(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/44 20060101AFI20241106BHJP
B29C 45/38 20060101ALI20241106BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C45/38
B22D17/22 T
(21)【出願番号】P 2020124835
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2020094468
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302067947
【氏名又は名称】株式会社テクノクラーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】反本 正典
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-128222(JP,U)
【文献】特開平02-117806(JP,A)
【文献】特開平01-123714(JP,A)
【文献】特開平08-039618(JP,A)
【文献】特開2015-168176(JP,A)
【文献】実開昭50-094273(JP,U)
【文献】特開2015-074138(JP,A)
【文献】特開2000-015672(JP,A)
【文献】特開2020-055021(JP,A)
【文献】特開平09-141701(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211924(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/044664(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/136695(WO,A1)
【文献】特開2001-225356(JP,A)
【文献】実開平01-156019(JP,U)
【文献】特開2010-201666(JP,A)
【文献】特開昭59-184634(JP,A)
【文献】特開平06-106584(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010048429(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/44
B29C 45/38
B22D 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の外面側及び内面側を成形する固定型及び可動型と、進退可能に取付けられたスライド部材とを備え、
ランナーの入口部がスプルーと接続し、ランナーの出口部にゲートが設けられ、前記ゲートがキャビティ部と接続し、前記ランナ
ーから成形材料が送られ前記キャビティ部に成形材料が充填され前記成形品が成形される成形用金型において、
前記可動型の上面をXZ面に平行にし、
XZ面を正面に見たとき、
前記スプルーとゲートとを結ぶランナーが一直線又は湾曲しており、
前記スライド部材は、進退方向が
前記スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線と交差する
(直交するものを除く)ように取付けられていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
前記可動型の上面をXZ面に平行にし、XZ面を正面に見たとき、
前記成形品の長手方向及び短手方向のいずれか一方がZ軸に平行で他方がX軸に平行であり、
前記
スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線が、
X軸に平行であり、
前記スライド部材は、進退方向が
X軸及びZ軸に対して交差するように取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
【請求項3】
前記スプルーとゲートとを結ぶランナーのX軸方向の距離をL
0、前記スライド部材の移動量をL、前記スライド部材のX軸方向の移動量をL
Xとしたとき、
前記スライド部材は、L>L
X>L
0又はL>L
X=L
0又はL>L
0>L
Xの条件を満たすことを特徴とする請求項2に記載の成形用金型。
【請求項4】
前記可動型の上面をXZ面に平行にし、XZ面を正面に見たとき、
前記成形品の長手方向及び短手方向のいずれか一方がZ軸に平行で他方がX軸に平行であり、
前記スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線が、X軸及びZ軸に対して交差するように配置され、
前記スライド部材は、
進退方向がX軸に平行に又はX軸及びZ軸に対して交差するように取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
【請求項5】
前記スプルーとゲートとを結ぶランナーのX軸方向の距離をL
0、前記スライド部材の移動量をL、前記スライド部材のX軸方向の移動量をL
Xとしたとき、
前記スライド部材は、L=L
X>L
0の条件を満たすことを特徴とする請求項4に記載の成形用金型。
【請求項6】
前記成形品の取り数が1個以上であり、
前記ランナーが各成形品に1つ以上取付けられ、
前記スライド部材が各成形品に1つ以上取付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の成形用金型。
【請求項7】
前記成形用金型が射出成形用金型であり、
前記成形品の取り数が2個以上であり、
前記成形品は、前記スプルーを中心に対向配置され又は前記スプルーを中心に等距離に配置され、
前記ランナーが各成形品に1つ以上取付けられ、
前記スライド部材が各成形品に1つ以上取付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の成形用金型。
【請求項8】
前記スライド部材が、前記成形品のアンダーカット部を成形する成形コア、又は前記ゲートを切断するゲートカッター、又は前記ゲートを引きちぎる引きちぎり駒であることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の成形用金型。
【請求項9】
前記スライド部材の進退方向が、前記ゲート及び/又は前記ランナーに残った成形材料を取出す方向と交差し、
前記スライド部材を移動させ、前記ゲート及び/又は前記ランナーに残った成形材料を取出すことが可能なことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートカッター、アンダーカット成形コアなどスライド部材を備える成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形金型を用いて、成形品を2個取りする場合には、それぞれの成形品の成形条件が同じになるように、通常、スプルーを中心にランナー、ゲートを対向配置し、これらの長さ、形状を同一とすることが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
射出成形金型では、ゲートを切断するゲート切断機構、成形品のアンダーカット部を成形するアンダーカット処理機構が組み込まれる場合も多い。ゲートを切断するゲートカッター、アンダーカット部を成形する成形コアは、通常、型開き等に連動して移動し、成形品の取り出しに先立ちゲートを切断し又はアンダーカットを抜く(例えば特許文献2参照)。
【0004】
上記ゲートカッター、アンダーカット成形コアなどのスライド部材は、構成上、スプルーの方向に移動させる場合もある。このようなスプルーの方向に移動させるスライド部材を備える射出成形金型において、成形品の2個取りを行う場合には、スライド部材同士、又はスライド部材がスプルーに衝突しないように2つの成形品の間隔を少なくともスライド部材の移動距離の2倍設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-58247号公報
【文献】WO2019/211924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今日、射出成形金型においてコンパクト化の要求は非常に高いが、従来の2個取りの射出成形金型では、構造上、2つの成形品の間隔を広く取らざるを得ず、コンパクト化が難しかった。1個取りの射出成形金型においても、構造上、スライド部材をスプルーに向かってスライドさせる必要がある場合には、スライド部材がスプルーに衝突しないように成形品とスプルーとの距離を大きく取る必要があり、コンパクト化が難しかった。これらはダイカスト金型などランナーを備える他の成形用金型においても共通する課題である。
【0007】
本発明の目的は、コンパクトな成形用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、成形品の外面側及び内面側を成形する固定型及び可動型と、進退可能に取付けられたスライド部材とを備え、ランナーの入口部がスプルーと接続し、ランナーの出口部にゲートが設けられ、前記ゲートがキャビティ部と接続し、前記ランナーから成形材料が送られ前記キャビティ部に成形材料が充填され前記成形品が成形される成形用金型において、前記可動型の上面をXZ面に平行にし、XZ面を正面に見たとき、前記スプルーとゲートとを結ぶランナーが一直線又は湾曲しており、前記スライド部材は、進退方向が前記スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線と交差する(直交するものを除く)ように取付けられていることを特徴とする成形用金型である。
【0009】
本発明の成形用金型において、前記可動型の上面をXZ面に平行にし、XZ面を正面に見たとき、前記成形品の長手方向及び短手方向のいずれか一方がZ軸に平行で他方がX軸に平行であり、前記スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線が、X軸に平行であり、前記スライド部材は、進退方向がX軸及びZ軸に対して交差するように取付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の成形用金型において、前記スプルーとゲートとを結ぶランナーのX軸方向の距離をL0、前記スライド部材の移動量をL、前記スライド部材のX軸方向の移動量をLXとしたとき、前記スライド部材は、L>LX>L0又はL>LX=L0又はL>L0>LXの条件を満たすことを特徴とする。
【0011】
本発明の成形用金型において、前記可動型の上面をXZ面に平行にし、XZ面を正面に見たとき、前記成形品の長手方向及び短手方向のいずれか一方がZ軸に平行で他方がX軸に平行であり、前記スプルーとゲートとを結ぶランナーの軸線が、X軸及びZ軸に対して交差するように配置され、前記スライド部材は、進退方向がX軸に平行に又はX軸及びZ軸に対して交差するように取付けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の成形用金型において、前記スプルーとゲートとを結ぶランナーのX軸方向の距離をL0、前記スライド部材の移動量をL、前記スライド部材のX軸方向の移動量をLXとしたとき、前記スライド部材は、L=LX>L0の条件を満たすことを特徴とする。
【0013】
本発明の成形用金型において、前記成形品の取り数が1個以上であり、前記ランナーが各成形品に1つ以上取付けられ、前記スライド部材が各成形品に1つ以上取付けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の成形用金型において、前記成形用金型が射出成形用金型であり、前記成形品の取り数が2個以上であり、前記成形品は、前記スプルーを中心に対向配置され又は前記スプルーを中心に等距離に配置され、前記ランナーが各成形品に1つ以上取付けられ、前記スライド部材が各成形品に1つ以上取付けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の成形用金型において、前記スライド部材が、前記成形品のアンダーカット部を成形する成形コア、又は前記ゲートを切断するゲートカッター、又は前記ゲートを引きちぎる引きちぎり駒であることを特徴とする。
【0017】
本発明の成形用金型において、前記スライド部材の進退方向が、前記ゲート及び/又は前記ランナーに残った成形材料を取出す方向と交差し、前記スライド部材を移動させ、前記ゲート及び/又は前記ランナーに残った成形材料を取出すことが可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンパクトな成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部平面図及び要部正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の成形用金型1のゲートカッター51の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の成形用金型1のゲートカッター51の移動とランナーRの長さとの関係を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の成形用金型2の要部断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の成形用金型2の成形コア61の駆動手段の構成を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の成形用金型2の成形コア61の駆動手段の構成を説明するための図である。
【
図10】本発明の第3実施形態の成形用金型3の構成、及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の第4実施形態の成形用金型4の構成、及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【
図12】本発明の第5実施形態の成形用金型5の構成、及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【
図13】本発明の第6実施形態の成形用金型6の構成を模式的に示す平面図である。
【
図14】本発明の第7実施形態の成形用金型7の構成、及びゲートカッター52の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【
図15】本発明の第8実施形態の成形用金型8の構成、及びゲートカッター52の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部平面図及び要部正面図であり、
図1(A)は、成形用金型1から固定型11を取り除いて見た平面図、
図1(B)は、成形用金型1から固定型11を取り除いて見た正面図である。
図2から
図4は、本発明の第1実施形態の成形用金型1の要部断面図である。
図5は、本発明の第1実施形態の成形用金型1のゲートカッター51の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
【0022】
図及び明細書中のX軸、Y軸、Z軸は、3次元直交座標のX軸、Y軸、Z軸と一致し、X(X軸)方向、Y(軸)方向、Z(軸)方向は、3次元直交座標のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向と一致する。また明細書中、+X方向は図中に示されたX軸の矢印の方向を意味し、-X方向とは図中に示されたX軸の矢印と反対方向を意味する。+Y方向、-Y方向、+Z方向、-Z方向についても同様である。
【0023】
本発明の第1実施形態の成形用金型1は、2個取りの射出成形金型であり、成形品P(Pa、Pb)の外面側を成形する固定型11と成形品Pの内面側を成形する可動型21と、さらにゲートGを切断するゲート切断機構とを備える。可動型21は、成形品Pの内面側を成形するコアを有する可動側型板23、可動側取付板25、スペーサーブロック27、2枚のエジェクタ台板33、エジェクタピン35(35a、35b)、スプルーロックピン37、エジェクタロッド39を備え、エジェクタ台板33、エジェクタピン35、スプルーロックピン37、エジェクタロッド39等でエジェクタ機構31が構成される。
【0024】
本実施形態の成形用金型1は、2個取りの射出成形金型であるから、2つの成形品Pa、Pbそれぞれに溶融樹脂を送るランナーR(Ra、Rb)を備える。2つのランナーRa、Rbの入口部RaI、RbIは、スプルーSにつながり、2つのランナーRa、Rbの出口部Rao、Rbo(図示省略)にはそれぞれゲートG(Ga、Gb(図示省略))が設けられている。それぞれのゲートGa、Gbは、キャビティ部Ca、Cb(図示省略)につながる。
【0025】
ゲート切断機構は、成形品Pa、PbとランナーRa、RbとをつなぐゲートGa、Gbを切断する装置であり、それぞれのゲートGa、Gbを切断するゲートカッター51(51a、51b)と、ゲートカッター51(51a、51b)を動かす駆動手段(図示省略)とを含む。駆動手段としては、第2実施形態の成形用金型2で説明する、ばね71、ガススプリング、油圧シリンダ、エアシリンダ、磁力、弾性体を使用するもの、型開きの力を利用するもの、エジェクタ台板33の力を利用するもの、型開きとばね71とを組み合わせたもの、カム機構を利用したものなどを使用することができる。
【0026】
成形用金型1と成形品Pとの位置関係は以下の通りである。成形用金型1は、可動側型板23の上面24がX軸及びZ軸を含む平面(XZ平面)に平行である。エジェクタピン35(35a、35b)及びスプルーロックピン37は、Y軸に平行であり、エジェクタ台板33は、+Y方向、-Y方向に進退する。
【0027】
ゲートカッター51は、正面視においてX軸に平行に、平面視においてX軸及びZ軸に交差する方向に進退する(
図1、
図3、
図4参照)。ここでゲートカッター51a、51bの進退方向(移動方向)をそれぞれMa、Mbとする。
【0028】
2つの成形品Pa、Pbは、スプルーSを中心に左右(X方向)対称に配置されている。2つの成形品Pa、Pbは、同一の形状、大きさであり、平面視において長手方向がZ軸に平行に、短手方向がX軸に平行に配置されている。ここで成形品Pa、Pbは、キャビティ部Ca、Cbと読み代えても同じである。
【0029】
ランナーRa、Rbは、スプルーSを中心に左右(X方向)対象に配置されている。ここでランナーRaの入口部RaIと出口部Raoとを結ぶ線をランナーRaの軸線MRa、ランナーRbの入口部RbIと出口部Rboとを結ぶ線をランナーRbの軸線MRbとすると、軸線MRa、MRbは、平面視においてX軸に平行に配置されている。ランナーRa、Rbと成形品Pa、Pbとの位置関係では、ランナーRa、Rbの軸線MRa、MRbは、平面視において成形品Pa、Pb(成形品Pa、Pbの長手方向)に直交する。
【0030】
よってランナーRa、Rbの軸線MRa、MRbとスプルーSとは平面視において一直線上に並ぶ。ゲートカッター51aの進退方向MaとランナーRaの軸線MRaとは交差し、ゲートカッター51bの進退方向MbとランナーRbの軸線MRbとは交差する。またゲートカッター51の進退方向Ma、Mb上にスプルーSはない(
図1、
図5参照)。
【0031】
以上からなる本発明の第1実施形態の成形用金型1は、公知の射出成形金型と同様に、固定型11と可動型21とのパーティング面(PL面)が合わされキャビティ部C(Ca、Cb)が形成され、図示を省略した射出装置から溶融樹脂が射出され、スプルーSからランナーRa、Rb、ゲートGa、Gbを経由してキャビティ部C(Ca、Cb)に充填される(
図2参照)。その後保圧、冷却工程を経て型開き、ゲートG(Ga、Gb)の切断、成形品Pの取り出しとなる(
図3、
図4参照)。
【0032】
成形用金型1においては、成形品Pの取り出し時にゲートG(Ga、Gb)及びランナーR(Ra、Rb)に残る樹脂がスプルーロックピン37に突き出され、可動型21から取り出される(
図4(B)参照)。本実施形態では、スライド部材であるゲートカッター51a、51bの進退方向Ma、Mbが、ゲートG(Ga、Gb)及びランナーR(Ra、Rb)に残る樹脂を突き出す方向と交差するが、ゲートカッター51a、51bを移動させ、ゲートG(Ga、Gb)及びランナーR(Ra、Rb)に残る樹脂を金型から取出すことができる。
【0033】
図5(A)は、本実施形態の成形用金型1のゲートカッター51a、51bの進退方向及び移動量とランナーRa、Rbの長さとの関係を示す。
図5(B)は、比較例であり、ゲートカッター151a、151bの進退方向Ma、Mbが、ランナーRaの軸線MRa、ランナーRbの軸線MRbと一致するように配置されたときのゲートカッター151a、151bの移動方向及び移動量とランナーRa、Rbの長さとの関係を示す。
図5(B)の比較例は、ゲートカッター151a、151bの進退方向Ma、Mbが、ランナーRaの軸線MRa、ランナーRbの軸線MRbと平行であり、ゲートカッター151a、151bを移動させるとスプルーSに衝突するように配置されたときも同じである。
図5(A)、(B)においてランナーRa、RbはX軸に平行であり、ランナーRa、Rbの長さ(距離:入口部と出口部との距離)はL
0である。
【0034】
図5(A)に示すようにゲートカッター51a、51bの移動量をL、ゲートカッター51aの進退方向MaとランナーRaの軸線MRaとの交角をθ、ゲートカッター51bの進退方向MbとランナーRbの軸線MRbとの交角をθとすると、ゲートカッター51a、51bのX軸方向の移動量L
Xは、L・COSθとなる。本実施形態では、ゲートカッター51a、51bの移動方向の先に障害物がないためL
X>L
0とすることができる。よってゲートカッター51a、51bの移動量Lは、L>L
X>L
0となる。一方、5(B)に示す比較例では、ゲートカッター51a、51bの移動量Lは、L=L
Xであり、L=L
0又はL<L
0となる。
【0035】
以上のように第1実施形態の成形用金型1は、ゲートカッター51aの進退方向MaがランナーRaの軸線MRaと交差するように、同様にゲートカッター51bの進退方向MbがランナーRbの軸線MRbと交差するように配置されているので、ランナーRの長さ(距離)、左右に配置される成形品Paと成形品Pbとの間隔、換言すればキャビティ部Caとキャビティ部Cbとの間隔を小さくすることができる。これにより成形用金型1をコンパクトにすることができる。
【0036】
上記実施形態ではゲートカッター51a、51bは、同一平面内、つまり2次元的に移動するが、成形用金型によっては、ゲートカッター51a、51bが3次元的に移動する場合もある。以下、ゲートカッター51(51a、51b)の移動方向が、X軸及びY軸及びZ軸に交差する場合のゲートカッター51の移動方向、移動量とランナーR(Ra、Rb)の長さとの関係を説明する。
【0037】
図6は、第1実施形態の成形用金型1のゲートカッター51が3次元的に移動する場合のゲートカッター51の移動方向とランナーRの長さとの関係を説明するための図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
図6において点Qaは、移動前のゲートカッター51aのランナーRaの出口部側の端点である。球Baは、ゲートカッター51aの移動前後における最も離れた距離を半径raとし、点Qaを中心点として描いたものである。同様に、
図6において点Qbは、移動前のゲートカッター51bのランナーRbの出口部側の端点である。球Bbは、ゲートカッター51bの移動前後における最も離れた距離を半径rbとし、点Qbを中心点として描いたものである。球Baは、ゲートカッター51aの取り得る移動前後の軌跡、球Bbは、ゲートカッター51bの取り得る移動前後の軌跡を表している。
【0039】
図6に示す成形用金型1は、ゲートカッター51a及びゲートカッター51bの取り得る移動前後の軌跡が部分的に重なりあうが、ゲートカッター51aとゲートカッター51bとは、移動前、移動中、移動後のいずれにおいても互いに干渉、衝突しないように配置されている。このような成形用金型1も、ゲートカッター51の進退方向(移動方向)MをランナーRの入口部と出口部とを結ぶ軸線MRと交差するように配置することで成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0040】
以上のように本発明に係る成形用金型は、スライド部材が2次元的に移動しても、あるいは3次元的に移動しても、さらに2以上のスライド部材の取り得る移動前後の軌跡が部分的に重なりあっても、スライド部材が移動前、移動中、移動後のいずれにおいても互いに干渉、衝突しないように配置される場合、スライド部材の進退方向(移動方向)MをランナーRの入口部と出口部とを結ぶ軸線MRと交差するように配置することで成形用金型をコンパクトにすることができる。これは1つの成形品Pに対して2以上のスライド部材が設けられている場合も同じである。またスライド部材は、後述の成形コアなどであってもよく特に限定されるものではない。
【0041】
図7は、本発明の第2実施形態の成形用金型2の要部断面図である。
図8及び
図9は、成形コア61を動かす駆動手段を説明するための図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
本発明の第2実施形態の成形用金型2は、アンダーカット部P1を有する成形品Pを成形するアンダーカット処理機構を備える2個取りの射出成形金型である。第2実施形態の成形用金型2は、アンダーカット処理機構を備え、ゲート切断機構を備えていない点が第1実施形態の成形用金型1と異なるが、この点を除き、他の構成は第1実施形態の成形用金型1と同じである。また第2実施形態の成形用金型2の型閉じ、射出、保圧、冷却、型開き、成形品Pの取出し動作は、第1実施形態の成形用金型1と基本的に同じである。
【0043】
アンダーカット処理機構は、成形品P(Pa、Pb)の成形時にアンダーカット部P1を成形し、エジェクタ機構31と同期し、成形品Pの突き出し時にアンダーカット部P1から外れることで、成形品Pを成形用金型2から型抜き可能とするものである。本実施形態においてアンダーカット部P1は、成形品Pに設けられた孔であり、成形品Pの型抜き方向(Y方向)に対して交差している。成形品P及びアンダーカット部P1の形状は特に限定されるものではなく、アンダーカット部が突起であってもよい。
【0044】
アンダーカット処理機構は、アンダーカット部P1を成形する成形コア61(61a、61b)と、成形コア61を動かす駆動手段とを含む。成形コア61は、
図7に示す正面視においてX軸に平行に、平面視においてX軸方向及びZ軸方向に交差する方向に進退する。成形コア61を動かす駆動手段は、特に限定されるものではない。代表的な駆動手段を
図8及び
図9に示した。
【0045】
図8(A)は、ばね71を用いた駆動手段であり、ばね71の押圧力により成形コア61をX軸に平行に移動させる。この駆動手段において、ばね71に代えてガススプリング、油圧シリンダ、エアシリンダ、磁力、弾性体を使用してもよい。
図8(B)は、固定型11に傾斜ピン73を取付け、成形コア61に傾斜ピン73が摺動自在に嵌まり込む孔62又は凹部を設け、型開きの力を利用して成形コア61を移動させる。可動側型板23にX軸に平行なガイドレール75を設け、成形コア61をガイドレール75に沿ってスライドさせることで成形コア61をX軸に平行に移動させることができる。
【0046】
図9に示す駆動手段は、成形コア61及び駆動手段が1つのユニットとして成形されており、
図9(A)は、型開きの力及びばね71の押圧力を利用して成形コア61を進退させ、
図9(B)は、エジェクタ台板33の力を利用して成形コア61を進退させる。
【0047】
図9(A)のアンダーカット処理機構は、固定型11に取付けられたホルダー81と、ホルダー81にガイドされY方向に進退する保持駒82と、保持駒82に摺動自在に連結する摺動駒83を有し、摺動駒83の先端に成形コア61が取付けられている。また保持駒82を押し下げるようにばね71が取付けられている。ホルダー81は、摺動駒83をX方向及びY方向に案内する傾斜ガイドを有し、型開きに伴い保持駒82が-Y方向に押し下げられ、これにより成形コア61が+X方向に移動する。
【0048】
図9(B)のアンダーカット処理機構は、可動型21に取付けられたホルダー81と、ホルダー81にガイドされY方向に進退する保持駒82と、保持駒82に摺動自在に連結する摺動駒83を有し、摺動駒83の先端に成形コア61が取付けられている。ホルダー81は、摺動駒83をX方向及びY方向に案内する傾斜ガイドを有し、エジェクタ機構31に連動し、保持駒82がエジェクタピン36に突き出され+Y方向に押し上げられ、これにより成形コア61が+X方向に移動する。
【0049】
図9(A)、(B)に示す駆動手段は、カムを介して成形コア61を動かすようにしてもよく、さらに+X方向に移動しアンダーカット部P1から外れた成形コア61を引き続き+X方向とは異なる他の方向に移動させるようにしてもよい。つまり成形コア61を第1方向及び第2方向に移動させるようにしてもよい。これは第1実施形態のゲートカッター51の駆動にも適用することができる。
【0050】
以上からなる第2実施形態の成形用金型2は、第1実施形態の成形用金型1のゲート切断機構をアンダーカット処理機構に置換したものということができ、平面視において成形コア61aの進退方向MaがランナーRaの軸線MRaと交差するように、同様に平面視において成形コア61bの進退方向MbがランナーRbの軸線MRbと交差するように配置されている。これによりランナーRの長さ(距離)、左右(X方向)に配置される成形品Paと成形品Pbとの間隔、換言すればキャビティ部Caとキャビティ部Cbとの間隔を短くすることができる。これにより成形用金型2をコンパクトにすることができる。
【0051】
図10は、本発明の第3実施形態の成形用金型3の構成、及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図10(A)は、本発明の第3実施形態の成形用金型3の構成を模式的に示す平面図、
図10(B)は、本発明の第3実施形態の成形用金型3のスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図10(C)は、本発明の第3実施形態の成形用金型3の変形例におけるスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
第3実施形態の成形用金型3は、成形品Pを1個成形する1個取りの射出成形金型であり、スライド部材101の進退方向(移動方向)Mが平面視においてX軸及びZ軸に交差する。一方、ランナーRの軸線MRは、平面視においてX軸方向に平行である。ランナーRと成形品Pとの位置関係では、ランナーRの軸線MRは、平面視において成形品P(成形品Pの長手方向)に直交する。スライド部材101は、型開き等に連動して移動する部材であり特に限定されるものではない。第1実施形態ではゲートカッター51が、第2実施形態では成形コア61がスライド部材に該当する。
【0053】
図10(B)に示す第3実施形態の成形用金型3のスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係は、
図5と同じである。つまりスライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交角θで交わり、さらにスライド部材101の移動方向の先に障害物がないためスライド部材の移動量Lは、L>L
X>L
0となる。ここで成形用金型3の用途に応じてL>L
X=L
0、又はL>L
0>L
xとすることもできる。
【0054】
図10(C)に示す成形用金型は、スライド部材101の移動方向の先にスプルーSが位置することを除き他は
図10(A)、(B)に示す第3実施形態の成形用金型3と同じである。
図10(C)に示す成形金型においてスプルーSは、スライド部材101の障害物となる。このような成形用金型において、スライド部材101の移動量とランナーRの長さ(距離)との関係は、L>L
0>L
xとなる。
【0055】
第1実施形態及び第3実施形態の成形用金型1、3及びその変形例からスライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交差する場合には、成形品Pの取り数が1個、又は2個以上であってもランナーRの長さ(距離)L0をスライド部材101の移動距離Lよりも小さくすることができる。これにより成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0056】
図11は、本発明の第4実施形態の成形用金型4の構成及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第4実施形態の成形用金型4は、スライド部材101の進退方向(移動方向)Mが平面視においてX軸に平行であり、ランナーRの軸線MRが、平面視においてX軸及びZ軸に交差する。スライド部材101は、型開き等に連動して移動する部材であり特に限定されるものではない。第1実施形態ではゲートカッター51が、第2実施形態では成形コア61がスライド部材に該当する。
【0057】
図11に示す第4実施形態の成形用金型4のスライド部材101の移動量とランナーRの長さ(距離)との関係は、スライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交角θで交わり、さらにスライド部材101の移動方向の先に障害物がないためスライド部材の移動量Lは、L=L
X>L
0となる。このようにランナーRが成形品Pに対して傾斜して取付けられ、スライド部材101が成形品Pに対して直交方向に進退する成形金型においても、スライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交差するためランナーRの長さ(距離)L
0をスライド部材101の移動距離Lよりも小さくすることができる。これにより成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0058】
図12は、本発明の第5実施形態の成形用金型5の構成、及びスライド部材101の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第5実施形態の成形用金型5は、平面視においてランナーRが湾曲している。ランナーRの入口部と出口部とを結ぶ軸線MR、スライド部材101の進退方向(移動方向)Mは、平面視においてX軸及びZ軸に交差し、スライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交角θで交わる。スライド部材101は、型開き等に連動して移動する部材であり特に限定されるものではない。第1実施形態ではゲートカッター51が、第2実施形態では成形コア61がスライド部材に該当する。
【0059】
図12に示す第5実施形態の成形用金型5のスライド部材101の移動量とランナーRの長さ(距離)との関係は、スライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交角θで交わり、さらにスライド部材101の移動方向の先に障害物がないためスライド部材の移動量Lは、L>L
X>L
0となる。ここで成形用金型5の用途に応じてL>L
X=L
0、又はL>L
0>L
xとすることもできる。このようにランナーRが湾曲していてもスライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交差するように配置されているためランナーRの長さ(距離)L
0をスライド部材101の移動距離Lよりも小さくすることができる。これにより成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0060】
また
図12から直線状のランナーRが、ランナーRの軸線MRが成形品Pに対して傾斜するように、またスライド部材101の進退方向Mが成形品Pに対して傾斜するように取付けられ、スライド部材101の進退方向MとランナーRの軸線MRとが交差する場合には、ランナーRの長さ(距離)L
0をスライド部材101の移動距離Lよりも小さくすることができることが分かる。これにより成形用金型をコンパクトにすることができる。なお、スライド部材101は、目的に応じてL>L
X>L
0、L>L
X=L
0、L>L
0>L
xとすることもできる。
【0061】
図13は、本発明の第6実施形態の成形用金型6の構成を模式的に示す平面図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
第6実施形態の成形用金型6は、2個取りの成形用金型であり、成形品Pa、PbはX軸方向に間隔をあけて配置されている。第6実施形態の成形用金型6では、成形品Pa、Pbそれぞれの成形にゲートカッター51a、51b、アンダーカット成形コア61a、61bが関与する。本実施形態において、ゲートカッター51a、51b、アンダーカット成形コア61a、61bがスライド部材に該当するが、スライド部材の種類、組み合わせはこれに限定されるものではない。例えば、1つの成形品Pに2つのゲートカッター51が設けられていても、また1つの成形品Pに2つの成形コア61が設けられていてもよく、スライド部材がスライドコアなどであってもよい。
【0063】
ゲートカッター51aとゲートカッター51bとは、Z軸方向の位置が異なり、ゲートカッター51aの進退方向M1a、ゲートカッター51bの進退方向M1bは、X軸に平行である。成形コア61aと成形コア61bとは、Z軸方向の位置が異なり、成形コア61aの進退方向M2aは、X軸及びZ軸に対して交差しており、成形コア61bの進退方向M2bは、X軸に平行である。
【0064】
また第6実施形態の成形用金型6は、それぞれの成形品Pa、Pbに対して2本のランナーR1a、R2a、R1b、R2bがつながっている。ランナーR1aの軸線MR1aとランナーR1bの軸線MR1bとは一直線状に配置されている。同様にランナーR2aの軸線MR2aとランナーR2bの軸線MR2bとは一直線状に配置されている。
【0065】
以上からなる第6実施形態の成形用金型6は、第1から第5実施形態の成形用金型1、2、3、4、5と同様に、スライド部材101であるゲートカッター51a、51bの進退方向(移動方向)M1a、M1bがランナーR1a、R1bの軸線MR1a、MR1bと交差するように配置され、さらにスライド部材101である成形コア61a、61bの進退方向(移動方向)M2a、M2bがランナーR2a、R2bの軸線MR2a、MR2bと交差するように配置されているので左右に配置される成形品Paと成形品Pbとの間隔、換言すればキャビティ部Caとキャビティ部Cbとの間隔を短くすることができる。これにより成形用金型6をコンパクトにすることができる。
【0066】
図14は、本発明の第7実施形態の成形用金型7の構成、及びゲートカッター52の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。また第7実施形態の成形用金型7による成形品Pa、Pbの成形要領は、第1実施形態の成形用金型1と基本的に同じであるので説明を省略する。本実施形態では、ゲートカッター52を備える成形用金型7を示すが、ゲートカッター52はスライド部材の一態様であり、ゲートカッター52に代えて成形コアなどのスライド部材を備える成形用金型7でもよい。
【0067】
本発明の第7実施形態の成形用金型7は、2個取りの射出成形金型であり、ゲート切断機構を備える。2つの成形品Pa、Pbは、スプルーSを中心に左右に配置されている。2つの成形品Pa、Pbは、同一の形状、大きさであり、平面視において長手方向がZ軸に平行に、短手方向がX軸に平行に配置されている。ここで成形品Pa、Pbは、キャビティ部Ca、Cbと読み代えても同じである。
【0068】
本実施形態のランナーRは、スプルーSから-Z方向に延びる第1流路111と、第1流路111の末端につながり第1流路111に直交するように配置される第2流路112及び第3流路113とからなる。第2流路112は-X方向に、第3流路113は+X方向に延び、第2流路112及び第3流路113はX軸に平行に一直線となっている。第2流路112及び第3流路113の末端がそれぞれゲートGa、Gbにつながる。ランナーRは、全体的には平面視において転倒T字状である。なお、スプルーSとランナーRとの位置関係は特に限定されるものでない。
【0069】
スプルーSから成形品PaのゲートGaまでをランナーRaとすれば、ランナーRaは、第1流路111と第2流路112とからなる。同様にスプルーSから成形品PbのゲートGbまでをランナーRbとすれば、ランナーRbは、第1流路111と第3流路113とからなる。この場合、ランナーRaの軸線MRa及びランナーRbの軸線MRbは、それぞれ成形品Pa、Pbに対して傾斜する(
図14(B)参照)。
【0070】
一方、第2流路112をランナーRaとすれば、ランナーRaの軸線MRaは、成形品Paに直交する。同様に、第3流路113をランナーRbとすれば、ランナーRbの軸線MRbは、成形品Pbに直交する(
図14(C)参照)。
【0071】
ゲート切断機構は、成形品Pa、PbとランナーRa、RbとをつなぐゲートGa、Gbを切断する装置であり、ゲートGa、Gbを切断するゲートカッター52と、ゲートカッター52を動かす駆動手段(図示省略)とを含む。駆動手段は、第1実施形態の成形用金型1で説明の通りである。本実施形態のゲート切断機構は、1つのゲートカッター52でランナーRaにつながるゲートGa及びランナーRbにつながるゲートGbを同時に切断するように構成されている。
【0072】
ゲートカッター52は、平面視においてZ軸に平行に進退する(
図14(A)参照)。ゲートカッター52の進行方向の先にはスプルーSがあるが、ゲートカッター52はスプルーSの手前で停止するためスプルーSに衝突することはない。本実施形態の成形用金型7は、スプルーSから成形品PaのゲートGaまでをランナーRaとしても、第2流路112をランナーRaとしてもランナーRaの軸線MRaとゲートカッター52の移動方向Mとは交差する。ランナーRbについても同様である。スプルーSとランナーRとの位置関係は特に限定されるものでなく、平面視においてスプルーSがランナーR上またはランナーRより-Z軸方向にある場合、ゲートカッター52は当該部を除いた形状になる。
【0073】
以上から第7実施形態の成形用金型7において、
図14(B)に示すようにスプルーSから成形品PaのゲートGa、GbまでをランナーRa、Rbとし、ランナーRa、Rbの入口部と出口部とのX軸方向の距離をL
0、ゲートカッター52の移動量をL、ゲートカッター52のX軸方向の移動量をL
XとするとL
X=0である。ゲートカッター52は、成形品Pa、Pbに平行に移動するためスプルーSに衝突しない範囲で移動量を自由に設定できる。このためL>L
0>L
Xとすることができ、ゲートカッター52の移動量Lを大きく設定しても、成形品Paと成形品Pbとの間隔を狭くすることができる。
【0074】
第7実施形態の成形用金型7において、
図14(C)に示すようにランナーRa、Rbをそれぞれ第2流路112、第3流路113とし、ランナーRa、Rbの入口部と出口部とのX軸方向の距離をL
0、ゲートカッター52の移動量をL、ゲートカッター52のX軸方向の移動量をL
Xとすると、
図14(B)と同じになる。つまりランナーRaを第1流路111+第2流路112としてもランナーRaを第2流路112としても同じ結果となる。これはランナーRbについても同じである。
【0075】
図15は、本発明の第8実施形態の成形用金型8の構成、及びゲートカッター52の移動量とランナーRの長さとの関係を説明するための模式図である。
図1から
図5に示す第1実施形態の成形用金型1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。また第8実施形態の成形用金型8による成形品Pの成形要領は、第1実施形態の成形用金型1と基本的に同じであるので説明を省略する。本実施形態では、ゲートカッター52を備える成形用金型8を示すが、ゲートカッター52はスライド部材の一態様であり、ゲートカッター52に代えて成形コアなどのスライド部材を備える成形用金型8でもよい。
【0076】
本発明の第8実施形態の成形用金型8は、1個取りの射出成形金型であり、ゲート切断機構を備える。成形品Pは、平面視において長手方向がZ軸に平行に、短手方向がX軸に平行に配置されている。ここで成形品Pは、キャビティ部Cと読み代えても同じである。ランナーRは、X軸に平行に配置され、成形品P(成形品Pの長手方向)に直交する。
【0077】
ゲート切断機構は、成形品PとランナーRとをつなぐゲートGを切断する装置であり、ゲートGを切断するゲートカッター52と、ゲートカッター52を動かす駆動手段(図示省略)とを含む。駆動手段は、第1実施形態の成形用金型1で説明の通りである。ゲートカッター52は、平面視においてZ軸に平行に進退する。このためランナーRの軸線MRとゲートカッター52の移動方向Mとは交差(直交)し、交角θは90°である。
【0078】
第8実施形態の成形用金型8においも、第7実施形態の成形用金型7と同様に、ランナーRの入口部と出口部とのX軸方向の距離をL0、ゲートカッター52の移動量をL、ゲートカッター52のX軸方向の移動量をLXとするとLX=0である。またゲートカッター52が成形品Pに平行に移動し、またスプルーSに衝突しないためL>L0>LXとすることができる。このためゲートカッター52の移動量Lを大きく設定しても、ランナーRの長さを短くすることができる。
【0079】
第7実施形態の成形用金型7、第8実施形態の成形用金型8は、スライド部材であるゲートカッター52が、成形品Pに対して平行に移動する一方で、ランナーRが成形品Pに対して直交する。このためランナーRの軸線MRとスライド部材の移動(進退)方向Mは、直交するが、ランナーRの軸線MRとスライド部材の移動(進退)方向Mとが交差する点において、本発明の他の実施形態の成形用金型と変わりなく、成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0080】
以上、第1から第8実施形態の成形用金型1~8、さらに第3実施形態の成形用金型3の変形例に示すようにスライド部材を、スライド部材の進退方向(移動方向)がランナーの入口部と出口部とを結ぶ軸線と交差するように配置することで成形用金型をコンパクトにすることができる。
【0081】
以上、第1から第8実施形態の成形用金型及び変形例を用いて、本発明に係る成形用金型を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。
【0082】
第1実施形態の成形用金型1では、成形品Pの長手方向がZ軸に平行であるが、成形品Pの短手方向がZ軸に平行に配置されていてもよい。本発明に係る成形用金型において成形品Pの配置、形状、大きさは特に限定されない。また第1実施形態の成形用金型1では、型開き後にゲートGを切断するが、ゲートGの切断は型閉じ状態であってもよい。
【0083】
型閉じ状態でゲートカッター51a(51b)が成形品Pa(Pb)から突出し、ゲートGa(Gb)を切断する際に成形品Pa(Pb)側に移動するゲートカッター51a(51b)を備える成形用金型も、ゲートカッター51a(51b)の進退方向Ma(Mb)をランナーRa(Rb)の軸線(MRa、MRb)に対して傾斜するように配置すれば、左右に配置される成形品Paと成形品Pbとの間隔、換言すればキャビティ部Caとキャビティ部Cbとの間隔を短くすることができる。これにより成形用金型をコンパクトにすることができる。これはアンダーカット成形コアを備える成形用金型においても同様である。
【0084】
第1から第8実施形態の成形用金型及び変形例では、型開き方向がY軸に平行であり、可動側型板の上面24がXZ平面に平行に配置されているが、本発明に係る成形用金型の型開き方向、配置は特に限定されるものではない。本発明に係る成形用金型は、型開き方向を水平方向(左右方向、X軸に平行)とし、あるいはX軸及びY軸に対して交差する方向に型開きをするように使用してもよい。
【0085】
上記実施形態では射出成形金型を用いて本発明に係る成形用金型を説明したが、本発明に係る成形用金型は、射出成形金型に限定されるものではなくダイカスト金型、その他成形用金型において好適に適用することができる。成形品Pの素材(成形材料)も特に限定されるものではない。
【0086】
上記実施形態では、スライド部材としてゲートカッター、アンダーカットの成形コアを示したが、駆動手段を介してスライドしゲートを引きちぎる引きちぎり駒もスライド部材に含まれる。また成形用金型においては、部材をスライドさせることでゲートに負荷を加え又はゲートを引き伸ばし又はゲートに亀裂を生じさせたいとの要求もある。このような部材も本発明に係る成形用金型のスライド部材に含めることができる。
【0087】
第6実施形態の成形用金型では、1つの成形品に対して2つのランナーR、2つのスライド部材を備えるが、1つの成形品に対するランナーR及びスライド部材の数は3個以上であってもよい。また1つの成形品に対するランナーRの数とスライド部材の数とが異なっていてもよい。
【0088】
また上記実施形態では、成形品の数である取り数が1個、2個の場合の成形用金型を示したが、成形品の取り数は3個以上であってもよい。
【0089】
本発明に係る成形用金型において、ランナーシステムは特に限定されるものではない。成形品の取り数が3個以上であり、成形品が同じであれば、スポーク型ランナーを採用し、成形品をスプルーSから等距離に配置すればよい。流動性バランスの取れたランナーシステムを採用すれば、大きさ、形状が異なる成形品の成形にも本発明に係る成形用金型を用いることができる。
【0090】
本発明に係る成形用金型において、ゲートGの種類は特に限定されるものではない。サイドゲート、オーバーラップゲート、サブマリンゲートなど種々のゲートを採用することができる。またランナーもコールドランナーのみならずホットランナーにも適用することができる。
【0091】
また本発明に係る成形用金型に取付け使用される、例えば本発明の第1、第2実施形態に示すゲートカッター、成形コアなどのスライド部材、又は例えば本発明の第2実施形態に示す成形コアを含むユニットなど本発明に係る成形用金型に取付け使用されるスライド部材を含むスライドユニットは、本発明の権利範囲に含まれる。
【0092】
また本発明の成形用金型において、各構成部材の角及び側稜にR面取りやC面取り等が施されていてもよい。また本発明の成形用金型に使用される各構成部材の材質は、特定の材質に限定されるものではない。各構成部材における摺動面は、摺動性の良好な材質又は摺動性の良好な表面処理が施された材料を用いることが好ましい。
【0093】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3、4、5、6、7、8 成形用金型
11 固定型
21 可動型
31 エジェクタ機構
33 エジェクタ台板
51、51a、51b、52 ゲートカッター
61、61a、61b 成形コア
101 スライド部材
111 第1流路
112 第2流路
113 第3流路
G、Ga、Gb ゲート
L ゲートカッター、スライド部材の移動量
LX ゲートカッター、スライド部材のX方向の移動量
L0 ランナーの長さ(距離)
M スライド部材の進退方向
Ma、Mb ゲートカッターの進退方向
MR、MRa、MRb ランナーの軸線
P、Pa、Pb 成形品
P1 アンダーカット部
R、Ra、Rb ランナー
RaI、RbI ランナー入口部
Rao、Rbo ランナー出口部
S スプルー
θ 交角