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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/08 20060101AFI20241106BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F04B49/08 311
F04B49/06 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021097052
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022188827
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 正宜
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128751(JP,A)
【文献】特開2004-124759(JP,A)
【文献】特開2000-027764(JP,A)
【文献】特開2013-15072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/08
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を繰り返し供給可能な液体供給装置であって、
液体を収容するタンクと、
ピストンと前記ピストンを駆動させる駆動源とを有し、前記タンクから吸入路を介して液体を吸入し、その吸入した液体を送出路から送出するポンプと、
前記吸入路,前記送出路および前記ポンプに接続されて、前記吸入路と前記ポンプとの連通状態、および、前記ポンプと前記送出路との連通状態を切り替えることが可能な制御バルブと、
前記ポンプおよび前記制御バルブを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ポンプによって前記タンクから液体の吸入が完了した後、前記ポンプ内の圧力が前記タンクの圧力まで上昇したとされる条件となるまで、前記制御バルブにおいて、前記ポンプと前記吸入路とが連通した状態を継続させる吸入側連通状態維持制御を実行することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
当該液体供給装置は、前記ポンプ内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御装置は、前記吸入側連通状態維持制御において、前記圧力センサによって検出された圧力が前記タンクの圧力以上となった場合に、前記ポンプと前記吸入路とを遮断する請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記吸入側連通状態維持制御は、前記ポンプによる前記タンクから前記液体の吸入が完了した後から定められた連通時間の間、前記ポンプと前記吸入路とが連通した状態を継続させる制御とされ、
前記制御装置は、
当該液体供給装置に適用可能な種々の液体に関する情報、および、各液体に対する前記連通時間が記憶された記憶部を有し、
前記吸入側連通状態維持制御において、前記タンクに収容されている液体に応じて前記連通時間を変更可能とされた請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記タンク内の圧力を、大気圧より高く、かつ、前記送出路から液体を送出している際の前記ポンプ内の圧力より低い圧力に調整する加圧装置を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記制御バルブは、前記吸入路と前記ポンプとを連通させ、かつ、前記ポンプと前記送出路との連通を遮断した状態である第1状態と、前記吸入路と前記ポンプとの連通を遮断し、かつ、前記ポンプと前記送出路とを連通させた状態である第2状態との間で状態を切り替える切替バルブである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記制御バルブは、ソレノイドバルブであり、通電状態において前記第1状態を実現し、非通電状態において前記第2状態を実現する請求項5に記載の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を繰り返し供給可能な液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、被塗工材の上面に塗料を塗布する枚葉塗工装置が開示されている。この枚葉塗工装置には、塗料のような液体を収容するタンクと、タンクから液体を吸入するとともにその吸入した液体を供給するポンプとを備えた液体供給装置が採用されている。この液体供給装置は、液体を定量的に繰り返し供給することが可能であり、例えば、複数の部品に対して塗布液を塗布する際や、複数の試験体に対して薬品を同様に供給あるいは散布する場合など、種々の場合に採用することができる。そして、このような構成の液体供給装置は、ピストンが反復運動を行って、液体をタンクから吸入する吸入動作と、その吸入した液体を送出する送出動作とを繰り返し行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-182951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の液体供給装置は、ピストンによる吸入動作によって、ポンプ内の圧力は低下することになる。例えば、従来の液体供給装置は、ポンプの吸入側と送出側の各々に機械式の逆止弁を設けた構成とされており、ポンプ内の圧力が送出側の逆止弁のクラッキング圧力に達するまで、液体が供給されず、液体の供給が遅れるという問題がある。また、上記特許文献1の装置のように、機械式の逆止弁に替えて制御弁を用いた場合であっても、吸入動作の完了時に吸入側を遮断してしまうと、ポンプ内の圧力が低下した状態であるため、液体を供給できるまでの圧力差、さらには、当該液体供給装置から液体の供給を受ける装置において液体を吐出するまでに必要な圧力までの圧力差が大きくなり、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行って液体の供給遅れを回避することが可能な液体供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の液体供給装置は、
液体を繰り返し供給可能な液体供給装置であって、
液体を収容するタンクと、
ピストンと前記ピストンを駆動させる駆動源とを有し、前記タンクから吸入路を介して液体を吸入し、その吸入した液体を送出路から送出するポンプと、
前記吸入路,前記送出路および前記ポンプに接続されて、前記吸入路と前記ポンプとの連通状態、および、前記ポンプと前記送出路との連通状態を切り替えることが可能な制御バルブと、
前記ポンプおよび前記制御バルブを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ポンプによって前記タンクから液体の吸入が完了した後、前記ポンプ内の圧力が前記タンクの圧力まで上昇したとされる条件となるまで、前記制御バルブにおいて、前記ポンプと前記吸入路とが連通した状態を継続させる吸入側連通状態維持制御を実行することを特徴とする。
【0007】
ポンプによってタンクから液体の吸入が完了した時点では、ピストンによる吸引で、ポンプ内の圧力が、タンク内に収容されている液体の液圧より低い状態となっている。その状態で、ポンプと吸入路との連通を遮断してしまうと、当該液体供給装置から液体の供給を受ける装置(以下、「吐出装置」と呼ぶ場合がある)において液体を吐出可能となる圧力までの差圧が大きくなり、液体を供給できるまでの時間が遅れてしまうことになる。また、吐出装置において、液体の吐出の指令から実際に液体が吐出されるまでの時間の遅れも問題となる。
【0008】
それに対して、この構成の液体供給装置は、吸入側連通状態維持制御によって、送出動作に入る前のポンプ内の圧力がタンクの圧力まで上昇させられているため、吸入動作直後にポンプと吸入路との連通を遮断した場合に比較して、当該液体供給装置における送出時の液圧や、吐出側装置に必要な液圧までの差圧が小さくなる。つまり、この構成の液体供給装置によれば、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行って、液体の供給遅れや、吐出装置における液体の吐出遅れを回避することができる。
【0009】
また、例えば、吐出装置が、ノズルから対象物に対して液体を塗布・散布するようなものである場合であって、ノズルあるいは対象物を移動させつつ液体の塗布・散布が行なわれるような場合には、ポンプ内の液圧が安定していないと、ノズルからの吐出開始のタイミングが不安定となり、安定して液体の塗布・散布を行うことができない虞がある。この構成の液圧供給装置を採用すれば、吐出前のポンプ内の液圧がタンク内の液圧とされるため、吐出装置における吐出開始のタイミングを安定させることができるのである。
【0010】
この構成において「ポンプ内の圧力がタンクの圧力まで上昇したとされる条件となる」とは、ポンプ内の圧力がタンクの圧力となったことをセンサ等によって実際に検出できた場合のみを意味するのではなく、他の指標に基づいてポンプ内の圧力がタンクの圧力となったことを推定できたような場合をも含む。
【0011】
この構成の液体供給装置における「ポンプ」は、シリンダとその内部に摺動可能に配されたピストンとを含んで構成されるもの、いわゆるシリンジポンプや、ダイヤフラム型のピストンを有するものなどで、ピストンの反復動作によって、吸入動作と送出動作とが行なわれるものである。また、この構成の液体供給装置における「制御バルブ」は、ポンプとの連通を吸入路と送出路とのいずれかの間で切り替える構成のものであってもよく、吸気路と送出路との各々に設けられた2つのバルブから構成されるものであってもよい。なお、制御バルブの駆動方式は特に限定されない。
【0012】
上記構成において、当該液体供給装置は、前記ポンプ内の圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御装置は、前記吸入側連通状態維持制御において、前記圧力センサによって検出された圧力が前記タンクの圧力以上となった場合に、前記ポンプと前記吸入路とを遮断する構成とすることができる。
【0013】
この構成の液体供給装置は、圧力センサによって、ポンプ内の圧力がタンクの圧力まで上昇したことを検出することができるため、吸入側連通状態維持制御後の送出動作を遅れることなく開始することができ、ピストンの1回の往復運動による吸入動作と送出動作とからなる1回の作動時間、いわゆるサイクルタイムの短縮化が図られている。
【0014】
上記構成において、前記吸入側連通状態維持制御は、前記ポンプによる前記タンクから前記液体の吸入が完了した後から定められた連通時間の間、前記ポンプと前記吸入路とが連通した状態を継続させる制御とされ、前記制御装置は、当該液体供給装置に適用可能な種々の液体に関する情報、および、各液体に対する前記連通時間が記憶された記憶部を有し、前記吸入側連通状態維持制御において、前記タンクに収容されている液体に応じて前記連通時間を変更可能とされた構成とすることができる。
【0015】
この構成の液体供給装置によれば、センサ等を追加することなく、送出動作に入る前のポンプ内の圧力をタンクの圧力まで上昇させることができ、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行うことができる。この構成の液体供給装置は、吸入側連通状態維持制御の「連通時間」が、例えば、液体の粘性等を考慮して、予め定めた値とすることができ、送出動作の開始遅れを効果的に抑えることができる。
【0016】
上記構成において、前記タンク内の圧力を、大気圧より高く、かつ、前記送出路から液体を送出している際の前記ポンプ内の圧力より低い圧力に調整する加圧装置を備える構成とすることができる。
【0017】
この構成の液体供給装置によれば、タンク内の圧力が大気圧より高くされているため、吸入側連通状態維持制御後のポンプ内の圧力をも高めることができ、送出動作の開始や、吐出装置における液体の吐出開始までの時間を短縮することができる。
【0018】
上記構成において、前記制御バルブは、前記吸入路と前記ポンプとを連通させ、かつ、前記ポンプと前記送出路との連通を遮断した状態である第1状態と、前記吸入路と前記ポンプとの連通を遮断し、かつ、前記ポンプと前記送出路とを連通させた状態である第2状態との間で状態を切り替える切替バルブとすることができる。
【0019】
この構成の液体供給装置によれば、吸入側連通状態維持制御の後に、吸入路とポンプの連通を遮断すると、ポンプと送出路とが連通させられるため、送出動作への切り替えをスムースに行うことができる。また、この構成の液体供給装置によれば、制御バルブが吸入路と送出路との各々に2つのバルブを設けた構成に比較して、制御を簡便化することができる。
【0020】
上記構成において、前記制御バルブは、ソレノイドバルブであり、通電状態において前記第1状態を実現し、非通電状態において前記第2状態を実現する構成とすることができる。
【0021】
この構成の液体供給装置は、通電状態(ON状態)から非通電状態(OFF状態)への切り替えにより、ポンプへの連通が吸入路から送出路に切り替えられる。つまり、ソレノイドバルブである制御バルブは、一般的にスプリング等の付勢力により機械的に第1状態から第2状態に切り替えられるため、送出動作への切り替えが、スムースにかつ確実に行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行って液体の供給遅れを回避することが可能な液体供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例である液体供給装置を含む塗布装置の概略図
図2図1に示すポンプユニットが備える駆動ユニットの側面図
図3図2に示す切替バルブの断面図
図4図3の要部を拡大して示す図であり、非通電状態で第2状態とされている状態を示す図
図5図3の要部を拡大して示す図であり、通電状態で第1状態とされている状態を示す図
図6図1に示す塗布装置における制御のタイミングチャート
図7】本発明の第2実施例である液体供給装置を含む塗布装置の概略図
図8図7に示す塗布装置における制御のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1実施例の液体供給装置10は、図1に概略を示す塗布装置12を構成するものである。塗布装置12は、第1実施例の液体供給装置10と、液体としての塗布液を複数の被塗物に対して吐出するスプレーノズル(吐出装置)14と、を主体として構成されている。本液体供給装置10は、塗布液を定量ずつ繰り返し供給可能とされることで、本塗布装置12は、スプレーノズル14から定量ずつ繰り返し塗布液を吐出することが可能とされ、例えば、搬送装置によって搬送されてくる複数の被塗物を、自動で連続的に塗布することが可能なものである。なお、この塗布装置12は、例えば、半導体ウェハに塗布液としてのレジスト液を塗布するもの、液晶装置の製造工程においてガラス基板に各種の材料を塗布するもの、型枠等に対して離型剤を塗布するもの、実験等において薬品を散布するもの等に採用することができる。
【0026】
本液体供給装置10は、図1に示すように、塗布液を大気圧で収容するタンク16と、ポンプユニット18と、タンク16とポンプユニット18とを接続してポンプユニット18がタンク16から塗布液を吸入するための吸入路20と、ポンプユニット18とスプレーノズル14とを接続してポンプユニット18からスプレーノズル14に塗布液を送出するための送出路22と、を含んで構成される。ポンプユニット18は、シリンジポンプ30と、シリンジポンプ30の駆動源となる駆動ユニット32と、シリンジポンプ30,吸入路20および送出路22とを接続してそれらの連通状態を切り替えるための切替バルブ(制御バルブの一例)34と、駆動ユニット32および切替バルブ34を制御する制御装置36と、がケース38に組み付けられたものである。
【0027】
シリンジポンプ30は、円筒状のシリンダ40と、シリンダ40内を摺動可能なピストン42とからなる。そのシリンジポンプ30は、駆動ユニット32によって伸縮させられる。詳しく言えば、シリンジポンプ30は、シリンダ40が上下方向に延びる姿勢で、ケース38の前面に固定され、シリンダ40から下方に延び出したピストン42のロッド部42Aが、シリンダ40に対して上下方向に移動させられることで、伸縮させられるようになっている。
【0028】
駆動ユニット32は、図2に示すように、モータ50と、ボールねじ機構52とを主体として構成される。ボールねじ機構52は、雄ねじが形成されたねじロッド52Aと、そのねじロッド52Aに螺合するナット52Bとからなる。ねじロッド52Aは、ベース54に対して、上下方向に延びる姿勢で、軸線周りに回転可能に保持され、その上端がモータ50のモータ軸50Aに固定されている。つまり、ねじロッド52Aは、モータ50によって軸線周りに回転させられるようになっている。一方、ナット52Bは、ベース54に沿ってスライド移動可能に配されたスライダ56に固定されている。つまり、ナット52Bは、自身の軸線周りの回転が禁止されることで、ねじロッド52Aがモータ50により回転させられると、ねじロッド52Aに沿って上下方向に移動させられるのである。また、そのスライダ56は、ピストン42のロッド部42Aの下端に固定されているため、ナット52Bの上下方向の移動によって、ピストン42も上下方向に移動させられるようになっている。なお、本実施例においては、モータ50は、ステッピングモータとされており、パルス数の制御によって回転角が制御されて、ピストン42の位置を制御すること、および、パルス周波数の制御により、ピストン42の速度を制御することが可能となっている。また、駆動ユニット32には、ピストン42が最も上方側の位置である上端位置(原点位置)にあることを検出するための原点位置センサ60と、ピストン42が最も下方側に位置していることを検出する下端端位置センサ62とが設けられている。原点位置センサ60は、本液体供給装置10が起動した際に、ピストン42の原点位置、つまり、モータ50の原点位置を設定するためのもの。また、この原点位置センサ60と、下降端位置センサ62とは、ピストン42のストッパとしての機能をも有し、ピストン42は、これらのセンサ60,62によって検出される範囲内で動作させられるようになっている。
【0029】
次に、図3から図5を参照しつつ、切替バルブ34について説明する。切替バルブ34は、ソレノイドバルブであり、ハウジング70と、電磁石72と、電磁石72が励磁されることで、自身の軸線方向に移動させられるプランジャ74と、ダイヤフラム弁76と、を備えている。ダイヤフラム弁76は、ハウジング70内に、回動軸76Aを中心として揺動可能に保持されている。ハウジング70には、3つのポート70A,70B,70Cが設けられている。第1ポート70Aは、吸入路20に接続され、第2ポート70Bは、シリンジポンプ30に接続され、第3ポート70Cは、送出路22に接続されている。図4に示すように、ダイヤフラム弁76によって、第1ポート70Aが閉じられると、第2ポート70Bと第3ポート70Cとが連通させられ、シリンジポンプ30が送出路22と連通した状態とされるとともに、吸入路20と遮断された状態となる。一方、図5に示すように、ダイヤフラム弁76によって、第3ポート70Cが閉じられると、第2ポート70Bと第1ポート70Aとが連通させられ、シリンジポンプ30が吸入路20と連通した状態とされるとともに、送出路22と遮断された状態となる。
【0030】
また、プランジャ74には、ダイヤフラム弁76の一端部76Bを押圧する主押圧部材78が固定されるとともに、第1コイルスプリング80によってダイヤフラム弁76側(図3における下方側)に付勢されている。そして、電磁石72が励磁されると、プランジャ74および主押圧部材78がダイヤフラム弁76と反対側(図3における上方側)に移動させられる。また、主押圧部材78には、ダイヤフラム弁76の他端部76Cを押圧する副押圧部材82と、その副押圧部材82をダイヤフラム弁76側(図3における下方側)に付勢する第2コイルスプリング84とが配されている。
【0031】
第1コイルスプリング80の付勢力の方が、第2コイルスプリング84の付勢力より大きくされている。そのため、電磁石72が励磁されていない状態(非通電状態,OFF状態)においては、図4に示すように、主押圧部材78によって、ダイヤフラム弁76の一端部76Bを押さえつけて、第1ポート70Aを塞いだ状態となっている。つまり、吸入路20とシリンジポンプ30との連通を遮断し、かつ、シリンジポンプ30と送出路22とを連通させた状態である第2状態が実現される。一方、電磁石72が励磁された状態(通電状態,ON状態)とされると、図5に示すように、プランジャ74および主押圧部材78が引き込まれることで、第2コイルスプリング84によって付勢された副押圧部材82がダイヤフラム弁76の他端部76Cを押圧して、ダイヤフラム弁76を揺動させる。それにより、第3ポート70Cが塞がれるとともに、第1ポート70Aが開放される。つまり、吸入路20とシリンジポンプ30とを連通させ、かつ、シリンジポンプ30と送出路22との連通を遮断した状態である第1状態が実現される。
【0032】
以上のように構成された本液体供給装置10は、制御装置36によって制御される。詳しく言えば、本液体供給装置10は、制御装置36によって切替バルブ34とモータ50とが制御されることで、塗布液を繰り返し供給可能となっている。具体的には、シリンジポンプ30が、タンク16から吸入路20を介して塗布液を吸入する吸入動作と、その吸入した塗布液を送出路22を介してスプレーノズル14に送出する送出動作とを、繰り返し行うことで、塗布液を繰り返し供給する。なお、本液体供給装置10は、入力された情報に基づいて、塗布液を定量的に繰り返し供給することや、操作入力によってスプレーノズル14から吐出させる信号が出ている間、連続的に塗布液を供給することが可能とされている。以下に、図6のタイミングチャートを参照しつつ、本液体供給装置10によって、塗布液を定量ずつ繰り返し供給する場合の制御について、詳しく説明する。
【0033】
本実施例の塗布装置12においては、ポンプユニット18の電源が入れられると、図1に示した表示装置24に、1回の送出量(吐出量)や、送出する回数、シリンジポンプ30のピストン42の動作速度、吐出する液体に関する情報等を入力するための操作画面が表示される。そして、作業者等によって、それらが入力され、ポンプユニット18の作動が開始されると、まず、吸入動作が行なわれる。吸入動作では、まず、切替バルブ34がON状態とされて、吸入路20とシリンジポンプ30とを連通させ、かつ、シリンジポンプ30と送出路22との連通を遮断した第1状態が実現される。次いで、モータ50が入力されたデータを基に、モータ50へのパルス周波数が決定されており、制御装置36は、その信号をモータ50のドライバに送信することで、ピストン42を定められた速度で移動させ、シリンジポンプ30を伸長させる。なお、初回の吸入動作においては、入力された1回の吐出量を超える液量を吸入するようになっており、その後は、吐出した液量と同じ量だけ吸入するように、ピストン42の動作量(動作位置)が制御される。つまり、モータ50の回転角(パルス数)が制御される。
【0034】
上記の吸入動作が行なわれると、図6に示すように、シリンジポンプ30内の液圧が低下することになる。このシリンジポンプ30内の液圧が低下した状態で、切替バルブ34がOFF状態とされ、吸入路20とシリンジポンプ30との連通を遮断し、かつ、シリンジポンプ30と送出路22とを連通させた第2状態に切り替えられると、次の送出動作(吐出動作)において、塗布液がスプレーノズル14から実際に吐出されるまでの液圧となるまでの差圧が大きく、スムースに送出動作が開始されないという問題がある。
【0035】
本液体供給装置10においては、上記のピストン42が目標となる位置まで移動させられ、定められた量の塗布液が吸入されると、続いて、吸入側連通状態維持制御が実行される。吸入側連通状態維持制御は、モータ50が停止させられた後も、切替バルブ34を継続してON状態として、シリンジポンプ30とタンク16とを吸入路20を介して連通させた状態を継続させる制御である。その吸入側連通状態維持制御は、液体の種類や液体の粘度等に応じて定められた連通時間Tの間だけ行われるようになっている。
【0036】
制御装置36は、作業者に入力されたデータに基づいて、連通時間Tを決定するようになっている。詳しく言えば、制御装置36は、記憶部36Aを有し、その記憶部36Aには、本液体供給装置10に適用可能な種々の液体に関する情報が記憶されるともに、液体の種類や液体の粘度に対応する連通時間Tが、例えば、液体の種類ごとの連通時間Tや、液体の粘度と連通時間Tとの関係を示すマップデータ等が記憶されており、作業者に入力されたデータから、記憶部36Aに記憶された情報を参照しつつ、連通時間Tが決定される。この吸入側連通状態維持制御は、シリンジポンプ30内の圧力がタンク16の圧力まで上昇したとされる条件となるまで行われるのであり、上述した連通時間Tは、タンク16に収容された液体の液圧(大気圧)まで上昇するのに必要な時間が、計算値や検証値等に基づいて設定されている。また、例えば、連通時間Tは、ピストン42の作動速度(モータ50の回転速度)に係数を乗じて、決定するようにすることもできる。
【0037】
連通時間Tが経過すると、切替バルブ34がOFF状態とされ、吸入路20とシリンジポンプ30との連通を遮断し、かつ、シリンジポンプ30と送出路22とを連通させた第2状態に切り替えられる。その後、スプレーノズル14に塗布を行わせるための信号が送られるのに合わせて、制御装置36は送出動作を行う。つまり、制御装置36は、入力されたデータを基に決定されたパルス周波数およびパルス数となる信号をモータ50のドライバに送信し、ピストン42を定められた速度で移動させ、シリンジポンプ30を収縮させるのである。そして、1回目の送出動作が終了すると、その後、吸入動作,吸入側連通状態維持制御および送出動作を1つのサイクルとして、そのサイクルが入力された回数となるまで、繰り返し実行される。
【0038】
以上のような構成から、本液体供給装置10は、送出動作を開始する際に、吸入側連通状態維持制御によってシリンジポンプ30内の液圧がタンク16の液圧まで上昇させられているため、シリンジポンプ30の動作開始からスプレーノズル14から塗布液が吐出されるまでの遅れを抑えることができ、吸入動作から送出動作への切り替えをスムースに行うことができる。また、シリンジポンプ30の動作開始におけるシリンジポンプ30内の液圧が一定となるため、実際にスプレーノズル14から塗布液が吐出されるタイミングを安定させることができ、被塗物に対する塗布をムラなく行うことができる。
【0039】
また、本液体供給装置10においては、吸入路20とシリンジポンプ30との連通状態、および、シリンジポンプ30と送出路22との連通状態を切り替える制御バルブとして、通電状態と非通電状態との切り替えによって、(I)吸入路20とシリンジポンプ30とを連通させ、かつ、シリンジポンプ30と送出路22との連通を遮断した第1状態と、(II)吸入路20とシリンジポンプ30との連通を遮断し、かつ、シリンジポンプ30と送出路22とを連通させた第2状態とを切り替える切替バルブとされていた。制御バルブとしては、吸入路と送出路との各々に設けられた2つのバルブによって構成してもよいが、その構成のものに比較して、本液体供給装置10は、構成が単純化するとともに、制御の簡便化が図られている。
【実施例2】
【0040】
次に、第2実施例の液体供給装置100について、図7および図8を参照しつつ説明する。第2実施例の液体供給装置100は、第1実施例の液体供給装置10と類似する構成であり、第1実施例と同一の構成要素については、同じ符号を付し、その説明を簡略に行う、あるいは、省略する場合がある。第2実施例の液体供給装置100は、第1実施例の液体供給装置10と同様に、スプレーノズル14とともに、塗布装置102を構成する主体となるものである。また、本液体供給装置100は、第1実施例の液体供給装置10と同様に、タンク106と、ポンプユニット108と、吸入路20と、送出路22と、を含んで構成される。ただし、第2実施例の液体供給装置100は、図7に示すように、シリンジポンプ30に、内部の液圧を検出する圧力センサ110が設けられるとともに、タンク106の液圧を加圧・調整可能な加圧装置112を備えている。
【0041】
加圧装置112は、特に限定されないが、本実施形態においては、タンク106内にエアを送ることで、タンク106内の塗布液の液圧を加圧し、設定された圧力に調整するものとされている。その加圧装置112は、タンク106内の塗布液の液圧が、大気圧より高く、かつ、送出路22から塗布液を送出している際のシリンジポンプ30内の圧力より低い圧力である基準圧Pに調整するようになっている。
【0042】
このように構成された第2実施例の液体供給装置100は、吸入動作および送出動作の制御方法は、第1実施例の液体供給装置10と同様であるが、加圧装置112の存在により、後で詳しく説明するが、吸入動作の開始から送出動作が完了するまでの時間であるサイクルタイムを短縮することができる。また、第1実施例の液体供給装置10における吸入側連通状態維持制御が、タンク16に収容されている液体に応じて決定された連通時間Tの間、前記ポンプと前記吸入路とが連通した状態を継続させる制御とされていたが、第2実施例の液体供給装置100における吸入側連通状態維持制御と相違する。第2実施例の液体供給装置100における吸入側連通状態維持制御は、圧力センサ110の検出結果に基づいて行われる。以下に、図8のタイミングチャートを参照しつつ、第2実施例の液体供給装置100の制御について説明する。
【0043】
本実施例の塗布装置102においては、作業者等によって、ポンプユニット108の作動が開始されると、まず、吸入動作が行なわれる。吸入動作では、まず、切替バルブ34がON状態とされて、吸入路20とシリンジポンプ30とを連通させ、かつ、シリンジポンプ30と送出路22との連通を遮断した第1状態が実現される。次いで、モータ50が制御され、ピストン42が定められた速度で移動させられ、シリンジポンプ30が伸長させられる。なお、第1実施例の液体供給装置10と同様に、初回の吸入動作においては、入力された1回の吐出量を超える液量を吸入するようになっており、その後は、吐出した液量と同じ量だけ吸入するように、ピストン42の動作量(動作位置)が制御される。
【0044】
上記の吸入動作が行なわれると、図8に示すように、シリンジポンプ30内の液圧が低下することになる。しかしながら、第2実施例の液体供給装置100は、タンク106の液圧が加圧装置112によって大気圧より上昇させられているため、第1実施例の液体供給装置10に比較して、シリンジポンプ30内の液圧の低下は小さくなる。そして、ピストン42が目標となる位置まで移動させられ、定められた量の塗布液が吸入されると、続いて、吸入側連通状態維持制御が実行される。吸入側連通状態維持制御は、モータ50が停止させられた後も、切替バルブ34を継続してON状態として、シリンジポンプ30とタンク16とを吸入路20を介して連通させた状態を継続させる制御である。その吸入側連通状態維持制御は、圧力センサ110によって検出される液圧が、タンク106の液圧、つまり、上述した基準圧Pとなるまで行われるようになっている。
【0045】
シリンジポンプ0の液圧が基準圧Pまで上昇すると、切替バルブ34がOFF状態とされ、吸入路20とシリンジポンプ30との連通を遮断し、かつ、シリンジポンプ30と送出路22とを連通させた第2状態に切り替えられる。その後、スプレーノズル14に塗布を行わせるための信号が送られるのに合わせて、制御装置36は送出動作を行う。この際、シリンジポンプ30内の圧力が基準圧Pまで上昇させられているため、スプレーノズル14から塗布液が吐出される圧力となるまでの時間が、第1実施例に比較して短縮されている。そして、1回目の送出動作が終了すると、その後、吸入動作,吸入側連通状態維持制御および送出動作が、入力された回数となるまで、繰り返し実行される。
【0046】
以上のような構成から、本実施例の液体供給装置100は、吸入側連通状態維持制御の時間に無駄がなく、圧力センサ110の検出結果に基づいて吸入側連通状態維持制御が終了させられるため、その後の送出動作を遅れることなく開始することができる。また、上述したように、スプレーノズル14から塗布液が吐出される圧力となるまでの時間も短縮されており、ピストン42の1回の往復運動による吸入動作と送出動作とからなる1回の作動時間であるサイクルタイムの短縮化が図られているのである。
【0047】
なお、本実施例の液体供給装置100は、シリンジポンプ30内の液圧を圧力センサ110によって検出することが可能であるため、例えば、駆動ユニット等の失陥等が生じた場合であっても、過小圧等が検出された場合に、当該液体供給装置100の不具合を検出することもできる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において、ポンプは、シリンジポンプとされていたが、ダイヤフラム型のポンプであっても、ピストンの反復運動によって吸入動作と送出動作とが行なわれるものであればよい。
(2)上記実施形態において、制御バルブは、前入路とポンプとを連通させ、かつ、ポンプと送出路との連通を遮断した状態である第1状態と、吸入路とポンプとの連通を遮断し、かつ、ポンプと送出路とを連通させた状態である第2状態との間で状態を切り替える切替バルブとされていたが、それに限定されず、例えば、吸気路と送出路との各々に設けられた2つの制御可能なバルブから構成されるものであってもよい。
(3)上記実施形態に液体供給装置は、吐出装置としてスプレーノズルを備え、例えば、半導体ウェハに塗布液としてのレジスト液を塗布するもの、液晶装置の製造工程においてガラス基板に各種の材料を塗布するもの、型枠等に対して離型剤を塗布するもののような塗布装置の構成要素とされていたが、吐出装置はそれに限定されず、複数の試験体に対して薬品を単に滴下するようなものに採用することもできる。
【符号の説明】
【0049】
10…液体供給装置、12…塗布装置、14…スプレーノズル(吐出装置)、16…タンク、18…ポンプユニット〔ポンプ〕、20…吸入路、22…送出路、30…シリンジポンプ、32…駆動ユニット〔駆動源〕、34…切替バルブ〔制御バルブ〕、36…制御装置、36A…記憶部、40…シリンダ、42…ピストン、50…モータ、100…液体供給装置、102…塗布装置、106…タンク、110…圧力センサ、112…加圧装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8