(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】通信システム,通信回路及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20241106BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20241106BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20241106BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241106BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20241106BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B7/08 802
H04B5/48
H04W16/28
H04W64/00 130
H04W4/38
(21)【出願番号】P 2020149314
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2020027224
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「高ノイズ環境における周波数共用のための適応メディアアクセスに関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】末松 憲治
(72)【発明者】
【氏名】亀田 卓
(72)【発明者】
【氏名】本良 瑞樹
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/232414(WO,A1)
【文献】特開2008-131221(JP,A)
【文献】特表2011-518315(JP,A)
【文献】国際公開第2019/149341(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0133890(US,A1)
【文献】特開2006-216011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/00-7/12
H04B 5/00-5/79
H04W 16/28
H04W 64/00
H04W 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう
前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、
前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、
前記バックスキャッタ信号と、前記センサノードへ送信する無線信号とを混合する混合器と、
を備える、通信回路。
【請求項2】
前記複数のアンテナと前記受信機との間に、サーキュレータ及び第1のスイッチを更に備え、
前記サーキュレータは、前記複数のアンテナから受信された前記バックスキャッタ信号を前記第1のスイッチの側へ入力し、
前記第1のスイッチは、前記センサノードへ無線信号を送信するタイミングに限って、ONに切り替えて、前記バックスキャッタ信号を前記混合器に入力する、
請求項
1に記載の
通信回路。
【請求項3】
素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう
前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、
前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、
前記センサノードとの間で無線信号を送受信する送受信機と、前記複数のアンテナとの間で、送信信号線及び受信信号線を備えると共に、
前記複数のアンテナと前記送信信号線及び前記受信信号線との間で、ONとOFFとが切り替えられる第2のスイッチと、
前記送信信号線上に設けられ、前記複数のアンテナから受信された前記バックスキャッタ信号を前記受信機の側へ入力するサーキュレータと、
前記サーキュレータから出力された前記バックスキャッタ信号と、前記センサノードへ送信する前記送信信号線からの無線信号とを混合する混合器と、
を
更に備える、通信回路。
【請求項4】
素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう
前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、
前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、
前記センサノードから受信された無線信号から前記バックスキャッタ信号を取り出して前記受信機の側に入力する第1の方向性結合器と、
前記センサノードへ送信される無線信号を前記受信機の側に入力して、前記バックスキャッタ信号と混合させる第2の方向性結合器と、
を備える、通信回路。
【請求項5】
素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう
前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、
前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、
前記複数のアンテナから受信された前記バックスキャッタ信号を前記受信機の側へ入力するサーキュレータと、
前記サーキュレータと前記受信機との間に設けられ、前記センサノードへ無線信号を送信するタイミングに限って、ONに切り替えられる第1のスイッチと、
前記第1のスイッチを介して前記サーキュレータから出力された前記バックスキャッタ信号と、前記センサノードへ送信する無線信号とを混合する混合器と、
前記センサノードへ送信する無線信号のレベルを下げて前記混合器に入力するキャンセラと、
を備える、通信回路。
【請求項6】
素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう
前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、
前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、
前記センサノードとの間で無線信号を送受信する送受信機と、前記複数のアンテナとの間で、送信信号線及び受信信号線を備えると共に、
前記複数のアンテナと前記送信信号線及び前記受信信号線との間で、ONとOFFとが切り替えられる第2のスイッチと、
前記送信信号線上に設けられ、前記複数のアンテナから受信された前記バックスキャッタ信号を前記受信機の側へ入力するサーキュレータと、
前記サーキュレータから出力された前記バックスキャッタ信号と、前記センサノードへ送信する無線信号とを混合する混合器と、
前記センサノードへ送信する無線信号のレベルを下げて前記混合器に入力するキャンセラと、
を更に備える通信回路。
【請求項7】
前記ビームトラッキングの処理を実行する処理部を更に備え、
前記受信機は、前記センサノードからのバックスキャッタ信号レベルあるいは前記センサノードとの間における通信信号の信号レベルと前記バックスキャッタ信号の信号レベルとの比率に基づいて算出した、前記アクセスポイントと前記アクセスポイントとの間の距離を前記処理部にフィードバックする、
請求項
1~
6のいずれか1項に記載の通信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する技術は、通信システム,通信回路及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Internet of Things(IoT)社会においては,あらゆるモノをインターネット等のネットワークに接続することになる。工場を例に考えると、有線ネットワークの末端は無線Local Area Network(LAN)等のアクセスポイント(AP)となる。その先のモノへの接続は、無線LANをはじめとする各種無線通信システムで行われている。モノは、場所が変動する或いは可動なロボットアーム等の工作機械の先端や、移動する無人搬送車(AGV)の上に置かれている。このため、有線ネットワークでの接続が困難であることによる。このように、モノへのネットワーク接続のためには、無線IoT通信が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/042974号
【文献】特開2008-228136号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】S. Itaya, T. Osuga, A. Amagai, F. Ohori, F. Kojima, ”Stable Operation of Manufacturing Systems using Wireless Communication”, The 22nd International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications, 2019.
【文献】T. Furuichi, M. Motoyoshi, S. Kameda, N. Suematsu, “Direct RF undersampling receiver for wireless IoT real-time spectrum monitor using high-speed clock switching,” SmartCom 2018, IEICE Technical Report, vol.118, no.274, SR2018-68, pp.21-24, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線IoT通信の実現方法としては、アンライセンスバンドを使う無線LANやBluetooth(登録商標)等が多くの場合使われているため、システム間干渉などにより、スループットの低下や、リアルタイム性の欠如が発生するおそれがある。
【0006】
1つの側面では、本明細書に記載する技術は、限られた周波数資源において、隣接する同種システム間干渉を抑圧し、空間利用効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面において、素子アンテナと、アクセスポイントとの間で無線信号を送受信する送受信機とを備えるセンサノードとの通信を行なう前記アクセスポイントに備えられる通信回路であって、複数のアンテナと、前記複数のアンテナからビーコン又はデータ信号を前記センサノードへ送信する送信機と、前記アクセスポイントから送信された前記ビーコン又は前記データ信号を前記素子アンテナと前記送受信機との間をONとOFFに切り替えて変調して得られた、前記センサノードをビームトラッキングするための前記センサノードから送信されるバックスキャッタ信号を、前記複数のアンテナのいずれかを介して前記センサノードから受信する受信機と、前記バックスキャッタ信号と、前記センサノードへ送信する無線信号とを混合する混合器を備える。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面として、限られた周波数資源において、隣接する同種システム間干渉を抑圧し、空間利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態としての通信システムの設置例を示す図である。
【
図2】
図1に示した通信システムのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】(a),(b)は、
図2に示した通信システムにおいて送受信される信号の周波数スペクトラムを例示するグラフである。
【
図4】第1変形例におけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図5】第2変形例におけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図6】第3変形例におけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図7】第4変形例におけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図8】第5変形例におけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図9】第6変形例にけるアクセスポイントのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図10】第2実施形態としてのセンサノードのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図11】
図10に示したセンサノードにおけるタイミングチャートである。
【
図12】
図10に示したセンサノードにおける動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0011】
また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の構成要素を含むことができる。以下、図中において、同一の符号を付した部分は特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を示す。
【0012】
〔A〕第1実施形態
図1は、第1実施形態としての通信システム100の設置例を示す図である。
【0013】
通信システム100は、工作物3及び工作機械4を含む。工作機械4は、例えばアーム形状を有し、アームの先端に設置されているハンドで工作物3を把持する。工作物3にはアクセスポイント1が取り付けられており、工作機械4のハンドやアームにはセンサノード2が取り付けられている。
【0014】
通信システム100は、例えば5GHz帯の無線LANを用いて、工作機械4の基部に設置された複数のアンテナ素子を有するアクセスポイント1により、比較的高速に移動又は回転する工作機械4の可動式のアームやハンドに設置されたセンサノード2を、簡易的なビームフォーミングでトラッキングする。
【0015】
図2は、
図1に示した通信システム100のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0016】
アクセスポイント1は、5GHz帯Wi-FiTRX11(以下、単に「TRX11」と称する場合がある),Wi-FiバックスキャッタRX12(以下、単に「バックスキャッタRX12」と称する場合がある),ビームフォーミング処理部13及び複数の素子アンテナ14を備える。
【0017】
TRX11は、送受信機である。TRX11の入出力RF信号は、ビームフォーミング処理部13と複数の素子アンテナ14を介して、所定の方向に向けた複数のビームを切り替えることができる。センサノード2は、そのビームにカバーされたエリアに入った場合に、5GHz帯のWi-Fi信号を送受信することになる。
【0018】
バックスキャッタRX12は、受信機であり、TRX11によるWi-Fi信号の送信に応じてセンサノード2から返ってきた、バックスキャッタ信号を受信する。ビームフォーミング処理部13は、複数の素子アンテナ14によって、センサノード2との間におけるアナログビームフォーミング処理を実行する。
【0019】
アクセスポイント1に備えられる素子アンテナ14の数は、4~16素子程度であってよい。例えば、2×2又は4×4のアレイアンテナであれば、2次元バトラーマトリクス等によりアナログビームフォーミング回路が構成される。アクセスポイント1においては、センサノード2をビームトラッキングするために必要となるWi-Fiバックスキャッタ信号の受信系であるバックスキャッタRX12が、5GHz帯Wi-FiTRX11に並列に接続されている。これにより、アクセスポイント1の素子アンテナ14で受信された信号はTRX11及びRX12の両方に入力される。
【0020】
図2に示すように、バックスキャッタRX12とビームフォーミング処理部13とは、フィードバック信号線120で接続されてよい。バックスキャッタRX12では、センサノード2からのバックスキャッタ信号を受信し、フィードバック信号線120を介して、ビームフォーミング処理部13にその結果をフィードバックする。ビームフォーミング処理部13では、この情報をもとに、アクセスポイント1のビームフォーミングを行なう。
【0021】
センサノード2は、5GHz帯Wi-Fi TRX21(以下、単に「TRX21」と称する場合がある),単極単投スイッチ(SPSTスイッチ)22及び素子アンテナ23を備える。ここでは、単素子アンテナの例を示しているが、センサノード2の寸法によっては、複数素子アンテナで構成されてもよい。
【0022】
TRX21は、送受信機であり、素子アンテナ23を介して、アクセスポイント1との間で5GHz帯のWi-Fi信号を送受信する。センサノード2が通信を希望する場合、SPSTスイッチ22において、周期的にON/OFFの切り替え制御を実行し、アクセスポイント1に対してバックスキャッタ信号を送信する。なお、SPSTスイッチ22は、それ以外の場合は、常にONに設定されることになる。
【0023】
図3の(a)は
図2に示した通信システム100においてアクセスポイント1から送信される5GHz帯Wi-Fi信号の周波数スペクトラムを例示する図であり、
図3の(b)はその際のアクセスポイント1で受信されるバックスキャッタ信号を含む周波数スペクトラムを例示する図である。
【0024】
図3の(a)に示す5GHz帯のWi-Fi信号は、アクセスポイント1からセンサノード2を含む複数のセンサノード2に対する通信信号である。5GHz帯のWi-Fi信号は、ある周波数帯域(チャネル)で送信される。このスペクトラムはセンサノード2が送信信号を送出する場合も同じである。
【0025】
図3の(b)に示すアクセスポイント1における受信スペクトラムは、通信を希望するセンサノード2が存在し、Wi-Fiバックスキャッタ信号(以下、単に「バックスキャッタ信号」と称する場合がある)が発生している状況を示したものであり、5GHz帯のWi-Fi信号と共に、通信リクエストのタイミングでセンサノード2からアクセスポイント1に対して送信される。バックスキャッタ信号が、5GHz帯のWi-Fi信号の周波数帯域(チャネル)の高域側及び低域側に存在していることになる。通常、このバックスキャッタ信号のレバルは5GHz帯のWi-Fi信号よりもパワーが小さい。アクセスポイント1の受信信号における5GHz帯のWi-Fi信号は、ビームフォーミング処理部13や素子アンテナ14における反射や、素子アンテナ14から放射された信号が周囲環境(たとえば、壁,床,天井や工作機械4など)での反射、及び、センサノード2での反射によるものである。
【0026】
アクセスポイント1とセンサノード2との間の通信は5GHz帯のWi-Fiで行なうが、その際にアクセスポイント1側でセンサノード2に対してビームが向けられる。どのビームが通信をリクエストしているセンサノード2をカバーしているかを、事前に認識する必要がある。そこで、センサノード2は、通信をリクエストする際に、素子アンテナ23とTRX21との間に挿入されたSPSTスイッチ22をWi-Fiチャネル幅(例えば、20MHz)よりも高いクロックで、ON/OFFさせる。
【0027】
センサノード2は、アクセスポイント1から送信されたWi-Fiのビーコン又はデータ信号をOn-Off-Keying(OOK変調)し、バックスキャッタする。アクセスポイント1側は、バックスキャッタの有無により、当該ビームに通信リクエストをしているセンサノード2があることを検知し、そのセンサノード2に向けてビームトラッキングを行なうことができる。
【0028】
通信をリクエストするタイミングに限って、クロック(たとえばTemperature-compensated crystal Oscillator(TCXO))が起動され、SPSTスイッチ22が切り替えられるために、バッテリ駆動が可能なレベルの低消費電流特性が実現可能である。
【0029】
バックスキャッタ信号は、
図3の(b)に示すように、アクセスポイント1の送出した信号のチャネルの外側に生成されるため、アクセスポイント1からのビーコン及びデータ通信信号には影響を与えない。このため、バックスキャッタを行なうセンサノード2の有無にかかわらず、アクセスポイント1は他のセンサノード2と通常の無線通信を行なうことができる。
【0030】
アクセスポイント1の受信信号には、Wi-Fi送信信号の反射波成分と共にセンサノード2でOOK変調されたバックスキャッタ信号成分を含むことになるが、Wi-FiバックスキャッタRX12では、バックスキャッタ信号成分のみを受信する。
【0031】
バックスキャッタRX12において、バックスキャッタ信号成分を検出した場合は、フィードバック信号線120を介して、その結果(通信を希望するセンサノード2の有無、及び、その電力強度あるいは電力強度から算出される距離(後述する式(1)等を参照)を含む)をビームフォーミング処理部13に伝えることができる。複数のセンサノード2が存在する場合、個々のTCXOの周波数を異ならせることで、個々のセンサノード2を識別することが可能となる。この場合、フィードバックする情報は、通信を希望するセンサノード2の数やその個別の識別番号等になる。
【0032】
以上により、アクセスポイント1において、移動するセンサノード2とのビームトラッキングに必要となる相対位置情報(方向及び必要に応じて距離情報)の取得が可能になる。距離情報により、TRX11にフィードバックをかけて、その送信電力の制御も可能となる。近距離の場合には、送信電力を抑えることで、他のシステムへの干渉を低減することが可能となる。通常の5GHz帯Wi-Fiのビーコン信号だけだと、送信頻度が低く(通常は100ms毎)、高速移動又は回転するセンサノード2を把握できない可能性がある。このため、他のセンサノード2との通信に使われているデータ信号に対しても、バックスキャッタが行なわれてよい。
【0033】
アクセスポイント1からのWi-Fi信号の送信電力をP
t,アクセスポイント1のアンテナ利得をG
AP,センサノード2のアンテナ利得をG
SN,センサノード2におけるWi-Fi信号受信電力とバックスキャッタによる反射(放射)電力との比をL
SNとする。この際に、アクセスポイント1とセンサノード2とが距離D離れて相対している場合のアクセスポイント1におけるバックスキャッタ信号の受信電力P
rは式(1)で表すことができる。ただしλはWi-Fi信号の波長であり、ここでは6 cm (5GHz)とする。
【数1】
【0034】
図2で示したように、アクセスポイント1の送受信機は、5GHz帯Wi-Fi TRX11であるため、信号のチャネル帯域幅20MHz,送信電力P_t=20[dBm]とし、最小受信感度点での受信を想定してP_r=-80[dBm]と仮定した。また、アクセスポイント1の素子アンテナ14を4素子アレイアンテナ、センサノード2の素子アンテナ23を無指向性の単素子アンテナと仮定し、G_AP= 6[dBi],G_SN=0[dBi]とした。また、センサノード2でのOOK変調器の変換損失や整合損失等を考えてL_SN=10[dB]とした。この時、アクセスポイント1とセンサノード2との距離Dは、式(2)のように求められる。
【数2】
【0035】
このような条件においては、1m程度でアクセスポイント1はセンサノード2を検知できることになる。
【0036】
〔B〕第1変形例
図4は、第1変形例におけるアクセスポイント1aのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0037】
図4に示すアクセスポイント1aは、
図2に示したアクセスポイント1のハードウェア構成例に加えて、TRX11に接続される信号線とバックスキャッタRX12に接続される信号線との分岐点において、分波器(Duplexer)15を備える。
【0038】
なお、以下に示す
図4~
図8においては、簡単のため、
図2に示したビームフォーミング処理部13の図示を省略すると共に、素子アンテナ14は1つに限って図示している。
【0039】
分波器15は、TRX11と素子アンテナ14との間において、周波数fcのWi-Fi信号を流す。また、分波器15は、バックスキャッタRX12と素子アンテナ14との間において、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号を流す。
【0040】
符号A1に示すように、TRX11においては、周波数fcのWi-Fi信号が送受信される。また、符号A2に示すように、素子アンテナ14においては、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が受信される。そして、符号A3に示すように、バックスキャッタRX12においては、分波器15によって濾波された周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号に限って受信される。
【0041】
〔C〕第2変形例
図5は、第2変形例におけるアクセスポイント1bのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0042】
図5に示すアクセスポイント1bは、バックスキャッタ信号を含む受信信号を、送信Wi-Fi信号でミキシングする。アクセスポイント1bは、
図2に示したアクセスポイント1のハードウェア構成例に加えて、方向性結合器(Directional Coupler)16と整流器17a,17bと遅延部(Delay)18とサーキュレータ19とスイッチ101とミキサ(混合器)102とを備える。
【0043】
方向性結合器16は、TRX11に接続される信号線上に設けられ、TRX11から送信された送信Wi-Fi信号をバックスキャッタRX12が接続される信号線側に入力させる。また、方向性結合器16は、TRX11と素子アンテナ14との間のWi-Fi信号を通過させる。なお、方向性結合器16は、電力分配器であってもよい。
【0044】
整流器17aは、TRX11に接続される信号線とバックスキャッタRX12が接続される信号線との間に設けられ、方向性結合器16から出力された送信Wi-Fi信号をバックスキャッタRX12側へ一方向に流す。
【0045】
遅延部18は、TRX11に接続される信号線と信号をバックスキャッタRX12が接続される信号線との間に設けられ、センサノード2からのバックスキャッタ信号を待ち合わせるために、送信Wi-Fi信号を遅延させる。なお、センサノード2からのバックスキャッタ信号の受信に際して、センサノード2とアクセスポイント1bとの距離が近いために、遅延がない場合には、遅延部18は備えられなくてよい。
【0046】
スイッチ101は、バックスキャッタRX12が接続される信号線上に設けられる。スイッチ101は、Wi-Fi信号が送信されるタイミングではONに設定され、Wi-Fi信号が受信されるタイミングではOFFに設定される。
【0047】
サーキュレータ19は、TRX11に接続される信号線と信号をバックスキャッタRX12が接続される信号線との分岐点に設けられる。サーキュレータ19は、3つの端子を有し、或る端子から入力された信号を特定の端子へ出力させる。サーキュレータ19は、TRX11から出力された送信Wi-Fi信号を素子アンテナ14側へ出力する。また、サーキュレータ19は、スイッチ101がONになっているタイミングでは素子アンテナ14側からの入力をバックスキャッタRX12側へ出力される一方、スイッチ101がOFFになっているタイミングでは素子アンテナ14側からの入力をTRX11側へ出力させる。
【0048】
整流器17bは、バックスキャッタRX12が接続される信号線上に設けられ、サーキュレータ19から出力されたバックスキャッタ信号をバックスキャッタRX12側へ一方向に流す。
【0049】
ミキサ102は、方向性結合器16からの送信Wi-Fi信号の入力と、サーキュレータ19からのバックスキャッタ信号とをミキシングして、バックスキャッタRX12に入力する。
【0050】
符号B1に示すように、TRX11側からは、周波数fcのWi-Fi信号が出力されてミキサ102に入力される。また、符号B2に示すように、素子アンテナ14側からは、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が出力されて、ミキサ102に入力される。そして、符号B3に示すように、ミキサ102からは、周波数0のWi-Fi信号と周波数Δfのバックスキャッタ信号とが出力されて、バックスキャッタRX12に入力される。なお、バックスキャッタRX12に入力されるWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号とは、いずれも狭帯域となる。
【0051】
また、バックスキャッタ信号を、元の送信Wi-Fi信号でミキシングすることにより、センサノード2でOOK変調を行なったクロック信号Δfを復調できる。なお、受信波に送信Wi-Fi信号の漏れや、送信先のセンサノード2以外からの反射波が含まれていたとしても、これらの信号は0(ゼロ)周波数に変換されるため、容易に分離できる。
【0052】
このように、Wi-Fi送信信号の反射波成分はDC周波数成分に、バックスキャッタ信号はセンサノード2でOOK変調された周波数成分の信号(理想的には、CW信号となる)に、それぞれ変換されることになる。この操作により、バックスキャッタの存在を検出する際のS/N改善が見込まれる。
【0053】
通信を希望するセンサノード2が複数個、ビームエリア内に存在することが想定できる場合には、センサノード2毎に異なるクロック周波数でOOK変調を行なうことで、複数個のセンサノード2の存在を判別することができるが、この場合、その周波数差を、チャネル周波数帯域幅よりも狭くしても、分離、識別可能となる。例えば、20MHzのチャネル帯域幅の場合、21MHz,22MHz,23MHzでそれぞれOOK変調する複数センサノードが存在する場合、送信Wi-Fi信号を混合してダウンコンバートする前においては、これらのバックスキャッタ信号は周波数軸上で重なり合い、これらのスペクトラムを分離することは難しい。一方、ダウンコンバート後であれば、これらの信号成分は周波数軸上で比較的容易に分離することができる。
【0054】
〔D〕第3変形例
図6は、第3変形例におけるアクセスポイント1cのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0055】
図6に示すアクセスポイント1cは、TRX11に接続されている送信信号線(Tx)と受信信号線(Rx)とが分離されており、送信信号線又は受信信号線と素子アンテナ14との接続を切り替えるTRXスイッチ(Wi-Fi TRX SW)103とを備える一方、スイッチ101を備えない点以外は、
図5に示したアクセスポイント1bと同様のハードウェア構成を備える。なお、方向性結合器16及びサーキュレータ19は、送信信号線上に設けられる。
【0056】
送信信号線はTRX11からのWi-Fi信号の送信の際に使用され、受信信号線はTRX11におけるWi-Fi信号の受信の際に使用される。
【0057】
TRXスイッチ103は、Wi-Fi信号の送信の際には送信信号線と素子アンテナ14とを接続する一方、Wi-Fi信号の受信の際には受信信号線と素子アンテナ14とを接続する。
【0058】
符号C1に示すように、TRX11側からは、周波数fcのWi-Fi信号が出力されてミキサ102に入力される。また、符号C2に示すように、素子アンテナ14側からは、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が出力されて、ミキサ102に入力される。そして、符号C3に示すように、ミキサ102からは、周波数0のWi-Fi信号と周波数Δfのバックスキャッタ信号とが出力されて、バックスキャッタRX12に入力される。なお、バックスキャッタRX12に入力されるWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号とは、いずれも狭帯域となる。
【0059】
〔E〕第4変形例
図7は、第4変形例におけるアクセスポイント1dのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0060】
図7に示すアクセスポイント1dは、
図5に示したアクセスポイント1bにおけるサーキュレータ19及びスイッチ101の代わりに、方向性結合器16bを備える。なお、
図7に示す方向性結合器16aは、
図5に示した方向性結合器16と同様の機能を実現する。
【0061】
方向性結合器16bは、TRX11に接続される信号線とバックスキャッタRX12に接続される信号線との分岐点に設けられ、素子アンテナ14によって受信されたWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号をバックスキャッタRX12が接続される信号線側に入力させる。また、方向性結合器16bは、TRX11と素子アンテナ14との間のWi-Fi信号を通過させる。なお、方向性結合器16は、電力分配器であってもよい。
【0062】
符号D1に示すように、TRX11側からは、周波数fcのWi-Fi信号が出力されてミキサ102に入力される。また、符号D2に示すように、素子アンテナ14側からは、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が出力されて、ミキサ102に入力される。そして、符号D3に示すように、ミキサ102からは、周波数0のWi-Fi信号と周波数Δfのバックスキャッタ信号とが出力されて、バックスキャッタRX12に入力される。なお、バックスキャッタRX12に入力されるWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号とは、いずれも狭帯域となる。
【0063】
〔F〕第5変形例
図8は、第5変形例におけるアクセスポイント1eのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0064】
バックスキャッタRX12に入力する信号について、バックスキャッタ信号のレベルは送信Wi-Fi信号のレベルに比べて非常に小さいため、受信系のダイナミックレンジが不足するおそれがある。そこで、
図8に示すアクセスポイント1eでは、Txキャンセラ110によって、バックスキャッタRX12の入力における送信Wi-Fi信号のレベルを下げる。
【0065】
図8に示すアクセスポイント1eは、Txキャンセラ110を備える点以外は、
図5に示したアクセスポイント1bと同様のハードウェア構成を備える。Txキャンセラ110は、方向性結合器16とミキサ102とを接続する信号線と、サーキュレータ19とミキサ102とを接続される信号線とを、短絡するように設けられる。
【0066】
Txキャンセラ110は、Phase Shifter(PS)111,Variable Attenuator(ATT)112及び減算器113を備える。
【0067】
符号E1に示すように、TRX11側からは、周波数fcのWi-Fi信号が出力されてミキサ102に入力される。また、符号E2に示すように、素子アンテナ14側からは、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が出力されて、ミキサ102に入力される。ここで、Wi-Fi信号のレベルは、Txキャンセラ110によって低減される。そして、符号E3に示すように、ミキサ102からは、周波数0のWi-Fi信号と周波数Δfのバックスキャッタ信号とが出力されて、バックスキャッタRX12に入力される。なお、バックスキャッタRX12に入力されるWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号とは、いずれも狭帯域となる。
【0068】
〔G〕第6変形例
図9は、第6変形例にけるアクセスポイント1fのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0069】
図9に示すアクセスポイント1fは、
図6に示したTRX11における送信信号線(Tx)と受信信号線(Rx)とが分離されている構成に対して、
図8に示したTxキャンセラ110が接続されている。
【0070】
アクセスポイント1fは、TRX11に接続されている送信信号線又は受信信号線に対する素子アンテナ14の接続を切り替えるTRXスイッチ(Wi-Fi TRX SW)103を備える。方向性結合器16及びサーキュレータ19は、送信信号線上に設けられる。方向性結合器16は整流器17aを介してTxキャンセラ110に接続され、サーキュレータ19は直接にTxキャンセラ110に接続されてよい。
【0071】
符号F1に示すように、TRX11側からは、周波数fcのWi-Fi信号が出力されてミキサ102に入力される。また、符号F2に示すように、素子アンテナ14側からは、周波数fcのWi-Fi信号に加えて、周波数fc±Δfのバックスキャッタ信号が出力されて、ミキサ102に入力される。ここで、Wi-Fi信号のレベルは、Txキャンセラ110によって低減される。そして、符号F3に示すように、ミキサ102からは、周波数0のWi-Fi信号と周波数Δfのバックスキャッタ信号とが出力されて、バックスキャッタRX12に入力される。なお、バックスキャッタRX12に入力されるWi-Fi信号及びバックスキャッタ信号とは、いずれも狭帯域となる。
【0072】
このように、
図6に示したTRX11における送信信号線(Tx)と受信信号線(Rx)とが分離されているTRX11を備えるアクセスポイント1に対しても、
図8に示したTxキャンセラ110を適用することができる。
【0073】
〔H〕第2実施形態
図10は、第2実施形態としてのセンサノード2aのハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0074】
第1実施形態として
図2に示したセンサノード2は、
図10に示すセンサノード2aのようなハードウェア構成を有してよい。
【0075】
センサノード2aは、Wi-Fi通信部210,バックスキャッタ変調部220,素子アンテナ23及びバックスキャッタ制御部240を備える。
【0076】
Wi-Fi通信部210は、
図2に示したTRx21(5GHz帯Wi-FiTRX21)に加えて、メモリ211を備える。メモリ211は、TR21で受信したデータを記憶し、記憶したデータをコンピュータ5でモニタ可能に提供する。また、メモリ211は、コンピュータ5によって設定された種々のパラメータを記憶してよい。
【0077】
バックスキャッタ変調部220は、
図2に示したSPSTスイッチ22に加えて、クロック221及び終端部222を備える。クロック221は、
図2に示したSPSTスイッチ22における開閉の周期を提供する。終端部222は、抵抗を介して設置される。SPSTスイッチ22は、TRx21に接続される“短絡”と、終端部222に接続される“終端”と、TRx21及び終端部222のいずれにも接続されない“開放”のいずれかの状態に制御される。
【0078】
バックスキャッタ制御部240は、リセットボタン241を備える。バックスキャッタ制御部240は、例えば不図示のDual In-line Package(DIP)スイッチによって、バックスキャッタ変調部220の動作モードを制御する。バックスキャッタ変調部220の動作モードとしては、運用モード及び試験モードが含まれてよい。運用モードにおいては、バックスキャッタ通信が実施された後に、Wi-Fi通信状態が実施されてよい。試験モードにおいては、バックスキャッタ通信,Wi-Fi通信又はメンテナンスのうち任意の動作が行なわれてよい。リセットボタン241は、押下されることにより、バックスキャッタ変調部220が初期状態にリセットされる。
【0079】
図11は、
図10に示したセンサノード2aにおけるタイミングチャートである。
【0080】
センサノード2aは、継続してアクセスポイント1からの信号を受信する。
【0081】
符号G1に示すように、センサノード2aの電源投入又はリセットボタン241の押下により、バックスキャッタ変調部220の動作状態は待機状態となり、変調回路(別言すれば、SPSTスイッチ22)の動作は終端となる。また、センサノード2aからの送信信号はない。
【0082】
符号G2に示すように、バックスキャッタ制御部240における不図示のDIPスイッチが運用モードに設定されると、バックスキャッタ変調部220の動作状態はバックスキャッタ時間(別言すれば、第1の所定時間)内においてバックスキャッタ通信状態となり、変調回路の動作は終端と開放が繰り返される。そして、センサノード2aからアクセスポイント1へは、バックスキャッタ信号(ASK)が送信される。
【0083】
符号G3に示すように、設定されたバックスキャッタ時間が経過すると、バックスキャッタ変調部220の動作状態はWi-Fi通信時間(別言すれば、第2の所定時間)内においてWi-Fi通信状態となり、回路変調の動作は短絡が継続される。そして、センサノード2aは、Wi-Fi通信のデータ送信により、アクセスポイント1とのWi-Fi通信を実施する。
【0084】
バックスキャッタ時間及びWi-Fi通信時間の長さは、センサノード2aにおける不図示のマイコンによって変更されてよい。バックスキャッタ時間及びWi-Fi通信時間は、例えば、10~200msであってよく、好ましくはWi-Fiのビーコン周期である100msよりも長い100~200msであってよい。
【0085】
符号G4に示すように、設定されたWi-Fi通信時間が経過すると、バックスキャッタ変調部220の動作状態は待機状態となり、回路変調の動作は終端が継続される。符号G5に示すように、センサノード2aの送信バッファが空の場合には、センサノード2aからアクセスポイント1へのデータ送信は行なわれない。一方、センサノード2の送信バッファが空でない場合には、再度バックスキャッタ通信(図中のBS通信)が実施された後、Wi-Fi通信が実施される。
【0086】
図10に示したセンサノード2aにおける動作を、
図12に示すフローチャート(ステップS1~S17)を用いて説明する。
【0087】
センサノード2aにおいて、電源オン又はリセットボタン241が押下されると、バックスキャッタ変調部220は、待機状態となる(ステップS1)。
【0088】
Wi-Fi通信部210は、メモリ211のデータをロードし、不図示の送信バッファに格納する(ステップS2)。
【0089】
バックスキャッタ制御部240は、不図示のDIPスイッチの状態をチェックする(ステップS3)。
【0090】
バックスキャッタ制御部240は、DIPスイッチが運用モードを示しているかを判定する(ステップS4)。
【0091】
DIPスイッチが運用モードを示している場合には(ステップS4のYルート参照)、バックスキャッタ変調部220は、バックスキャッタ通信を実施する(ステップS5)。
【0092】
バックスキャッタ変調部220は、バックスキャッタ時間がタイムアップしたかを判定する(ステップS6)。
【0093】
バックスキャッタ時間がタイムアップしていない場合には(ステップS6のNルート参照)、バックスキャッタ変調部220は、バックスキャッタ時間のタイムアップまでバックスキャッタ通信を継続する。
【0094】
一方、バックスキャッタ時間がタイムアップした場合には(ステップS6のYルート参照)、Wi-Fi通信部210は、Wi-Fi通信を実施する(ステップS7)。
【0095】
Wi-Fi通信部210は、Wi-Fi通信時間がタイムアップしたかを判定する(ステップS8)。
【0096】
Wi-Fi通信時間がタイムアップしていない場合には(ステップS8のNルート参照)、Wi-Fi通信部210は、Wi-Fi通信時間のタイムアップまでWi-Fi通信を継続する。
【0097】
一方、Wi-Fi通信時間がタイムアップした場合には(ステップS8のYルート参照)、Wi-Fi通信部210は、送信バッファが空であるかを判定する(ステップS9)。
【0098】
送信バッファが空でない場合には(ステップS9のNルート参照)、処理はステップS5へ戻る。
【0099】
一方、送信バッファが空である場合には(ステップS9のYルート参照)、バックスキャッタ変調部220は、待機状態となる(ステップS10)。
【0100】
ステップS4において、DIPスイッチが運用モードを示していない(別言すれば、試験モードを示している)場合には(ステップS4のNルート参照)、バックスキャッタ制御部240は、DIPスイッチがWi-Fi通信状態に設定されているかを判定する(ステップS11)。
【0101】
DIPスイッチがWi-Fi通信状態に設定されている場合には(ステップS11のYルート参照)、Wi-Fi通信部210は、Wi-Fi通信を実施する(ステップS12)。
【0102】
Wi-Fi通信部210は、送信バッファが空であるかを判定する(ステップS13)。
【0103】
送信バッファが空でない場合には(ステップS13のNルート参照)、処理はステップS12へ戻る。
【0104】
一方、送信バッファが空である場合には(ステップS13のYルート参照)、バックスキャッタ変調部220は、待機状態となる(ステップS14)。
【0105】
ステップS11において、DIPスイッチがWi-Fi通信状態に設定されていない場合には(ステップS11のNルート参照)、バックスキャッタ制御部240は、DIPスイッチがバックスキャッタ通信状態に設定されているかを判定する(ステップS15)。
【0106】
DIPスイッチがバックスキャッタ通信状態に設定されている場合には(ステップS15のYルート参照)、バックスキャッタ変調部220は、バックスキャッタ通信を実施する(ステップS16)。
【0107】
一方、DIPスイッチがバックスキャッタ通信状態に設定されていない場合には(ステップS15のNルート参照)、Wi-Fi通信部210,バックスキャッタ変調部220及びバックスキャッタ制御部240は、センサノード2aのメンテナンスを実施する。
【0108】
このように、第2実施形態におけるセンサノード2aによれば、運用モードにおいて、バックスキャッタ通信を実施した後、Wi-Fi通信を実施できる。また、試験モードにおいては、バックスキャッタ通信,Wi-Fi通信又はメンテナンスの任意の動作を実施できる。
【0109】
〔I〕その他
開示の技術は上述した各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。各実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0110】
上述した実施形態及び変形例では、5GHz帯のWi-Fi信号を送受信することとしたが、これに限定されるものではない。送受信される信号の周波数帯域は種々変更されてよいし、送受信される信号の種類はWi-Fi信号でなく種々の無線信号であってもよい。センサノード2ではOOK変調を行なう旨説明したが、他の変調方式であってもよい。たとえば、センサノード2のTRX21にミスマッチによる反射がある場合は、OOK変調ではなく、Amplitude Shift Keying(ASK)変調となる。また、スイッチにより、開放端と短絡端を切り替えることにより、Phase Shift Keying(PSK)変調としてもよい。
【符号の説明】
【0111】
100 :通信システム
1,1a~1e:アクセスポイント
11,21 :TRX
12 :バックスキャッタRX
13 :ビームフォーミング処理部
14,23 :素子アンテナ
15 :分波器
16,16a,16b:方向性結合器
17a,17b:整流器
18 :遅延部
19 :サーキュレータ
101 :スイッチ
102 :ミキサ
103 :TRXスイッチ
110 :Txキャンセラ
111 :PS
112 :ATT
113 :減算器
120 :フィードバック信号線
2 :センサノード
210 :Wi-Fi通信部
211 :メモリ
220 :バックスキャッタ変調部
22 :SPSTスイッチ
221 :クロック
222 :終端部
240 :バックスキャッタ制御部
241 :リセットボタン
3 :工作物
4 :工作機械
5 :コンピュータ