル)
赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製「Cary 630 FTIR 分光光度計」)を用い、1回反射型全反射測定法にて測定した。
【0080】
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「「AVANCE NEO」)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムを用い、化学シフト値はテトラメチルシランおよび溶媒の信号で較正した。
【0081】
(分子量)
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)及び分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「PL-gel,Mixed C(300mm×7.5mm)」(アジレント・テクノロジー(株))を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(高速液体クロマトグラフ用、安定剤なし、和光純薬工業(株)製)を0.8mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光)および示差屈折率計(RI-4030,日本分光)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー(株)製、TSKゲルオリゴマーキット、Mn:1.03×10、3.89×10、1.82×10、3.68×10、1.63×10、5.32×10、3.03×10、8.73×10)による三次曲線で較正して評価した。
【0082】
[窒素ガス]
ガラス管にモレキュラーシーブス4A(1/16、和光純薬工業(株)製)を充填し、ドライアイス/メタノール浴で-78℃に冷却した。窒素ガスをこのガラス管に流し込み、水分を除去した。
【0083】
[モノマー・重合溶媒]
窒素気流下、大型試験管内でテトラヒドロフラン(超脱水、関東化学(株)製)500mLにベンゾフェノン5gを溶かし、1mm角に切り出したナトリウム(和光純薬工業(株)製)を溶液が濃青色に着色するまで加えた。1晩撹拌後、大型試験管を真空マニフォールドに取り付けた。
重合の直前に、真空マニフォールドに小型試験管を取り付けた。真空マニフォールドおよび小型試験管を1mmHgまで減圧し、ガスバーナーで加熱して乾燥した。放冷後、小型試験管をドライアイス/メタノール浴で-78℃に冷却した。この状態で大型試験管と真空マニフォールドを繋ぐコックを開き、先に乾燥したテトラヒドロフランを沸騰させて、小型試験管内に凝縮させた。重合に要する所定量以上のテトラヒドロフランが凝縮した段階で乾燥した窒素ガスを導入した。小型試験管を真空マニフォールドから取り外し、窒素を流した三方コックを取り付けた。重合に用いたテトラヒドロフランは、シリンジを用いて小型試験管から測り取った。
【0084】
【化14】
[実施例1]
(末端反応性ポリマーの合成)
トリフルオロメタンスルホン酸銀0.514g(2.00mmol)を予め真空蒸留したテトラヒドロフラン20mLに溶かし、0℃に冷却した。α-(クロロメチル)アクリル酸クロリド0.263mL(2.40mmol)を一気に加えて30分間撹拌した。蒸留水約2mLを加え、反応を停止した。沈殿物を濾別し、濾液をドライアイス/メタノール浴で-30℃に冷却したメタノール100mLに滴下した。デカンテーションにより沈殿物を回収し、真空乾燥して末端反応性ポリテトラヒドロフラン1.87gを得た。得られたポリマーの分子量をサイズ排除クロマトグラフィーにより評価したところ、数平均分子量(Mn)は4400、分子量分散度(D)は1.16であった。H NMRスペクトルにおける末端ビニリデン基の信号と、テトラメチレングリコール単位の信号の積分強度比から求めた数平均重合度(n)は24.5、数平均分子量は1888であった。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ6.38(s,1H,CH=),5.97(s,1H,CH=),4.29(s,2H,allyl),4.23(t,J=6.6Hz,2H,COCH),3.49-3.40(m,98.1H,OCH),1.63-1.58(m,98.1H,CH)ppm.
【0085】
[実施例2]
(末端反応性ポリマーの合成)
トリフルオロメタンスルホン酸銀を1.03g(4.00mmol)、テトラヒドロフランを30mL、α-(クロロメチル)アクリル酸クロリドを0.443mL(4.20mmol)とした以外は実施例1と同様に行い、末端反応性ポリテトラヒドロフラン3.78gを得た。数平均分子量(Mn)は5300、分子量分散度(D)は1.14であった。H NMRスペクトルにおける末端ビニリデン基の信号と、テトラメチレングリコール単位の信号の積分強度比から求めた数平均重合度(n)は25.6、数平均分子量は1961であった。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ6.38(s,1H,CH=),5.97(s,1H,CH=),4.29(s,2H,allyl),4.23(t,J=6.6Hz,2H,COCH),3.49-3.40(m,102.3H,OCH),1.63-1.58(m,102.3H,CH)ppm.
【0086】
【化15】
[実施例3]
(末端修飾ポリマーの合成)
実施例1で得られた末端反応性ポリテトラヒドロフラン209mg(0.111mmol)をテトラヒドロフラン1mLに溶かし、フェノール10mg(0.11mmol)とトリエチルアミン30mg(0.119mmol)を加えて16時間撹拌した。反応液をドライアイス/メタノール浴で-30℃に冷却したメタノール100mLに滴下した。デカンテーションにより沈殿物を回収し、真空乾燥して末端修飾ポリテトラヒドロフラン48mgを得た。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ7.30-7.27(m,2H,Ar),6.97-6.63(m,3H,Ar),6.39(s,1H,CH=),6.00(s,1H,CH=),4.76(s,2H,allyl),4.23(t,J=6.6Hz,2H,COCH),3.45-3.37(m,127.3H,OCH),1.69-1.58(m,127.3H,CH)ppm.
【0087】
【化16】
[実施例4]
(末端修飾ポリマーの合成)
実施例1で得られた末端反応性ポリテトラヒドロフラン207mg(0.109mmol)をテトラヒドロフラン0.5mLに溶かし、トリエチルアミン25.0μL(180μmol)と2-メルカプトエタノール364mg(5.16mmol)を加えて24時間撹拌した。反応液をクロロホルム5mLで希釈し、蒸留水5mLと1M塩酸1mLを加えて洗浄した。水層をクロロホルム5mLで2回抽出し、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液1mL、水4mLで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮、真空乾燥して末端修飾ポリテトラヒドロフラン162mgを得た。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ4.26(t,J=6.3Hz,2H,COCH),3.45-3.37(m,164H,OCH),2.98-2.69(m,13H,O-CH,S-CH,CHCO),1.69-1.58(m,164H,CH)ppm.
【0088】
【化17】
[実施例5]
(末端修飾ポリマーの合成)
2-メルカプトエタノールの代わりに2-アミノエタノール280mg(4.67mmol)を用いた以外は実施例4と同様に実施し、末端修飾ポリテトラヒドロフラン106mgを得た。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ4.20-4.06(m,2H,COCH),3.45-3.39(m,154H,OCH),3.23-2.60(m,13H,O-CH,N-CH,CHCO),1.69-1.58(m,154H,CH)ppm.
【0089】
[実施例6]
(グラフトポリマーの合成)
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン26.9μL(180μmol)と1,10-デカンジチオール18.2mg(88.2μmol)をテトラヒドロフラン0.5mLに溶かした。これに実施例1と同様の手法で得られたM=2211(末端定量法)の末端反応性ポリテトラヒドロフラン195mg(88.2μmmol)を含むテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液を加え、さらにトリブチルホスフィン4.4μL(8.0μmol)を加えて20時間撹拌した。反応液をクロロホルム5mLで希釈し、蒸留水5mLと1M塩酸1mLを加えて洗浄した。水層をクロロホルム5mLで2回抽出し、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液1mL、水4mLで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮、真空乾燥してポリテトラヒドロフラングラフトポリマー143mgを得た。サイズ排除クロマトグラフィーで求めた数平均分子量はM=14000、分子量分散度はD=1.74であった。
【0090】
[実施例7]
(グラフトポリマーの合成)
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン135μL(888μmol)と1,10-デカンジチオール93.5mg(454μmol)をテトラヒドロフラン0.5mLに溶かした。これに実施例1と同様の手法で得られたM=2211(末端定量法)の末端反応性ポリテトラヒドロフラン200mg(90.5μmmol)とα-(クロロメチル)アクリル酸メチル48.8mg(0.362mmol)を含むテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液を加え、さらにトリブチルホスフィン22.2μL(40μmol)を加えて20時間撹拌した。反応液をクロロホルム5mLで希釈し、蒸留水5mLと1M塩酸1mLを加えて洗浄した。水層をクロロホルム5mLで2回抽出し、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液1mL、水4mLで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮、真空乾燥してポリテトラヒドロフラングラフトポリマー216mgを得た。サイズ排除クロマトグラフィーで求めた数平均分子量はM=7700、分子量分散度はD=1.30であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のカチオン重合開始剤は、末端に置換反応及び付加反応が可能な反応性の官能基を有するポリマーを合成する場合に好適に用いられる。