(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】撮影装置、撮影システム、および、物体の物理特性の特定方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/50 20230101AFI20241106BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241106BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20241106BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
H04N23/50
G03B15/00 U
G03B17/56 A
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2020127918
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂木 洋光
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆正
(72)【発明者】
【氏名】入江 輝紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 誠一郎
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3044958(JP,U)
【文献】特開2004-354100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222- 5/257
H04N 7/18
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
G03B 15/00
G03B 17/56
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体を、回転させた状態で撮影するための撮影装置であって、
回転軸廻りに回転する回転体と、
前記回転体を回転駆動する駆動部と、
を備え、
前記回転体は、
前記物体を収容するための収容室であって、少なくとも一部が光を透過する壁面により規定され、かつ、前記回転軸廻りに自転する収容室が形成された収容部と、
レンズと撮像素子とを有し、前記レンズの光軸が前記光を透過する壁面を介して前記収容室と交差するように、前記収容部に対する相対位置が固定された撮影部と、
を含む、撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影装置であって、
前記回転体は、さらに、前記撮影部による撮影を制御する制御部を含む、撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮影装置であって、
前記回転体は、さらに、前記収容部に固定され、前記回転軸方向視で前記回転軸を中心とした円形状の円形部を有する支持部を含み、
前記撮影部は、前記支持部の前記円形部に固定されている、撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の撮影装置であって、
前記駆動部は、前記回転体の下方に配置されている、撮影装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の撮影装置であって、
前記収容部は、
前記収容室が形成されたケースと、
前記ケースを着脱可能に保持するフォルダ部と、
を含む、撮影装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の撮影装置であって、
前記収容部における前記収容室を規定する壁面には、複数の凸部が形成されている、撮影装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の撮影装置であって、
前記回転体は、さらに、前記撮影部による撮影により生成された画像データを無線通信により外部装置に送信する通信部を含む、撮影装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮影装置と、
前記撮影装置の前記通信部と無線通信する外部通信部を備え、前記外部通信部を介して前記撮影装置から取得した前記画像データに対する画像処理を行うことによって、前記物体の形状を特定し、特定された前記物体の形状に基づき、前記物体の物理特性を特定する前記外部装置と、
を備える撮影システム。
【請求項9】
回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体の物理特性の特定方法であって、
撮影装置を用いて、前記物体を回転させた状態で撮影する工程と、
前記撮影により生成された画像データに対する画像処理を行うことによって、前記物体の形状を特定する工程と、
特定された前記物体の形状に基づき、前記物体の前記物理特性を特定する工程と、
を備え
、
前記撮影装置は、
回転軸廻りに回転する回転体と、
前記回転体を回転駆動する駆動部と、
を備え、
前記回転体は、
前記物体を収容するための収容室であって、少なくとも一部が光を透過する壁面により規定され、かつ、前記回転軸廻りに自転する収容室が形成された収容部と、
レンズと撮像素子とを有し、前記レンズの光軸が前記光を透過する壁面を介して前記収容室と交差するように、前記収容部に対する相対位置が固定された撮影部と、
を含む、物体の物理特性の特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、撮影装置、撮影システム、および、物体の物理特性の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転中の物体を撮影する撮影装置が知られている。例えば、非特許文献1には、被写体としての物体(機上工具)を回転軸廻りに回転させ、該回転に同期してストロボを発光させつつ撮影部で該物体を撮影することにより、該物体を任意の回転位置で仮想停止させた画像を得る撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】竹保義博、外5名、「工具モニタリングシステムの開発(第1報) 機上工具観察システムの開発」、広島県立総合技術研究所東部工業技術センター研究報告、広島県立総合技術研究所東部工業技術センター、2012年12月、No.25、P.1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば砂礫等の粉体の集合体のように、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体を対象として、該物体を回転させた状態で撮影することが求められる場合がある。このような撮影は、例えば、遠心力の作用による物体の変形に基づき、該物体の物理特性(例えば、摩擦係数、粒子間付着力、かさ密度等)を特定するために行われる。このような撮影の際には、物体の変形を精度良く捉えるために、回転中の物体における特定の面を、できるだけ短い周期で撮影できることが好ましい。しかしながら、上記従来の撮影装置では、物体の回転とストロボ発光タイミングや撮影タイミングとの同期を取るために複雑な装置や制御を要する上に、該同期の正確性が十分ではないために位相ずれが発生するおそれがあり、さらに、回転周期より短い周期で撮影することができない、という課題がある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される撮影装置は、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体を、回転させた状態で撮影するための撮影装置である。撮影装置は、回転軸廻りに回転する回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動部とを備える。前記回転体は、収容部と、撮影部とを含む。収容部には、前記物体を収容するための収容室であって、少なくとも一部が光を透過する壁面により規定され、かつ、前記回転軸廻りに自転する収容室が形成されている。撮影部は、レンズと撮像素子とを有し、前記レンズの光軸が前記光を透過する壁面を介して前記収容室と交差するように、前記収容部に対する相対位置が固定されている。
【0008】
このように、本撮影装置では、回転体が収容部と撮影部とを含むため、駆動部によって回転体を回転駆動することにより、収容部に形成された収容室内に収容された物体が回転軸廻りに自転する。このとき、撮影部も、収容部に対する相対位置が固定された状態で、収容部と共に(すなわち、物体と共に)回転軸廻りに回転する。そのため、撮影部は、任意のタイミングで、回転中の物体における特定の面を撮影することができる。従って、本撮影装置によれば、物体の回転とストロボ発光タイミングや撮影タイミングとの同期を取るための複雑な装置や制御を要することなく、かつ、位相ずれが防止された状態で、回転中の物体における特定の面を回転周期より短い周期で撮影することができ、撮影部によって回転による物体の変形を精度良く捉えることができる。さらに、本撮影装置によれば、ストロボを発光させる必要がないため、反射によって画像における物体の鮮明性が低下することを防止することができる。
【0009】
(2)上記撮影装置において、前記回転体は、さらに、前記撮影部による撮影を制御する制御部を含む構成としてもよい。本撮影装置によれば、制御部も回転させることによって制御部を冷却することができ、制御部による撮影部の制御を安定化させることができる。
【0010】
(3)上記撮影装置において、前記回転体は、さらに、前記収容部に固定され、前記回転軸方向視で前記回転軸を中心とした円形状の円形部を有する支持部を含み、前記撮影部は、前記支持部の前記円形部に固定されている構成としてもよい。本撮影装置によれば、回転軸方向視で回転軸を中心とした円形状であるために円滑に回転する円形部に撮影部を固定することにより、回転に伴う撮影部の振動を抑制することができ、撮影部によって回転による物体の変形をさらに精度良く捉えることができる。
【0011】
(4)上記撮影装置において、前記駆動部は、前記回転体の下方に配置されている構成としてもよい。本撮影装置によれば、重量物を下方に配置することによって撮影装置の重心を下げることができ、その結果、回転に伴う振動を抑制することができ、撮影部によって回転による物体の変形をさらに精度良く捉えることができる。
【0012】
(5)上記撮影装置において、前記収容部は、前記収容室が形成されたケースと、前記ケースを着脱可能に保持するフォルダ部と、を含む構成としてもよい。本撮影装置によれば、収容部への物体の収容や収容部からの物体の取り出しを容易に行うことができる。
【0013】
(6)上記撮影装置において、前記収容部における前記収容室を規定する壁面には、複数の凸部が形成されている構成としてもよい。本撮影装置によれば、収容室に収容された物体を回転させることによって混合を促進させることができ、混合に伴う物体の変形状況の把握や物理特性の特定を実現することができる。
【0014】
(7)上記撮影装置において、前記回転体は、さらに、前記撮影部による撮影により生成された画像データを無線通信により外部装置に送信する通信部を含む構成としてもよい。本撮影装置によれば、回転体が回転駆動されている最中であっても、画像データが生成された都度、画像データを取り出すことができ、利便性を向上させることができる。
【0015】
(8)本明細書に開示される撮影システムは、上記撮影装置と、前記撮影装置の前記通信部と無線通信する外部通信部を備え、前記外部通信部を介して前記撮影装置から取得した前記画像データに対する画像処理を行うことによって、前記物体の形状を特定し、特定された前記物体の形状に基づき、前記物体の物理特性を特定する前記外部装置と、を備える。本撮影システムによれば、撮影部によって回転による物体の変形を精度良く捉えた画像データを用いて、物体の物理特性を精度良く特定することができる。
【0016】
(9)本明細書に開示される物体の物理特性の特定方法は、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体の物理特性の特定方法であって、撮影装置を用いて、前記物体を回転させた状態で撮影する工程と、前記撮影により生成された画像データに対する画像処理を行うことによって、前記物体の形状を特定する工程と、特定された前記物体の形状に基づき、前記物体の前記物理特性を特定する工程と、を備える。本物体の物理特性の特定方法によれば、撮影装置によって回転する物体を撮影することにより生成された画像データを用いて、回転する物体の物理特性を特定することができる。
【0017】
(10)上記物体の物理特性の特定方法において、前記撮影装置は、回転軸廻りに回転する回転体と、前記回転体を回転駆動する駆動部と、を備え、前記回転体は、前記物体を収容するための収容室であって、少なくとも一部が光を透過する壁面により規定され、かつ、前記回転軸廻りに自転する収容室が形成された収容部と、レンズと撮像素子とを有し、前記レンズの光軸が前記光を透過する壁面を介して前記収容室と交差するように、前記収容部に対する相対位置が固定された撮影部と、を含む構成としてもよい。本物体の物理特性の特定方法によれば、撮影装置によって回転による物体の変形を精度良く捉えた画像データを用いて、物体の物理特性を精度良く特定することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、撮影装置、撮影システム、物体の物理特性の特定方法、その方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態における撮影システム10の概略構成を示す説明図
【
図3】撮影装置100の一部の上面視での外観構成を拡大して示す説明図
【
図4】撮影装置100の一部(ケース122)の外観構成を拡大して示す説明図
【
図5】撮影装置100の一部(ケース122)の外観構成を拡大して示す説明図
【
図6】本実施形態における特性特定処理の内容を示すフローチャート
【
図7】特性特定処理中における収容室SPに収容された物体OBの状態を示す説明図
【
図8】特性特定処理における画像処理の概要を示す説明図
【
図9】物体OBの摩擦係数μを特定する方法を示す説明図
【
図10】物体OBの摩擦係数μを特定する方法を示す説明図
【
図11】変形例におけるケース122の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態:
A-1.撮影システム10の構成:
図1は、本実施形態における撮影システム10の概略構成を示す説明図である。撮影システム10は、撮影装置100と、画像処理装置200とを備える。撮影システム10を構成する各装置は、互いに通信可能に接続されている。
【0021】
(撮影装置100の構成)
撮影装置100は、物体の撮影を行うことによって該物体を表す画像データを生成する装置である。より具体的には、撮影装置100は、例えば砂礫等の粉体の集合体のように、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体を対象として、該物体を回転させた状態で撮影するための装置である。このような撮影は、例えば、遠心力の作用による物体の変形に基づき、該物体の物理特性(例えば、摩擦係数、粒子間付着力、かさ密度等)を特定するために行われる。
図2は、撮影装置100の外観構成を示す説明図であり、
図3は、撮影装置100の一部の上面視での外観構成を拡大して示す説明図であり、
図4および
図5は、撮影装置100の一部(後述するケース122)の外観構成を拡大して示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。Z軸正方向が上方向であり、Z軸負方向が下方向である。
【0022】
図1および
図2に示すように、撮影装置100は、回転体RBと、駆動部DRとを備える。
図1に示すように、本実施形態では、撮影装置100は、複数の柱状部材と平板部材とから構成されたフレーム190を有しており、該フレーム190によって、上部空間USと下部空間LSとが画定されている。回転体RBは上部空間USに収容され、駆動部DRは下部空間LSに収容されている。すなわち、駆動部DRは、回転体RBの下方に配置されている。なお、上部空間USと下部空間LSとの少なくとも一方について、空間を外周から覆うようなカバーが設けられてもよい。
【0023】
回転体RBは、回転軸AX廻りに回転する部分である。本実施形態では、回転軸AXは鉛直方向(Z軸方向)に平行である。そのため、回転体RBの回転は、いわゆる横回転である。回転体RBは、収容部120と、撮影部130と、支持部140と、バッテリ150と、通信部160と、制御部170とを含む。すなわち、回転体RBを構成するこれらの各部は、互いの相対位置関係が固定された状態で、回転軸AX廻りに回転する。なお、
図2~5には、回転体RBが特定の角度で停止している状態を示しており、回転体RBの回転に伴い、回転体RBの角度は図示された状態から変化する。
【0024】
収容部120は、ケース122と、フォルダ部124とを含む。
図4および
図5に示すように、ケース122は、撮影の被写体となる物体OBを収容するための収容室SPが形成されたカートリッジ式の容器である。本実施形態では、収容室SPは、密閉空間である。また、収容室SPは、略直方体形状であり、より具体的には、高さHおよび幅Wと比較して奥行Dが極めて小さい擬似的な二次元空間である。例えば、本実施形態では、収容室SPの奥行Dは、高さHおよび幅Wの1/8以下である。収容室SPを規定する壁面のうち、正面および裏面(奥行D方向に直交する面)の壁面は光を透過する構成(より具体的には透明)になっており、収容室SP内の物体OBの状態(形状等)が外部から目視できるようになっている。
【0025】
図2および
図3に示すように、フォルダ部124は、ケース122を着脱可能に保持する部材である。本実施形態では、フォルダ部124は、枠状の部材である。フォルダ部124の枠内にケース122をはめ込み、ボルト等の固定具により固定することにより、ケース122がフォルダ部124に保持された状態で固定される。
図2に示すように、フォルダ部124は、フォルダ部124の上部および下部のそれぞれに接続された軸部材182,184によって、回転軸AX廻りに自転可能に支持されている。フォルダ部124にケース122が取り付けられた状態において、ケース122に形成された収容室SPは、回転体RBの回転軸AXと重なる位置に位置する。より具体的には、
図4に示すように、ケース122に形成された収容室SPは、回転体RBの回転軸AXが収容室SPの任意の水平断面の中心点P1を通るように配置される。すなわち、収容室SPは、回転軸AXが収容室SPの高さHの方向と平行になり、かつ、回転軸AXが収容室SPの幅Wおよび奥行Dを2分するような配置となる。そのため、フォルダ部124が回転軸AX廻りに自転すると、フォルダ部124に保持されたケース122(ケース122に形成された収容室SP内に収容された物体OB)も回転軸AX廻りに自転し、収容室SPに収容された物体OBに、重力に加えて遠心力が作用する。
【0026】
なお、回転中の物体OBに作用する重力は、回転数によらず一定である一方、遠心力は回転数に応じて変化する。そのため、回転体RBの回転数に応じて、収容室SPに収容された物体OBに作用する重力に対する遠心力の比(以下、「重力-遠心力比Γ」という。)は変化する。収容室SPの幅W方向の端部(回転軸AXからの距離が最大値r
0となる位置)における重力-遠心力比Γは、以下の式(1)で表される。なお、式(1)において、mは質量(kg)であり、ωは角速度(rad/s)であり、gは重力加速度(=9.8m/s
2)であり、r
0は回転軸AXからの最大距離(すなわち、1/2W)(m)である。
【数1】
【0027】
図2および
図3に示すように、支持部140は、収容部120(収容部120のフォルダ部124)に固定された部材である。本実施形態では、支持部140は、収容部120のフォルダ部124から水平方向に伸びる2本の腕部142と、各腕部142に接続され、回転軸AX方向視で回転軸AXを中心とした円形状の円形部144とを有する。腕部142および円形部144は、例えば金属製のプレートを加工することにより形成されている。支持部140の円形部144には、撮影部130と制御部170とが固定されている。なお、本実施形態では、支持部140の円形部144の各位置における荷重のバランスを取るために、撮影部130および制御部170の固定位置および質量に応じて、円形部144の所定の位置に所定の質量のバランサー(錘)146が固定されている。
【0028】
撮影部130は、レンズ132と、例えばCCDやCMOS等の撮像素子134とを有し、被写体としての物体OBを撮影するカメラである。上述したように、撮影部130は、支持部140の円形部144に固定されている。そのため、収容部120に対する撮影部130の相対位置が固定されている。より具体的には、
図4に示すように、撮影部130は、収容部120の収容室SPに正対する位置に相対的に固定されている。すなわち、撮影部130は、レンズ132の光軸LAが、上述した光を透過する壁面(正面の壁面)を介して収容室SPと交差するように配置されている。なお、本実施形態では、レンズ132の光軸LAが、収容室SPの奥行D方向に平行であり、かつ、収容室SPの中心点P0と交わっている。
【0029】
バッテリ150は、回転体RBを構成する各部(撮影部130や制御部170)に電源を供給する蓄電池である。
図2に示すように、本実施形態では、バッテリ150は、収容部120の下方に配置されている。制御部170は、撮影部130による撮影を制御する装置であり、例えばシングルボードコンピュータにより構成されている。制御部170は、撮影部130による撮影を制御することによって、物体OBを表す画像データを生成する。通信部160は、外部装置(例えば、画像処理装置200)との間で無線通信を行う通信インターフェースである。通信部160は、撮影部130による撮影により生成された画像データを、無線通信により画像処理装置200に送信する。
【0030】
駆動部DRは、回転体RBを回転駆動する部分である。
図1に示すように、駆動部DRは、モータ112と、インバータ114とを含む。モータ112は、回転体RBを回転させるための回転力を軸部材182,184に出力する。インバータ114は、電源の周波数を変化させることによってモータ112の回転数を制御し、これにより、回転体RBの回転数を制御する。なお、駆動部DRには、例えば、撮影装置100の外部から200Vの交流電源が供給される。
【0031】
(画像処理装置200の構成)
図1に示すように、画像処理装置200は、制御部210と、記憶部220と、通信部230と、表示部240と、操作部250とを備える。これらの各部は、図示しないバスを介して互いに通信可能に接続されている。なお、画像処理装置200は、特許請求の範囲における外部装置の一例であり、通信部230は、特許請求の範囲における外部通信部の一例である。
【0032】
画像処理装置200の表示部240は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等により構成され、各種の画像や情報を表示する。また、操作部250は、例えばキーボードやマウス、ボタン、マイク等により構成され、管理者の操作や指示を受け付ける。また、通信部230は、例えばLANインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。
【0033】
画像処理装置200の記憶部220は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶部220には、画像データに対する各種処理を行うことによって物体OBの物理特性を特定するためのコンピュータプログラムCPが格納されている。このコンピュータプログラムCPは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、あるいは外部装置から通信ネットワークを介してダウンロードされ、画像処理装置200にインストールすることにより記憶部220に格納される。
【0034】
画像処理装置200の制御部210は、例えばCPU等により構成され、記憶部220から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、画像処理装置200の動作を制御する。例えば、制御部210は、記憶部220からコンピュータプログラムCPを読み出して実行することにより、物体OBの物理特性を特定する特性特定部212として機能する。
【0035】
A-2.特性特定処理:
次に、本実施形態の撮影システム10において実行される特性特定処理について説明する。特性特定処理は、例えば砂礫等の粉体の集積体のように、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体OBを対象として、該物体OBを回転させた状態で撮影することにより画像データを取得し、該画像データに対する画像処理を行うことによって該物体OBの形状を特定し、特定された該物体OBの形状に基づき該物体OBの物理特性(例えば、摩擦係数、粒子間付着力、かさ密度等)を特定する処理である。
図6は、本実施形態における特性特定処理の内容を示すフローチャートであり、
図7は、特性特定処理中における収容室SPに収容された物体OBの状態を示す説明図であり、
図8は、特性特定処理における画像処理の概要を示す説明図である。
【0036】
はじめに、ケース122に形成された収容室SP内に、本処理の対象となる物体OBを収容し(S110)、物体OBが収容されたケース122を撮影装置100の収容部120のフォルダ部124に設置する(S120)。以下では、物体OBとして、直径1.5~2.5mmのガラスビーズの集合体が用いられた場合を例として説明する。
図7のA欄には、ケース122の収容室SPに物体OBが収容された直後の初期状態が示されている。本実施形態では、ケース122の収容室SPの中央下部に漏斗の足先を挿入し、漏斗に物体OBを流し込みながら漏斗を引く抜くことにより、物体OBを所定の角度(山が崩れる寸前の角度であり、「安息角」とも呼ばれる。)の傾斜を有する山形状にしている。初期状態では、回転体RBの回転数がゼロであるため、物体OBに作用する遠心力もゼロであり、上述した重力-遠心力比Γの値もゼロである。
【0037】
次に、撮影装置100の駆動部DRによる回転体RBの回転駆動と、撮影部130によるケース122の収容室SP内に収容された物体OBの撮影とを実行する(S130)。回転体RBの回転駆動の際には、駆動部DRのモータ112によって回転体RBを回転駆動しつつ、インバータ114によってモータ112の回転数、ひいては回転体RBの回転数を増減させる。本実施形態では、回転体RBの回転数がゼロである初期状態から、重力-遠心力比Γが予め設定された最大値(本実施形態では20.48)となるまで、回転体RBの回転数を段階的に上げ、その後、回転体RBの回転数を段階的に下げ、回転体RBの回転数が再びゼロとなった時点を終了状態とする。回転体RBの回転数の増減は、例えば1rpm/sec程度のゆっくりした変化量で行うことが好ましい。回転体RBの回転数が予め設定された各段階となった状態(回転体RBの回転数がゼロである初期状態および終了状態も含む)で、撮影部130により物体OBの撮影を行うことによって画像データを生成する。撮影タイミングは、回転体RBが所定の回転数に到達してから十分な時間(例えば、14秒間)が経過し、物体OBの形状が平衡形状となったタイミングとする。
【0038】
図7には、回転体RBの回転に伴い、ケース122の収容室SP内に収容された物体OBに遠心力が作用し、該物体OBが変形した様子が例示されている。
図7のA欄に示す初期状態(回転体RBの回転数がゼロである状態)から、回転体RBの回転数が増加すると、
図7のB欄に示すように、物体OBに遠心力が作用して、物体OBを構成する各粒子が外側に移動するように物体OB全体の形状が変形する。
図7のC欄には、回転体RBの回転数が最大値となった状態(上述した重力-遠心力比Γが最大値(=20.48)となった状態)が示されており、この状態では物体OBを構成する多数の粒子が収容室SPの外側の壁面に張り付くような形状となっており、初期状態から大きく変形している。また、
図7のD欄には、回転体RBの回転数を最大値から下げた状態(より具体的には、重力-遠心力比Γの値が、
図7のB欄に示す状態と同じ値である状態)が示されており、
図7のE欄には、終了状態(回転体RBの回転数が再びゼロになった状態)が示されている。
図7のD欄およびE欄に示すように、この例では、物体OBに大きな遠心力が作用して物体OBが大きく変形した後は、遠心力が小さくなっても、物体OBの変形後の形状がある程度維持されている。
【0039】
S130における回転体RBの回転駆動と物体OBの撮影とを実行することにより、
図7の各欄に示すような、物体OBに作用する遠心力の大きさに応じて変形した物体OBの各状態を表す画像データが生成される。撮影装置100の制御部170は、必要により、画像データに対する画像処理(歪み補正やノイズ除去等)を行ってもよい。生成された画像データは、撮影装置100の制御部170による制御の下、通信部160を介して画像処理装置200に向けて送信される。なお、このような画像データの送信は、回転体RBの回転駆動が終了した後にまとめて実行されてもよいし、リアルタイムで、すなわち、回転体RBが回転駆動されている最中に、画像データが生成された都度、実行されてもよい。画像処理装置200に向けて送信された画像データは、画像処理装置200の制御部210の制御の下、通信部230を介して受信され、記憶部220に格納される。
【0040】
次に、画像処理装置200の特性特定部212は、撮影装置100から取得された画像データに対する画像処理を行う(S140)。特性特定部212は、例えば、
図8のA欄に示す画像データ(
図7のA欄に示された物体OBの状態を表す画像データ)に対して、二値化処理を行うことにより、
図8のB欄に示すような、物体OBが存在する領域(例えば、白色の領域)と物体OBが存在しない領域(例えば、黒色の領域)とから構成された二値画像を生成し、さらに、該二値画像に対して輪郭抽出処理を行うことにより、
図8のC欄に示すように、2つの領域の境界線を抽出する。抽出された境界線は、物体OBの上面の形状を示す線であり、以下、「物体OBの高さ曲線L1」という。画像データに対してこのような画像処理が実行されることにより、物体OBの形状が特定される。なお、画像処理装置200には、このような画像処理を実行するために必要なソフトウェアがインストールされており、画像処理装置200の特性特定部212は、該ソフトウェアの機能に従い各画像処理を実行する。二値化処理を行うためのソフトウェアとしては、例えばImageJが挙げられ、輪郭抽出処理を行うためのソフトウェアとしては、例えばIgorが挙げられる。また、特性特定部212は、必要により、画像データに対する他の画像処理(歪み補正やノイズ除去等)を行ってもよい。
【0041】
次に、画像処理装置200の特性特定部212は、S140における画像処理結果によって特定された物体OBの形状に基づき、物体OBの物理特性を特定する(S150)。以下、物体OBの物理特性として、摩擦係数μを特定する場合を例に説明する。
図9および
図10は、物体OBの摩擦係数μを特定する方法を示す説明図である。
【0042】
図9のA欄に示すように、初期状態(
図7のA欄に示す状態)の物体OBでは、斜面方向の力のつり合いを示す式(2)が成立している。式(2)を変形することにより式(3)が導かれ、tanθ=-dz/drであることから式(4)が導かれる。なお、各式において、mは質量(kg)であり、ωは角速度(rad/s)であり、gは重力加速度(=9.8m/s
2)であり、rは回転軸AXからの距離(m)であり、μは摩擦係数であり、θは安息角(rad)である。
【数2】
【数3】
【数4】
【0043】
また、
図9のB欄に示すように、初期状態から回転数を上げていって収容室SPの外側の壁面に張り付くように変形した状態の物体OB(
図7のB欄やC欄に示す状態の物体OB)でも、同様に、斜面方向の力のつり合いを示す式(5)が成立している。式(5)を変形することにより式(6)が導かれ、tanθ=dz/drであることから式(7)が導かれる。
【数5】
【数6】
【数7】
【0044】
上記式(7)は、上記式(4)と同一である。これらの式を積分することにより、物体OBの各位置(回転軸AXからの距離rが異なる各位置)における高さzを示す式(8)が導かれる。なお、この式では、回転軸AXの位置における物体OBの高さzをゼロとしている(
図5参照)。
【数8】
【0045】
図10には、重力-遠心力比Γの値が互いに異なる各状態(具体的には、重力-遠心力比Γが0.02,0.08,0.32,1.28,5.12,20.48である状態)における物体OBの高さzの解析解が実線で示されている。なお、
図10では、回転軸AXからの距離rおよび物体OBの高さzが、回転軸AXからの最大距離r
0(r
0=W/2)で正規化されている。また、解析解は、回転軸AXを挟んで左右対称であるため、回転軸AXより左側の部分のみが示されている。
【0046】
また、
図10には、重力-遠心力比Γの値が互いに異なる各状態(具体的には、重力-遠心力比Γが0.02,0.08,0.32,1.28,5.12,20.48である状態)における、上述した画像データに対する画像処理により求められた物体OBの高さzの実測値を示す曲線(
図8のC欄に示された高さ曲線L1に相当する。)が一点鎖線で示されている。なお、物体OBの高さzの実測値を示す曲線は、上述した解析解に合わせて、回転軸AXより左側の部分のみが示されている。また、初期状態から最大回転数まで回転数を上昇させる際(以下、「上り」という。)の物体OBの高さzの実測値を示す曲線と、最大回転数の状態から終了状態まで回転数を下降させる際(以下、「下り」という。)の物体OBの高さzの実測値を示す曲線とは、互いに異なる。
図10には、便宜上、上りの曲線のみが示されている。
【0047】
ここで、物体OBの摩擦係数μは、安息角θを用いた計算式(μ=tanθ)から算出可能である。例えば、物体OBとして上述したガラスビーズを用いた場合には、安息角θから求まる摩擦係数μ(静止状態の摩擦係数)は0.50である。しかしながら、
図10に示す解析解は、解析解と実測値との一致度を向上させるために、摩擦係数μをパラメータとして用いたフィッティングを行った後のものである。具体的には、
図10に示す解析解は、摩擦係数μは0.59としたものである。
図10に示す例では、このようなフィッティングを行うことにより、解析解と実測値との一致度が非常に高くなっている。そのため、このような処理を行うことにより、物体OBの物理特性の1つである回転時の摩擦係数μを特定することができる。
【0048】
なお、物体OBの物理特性として、摩擦係数μ以外にも、上述した処理と同様の処理を行うことによって特定可能な物理特性がある。そのような物理特性としては、例えば、粒子間付着力やかさ密度等が挙げられる。上述したように、物体OBの高さ曲線L1が求まれば、物体OBの体積が求まるため、該体積を用いてかさ密度を特定することができる。また、例えば、撮影の対象とする物体OBとして凝集体(例えば、直径5μmのガラスビーズを1.4mm~2.0mmの凝集体状に造粒したもの)を用いた場合には、物体OBを回転させると、物体OBに対して作用する遠心力が粒子間付着力より大きくなったところで内部にクラックが発生し、該クラックより外側の部分が外側に飛ばされるような変形が観察される。そのため、このような凝集体を用いて撮影および画像処理を行い、粒子間付着力をパラメータとしてフィッティングを行うことにより、物体OBの物理特性の1つである粒子間付着力を特定することができる。
【0049】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の撮影装置100は、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体OBを、回転させた状態で撮影するための装置である。撮影装置100は、回転軸AX廻りに回転する回転体RBと、回転体RBを回転駆動する駆動部DRとを備える。回転体RBは、収容部120と、撮影部130とを含む。収容部120には、物体OBを収容するための収容室SPが形成されている。収容室SPは、少なくとも一部が光を透過する壁面により規定され、かつ、回転軸AX廻りに自転するように形成されている。撮影部130は、レンズ132と撮像素子134とを有する。撮影部130は、レンズ132の光軸LAが収容室SPの光を透過する壁面を介して収容室SPと交差するように、収容部120に対する相対位置が固定されている。
【0050】
このように、本実施形態の撮影装置100では、回転体RBが収容部120と撮影部130とを含むため、駆動部DRによって回転体RBを回転駆動することにより、収容部120に形成された収容室SP内に収容された物体OBが回転軸AX廻りに自転する。このとき、撮影部130も、収容部120に対する相対位置が固定された状態で、収容部120と共に(すなわち、物体OBと共に)回転軸AX廻りに回転する。そのため、撮影部130は、任意のタイミングで、回転中の物体OBにおける特定の面を撮影することができる。従って、本実施形態の撮影装置100によれば、物体OBの回転とストロボ発光タイミングや撮影タイミングとの同期を取るための複雑な装置や制御を要することなく、かつ、位相ずれが防止された状態で、回転中の物体OBにおける特定の面を回転周期より短い周期で撮影することができ、撮影部130によって回転による物体OBの変形を精度良く捉えることができる。さらに、本実施形態の撮影装置100によれば、ストロボを発光させる必要がないため、反射によって画像における物体OBの鮮明性が低下することを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態の撮影装置100では、回転体RBは、さらに、撮影部130による撮影を制御する制御部170を含む。そのため、本実施形態の撮影装置100によれば、制御部170も回転させることによって制御部170を冷却することができ、制御部170による撮影部130の制御を安定化させることができる。
【0052】
また、本実施形態の撮影装置100では、回転体RBは、さらに、収容部120に固定され、回転軸AX方向視で回転軸AXを中心とした円形状の円形部144を有する支持部140を含み、撮影部130は、支持部140の円形部144に固定されている。そのため、本実施形態の撮影装置100によれば、回転軸AX方向視で回転軸AXを中心とした円形状であるために円滑に回転する円形部144に撮影部130を固定することにより、回転に伴う撮影部130の振動を抑制することができ、撮影部130によって回転による物体OBの変形をさらに精度良く捉えることができる。
【0053】
また、本実施形態の撮影装置100では、駆動部DRは、回転体RBの下方に配置されている。そのため、本実施形態の撮影装置100によれば、重量物を下方に配置することによって撮影装置100の重心を下げることができ、その結果、回転に伴う振動を抑制することができ、撮影部130によって回転による物体OBの変形をさらに精度良く捉えることができる。
【0054】
また、本実施形態の撮影装置100では、収容部120は、収容室SPが形成されたケース122と、ケース122を着脱可能に保持するフォルダ部124とを含む。そのため、本実施形態の撮影装置100によれば、収容部120への物体OBの収容や収容部120からの物体OBの取り出しを容易に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態の撮影装置100では、回転体RBは、さらに、撮影部130による撮影により生成された画像データを無線通信により画像処理装置200に送信する通信部160を含む。そのため、本実施形態の撮影装置100によれば、回転体RBが回転駆動されている最中であっても、画像データが生成された都度、画像データを取り出すことができ、利便性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の撮影システム10は、撮影装置100と、画像処理装置200とを備える。画像処理装置200は、撮影装置100の通信部160と無線通信する通信部230を備える。画像処理装置200は、通信部230を介して撮影装置100から取得した画像データに対する画像処理を行うことによって、物体OBの形状を特定し、特定された物体OBの形状に基づき、物体OBの物理特性を特定する。そのため、本実施形態の撮影システム10によれば、撮影部130によって回転による物体OBの変形を精度良く捉えた画像データを用いて、物体OBの物理特性を精度良く特定することができる。
【0057】
また、本実施形態における回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体OBの物理特性の特定方法は、撮影装置100を用いて、物体OBを回転させた状態で撮影する工程(S130)と、該撮影により生成された画像データに対する画像処理を行うことによって、物体OBの形状を特定する工程(S140)と、特定された物体OBの形状に基づき、物体OBの物理特性を特定する工程(S150)とを備える。この方法によれば、撮影装置100によって回転する物体OBを撮影することにより生成された画像データを用いて、回転する物体OBの物理特性を特定することができる。
【0058】
また、本実施形態における回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体OBの物理特性の特定方法では、上述した撮影装置100を用いて物体OBの撮影が行われるため、撮影装置100によって回転による物体OBの変形を精度良く捉えた画像データを用いて、物体OBの物理特性を精度良く特定することができる。
【0059】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
上記実施形態における撮影システム10、撮影装置100、画像処理装置200の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、収容部120は、着脱式のケース122を含むように構成されているが、収容部120が着脱式のケース122を含まず、固定的な収容室SPを有する構成であってもよい。また、上記実施形態では、支持部140の腕部142や円形部144は、プレートにより構成されているが、腕部142や円形部144が、より剛性の高い構造(例えば、ラチス構造)により構成されていてもよい。また、上記実施形態では、駆動部DRが回転体RBの下方に配置されているが、このような位置関係は必須ではない。
【0061】
また、
図11に示す変形例のように、収容部120のケース122に形成された収容室SPを規定する壁面に、複数の凸部123が形成されていてもよい。このような収容部120を用いれば、収容室SPに収容された物体OBを回転させることによって混合を促進させることができ、混合に伴う物体OBの変形状況の把握や物理特性の特定を実現することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、撮影の対象の物体OBとして、ガラスビーズの集合体や付着性の高い微小粒子を凝集体状に造粒したものを例示したが、撮影の対象となる物体OBは、回転に伴う遠心力の作用により変形し得る物体であれば、それらに限られない。例えば、撮影の対象の物体OBは、ガラスビーズのように粒の径や形が揃ったものではなく、山砂のように粒の径や形が不揃いの粒から構成された集合体であってもよい。また、撮影の対象の物体OBは、粉体の集合体に限らず、いわゆるバルク体であってもよい。また、撮影の対象の物体OBは、固体に限らず、スラリー状の物体や液体であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態における特性特定処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、回転体RBの回転数を段階的に上昇または下降させているが、回転体RBの回転数を連続的に上昇または下降させてもよい。また、撮影により生成された画像データに対する画像処理として、特定すべき物理特性に応じて、二値化および輪郭抽出に代えて、またはそれらに加えて、他の画像処理が実行されてもよい。また、回転する物体OBの撮影を行う撮影装置である限りにおいて、上記実施形態の撮影装置100とは異なる構成を有する撮影装置により物体を撮影して生成した画像データを用いて、上記実施形態と同様に、物体OBの形状を特定し、物体OBの形状に基づき物体ONの物理特性を特定するものとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、撮影部130は静止画像を生成するとしているが、撮影部130が動画像(例えば、30fpsの動画像)を生成するとしてもよい。このようにしても、動画像を構成する各フレーム画像を抽出することにより、回転周期より短い周期での撮影を実現することができる。また、このようにしても、動画像を構成する各フレーム画像を用いて、上記実施形態と同様に、物体OBの形状を特定し、物体OBの形状に基づき物体ONの物理特性を特定することができる。なお、上述した従来の撮影装置でも、複数台の装置を用いて同期をとった撮影を行うことにより、回転周期より短い周期での撮影を実現することが可能であるが、装置構成や制御が複雑になるのに対し、上記実施形態の撮影装置100によれば、1つの装置(1つの撮影部130)のみを用いて回転周期より短い周期での撮影を実現することが可能であり、この点で上述した従来の撮影装置に対する優位性を有する。
【0065】
また、上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されている構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、反対に、ソフトウェアによって実現されている構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10:撮影システム 100:撮影装置 112:モータ 114:インバータ 120:収容部 122:ケース 123:凸部 124:フォルダ部 130:撮影部 132:レンズ 134:撮像素子 140:支持部 142:腕部 144:円形部 146:バランサー 150:バッテリ 160:通信部 170:制御部 182,184:軸部材 190:フレーム 200:画像処理装置 210:制御部 212:特性特定部 220:記憶部 230:通信部 240:表示部 250:操作部 AX:回転軸 CP:コンピュータプログラム DR:駆動部 RB:回転体 SP:収容室 US:上部空間