(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】可溶性殺菌ガラス及び可溶性殺菌ガラスの調製方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20241106BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241106BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20241106BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20241106BHJP
C03C 4/00 20060101ALI20241106BHJP
C03C 3/19 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01P3/00
A01N25/08
C01B25/45 Z
C03C4/00
C03C3/19
(21)【出願番号】P 2023537414
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2021094084
(87)【国際公開番号】W WO2022142073
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】202011635297.0
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519385445
【氏名又は名称】▲無▼▲錫▼小天鵝電器有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUXI LITTLE SWAN ELECTRIC CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.18,SOUTH CHANGJIANG ROAD,NEW DISTRICT,WUXI,JIANGSU 214028,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 青波
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲運▼奕
(72)【発明者】
【氏名】熊 明
(72)【発明者】
【氏名】高 源
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255517(JP,A)
【文献】特開平01-317133(JP,A)
【文献】特開平08-048539(JP,A)
【文献】国際公開第2002/028792(WO,A1)
【文献】特開2013-155114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/
A01P 3/
A01N 25/
C01B 25/
C03C 4/
C03C 3/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスであって、
前記可溶性殺菌ガラスの材料は
酸化銀0.1質量部~5質量部、
酸化ホウ素1質量部~20質量部、
酸化カルシウム10質量部~30質量部、
酸化リン30質量部~70質量部
、
酸化セリウム0.0001質量部~0.0006質量部、
着色剤0.0001質量部~0.0008質量部を含
み、
前記着色剤は、酸化銅であり、
前記銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス中の銀イオンは、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含む
ことを特徴とする
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス。
【請求項2】
前記着色剤は、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化鉄
、硫化カドミウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを
さらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス。
【請求項3】
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス。
【請求項4】
前記可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの溶出量は、1mg銀イオン/g水~500mg銀イオン/g水である
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス。
【請求項5】
前記可溶性殺菌ガラスの厚さ範囲は3mm~5mmであり、および/または
前記可溶性殺菌ガラスの長さ範囲は5mm~8mmである
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラス。
【請求項6】
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法であって、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップと、
前記混合物を熔融させてガラス液を得るステップと、
前記ガラス液を冷却成形して前記可溶性殺菌ガラスを得るステップと、を含み、
前記可溶性殺菌ガラス中の銀イオンは、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含み、
前記原料は、
硝酸銀、塩化銀、硫酸銀、炭酸銀、臭化銀、ヨウ化銀、酸化銀の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む銀源原料、および/または
ホウ酸を含むホウ素源原料、および/または
炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含むカルシウム源原料、および/または
リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、酸化リンの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含むリン源原料を含む
ことを特徴とする
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【請求項7】
前記混合物を熔融させてガラス液を得るステップは、
前記混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、前記ガラス液を得るステップを含む
ことを特徴とする請求項
6に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【請求項8】
前記混合物を熔融させてガラス液を得る処理の前に、前記混合物を予熱するステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項
6に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【請求項9】
前記混合物を予熱するステップは、前記混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップを含む
ことを特徴とする請求項
8に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【請求項10】
前記ガラス液を冷却成形して前記可溶性殺菌ガラスを得るステップは、
金属金型を予熱するステップと、
前記金属金型に前記ガラス液を注ぎ込んで自然冷却成形し、可溶性殺菌ガラスを得るステップと、を含む
ことを特徴とする請求項
6に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【請求項11】
前記金属金型を予熱するステップは、前記金属金型を200℃~300℃の温度範囲に予熱するステップを含む
ことを特徴とする請求項
10に記載の
銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月31日に中国国家知的財産局に提出された出願番号20202011635297.0及び「可溶性殺菌ガラス及び可溶性殺菌ガラスの調製方法」という発明の名称の中国特許出願の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は引用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、無機抗菌材料の技術分野に関し、特に、可溶性殺菌ガラス及び可溶性殺菌ガラスの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗菌材料は殺菌・抗菌性能を有する機能材料で、主に抗菌剤を添加することにより抗菌作用を発揮する。抗菌剤は、主に天然生物、有機及び無機抗菌剤の3種類に分類される。
【0004】
天然抗菌剤にはキトサンやソルビン酸などが多く研究されており、この抗菌剤は安全で環境にやさしく且つ抗菌性に優れているが、耐熱性が悪く薬効期間が短く生産条件が限られているため、産業化が困難である。
【0005】
有機抗菌剤は有機酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、ベンゾイミダゾール類などの有機物を抗菌成分とし、有害細菌、カビの繁殖を効果的に抑制するが、安定性が悪く、分解が容易で、通常毒性が大きい。
【0006】
無機抗菌剤は、主にゼオライトやシリカゲルなどの多孔質材料やガラスなどの材料に抗菌能を有する金属やそのイオンを添加して抗菌材料を得る。無機抗菌材料は有機・生物抗菌材料に比べて持効性が高く、広域スペクトル抗菌、耐熱性と安全性が良いという特徴がある。
【0007】
多くの無機抗菌剤の中で、銀は性能が比較的良く、使用が比較的広い抗菌剤の一つであり、銀担持抗菌ガラス材料は抗菌効果に優れ且つ安全性が良いため、広範な応用研究が研究されている。
【0008】
しかしながら、従来の技術の欠点の1つは、銀担持抗菌ガラス材料の徐放性能が不十分であることである。
【発明の概要】
【0009】
本出願は、上記の技術的課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【0010】
そのため、本出願の第1目的は、可溶性殺菌ガラスを提供することである。
【0011】
本出願の第2目的は、可溶性殺菌ガラスの調製方法を提供することである。
【0012】
本出願の第1目的を達成するために、本出願の実施例は、可溶性殺菌ガラスを提供し、可溶性殺菌ガラスの材料は、酸化銀0.1質量部~5質量部、酸化ホウ素1質量部~20質量部、酸化カルシウム10質量部~30質量部、酸化リン30質量部~70質量部を含む。
【0013】
本技術案は、可溶性殺菌ガラスにおける銀イオンの徐放速度及び徐放効率を合理的に制御するために、酸化ホウ素、酸化カルシウム及び酸化リンを主成分とする三元酸化物可溶性殺菌ガラスを提供する。酸化リンと酸化ホウ素の添加及び比例制御により、ホウ素カルシウムリン三元酸化物可溶性殺菌ガラス中で銀イオンを合理的な速さで徐放することができる。具体的には、出願人は、いかなる理論にもかかわらず、本出願を実現する過程で、酸化リンの添加は銀イオンの溶解率を増大させて銀イオンの放出を促進できることを見出した。逆に、酸化ホウ素の添加は銀イオンの溶解率を低下させて銀イオンの放出を抑制できる。したがって、本技術案では、酸化リンと酸化ホウ素の添加量と具体的な割合を制御する(すなわち、酸化リンの含有量は30質量部~70質量部、酸化ホウ素の含有量は1質量部~20質量部)。これにより、本技術案は、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの徐放速度および徐放効率を合理的に制御することができる。また、酸化カルシウムの添加は、可溶性殺菌ガラスの熔融温度を適切に低下させ、可溶性殺菌ガラスの製造コストを低減させ、可溶性殺菌ガラスの生産効率を向上させることができる。
【0014】
また、本出願の上記実施例により提供される技術案は、以下のような付加的な技術的特徴を有する。
【0015】
上記技術案において、可溶性殺菌ガラスは、着色剤0.0001質量部~0.0008質量部をさらに含む。
【0016】
着色剤を添加する目的は、可溶性殺菌ガラスの色を調整及び制御し、ユーザの多様なニーズに応えることである。
【0017】
上記のいずれかの技術案において、着色剤は、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化カドミウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
本技術案に採用される着色剤は、具体的には、金属酸化物着色剤である。金属酸化物着色剤は性能が安定しており、高温に強く、分解しにくい。
【0019】
上記のいずれかの技術案において、可溶性殺菌ガラスは、酸化セリウム0.0001質量部~0.0006質量部をさらに含む。
【0020】
可溶性殺菌ガラスに酸化セリウムを添加することにより、殺菌剤としての銀イオン中の高原子価銀イオンの割合を高めることができる。したがって、酸化セリウムの添加により、本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの殺菌効果及び殺菌効率を向上させることができる。
【0021】
上記のいずれかの技術案において、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンは、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含む。
【0022】
二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンは、一価状態の銀イオンに比べて、殺菌効果および殺菌効率がより高いため、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含む可溶性殺菌ガラスは、徐放効果だけでなく、殺菌効果にも優れている。
【0023】
上記のいずれかの技術案において、可溶性殺菌ガラスは、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0024】
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムを含むアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物は比較的活性な物理化学的性能を有し、可溶性殺菌ガラスの融点を効果的に下げることができる。酸化ケイ素と酸化アルミニウムの添加はガラスの形成を促進し、可溶性殺菌ガラスの粘度と機械的強度を向上させる。酸化マグネシウムは熔融ガラス液の清澄度と成形後の可溶性殺菌ガラスの光沢度と屈折率を高める。
【0025】
上記のいずれかの技術案において、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの溶出量は、1mg銀イオン/g水~500mg銀イオン/g水である。
【0026】
本技術案は、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの放出濃度及び速さを効果的に制御し、可溶性殺菌ガラスが長期的かつ効果的に殺菌作用を実現できるように保証することができる。
【0027】
上記のいずれかの技術案において、可溶性殺菌ガラスの厚さ範囲は3mm~5mmであり、および/または可溶性殺菌ガラスの長さ範囲は5mm~8mmである。
【0028】
上記サイズの可溶性殺菌ガラスは、多数の家電製品の生産加工ニーズを満たすことができ、比較的合理的な徐放周期と優れた徐放効率を有する。また、上記サイズの可溶性殺菌ガラスは、自然条件下で直ちに冷却することができ、炸裂や破片分離が生じにくく、成形時の歩留まりが高く、内部応力が小さく、アニール工程を実施しなくても良好な機械的強度と熱的安定性を有する。
【0029】
本出願の第2目的を達成するために、本出願の実施例は、酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップと、混合物を熔融させてガラス液を得るステップと、ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得るステップと、を含む可溶性殺菌ガラスの調製方法を提供する。
【0030】
本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る可溶性殺菌ガラスを得ることができ、本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る可溶性殺菌ガラスの全ての有益な効果を有するので、ここではこれ以上言及しない。
【0031】
上記技術案において、混合物を熔融させてガラス液を得ることは、混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、ガラス液を得ることを含む。
【0032】
上記温度制御は、各金属酸化物の十分な熔融を保証するとともに、本実施形態において均質で清澄な可溶性殺菌ガラスを得ることができるように保証する。
【0033】
上記技術案において、混合物を熔融させてガラス液を得る処理の前に、混合物を予熱することをさらに含む。
【0034】
予熱工程の目的は原料中の不純物と気体をさらに効果的に排出し、ガラス液が熔融過程で過度に気泡を発生させないように避け、可溶性殺菌ガラスの材質を堅固で緻密にするように保証することである。
【0035】
上記技術案において、混合物を予熱することは、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱することを含む。
【0036】
上記の予熱条件は、原料中の不純物とガスを効果的に除去することができる。
【0037】
上記技術案において、ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得ることは、金属金型を予熱することと、金属金型にガラス液を注ぎ込んで自然冷却成形し、可溶性殺菌ガラスを得ることと、を含む。
【0038】
冷却成形前に金属金型を予熱することにより、ガラス液が傾倒及び成形の過程で炸裂することを避けることができる。
【0039】
上記技術案において、金属金型を予熱することは、金属金型を200℃~300℃の温度範囲に予熱することを含む。
【0040】
上記の金属金型を予熱する温度制御は、冷却成形時にガラスが炸裂することを効果的に避け、歩留まりを向上させることができる。
【0041】
上記技術案において、原料は、硝酸銀、塩化銀、硫酸銀、炭酸銀、臭化銀、ヨウ化銀、酸化銀の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む銀源原料、および/またはホウ酸を含むホウ素源原料、および/または炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含むカルシウム源原料、および/またはリン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、酸化リンの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含むリン源原料を含む。
【0042】
銀、ホウ素、カルシウム、リンを含む原料は、酸化物として直接添加してもよいし、塩類化合物として添加してもよい。そのうち、金属塩類化合物を原料とすることは、金属酸化物を原料とすることに比べて、ガラスの均質度や清澄度を向上させることができる。
【0043】
本出願の追加的な態様および利点は、以下の説明部分で明らかになるか、または、本出願の実践によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本出願の上述及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面に関連して実施例の説明から明らかで理解しやすいものとなる。
【0045】
【
図1】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの1である。
【
図2】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの2である。
【
図3】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの3である。
【
図4】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの4である。
【
図5】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの5である。
【
図6】本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの6である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本出願の上述の目的、特徴、および利点をより明確に理解できるようにするために、以下、添付図面および具体的な実施形態に関連して、本出願についてさらに詳細に説明する。なお、本出願の実施例および実施例における特徴は、衝突することなく互いに組み合わせることができる。
【0047】
以下の説明では、本出願を十分に理解するために多くの具体的な詳細が述べられているが、本出願は、この説明とは異なる他の方法で実施することもできるので、本出願の保護範囲は、以下に開示される具体的な実施例によって限定されるものではない。
【0048】
以下、
図1~
図6を参照して、本出願のいくつかの実施例に係る可溶性殺菌ガラスおよび可溶性殺菌ガラスの調製方法について説明する。
【0049】
本実施例の可溶性殺菌ガラスの材料は、酸化銀(AgOおよび/またはAg2O)0.1質量部~5質量部、酸化ホウ素(B2O3)1質量部~20質量部、酸化カルシウム(CaO)10質量部~30質量部、酸化リン(P2O5)30質量部~70質量部を含む。
【0050】
例えば、本実施例の可溶性殺菌ガラスの材料は、具体的には、酸化銀0.1質量部、酸化ホウ素19.9質量部、酸化カルシウム10質量部、酸化リン70質量部を含む。
【0051】
さらに例えば、本実施例の可溶性殺菌ガラスの材料は、具体的には、酸化銀5質量部、酸化ホウ素20質量部、酸化カルシウム30質量部、酸化リン45質量部を含む。
【0052】
本出願の実施例は、可溶性ガラスを提供することを目的とする。ここで、可溶性ガラスとは、例えば水の液体中で、1種または複数種の機能イオンを緩やか且つ安定して放出することができる可溶性殺菌ガラスをいう。本出願の実施例の機能イオンは、具体的には、銀イオン(Ag+および/またはAg2+)である。銀イオンは良好な殺菌消毒効果を有し、ドープの形で金属酸化物ガラスの格子を占め、液体に浸漬または洗掘された環境下で時間の推移変化に伴って安定して放出され、長時間殺菌作用を実現する。
【0053】
銀イオンを添加した可溶性殺菌ガラスは洗濯機、エアコンなどの家電用品に適用して洗濯機の洗濯用水やエアコンが設置された室内空間を殺菌することができる。しかしながら、従来技術における問題の1つは、殺菌機能を実現する銀イオンの徐放性能が不十分であることである。
【0054】
具体的には、関連技術の可溶性殺菌ガラスにおける銀イオンの徐放性能を制御することは困難である。洗濯機に置いた銀イオンドープ可溶性殺菌ガラスを例に挙げると、一定の洗濯手順と洗濯時間範囲内で、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの放出速度が速すぎると、銀イオンが早く放出完了され、洗濯機の後期使用中の殺菌効果が低下し、さらに殺菌効果が失われることがある。可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの放出速度が遅すぎると、洗濯機の全使用中の殺菌効果がいずれも不十分であり、衣類や家紡用品に対する効果的な殺菌が困難になる。
【0055】
いかなる理論にもかかわらず、出願人は、本出願の実施例を実現する過程で、銀イオンの徐放速度は、銀イオンの添加量と基材としての可溶性ガラスの成分及び配合比との影響を受けることを見出した。従って、本出願の実施例は、可溶性殺菌ガラスにおける銀イオンの徐放速度及び徐放効率を合理的に制御するために、酸化ホウ素、酸化カルシウム及び酸化リンを主成分とする三元酸化物可溶性殺菌ガラスを提供する。ただし、酸化ホウ素、酸化カルシウムおよび酸化リンの質量比は、酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(1-20):(10-30):(30-70)である。上記の成分および配合比の原料は、ガラス形成領域内であることができる。酸化リンと酸化ホウ素との添加及び比例制御により、銀イオンがホウ素カルシウムリン三元酸化物可溶性殺菌ガラス中で合理的な速さで徐放することができる。酸化リンの添加は銀イオンの溶解率を増大させて銀イオンの放出を促進するが、酸化ホウ素の添加は銀イオンの溶解率を低下させて銀イオンの放出を抑制する。したがって、本実施例では、リンホウ素間の配合比を制御することにより、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの徐放速度および徐放効率を合理的に制御することができる。また、酸化カルシウムの添加は、可溶性殺菌ガラスの熔融温度を適切に低下させ、可溶性殺菌ガラスの製造コストを低減させ、可溶性殺菌ガラスの生産効率を向上させることができる。
【0056】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラスは、着色剤0.0001質量部~0.0008質量部をさらに含む。例えば、本実施例の可溶性殺菌ガラスにおける着色剤の含有量は、0.0001質量部または0.0004質量部または0.0008質量部であってもよい。着色剤を添加する目的は、可溶性殺菌ガラスの色を調整および制御することにある。ここで、当業者は、上記範囲内で、着色剤の添加量および具体的な種類について柔軟に選択および調整することができる。着色剤は、原料配合の過程で、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化リン等の基質原料と共に添加、相互混合することができ、可溶性殺菌ガラスが熔融加熱に入る過程で、着色剤を熔融ガラス液中に均一に分布させ、熔融及び冷却後に、均一に揃う色の可溶性殺菌ガラスを得ることができる。
【0057】
本出願の実施例の一部の実施形態において、着色剤は、酸化コバルト(Co2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄(Fe2O3および/またはFe3O4)、酸化銅(CuO)、硫化カドミウム(CdS)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。本実施形態の着色剤は、具体的には、金属酸化物着色剤である。金属酸化物着色剤は性能が安定しており、高温に強く、分解しにくい。
【0058】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラスは、酸化セリウム0.0001質量部~0.0006質量部をさらに含む。例えば、本実施例の可溶性殺菌ガラス中の酸化セリウムの含有量は、0.0001質量部または0.0003質量部または0.0006質量部であってもよい。希土類元素であるセリウムイオン(Ce3+)はエネルギー準位が豊富で、原子価が高いという特徴がある。ホウ素カルシウムリン三元酸化物可溶性殺菌ガラスに酸化セリウムを添加することにより、殺菌剤としての銀イオン中の高原子価銀イオン(すなわち、二価状態の銀イオンまたは三価状態の銀イオン)の割合を高めることができる。したがって、酸化セリウムの添加により、本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの殺菌効果及び殺菌効率を向上させることができる。
【0059】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンは、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含む。上述したように、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンは、一価状態の銀イオンに比べて、殺菌効果および殺菌効率がより高いため、二価状態の銀イオンおよび/または三価状態の銀イオンを含む可溶性殺菌ガラスは、徐放効果だけでなく、殺菌効果にも優れている。
【0060】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラスは、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせをさらに含む。酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムを含むアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物は比較的活性な物理化学的性能を有し、可溶性殺菌ガラスの融点(すなわち、熔融温度)を効果的に下げることができる。酸化ケイ素と酸化アルミニウムの添加はガラスの形成を促進し、可溶性殺菌ガラスの粘度と機械的強度を向上させる。酸化マグネシウムは熔融ガラス液の清澄度と成形後の可溶性殺菌ガラスの光沢度と屈折率を高める。
【0061】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの溶出量は、1mg銀イオン/g水~500mg銀イオン/g水である。本実施形態において、銀イオンの溶出量は、銀イオン溶出液を5C濾紙で濾過して測定試料と作成する方法で試験する。測定試料を作成した後、銀イオン計、原子吸収分光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)などの銀イオン濃度を測定できる試験分析装置で試料中の銀イオン濃度を測定する。本実施形態の試験で得られた30℃の温度条件と24時間の試験時間下での銀イオン溶出量は、XXmg銀イオン/g水~XXmg銀イオン/g水、すなわち、1(mg/(g・1L・24Hrs・30℃))~500(mg/(g・1L・24Hrs・30℃))である。
【0062】
本出願の実施例の一部の実施形態において、可溶性殺菌ガラスの厚さ範囲は3mm~5mmである。可溶性殺菌ガラスの長さ範囲は5mm~8mmである。可溶性殺菌ガラスのサイズおよび形状は、採用された成形金型のサイズおよび形状と一致する。本実施形態の可溶性殺菌ガラスは、シート状又は板状又は塊状に調製してもよいし、球形又は略球形等の形状に調製してもよい。銀イオンの徐放効率及び徐放周期は可溶性殺菌ガラスのサイズ及び形状による影響を受ける。厚さ範囲3mm~5mm、長さ範囲5mm~8mmの成形金型を用いて製造した可溶性殺菌ガラスは、多数の家電製品の生産加工ニーズを満たすことができ、比較的合理的な徐放周期と優れた徐放効率を有する。また、厚さ範囲3mm~5mm且つ長さ範囲5mm~8mmの可溶性殺菌ガラスは自然条件下で直ちに冷却することができ、炸裂や破片分離が生じにくく、成形時の歩留まりが高く、内部応力が小さく、アニール工程を実施しなくても良好な機械的強度と熱的安定性を有する。
【0063】
図1は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの1である。
図1に示すように、本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS102と、
混合物を熔融させてガラス液を得るステップS104と、
ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得るステップS106と、を含む。
【0064】
本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスでは、可溶性殺菌ガラスの総質量100質量部(100wt%)を基準にして、殺菌剤としての酸化銀の含量を0.1wt%~5wt%、酸化ホウ素の含量を1wt%~20wt%、酸化カルシウムの含量を10wt%~30wt%、酸化リンの含量を30wt%~70wt%とする。なお、本実施例では、可溶性殺菌ガラス中の各酸化物の割合関係を質量分率で限定する。各元素の酸化物を直接原料とする場合、本実施形態では、上記ステップS102における比例関係に基づいて原料の耐荷重計測を直接行うことができる。各元素の塩類化合物を直接原料とする場合、本実施形態では、各原料のモル質量と質量分率との換算関係から元の秤量比例を確定することができる。液体原料を用いる場合、本実施形態では、体積濃度と質量分率との換算関係から元の秤量比例を確定することができる。当業者は上述した換算および秤量方式を知っており、本出願の実施例はこれについては言及しない。
【0065】
また、本実施例では、酸化銀、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化リンを含む主原料のほか、他の金属酸化物副資材を添加することもできる。例えば、本実施形態では、硝酸銀(AgNO3)、リン酸カルシウム(Ca(H2PO4)2)、リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、ホウ酸(H3BO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co2O3)、酸化セリウムCeO2を原料として用いることができる。ここで、全原料の質量総和を100wt%として、各原料が全原料中に占める質量比は、硝酸銀の占有割合が3wt%、リン酸カルシウムの占有割合が78wt%、リン酸ナトリウムの占有割合が8.7wt%、リン酸アンモニウムの占有割合が0.9wt%、ホウ酸の占有割合が5.9wt%、酸化亜鉛の占有割合が2.55wt%、酸化銅の占有割合が0.4wt%、酸化コバルトの占有割合が0.05wt%、酸化セリウムの占有割合が0.5wt%である。少ない可溶性殺菌ガラスを調製する場合には、本出願の実施例の秤量プロセスは、分析天秤を用いて実現することができ、メノウ乳鉢や遊星ボールミルなどの小型の混合設備で原料の混合研磨を実現し、白金るつぼに入れた混合物を電気抵抗炉またはマッフル炉で熔融させ、最終的に白金るつぼ中のガラス液をアルミニウム板金型または鉄板金型の上に傾倒して冷却成形する。
【0066】
実際の生産において大量の可溶性殺菌ガラスを調製する場合、本出願の実施例の秤量プロセスは、大型台秤を用いて実現することができ、ミキシングミルにより原料の混合研磨を実現し、窯炉などの大型設備により混合物の熔融および冷却を実現する。
【0067】
なお、ステップS106の冷却成形工程は、自然冷却であってもよいし、炉内冷却であってもよいし、水焼入れ方式による冷却であってもよい。
【0068】
なお、ステップS104の熔融工程は、大気雰囲気中で行ってもよいし、還元雰囲気中や不活性ガス中で行ってもよい。
【0069】
冷却後、本実施形態は、可溶性殺菌ガラスの内部応力を除去するためにアニール工程を実施することもできる。アニール工程の温度範囲は200℃~500℃、アニール期間は2時間~4時間である。
【0070】
本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る可溶性殺菌ガラスを得ることができ、該可溶性殺菌ガラスには徐放性能の優れ、徐放効率の合理的に制御可能な銀イオン殺菌剤がドープされている。本出願の実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法は、本出願のいずれか1つの実施例に係る可溶性殺菌ガラスの有益な効果をすべて有し、ここではこれ以上言及しない。
【0071】
本出願の実施例の一部の実施形態では、混合物を熔融させてガラス液を得ることは、混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、ガラス液を得ることを含む。
図2は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの2である。
図2に示すように、本実施形態の可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS202と、
混合物を950℃~1350℃の温度範囲内で0.5時間~2時間の熔融を行い、ガラス液を得るステップS204と、
ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得るステップS206と、を含む。
【0072】
本実施形態のステップS204で採用した熔融工程における温度制御は、各金属酸化物の十分な熔融を保証するとともに、本実施形態では均質で清澄な可溶性殺菌ガラスを得ることができるように保証する。
【0073】
本出願の実施例の一部の実施形態において、調製方法は、混合物を熔融させてガラス液を得る処理の前に、混合物を予熱するステップをさらに含む。
図3は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの3である。
図3に示すように、本実施形態の可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS302と、
混合物を予熱するステップS304と、
混合物を熔融させてガラス液を得るステップS306と、
ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得るステップS308と、を含む。
【0074】
予熱工程の目的は原料中の不純物と気体をさらに効果的に排出し、ガラス液が熔融過程で過度に気泡を発生させないように避け、可溶性殺菌ガラスの材質を堅固で緻密にするように保証することである。
【0075】
本出願の実施例の一部の実施形態において、混合物を予熱することは、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱することを含む。
図4は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの4である。
図4に示すように、本実施形態の可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS402と、
混合物を250℃~350℃の温度範囲内で0.5時間~1.5時間予熱するステップS404と、
混合物を熔融してガラス液を得るステップS406と、
ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得るステップS408と、を含む。
【0076】
本実施形態は、混合物を250℃~350℃の温度範囲内で予熱し、予熱時間は0.5時間を超え1.5時間未満である。上記の予熱条件は、原料中の不純物とガスを効果的に除去することができる。
【0077】
本出願の実施例の一部の実施形態では、ガラス液を冷却成形して可溶性殺菌ガラスを得ることは、金属金型を予熱することと、金属金型にガラス液を注ぎ込んで自然冷却成形し、ガラス液を得ることと、を含む。
図5は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの5である。
図5に示すように、本実施形態の可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS502と、
混合物を熔融してガラス液を得るステップS504と、
金属金型を予熱するステップS506と、
金属金型にガラス液を注ぎ込んで自然冷却成形し、可溶性殺菌ガラスを得るステップS508と、を含む。
【0078】
本実施形態の金属金型は、アルミニウム製金型や鉄製金型などの耐熱性と熱伝導性に優れた金属金型であってもよい。冷却成形前に金属金型を予熱する目的は、ガラス液が傾倒及び成形の過程で炸裂することを避けることである。自然冷却成形とは、ガラス液を収容した金属金型を室温環境(例えば、20℃~30℃の間)に置いて自然冷却し、液状のガラス液が固体塊状のガラス体になるまで行うことをいう。
【0079】
本出願の実施例の一部の実施形態では、金属金型を予熱することは、金属金型を200℃~300℃の温度範囲に予熱することを含む。
図6は本出願の一実施例に係る可溶性殺菌ガラスの調製方法のステップフローチャートの6である。
図6に示すように、本実施形態の可溶性殺菌ガラスの調製方法は、
酸化銀:酸化ホウ素:酸化カルシウム:酸化リン=(0.1-5):(1-20):(10-30):(30-70)の質量比で原料を秤量混合し、混合物を得るステップS602と、
混合物を熔融させてガラス液を得るステップS604と、
金属金型を200℃~300℃の温度範囲に予熱するステップS606と、
ガラス液を金属金型に注ぎ込んで自然冷却成形し、可溶性殺菌ガラスを得るステップS608と、を含む。
【0080】
本実施形態では、金型を200℃~300℃の温度範囲内で予熱し、予熱時間は1時間~2時間とする。例えば、本実施形態は、原料の熔融と金属金型の予熱はそれぞれ2つの電気抵抗炉を用いて実現することができる。原料加熱の昇温速さと金属金型予熱の昇温速さは、当業者が加熱設備の性能に応じて選択して調整することができる。ただし、本実施形態は、混合物を熔融させてガラス液を得た後に予熱が完了し且つ温度が適切な金属金型を直ちに取り出して使用するように、原料が熔融温度に接近または到達した後に金属金型を予熱する電気抵抗炉を開く。
【0081】
本出願の実施例の一部の実施形態において、原料は銀源原料を含み、銀源原料は硝酸銀(AgNO3)、塩化銀(AgCl)、硫酸銀(Ag2SO4)、炭酸銀(Ag2CO3)、臭化銀(AgBr)、ヨウ化銀(AgI)、酸化銀(Ag2O)のうちの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0082】
本出願の実施例の一部の実施形態において、原料はホウ素源原料を含み、ホウ素源原料はホウ酸(H3BO3)を含む。
【0083】
本出願の実施例の一部の実施形態において、原料はカルシウム源原料を含み、カルシウム源原料は、炭酸カルシウム(CaCO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、硫酸カルシウム(CaSO4)、リン酸カルシウム(Ca(H2PO4)2またはCaHPO4)、塩化カルシウム(CaCl2)、酸化カルシウム(CaO)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0084】
本出願の実施例の一部の実施形態において、原料はリン源原料を含み、リン源原料は、リン酸カルシウム(Ca(H2PO4)2またはCaHPO4)、リン酸アンモニウム(NH4)3PO4)、酸化リン(P2O5)の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含む。
【0085】
銀源原料は酸化銀を供給するための原料である。それに応じて、ホウ素源原料、カルシウム源原料、リン源原料は、酸化ホウ素を供給するための原料、酸化カルシウムを供給するための原料、酸化リンを供給するための原料の順である。なお、銀、ホウ素、カルシウム及びリンを含む原料は、酸化物として直接添加してもよいし(すなわち、酸化銀、酸化ホウ素、酸化カルシウム及び酸化リンを原料として直接添加してもよいし)、塩類化合物として添加してもよい(例えば、塩化銀、ホウ酸、炭酸カルシウム、各種のリン酸塩、カルシウムリン酸塩等の物資を原料として添加してもよい)。ここで、塩類化合物を原料とすると、銀、ホウ素、カルシウム及びリンを含む各塩類化合物が高温条件下で酸化されて酸化物となり、熔融後に酸化物ガラスを得る。そのうち、金属塩類化合物を原料とすることは、金属酸化物を原料とすることに比べて、ガラスの均質度や清澄度を向上させることができる。
【0086】
以上より、本出願の実施例の有益な効果は、以下の通りである。
【0087】
1、本出願の実施例は、可溶性殺菌ガラスの材料選択及び配合比の調整により、可溶性殺菌ガラス中の銀イオンの放出濃度及び速さを効果的に制御し、可溶性殺菌ガラスが長期的かつ効果的に殺菌作用を実現できるように保証することができる。
【0088】
2、本出願の実施例は、可溶性殺菌ガラスの加工工程を調整することにより、機械的強度が高く、清澄度が高く、銀イオン負荷量が大きい可溶性殺菌ガラスを得ることができる。
【0089】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「具体的な実施例」等の説明は、該実施例または例に関連して説明された具体的な特徴、構造、材料、または特徴が本出願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上述した用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施例または実例を意味するものではない。さらに、記述された具体的な特徴、構造、材料、または特徴は、任意の1つまたは複数の実施例または例において適切な方法で結合することができる。
【0090】
以上は本出願の好ましい実施例に過ぎず、本出願を限定するものではなく、当業者にとって本出願は種々の変更及び変化が可能である。本出願の精神及び原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換、改良等も、本出願の保護範囲内に含まれるものとする。