(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】蒸着用紙基材
(51)【国際特許分類】
D21H 19/20 20060101AFI20241106BHJP
D21H 19/08 20060101ALI20241106BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20241106BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20241106BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
D21H19/20 B
D21H19/08
D21H19/38
D21H19/82
B32B27/30 102
B32B27/10
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020101231
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 有理
(72)【発明者】
【氏名】畠田 眞紀
(72)【発明者】
【氏名】内村 元一
(72)【発明者】
【氏名】紺屋本 博
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-081690(JP,A)
【文献】特開昭57-134556(JP,A)
【文献】特開2003-013391(JP,A)
【文献】特開昭59-015595(JP,A)
【文献】特表2012-532043(JP,A)
【文献】特公昭59-049359(JP,B2)
【文献】実開平03-120600(JP,U)
【文献】特開2014-237309(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/20
D21H 19/08
D21H 19/38
D21H 19/82
B32B 27/30
B32B 27/10
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層を有
し、
前記目止め層として、さらに、水蒸気バリア性樹脂と扁平顔料を含有する層を有することを特徴とする蒸着用紙基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着用紙基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙基材に蒸着加工をして水蒸気バリア性を付与しているものが提供されている(特許文献1)。また、蒸着加工ではなく、塗工層により、紙基材に酸素バリア性や水蒸気バリア性を付与しているものも開示されている(特許文献2)。しかしながら、これらの紙基材をベースとしたバリア材料については、特に高湿度下において優れた酸素バリア性を発現することが難しかった。
一方、特許文献3では紙基材上に水蒸気バリア層、ガスバリア層を設け、さらに樹脂層等の保護層を設けることにより、高湿度下で良好な酸素バリア性を発現することが開示されている。しかしながら、この場合、高湿度下で特に良好な酸素バリア性を発現するためには、バリア層の塗工量を多くするか、バリア性の良好な保護層を設ける必要があった。バリア層の塗工量を多くする場合には、製造時の塗工乾燥負荷が大きく製造設備が限定される課題があった。また、塗工量を少なくした場合にはバリア性に優れる蒸着フィルム等を保護層として設ける必要があり、保護層の種類に制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-256811号公報
【文献】特許第5331265号公報
【文献】国際公開第2018/62466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、蒸着加工を行うための、特に酸素バリア性を有する蒸着用紙基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.基紙上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層を有することを特徴とする蒸着用紙基材。
2.前記目止め層として、さらに、水蒸気バリア性樹脂を含有する層を有することを特徴とする1.に記載の蒸着用紙基材。
3.前記水蒸気バリア性樹脂を含有する層が、 扁平顔料を含有することを特徴とする2.に記載の蒸着用紙基材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蒸着用紙基材は、均一な蒸着層を形成することができる。本発明の蒸着用紙基材に蒸着加工を施した蒸着紙は、酸素バリア性と水蒸気バリア性とに優れ、特に、高湿度下であっても優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性の両方を発現することができる。
本発明の蒸着用紙基材から得られた蒸着紙は、蒸着層が高湿度な気体の透過を防止することにより、目止め層の劣化が抑えられるため、高湿度下であっても酸素バリア性を維持することができる。また、高湿度な気体の透過を防ぐことで、優れた水蒸気バリア性も発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の蒸着用紙基材は、基紙上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層を有する。本発明の蒸着用紙基材は、この目止め層を有することにより、均一な蒸着層が形成できる。本発明の蒸着用紙基材は、この目止め層上に各種蒸着加工をすることにより、高湿度下での酸素バリア性の低下を抑制し、優れた水蒸気バリア性を付与することができる。さらに、本発明の蒸着用紙基材は、目止め層として水蒸気バリア性を有する層を付加することができる。
【0008】
(基紙)
本発明において基紙とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、基紙中への異物混入が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、木材繊維の化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
【0009】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0010】
基紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、基紙は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0011】
さらに、基紙の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0012】
基紙の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
【0013】
また、基紙の坪量は、蒸着用紙基材、または蒸着紙に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m2以上500g/m2以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、容器、カップなど、包装用途に使用する蒸着紙の場合は、25g/m2以上400g/m2以下のものがより好ましく、特に後述する軟包装材用途に使用する蒸着紙の場合は、30g/m2以上110g/m2以下のものがより好ましい。
【0014】
(目止め層)
本発明の目止め層は、その上に各種蒸着加工をする際に、蒸着が均一にできるように、あらかじめ基紙の表面に塗工により設けるものである。本発明の目止め層は、1層でもよく、複数の層からなっていてもよく、例えば、目止め層として水蒸気バリア性を有する層を付加することができる。なお、本明細書において、目止め層とは、基紙の上に設けられた層を意味し、1層のみの場合もあり、複数層の場合もある。
【0015】
本発明の目止め層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有しており、少なくとも酸素バリア性を有することができ、さらに、その他のバリア性、例えば水蒸気バリア性を有することもできる。本発明において、蒸着用紙基材に付与したい性能により、1層の目止め層に複数の性能を付与してもよいし、複数層の目止め層のそれぞれの層に異なる性能を付与してもよい。
【0016】
本発明の目止め層は、少なくともポリビニルアルコール系樹脂を含有する。ポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層は、蒸着層の均一な形成を可能にするとともに、酸素バリア性を有することができる。
本発明において、目止め層が含有するポリビニルアルコール系樹脂としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類を例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、エチレン共重合ポリビニルアルコールが好ましい。
【0017】
本発明において、目止め層に顔料を含有させることは、ガスバリア性(酸素バリア性、水蒸気バリア性)の向上の点から好ましい。目止め層に顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過する。このため、顔料を含有していない目止め層と比較して高湿度雰囲気下における優れたガスバリア性を有する。目止め層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、ガスバリア性の点から扁平な無機顔料を使用することが好ましく、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を使用することがより好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の無機顔料を使用することがさらに好ましい。それらに該当する扁平な無機顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、マイカ、タルク、ベントナイトなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、目止め層に顔料を含有させる場合、顔料とポリビニルアルコール系樹脂との配合比率は、乾燥重量で、0.01/100~200/100であることが好ましい。顔料の比率が上記範囲外であると、バリア性の改善効果が小さくなることがある。また、目止め層の強度を保ち、加工した際の折割れによる酸素バリア性の低下を防ぐために、顔料とポリビニルアルコール系樹脂との配合比率は0.01/100~40/100であることが好ましい。さらには0.01/100~20/100であることが特に好ましい。
なお、本発明において、顔料をポリビニルアルコール系樹脂中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0019】
本発明において、目止め層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は、目止め層が含有するポリビニルアルコール系樹脂と架橋反応を起こすため、目止め層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、架橋剤を添加することにより、目止め層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
【0020】
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0021】
本発明において、目止め層として、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層(以下、目止め層[1]ともいう)と水蒸気バリア性を有する目止め層(以下、目止め層[2]ともいう)とを積層することができ、目止め層[2]は目止め層[1]の下層とすることが好ましい。この場合、目止め層[1]は、目止め層[2]との密着性の観点より、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものはなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でも単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、具体的な種類としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、目止め層[1]の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
本発明において、目止め層には、上記したポリビニルアルコール系樹脂、任意の顔料、架橋剤、界面活性剤の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を配合することができる。
【0022】
本発明において、目止め層[2]との密着性の観点から、目止め層[1]用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することが好ましい。
また、目止め層[2]表面の濡れ張力に対して、目止め層[1]用塗料の表面張力を±20mN/m以内とすることが、目止め層[2]と目止め層[1]との密着性の観点から好ましい。
【0023】
(目止め層[2])
目止め層として、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層[1]と、水蒸気バリア性樹脂を含有する水蒸気バリア性を有する目止め層[2]を積層することができる。目止め層[2]は、目止め層[1]の下層とすることが好ましい。
【0024】
目止め層[2]に含有させる水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子を、上記水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
【0025】
本発明において、目止め層[2]が顔料を含有することは、目止め層[2]と目止め層[1]を有する構成において、両層の密着性の点から好ましい。
顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中でも、水蒸気バリア性の向上と、酸素バリア性を有する目止め層[1]の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましい。また、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」とも言う。)が5μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、目止め層[2]中を水蒸気が迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、結果として水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。
【0026】
目止め層[2]に、扁平顔料に加えて、平均粒子径が5μm以下の顔料を更に添加することにより、水蒸気バリア性を更に向上させることができる。この平均粒子径が5μm以下の顔料は、扁平である必要はない。
目止め層[2]に、扁平顔料と平均粒子径5μm以下の顔料を含有させることにより、重層的に存在する扁平顔料の間に、平均粒子径5μm以下の顔料が入り込む構造となる。そして、扁平顔料の面に沿って移動を余儀なくされる水蒸気は、この小さな顔料粒子により移動が阻止されることとなる。つまり、目止め層[2]に扁平顔料と平均粒子径5μm以下の顔料を含有させた場合、目止め層[2]中で、隣接する扁平顔料の間に形成される空隙に小粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気が顔料を迂回して通過するため、高い水蒸気バリア性を発揮する。
【0027】
本発明において、扁平顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、扁平顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。扁平顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が目止め層[2]中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。
【0028】
本発明において、扁平顔料と併用する平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0029】
目止め層[2]に顔料を含有させる場合、乾燥重量で顔料100重量部に対して、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で5重量部以上500重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で10重量部以上300重量部以下である。
【0030】
本発明において、目止め層[2]に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は目止め層[2]に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子と架橋反応を起こすため、目止め層[2]内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、目止め層[2]が緻密な構造となり、良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、目止め層[2]に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。
【0031】
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、架橋剤として多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
本発明において、目止め層[2]用塗料に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗料へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると架橋剤と極性溶媒で結合を作るため、塗料へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらないため、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、基紙への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な目止め層[2]が形成されると推測される。
【0032】
本発明において、水蒸気バリア性向上の観点から、目止め層[2]に撥水剤を含有させることができる。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノリンなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤など例示することができる。また、これらの撥水剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
また、目止め層[2]には、上記の水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料、架橋剤、撥水剤の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を配合することができる。
【0033】
また、本発明において、水蒸気バリア性の向上、及び上述の酸素バリア性を有する目止め層[1]との密着性から、目止め層[2]表面の濡れ張力としては10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
【0034】
(目止め層の塗工)
本発明において、目止め層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられる。目止め層用塗工液は水系のものが好ましい。
目止め層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0035】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層を単層で設ける場合の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。塗工量が0.2g/m2未満であると、コーティング時に平滑な層が形成できず、極端な場合にはピンホールが発生するという問題があり、均一な目止め層を形成することが困難であるため、均一な蒸着層が得られなくなることがある。一方、20g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。さらに、20g/m2より多いと目止め層自体の強度を保つ(塗工層の凝集破壊やクラックの発生等を防止する)必要が生じる。
【0036】
本発明において、目止め層としてさらに水蒸気バリア性を有する目止め層[2]を追加する場合、目止め層[2]の塗工量は、乾燥重量で3g/m2以上50g/m2以下とすることが好ましく、3.5g/m2以上40g/m2以下とすることがより好ましく、4g/m2以上30g/m2以下とすることがさらに好ましい。目止め層[2]の塗工量が3g/m2未満であると、基紙を塗工液が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、目止め層[2]の上に塗工する目止め層[1]が基紙にまで浸透して、均一な目止め層が得られなくなることがある。一方、50g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
【0037】
(蒸着用紙基材)
本発明において、蒸着用紙基材の水分率は特に限定される物ではないが、真空条件にて蒸着層を形成する際に、水分率が高いと真空度が低くなるため、水分率は低い方が好ましい。具体的には、8.0重量%以下であることが好ましく、6.0重量%以下であることがより好ましく、3.0重量%以下であることがさらに好ましく、1.0重量%以下であることが最も好ましい。なお、水分率の下限値は特に制限されないが、0.1重量%程度である。
【0038】
(蒸着層)
蒸着用紙基材の目止め層の上に、蒸着層を設けることにより、蒸着紙が得られる。蒸着層は、金属、無機酸化物、無機窒化物等を含有することができる。金属蒸着層としては、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、金、白金、銀、コバルト、クロム等が挙げられるが、遮光性が高く安価であることからアルミニウムがより好ましい。無機酸化物蒸着層としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、マグネシウム、鉛、ホウ素、ナトリウム等の酸化物あるいはその混合物、さらには、無機窒化物との複合物が挙げられるが、バリア性及び透明性が高く安価であることから酸化ケイ素、又は酸化アルミニウムがより好ましい。蒸着層の形成方法は任意であり、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD)等の、既知の方法が採用できる。真空蒸着法は、比較的簡単に蒸着層を形成でき、また、生産性を考慮すると好ましい。
蒸着層の厚さは5~300nmとすることが好ましく、特に10~150nmであることが好ましい。厚さが5nmより薄いと均一な蒸着層が形成できず十分なバリア性が得られないことがある。一方、300nmを超える場合には、蒸着層にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、亀裂を生じる恐れが出てくる。
【0039】
(蒸着保護層)
蒸着層の上には、表面の保護あるいはラミネートなどの後加工適性を向上させることを目的として保護層を積層しても良い。この場合、例えば水溶性高分子を水あるいは水/アルコール混合溶媒に溶解させたものに、金属アルコキシドを直接あるいはあらかじめ加水分解させるなどの処理を行ったものを混合し、この混合溶液を蒸着層上に塗工、乾燥して形成することができる。また、混合溶液中に、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等を必要に応じて添加使用しても良い。
【0040】
(樹脂層)
蒸着紙の少なくとも一方の面上に樹脂層を有することができる。これにより、ヒートシール性を付与することもできる。樹脂層は、蒸着紙の両面に設けることもできるが、少なくとも蒸着層を有する側の面上に有することが好ましい。
樹脂層の樹脂としては、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリメチル(メタ)アクリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート等の化石資源由来樹脂、ポリ乳酸(PLA)、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタン等の生物由来樹脂を含むことができる。
なお、生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的または生物学的に合成することにより得られる、数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。
【0041】
また、化石資源由来樹脂、および、生物由来樹脂として、ポリ乳酸(PLA)、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等の生分解性を有する樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、バイオポリエチレン等の生分解性を有さない樹脂のいずれも用いることができる。
なお、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂をいう。
【0042】
本発明において、樹脂層としては樹脂ラミネート層が好ましい。樹脂ラミネート層としては、押し出しラミネート層や、バリアフィルム等のフィルム貼合層を挙げることができる。
樹脂ラミネート層が押し出しラミネート層の場合は、蒸着紙の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂を押し出しラミネート法により樹脂ラミネート層として積層する。また、樹脂ラミネート層がフィルム貼合層の場合は、蒸着紙の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂製のフィルムをドライラミネート法、サンドラミネート法等により樹脂ラミネート層として貼合する。樹脂層は、蒸着紙の両面に設けることもできるが、少なくとも蒸着層を有する側の面上に有することが好ましい。
本発明において、フィルム貼合層に使用するフィルムとしては、上記した各種樹脂製のフィルムが挙げられる。目的に応じてこれらのフィルムを1層または複数層を貼合して使用することができる。
【0043】
蒸着紙は、蒸着紙のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム等と貼合するなどして、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる包装材料、または産業用資材などに用いられる積層体とすることが可能である。これらの中で、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装材として特に好適に使用することができる。なお、軟包装材とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。また、形状としては、袋など、内容物を入れることにより立体形状を保つような包装材を指す。
【0044】
蒸着紙を食品などの包装材、特に軟包装材として用いる場合は、ヒートシール性を有する樹脂と積層することにより、包装材料としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。
また、産業用資材などに用いられる積層体として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた蒸着用紙基材と蒸着紙について、以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
【0046】
(評価方法)
<水分率>
JIS P8203:2010に準拠して測定した。蒸着用紙基材をA4サイズ(210mm×297mm)に切り出し、乾燥前重量を測定した。次に、105±2℃の送風乾燥器にて恒量に達するまで乾燥した後、乾燥後重量を測定した。次式により水分率を算出した。
水分率(重量%)=100×(乾燥前重量―乾燥後重量)/乾燥前重量
<外観評価>
蒸着紙について、蒸着層面感を目視にて三段階で評価した。金属光沢が強い場合は〇、光沢感が少なく部分的にムラが見られる場合は△、光沢感が無い場合には×とした。
【0047】
<酸素透過度(ガスバリア性)>
蒸着紙について、MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃-0%RH条件(乾燥下)、23℃-85%RH条件(高湿度下)にて測定した。
<水蒸気透過度(水蒸気バリア性)>
蒸着紙について、温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%の条件下で、JIS K7129A:2008に準拠して、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80-4000)を用いて測定した。
【0048】
[実施例1]
(基紙の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、更に歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量50g/m2の紙を得た。得られた原紙にチルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、基紙を得た。
【0049】
(目止め層用塗工液[1]の調製)
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA117)を固形分濃度10%となるよう調製し、塗工液[1]を得た。
【0050】
(蒸着用紙基材の作製)
得られた基紙上に、目止め層用塗工液[1]を塗工量(乾燥)5.0g/m2となるよう塗工速度300m/minでロールコーターを用いて片面塗工し、水分率1.0重量%に調整して蒸着用紙基材を得た。
【0051】
(蒸着紙の作製)
得られた蒸着用紙基材の目止め層上に、バッチ式真空蒸着装置を用いて、厚さ45nmのアルミニウム蒸着層を形成した。さらに、得られた蒸着紙の両面に、押し出しラミネート法により低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC602A)からなる樹脂層をそれぞれ厚み30μm積層した。
【0052】
[実施例2]
大粒径エンジニアードカオリン(イメリス社製 バリサーフHX 粒子径9.0μm アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対無機顔料0.2部)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%の大粒径カオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリーと目止め層用塗工液[1]を固形分で顔料:目止め層用塗工液[1]=100:100として固形分濃度が10%となるよう混合した塗工液を使用した以外は、実施例1と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0053】
[実施例3]
(目止め層用塗工液[2]の調製)
大粒径エンジニアードカオリン(イメリス社製 バリサーフHX 粒子径9.0μm アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対無機顔料0.2部)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%の大粒径カオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中にスチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製PNT7868)を無機顔料100部に対して100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度50%の塗工液[2]を得た。
【0054】
基紙上に、目止め層用塗工液[2]を塗工量(乾燥)12g/m2となるよう塗工速度300m/minでブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した。さらにその上に、実施例2で調製したカオリンスラリーと目止め層用塗工液[1]を固形分で顔料:目止め層用塗工液[1]=100:100として固形分濃度が10%となるよう混合した塗工液を、塗工量(乾燥)2g/m2となるよう塗工した以外は、実施例1と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0055】
[実施例4]
実施例2で調製したカオリンスラリーと目止め層用塗工液[1]を固形分で顔料:目止め層用塗工液[1]=20:100として固形分濃度が10%となるよう混合した塗工液を使用した以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
[実施例5]
実施例2で調製したカオリンスラリーと目止め層用塗工液[1]を固形分で顔料:目止め層用塗工液[1]=1:100として固形分濃度が10%となるよう混合した塗工液を使用した以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0056】
[実施例6]
蒸着用紙基材の作製において、水分率1.0重量%から3.0重量%に調整した以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
[実施例7]
蒸着用紙基材の作製において、水分率1.0重量%から6.0重量%に調整した以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
[実施例8]
蒸着用紙基材の作製において、水分率1.0重量%から7.0重量%に調整した以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0057】
[比較例1]
基紙に目止め層用塗工液[1]及び[2]を塗工しなかった以外は、実施例1と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
[比較例2]
実施例2で調製したカオリンスラリーと目止め層用塗工液[1]を固形分で顔料:目止め層用塗工液[1]=100:100とした塗工液を塗工しなかった以外は、実施例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0058】
[比較例3]
比較例2の目止め層用塗工液[2]において、スチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製PNT7868)からスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)に変更した以外は、比較例2と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
[比較例4]
比較例3の目止め層用塗工液[2]において、顔料100部に対してスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)、パラフィン系撥水剤(丸芳化学社製、MYE-35G、ワックス含有ポリエチレンエマルジョン)を100部(固形分)となるように配合した以外は、比較例3と同様にして蒸着用紙基材を作製した。さらに、実施例1と同様にして蒸着処理を施して蒸着紙を得た。
【0059】
【0060】
本発明である実施例1~8で得られたポリビニルアルコール系樹脂を含有する目止め層[1]を有する蒸着用紙基材から、乾燥下のみならず高湿度下においても酸素バリア性に優れた蒸着紙が得られた。得られた蒸着紙は、金属光沢を備えていた。目止め層[1]と目止め層[2]を有する蒸着用紙基材から得られた蒸着紙は、高湿度下での酸素バリア性と水蒸気バリア性に優れていた。また、蒸着用紙基材の水分量が少ないほど、バリア性に優れた蒸着紙が得られることが確認できた。
比較例1は、基紙をそのまま蒸着用紙基材としたものであるが、得られた蒸着紙はバリア性に劣っていた。また、金属光沢に乏しく、蒸着層表面から紙の繊維が透けて見えた。
比較例2~4で得られたポリビニルアルコール系樹脂以外の樹脂を含有する目止め層を有する蒸着用紙基材は、本発明の蒸着用紙基材と比較して、得られる蒸着紙の酸素バリア性、水蒸気バリア性に劣っていた。また、得られた蒸着紙はマット感が強く、金属光沢が無かった。