(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】トキソプラズマタンパク質およびインフルエンザウイルスタンパク質を含むウイルス様粒子およびこれを用いた診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20241106BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241106BHJP
C07K 14/45 20060101ALN20241106BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20241106BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
G01N33/569 L
G01N33/53 N
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
C07K14/45 ZNA
C07K14/11
C12N7/01
(21)【出願番号】P 2023544409
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 KR2021018383
(87)【国際公開番号】W WO2022158705
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0009692
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520006964
【氏名又は名称】ヘルス・パーク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Health Park co,.ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョヌ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヨン
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525133(JP,A)
【文献】特表2009-524434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0045016(US,A1)
【文献】特表2005-524076(JP,A)
【文献】LEE, Su-Hwa et al.,Influenza M1 Virus-Like Particles Consisting of Toxoplasma gondii Rhoptry Protein 4,Korean J Parasitol,2017年04月30日,55(2),143-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53-33/577
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と、を含むウイルス-様粒子を含
み、前記トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質は、AMA1およびROP18で構成された群から選択された少なくとも1つである、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項2】
前記
ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク
質ROP
4をさらに含む、請求項1に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項3】
前記M1は、配列番号1のアミノ酸配列を有するものである、請求項1に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項4】
前記AMA1は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、
前記ROP4は、配列番号3のアミノ酸配列を有し、
前記ROP18は、配列番号4のアミノ酸配列を有するものである、請求項2に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項5】
ウイルス-様粒子において、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質およびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1の比率は3:1である、請求項1に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項6】
前記ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスおよびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを共同感染させて製造されたものである、請求項1に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項7】
共同感染時に、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスとインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを、3:1で感染させることを特徴とする、請求項5に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項8】
トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスに感染した個体の自己抗体の水準を診断することを特徴とする、請求項1に記載のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項の組成物を含む、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス多重診断キット。
【請求項10】
前記診断キットは、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キット、RIA(Radioimmnoassay)キット、サンドイッチ測定法(Sandwich assay)キット、ウェスタンブロット(Western Blot)キット、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)キット、および免疫組織化学染色(Immnohistochemical staining)キットで構成された群から選択されるいずれか1つである、請求項9に記載のトキソプラズマおよびインフルエンザウイルス多重診断キット。
【請求項11】
トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1と、を含むウイルス-様粒子を含む、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物に個体から分離された生物学的試料を接触させる段階と、
ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する段階と、を含
み、
前記トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質は、AMA1およびROP18で構成された群から選択された少なくとも1つである、
トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスの感染を多重診断するために必要な情報を提供する方法。
【請求項12】
前記
ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク
質ROP
4をさらに含む、請求項11に記載のトキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスの感染を多重診断するために必要な情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トキソプラズマタンパク質およびインフルエンザウイルスタンパク質を含むウイルス-様粒子を含むトキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスを診断するための組成物、キット、およびこれを用いたトキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス感染の有無を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)は、細胞内寄生虫であって、ヒトおよび動物に対するトキソプラズマ症(Toxoplasmosis)を引き起こす原因の原虫である(Astrid M. Tenter et al.)。トキソプラズマは、大きく接合子嚢(oocyst、オーシスト)、急増虫体(tachyzoit、タキゾイト)、緩増虫体(bradyzoit、ブラディゾイト)、分裂体(schizont、シゾント)、および生殖母体(gametocyte、ガメトサイト)段階の5種類の発育段階を経る。トキソプラズマは、固有宿主であるネコの糞便の接合子嚢(oocyst)によって汚染された水または野菜を摂取することによって感染するか、中間宿主であるブタ、ヒツジ、ウシなどの肉類にシスト(cyst)として存在するトキソプラズマを摂食するときに感染し得る。全世界人口の約3分の1以上がトキソプラズマに感染したものと推定され、国内においてもグループによって2ないし25%の感染率を示すものとして報告されている。
【0003】
特に、トキソプラズマが産婦を感染させたとき、その栄養型(trophozoite)は胎盤を経て胎児を感染させ得る。トキソプラズマの感染によって初期の胎児は流産または死産に至ることがあり、中後期の胎児は正常的分娩にもかかわらず、視力損傷、水頭症、精神薄弱などの先天的奇形が引き起こされ得る。また、健康な個体を感染させたトキソプラズマは、免疫系細胞、網状内皮系細胞などを破壊させるため、リンパ節炎、網膜脈絡膜炎、脳脊髄炎などの疾病を誘発し得、宿主の免疫不全時に脳において増殖したシストが活性化されるため、髄膜炎または網膜脈絡膜炎を引き起こし得る。
【0004】
一方、インフルエンザは、呼吸器ウイルスによるヒトの死亡において、主要な原因中の1つである。一般的な症状は、特に発熱、咽喉痛、呼吸困難、および筋肉痛を含む。インフルエンザシーズンのインフルエンザウイルスは、強い伝染性によって世界人口の10%~20%を感染させ、死亡者だけでも年間250,000人~500,000人に達する。これらの疾病の共通点は、他の疾病と類似した症状を有しているという点である。したがって、他の疾病との混同を減らすために、ラテックス凝集テスト(Latex Agglutination Test)、抗血清診断法(enzyme-linked immunosorbent assay,enzyme-linked immunospecific assay,ELISA)のような免疫学的方法、Nested PCR、real-time PCRのようなDNA検出方法など、多様な診断方法が使用されている。
【0005】
しかし、従来の診断方法は診断までの迅速性に劣るか、高価な装備使用による低い経済性、または低い感受性の問題があるため、迅速性、経済性、感受性が高い新たな診断方法が必要な状況である。
【0006】
[先行技術文献]
【0007】
[非特許文献]
【0008】
(非特許文献1)Astrid M.Tenter et al.,「Toxoplasma gondii:from animals to humans」,Int J Parasitol.2000 Nov;30(12-13),1217-1258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに関して、本発明者は、トキソプラズマを高い感受性で診断できるだけでなく、インフルエンザウイルスを同時に診断することができつつ、迅速性および経済性が高い方法を開発するために研究した結果、本発明に係るVLP形態の診断用組成物を含む診断方法および診断キットが、抗原溶解物(lysate antigen)および抗原タンパク質に比べて免疫学的特異性および感受性がより優れていることを確認することによって、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と、を含むウイルス-様粒子を含む、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物を提供する。
【0011】
本発明の他の側面として、前記トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物を含む、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス多重診断キットを提供する。
【0012】
本発明の他の側面として、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1と、を含むウイルス-様粒子を含む、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物に個体から分離された生物学的試料を接触させる段階と、ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する段階と、を含む、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスの感染を多重診断するために必要な情報を提供する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るトキソプラズマ抗原タンパク質およびインフルエンザウイルスM1タンパク質が含まれたウイルス-様粒子を含む診断用組成物は、高い特異性および感受性によってトキソプラズマに感染した個体の血清に存在する自己抗体と反応することができる。それだけでなく、インフルエンザウイルスに感染した個体に存在する自己抗体と反応することができる。したがって、前記ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ診断および/またはインフルエンザウイルス診断に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a-c】AMA1、ROP4、またはROP18遺伝子を含むrBV(組換えバキュロウイルス)、およびインフルエンザM1遺伝子を含むrBVをSF9昆虫細胞にトランスフェクションさせてAMA1、ROP4、またはROP18 VLPs(Virus-like particles)を収得する過程を図式化したものである。
【
図2】本明細書の一実施例において、マウスから感染血清を収得するInvivo試験過程を時系列的に示したものである。
【
図3】本明細書の一実施例において製作したVLPをELISAを用いて診断する方法に関する模式図を示したものである。
【
図4】Naiveマウス血清、P.berghei ANKA(マラリア原虫)またはT.gondii(トキソプラズマ)ME49に感染したマウスの血清をそれぞれTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)、AMA1-M1-VLPs、およびAMA1タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するAMA1-M1-VLPsの特異性を確認したものである。
【
図5】T.gondii ME49に感染したマウスの血清をそれぞれTLA、AMA1-M1-VLPs、およびAMA1タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するAMA1-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図6】T.gondii ME49に感染したヒト血清をそれぞれTLA、AMA1-M1-VLPs、およびAMA1タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するAMA1-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図7】Naiveマウス血清、P.berghei ANKA、またはT.gondii ME49に感染したマウス血清をそれぞれTLA、ROP4-M1-VLPs、およびROP4タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP4-M1-VLPsの特異性を確認したものである。
【
図8】T.gondii ME49に感染したマウス血清をそれぞれTLA、ROP4-M1-VLPs、およびROP4タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP4-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図9】T.gondii ME49に感染したヒト血清をそれぞれTLA、ROP4-M1-VLPs、およびROP4タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP4-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図10】Naiveマウス血清、P.berghei ANKAまたはT.gondii ME49に感染したマウス血清をそれぞれTLA、ROP18-M1-VLPs、およびROP18タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP18-M1-VLPsの特異性を確認したものである。
【
図11】T.gondii ME49に感染したマウス血清をそれぞれTLA、ROP18-M1-VLPs、およびROP18タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP18-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図12】T.gondii ME49に感染したヒト血清をそれぞれTLA、ROP18-M1-VLPs、およびROP18タンパク質がコーティングされた免疫プレートに接触させることによって、感染血清に対するROP18-M1-VLPsの感受性を確認したものである。
【
図13】TLA、AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsがそれぞれコーティングされた免疫プレートにNaiveマウス血清、T.gondii ME49に感染したマウス血清、インフルエンザM1 VLPs 10μgを接種したマウスの血清、およびNA(neuraminidase)VLPs 10μgを接種したマウスの血清をそれぞれ接触させた結果を示したものである。その結果、AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsにトキソプラズマ症およびインフルエンザウイルスの多重診断が可能であることを確認した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一側面は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と、を含むウイルス-様粒子(Virus-like particle,VLP)を含む、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物を提供する。
【0016】
前記組成物は、トキソプラズマ症およびインフルエンザウイルスを同時に多重診断するための用途である組成物であり得る。
【0017】
本明細書において使用された用語、「ウイルス-様粒子」(VLP)または「ウイルス-様粒子ら」(VLPs)は、ウイルス性タンパク質を伴うか、伴わない非感染性ウイルス性サブユニットを意味する。例えば、前記ウイルス-様粒子は、DNAまたはRNAゲノムが完全に欠如したものであり得る。一具体例において、ウイルス-様粒子は、遺伝子工学的な方法によって製造され得、構造タンパク質(core protein)としてインフルエンザウイルス由来のマトリックスタンパク質(M1)を含む。本発明のウイルス-様粒子は、別途の原因感染体、即ち、トキソプラズマがなくても遺伝工学的な方法によって製造され得る。
【0018】
本明細書において使用された用語、「インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1」(M1)は、インフルエンザウイルスの構造タンパク質であって、インフルエンザウイルスの外皮(envelop)である脂肪層内側にコート(coat)を形成する基質タンパク質(matrix protein)を意味する。前記インフルエンザウイルスは、A、B、およびCと命名されたサブタイプとして構成される。前記インフルエンザウイルスは、コアとウイルス外皮間の連結体として作用するマトリックスタンパク質(M1)の層で覆われて外形を成し、前記M1タンパク質は、インフルエンザウイルス-様粒子の開発において、構造タンパク質として広く使用され得る。本明細書のウイルス-様粒子は、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)を構造タンパク質として含み、一実施例として、前記M1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し得る。また、前記M1は、配列番号5の核酸配列によってコーディングされ得る。
【0019】
前記トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質は、トキソプラズマに対する免疫活性を誘導できるタンパク質であれば、特段その種類に制限されず本発明に用いられ得る。
【0020】
具体的には、本明細書の表面抗原タンパク質は、トキソプラズマに由来するSAG1(Membrane-associated surface antigen)、SAG2、GRA1(secreted dense-granule protein)、GRA2、GRA4、GRA7、MIC1(Microneme protein)、MIC2、MIC4、MIC6、MIC7、MIC8、MIC9、MIC10、MIC11、ROP1、ROP2、ROP3、ROP4、ROP5、ROP6、ROP7、ROP8、ROP9、ROP10、ROP11、ROP12、ROP13、ROP14、ROP15、ROP16、ROP17、ROP18、M2AP(MIC2 associated protein)、AMA1(Plasmodium apical membrane antigen 1)、およびBAG1などの多様な種類のタンパク質を含むことができ、好ましくはAMA1、ROP4、およびROP18のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0021】
このとき、前記AMA1は、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。また、前記ROP4は、配列番号3のアミノ酸配列を有し得る。また、前記ROP18は、配列番号4のアミノ酸配列を有し得る。
【0022】
また、前記AMA1は配列番号6の核酸配列によってコーディングされ得、ROP4は配列番号7の核酸配列によってコーディングされ得、ROP18は配列番号8の核酸配列によってコーディングされ得る。
【0023】
ここで、ウイルス-様粒子の表面に導入された抗原タンパク質は、純粋に分離された組換えタンパク質に比べて高い抗原性を有するため、効果的な中和抗体を形成することができ、これによってトキソプラズマ症およびインフルエンザウイルス多重診断用組成物として活用することができる。
【0024】
前記ウイルス-様粒子において、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質およびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1の比率は、5:1ないし1:5の比率で存在し得る。また、3:1、1:1、または1:3の比率で存在し得る。好ましくは、前記比率は、3:1であり得る。
【0025】
前記ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質をコーディングする遺伝子を含むベクターおよびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1をコーディングする遺伝子を含むベクターを用いて製造されたものであり得る。具体的には、前記ウイルス-様粒子は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスおよびインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを宿主細胞に共同感染させて製造されたものであり得る。
【0026】
このとき、宿主細胞は、昆虫細胞を用いることができる。前記昆虫細胞は、遺伝子発現のための宿主システムとして開発または市販されるすべての細胞が使用され得、例えば、ツマジロクサヨトウ昆虫細胞(Spodoptera frugiperda)SF21、SF9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、ビロードマメケムシ(Anticarsa gemmitalis)、カイコ(Bombyx mori)、キシタゴマダラヒトリ(Estigmene acrea)、ニセアメリカタバコガ(Heliothis virescens)、アワヨトウ(Leucania separata)、マイマイガ(Lymantria dispar)、テンマクケムシ(Malacasoma disstria)、ヨトウガ(Mammestra brassicae)、タバコ角虫(Manduca sexta)、コナガ(Plutella zylostella)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、およびエジプトヨトウ(Spodoptera littorlis)からなる群から1つ以上選択され得るが、これに限定されるものではない。一実施例において、SF9細胞を用いた。
【0027】
また、共同感染時にトキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスとインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1をコーディングする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスは、3:1で感染させてウイルス-様粒子を製造することができる。
【0028】
特に、前記トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1と、を含むウイルス-様粒子は、特異性および感受性が非常に優れる。したがって、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルスに感染した個体内に生成された自己抗体を検出することに使用され得る。
【0029】
例えば、トキソプラズマの感染時に、個体内に生成される抗-AMA1抗体、抗-ROP4抗体、または抗-ROP18抗体の存在の有無を判断することに、前記VLPsが活用され得る。それだけでなく、インフルエンザウイルスへの感染時に、個体内に生成される抗-M1抗体の存在の有無を判断することに活用され得る。
【0030】
本発明の具体的な実験例においては、トキソプラズマに感染したマウスおよびヒト患者から収得した血清と前記VLPsを用いてELISAを遂行した時に、高い感受性を示すことを確認した。前記VLPsは、マラリア原虫(P.berghei ANKA)に感染したマウスの血清やNaiveマウスの血清に対しては有意な抗体反応を示さなかったため、トキソプラズマに感染した個体を診断するために用いられ得ることを確認することができた。また、同一のELISA実験を遂行したにもかかわらず、TLA(RH Tachyzoite lysate antigen)やAMA1、ROP4、ROP18のようなタンパク質に対しては、トキソプラズマ感染マウス由来の血清であっても、前記VLPsに比べて抗体反応がほとんど現れなかったため、トキソプラズマ由来のタンパク質やトキソプラズマの溶解物を用いる場合よりも、本発明のVLPsがトキソプラズマの感染を敏感に診断する効果がより優れることを確認することができた。
【0031】
さらに、前記VLPsは、トキソプラズマおよびインフルエンザウイルスが同時に感染した個体においては、より効率的にトキソプラズマおよびインフルエンザウイルスの感染の有無を診断することができる。
【0032】
本発明の具体的な実験例においては、トキソプラズマに感染したマウス由来の血清だけでなく、インフルエンザウイルスが感染したマウス由来の血清に対しても本発明のVLPsが有意な抗原-抗体反応を示すことを確認し、よって、前記VLPsは、トキソプラズマとインフルエンザウイルスを同時に多重診断するための用途にも有用に用いられ得ることを確認することができた。
【0033】
本発明のさらに他の側面は、前記トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス診断用組成物を含むトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断キットを提供する。前記診断キットは、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と、を含むウイルス-様粒子を含むことができる。
【0034】
また、前記診断キットは、トキソプラズマ症およびインフルエンザウイルスを同時に多重診断するための用途である診断キットであり得る。
【0035】
このとき、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス診断用組成物、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質、およびウイルス-様粒子は、前述の通りである。一具体例としては、トキソプラズマAMA1タンパク質を発現するVLPsであるAMA1-M1-VLPs、トキソプラズマROP4タンパク質を発現するVLPsであるROP4-M1-VLPs、トキソプラズマROP18タンパク質を発現するVLPsであるROP18-M1-VLPsを用いてキットを製作することができる。このとき、前記VLPsは、診断キットの検出部に存在し得る。
【0036】
本明細書において使用された用語、「検出部」は、トキソプラズマ表面抗原タンパク質が含まれたVLP組成物が固定化された支持体を含む部分であって、トキソプラズマに対する抗体およびインフルエンザウイルスに対する抗体のうち少なくとも1つと前記VLP組成物が特異的に反応する場所を意味する。
【0037】
前記検出部のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物は、ディスペンサー器具を使用して検出部の支持体(例えば、ニトロセルロース膜)にコーティングし、該当部分に個体から分離された生物学的試料を接触させることによって、トキソプラズマの診断が遂行されるか、トキソプラズマおよびインフルエンザウイルス多重診断が遂行され得る。
【0038】
前記診断キットは、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キット、RIA(Radioimmnoassay)キット、サンドイッチ測定法(Sandwich assay)キット、ウェスタンブロット(Western Blot)キット、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)キット、および免疫組織化学染色(Immnohistochemical staining)キットで構成された群から選択される少なくとも1つであり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
一具体例におて、前記診断キットは、個体から分離された生物学的試料のIgG抗体、IgAまたはIgM抗体の存在の有無を探知して、トキソプラズマおよびインフルエンザウイルス感染の有無を個別または同時に診断することができ、その過程において、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)、RIA(Radioimmnoassay)、サンドイッチ測定法(Sandwich assay)、ウェスタンブロット(Western Blot)、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)、および免疫組織化学染色方法(Immnohistochemical staining)で構成された群から選択される少なくとも1つを含んで遂行され得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明のさらに他の側面は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1と、を含むウイルス-様粒子を含む、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス多重診断用組成物に個体から分離された生物学的試料を接触させる段階と、ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する段階と、を含む、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス感染を多重診断するために必要な情報を提供する方法を提供する。
【0041】
このとき、トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス診断用組成物、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質、およびウイルス-様粒子は、前述の通りである。また、本明細書において使用された用語、「個体から分離された生物学的試料」は、好ましくは体外に分泌される体液であって、血液、血清、血漿、尿、涙、唾液、乳汁などを含み、より好ましくは個体から収得した血液であり得るが、これに限定されない。このとき、個体は、イヌ、ネコ、またはヒトのような哺乳動物であり得、好ましくはヒトであり得る。
【0042】
前記ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する段階は、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)、RIA(Radioimmnoassay)、サンドイッチ測定法(Sandwich assay)、ウェスタンブロット(Western Blot)、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)、および免疫組織化学染色方法(Immnohistochemical staining)で構成された群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0043】
前記ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する方法は、抗原-抗体反応物または標識因子を検出する方法であり得る。前記抗原-抗体反応物または標識因子の種類によって、当業者に公知された方法を用いることができ、具体的には、肉眼、検出装備、検出試薬などを用いることができる。前記検出装備としては、共焦点レーザースキャナー(confocal laser scanner)を用いることができ、前記検出試薬は、検査をしようとする標識因子(analyte)の存在を肉眼またはその他の器具を通じて外部からの識別が可能なようにする所定の標識試薬(labeled reagent)、補助的特異結合部材、および/または信号発生システムの構成成分を含むことができる。標識の検出試薬は、既に本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によく知られている。
【0044】
このような標識の形態は、触媒、酵素(例えば、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどであって、より具体的な例としては、酵素基質と組み合わせて共に使用される塩基性ホスファターゼおよび西洋わさびペルオキシダーゼなど)、酵素基質(例えば、ニトロブルーテトラゾリウム、3,5’、5,5’-テトラニトロベンジジン、4-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドールホスフェート、化学発光酵素基質としてはジオキセタン、および誘導体とこれらの類似体)、蛍光化合物(例えば、フルオレセイン(fluorescein)、フィコビリタンパク質(phycobiliprotein)、ローダミン(rhodamine)などとこれらの誘導体および類似体)、化学発光化合物、金属ゾル(Metal sol)、染料ゾル(Dye sol)、微粒子ラテックス(Particulate latex)、カラーインジケータ(Color Indicator)、リポソームに含まれた着色物質(Color matter)、カーボンゾル、セレニウムのような非金属ゾルなどがあるが、これに限定されない。
【0045】
本発明のさらに他の側面は、前記トキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス診断用組成物に個体から分離された生物学的試料を接触させる段階と、ウイルス-様粒子に結合する抗体を検出する段階と、を含む、トキソプラズマおよび/またはインフルエンザウイルス感染を多重診断する方法を提供する。
【0046】
本発明のさらに他の側面は、トキソプラズマ由来の表面抗原タンパク質と、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と、を含むウイルス-様粒子のトキソプラズマ症および/またはインフルエンザウイルス感染の診断用途を提供する。具体的には、前記用途は、トキソプラズマ症を診断するか、トキソプラズマ症およびインフルエンザウイルスを同時に多重診断するための用途であり得る。
【0047】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明することにする。これらの実施例は、ひとえに本発明を例示するためのものとして、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明なことである。
【0048】
I.トキソプラズマ抗原およびインフルエンザ抗原を含むVLPの製造
【0049】
製造例1.トキソプラズマ抗原を発現するバキュロウイルスの製造
【0050】
製造例1.1.トキソプラズマcDNAの収得
【0051】
トキソプラズマRHからAMA1、ROP4、およびROP18をコーディングするRNAを抽出するために、トキソプラズマRHサンプルからRNAを収得した。その後、抽出された抗原RNAをRT-PCRを遂行して、トキソプラズマ由来のcDNAを収得した。その後、収得されたcDNAに基づいてdsDNAを収得した。
【0052】
製造例1.2.抗原cDNAの収得
【0053】
目的遺伝子に対するPCRを遂行するために、AMA1、ROP4、およびROP18を増幅するためのプライマーをデザインおよび注文した。PCR用酵素TaKaRa Ex TaqTM 0.25μL、10X Ex Taq バッファー5μL、dNTP混合物4μL、テンプレート1μL、フォワードプライマー2μL、およびリバースプライマー2μLの混合物に総体積が50μLになるよう蒸留水を入れた。その後、PCRを98℃において10秒、55℃において30秒、72℃において1分の条件で30~40サイクルを遂行した。その後、アガロースゲルにDNAマーカーおよびローディング染料(loading dye)(6x)を希釈したPCR増幅産物をゲルにローディングした。その後、UVなどを用いてPCR増幅産物を確認した。その後、所望の遺伝子が位置するゲルから抗原をコーディングするDNAを抽出した。
【0054】
前記において、AMA1の遺伝子は、フォワードプライマーとして5’-AAAGAATTCACCATGGGGCTCGTGGGCGTACA-3’(配列番号11)およびリバースプライマーとして5’-TTACTCGAGCTAGTAATCCCCCTCGACCA-3’(配列番号12)を用い、ROP4の遺伝子は、フォワードプライマーとして5’-AAAGCATGCACCATGGGGCACCCTACCTCTTT-3’(配列番号13)およびリバースプライマーとして5’-TTAGGTACCTCACGTTTCCGGTGGTGGCAT-3’(配列番号14)を用い、ROP18の遺伝子は、フォワードプライマーとして5’-AAAGGATCCACCATGTTTTCGGTACAGCGGCC-3’(配列番号15)およびリバースプライマーとして5’-TTATCTAGATTATTCTGTGTGGAGATGTTC-3’(配列番号16)を用いた。
【0055】
製造例1.3.抗原遺伝子の増幅
【0056】
製造例1.2において抽出したトキソプラズマ抗原であるAMA1、ROP4、およびROP18のDNAをTAベクターに積載させた。その後、抗原遺伝子が積載されたTAベクターを大腸菌細胞に形質転換させた後、これを培養した。形質転換された大腸菌細胞を培養した後、これからAMA1、ROP4、およびROP18をコーディングする遺伝子を収得した。
【0057】
製造例1.4.抗原遺伝子が積載されたpFast-Bacプラスミドの製造
【0058】
製造例1.3において収得したAMA1、ROP4、およびROP18抗原遺伝子をpFast-Bacベクターにそれぞれ積載させた。抗原遺伝子が積載されたpFast-BacベクターをDH10B細胞に形質転換させた。形質転換された細胞を培養して抗原遺伝子が積載されたpFast-Bacベクターを多量に収得した。
【0059】
製造例1.5.トキソプラズマ抗原を発現するバキュロウイルスの製造
【0060】
AMA1、ROP4、およびROP18のDNAが積載されたpFast-Bacベクターをcellfectin II(Invitrogen,USA)を使用してSF9細胞内に形質感染させた。Bac-to-Bac発現システム(Invitrogen)を通じて製造会社のマニュアルにしたがいAMA1、ROP4、およびROP18を発現する組換えバキュロウイルス(rBV)を製造した。
【0061】
また、インフルエンザウイルスM1を発現するrBVを前記と同一の方法で製造した。このとき、M1の遺伝子は、フォワードプライマー5’-AAAGGATCCACCATGAGTCTTCTAACCGAGGT-3’(配列番号9)およびリバースプライマー5’-TTACTCGAGTTACTCTAGCTCTATGTTGAC-3’(配列番号10)を用いてRT-PCRを通じて増幅した。
【0062】
実施例1.トキソプラズマ抗原およびインフルエンザ抗原を含むVLPの製造:AMA1-M1-VLPs
【0063】
AMA1およびM1タンパク質を含む第1トキソプラズマVLPを製造するために、製造例1を通じて製造したAMA1 rBVおよびM1 rBVをSF9細胞に共同感染させた。このとき、M1 rBVとAMA1抗原 rBVの比率は、1:3として感染させた。その後、感染させたSF9細胞を培養し、SF9細胞の死滅率が30%~40%になったときにハーベストを遂行した。具体的には、培養した細胞および培養液を6,000rpmで30分間遠心分離して上清液を集めた後、30,000rpm、4℃において30分間遠心分離してペレット化した。VLPsは、スクロース勾配を通じて精製した。また、VLPsは、使用時までリン酸塩-緩衝生理食塩水(PBS)で再懸濁させた。このように、AMA1抗原およびM1抗原を発現するVLPをAMA1-M1-VLPsと命名した。AMA1-M1-VLPを製造する過程に関する例示を
図1aに図示した。
【0064】
実施例2.トキソプラズマ抗原およびインフルエンザ抗原を含むVLPの製造:ROP4-M1-VLPs
【0065】
また、ROP4およびM1タンパク質を含む第2トキソプラズマVLPを製造するために、前記実施例1と同様の方法でSF9に製造例1を通じて製造したROP4 rBVおよびM1 rBVを共同感染させてROP4-M1-VLPsを収得した(
図1b)。
【0066】
実施例3.トキソプラズマ抗原およびインフルエンザ抗原を含むVLPの製造:ROP18-M1-VLPs
【0067】
また、ROP18およびM1タンパク質を含む第3トキソプラズマVLPを製造するために、前記実施例1と同様の方法でSF9に製造例1を通じて製造したROP18 rBVおよびM1 rBVを共同感染させてROP18-M1-VLPsを収得した(
図1c)。
【0068】
II.VLPsを用いたトキソプラズマおよびインフルエンザの診断
【0069】
製造例2.トキソプラズマおよびマラリア感染マウスから血清を採取
【0070】
トキソプラズマ(ME49 strain)のシスト(cyst)300cyst/匹(hd)を7週齢のfemale BALB/Cマウスに経口感染(oral infection)させ、眼窩静脈叢から採血後に遠心分離する方式で感染血清を収得した。前記in-vivo過程に対する例示的な順序は
図2に示した。また、マラリア原虫(P.berghei ANKA)0.5%(0.5×10
4)をマウスに感染させた後、感染したマウスから血清を収集した。
【0071】
実験例1.AMA1-M1-VLPsとIgG抗体反応試験
【0072】
実施例1を通じて収得した本発明のAMA1-M1-VLPsが、実際にトキソプラズマに感染した個体を診断できるか否かを確認するために、トキソプラズマに感染したマウスおよびヒト患者の血清を用いて、AMA1-M1-VLPsが血清内のトキソプラズマ特異抗体と反応するか否かをELISAを通じて確認した(実験例1.1ないし1.3)。
【0073】
実験例1.1.マウス血清におけるAMA1-M1-VLPsとIgG抗体反応の特異性試験
【0074】
実施例1において収得したAMA1-M1-VLPs、AMA1タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。前記TLAは、トキソプラズマRHの生活史のうち急増中体(tachyzoit)状態であるものの溶解物抗原を意味する。その後、マラリア原虫(P.berghei ANKA)を感染させたマウス血清14個、T.gondii(トキソプラズマ)ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個を100倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。マラリア原虫やトキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0075】
その結果、3種類のコーティングした抗原中においてTLAおよびAMA1タンパク質抗原は、どの血清にも反応しなかった。これとは異なり、AMA1-M1-VLPsは、Naive血清およびマラリア原虫を感染させた血清とはほとんど反応せずに、トキソプラズマを感染させた血清に対してのみ高い反応性を示し、AMA1-M1-VLPsと血清内のトキソプラズマ特異IgG抗体間の特異性があることを確認した(
図4)。
【0076】
実験例1.2.マウス血清におけるAMA1-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0077】
前記実験例1.1において、AMA-M1-VLPsがトキソプラズマ特異IgG抗体と特異的に結合することを確認したことに加え、これらの反応の感受性を確認するために、前記IgG抗体が含まれた血清を多様な濃度で処理して実験例1.1と同一の実験を遂行した。実施例1において収得したAMA1-M1-VLPs、AMA1タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondii ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0078】
その結果、実験例1.1と同様に、AMA1-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたマウス血清に対する特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度の血清に対して最も感受性が高いことを確認した(
図5)。
【0079】
実験例1.3.ヒト血清におけるAMA1-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0080】
トキソプラズマに感染したヒトの血清に対する抗体反応の感受性を確認するために、前記実験例1.1および1.2と類似した方法で実験を遂行した。実施例1において収得したAMA1-M1-VLPs、AMA1タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondiiに感染した患者の血清10個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0081】
その結果、マウス血清を用いた実験と同様に、AMA1-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたヒト血清に対しても特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度の血清に対して最も感受性が高いことを確認した(
図6)。
【0082】
実験例2.ROP4-M1-VLPsとIgG抗体反応試験
【0083】
実験例1と同様に、実施例2を通じて収得した本発明のROP4-M1-VLPsが、実際にトキソプラズマに感染した個体を診断できるか否かを確認するために、トキソプラズマに感染したマウスおよびヒト患者の血清を用いて、ROP4-M1-VLPsが血清内のトキソプラズマ特異抗体と反応するか否かをELISAを通じて確認した(実験例2.1ないし2.3)。
【0084】
実験例2.1.マウス血清におけるROP4-M1-VLPsとIgG抗体反応の特異性試験
【0085】
実施例2において収得したROP4-M1-VLPs、ROP4タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、マラリア原虫(P.berghei ANKA)を感染させたマウス血清14個、T.gondii(トキソプラズマ)ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個を100倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。マラリア原虫やトキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0086】
その結果、3種類のコーティングした抗原中においてTLAおよびAMA1タンパク質抗原は、どの血清にも反応しなかった。これとは異なり、ROP4-M1-VLPsは、Naive血清およびマラリア原虫を感染させた血清とはほとんど反応せずに、トキソプラズマを感染させた血清に対してのみ高い反応性を示し、ROP4-M1-VLPsと血清内のトキソプラズマ特異IgG抗体間の特異性があることを確認した(
図7)。
【0087】
実験例2.2.マウス血清におけるROP4-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0088】
前記実験例2.1において、ROP4-M1-VLPsがトキソプラズマ特異IgG抗体と特異的に結合することを確認したことに加え、これらの反応の感受性を確認するために、前記IgG抗体が含まれた血清を多様な濃度で処理して実験例2.1と同一の実験を遂行した。実施例2において収得したROP4-M1-VLPs、ROP4タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondii ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0089】
その結果、実験例2.1と同様に、ROP4-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたマウス血清に対する特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度に対して最も感受性が高いことを確認した(
図8)。
【0090】
実験例2.3.ヒト血清におけるROP4-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0091】
トキソプラズマに感染したヒトの血清に対する抗体反応の感受性を確認するために、前記実験例2.1および2.2と類似した方法で実験を遂行した。実施例2において収得したROP4-M1-VLPs、ROP4タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondiiに感染した患者の血清10個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0092】
その結果、マウス血清を用いた実験と同様に、AMA1-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたヒト血清に対しても特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度の血清に対して最も感受性が高いことを確認した(
図9)。
【0093】
実験例3.ROP18-M1-VLPsとIgG抗体反応試験
【0094】
実験例1と同様に、実施例3を通じて収得した本発明のROP18-M1-VLPsが、実際にトキソプラズマに感染した個体を診断できるか否かを確認するために、トキソプラズマに感染したマウスおよびヒト患者の血清を用いて、ROP18-M1-VLPsが血清内のトキソプラズマ特異抗体と反応するか否かをELISAを通じて確認した(実験例3.1ないし3.3)。
【0095】
実験例3.1.マウス血清におけるROP18-M1-VLPsとIgG抗体反応の特異性試験
【0096】
実施例3において収得したROP18-M1-VLPs、ROP18タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、マラリア原虫(P.berghei ANKA)を感染させたマウス血清14個、T.gondii(トキソプラズマ)ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個を100倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。マラリア原虫やトキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。その結果、3種類のコーティングした抗原中においてTLAおよびAMA1タンパク質抗原は、どの血清にも反応しなかった。これとは異なり、ROP18-M1-VLPsは、Naive血清およびマラリア原虫を感染させた血清とはほとんど反応せずに、トキソプラズマを感染させた血清に対してのみ高い反応性を示し、ROP18-M1-VLPsと血清内のトキソプラズマ特異IgG抗体間の特異性があることを確認した(
図10)。
【0097】
実験例3.2.マウス血清におけるROP18-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0098】
前記実験例3.1において、ROP18-M1-VLPsがトキソプラズマ特異IgG抗体と特異的に結合することを確認したことに加え、これらの反応の感受性を確認するために、前記IgG抗体が含まれた血清を多様な濃度で処理して実験例3.1と同一の実験を遂行した。実施例3において収得したROP18-M1-VLPs、ROP18タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondii ME49 300cystsを感染させたマウス血清14個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0099】
その結果、実験例3.1と同様に、ROP18-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたマウス血清に対する特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度の血清に対して最も感受性が高いことを確認した(
図11)。
【0100】
実験例3.3.ヒト血清におけるROP18-M1-VLPsとIgG抗体反応の感受性試験
【0101】
トキソプラズマに感染したヒトの血清に対する抗体反応の感受性を確認するために、前記実験例3.1および3.2と類似した方法で実験を遂行した。実施例3において収得したROP18-M1-VLPs、ROP18タンパク質、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。その後、T.gondiiに感染した患者の血清10個をそれぞれ100倍、300倍、900倍に希釈してELISAを進めた(
図3)。トキソプラズマを感染させていないマウスの血清を対照群(Naive)として用いた。
【0102】
その結果、マウス血清を用いた実験と同様に、AMA1-M1-VLPsは、トキソプラズマ特異IgGが含まれたヒト血清に対しても特異性が最も高いものとして示され、その中でも100倍に希釈した濃度の血清に対して最も感受性が高いことを確認した(
図12)。
【0103】
実験例4.AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、ROP18-M1-VLPsを用いたトキソプラズマおよびインフルエンザの同時診断
【0104】
実施例1ないし実施例3において収得したAMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、ROP18-M1-VLPs、およびTLA(RH Tachyzoite lysate antigen)をそれぞれ4μg/mLの濃度で96ウェル免疫プレートにコーティングした。
【0105】
その後、Naiveマウス血清、T.gondii ME49 300cystsを感染させたマウス血清、インフルエンザM1 VLPs 10μgを接種したマウスの血清、およびNA(neuraminidase) VLPs 10μgを接種したマウスの血清を100倍に希釈してELISAを進めた。
【0106】
ここで、NA VLPsは、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)においてNAのcDNAを増幅させ、T.gondii VLPsを製造する方法と同一の方法で製造した。
【0107】
その結果、前記4種類の抗原がコーティングされた免疫プレートのうち、AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsがコーティングされた免疫プレートにおいて492nmでOD値を測定したときに、トキソプラズマを感染させたマウス血清において有意に高いIgG抗体反応が示された。それだけでなく、同時にインフルエンザM1 VLPsまたはNA VLPs 10μgを接種したマウスの血清に対しても、0.2以上の値を測定することにより、前記AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsがコーティングされた免疫プレートでトキソプラズマ症およびインフルエンザウイルスの多重診断が可能であることを確認した(
図13)。
【0108】
結論的には、AMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsは、トキソプラズマに感染した個体の血清に存在する抗-AMA1抗体、抗-ROP4抗体、および/または抗-ROP18抗体を高い感受度と特異性によって検出可能なだけでなく、インフルエンザウイルスに感染した個体の血清に存在する抗-M1抗体または高い感受度と特異性によって検出可能なことを確認した。したがって、本願のAMA1-M1-VLPs、ROP4-M1-VLPs、およびROP18-M1-VLPsは、トキソプラズマに感染した個体および/またはインフルエンザウイルスに感染した個体を同時に診断するための組成物として使用され得る。
【配列表】