(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】布生地へのプリント方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241106BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20241106BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20241106BHJP
【FI】
G06F3/12 342
G06F3/12 362
G06F3/12 319
A41H43/00 D
G06F30/20
(21)【出願番号】P 2023218783
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-01-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500460472
【氏名又は名称】精巧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】近江 誠
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-071878(JP,A)
【文献】特開平10-230626(JP,A)
【文献】特開2000-336513(JP,A)
【文献】特開2021-161574(JP,A)
【文献】特開2005-188015(JP,A)
【文献】特開2017-076400(JP,A)
【文献】特開2021-056838(JP,A)
【文献】特開平10-124574(JP,A)
【文献】特許第6958885(JP,B1)
【文献】特開2000-187683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
A41H43/00
A41H3/00-3/08
G06F30/10;30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施される被服用の無地の生地にプリント柄をプリントする方法において、
アパレル製品用の3Dモデリングソフトを使用し3Dモデルデータに被服を着装したシミュレーションを行うことにより、プリント柄を選択しながらプリント柄を含めた被服全体のデザインを決定するデザイン決定手段と、
決定したデザインを構成するパターンを3Dモデリングソフトのグラフィック3DデータをDXF化して2Dパターンデータとして3Dモデリングソフトに保存するパターン形成手段と、
パターン
形成手段のパーツそれぞれに合わせ
てプリント柄の位置をコンピュータが指定する柄位置指定手段と、
プリント柄が指定された各パーツを生地のサイズに合わせて生地の切り残しが最小限になるように配置するパーツ配置手段と、を実行し、
生地用プリンターを使用するプリント手段にてパーツ配置手段で配置したプリント柄をパターンのパーツと共に無地の生地に直接印刷することを特徴とする布生地へのプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被服用の生地へ柄等をプリントする際に、生地やインクを合理的に使用することができる布生地へのプリント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被服用の無地の生地へ柄等をプリントするには、予め1枚の生地1全体にプリントを施した後に型紙の各パーツ2を設定する(
図12参照)。そのため、生地1のパーツ2以外の部分までプリントされるので不必要なインクを使用する不都合があった。しかも、各パーツ2を切り離した後の生地にもプリントが施されているので、切り残された生地の再利用も困難になる。
【0003】
また、各パーツに柄位置の指定がある場合や、プリントされた生地の上下方向が指定されている場合には、パーツの向きも生地の上下に合わせる必要があることから、占有率が悪くなり、不必要なプリントに費やすインクや切り残る生地の量が増加する不都合もあった。
【0004】
一方、従来では、体躯モデルの3次元データを使用して型紙を効率的に形成する方法等が特許文献1乃至3に提案されている。
【0005】
特許文献1は、布地に応じた型紙形状を算出することで、衣類を構成する布地の特性が反映され短時間で型紙形状を算出する衣類の型紙作成方法である。
【0006】
また、特許文献2は、2次元衣服型紙データを3次元人台データに配置することで情報入力の効率化を高める方法である。
【0007】
更に、特許文献3は、模擬着圧が目標着圧に略同じなるようにユーザ型紙データを修正して確定する着圧シミュレーション処理部によりユーザが求める着圧を実現する型紙作成装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-246219号公報
【文献】特開2007-138317号公報
【文献】特開2014-71878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、体躯モデルの3次元データを使用して型紙を形成する従来の方法では、柄等を生地へプリントする際の効率まで考慮されるものではなかった。そのため、型紙を効率的に形成することは可能でも、無地の生地へ柄等をプリントする際に、生地やインクを合理的に使用する方法はこれまで提案されていなかった。
【0010】
すなわち、プリント柄の被服を製造する際の生地へのプリントは、予め1枚の生地全体にプリントを施した後、型紙等で各パーツを選択するといった旧態依然の手法が採られており、不必要なプリントに費やすインクや、切り残った再生困難な生地は変わらず生じている。
【0011】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく案出されたもので、被服用の生地へ柄等をプリントする際に、インクや生地を合理的に使用することができる布生地へのプリント方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、コンピュータによって実施される被服用の無地の生地1にプリント柄3をプリントする方法において、アパレル製品用の3Dモデリングソフトを使用し3Dモデルデータに被服を着装したシミュレーションを行うことにより、プリント柄3を選択しながらプリント柄3を含めた被服全体のデザインを決定するデザイン決定手段10と、決定したデザインを構成するパターンを3Dモデリングソフトのグラフィック3DデータをDXF化して2Dパターンデータとして3Dモデリングソフトに保存するパターン形成手段20と、パターン形成手段20のパーツ2それぞれに合わせてプリント柄3の位置をコンピュータが指定する柄位置指定手段30と、プリント柄3が指定された各パーツ2を生地1のサイズに合わせて生地の切り残しが最小限になるように配置するパーツ配置手段40と、を実行し、生地用プリンター6を使用するプリント手段50にてパーツ配置手段40で配置したプリント柄3をパターンのパーツ2と共に無地の生地1に直接印刷するプリント方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、プリント柄3が指定された各パーツ2を生地1のサイズに合わせて配置し、配置したパーツ2をプリント柄3と共に生地1にプリントすることで、不必要なプリントに費やすインクや生地1の切り残しを少なくすることができる。
【0017】
しかも、切残った生地1は、無地のまま残るので、残った生地をリサイクルやアップサイクルすることで、生地1を100%使用することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明プリント方法の手段を示すブロック図。
【
図3】本発明のデザイン決定手段で決定したデザインデータを示す図。
【
図4】本発明のパターン形成手段のパーツを示す図。
【
図5】本発明の柄位置指定手段で指定されたプリント柄を示す図。
【
図6】本発明の柄位置指定手段で各パーツにプリント柄を指定した図。
【
図7】本発明のパーツ配置手段で各パーツを生地に合わせて配置した図。
【
図8】本発明のパーツ配置手段の他の配置を示す図。
【
図9】本発明で使用する被服用プリンターを示す平面図。
【
図10】本発明で使用するCAM裁断機を示す平面図。
【
図12】従来のプリント方法におけるパターンのパーツ配置図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、被服用の無地の生地1にプリント柄3をプリントする方法であり、デザイン決定手段10、パターン形成手段20、柄位置指定手段30、パーツ配置手段40、プリント手段50を備える(
図1参照)。
【0020】
デザイン決定手段10は、プリント柄3をプリントする被服のデザインを決定する手段である。すなわち、アパレル製品向けの3Dモデリングソフトを使用し、パソコンの画面内で体躯モデルの3Dモデルデータへ着装したシミュレーションを行う(
図2 step1参照)。このシミュレーションで、プリント柄3を含めた被服全体のデザインを決定する(
図3参照)。
【0021】
一方、プリント柄3は、プリントデータとして保存されている各種データから選択する(
図5参照)。このプリント柄3はデザインソフトで作成することも可能である。またプリント柄3は、そのままで使用する他、プリント柄3の一部を拡大したり、全体を縮小したりして使用することも可能である。
【0022】
パターン形成手段20は、決定したデザインを構成するパターンの各パーツ2を形成する手段である。このとき、決定したデザインのグラフィック3Dデータ4をDXF化し(
図2 step2参照)、2Dパターンデータ5として3Dモデリングソフ
トに保存する(
図4参照)。
【0023】
柄位置指定手段30は、パーツ2それぞれに合わせてプリント柄3やプリント柄3のサイズや位置を指定する手段である(
図6参照)。このプリント柄3は、予めアパレルCAD内に保存されているプリントデータから選択する。そして、パターンの各パーツ2にプリント柄3やプリント柄3の位置を設定する(
図2 step3、step4参照)。
【0024】
パーツ配置手段40は、プリント柄3が指定された各パーツ2を生地1のサイズに合わせて配置する手段である(
図2 step5参照)。パーツ2それぞれのプリント柄3はパーツ2ごとに設定されているので、各パーツに柄位置の指定がある場合や、プリントされた生地の上下方向が指定されている場合でも、パターンのパーツ2の配置は、切り残しが最も少なくなる位置に配置する(
図7参照)。
【0025】
また、パターンのパーツ2それぞれを最適に配置したデータをもとに外周探知CAMを使用して、被服のサイズ(S、M、L等)ごとに最適な配置をすることも可能である(
図8参照)。
【0026】
プリント手段50は、プリント柄3をパターンのパーツ2と共に生地1に生地用プリンター6で直接印刷する手段である(
図2 step6参照)。この生地用プリンター6はダイレクトインクジェットなどとも称されるもので、生地の上からインクを吹きかけて着色し、熱により定着/乾燥するプリンターである(
図9参照)。
【0027】
更に、プリント柄3をパーツ2と共に印刷した生地1から被服を製作するには、裁断工程と、縫製工程が必要である(
図2 step7、step8参照)。
【0028】
裁断工程は、生地1にプリントしたパターンのパーツ2それぞれを裁断する工程である。この際、CAM裁断機7を使用する(
図10参照)。この裁断機は、パターンの各パーツ2をセンサーで感知して自動裁断する装置である。
【0029】
最後に縫製工程により、裁断されたパターンのパーツ2を縫製して被服が製作される(
図11参照)。
【0030】
尚、本発明の手段は図示例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は自由に行えるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 生地
2 パーツ
3 プリント柄
4 グラフィック3Dデータ
5 2Dパターンデータ
6 被服用プリンター
7 CAM裁断機
10 デザイン決定手段
20 パターン形成手段
30 柄位置指定手段
40 パーツ配置手段
50 プリント手段
【要約】
【課題】生地やインクを合理的に使用することができ生地1やインクの無駄をなくすことができる生地へのプリント方法を提供する。
【解決手段】1枚の生地1に合わせてパターンを形成するパターン形成手段20を備える。生地1は無地とする。各パターンにプリント柄3の位置を指定する柄位置指定手段30を備える。指定されたプリント柄3を各パターンにプリントするプリント手段50備える。パターンはグラフィック3Dデータ4から作成した2Dパターンデータ5で形成する
【選択図】
図6