(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20241106BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20241106BHJP
H01Q 21/30 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q21/24
H01Q21/30
(21)【出願番号】P 2023512019
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020072954
(87)【国際公開番号】W WO2022037753
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】セガドール アルバレス,フアン
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,リエンソーン
(72)【発明者】
【氏名】セミロフスキー,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーン,ジー
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0008236(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111355016(CN,A)
【文献】特開2014-039192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0085250(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103746193(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 21/24
H01Q 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子(100)であって、
1つ以上の金属層を備える誘電体(101)であり、ベースプレート(101a)及び前記ベースプレート(101a)に配置された1つ以上の壁素子(101b)を含む誘電体(101)と、
前記ベースプレート(101a)に配置された1つ以上の第1の放射素子(102)であり、第1の周波数帯域で放射するようにそれぞれ構成された1つ以上の第1の放射素子(102)と、
前記ベースプレート(101a)に配置された1つ以上の第2の放射素子(103)であり、第2の周波数帯域で放射するようにそれぞれ構成された1つ以上の第2の放射素子(103)と、
前記1つ以上の第1の放射素子(102)を第1のアンテナアレイとして動作させるために、前記1つ以上の第1の放射素子(102)に接続された第1の給電網(104)と、
前記1つ以上の第2の放射素子(103)を第2のアンテナアレイとして動作させるために、前記1つ以上の第2の放射素子(103)に接続された第2の給電網(105)と
を含み、
前記第1の給電網(104)は、少なくとも部分的に、前記1つ以上の壁素子(101b、101c)において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され
、
前記1つ以上の壁素子(101b、101c)は、前記ベースプレート(101a)のエッジに沿って延びる外壁素子(101b)を含み、
前記第1の給電網(104)の一部は、前記外壁素子(101b)において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、アンテナ素子(100)。
【請求項2】
前記第1の給電網(104)の前記一部は、前記外壁素子(101b)の表面の一方において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、
前記第1の給電網(104)のためのアースは、前記外壁素子(101b)の反対側の表面において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、請求項
1に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項3】
前記外壁素子(101b)は、
前記第1の周波数帯域及び/又は
前記第2の周波数帯域の放射パターンに適合するように構成され
た電気柵として機能する、請求項
1又は
2に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項4】
前記第1の給電網(104)は、第1の偏波に従って前記1つ以上の第1の放射素子(102)を動作させるための第1の給電素子と、第2の偏波に従って前記1つ以上の第1の放射素子(102)を動作させるための第2の給電素子とを含み、
前記外壁素子(101b)は、第1の壁区画及び第2の壁区画を含み、
前記第1の給電素子は、前記第1の壁区画において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、前記第2の給電素子は、前記第2の壁区画において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、請求項
1乃至
3のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項5】
前記1つ以上の壁素子(101b、c)は1つ以上の内壁素子(101c)を更に含み、各内壁素子(101c)は、前記外壁素子(101b)を前記1つ以上の第1の放射素子(102)のうち1つに接続し、
前記第1の給電網(104)の一部は、前記内壁素子(101c)において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、請求項
1乃至
4のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項6】
前記第2の給電網(105)は、少なくとも部分的に、前記ベースプレート(101a)において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、請求項1乃至
5のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項7】
前記1つ以上の壁素子(101b、101c)及び前記放射素子(102、103)は前記ベースプレート(101a)の上面に配置され、
前記第2の給電網(105)の一部は、前記ベースプレート(101a)の下面において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、
前記ベースプレート(101a)は前記アンテナ素子(100)の反射プレートに配置され、前記反射プレートは前記第2の給電網(105)のためのアースとして機能する、請求項
6に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項8】
前記反射プレートは、前記1つ以上の第1の放射素子(102)及び/又は前記1つ以上の第2の放射素子(103)からの放射を主放射方向に反射するように構成される、請求項
7に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項9】
前記1つ以上の壁素子(10b、c)及び前記放射素子(102、103)は、前記ベースプレート(101a)の上面に配置され、
前記第2の給電網(105)は、前記ベースプレート(101a)の前記上面において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、
前記第2の給電網(105)のためのアースは、前記ベースプレート(101a)の下面において前記1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される、請求項
6に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項10】
前記第1の給電網(104)及び前記第2の給電網(105)は、前記第1の給電網(104)及び前記第2の給電網(105)の給電線のライン交差なしに配置される、請求項1乃至
9のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項11】
前記1つ以上の第1の放射素子(102)は1つ以上の低帯域(LB)放射素子であり、前記1つ以上の第2の放射素子(103)は1つ以上の高帯域(HB)放射素子であるか、或いは、
前記1つ以上の第1の放射素子(102)は1つ以上のHB放射素子であり、前記1つ以上の第2の放射素子(103)は1つ以上のLB放射素子である、請求項1乃至
10のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項12】
前記第1の周波数帯域は前記
第2の周波数帯域よりも低く、及び/又は、
前記第1の周波数帯域は1.7-2.7GHzの周波数範囲であり、前記第2の周波数帯域は3.3-3.8GHzの周波数範囲である、請求項1乃至
11のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項13】
前記1つ以上の第1の放射素子(102)は1つ以上のダイポール放射素子を含み、及び/又は、
前記1つ以上の第2の放射素子(103)は1つ以上のパッチ放射素子を含む、請求項1乃至
12のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項14】
前記1つ以上の第1の放射素子(102)及び/又は前記1つ以上の第2の放射素子(103)は1つ以上の線形二重偏波放射素子を含む、請求項1乃至
13のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項15】
前記1つ以上の第1の放射素子(102)及び/又は前記1つ以上の第2の放射素子(103)は、少なくとも部分的に、前記誘電体(101)により形成される、請求項1乃至
14のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項16】
前記1つ以上の第2の放射素子(103)のそれぞれは、前記誘電体(101)により形成された第1のパッチ(103a)を含み、前記第1のパッチ(103a)上に積み重ねられた第2のパッチ(103b)を含む、請求項1乃至
15のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項17】
前記1つ以上の第1の放射素子(102)のそれぞれは、前記誘電体(101)により形成されたバラン(102a)を含み、ダイポールが形成されたPCB(102b)を含み、前記PCB(102b)は前記バラン(102a)に接続される、請求項1乃至
16のうちいずれか1項に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項18】
前記第2のパッチ(103b
)は、前記アンテナ素子(100)の更なる誘電体(701)により形成され、前記更なる誘電体(701)が誘電体(101)に取り付けられる、請求項
16に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項19】
前記PCB(102b)は、前記アンテナ素子(100)の更なる誘電体(701)により形成され、前記更なる誘電体(701)が誘電体(101)に取り付けられる、請求項17に記載のアンテナ素子(100)。
【請求項20】
請求項1乃至19のうちいずれか1項に従ってそれぞれ構成された1つ以上のアンテナ素子(100)を含むマルチバンドアンテナデバイス。
【請求項21】
マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子(100)を製造するための方法(1400)であって、
ベースプレート(101a)及び前記ベースプレート(101)に配置された1つ以上の壁素子(101b、101c)を含む誘電体(101)を形成するステップ(1401)と、
前記ベースプレート(101a)に配置された1つ以上の第1の放射素子(102)を形成するステップ(1402)であり、各第1の放射素子(102)は第1の周波数帯域で放射するように構成される、ステップ(1402)と、
前記ベースプレート(101a)に配置された1つ以上の第2の放射素子(103)を形成するステップ(1403)であり、各第2の放射素子(103)は第2の周波数帯域で放射するように構成される、ステップ(1403)と、
前記1つ以上の第1の放射素子(102)を第1のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第1の放射素子(102)に接続された第1の給電網(104)を形成するステップ(1404)と、
前記1つ以上の第2の放射素子(103)を第2のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第2の放射素子(103)に接続された第2の給電網(105)を形成するステップ(1405)と
を含み、
前記第1の給電網(104)は、少なくとも部分的に、前記1つ以上の壁素子(101b、101c)を金属化することにより形成される、方法(1400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナデバイス及びアンテナ素子に関する。特に、本開示は、マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子を提供し、マルチバンドアンテナデバイスを提供し、アンテナ素子を製造するための方法を提供する。アンテナ素子は、特に、誘電体を有するように設計され、1つ以上の金属層が誘電体に配置される。1つ以上の金属層は、アンテナ素子の放射素子の少なくとも2つの異なるアンテナアレイのための1つ以上の給電網を形成し、各アレイは1つ以上の放射素子を含む。
【背景技術】
【0002】
第五世代(5th generation, 5G)モバイルネットワークの発展に伴い、それぞれ700MHz及び3.5GHzの新たな周波数帯域が導入されている。したがって、市場では、増加した数の帯域をサポートする新たなアンテナデバイスを開発することへの高まる需要が存在する。例えば、新たなアンテナデバイスは、以下の帯域、すなわち、700MHz、800MHz、900MHz、1.4GHz、1.8GHz、2.1GHz、2.6GHz及び3.5GHzのうち2つ以上をサポートするべきである。さらに、新無線(New Radio, NR)/5G標準の能力を十分に活用するために、新たなアンテナデバイスについて、周波数帯域当たりの無線チャネル、アンテナポート及びアンテナ列の数も増加するべきである。
【0003】
しかし、帯域当たりの周波数帯域及びアンテナポートの数を増加させすることへのこの要求にもかかわらず、セクタ当たりの1つのアンテナデバイス(又は例外的な場合におけるセクタ当たり最大で2つのアンテナデバイス)という制限は、依然としてかなり厳しい要件である。さらに、アンテナサイトの取得を容易にするために、及び/又はアンテナサイトに既に設置されている現在の機械的支持構造を再利用できるようにするために、新たなアンテナデバイスのフォームファクタ及び風力荷重は、レガシー製品のものと同等であるべきである。すなわち、新たなアンテナデバイスは、更なるボックスを必要とするべきではなく、現在設置されている従来のアンテナデバイスよりも大きいボックスをアンテナサイトに必要とするべきではない。
【0004】
これは増加した複雑さをもたらし、したがって、新たなアンテナデバイスを設計する際に課題をもたらす。特に、いくつかの周波数帯域をきちんと(コンパクトに)効率的に統合することを可能にする新たな技術又はアンテナデバイスの概念は、非常に価値のあるものになる。
【発明の概要】
【0005】
上記の課題を考慮して、本発明の実施形態は、新たなマルチバンドアンテナデバイスを提供することを目的とする。それによる目的は、レガシー(すなわち、従来の)アンテナデバイスと比較して、新たなアンテナデバイスのフォームファクタ又は風力荷重を増加させることなく、新たなマルチバンドアンテナデバイスを構築することを可能にするアンテナ素子を提供することである。例えば、目標は、放射素子の各アンテナアレイ(すなわち、周波数帯域毎のアレイ)の少なくとも一部と、アレイ毎の双方の給電網とを単一の部分に含むデュアルバンドアンテナ素子を提供することである。給電網の間のライン交差は回避されるべきである。アンテナ素子、したがって、新たなアンテナデバイスは、同等の従来のアンテナデバイスよりも更に複雑であるべきではなく、例えば、給電網を形成するために多層PCB構造の使用を必要とするべきではない。さらに、アンテナ素子及び新たなアンテナデバイスは、次世代の基地局アンテナの要件を満たすべきである。
【0006】
当該目的は、同封の独立請求項に記載のように、本発明の実施形態により達成される。本発明の実施形態の有利な実現方式は、従属請求項に更に定義される。
【0007】
特に、本発明の実施形態は、1つ以上の金属層を有する誘電体、例えば、金属化プラスチック体を使用することにより、マルチバンド統合の問題に対処する。金属化プラスチック構造は、複雑な3D構造を作成するために他の技術分野で使用されており、それにより、部品及び相互接続の数を低減する。例えば、金属化プラスチック構造の使用は、ハンドセットデバイス及び自動車に探求されている。いくつかの手法はまた、基地局アンテナに金属化プラスチックを使用する。しかし、基地局アンテナにとって、主に放射素子のタイプ並びに相互変調のサイズ及びレベルに関する要件のため、この技術は使用するのがより困難である。
【0008】
本開示の第1の態様は、マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子を提供し、アンテナ素子は、金属層を備える誘電体であり、ベースプレート及びベースプレートに配置された1つ以上の壁素子を含む誘電体と、ベースプレートに配置された1つ以上の第1の放射素子であり、第1の周波数帯域で放射するようにそれぞれ構成された1つ以上の第1の放射素子と、ベースプレートに配置された1つ以上の第2の放射素子であり、第2の周波数帯域で放射するようにそれぞれ構成された1つ以上の第2の放射素子と、1つ以上の第1の放射素子を第1のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第1の放射素子に接続された第1の給電網と、1つ以上の第2の放射素子を第2のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第2の放射素子に接続された第2の給電網とを含み、第1の給電網は、少なくとも部分的に、1つ以上の壁素子において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0009】
第1の態様のアンテナ素子は、誘電体と、第1の給電網を形成するために1つ以上の壁素子に配置された少なくとも1つの金属層とを備えることにより、より限られたスペースで双方の給電網を統合することを可能にする。これにより、2つの給電網を形成する際に、多層構造及び/又はライン交差の使用が回避できる。従来のアンテナデバイスと比較して、給電網の全ての部分が1つのコンポーネントに実現できるので、それぞれの無線周波数(Radio Frequency, RF)信号を異なるアンテナアレイの放射素子に分配するために更なるプリント回路基板(Printed Circuit Board, PCB)が必要とされない。
【0010】
ベースプレートに配置された1つ以上の壁素子は、ベースプレートと一体的に形成されてもよく、及び/又は、ベースプレートから突出してもよい。さらに、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は重複する周波数帯域又は重複しない周波数帯域でもよい。
【0011】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子は、ベースプレートのエッジに沿って延びる外壁素子を含み、第1の給電網の一部は、外壁素子において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0012】
したがって、第1の給電網は、第2の給電網とのライン交差なしに、第1のアンテナアレイの第1の放射素子を給電するために提供できる。
【0013】
第1の態様の実現形式では、第1の給電網の一部は、外壁素子の表面の一方において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、第1の給電網のためのアースは、外壁素子の反対側の表面において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0014】
したがって、外壁素子により提供されるスペースは、第1の給電網を提供するためにより効率的に使用される。
【0015】
第1の態様の実現形式では、外壁素子は、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子からの放射に適合するように構成される。
【0016】
したがって、外壁素子は、アンテナ素子の放射特性、例えば、アンテナ素子の放射パターンの指向性、及びアンテナ素子のポートパラメータ、例えば、マルチバンドアンテナに並んで配置された隣接するアンテナ列との結合を改善するために更に使用されてもよい。
【0017】
第1の態様の実現形式では、第1の給電網は、第1の偏波に従って1つ以上の第1の放射素子を動作させるための第1の給電素子と、第2の偏波に従って1つ以上の第1の放射素子を動作させるための第2の給電素子とを含み、外壁素子は、第1の壁区画及び第2の壁区画を含み、第1の給電素子は、第1の壁区画において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、第2の給電素子は、第2の壁区画において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0018】
したがって、外壁素子におけるスペースは、第1のアンテナアレイの第1の放射素子に給電するために効率的に使用されてもよい。
【0019】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子は1つ以上の内壁素子を更に含み、各内壁素子は、外壁素子を1つ以上の第1の放射素子のうち1つに接続し、第1の給電網の一部は、内壁素子において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0020】
したがって、更なる壁素子が、第1の給電網を提供/形成するために、特に、第1の給電網を全ての第1の放射素子に接続するために使用されてもよく、これらはまた、第1のアレイにおいてより中央に位置する(特に、例えば、放射素子の複数の行及び列を含む、より大きい第1のアレイの場合)。さらに、内壁素子は、第1の放射素子と第2の放射素子との間の更なる分離のために使用されてもよく、したがって、アンテナ素子の放射特性を改善する。
【0021】
第1の態様の実現形式では、第2の給電網は、少なくとも部分的に、ベースプレートにおいて1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0022】
したがって、誘電体は、双方の給電網を効率的に形成するために使用され、すなわち、必要なスペースが少なく、ライン交差又は多層構造は必要ない。
【0023】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子及び放射素子はベースプレートの上面に配置され、第2の給電網の一部は、ベースプレートの下面において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、ベースプレートはアンテナ素子の反射プレートに配置され、反射プレートは第2の給電網のためのアースとして機能する。
【0024】
第1の態様の実現形式では、反射プレートは、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子からの放射を主放射方向に反射するように構成される。
【0025】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子及び放射素子は、ベースプレートの上面に配置され、第2の給電網は、ベースプレートの上面において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、第2の給電網のためのアースは、ベースプレートの下面において1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供される。
【0026】
このように、誘電体のベースプレートは、第2の給電網により多くのスペースを提供するために効率的に使用される。
【0027】
第1の態様の実現形式では、第1の給電網及び第2の給電網は、第1の給電網及び第2の給電網の給電線のライン交差なしに配置される。
【0028】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上の低帯域(low band, LB)放射素子であり、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上の高帯域(high band, HB)放射素子であるか、或いは、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上のHB放射素子であり、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上のLB放射素子である。
【0029】
したがって、アンテナ素子は、少なくとも2つの異なる周波数帯域を有する統合マルチバンドアンテナデバイスを製造することを可能にする。
【0030】
第1の態様の実現形式では、第1の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも低く、及び/又は、第1の周波数帯域は1.7-2.7GHzの周波数範囲であり、第2の周波数帯域は3.3-3.8GHzの周波数範囲である。
【0031】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上のダイポール放射素子を含み、及び/又は、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上のパッチ放射素子を含む。
【0032】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子は1つ以上の線形二重偏波放射素子を含む。
【0033】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子は、少なくとも部分的に、誘電体により形成される。
【0034】
したがって、アンテナ素子の誘電体は、更なる目的、すなわち、少なくとも部分的に放射素子を形成することを有する。したがって、製造も簡単である、よりコンパクトなアンテナ素子が可能になる。
【0035】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第2の放射素子のそれぞれは、誘電体により形成された第1のパッチを含み、第1のパッチ上に積み重ねられた第2のパッチを含む。
【0036】
このように、第2のアンテナアレイの帯域幅が増加できる。
【0037】
第1の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子のそれぞれは、誘電体により形成されたバランを含み、ダイポールが形成されたPCBを含み、PCBはバランに接続される。
【0038】
このように、誘電体の成形、例えば、そのメタライゼーションがより簡単になり、製造コストが低減できる。
【0039】
第1の態様の実現形式では、第2のパッチ及びPCBは、アンテナ素子の更なる誘電体により形成され、更なる誘電体が誘電体に取り付けられる。
【0040】
このように、アンテナ素子がより簡単に形成でき、コンポーネントの数が低減できる。
【0041】
本開示の第2の態様は、第1の態様又はその実現形式のいずれかに従ってそれぞれ構成された1つ以上のアンテナ素子を含むマルチバンドアンテナデバイスを提供する。
【0042】
本開示の第3の態様は、マルチバンドアンテナデバイス用のアンテナ素子を製造するための方法を提供し、当該方法は、ベースプレート及びベースプレートに配置された1つ以上の壁素子を含む誘電体を形成するステップと、ベースプレートに配置された1つ以上の第1の放射素子を形成するステップであり、各第1の放射素子は第1の周波数帯域で放射するように構成される、ステップと、ベースプレートに配置された1つ以上の第2の放射素子を形成するステップであり、各第2の放射素子は第2の周波数帯域で放射するように構成される、ステップと、1つ以上の第1の放射素子を第1のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第1の放射素子に接続された第1の給電網を形成するステップと、1つ以上の第2の放射素子を第2のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第2の放射素子に接続された第2の給電網を形成するステップとを含み、第1の給電網は、少なくとも部分的に、1つ以上の壁素子を金属化することにより形成される。
【0043】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子は、ベースプレートのエッジに沿って延びる外壁素子を含み、第1の給電網の一部は、外壁素子を金属化することにより形成される。
【0044】
第3の態様の実現形式では、第1の給電網の一部は、外壁素子の表面の一方を金属化することにより形成され、第1の給電網のためのアースは、外壁素子の反対側の表面を金属化することにより形成される。
【0045】
第3の態様の実現形式では、外壁素子は、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子からの放射に適合するように構成されるよう形成される。
【0046】
第3の態様の実現形式では、第1の給電網は、第1の偏波に従って1つ以上の第1の放射素子を動作させるための第1の給電素子と、第2の偏波に従って1つ以上の第1の放射素子を動作させるための第2の給電素子とを含み、外壁素子は、第1の壁区画及び第2の壁区画を含み、第1の給電素子は、第1の壁区画を金属化することにより形成され、第2の給電素子は、第2の壁区画を金属化することにより形成される。
【0047】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子は1つ以上の内壁素子を更に含み、各内壁素子は、外壁素子を1つ以上の第1の放射素子のうち1つに接続し、第1の給電網の一部は、内壁素子を金属化することにより形成される。
【0048】
第3の態様の実現形式では、第2の給電網は、少なくとも部分的に、ベースプレートを金属化することにより形成される。
【0049】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子及び放射素子はベースプレートの上面に配置され、第2の給電網の一部は、ベースプレートの下面を金属化することにより形成され、ベースプレートはアンテナ素子の反射プレートに形成され、反射プレートは第2の給電網のためのアースとして機能する。
【0050】
第3の態様の実現形式では、反射プレートは、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子からの放射を主放射方向に反射するように構成される。
【0051】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の壁素子及び放射素子は、ベースプレートの上面に配置され、第2の給電網は、ベースプレートの上面を金属化することにより形成され、第2の給電網のためのアースは、ベースプレートの下面を金属化することにより形成される。
【0052】
第3の態様の実現形式では、第1の給電網及び第2の給電網は、第1の給電網及び第2の給電網の給電線のライン交差なしに形成される。
【0053】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上のLB放射素子であり、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上のHB放射素子であるか、或いは、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上のHB放射素子であり、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上のLB放射素子である。
【0054】
第3の態様の実現形式では、第1の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも低く、及び/又は、第1の周波数帯域は1.7-2.7GHzの周波数範囲であり、第2の周波数帯域は3.3-3.8GHzの周波数範囲である。
【0055】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子は1つ以上のダイポール放射素子を含み、及び/又は、1つ以上の第2の放射素子は1つ以上のパッチ放射素子を含む。
【0056】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子は1つ以上の線形二重偏波放射素子を含む。
【0057】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子及び/又は1つ以上の第2の放射素子は、少なくとも部分的に、誘電体により形成される。
【0058】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第2の放射素子のそれぞれは、誘電体により形成された第1のパッチを含み、第1のパッチ上に積み重ねられた第2のパッチを含む。
【0059】
第3の態様の実現形式では、1つ以上の第1の放射素子のそれぞれは、誘電体により形成されたバランを含み、ダイポールが形成されたPCBを含み、PCBはバランに接続される。
【0060】
第3の態様の実現形式では、第2のパッチ及びPCBは、アンテナ素子の更なる誘電体により形成され、更なる誘電体が誘電体に取り付けられる。
【0061】
第3の態様の方法及びその実現形式は、第1の態様のアンテナ素子について上記に説明したものと同じ利点を提供する。第3の態様の方法は、第1の態様のアンテナ素子の製造を生じ、したがって、上記の利点をもたらす。特に、第1の態様のアンテナ素子及び第2の態様のマルチバンドアンテナデバイスは、それぞれ第3の態様の方法を使用して容易に製造できる。
【0062】
本出願に記載の全てのデバイス、素子、ユニット及び手段は、ソフトウェア若しくはハードウェア要素又はこれらのいずれかの種類の組み合わせで実現されてもよい点に留意する必要がある。本出願に記載の様々なエンティティにより実行される全てのステップ、及び様々なエンティティにより実行されるように記載される機能は、それぞれのエンティティがそれぞれのステップ及び機能を実行するように適合又は構成されることを意味することを意図する。
【0063】
特定の実施形態の以下の説明において、外部エンティティにより実行される特定の機能又はステップが、その特定のステップ又は機能を実行するそのエンティティの特定の詳細な要素の説明に反映されていない場合であっても、これらの方法及び機能がそれぞれのソフトウェア若しくはハードウェア要素又はこれらのいずれかの種類の組み合わせで実現できることは、当業者者にとって明らかであるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
上記に記載の態様及び実現形式について、同封の図面に関連して特定の実施形態の以下の説明において説明する。
【
図1】本発明の実施形態によるアンテナ素子を示す。
【
図2】本発明の実施形態によるアンテナ素子の上面図を示す。
【
図6】本発明の実施形態によるアンテナ素子を示す。
【
図7】本発明の実施形態によるアンテナ素子の更なる誘電体を示す。
【
図8】誘電体及び更なる誘電体を含む、本発明の実施形態によるアンテナ素子を示す。
【
図9】、同じラインに沿って配置された第1及び第2の放射素子を有する、本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子を示す。
【
図10】トリプルバンド実現方式における、本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子を示す。
【
図11】2LB/4HBの組み合わせを有する、本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子を示す。
【
図12】1LB/3HBの組み合わせを有する、本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子を示す。
【
図13】1LB/4HBの組み合わせを有する、本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、本発明の実施形態によるアンテナ素子100を示す。アンテナ素子100は、マルチバンドアンテナデバイス、例えば、デュアルバンドアンテナデバイス又はトリプルバンドアンテナデバイスを形成するために使用されてもよい。
図1のアンテナ素子100は、2つの周波数帯域で動作することが例示的に示されているが、2つよりも多くの周波数帯域で動作してもよい。
【0066】
アンテナ素子100は、1つ以上の金属層を備える誘電体101を含む。1つ以上の金属層は、誘電体101、特に誘電体101の表面に配置されてもよい。しかし、1つ以上の金属層も誘電体101内に提供されてもよい。さらに、誘電体はプラスチックでできていてもよい。したがって、特に、誘電体は選択的に金属化されたプラスチック部分でもよい。誘電体101は、ベースプレート101aと、ベースプレート101aに配置された1つ以上の壁素子101b、101cを含む。1つ以上の壁素子101b、101cは、z軸(すなわち、ベースプレートに垂直な軸)に沿ってベースプレート101aから突出してもよく、さらにベースプレート101aと一体に形成されてもよい。1つ以上の壁素子101b、101cは、例えば、ベースプレート101aを囲む、すなわち、(
図1に示すように)ベースプレート101aのエッジに沿って延びる、外壁素子101bを含んでもよい。さらに、1つ以上の壁素子101b、101cは、1つ以上の内壁素子101c、すなわち、ベースプレート101aの中央に配置され、及び/又は、外壁素子101bにより囲まれた領域内に配置される1つ以上の壁素子101cを含んでもよい。
【0067】
さらに、アンテナ素子100は、例えば、規則的に(例えば、行及び/又は列で)或いは不規則的にベースプレート101aに配置される1つ以上の第1の放射素子102を含み、各第1の放射素子102は、第1の周波数帯域で放射するように構成される。アンテナ素子100はまた、例えば、規則的に(例えば、行及び/又は列で)或いは不規則的にベースプレート101aに配置され及び/又は第1の放射素子102と交互配置(interleave)された1つ以上の第2の放射素子103を含み、各第2の放射素子103は第2の周波数帯域で放射するように構成される。第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は異なる周波数帯域でもよい。例えば、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域より低くてもよく、或いは、その逆でもよい。第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は重複してもよく、特に部分的に重複してもよく、或いは、重複しなくてもよい。例えば、第1の周波数帯域は1.7-2.7GHzの周波数範囲でもよく、第2の周波数帯域は3.3-3.8GHzの周波数範囲でもよい。
【0068】
1つ以上の第1の放射素子102は1つ以上のダイポール放射素子を含んでもよく、及び/又は、1つ以上の第2の放射素子103は1つ以上のパッチ放射素子を含んでもよく、或いは、その逆でもよい。それにより、1つ以上の第1の放射素子102及び/又は1つ以上の第2の放射素子103は、1つ以上の線形二重偏波放射素子(linear dual-polarized radiating element)を含んでもよい。第1の放射素子102は、1つ以上のLB放射素子を含んでもよく、したがって、LBアンテナアレイを形成してもよい。第2の放射素子103は、1つ以上のHB放射素子を含んでもよく、したがって、HBアンテナアレイを形成してもよい。代替として、第1の放射素子102は、1つ以上のHB放射素子を含んでもよく、第2の放射素子103は、1つ以上のLB放射素子を含んでもよい。1つ以上の第1の放射素子102及び/又は1つ以上の第2の放射素子103は、少なくとも部分的に、誘電体101により、すなわち、誘電体101の1つ以上の金属層により形成されてもよい。
【0069】
アンテナ素子100は、1つ以上の第1の放射素子102を第1のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第1の放射素子102に接続された第1の給電網104を更に含む。さらに、アンテナ素子100は、1つ以上の第2の放射素子103を第2のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第2の放射素子103に接続された第2の給電網105を含む。第1の給電網104及び/又は第2の給電網105は、特に、給電網104/105により給電されるそれぞれの放射素子102/103に接続するための1つ以上の給電線を含んでもよい。それにより、第1の給電網104及び第2の給電網105は、それぞれの給電線の交差なしに配置されてもよい。第1の給電網104も第2の給電網105も、多層構造を更に必要としなくてもよい。
【0070】
特に、第1の給電網104は、少なくとも部分的に、1つ以上の壁素子101b、101cにおいて1つ以上の金属層のうち或る金属層として提供され、すなわち、誘電体101により形成される。例えば、第1の給電網104は、外壁素子101b及び/又は1つ以上の内壁素子101cに提供されてもよい。すなわち、第1の給電網104は、アンテナ素子100の誘電体101の壁素子101b、101cに統合されてもよい。例えば、1つ以上の壁素子101b、101cは第1の表面を有してもよく、第1の給電網104は、特にメタライゼーション又は金属層として、第1の表面に提供される。さらに、1つ以上の壁素子101b、101cは第2の表面を有してもよく、これは給電網104のためのアースとして使用されてもよく、アースは第2の表面にメタライゼーション又は金属層として提供される。外壁素子101bは、第1及び第2の周波数帯域の一方又は双方の放射パターンに適合するように構成された電気柵(electrical fencing)として更に機能してもよい。すなわち、外壁素子101bは、1つ以上の第1の放射素子102及び/又は1つ以上の第2の放射素子103からの放射に適合するように構成されてもよい。
【0071】
また、第2の給電網105は、少なくとも部分的に、誘電体101、特にベースプレート101aにおいて金属層として提供されてもよい。すなわち、第2の給電網105は、アンテナ素子100の誘電体101の底部に統合されてもよい。しかし、1つ以上の壁素子101b、101cに第2の給電網105の少なくとも一部を提供することも可能である。
【0072】
図2~5は、本発明の実施形態によるアンテナ素子100を示しており、これは
図1に示す実施形態に基づいている。
図1及び
図2~5における同じ要素は同じ参照符号を備えており、同様に実現されてもよい。特に、
図2はアンテナ素子100の上面図を示し、
図3はアンテナ素子100の拡大上面図を示し、
図4はアンテナ素子100の底面図を示し、
図5はアンテナ素子100の拡大底面図を示す。
【0073】
特に、
図2~5の実施形態では、第1の放射素子102はLB放射素子であり、LBアレイを形成し、第2の放射素子103はHB放射素子であり、HBアレイを形成する。
【0074】
図2及び
図3に見られるように、LB放射素子102の第1の給電網105は、少なくとも部分的に、1つ以上の壁素子101b、101cに配置される。第1の給電網104は、特に誘電体101の外壁素子101bに配置される。それにより、偏波の一方が外壁素子101bの第1の壁区画、例えば、外壁素子101bの左側部分に配置されてもよい。他方の偏波は、外壁素子101bの第2の壁区画、例えば、外壁素子101bの右側部分に配置されてもよい。誘電体101の内壁素子101cは、LB放射素子102(中央に配置されたもの、特にHB放射素子103の間に配置されたもの)から外壁素子101bに信号を経路設定するために使用されてもよい。第1の給電網104はまた、誘電体101の内壁素子101cに配置されてもよい。
【0075】
図4及び
図5に見られるように、HB放射素子の第2の給電網105は、誘電体101の底部領域の下面、すなわち、ベースプレート101aに配置される。誘電体101は、HBアレイについて第2の給電網105のためのアースとして機能する反射プレートの上に更に配置される。第2の給電網105が誘電体101のベースプレート101aの上面に配置され、アースがベースプレート101aの下面に配置されるか、或いは、その逆となる実現方式(反射プレートを使用しない)も可能である。
【0076】
図2~5の実施形態では、一例としてHBは3.3-3.8GHzであり、LB帯域は1.7-2.7GHzである。HB放射素子103の間の間隔は水平方向で43mmでもよく、垂直方向で62.5mmでもよいが、LB放射素子102の間の垂直方向の間隔は125mmでもよい。
【0077】
LB放射素子は交差給電ダイポール(cross-fed dipole)でもよく、HB放射素子103はプローブ給電パッチ(probe-fed patch)でもよい。一部又は全ての放射素子102/103は線形二重偏波+/-45傾斜でもよい。
【0078】
図2~5に例示的に示すように、LBで動作する3つのダイポール放射素子102及びHBで動作する12個のパッチ放射素子103が存在してもよい。この特定の例では、HB放射素子103は、それぞれ3つの二重偏波放射素子103の4つのグループにクラスタ化され(
図4に最もよく見られる)、2つのクラスタはアンテナ素子100の一方(長手)側にあり、他の2つのクラスタはアンテナ素子100の他方(長手)側にある。
【0079】
上記の周波数帯域、寸法及びクラスタ化は、本発明の実施形態の概念を伝えるための例のみとしての役割をする。しかし、本発明の実施形態は、周波数帯域、寸法及びクラスタ化のいずれかの他の組み合わせで使用されるように拡張できる。本発明の実施形態はまた、いずれか特定の種類の放射素子102及び103に限定されない。
【0080】
図6は、本発明の実施形態によるアンテナ素子100を示しており、これは
図2~5に示す実施形態に基づいている。
図6及び
図2~5における同じ要素は同じ参照符号を備えており、同様に実現されてもよい。特に、
図6は、第1の放射素子102の第1の部分102aが誘電体101により形成されてもよく、第1の放射素子102の第2の部分102bが他の部分102b、すなわち、誘電体101に追加される部分102bとして実現されてもよいことを示している。例えば、
図6に示すように、第1の放射素子102のダイポールは更なるPCB(部分102bである)に実現されてもよく、これは誘電体101により形成された第1の放射素子102の部分102a、具体的にはバラン(balun)にはんだ付けされてもよい。特に、1つ以上の第1の放射素子102のそれぞれは、誘電体101により形成されたバラン102aを含んでもよく、ダイポールが形成される更なるPCB102bを含んでもよく、更なるPCB102bがバラン102aに接続される。
【0081】
また、第2の放射素子103の第1の部分103aは誘電体101により形成されてもよく、第2の放射素子103の第2の部分103bは別の部分103b、すなわち、誘電体101に追加される部分103bとして形成されてもよい。例えば、1つ以上の第2の放射素子103のそれぞれは、誘電体101により形成された第1の部分(例えば、パッチ)103aを含んでもよく、第1の部分103aに接続された第2の部分(例えば、パッチ)103bを含んでもよい。
【0082】
この点に関して、
図7は、1つ以上の第1の放射素子102及び1つ以上の第2の放射素子103の第2の部分102b及び103bが、それぞれ、少なくとも部分的に、更なる誘電体701により形成されてもよいことを示している。例えば、第2のパッチ103b及び更なるPCB102bは、それぞれ、アンテナ素子100の更なる誘電体701(例えば、1つ以上の金属層を有する)により形成されてもよい。更なる誘電体701は、誘電体101に取り付けられてもよい/接続されてもよい(
図8に組立状態で示す)。
【0083】
誘電体101に全てのコンポーネントを含まない理由は、例えば、ダイポール(
図7において更なるPCB102bで提供/定義される)の存在が、誘電体101の成形及びエッチングを複雑にし、したがって、製造コストを増加させるためである。更なるスタックパッチ103bは、第2のアレイ(例えば、HBアレイ)の帯域幅を更に増加させてもよく、したがって、帯域幅要件が単一のパッチ103aのみで達成できない場合に考慮されてもよい。コンポーネントの数を最小化するための好適な代替手段は、全ての更なる部分102b及び103b(例えば、LBダイポールPCB102b及びHBスタックパッチ103b)を、例えば、他の金属化プラスチック部分である更なる誘電体701にマージすることである。
【0084】
本発明の実施形態では、HB放射素子103はLB放射素子102に対して並べて配置されてもよい(例えば、
図2~5を参照する)。しかし、本発明の実施形態によるアンテナ素子100を例示する
図9に示すように、同じラインに沿って、例えば、アンテナ素子100の長さに沿って配置させることも可能になり得る。
【0085】
さらに、本発明の実施形態では、第2の給電網105は底部、すなわち、ベースプレート101aに配置されてもよいが、第1の給電網104は1つ以上の壁素子101b、101c、特に外壁素子101bに配置される(例えば、
図2~5を参照する)。これは、第2の放射素子103の列の数が第1の放射素子102の列の数よりも多いときに好ましい選択肢になり得る(列は共通の軸上に順に配置された放射素子102/103の集合であり、共通の軸は、特に、ベースプレート101aの長さに対して横に向いており、より具体的には、ベースプレート101aの長さ(より長い側)に垂直である。同様に、放射素子102/103の行は、放射素子102/103の列に垂直でもよい)。しかし、
図9のアンテナ素子のように、第2の放射素子103の列の数が第1の放射素子102の列の数と同じ状況では、第2の給電網105を、1つ以上の壁素子101b、101c、特に外壁素子101b、及び/又はベースプレート101a内の第1の給電網104に配置させることが好ましくなり得る。
【0086】
他の実施形態では、同じ誘電体101に共存する第3の周波数帯域が追加されてもよい。例えば、
図10は、本発明の実施形態によるアンテナ素子100を示しており、これは
図2~5に示す実施形態に基づいている。
図10及び
図2~5における同じ要素は同じ参照基準符号を備えており、同様に実現されてもよい。特に、
図10はトリプルバンドアンテナ素子100を示している。アンテナ素子100は、第3の周波数帯域(第1又は第2の周波数帯域よりも高いか、或いは、第1及び第2の周波数帯域よりも低いか、或いは、第1及び第2の周波数帯域の間にある)で放射するように構成された1つ以上の第3の放射素子1000を含む。アンテナ素子100はまた、1つ以上の第3の放射素子1000を第3のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第3の放射素子1000に接続された第3の給電網を含んでもよい。第3の給電網は、少なくとも部分的に、誘電体101において、例えば、上記の第1の及び第2の給電網104及び105のように、1つ以上の壁素子101b、101cにおいて、金属層として形成されてもよい。
【0087】
さらに、本発明の他の実施形態では、HB/LB放射素子の列の異なる組み合わせが考慮されてもよい。例えば、
図11~13において、いくつかの例が示されている。特に、
図11は、2LB/4HBの組み合わせを有する本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子100を示しており、すなわち、LB列は2つのLB放射素子102を含み、HB列は4つのHB放射素子103を含む。
図12は、1LB/3HBの組み合わせを有する本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子100を示しており、すなわち、LB列は1つのLB放射素子102を含み、HB列は3つのHB放射素子103を含む。
図13は、1LB/4HBの組み合わせを有する本発明の実施形態による例示的なアンテナ素子100を示しており、すなわち、LB列は1つのLB放射素子102を含み、HB列は4つのHB放射素子103を含む。
【0088】
図14は、本発明の実施形態による方法1400を示す。方法1400は、以前の図面のいずれかに示すアンテナ素子100を製造するために使用されてもよい。
【0089】
当該方法は、ベースプレート101a及びベースプレート101aに配置された1つ以上の壁素子101b、101cを含む誘電体101を形成するステップ1401を含む。さらに、当該方法は、ベースプレート101aに配置された1つ以上の第1の放射素子102を形成するステップ1402であり、各第1の放射素子102は第1の周波数帯域で放射するように構成される、ステップ1402と、ベースプレート101に配置された1つ以上の第2の放射素子103を形成するステップ1403であり、各第2の放射素子103は第2の周波数帯域で放射するように構成される、ステップ1403とを含む。さらに、当該方法1400は、1つ以上の第1の放射素子を第1のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第1の放射素子102に接続された第1の給電網104を形成するステップ1404と、1つ以上の第2の放射素子を第2のアンテナアレイとして動作させるために、1つ以上の第2の放射素子103に接続された第2の給電網105を形成するステップ1045とを含む。第1の給電網104は、少なくとも部分的に、1つ以上の壁素子101b、101c、特に、1つ以上の外壁素子101b及び/又は1つ以上の内壁素子101cを金属化することにより形成される。第2の給電網105は、少なくとも部分的に、ベースプレート101aを金属化することにより形成されてもよい。
【0090】
本発明は、例としての様々な実施形態及び実現方式と共に記載されている。しかし、図面、本開示及び独立請求項の研究から、他の変形が当業者及び請求項に記載の発明を実施する当業者により理解でき、実施できる。請求項及び詳細な説明において、「含む(comprising)」という用語は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットは、請求項に記載のいくつかのエンティティ又は項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利な実現方式で使用できないことを示すものではない。