(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】穿孔装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20241106BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20241106BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20241106BHJP
F04C 5/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/02
F16H1/46
F04C5/00 341M
(21)【出願番号】P 2020151051
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020062957
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昌明
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-217411(JP,A)
【文献】特開2017-196846(JP,A)
【文献】特開2019-107754(JP,A)
【文献】特開2005-145041(JP,A)
【文献】特開2002-337136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B28D 7/02
F16H 1/46
F04C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃先と、
前記刃先を回転駆動するための駆動装置と、
前記刃先に冷却液を供給するための供給流路と、
前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送するためのチューブポンプと、を備え、
前記チューブポンプは、前記供給流路の一部として構成される供給チューブと、前記供給チューブを押圧するための第1押圧機構と、を有し、
前記第1押圧機構が前記駆動装置によって駆動され
、
前記駆動装置と前記第1押圧機構との間に設けられ、前記駆動装置による動力の回転速度を減じてから前記動力を前記第1押圧機構へと伝達するための減速機構と、
前記減速機構に前記駆動装置による動力を入力するための入力軸と、をさらに備え、
前記入力軸は、少なくとも前記減速機構を貫通して、前記駆動装置から前記刃先側へと延び、
前記減速機構は、前記入力軸の軸方向に並列される複数のプラネタリーギヤ機構と、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構同士を接続するためのプラネタリーキャリアと、を有し、
前記複数のプラネタリーギヤ機構は、それぞれ、サンギヤと、前記サンギヤに外接することで、前記サンギヤと噛み合って回転する複数のプラネタリーギヤと、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれが内接することで、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれと噛み合って回転するインターナルギヤと、を有し、
前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸と一体的に回転し、
前記プラネタリーキャリアは、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち前記駆動装置側の一方が有する前記複数のプラネタリーギヤに接続され、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち前記刃先側の他方が有する前記サンギヤと一体的に回転し、
前記第1押圧機構は、
前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記刃先側のプラネタリーギヤ機構が有する前記複数のプラネタリーギヤそれぞれに設けられ、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれと一体的に回転する複数の押圧部と、
前記複数の押圧部それぞれが前記供給チューブを介して内接することで、前記複数の押圧部それぞれと協働して前記供給チューブを押圧する内壁を含むカバー体と、を有する、穿孔装置。
【請求項2】
前記複数のプラネタリーギヤ機構それぞれが有する前記サンギヤは、前記入力軸と同軸状に設けられ、
前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸に固定され、
前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構以外のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸が貫通するための第1軸孔を有する、
請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記プラネタリーキャリアは、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうちの前記駆動装置側の一方が有する前記複数のプラネタリーギヤそれぞれの回転軸が嵌合される複数の被嵌合部と、前記入力軸が貫通するための第2軸孔と、を有する、
請求項1又は2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
少なくとも前記駆動装置を収容するための筐体をさらに備える、
請求項1乃至3のいずれかに記載の穿孔装置。
【請求項5】
前記チューブポンプは、前記筐体の外部に設けられる、
請求項4に記載の穿孔装置。
【請求項6】
前記チューブポンプは、前記筐体内に収容される、
請求項4に記載の穿孔装置。
【請求項7】
前記刃先は、ドリルビットの先端として構成され、
前記ドリルビットと、
前記ドリルビットの基端に取り付けられ、前記ドリルビットとともに前記ドリルビットの長さ方向にスライド可能なスライド部材と、
前記ドリルビット及び前記スライド部材を、前記ドリルビットの基端側から前記刃先側に向けて付勢するための付勢部材と、をさらに備え、
前記スライド部材は、前記付勢部材の付勢力により前記刃先側に位置しているとき前記供給流路を閉じ、前記付勢部材の付勢力に抗して前記基端側にスライドしたとき前記供給流路を開くように配置される、
請求項1乃至6のいずれかに記載の穿孔装置。
【請求項8】
刃先と、
前記刃先を回転駆動するための駆動装置と、
前記刃先に冷却液を供給するための供給流路と、
前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送するためのチューブポンプと、を備え、
前記チューブポンプは、前記供給流路の一部として構成される供給チューブと、前記供給チューブを押圧するための第1押圧機構と、を有し、
前記第1押圧機構が前記駆動装置によって駆動され、
前記刃先から懸濁液を排出するための排出流路をさらに備え、
前記チューブポンプは、前記排出流路の一部として構成される排出チューブと、前記排出チューブを押圧するための第2押圧機構と、をさらに有し、前記第2押圧機構が前記駆動装置によって駆動されることで、前記排出流路内の前記懸濁液を前記排出流路の下流側へと圧送する
、穿孔装置。
【請求項9】
前記第1及び前記第2押圧機構は、一の押圧機構として構成され、
前記押圧機構は、前記供給チューブとともに前記排出チューブも押圧することで、前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送することに加えて、前記排出流路内の前記懸濁液を前記排出流路の下流側へと圧送する、
請求項8に記載の穿孔装置。
【請求項10】
前記供給流路の上流端及び前記排出流路の下流端は、前記懸濁液から被穿孔物の切屑を分離して前記冷却液を得るための分離装置に接続される、
請求項9に記載の穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1で提案されているような穿孔装置が知られている。
【0003】
特許文献1の穿孔装置は、ドリルビットと、ドリルビットを回転させるための電動ドリルと、を備える。また、特許文献1の穿孔装置は、ドリルビットと電動ドリルの間に設けられ、ドリルビットの刃先に冷却液を供給するための冷却液供給アタッチメントと、冷却液を貯えるための冷却液タンクと、をさらに備える。冷却液タンクに貯えられた冷却液は、冷却液タンクに設けられたポンプによって供給流路を介して冷却液供給アタッチメントに圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の穿孔装置は、刃先に冷却液を圧送するためのポンプが冷却液タンクに設けられるので、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な装置構成で刃先に冷却液を圧送することが可能な、穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る穿孔装置は、刃先と、前記刃先を回転駆動するための駆動装置と、前記刃先に冷却液を供給するための供給流路と、前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送するためのチューブポンプと、を備え、前記チューブポンプは、前記供給流路の一部として構成される供給チューブと、前記供給チューブを押圧するための第1押圧機構と、を有し、前記第1押圧機構が前記駆動装置によって駆動されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、チューブポンプが刃先を回転駆動するための駆動装置によって駆動されるので、簡単な装置構成で刃先に冷却液を圧送することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な装置構成で刃先に冷却液を圧送することが可能な、穿孔装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備えるポンプユニットを駆動装置側から見たときの外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備える、最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構を組み立てる途中の様子を示す外観斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備える、最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構にプラネタリーキャリアを取り付けた様子を示す外観斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備える、最も刃先側のプラネタリーギヤ機構が有する複数のプラネタリーギヤそれぞれに押圧部を取り付けた様子を示す外観斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備える、最も刃先側のプラネタリーギヤ機構に第3円板及び供給チューブを取り付けた様子を示す外観斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る穿孔装置が備えるポンプユニットを刃先側から見たときの外観斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る穿孔装置が備える冷却液供給機構及びその周辺部分を幅方向の中央で長さ方向に沿って切断したときの断面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る穿孔装置が備える遮蔽部を示す概略図であり、(A)がドリルビットの基端側から見たときの概略図、(B)が幅方向の中央を長さ方向に沿って切断したときの断面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る穿孔装置が備える付勢機構を示す概略図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る穿孔装置が備える冷却液供給機構及びその周辺部分を幅方向の中央で長さ方向に沿って切断したときの断面図であり、(A)が穿孔作業前であって供給流路が閉じているときの断面図、(B)が穿孔作業を行っている際中であって供給流路が開いているときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る穿孔装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係る穿孔装置10Aは、電動ドリル11と、電動ドリル11に取り付けられるポンプユニット20と、ポンプユニット20を介して電動ドリル11に取り付けられるドリルビット90と、を備える。また、穿孔装置10Aは、ドリルビット90の刃先98に冷却液Lを供給するための供給流路88をさらに備える。
【0013】
本実施形態では、電動ドリル11によってドリルビット90が回転駆動され、回転しているドリルビット90の刃先98が、例えば、コンクリート及び石材などの被穿孔物(図示せず)に押し当てられることで、穿孔作業が行われる。そして、このように穿孔作業が行われる際に、ドリルビット90及び被穿孔物の発熱を抑制することなどを目的として、ポンプユニット20によって、供給流路88内の冷却液Lがドリルビット90の刃先98へと圧送される。
【0014】
ドリルビット90は、中空に形成される。これにより、ドリルビット90の内部を冷却液Lが流れ、ドリルビット90の刃先98へと冷却液Lが供給される。ドリルビット90の刃先98へと供給された冷却液Lは、刃先98から排出され、ドリルビット90及び被穿孔物の発熱を抑制する。そして、冷却液Lは、被穿孔物の切屑が混じって懸濁液となり、外部へと排出される。
【0015】
なお、供給流路88の基端には、冷却液Lを貯えるための冷却液タンク(図示せず)が設けられてもよい。また、冷却液Lは通常は水であるが、例えば、粘度が低い他の液体であってもよい。さらに、例えば、被穿孔物が鉄板である場合、冷却液Lとして粘度の低い油が用いられてもよい。
【0016】
(電動ドリル11)
電動ドリル11は、筐体12と、筐体12内に収容され、ドリルビット90を回転駆動するための駆動装置13と、筐体12の外部に設けられ、ポンプユニット20の基端面から突出するシャンク22を把持するための第1把持機構18と、を有する。
【0017】
駆動装置13は、電動モータ14と、電動モータ14の駆動軸15に取り付けられ、電動モータ14による動力の回転速度を減じてから前記動力をシャンク22へと伝達するためのモータ減速機構16と、を有する。
【0018】
(ポンプユニット20)
図2は、本実施形態に係る穿孔装置が備えるポンプユニットを駆動装置側から見たときの外観斜視図である。
図2に示すように、ポンプユニット20は、供給流路88内の冷却液Lをドリルビット90の刃先98へと圧送するためのチューブポンプ60と、駆動装置13とチューブポンプ60(換言すれば、後述する第1押圧機構64)との間に設けられ、駆動装置13による動力の回転速度を減じてから前記動力をチューブポンプ60(同前)へと伝達するための減速機構30と、を有する。
【0019】
ポンプユニット20は、減速機構16に駆動装置13による動力を入力するための入力軸21をさらに有する。入力軸21は、ポンプユニット20を貫通し、駆動装置13から刃先98側へと延びる。ポンプユニット20は、入力軸21の先端に設けられ、ドリルビット90の基端部を把持するための第2把持機構80をさらに有する。入力軸21は、第2把持機構80を介してドリルビット90に接続され、ドリルビット90と一体的に回転する。なお、入力軸21の基端部が、上記したシャンク22である。
【0020】
(減速機構30)
減速機構30は、入力軸21の軸方向に並列される二つのプラネタリーギヤ機構31a、31bを備える。プラネタリーギヤ機構31a(最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構、又は、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち駆動装置側の一方)が、駆動装置13側に設けられる。また、プラネタリーギヤ機構31b(最も刃先側のプラネタリーギヤ機構、又は、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち刃先側の他方)が、ドリルビット90側に設けられる。
【0021】
図3は、本実施形態に係る穿孔装置が備える、最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構を組み立てる途中の様子を示す外観斜視図である。
図3に示すように、減速機構30は、円板状の第1円板32をさらに有する。第1円板32の中央には、入力軸21が貫通するための貫通孔33(
図2参照)が設けられる。なお、第1円板32の端面、及び第1円板32の駆動装置13側の主面は、ポンプユニット20の外形の一部を構成する。
【0022】
プラネタリーギヤ機構31aは、第1円板32の中央に配置されるサンギヤ34aと、サンギヤ34aに外接することで、サンギヤ34aと噛み合って回転する三つのプラネタリーギヤ36aと、三つのプラネタリーギヤ36aそれぞれが内接することで、三つのプラネタリーギヤ36aそれぞれと噛み合って回転するインターナルギヤ38aと、をさらに有する。なお、インターナルギヤ38aの直径は、第1円板32の直径と同じである。そして、インターナルギヤ38aの端面は、ポンプユニット20の外形の一部を構成する。
【0023】
サンギヤ34aは、入力軸21の外面から突出し、入力軸21の外面と一体的に形成される。換言すれば、サンギヤ34aは、入力軸21の外面に固定される。上記の通りであるため、サンギヤ34aは、入力軸21と一体的に回転し、入力軸21と同軸状である。
【0024】
図4は、本実施形態に係る穿孔装置が備える、最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構にプラネタリーキャリアを取り付けた様子を示す外観斜視図である。
図4に示すように、減速機構30は、プラネタリーギヤ機構31a、31b同士を接続するための円板状のプラネタリーキャリア50をさらに有する。
【0025】
プラネタリーキャリア50は、三つのプラネタリーギヤ36aそれぞれの回転軸37aが嵌合される三つの嵌合孔52(被嵌合部)を有する。これにより、プラネタリーキャリア50は、三つのプラネタリーギヤ36aに接続される。三つの嵌合孔52は、それぞれ、プラネタリーキャリア50の周縁部に、このプラネタリーキャリア50の円周方向において等間隔で設けられる。また、プラネタリーキャリア50は、入力軸21が貫通するための軸孔54(第2軸孔)をさらに有する。軸孔54は、プラネタリーキャリア50の中
央に設けられる。
【0026】
プラネタリーキャリア50の刃先98側の主面の中央には、プラネタリーギヤ機構31bのサンギヤ34bが一体的に形成される。これにより、プラネタリーキャリア50は、サンギヤ34bと一体的に回転する。
【0027】
図5は、本実施形態に係る穿孔装置が備える、最も刃先側のプラネタリーギヤ機構が有する複数のプラネタリーギヤそれぞれに押圧部を取り付けた様子を示す外観斜視図である。
図5に示すように、減速機構30は、プラネタリーキャリア50の刃先98側に配置される第2円板56をさらに有する。第2円板56の中央には、入力軸21が貫通し、サンギヤ34bが通り抜けるための貫通孔58が設けられる。なお、第2円板56の直径は、第1円板32及びインターナルギヤ38aの直径と同じである。そして、第2円板56の端面は、ポンプユニット20の外形の一部を構成する。
【0028】
プラネタリーギヤ機構31aは、上記のようにプラネタリーキャリア50と一体的に形成されるサンギヤ34bと、サンギヤ34bに外接することで、サンギヤ34bと噛み合って回転する三つのプラネタリーギヤ36bと、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれが内接することで、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれと噛み合って回転するインターナルギヤ38bと、をさらに有する。サンギヤ34bは、入力軸21が貫通するための軸孔35(第1軸孔)を有する。この軸孔35は、プラネタリーキャリア50の軸孔54と連通する。なお、インターナルギヤ38bの直径は、第1円板32、第2円板56及びインターナルギヤ38aの直径と同じである。そして、インターナルギヤ38bの端面は、ポンプユニット20の外形の一部を構成する。
【0029】
(チューブポンプ60)
図6は、本実施形態に係る穿孔装置が備える、最も刃先側のプラネタリーギヤ機構に第3円板及び供給チューブを取り付けた様子を示す外観斜視図である。また、
図7は、同穿孔装置が備えるポンプユニットを刃先側から見たときの外観斜視図である。
【0030】
図5~7に示すように、チューブポンプ60は、供給流路88の一部として構成される供給チューブ62と、供給チューブ62を押圧するための第1押圧機構64と、を有する。
【0031】
図5、6に示すように、第1押圧機構64は、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれに設けられ、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれと一体的に回転する三つのローラ66(押圧部)を有する。三つのローラ66は、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれと同軸状であり、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれの回転軸37bに取り付けられる。
【0032】
図6に示すように、第1押圧機構64は、三つのローラ66よりも刃先98側に設けられる第3円板67をさらに有する。第3円板67は、三つのプラネタリーギヤ36bそれぞれの回転軸37bが嵌合される三つの嵌合孔68を有する。これにより、第3円板67は、三つのローラ66を介して三つのプラネタリーギヤ36bに接続される。三つの嵌合孔68は、それぞれ、第3円板67の周縁部に、この第3円板67の円周方向において等間隔で設けられる。また、第3円板67は、入力軸21が貫通するための貫通孔69をさらに有する。貫通孔69は、第3円板67の中央に設けられる。
【0033】
図7に示すように、第1押圧機構64は、三つのローラ66それぞれが供給チューブ62を介して内接することで、三つのローラ66それぞれと協働して供給チューブ62を押圧する内壁72を含むカバー体70をさらに有する。カバー体70は、中空の円柱状であり、入力軸21と同軸状である。カバー体70の刃先98側の底面の中央には、入力軸21が貫通するための貫通孔73が設けられる。カバー体70の駆動装置13側の底面は開放されている。内壁72は、カバー体70の側面の内壁である。カバー体70の側面には、供給チューブ62をカバー体70内に冷却液タンク側から挿入するための挿入孔75と、供給チューブ62をカバー体70内から刃先98側へと取り出すための取り出し孔76と、が設けられる。
【0034】
なお、カバー体70の直径は、第1円板32、第2円板56及びインターナルギヤ38a、38bの直径と同じである。そして、カバー体70の刃先98側の底面、及びカバー体70の側面は、ポンプユニット20の外形の一部を構成する。
【0035】
(効果)
上記構造によれば、本実施形態に係る穿孔装置10Aは、チューブポンプ60が刃先98を回転駆動するための駆動装置13によって駆動されるので、簡単な装置構成で刃先98に冷却液を圧送することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る穿孔装置10Aは、減速機構30を備えるので、ドリルビット90よりも第1押圧機構64の回転速度を遅くすることができる。これにより、例えば、ドリルビット90を十分な回転速度で回転させつつ、供給流路88内の冷却液Lをドリルビット90の刃先98へと適切に圧送することができるので、良好に穿孔作業を行うことが可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態では、サンギヤ34a、34bが入力軸21と同軸状に設けられるので、穿孔装置10Aをいっそう簡単な装置構成とすることが可能となる。
【0038】
そして、本実施形態では、チューブポンプ60が筐体12の外部に設けられるので、該チューブポンプ60の駆動装置13(換言すれば、電動ドリル11)からの着脱が容易となる。
【0039】
(第2実施形態)
図8に基づき、本発明の第2実施形態に係る穿孔装置について説明する。
図8は、本実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。なお、本実施形態に係る穿孔装置10Bは、主として、チューブポンプ60の配置箇所を除き、上記した第1実施形態に係る穿孔装置10Aと同様の構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0040】
図8に示すように、本実施形態では、チューブポンプ60が筐体12の内部に設けられる。具体的には、チューブポンプ60は、筐体12の内部に設けられる駆動装置13と、筐体12の外部に設けられる第1把持機構18と、の間に配置される。
【0041】
本実施形態では、チューブポンプ60の入力軸21の基端部(すなわち、シャンク22)が、筐体12の内部でモータ減速機構16に連結される。これにより、モータ減速機構16が、電動モータ14による動力の回転速度を減じてから前記動力をポンプユニット20の入力軸21へと伝達する。
【0042】
また、本実施形態では、第2把持機構80の基端側からシャンク82が突出する。そして、このシャンク82が、第1把持機構18によって把持され、かつ、該第1把持機構18の内部で入力軸21の先端部に接続される。
【0043】
本実施形態では、上記した構造により、電動モータ14による動力がドリルビット90に伝達される。本実施形態では、チューブポンプ60が、筐体12の内部に収容され、外部に露出しないので、該チューブポンプ60の故障を抑制することができる。
【0044】
(第3実施形態)
図9に基づき、本発明の第3実施形態に係る穿孔装置について説明する。
図9は、本実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。なお、本実施形態に係る穿孔装置10Cは、モータ減速機構16を備えないことを除いて、上記した第2実施形態に係る穿孔装置10Bと同様の構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0045】
図9に示すように、本実施形態に係る穿孔装置10Cは、モータ減速機構16を備えず、電動モータ14の駆動軸15自体がポンプユニット20の入力軸として構成される。これにより、例えば、軽量化を図ることが可能となる。なお、本実施形態において、電動モータ14の駆動軸15とポンプユニット20の入力軸とを別個に設け、該駆動軸15の先端部に該入力軸の基端部を直接的に取り付けてもよい。
【0046】
(第4実施形態)
図10~14に基づき、本発明の第4実施形態に係る穿孔装置について説明する。
図10は、本実施形態に係る穿孔装置の全体構成を示す概略図である。なお、本実施形態に係る穿孔装置10Dは、上記した第2実施形態に係る穿孔装置10Bと多くの点で同様の構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0047】
図10に示すように、本実施形態に係る穿孔装置10Dは、刃先98から懸濁液Sを排出するための排出流路138をさらに備える。そして、本実施形態では、チューブポンプ60´が、排出流路138の一部として構成される排出チューブ112と、排出チューブ112を押圧するための第2押圧機構114と、をさらに有する。
【0048】
カバー体70の側面には、供給チューブ62の挿入孔75に並設して、排出チューブ112をカバー体70内に刃先98側から挿入するための挿入孔75´が設けられる。また、カバー体70の側面には、供給チューブ62の取り出し孔76(
図10では図示せず。
図7参照)に並設して、排出チューブ112をカバー体70内から後述するタンク150側へと取り出すための取り出し孔(図示せず)が設けられる。なお、排出チューブ112のための挿入孔75´及び取り出し孔は、それぞれ、供給チューブ62のための挿入孔75及び取り出し孔76よりも刃先98側に、該挿入孔75及び該取り出し孔76と同じ高さ位置で設けられる。
【0049】
本実施形態では、供給チューブ62を押圧するための第1押圧機構64、及び排出チューブ112を押圧するための第2押圧機構114が、一の押圧機構64(114)として構成される。具体的には、本実施形態の押圧機構64(114)は、
図5~7に基づき説明した第1押圧機構64と同様の構造を有する。そして、三つのローラ66(
図5、6参照)及びカバー体70の内壁72(
図7参照)は、供給チューブ62とともに排出チューブ112も押圧する。これにより、押圧機構64(114)は、供給流路88内の冷却液Lを刃先98へと圧送することに加えて、排出流路138内の懸濁液Sを該排出流路138の下流側へと圧送する。
【0050】
図10に示すように、供給流路88の上流端及び排出流路139の下流端は、懸濁液Sから被穿孔物の切屑Cを分離して冷却液Lを得るための分離装置140に接続される。
【0051】
(分離装置140)
分離装置140は、液体容器141と、液体容器141内の内部容器142と、を有する。また、分離装置140は、内部容器142に貯えられた懸濁液Sに浮かべられるフロート146と、懸濁液S内でフロート146と一体的に移動可能であり、懸濁液Sから切屑Cを分離するためのストレーナ147と、を有する。
【0052】
懸濁液Sは、排出流路138の下流端から内部容器142内に排出されると、切屑Cなどが自重で沈降する。また、懸濁液Sは、その液面付近でストレーナ147により切屑C(後述するスライド部材167と回転部161との間、同じく後述する傾斜面167aとシール部材165との間を通過できない大きさの切屑C)がさらに取り除かれる。これにより、ストレーナ147に接続される供給流路88の上流端に、懸濁液Sから切屑Cが分離された冷却液Lを供給することができる。
【0053】
図10に示すように、本実施形態に係る穿孔装置10Dは、筐体12及び第1把持機構18よりも刃先98側に設けられる冷却液供給機構160と、ドリルビット90の刃先98で穿孔する被穿孔物Wの穿孔部分Waを覆う遮蔽部200と、をさらに備える。遮蔽部200は、後述する付勢機構170によって前方へ付勢されている。
【0054】
図11は、本実施形態に係る穿孔装置が備える冷却液供給機構及びその周辺部分を幅方向の中央で長さ方向に沿って切断したときの断面図である。
図11に示すように、冷却液供給機構160は、電動ドリル11の第1把持機構18に把持されるシャンク82を有する回転部161と、回転部161の周囲に設けられた冷却液供給部163と、を有している。冷却液供給部163は、回転部161との間に設けられた軸受164によって回転しない状態を保つことができる。冷却液供給部163には、供給流路88が接続されている。冷却液供給部163の内部に設けられた供給流路163aは、回転部161に設けられた供給流路161aと連通している。
【0055】
回転部161の前部には、ドリルビット90の基部を把持するビット取り付け部166が設けられている。ビット取り付け部166には、ドリルビット90の基部が挿入されて保持されている。ドリルビット90の基部を保持する機構は、図示を省略する。ドリルビット90の基部を保持する機構は、公知の技術を用いることができる。
【0056】
回転部161の内部には、ドリルビット90の基部が当接した状態で前後方向(換言すれば、ドリルビット90の長さ方向)に所定量の移動が可能なスライド部材167が設けられている。スライド部材167は、回転部161の内部に設けられた付勢部材168(スプリング)によって前方に付勢されている。スライド部材167の後部には、拡径する傾斜面167aが設けられており、この傾斜面167aが付勢部材168の付勢力で回転部161の所定位置に設けられたシール部材165に当接している。スライド部材167の前部は、ビット取り付け部166との間に設けられたシール部材169によってシールされている。シール部材165、169には、Oリングを用いることができる。スライド部材167は、回転部161との間の所定量の隙間Aの範囲で、付勢部材168の付勢力に抗して後方向にスライド可能となっている。
【0057】
スライド部材167と回転部161との間の空間161bは、スライド部材167に設けられた供給流路167bを介してドリルビット90に設けられた冷却液供給孔92と連通している。冷却液供給孔92は、ドリルビット90の基部から刃先98まで設けられている。
【0058】
図示するように、スライド部材167が付勢部材168で前方に向けて付勢された状態では、傾斜面167aがシール部材165に当接して、供給流路161aと空間161bとの間は閉鎖された状態となる。この状態では、供給流路88から冷却液供給部163に供給された冷却液Lは、供給流路161aから空間161bへ流れない。
【0059】
一方、スライド部材167がドリルビット90の方向から押圧されると(後述する
図14(B)の状態)、スライド部材167は付勢部材168の付勢力に抗して所定量の隙間Aの範囲で後方に移動する。この状態では、傾斜面167aがシール部材165から離れて、供給流路161aと空間161bとの間が連通した状態となり、供給流路88から供給された冷却液Lが供給流路161aから空間161bへ流れる。
【0060】
よって、ドリルビット90をビット取り付け部166に取り付けた状態では、冷却液Lは冷却液供給機構160まで供給された状態で止まり、ドリルビット90が後方へ押し込まれることで、冷却液供給機構160に供給された冷却液Lがドリルビット90の冷却液供給孔92を介して刃先98から穿孔部分Waと供給される。
【0061】
換言すれば、本実施形態に係る穿孔装置10Dは、ドリルビット90の基端に取り付けられ、該ドリルビット90とともに該ドリルビット90の長さ方向にスライド可能なスライド部材167と、該ドリルビット90及び該スライド部材167を、該ドリルビット90の基端側から刃先98側に向けて付勢するための付勢部材168と、をさらに備える。そして、スライド部材167は、付勢部材168の付勢力により刃先98側に位置しているとき供給流路88を閉じ、付勢部材168の付勢力に抗して基端側にスライドしたとき供給流路88を開くように配置されている。
【0062】
また、この実施形態では、スライド部材167が前後方向に移動する所定量の隙間Aは、後述する付勢機構170で前方に向けて付勢された状態の遮蔽部200の前面からドリルビット90の刃先98までの配置隙間B(
図11、
図14(B)参照)よりも小さくなっている。これにより、遮蔽部200の前面を被穿孔物Wに当接させた後、配置隙間Bが所定量の隙間Aの分だけ押し込まれてからスライド部材167の傾斜面167aがシール部材165から離れることになる。よって、遮蔽部200のシール部材208を被穿孔物Wに押し付けた状態で冷却液Lが刃先98から供給されることになり(
図14(B)参照)、遮蔽部200と被穿孔物Wとの間から冷却液Lが漏れるのを抑止することができる。なお、所定の隙間Aと配置隙間Bの関係は一例であり、この実施形態に限定されるものではない。
【0063】
(遮蔽部200)
図12は、本実施形態に係る穿孔装置が備える遮蔽部を示す概略図であり、(A)がドリルビットの基端側から見たときの概略図、(B)が幅方向の中央を長さ方向に沿って切断したときの断面図である。この実施形態の遮蔽部200は、本体部201が横長に形成され、その両端部に連結部202が設けられている。連結部202には、
図13に示す付勢機構170のスライド部175が連結される。本体部201の中央部分には、ドリルビット90の前部を前後方向に案内する案内部材203が設けられている。案内部材203には、中央部分にドリルビット90の案内部204が設けられ、前方部分には空間部205が設けられている。案内部材203と本体部201との間にはシール部材206が設けられており、これらの間から懸濁液Sが漏れるのを防止している。シール部材206は、Oリングを用いることができる。
【0064】
また、本体部201の前面には、被穿孔物Wと接するシール部材208が設けられている。シール部材208は、空間部205の周囲をシールするとともに、穿孔部分Waの周囲をシールするように設けられている。シール部材208は、スポンジ材、ゴム材などを用いることができる。
【0065】
また、本体部201の下部には、空間部205から外部に通じる排出孔207が設けられている。排出孔207には、排出流路138が接続されている。空間部205の懸濁液Sは、排出孔207から排出流路138へと排出される。
【0066】
(付勢機構170)
図13は、本発明の第4実施形態に係る穿孔装置が備える付勢機構を示す概略図である。
図13は、半断面図で示している。この実施形態の付勢機構170は、穿孔装置10Dの冷却液供給機構160に取り付けられる本体部171を有している。本体部171は、冷却液供給機構160の外面に固定されている。
【0067】
本体部171には、冷却液供給機構160の左右位置に、前後方向に延びる2本のガイド部173と、ガイド部173に沿って前後方向にスライドするスライド部175と、が設けられている。ガイド部173は、本体部171の穴部に挿入され、左右位置の2箇所を固定ボルト172で固定することによって本体部171に固定されている。スライド部175は、ガイド部173の内部に設けられた付勢スプリング174によって、前方に向けて付勢されている。スライド部175は、ガイド部173の端部に設けられた保持部176により、図示する所定位置で前方へのスライドが止まって保持されている。スライド部175は、図示する状態から付勢スプリング174の付勢力に抗して後方へスライド可能となっている。
【0068】
スライド部175の先端には、遮蔽部200が固定されている。これにより、遮蔽部200は、付勢スプリング174の付勢力に抗してスライド部175と一体的に後方へ移動可能となっている。
【0069】
(穿孔作業の一例)
図14は、本実施形態に係る穿孔装置が備える冷却液供給機構及びその周辺部分を幅方向の中央で長さ方向に沿って切断したときの断面図であり、(A)が穿孔作業前であって供給流路が閉じているときの断面図、(B)が穿孔作業を行っている際中であって供給流路が開いているときの断面図である。
図10及び
図14に基づいて、穿孔装置10D及び分離装置140を用いて被穿孔物Wに対して穿孔作業を行う一例について説明する。
【0070】
まず、
図10に示すように、穿孔装置10Dを、供給流路88及び排出流路138を介して、分離装置140に接続する。そして、駆動装置13によりポンプユニット20´及びドリルビット90を稼働させ、穿孔装置10Dの刃先98を被穿孔物Wの穿孔部分Waに配置する。この状態では、チューブポンプ60´は、供給チューブ62を押圧して、液体容器141から冷却液Lをドリルビット90の刃先98へ供給しようとする。しかし、
図14(A)に示すように、冷却液供給機構160のスライド部材167がシール部材165に当接して供給流路161aの先が閉鎖されているため、液体容器141から冷却液Lは供給されない。チューブポンプ60´は、排出チューブ112を押圧して、遮蔽部200の空間部205(
図12(B))から排出流路138に空気を吸引した状態となる。この状態で、穿孔装置10Dに設けられた遮蔽部200のシール部材208を、被穿孔物Wの穿孔部分Waに当てる。
【0071】
そして、
図14(B)に示すように、筐体12に設けられた操作部12aを操作してドリルビット90を回転させつつ、ドリルビット90の刃先98を被穿孔物Wに向けて押し付ける。これにより、遮蔽部200は、付勢機構170によって被穿孔物Wに適切な力で押し当てられた状態となる。また、ドリルビット90の刃先98が被穿孔物Wに押し当てられることで、ドリルビット90の基部がスライド部材167を付勢部材168の付勢力に抗して所定量の隙間Aの範囲で後方へ移動させる。
【0072】
これにより、スライド部材167の傾斜面167aがシール部材165から離れて、冷却液供給部163の供給流路163aが、回転部161の供給流路161a、空間161b、スライド部材167の供給流路167bを介してドリルビット90の冷却液供給孔92と連通する。よって、ドリルビット90の刃先98で被穿孔物Wを穿孔するときには、液体容器141から冷却液供給機構160に供給された冷却液Lが、ドリルビット90の刃先98から穿孔部分Waに供給される。そして、遮蔽部200の空間部205(
図12(B)参照)における懸濁液Sは、排出チューブ112が押圧機構64(114)(
図10参照)に押圧されることによって、液体容器141へと強制的に排出される。
【0073】
このように、ドリルビット90を回転させて刃先98を前方の被穿孔物Wに押し付けることで、被穿孔物Wの穿孔部分Waが刃先98によって穿孔される。そして、この穿孔作業時には、供給チューブ62が押圧機構64(114)に押圧されることによって、液体容器141の冷却液Lが穿孔装置10Dの刃先98から穿孔部分Waへ強制的に供給され、かつ、排出チューブ112が押圧機構64(114)に押圧されることによって、懸濁液Sが遮蔽部200から液体容器141へ強制的に排出される。
【0074】
また、液体容器141に排出された懸濁液Sは、切屑Cなどが自重で沈降し、液面付近に浮かんだストレーナ147によって切屑Cが取り除かれることで、冷却液Lとなり、この冷却液Lが再び刃先98へ供給される。つまり、液体容器141に貯えられた懸濁液Sから穿孔装置10Dに取り付けられたドリルビット90の刃先98へ供給する冷却液Lを、懸濁液Sの中でも切屑Cが少ない液面及びその近傍部分からストレーナ147を介して得ることで、穿孔装置10Dの刃先98へは切屑Cの混入が少ない冷却液Lを循環させている。しかも、冷却液Lの循環にチューブポンプ60´を用いているため、冷却液Lに多少の切屑Cが混入していたとしても適切に循環させることができる。
【0075】
よって、上記した穿孔装置10Dによれば、冷却液Lの刃先98への適切な供給と、懸濁液Sの強制的な排出で逆流を適切に抑制した循環を行いつつ、穿孔装置10Dで被穿孔物Wに対して適切な穿孔作業を行うことが可能である。
【0076】
その上、上記した穿孔装置10Dによれば、穿孔部分Waを覆う遮蔽部200から懸濁液Sを回収して強制的に排出するため、下向きの穿孔作業であっても冷却液Lの適切な循環が可能となる。よって、様々な向きの穿孔作業を適切に行うことが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、分離装置140を運搬するための台車を備えてもよい。これにより、システム全体の移動が容易に行える。システム全体の移動は、前記台車に代えてリュック、ショルダーバッグを備えさせても容易に行える。また、
図10に示すように、電動ドリル11にバッテリ19を内蔵すれば、前記台車に分離装置140を載せた状態で移動することが容易にできるので、穿孔作業の位置変更が容易であるとともに、比較的狭い作業現場であったとしても、適切に穿孔作業を行うことが可能となる。穿孔装置10Dの電動ドリル11は、バッテリ19を内蔵した構成に限定されない。電動ドリル11は、上記した穿孔装置10A~10Cのように、電源コード19a(
図1、8、9参照)を介して電力供給される構成でもよい。
【0078】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0079】
上記第1~第4実施形態では、減速機構30が、入力軸21の軸方向に並列される二つのプラネタリーギヤ機構31a、31bを有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、減速機構は、例えば、入力軸21の軸方向に並列される三つ以上のプラネタリーギヤ機構を有してもよい。
【0080】
このような場合、三つ以上のプラネタリーギヤ機構は、それぞれ、プラネタリーギヤ機構31a、31bと同様に、サンギヤと、三つのプラネタリーギヤと、インターナルギヤと、を有してもよい。また、このような場合、プラネタリーキャリアは、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構の間ごとに設けられる。そして、プラネタリーキャリアは、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち駆動装置側の一方が有する複数のプラネタリーギヤに接続され、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち刃先側の他方が有するサンギヤと一体的に回転する。
【0081】
上記第1~第4実施形態では、サンギヤ34aが、入力軸21の外面から突出し、入力軸21の外面と一体的に形成される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も駆動装置側のプラネタリーギヤ機構が有するサンギヤは、入力軸の外面と一体的に形成されなくてもよい。このような場合、例えば、このサンギヤが軸孔を有し、この軸孔の内壁が入力軸の外面に固定されることで、このサンギヤが入力軸の外面に固定されてもよい。
【0082】
上記第1~第4実施形態では、プラネタリーギヤ機構31aが三つのプラネタリーギヤ36aを有し、かつ、プラネタリーギヤ機構31bが三つのプラネタリーギヤ36bを有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、複数のプラネタリーギヤ機構が、それぞれ、二つのプラネタリーギヤを有してもよいし、又は、四つ以上のプラネタリーギヤを有してもよい。なお、複数のプラネタリーギヤ機構が、それぞれ、互いに異なる数のプラネタリーギヤを有してもよい。
【0083】
上記第1~第4実施形態では、サンギヤ34a、34bは、それぞれ、入力軸21と同軸状である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、他のギヤを適切に追加することで、サンギヤが、入力軸と同軸状でなくてもよい。
【0084】
上記第1~第4実施形態では、プラネタリーキャリア50が、三つのプラネタリーギヤ36aそれぞれの回転軸37aが嵌合される三つの嵌合孔52(被嵌合部)を有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、プラネタリーキャリアは、例えば、複数のプラネタリーギヤそれぞれの回転軸が嵌合される被嵌合部として凹部を有してもよい。
【0085】
上記第1~第4実施形態では、減速機構30が、入力軸21の軸方向に並列される二つのプラネタリーギヤ機構31a、31bを有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、減速機構は、例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)として構成されてもよい。
【0086】
上記のような場合、第1押圧機構は、例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)の入力軸に、この入力軸と直交する平面内を回転するように取り付けられる回転板(又は回転体)と、この回転板(同前)の周縁に設けられる少なくとも一つの押圧部と、を有してもよい。そして、第1押圧機構は、少なくとも一つの押圧部それぞれが供給チューブ(及び排出チューブ)を介して内接することで、少なくとも一つの押圧部それぞれと協働して供給チューブ(及び排出チューブ)を押圧する内壁を含むカバー体をさらに有してもよい。このような構造によっても、チューブポンプは、供給流路内の冷却液を刃先へと圧送すること(及び排出流路内の懸濁液Sを該排出流路の下流側へと圧送すること)が可能である。
【0087】
上記第4実施形態では、供給チューブ62を押圧するための第1押圧機構64、及び排出チューブ112を押圧するための第2押圧機構114が、一の押圧機構64(114)として構成され、供給チューブ62及び排出チューブ112が、共通の三つのローラ66(
図5、6参照)により押圧される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、第1押圧機構と第2押圧機構を別個に構成することで、供給チューブを押圧するための押圧部とは別個に設けられた他の押圧部により、排出チューブが押圧されてもよい。
【0088】
(まとめ)
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る穿孔装置は、刃先と、前記刃先を回転駆動するための駆動装置と、前記刃先に冷却液を供給するための供給流路と、前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送するためのチューブポンプと、を備え、前記チューブポンプは、前記供給流路の一部として構成される供給チューブと、前記供給チューブを押圧するための第1押圧機構と、を有し、前記第1押圧機構が前記駆動装置によって駆動されることを特徴とする。
【0089】
上記構成によれば、チューブポンプが刃先を回転駆動するための駆動装置によって駆動されるので、簡単な装置構成で刃先に冷却液を圧送することが可能となる。
【0090】
前記駆動装置と前記第1押圧機構との間に設けられ、前記駆動装置による動力の回転速度を減じてから前記動力を前記第1押圧機構へと伝達するための減速機構をさらに備えてもよい。
【0091】
上記構成によれば、刃先よりも第1押圧機構の回転速度を遅くすることができるので、良好に穿孔作業を行うことが可能となる。
【0092】
例えば、前記減速機構に前記駆動装置による動力を入力するための入力軸をさらに備え、前記入力軸は、少なくとも前記減速機構を貫通して、前記駆動装置から前記刃先側へと延び、前記減速機構は、入力軸の軸方向に並列される複数のプラネタリーギヤ機構と、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、互いに隣接するプラネタリーギヤ機構同士を接続するためのプラネタリーキャリアと、を有し、前記複数のプラネタリーギヤ機構は、それぞれ、サンギヤと、前記サンギヤに外接することで、前記サンギヤと噛み合って回転する複数のプラネタリーギヤと、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれが内接することで、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれと噛み合って回転するインターナルギヤと、を有し、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸と一体的に回転し、前記プラネタリーキャリアは、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち前記駆動装置側の一方が有する前記複数のプラネタリーギヤに接続され、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうち前記刃先側の他方が有する前記サンギヤと一体的に回転し、前記第1押圧機構は、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記刃先側のプラネタリーギヤ機構が有する前記複数のプラネタリーギヤそれぞれに設けられ、前記複数のプラネタリーギヤそれぞれと一体的に回転する複数の押圧部と、前記複数の押圧部それぞれが前記供給チューブを介して内接することで、前記複数の押圧部それぞれと協働して前記供給チューブを押圧する内壁を含むカバー体と、を有する。
【0093】
前記複数のプラネタリーギヤ機構それぞれが有する前記サンギヤは、前記入力軸と同軸状に設けられ、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸に固定され、前記複数のプラネタリーギヤ機構のうち、最も前記駆動装置側のプラネタリーギヤ機構以外のプラネタリーギヤ機構が有する前記サンギヤは、前記入力軸が貫通するための第1軸孔を有してもよい。
【0094】
上記構成によれば、穿孔装置をいっそう簡単な装置構成とすることが可能となる。
【0095】
前記プラネタリーキャリアは、前記互いに隣接するプラネタリーギヤ機構のうちの前記駆動装置側の一方が有する前記複数のプラネタリーギヤそれぞれの回転軸が嵌合される複数の被嵌合部と、前記入力軸が貫通するための第2軸孔と、を有してもよい。
【0096】
例えば、少なくとも前記駆動装置を収容するための筐体をさらに備えてもよい。
【0097】
前記チューブポンプは、前記筐体の外部に設けられてもよい。
【0098】
上記構成によれば、チューブポンプの駆動装置からの着脱が容易となる。
【0099】
前記チューブポンプは、前記筐体内に収容されてもよい。
【0100】
上記構成によれば、チューブポンプが外部に露出しないので、該チューブポンプの故障を抑制することができる。
【0101】
前記刃先は、ドリルビットの先端として構成され、前記ドリルビットと、前記ドリルビットの基端に取り付けられ、前記ドリルビットとともに前記ドリルビットの長さ方向にスライド可能なスライド部材と、前記ドリルビット及び前記スライド部材を、前記ドリルビットの基端側から前記刃先側に向けて付勢するための付勢部材と、をさらに備え、前記スライド部材は、前記付勢部材の付勢力により前記刃先側に位置しているとき前記供給流路を閉じ、前記付勢部材の付勢力に抗して前記基端側にスライドしたとき前記供給流路を開くように配置されてもよい。
【0102】
上記構成によれば、穿孔作業を行う際に、被穿孔物に刃先を押し当てることで、スライド部材が付勢部材の付勢力に抗してドリルビットの基端側にスライドし、供給流路が開かれる。したがって、効率良く穿孔作業を行うことが可能となる。
【0103】
前記刃先から懸濁液を排出するための排出流路をさらに備え、前記チューブポンプは、前記排出流路の一部として構成される排出チューブと、前記排出チューブを押圧するための第2押圧機構と、をさらに有し、前記第2押圧機構が前記駆動装置によって駆動されることで、前記排出流路内の前記懸濁液を前記排出流路の下流側へと圧送してもよい。
【0104】
上記構成によれば、刃先から懸濁液を排出流路の下流側へと強制的に排出できるため、例えば、被穿孔物の穿孔部分が排出流路の下流端よりも低い位置にある場合や、刃先を下方に向けて穿孔作業を行う場合などであっても、懸濁液を排出流路の下流側へと確実に排出することが可能となる。
【0105】
前記第1及び前記第2押圧機構は、一の押圧機構として構成され、前記押圧機構は、前記供給チューブとともに前記排出チューブも押圧することで、前記供給流路内の前記冷却液を前記刃先へと圧送することに加えて、前記排出流路内の前記懸濁液を前記排出流路の下流側へと圧送されてもよい。
【0106】
上記構成によれば、冷却液の刃先への供給及び懸濁液の刃先からの排出を、簡単な構造で効率良く行うことが可能となる。
【0107】
前記供給流路の上流端及び前記排出流路の下流端は、前記懸濁液から被穿孔物の切屑を分離して前記冷却液を得るための分離装置に接続されてもよい。
【0108】
上記構成によれば、冷却液を循環させることができるので、新たな冷却液を準備しなくても、穿孔作業を繰り返し行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0109】
10A~10D 穿孔装置
11 電動ドリル
12 筐体
13 駆動装置
14 電動モータ
15 駆動軸
16 モータ減速機構
18 第1把持機構
20 ポンプユニット
21 入力軸
22、82 シャンク
30 減速機構
31a、31b プラネタリーギヤ機構
32 第1円板
33、58、69、73 貫通孔
34a、34b サンギヤ
35、54 軸孔
36a、36b プラネタリーギヤ
37a、37b 回転軸
38a、38b インターナルギヤ
50 プラネタリーキャリア
52、68 嵌合孔
56 第2円板
60、60´ チューブポンプ
62 供給チューブ
64 第1押圧機構
66 ローラ(押圧部)
67 第3円板
70 カバー体
72 内壁
75、75´ 挿入孔
76 取り出し孔
80 第2把持機構
88 供給流路
90 ドリルビット
92 冷却液供給孔
98 刃先
112 排出チューブ
114 第2押圧機構
138 排出流路
140 分離装置
160 冷却液供給機構
167 スライド部材
168 付勢部材
L 冷却液
S 懸濁液
W 被穿孔物