(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】設定可能な光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241106BHJP
G02F 1/29 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/29
(21)【出願番号】P 2021514097
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 ES2019070599
(87)【国際公開番号】W WO2020053463
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】501199047
【氏名又は名称】ユニヴェルシダッド ポリテクニカ デ マドリッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】モルテン・アンドレアス・ゲダイ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・カニョ・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・マヌエル・オトン・サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】パチ・シャビエル・キンタナ・アレギ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ・アンドレアス・ゲダイ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-134981(JP,A)
【文献】特開2013-250525(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0124344(KR,A)
【文献】特開2009-015329(JP,A)
【文献】特開平05-072403(JP,A)
【文献】特表2003-529259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202493(US,A1)
【文献】Jorge Albero et al.,Liquid Crystal Devices for the Reconfigurable Generation of Optical Vortices,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,米国,The Optical Society of America, IEEE,2012年,VOL.30, NO.18,p.3055-3060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/29-1/39
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームの入口面(21)と出口面(22)とからなるアクティブ領域(2)、および、周辺領域(3)を有する設定可能な
複数の光素子(1)を備えた設定可能な光装置であって、
前記
複数の光素子(1)
の各々は、電気光学材料で製作され、複数のセクション(41)に分割された少なくとも一つの透明な第一の電極(4)と、少なくとも一つの透明な対向電極(5)とを含み、
前記
複数の光素子(1)
の各々は、前記電極(4,5)の前記セクション(41)のための電気接続を有し、
前記電気接続は、前記
複数の光素子(1)
の各々の前記周辺領域(3)に配置されており、
前記光装置は、前記第一の電極(4)の各セクション(41)と前記対向電極(5)との間の電位差の印加時に、前記第一の電極(4)の前記セクション(41)に対応する個々の領域において、前記
複数の光素子(1)
の各々の光学異方性を選択的に変える電場が生成されるように構成され、そして、前記第一の電極(4)の前記セクション(41)に印加される電場パターンに応じて、入射光ビームのトポロジカルチャージおよび焦点を構成する光路プロファイルを生成し、
前記光装置は、予め定めた第一の電場パターンの印加時には、前記
複数の光素子(1)
の各々の前記光路プロファイルが、第一の焦点距離および第一のトポロジカルチャージを備えたらせん回折レンズのものと対応し、そして、予め定めた第二の電場パターンの印加時には、前記
複数の光素子(1)
の各々の前記光路プロファイルが、第二の焦点距離および第二のトポロジカルチャージを備えたらせん回折レンズのものと対応するように構成されており、
前記設定可能な光装置は、
前記複数の光素子(1)のうちの第一の
光素子(1)と、第一の
光素子(1)と直列に配置された
、前記複数の光素子(1)のうちの第二の
光素子(1)とを
備え、前記対向電極(5)は、複数のセクションに分割されておらず、または、前記対向電極(5)は、複数のセクションに分割されており、または、前記第一の
光素子(1)は、複数のセクションに分割されていない前記対向電極(5)を有し、そして、前記第二の
光素子(1)は、複数のセクションに分割されている前記対向電極(5)を有することを特徴とする、設定可能な光装置。
【請求項2】
前記対向電極(5)は、複数のセクションに分割され、結果として、両方の電極(4,5)は、各セクションにおいて異なる電位を有し、そして各セクションにおいて等しい電位を有するように構成されており、
前記第一の電極(4)のセクション分布は、前記対向電極(5)のセクション分布とは異なり、よって、前記光装置は、光路プロファイルの二つの独立したセットを生成するために再設定可能であり、これにより入射光ビームの前記トポロジカルチャージおよび前記焦点をさまざまな方法で変化可能である、請求項1に記載の設定可能な光装置。
【請求項3】
前記
複数の光素子(1)における前記電気光学材料は、液晶であることを特徴とする請求項1または2に記載の設定可能な光装置。
【請求項4】
前記
複数の光素子(1)の前記電気光学材料は、重合性液晶であることを特徴とする請求項3に記載の設定可能な光装置。
【請求項5】
前記電場の印加時に、直列に配置された隣接する前記光素子(1)の前記光路プロファイルが、らせん回折レンズのものと対応するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の設定可能な光装置。
【請求項6】
前記電場の印加時に、直列に配置された隣接する前記光素子(1)の前記光路プロファイルが、らせん位相プレートのものと対応するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の設定可能な光装置。
【請求項7】
前記電場の印加時に、直列に配置された隣接する前記光素子(1)の少なくとも一つの前記光路プロファイルが、らせん回折レンズのものと対応するように、そして、直列に配置された残りの隣接する前記光素子(1)の少なくとも一つの前記プロファイルが、らせん位相プレートのものと対応するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れか1項に記載の設定可能な光装置。
【請求項8】
前記電極(4,5)の一つは、隣接する前記液晶の光学異方性に依存して変化可能な電磁共振周波数を有する構造を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の設定可能な光装置。
【請求項9】
請求項1に記載の少なくとも2つの
光素子(1)を直列に配置するステップと、
前記少なくとも2つの光素子(1)の各光素子(1)の前記第一の電極(4)の前記複数のセクション(41)と前記対向電極(5)との間に電位差のパターンを印加し、これにより光学異方性プロファイルを変更する電場を生成し、その結果、入射光ビームの前記トポロジカルチャージを変更する前記光素子(1)の前記光路プロファイルを生成するステップと、を含むことを特徴とする設定可能な光装置の製造方法。
【請求項10】
前記光素子(1)は、電気光学材料として液晶を用いることを特徴とする請求項9に記載の設定可能な光装置の製造方法。
【請求項11】
前記光素子(1)は、電気光学材料として重合性液晶を用い、
前記重合性液晶を硬化させて、固定または部分的に調整可能な位相を有する変化プロファイルを備えた回折装置を得るステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の設定可能な光装置の製造方法。
【請求項12】
直列に配置された隣接する二つの光素子(1)の電極(4,5)間に電場を印加して、二つのらせん回折レンズに対応する隣接する二つの光素子(1)の光学異方性プロファイルを生成するステップと、
前記二つのらせん回折レンズを、両者の間に間隔を有するように直列に配置するステップとを含み、
これにより、両レンズの焦点距離が一致し、それらを調整可能なテレスコープまたはビーム拡大器として機能させることができ、レンズのトポロジカルチャージを変更することを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか1項に記載の設定可能な光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、任意の入射放射の位相プロファイルに半径方向変化を導入することができる、設定可能な(または、再設定可能な)光装置に関する。また、本発明は、前述の設定可能な光装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使用されているレンズは、光屈折に基づいている。光回折に基づくレンズも、周知であり、トポロジカルチャージないしに(または、ゼロトポロジカルチャージ)、固定された焦点を有する回折レンズである、フレネルレンズとしても知られている。
【0003】
たとえば、螺旋回折レンズのような、ある種の渦レンズは、技術水準で知られている。螺旋回折レンズは、そのプロファイルにより特徴づけられ、それは、そのトポロジカルチャージにより、および焦点レンズの場合において、その焦点距離により、説明される。
【0004】
光渦ビームまたは渦は、あまり一般的でなく、一般公衆において周知ではない。渦は、光ビームであり、光の位相は、ビームの中心周りの方位角態様で、空間的に変化する。典型的に、位相は、ビームの中心周りの回転における、2πの整数倍である数で、変化する。2πの整数倍の数は、渦のトポロジカルチャージとして、知られている。
【0005】
当該特許において定義される要素は、入射ビームのトポロジカルチャージを変化させる、全ての要素である。
【0006】
同様に、特許文献1に記載されているもののように、螺旋形状および焦点能力を有する、ある種のコンタクトレンズが、知られている。
【0007】
同様に、設定可能な螺旋位相プレートに関連しているが、不均一な配列に基づいている、特許文献2が知られており、それは、直列にレンズを使用しない。
【0008】
同様に、液晶セル内の最設定可能な共振ダイポール構成に基づいて、テラヘルツおよびミリ波レンジでの周波数に対する再設定可能なビーム反射アレイを規定する、特許文献3が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第5408281号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/226844号明細書
【文献】国際公開第2012/080532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日まで、異なる電極に印加される場のみに依存し、ピクセル化された装置内に存するエリアジングなしに、異なる焦点距離を有する螺旋回折レンズを生成するために、一つの同じ受動電極構造を用いる、光装置は知られていない。
【0011】
今日まで、二つの渦生成構造を直列に組合わせた、光装置は知られていない。本発明のそのような構成の直列での組合せは、単一装置の手段、特に全ての種類の光レンズにより、必要とされるものに従ってその光特徴を校正するとともに、見習う(emulate)ことを可能とする。
【0012】
より高い曲線因子を有するという追加された利点と共に、その活性部分におけるエリアシングでラッキング(aliasing and lacking)の電子部品を有さず、それ故より多くの光を伝搬する、この種の装置は、空間光変調器(SLM)と競合し得る。また、それは、構造的に、電子的に、より短銃であり、それ故より安価である。
【0013】
本発明は、液晶(LCs)の基本的な特性の幾つかの利点、特に、誘電体および光の分子異方性、を取っている。その内部誘電体異方性と組合されたLCsの液体の性質は、巨視的規模において、当該材料は、その最も高い誘電率を提供するそれ自身を、印加された場へ、方向を合わせる傾向がある、ということを意味する。
【0014】
最も一般的なLCsにおいて、ネマチック、カラミチック液晶、分子は、細長い形状を有する。分子の最も長い軸は、最も高い誘電率の軸および異方性の光軸に、おおよそ対応しており、屈折率楕円体(indicatrix)とも呼ばれる。よって、最大屈折率および最大誘電体率は、分子の最長軸に平行である。これらの材料は、正のLCsと呼ばれる。
【0015】
負の誘電率異方性を有するLCsが存在し、分子軸は、最大屈折率(屈折率楕円体)および最小の誘電率と、一致する。当該記載において、一軸異方性が想定されており、本発明の全ての関連する液晶(LC)ケースに対して、近似は有効である。
【0016】
たとえば、青位相液晶のような他のLC材料において、電場を印加することにより、等方材料は、異方性材料へと変形する。このような場合において、当該指標は、場の方向において上昇し、垂直な方向で減少する、傾向にある。
【0017】
また、LCsは、秩序だった液体である。当該Lcsは、数百μmに及ぶ分子間粘弾性力により生成された、内部の巨視的な秩序を有し、それらを、外部場なしで、比較的弱い表面相互作用により、配列させることができる。
【0018】
よって、適切な表面処理の手段により、LCの優先整列を誘発することが可能となり、LCのボリュームが、単距離配置された、平行面を有する、セル内に閉じ込められるという条件で、それは、材料の残りへと伝達される。外部電場を印加することにより、上記整列を最終的に変えることができる。一つの状態と他の状態との間の転換は、整列方向と電場の方向により規定される平面により、決定される。
【0019】
結果として、屈折率または、LCを通過する光により把握される指標を、印加される電場の手段により、変更することができ、光経路長(OPL)または入射光の偏光状態(SOP)を、引き起こす。
【0020】
SOPの変更は基礎であり、当該基礎において、液晶画面(LCDs)が構築される。SOPを制御することにより、一つの偏光板または二つの偏光板の助けを用いて、システムを通過する光の量を制御することができる。LCDは、バックライトされた、または背面ミラーが配設された、LCセルから、通常構成され、その上において、LCセルが、偏光板の間に配置される。セルは、セグメント(英数字ディスプレイ)またはピクセルの矩形マトリックス(たとえば、モバイルフォン、プロジェクタ、およびテレビにより扱われる種)の形の電極に形成される、電気励起システムを有する。
【0021】
OPLの変形は、LCレンズ、および、空間光変調器(SML)のような、より包括的なLC光量子装置に対する、基礎である。これらの装置により、入射波面の少なくとも一つの偏光を、操作することが可能となる。
【0022】
透明なLCレンズは、一般的に、異なる電圧が印加される同心電極に、基づいている。仮に、電極のマルチレイヤアセンブリが選択されないなら、同心要素を接続することは、複雑であり、このことは、転じて、それ自身の問題を有する。結果的に、かなり制限された同調性範囲を有する、複雑なダイレクティングスキームを、使用しなければならず、または、螺旋形状を有する絡み合った電極を、使用しなければならない。
【0023】
LCDディスプレイにおいて一般的に要求されるπの位相遅れの代わりに、2πの最大位相遅れに達するように準備されなければならないが、SLMsは、LCDsの商業的生産に由来する技術に基づいている。ハイパフォーマンスSLMsは、波面のほとんどの任意調整を可能にする、ピクセルの超高密度矩形アレイに、基づいている。しかしながら、ほとんどのディスプレイは、数十μmのピクセルサイズ(人の目の視力未満)を有する直視ディスプレイ、または、たとえばLCoS(シリコン上の液晶)のような、透過又は反射型の投射装置、である。
【0024】
直視装置は、一般的に、活性マトリックスにおける薄膜トランジスタ(TFTs)を使用し、当該TFTsは、ディスプレイが扱う多数(数百万)もの個々のピクセルを制御するために要求される、電極の数を減らす。ディスプレイのアクティブエリアの大部分は、TFTsおよび回路により占領され、ディスプレイのいわゆる曲線因子(光透過率)を減らす。実用において、そのような装置の分解能が制限されるというレベルまで、ピクセルの小さいサイズは、曲線因子を減少させるので、問題は、透過型の投射装置において、悪化する。反射型のLCoS装置において、トランジスタおよびマイクロエレクトロニクス回路は、ディスプレイの後ろに設置され、曲線因子に影響を及ぼさない。
【0025】
いずれの場合でも、制御装置は、ピクセルの上方またはアクティブエリアの下方に存し、それは、ある適用において望まれないもの(特に、LCセルが、回路のマイクロおよびナノ電子要素を劣化し得る、強い電磁放射またはイオン放射にさらされる)である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
従来の技術に鑑みて、後述する設定可能な(および/または調整可能な)光装置、本発明の主題、が示される。
【0027】
本発明の設定可能な光装置対象は、設定可能な光素子または直列に配置された様々な設定可能な光素子を、備える。各光素子は、光ビームに対する、入口面(または、透明基板)および出口面(または、透明基板)からなる、アクティブ領域を備える。
【0028】
各光素子は、少なくとも一つの透明な第一の電極と、少なくとも一つの透明な対向電極(または、第二の電極)とを、含む。
【0029】
アクティブ領域を貫通する接続トラックがないように、電極に対する電気接続を、各光素子の周辺領域に、配置する。
【0030】
可能性のある実施の形態によれば、第一の電極の各セクションと第二の電極との間に、異なる強度で電場を生成するように、装置が構成されるように、光素子の少なくとも一つの第一の電極は、セクションに分割される。
【0031】
各光素子の電極の異なるセクション間に電位差を印加することで、各光素子のアクティブ領域の異なる領域において転換の度合いを変える、異なる電場が生成されるように、装置は構成され、これにより、装置の光素子の各々において、変化するOPLプロファイルを生成する。このことは、第一の電極のセクションに印加される電場のパターンに応じて、トポロジカルチャージおよび入射光ビームの焦点を、構成する。
【0032】
可能性がある実施の形態によれば、光素子は、対応する電極を有する液晶セル(または、重合性液晶セル)である。液晶の代替えとして、光素子は、他の電気光学材料(電場の存在で、屈折率を変える能力を有する)と、対応する電極とから、構成されてもよい。
【0033】
よって、各光素子の異なる領域の屈折率を局所的に変えることができる、部分的な転換(電極のセクションの数および配列に依存して)が存在する。
【0034】
可能性のある実施の形態によれば、対向電極も、セクションで分割される。この場合において、両方の電極は、各セクションにおいて異なる電位を有するように、および、各セクションにおいて等しい電位を有するように、構成される。第一の電極のセクション分布は、対向電極のセクション分布と、異なっていてもよく、よって、異なる方法で、トポロジカルチャージおよび入射光ビームの焦点を変化させる、光路プロファイルの二つの独立したセットを生成するために、装置を再構成(調整)することができる。
【0035】
対向電極がセクションに分割されない光素子、または、対向電極がセクションに分割される光素子、または、一つがセクションに分割された対向電極を有し、他のものがセクションに分割されない対向電極を有する、一連の光素子は、直列に配置されてもよい。
【0036】
可能性のある実施の形態によれば、光素子は、可変らせん回折レンズとして、機能する。印加されるパターンに依存して、光路は、焦点距離およびトポロジカルチャージと共に、生成される。よって、電場の適正な第二のパターンの印加で、光素子の光路プロファイルは、第二の焦点距離および第二のトポロジカルチャージを有する、らせん回折レンズのそれと対応する一方で、電場の適正な第一のパターンの印加で、光素子の光路プロファイルは、第一の焦点距離および第一のトポロジカルチャージを有する、らせん回折レンズのそれと対応する。
【0037】
他の可能性のある実施の形態によれば、1対の光素子は一緒に作動し、可変回折レンズを模倣する。
【0038】
他の可能性のある実施の形態によれば、1対の光素子は一緒に作動し、可変アキシコンを模倣する。
【0039】
他の可能性のある実施の形態によれば、1対の光素子は一緒に作動し、可変らせん回折レンズを模倣する。
【0040】
他の可能性のある実施の形態によれば、1対の光素子は一緒に作動し、次のシステムの少なくとも二つの組合せを模倣する、レンズ、アキシコン、またはらせん位相プレート。
【0041】
よって、対応する電場の印加で、直列に配置された隣接する光素子の少なくとも一つの光路プロファイルは、らせん回折レンズのそれと対応することができ、直列に配置された残りの隣接する光素子の少なくとも一つの光路プロファイルは、らせん位相プレートのそれと対応してもよい。
【0042】
特定の実施の形態によれば、直列に配置された二つの隣接する光素子の第一の電極は、セクションに分割され、光素子の第一の電極のセクションの分配は、隣接する光素子の第一の電極のセクションの分配のミラーイメージである。
【0043】
よって、対応する電場の印加で、直列に配置された二つの隣接する光素子の転換プロファイルは、反対のトポロジーを有する二つのらせん回折レンズのそれと対応し、素子の組合せは、回折レンズを模倣する。
【0044】
他の特定の実施の形態によれば、対応する電場の印加で、直列に配置された二つの隣接する光素子の転換プロファイルは、二つのらせん回折レンズのそれと対応する。好ましくは、両方のらせん回折レンズは、お互いの間に空間を有するように、直列に配置され、これにより、両方レンズの焦点距離は一致し、調整可能なテレスコープまたはビーム拡大器として、それらを機能させることができ、トポロジカルチャージおよびレンズの焦点を変え、光素子の電極のセクションに適正なパターンの電場を印加する。
【0045】
他の特定の実施の形態によれば、第三の素子を前の実施の形態に付加することにより、素子の組み合わせは、結果として、光のトポロジカルチャージに影響を及ぼさない装置となる。
【0046】
可能性のある実施の形態によれば、少なくとも一つの光素子の少なくとも一つの電極は、隣接する液晶の転換の度合いに依存して変化することができる、電磁気共振周波数を有する構造を、含む。
【0047】
一つの可能性のある実施の形態によれば、電極は、テラヘルツ、ミリメートル波、およびマイクロメートル波レンジ内の周波数に対して、電磁気共振周波数を有するポールの形状をとる。ダイポールに対する分極場の印加で、位相プロファイルは、これらの周波数に対して生成されることができ、また、当該位相プロファイルは、光ビームの形態に対して生成される。
【0048】
本発明は、設定可能な光装置を製造する方法を、同様に考察する。
【0049】
当該製造方法は、光素子または直列に配置された様々な光素子を、配置することを、備える。各光素子は、光ビームの入口面と出口面とからなるアクティブ領域を、備える。各光素子は、少なくとも一つの透明な第一の電極と、少なくとも一つの透明な第二の電極とを、備える。各光素子は、電極に対する電気的な接続を有し、当該電気的な接続は、アクティブ領域外側の各光素子の周辺領域内に、配置される。装置の光素子の各々は、入射光ビームのトポロジカルチャージを変化させる。当該製造方法は、各光素子の電極間に、電位差を印加することを、備える。よって、光素子の屈折率を変える電場を生成し、よって、装置の光素子の各々に、選択的な転換プロファイルを生成し、よって、入射光ビームのトポロジカルチャージを変化させる各光素子の光路プロファイルを変える。
【0050】
好ましくは、当該方法は、光素子が液晶レンズであることを想定し、各レンズは、少なくとも一つの第一の電極と少なくとも一つの第二の電極との間に配置される、液晶セルからなる。
【0051】
また、好ましくは、当該方法は、レンズの液晶は重合性(反応性メソゲン(RM)としても知られている)であることを、想定している。その結果、当該方法は、重合性液晶を硬化する(curing)(UV照射の手段または他の硬化方法により)可能性を備え、固定または部分的に調整可能な位相を有する変化プロファイルを伴う回折装置を、得る。
【0052】
可能性のある実施の形態によれば、上記方法は、直列に配置された二つの隣接する光素子の電極間に、電場を印加することを備え、二つのらせん回折レンズのそれと対応する、二つの隣接する光素子の転換プロファイルを、生成する。同様に、可能性のある実施の形態によれば、上記方法は、両方のらせん回折レンズを、互いの間に空間を有するように、直列に配置することを備え、これにより、両方のレンズの焦点距離が一致し、これにより、それらを、調整可能なテレスコープまたはビーム拡大器として、機能させることができ、レンズのトポロジカルチャージを変える。
【0053】
装置は、1以上の直列の液晶セルに基づいており、構成された電極が設けられており、これにより、全ての電極がセルの外周からアクセス可能であり、それ故独立して方向づけされることができる。本発明の部分である電極の特定のデザインにより、再設定可能なレンズが可能となり、波面補正器を製造することができる。
【0054】
本発明の装置オブジェクトは、航空宇宙、健康、安全、輸送、通信産業などの、異なるタイプの産業に対する光装置のデザインおよび商業化の分野での適用を、有する。
【0055】
液晶とは別に、電気光学効果を有する他の材料が存在する。ここで、電場が印加されるとき、材料の光学異方性が変化する。これらの材料において、屈折率は、当該場の方向に増加し、垂直な方向で減少する、(逆もまた同様に)傾向がある。本発明では、たとえばニオブ酸リチウムのような電気光学効果を有する材料により、またはポッケルスやカー効果を呈する液体により、LCsを置換することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、この文脈内で提示される。本発明は、アクティブエリアの外周から方向づけされる、任意の数のピクセルを有するプロファイルのLCレンズを生成することができる、様々な形状を有する電極により形成される、透明装置である。当該装置は、現在の装置を超えた複数の利点を有する(最高分解能SLMsと異なり、透明である。アクティブエリアに電極要素を欠く。電極の相互接続又は領域内の重複なしに、任意の数の個々のピクセルより、方向づけされる。電極間のギャップのみにより制限される、なかり高い曲線因子を有する。本質的に、エイリアシングを欠く。)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
装置の少なくとも一つの好ましい実施の形態の説明の一部として、例示および非限定の方法により次のものを示す以下の図が、盛り込まれる。
【0058】
【
図1】代表的な(クラッシックな)液晶(LC)セルの概略を示す図である。
【
図2】第一の電極がセクションに分割され、LCが正の誘電率異方性を有する、液晶セルの概略を示す図である。
【
図3】第一の電極がセクションに分割され、LCが負の誘電率異方性を有する、液晶セルの概略を示す図である。
【
図5】ネマチックLCコミュテーション(commutation)の異なる度合い(
図2および3)が、紙面の同じ面内に線形的に偏光された入射光ビームを持っている効果を概念的に示す図である。
【
図6】
図4で示したものと同様なブルー相LC装置における、
図5で示したものと同一の状況を示す図である。
【
図7】相(フレネルレンズ)(C)における回折レンズの例、当該相における厚レンズ(A)のそれと同等である回折レンズの効果を、示す図である。
【
図8A】トポロジカルチャージ1でのらせん位相プレート(SPPs)の例を模式的に示す図である。
【
図8B】トポロジカルチャージ2でのらせん位相プレート(SPP)の例を模式的に示す図である。
【
図9A】トポロジカルチャージ1で双曲ラジカル位相変化が導入された、らせん回折レンズ(SDL)を示す図である。
【
図9B】トポロジカルチャージ2で双曲ラジカル位相変化が導入された、らせん回折レンズ、SDL、を示す図である。
【
図10A】
図9Aのらせん回折レンズ(SDL)と直列にある、光渦を生成するらせん位相プレート(SPP)から成る、実施の形態を示す図である。
【
図10B】
図9Bのらせん回折レンズ(SDL)と直列にある、光渦を生成するらせん位相プレート(SPP)から成る、実施の形態を示す図である。
【
図13A】トポロジカルチャージ1で渦を生成するために使用される単純化された8-電極構造を示す図である。
【
図13B】トポロジカルチャージ2で渦を生成するために使用される単純化された8-電極構造を示す図である。
【
図14A】トポロジカルチャージ1でらせん回折レンズ(SDL)を生成するための単純化された8-電極構造を有する回折レンズを示す図である。
【
図14B】トポロジカルチャージ2でらせん回折レンズ(SDL)を生成するための単純化された8-電極構造を有する回折レンズを示す図である。
【
図15A】トポロジカルチャージ1および-1で、直列にある二つのらせん回折レンズを示す図である。
【
図15B】トポロジカルチャージ2および-2で、直列にある二つのらせん回折レンズを示す図である。
【
図17A】トポロジカルチャージ1および-1で、二つの異なるらせん回折レンズを直列に結合した様子を示す図である。
【
図17B】トポロジカルチャージ2および-2で、異なるらせん回折レンズを直列に結合した様子を示す図である。
【
図19A】
図14Aで示されたものと同様であるが、よりねじれたらせんパターンを有する、らせん回折レンズ構成を示す図である。
【
図19B】
図14Bで示されたものと同様であるが、よりねじれたらせんパターンを有する、らせん回折レンズ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
上記したように、本発明は、設定可能な光装置に関する。
【0060】
装置は、光素子、または、好ましくは、複数の電極(4,5)を有するLCセルである1対の光素子(1)に、基づく。
【0061】
各LCセルは、透明である電極(4,5)と共に、二つの透明基板(1.b.1および1.b.2)の間に挟まれたLC(1.a)を有する、代表的な(classic)LCセル(
図1参照)のように構成され、配向層または配向剤(1.d.1および1.d.2)と共に取り扱われる。
【0062】
電場が、対向電極(5)または上部電極(図に示すように)と、第一電極(4)または下部電極(図に示すように)との、間に印加されると、LCは、材料の粘度、表面層(1.d.1および1.d.2)のアンカリング力、LC(1.a)の厚さ、および電場の強度に依存して、あるポイントまで配向する。
【0063】
任意のコミュテーション(転換、commutation)プロファイルを生成するために、電極の少なくとも一方は、複数のセクション(41)へと分離され、電極(41)の各セクションと対向電極(5)との間に、適切な電場を印加する。
【0064】
図2,3,4は、正のネマチックLC(
図2内の2.a)、負のネマチックLC(
図3内の3.a)、およびブルー相LC(
図4内の4.a)における、3つの異なるコミュテーション電圧(V1<V2<V3)に対応する、3つの異なるコミュテーション状態を、示している。各図において、bおよびdで示された層は、電極層(4,5)と共に、
図1における
光素子(1)の層と類似している。LCの当該状態は、楕円(楕円率は、異方性の度合いを示す)により示されており、配向は、光軸の巨視的な配向を示している。
【0065】
ネマチックセル(
図2および3)の配向層(d)は、正の誘電率異方性を有する液晶の場合(
図2)におけるホモジニアス配向と、負の誘電率異方性を有する液晶の場合(
図3)におけるホメオトロピック配向を生成するために、条件付けされる。よって、LCのコミュテーションは、基板に対して垂直な平面内で(紙面の平面における
図2および3内で)、起こる。ブルー相LCに対しては、配向層(
図4におけるd)は、本質的ではない。
【0066】
図5は、ネマチックLCのコミュテーションの異なる度合い(
図2および3)が、紙面の同じ面内に線形的に偏光された入射光ビームを有する、効果を示す。光は、等方性媒体(5.I)から衝突し、異方性媒体(5.II)を通過し、新たな等方性媒体(5.III)へ出射する。仮に、電極(41)のセクションの寸法が十分に小さいなら、光は、入射方向からわずかに外れた方向において、再結合する。水平な又はほぼ水平な実線は、平面入射波を仮定しているビームの進行を、示している。
【0067】
図6は、
図4で説明したブルー相LC(6.II)を有する装置内における、
図5と同じ状況を示している。この場合において、入射ビームは、偏光されることは、必要ではない。
【0068】
本発明の装置は、光素子(1)、または様々な光素子(1)、または直列に組立てれたLCセルから、構成される。それらの各々は、相対位相差の空間分布を、入射波面に導入する。誘導された位相差は、0~360°または0~2πラジアンの範囲と同等である、0から全波長(λ)までの範囲である。問題になっている発明の実施の形態によれば、LCセルは、結合されることができ、またはある距離だけ話されることもできる。第二の場合において、セルは、テレスコープやビーム拡大器のような合成光学素子を、模倣することができる。
【0069】
各セルは、らせん回折レンズ(SDL)またはらせん位相プレート(SPP)と同様に、機能する。プレートの形状におけるこれらのレンズにおいて、2πラジアンの倍数のラグ間の位相等価が、使用され、このことにより、2πのラグと同等な間隔における、装置の光学厚さを低減することが可能となる。
図2,3,4で示された例におけるように、位相差は、物理厚さ-周知のフレネルレンズの微視的バージョン-、または有効屈折率を、偏光することにより、達成されることができる。
【0070】
図7は、位相(C)を有する回折レンズの例を示しており、当該位相におけるその効果は、厚レンズ(A)のそれと同等である。λ/(n1-n2)の厚さである、セクション(B)に、レンズは切断される。ここで、n1は、材料の指標であり(典型的に、ガラスは、n1≒1.5)、n2は、囲繞している媒体の指標である(典型的に、空気は、n2≒1.0)。
【0071】
当該回折レンズは、0~λまでの空間OPL変化を有するが、第一の近似において、より大きなOPL変化を有する厚レンズと同じ働きを有する。
【0072】
回折レンズの異なる点を通って伝搬する波面の異なる領域間における、相対位相ラグδは、(2π/λ)・(n1-n2)・dである。ここで、dは、厚さである。各セクションは、0とλ/(n1-n2)との間の厚さdに対する0と2πとの間の、相対ラグδを生成する。
【0073】
図7に示す場合において、ラグまたはOPLの差は、異なる媒体内の異なる特性内を伝搬する波面から、生じる(典型的に、空気および、ガラスまたはプラスチックレンズ)。
【0074】
同じ空間OPL変化は、平行な面を有するフラット装置によって、達成されることができる。ここで、dは一定であるが、上記それらと同等なセクションにおける屈折率の空間分布が、存在する。
【0075】
現在、提案された装置に適用することが最も簡単な電気光学材料は、電場により転換された(commutated)LCであるが、LCの状態は、磁場または熱の手段によっても、変更させることができ、同じ効果を達成する。
【0076】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはポッケルスやカー効果を示す液体などの、代替の材料も存在する。当該代替の材料は、電気光学的であり、その屈折率を、電場の印加により、変えるまたは再配向することができる。
【0077】
典型的にはLCから成る、再構築可能な
光素子(1)、または、典型的には、LCからなり、直接であり、互いに付着され、またはある距離で配置された、様々な再構築可能な
光素子(1)により、形成された光装置に、本発明は関する。素子は、外部制御により変更することができる、ある可変の光学特性を保有する。LC素子は、らせん回折レンズ(SDL)であり、そのトポロジカルチャージおよび焦点距離は、再構築可能である。素子の焦点距離を、有限または無限であるように、設計することができる。仮に、焦点距離が無限であるなら、SDLは、
図8で示したもののように、らせん位相プレート(SPP)へと変換する。これらのプレートの電極(41)のセクションは、非らせん円形セクターの形を有する(
図13Aおよび13B)。SPPプレートの名前は、位相ラグにより適用されるらせんプロファイルを受けている。
【0078】
有限の焦点距離を有するらせん回折レンズSDLは、LCセルにより製造され、電極(41)のそのセクションは、らせんセクタの形状を有する。各セクション(41)は、中心にとても近い原点を有し、外部周辺領域に近づくにつれて、広くなり、さらに回転する。独立したコンタクトでの直接励起により、外部制御電子機器に接続されることができるように、電極(41)の全てのセクションは、周辺領域に達する。
【0079】
電極(41)のセクションのらせん形状は(
図14Aおよび14B参照)、二つの直列のLC素子の振舞いの結果として生成された、波面の歪を決定する。二つの直列のLC素子を有する装置は、電極(41)のセクションの数に依存した忠実性で、従来の位相(
図7C)を有する回折レンズを模倣することができる。素子の無限数は、理想的な位相を有する回折レンズを正確に模倣するために、必要とされる。電極(41)のセクションの数が多くなるほど、より近似が達成される。
【0080】
以下、本発明の異なる実施の形態について、説明する。
【0081】
第一の好ましい実施の形態は、二つの直列の素子から成る。
【0082】
この実施の形態において、
図8Aおよび8Bに示すように、再構築可能な方位可変位相プロファイルと共に、LCセルの一つは、らせん位相プレート(SSP)である。より明るい領域は、2πラジアンの差を表す一方で、最も暗いシェーディングは、ゼロラジアンの位相差に対応している。図で示されているパターンは、トポロジカルチャージ1(
図8A)および2(
図8B)で光渦を生成する、ラグプレートに対応する。
図8Aおよび8Bで示されているパターンは、同じ素子の二つの構成である。
【0083】
この実施の形態の他の再設定可能なLC素子は、0と2πラジアンとの間の位相ラグプロファイルを生成する目的で、異なる電圧で励起される電極(41)の多数のセクションによって形成される、らせん構成要素を有する。
【0084】
図9Aは、素子が、トポロジカルチャージ1で双曲ラジカル位相変化を導入する、らせん回折レンズ(SDL)構成にある、ことを示す。
図9Bの同じ素子の構成において、ラジカル位相変化も双曲であるが、トポロジカルチャージは、2であり、焦点距離は、
図9Aのそれの半分である。一般的に、焦点距離がより小さく、各らせんの回転がより大きい一方、トポロジカルチャージは、らせんの数によって、決定される。前の項目内であるように、グレースケールレンジは、0(黒)から2πラジアン(白)までの範囲のラグを示す。
図9Aおよび9Bに示されたパターンは、同じ素子の二つの構成である。
【0085】
図10は、らせん回折レンズ(SDL)と直列にある、光渦を生成するらせん位相プレート(SPP)から成る実施の形態を、示す。光路と通常一致する中心軸が、示されている。二つの説明された構成は、
図10Aおよび10Bに、現れる。
【0086】
図9Aのらせん回折レンズと
図8Aのらせん位相プレートとを直列に配置することにより、
図11Aに示された位相プレートと同等の位相ラグが生成される。同様に、
図9Bのらせん回折レンズと共に、
図8Bのらせん位相プレートにより、
図11Bの位相プレートと同等のラグが生成される。
図11AおよびBの位相ラグは、0(黒)から4πラジアン(白)までの範囲にある。
【0087】
図11内の分布を2πセクションにスライスすることができ、
図7A内のレンズと類似する態様で、2πラジアンの倍数のラグ間で位相等価性を活用する。結果として、
図12の位相分が得られる。
図12AおよびBの位相ラグは、0(黒)から2πラジアン(白)までの範囲にある。
【0088】
図12の二つの位相差マップは、
図9のらせん回折レンズ(SDL)の定義の基礎となる双曲位相変化を伴う位相を有する、回折レンズに対応する。それゆえに、当該マップおよび、結果として二つの構成は、異なる焦点を伴う位相を有する、二つの回折レンズに対応する。
【0089】
図8に示された、光渦を生成するらせん位相プレートを模倣するために、両方の構造に共通する各部(angular sections)(41)状態にある電極の幾何学的形状を、用いることができる。
図13は、トポロジカルチャージ1(
図13A)および2(
図13B)を生成するために使用される、電極(4)の8セクションの単純化した構成を、示す。
図13のグレースケールは、電極に印加される、異なる電場の強度を、表している。印加される場が大きいほど、グレーのレベルがより明るくなる。
【0090】
同様に、
図9のらせん回折レンズ構成は、
図14に示すように、電極(41)のセクションの共通幾何学形状に、同じく近似することができる。前のケースにあるように、電極(41)の8セクションを有する単純化した構成を、トポロジカルチャージ1(
図14A)および2(
図14B)を生成するために、使用する。LCセルの等距離位相差を生成する目的で、
図14のグレースケールは、電極(41)のセクションに印加される、異なる電場の強度を、表している。印加される場が大きくなるほど、グレーのレベルは、より明るくなる。
【0091】
図14のアクティブエリアは、らせん領域まで、減少される。外部分は、両トポロジに方向づけされた電極(41)の8セクションを観測するための、単なる視線誘導であり、電極(41)のセクションの接続領域である可能性がある。
【0092】
二つの直列のLCセル、
図13の電極(41)のセクションのパターンを有するもの、および、
図14のパターンを有する他方のものを、組合せることにより、
図12に示したものと同様の回折レンズとして機能する装置が、達成される。焦点距離は、二つ以上の値の間で、変化されることができ、電極(4)のセクションの各々に印加される電圧を変更する。
【0093】
達成されることができる異なる焦点距離の数は、両パターンを含む電極(4)のセクションの数によって、決定される。同様に、電極(4)のセクションの数は、より高い又はより低い忠実性を確立する。当該忠実性で、電極の離散パターンは、理想的な類似の位相変化を、再現する。図の例において、8電極のみが、簡単化のために、使用されてきた。本発明の実際の装置は、一般的に、数十又は数百の電極(41)のセクションを、含む。
【0094】
第二の好ましい実施の形態は、再設定可能ならせん回折レンズを形成する、電極(41)のセクションを有する二つのLCセルにより、形成される。その基本的な特徴は、セルが反対のトポロジカルチャージを有することである。それらの他方が、反時計回りにおいて、位相差を増加する一方で、それらの一方は、時計回りにおいて、位相差を増加する。二つのレンズは、同じトポロジカルチャージと焦点距離で、設計される。トポロジカルチャージは相殺し、こうした理由で、結果として生じる位相は、角運動量を欠く。当該態様で、再設定可能であるという利点および周辺領域(3)又は外側部分における電極(41)のセクションの接続と共に、従来の回折レンズのように振舞う回折レンズを得、アクティブ領域(2)又はエントリー面およびアウトレット面を有する内部部分を、自由にし、さらに接続および電機構成要素がない状態にする。
【0095】
図15は、二つの直列のらせん回折レンズを示す。
図15Bのレンズは、トポロジカルチャージ2および-2を有するように構成されている一方で、
図15Aのレンズは、トポロジカルチャージ1および-1を有するように構成されている。
【0096】
2πラジアンの倍数のラグ間の位相等価性を利用し、
図15Aのらせん回折レンズを直列に結合し、出している位相差のマップを2πセクションにスライスすることにより、それらは、
図12で示したものと類似の位相差分布(16A)を、生成する。同様に、
図15Bのらせんレンズは、
図16Bに示す分布を、生成する。
【0097】
第一の好ましい実施の形態と類似の態様で、
図14に示すように、異なる電場を印加することにより、電極(41)のセクションの同じパターンで、
図16の両方の構成を達成することができる。
【0098】
直列の組立てでセルの一つを回すという条件で、二つの等しい面を互いに対面させることにより、第二の好ましい実施の形態の二つのLCセルは、同一となり得る。これにより、らせんの回転の方向は逆転し、トポロジカルチャージのサインが各セルで反対にする。
【0099】
第三の好ましい実施の形態において、二つの再設定可能なLCセルは、反対のトポロジカルチャージで構成される直列で、使用される。換言すれば、それらは、時計および半時計方向で、それぞれ位相を増加する。セルは、らせん回折レンズとして構成された電極(41)のセクションを、有する。第二の好ましい実施の形態とは異なり、らせんの数-および結果としてトポロジカルチャージ-は、同じであるが、らせんは、同じ焦点距離を生成するようには、必ずしも調整されない。よって、出ているビームは、誘導角運動量なしに、位相差プロファイルを有する。
【0100】
上記の二つの好ましい実施の形態は、これの特定のケースである。第一の実施の形態は、極端なケースであり、LCセルの一つは、無限焦点距離を有するらせん回折レンズであり、換言すれば、らせん位相プレートである。第二のものは、両方のレンズの焦点距離が同じであるケースである。
【0101】
図17は、2バイ2(tow by two)に等しいトポロジカルチャージであるが、異なるサインで、異なるらせんレンズを示す。セルの各々は、可変焦点距離を有する。
図17Aは、トポロジカルチャージ1および-1で各々構成された二つのセルを、示す。レンズを直列に配置することにより、位相差の分布が生成され、仮に、
図12に示したもののように2πセクションにスライスされるなら、それは、
図18Aに示すもののようならせん回折レンズを生成する。
【0102】
図17Bは、トポロジカルチャージ2および-2で各々構成された二つのセルを、示す。レンズを直列に配置することにより、位相差の分布が生成され、仮に、
図12に示したもののように2πセクションにスライスされるなら、それは、
図18Bに示すもののような回折位相を有するレンズを生成する。
【0103】
当該第三の好ましい実施の形態において、二つのLCセルのアクティブ電極(41)のセクションのパターンは、一般的に異なる。たとえば、セルの一方は、
図14に示すもののようなパターンを有することができ、他方は、
図19で示したもののような、異なる、よりねじれたパターンを有することができる。ノンゼロトポロジカルチャージに対して、
図19の素子により生成されたらせんレンズは、
図14の等価レンズよりも短い焦点距離を、有する。
【0104】
第四の好ましい実施の形態において、装置を形成するLCセルは、補完トポロジーを、必ずしも有するわけではない。結果として、等価らせん回折レンズは、二つのセルの合計のトポロジカルチャージを有するプレートである。当該実施の形態は、トポロジカルチャージが、その機能特性と関係のないシステムにおいて、適用性があってもよい。それは、中心特異点、トポロジカルチャージを有する光ビームの特徴を維持することが、重要であるシステムにおいて、また有益である。このような場合において、明らかに、トポロジカルチャージのキャンセルは、適切ではない。
【0105】
上記3つの好ましい実施の形態は、これの特定のケースである。
【0106】
第五の好ましい実施の形態において、従来の連続電極(5)又は本発明で述べた従来の電極のパターンは、液晶の励起および位相差の結果生成に、とって代わる。電極は、相互接続した共振ポールのマトリックスにより、置換される。WO 2012080532 A1に説明されているように、これらのポールは、典型的に、マイクロ波領域(GHzまたはTHz)の周波数で、共振する。
図1で描かれたもののように、装置の構造は、同じままであり、装置は、上記で示されたものと同じ種類の位相変位パターンを、生成する。
【0107】
基本的な相違は、電磁波と装置との間の相互作用にある。前の実施の形態にあるように、可変インデックスを有する材料を通過するとき、位相変位は、電磁波のラグの結果でないが、可変共鳴を有する周波数で、電磁波とダイポール(または、電極のセクション)との間の相互作用の結果である。ダイポールまたはダイポールのセットの共振周波数を変えることにより、電磁波に導入される位相変位を変える。ダイポールの共振周波数-および結果として、ダイポールにより導入された位相ラグ-は、隣接するLCの転換状態により決定される。前述の特許にあるように、LCの転換状態は、共振ダイポールを、低周波数AC電機信号および所望の電圧に接続することにより、制御される。
【0108】
前の実施の形態に一致して、電極(4)のセクション(41)に対応する全てのダイポールは、LCの単一転換状態により、排他的に特徴づけられる。ダイポールは、上記で示された電極(4)と同等の領域で、相互接続され、分配される。
【0109】
全ての前述の実施の形態において、二つの光素子(1)又はレンズを、ノンゼロ距離で配置する、可能性がある。
【0110】
第六の好ましい実施の形態によれば、二つのらせん回折レンズ(SDLs)は、所定の距離で配置され、これにより、両方のレンズの焦点距離は、一致する。両素子のトポロジカルチャージを変え、結果として焦点距離を変えることにより、両装置間の焦点距離の一致点の位置を、変えることができる。よって、調整可能な望遠鏡またはビーム拡大器、またはより複雑な光装置を、生成することができる。望まれるなら、残った残存トポロジカルチャージを、3番目の光素子(1)、たとえばらせん位相プレートを含めることにより、除去することができる。
【0111】
第七の好ましい実施の形態は、全ての最も単純な実装であるが、出ているビームのトポロジカルチャージが関係ない環境に、適用されることができるのみである。これは、US 005408281 Aにあるもののような、眼内レンズの場合であってもよい。当該実施の形態は、上記で説明された特定の電極デザインおよび焦点調整装置としての最終的な適用とともに、単一素子からなり、特に、再設定可能な焦点を有するレンズの生成は、革新的な貢献を表す。
【0112】
LC装置は、一般的に、セルの第一の電極(4)(または、第一のプレート)における電極(41)のセクションのパターンと、対向電極(5)またはセルの反対部にある連続電極とを、有する。当該対向電極(5)(または、第二の電極)は、地板として知られており、一連の
図2,3,4に示されている。
【0113】
第八の好ましい実施の形態は、第五の実施の形態を差し引いた、前の実施の形態の素子のバリエーションである。当該差は、まさに、同じ
光素子(1)(
図2,3,4)における第一の電極(4)のように、1以上の素子の対向電極(5)がセクション(41)で分割される、という事実にある。しかし、対向電極(5)におけるセクションのパターンは、第一の電極(4)におけるセクション(41)のパターンとは、異なる。
【0114】
当該態様において、電極の一方(4または5)は、
図14のもののような、らせんレンズに対応するパターンを有してもよく、同じセルの隣接する電極の他方(5または4)は、
図19のらせんレンズに対応するパターンを有していてもよい。
【0115】
電極(4および5)の二つのパターンを、同じセル内に有するなら、どの再設定可能ならせんレンズ構成が達成されるかを、ダイレクティングにより選ぶことができ、同じ電圧で互いに接続されたその全てのセクションを有するセルの、対向電極(電極(5または4))のらせんを残す。
【0116】
第九の好ましい実施の形態において、1以上の素子は、重合性液晶で充たされる。電場が印加される(通常、UV光の手段により)一方で、このことにより、装置は、電場で調整されることができ、硬化されることができ、これにより、ひとたび、液晶が重合化されると、固定レンズプロファイを得る。LCがひとたび重合化されると、かなり精密なレンズとして、セルからレンズを取り除くことができ、そのため、当該実施の形態における電極(4および5)は、必ずしも透明である必要がない。
【0117】
当該実施の形態は、トポロジカルチャージの有無にかかわらず、他の固定または調整可能な光素子と接合されるように使用されることができる、固定レンズを製造する革新的な方法を表す。
【0118】
1以上のLC素子において、電極(4)または両電極(電極および対向電極)のセクション(41)の形状は、名目上の焦点距離に関し、および、球面収差において、レンズの特徴を決定する。双曲、球または他の二次のプロファイル、またはアキシコンを有するレンズを生成することは、自明である。電極のセクションを適切にデザインすることにより、球または他の収差を導入することも、可能である。
【0119】
よって、第一の電極(4)またはアクティブ電極を設計するためのプロセスは、次のようになる。
【0120】
適切なら、レンズは、所望のプロファイルで規定され、収差を含む。
【0121】
当該レンズは、0~2πセクションにスライスされ、回折レンズに対応する。
【0122】
所望のトポロジーの光渦として構成されたらせん位相プレートを、当該回折レンズから、差し引く。
【0123】
結果のらせん回折レンズは、0~2π間隔で、再度、スライスされる。
【0124】
アナログバリエーションは、使用されるであろう個々のセクション(41)の数に従って、離散化される。
【0125】
個々のセクション(41)の各々は、LCセルの周辺から中心へと、延びる(セクションは、連続またはダイポールセットであってもよい)。
【0126】
個々のセクション(41)の各々に対して、接触領域は、アクティブ領域の外側で規定される。
【0127】
二つの電極は、適切な配向層または配向剤により、製造され、取り扱われる。
【0128】
セルは、少なくとも一つ、または可能性として、所望のパターンを有する二つの電極(4および5)により、組立てられる。
【0129】
セルは、適切な複屈折率を有する所望の液晶で充たされ、密封される。
【0130】
電機接続を、電極の数に適するようにする。
【0131】
らせん回折レンズも光渦を生成するらせん位相プレートも、必ずしも同じである必要ないが、関連するなら、同様の態様で製造された他のセルと直列となるように組立られる。
【0132】
結果は、LC素子、または、互いに結合されて動作する、様々な再設定可能なLC素子である。ここで、それらの各々およびアセンブリは、再設定可能な、自身のトポロジカルチャージおよびレンズプロファイルを有する、らせん回折プレートとみなさなければならない。