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▶ 株式会社岩谷技研の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】操作器具および飛翔体
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/70 20060101AFI20241106BHJP
   B64D 1/12 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B64B1/70
B64D1/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024037338
(22)【出願日】2024-03-11
【審査請求日】2024-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
(72)【発明者】
【氏名】棧敷 和弥
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3187212(JP,U)
【文献】特開2017-043161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 1/12
B64B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体のキャビンの内部から前記キャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作器具であって、
前記操作器具は、前記投下物の投下を操作するための操作ワイヤを備え、
前記操作ワイヤは前記キャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端は前記キャビンの内部に設けられたハンドルに接続されるとともに、その他端は前記投下物または前記投下物を収める収納体に係合部材を介して切離可能に接続されており、前記操作ワイヤの引張操作によって前記係合部材の解除により前記操作ワイヤの他端と前記投下物または前記収納体とが切離されることで前記投下物が投下されるように構成されている、操作器具。
【請求項2】
前記投下物は、バラストまたはトレイルロープである、請求項1に記載の操作器具。
【請求項3】
前記操作器具は、前記貫通孔を塞ぐ密閉部材を備える、請求項1に記載の操作器具。
【請求項4】
前記密閉部材は、
前記操作ワイヤまたは前記ハンドルに設けられた凹状部材または凸状部材と、
前記貫通孔に固定される凸状部材または凹状部材と
を備える、請求項に記載の操作器具。
【請求項5】
前記操作ワイヤと、前記投下物または前記投下物を収める収納体とは係合部材によって切離可能に接続されており、前記操作ワイヤの引張操作により前記投下物または前記収納体と前記操作ワイヤとの係合が解除されるように構成されている、請求項1に記載の操作器具。
【請求項6】
前記係合部材は、係合ピンを備える、請求項に記載の操作器具。
【請求項7】
前記操作ワイヤまたは前記ハンドルに設けられる前記凹状部材あるいは前記凸状部材のうちの前記操作ワイヤを取り付けるための凹部には、前記凹部を埋める充填物を備える、請求項に記載の操作器具。
【請求項8】
前記操作ワイヤのうちの前記キャビンの外側の部分は、チューブ状のアウターワイヤを含み、前記アウターワイヤ内にインナーワイヤが挿入された構造となっており、
前記密閉部材は、前記アウターワイヤの前記キャビン側の端部を受けるアウター受け部材を含み、前記アウター受け部材は、前記貫通孔上に位置するように前記キャビンの外側に配置されている、請求項に記載の操作器具。
【請求項9】
前記凹状部材および/または前記凸状部材はシリコンを含み、前記ワイヤの表面は真空グリスで被覆されている、請求項に記載の操作器具。
【請求項10】
浮力を発生する気嚢と前記気嚢に吊り下げられたキャビンとを備えた飛翔体であって、
前記キャビンは、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の操作器具を有している、飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作器具および飛翔体に関し、特に、飛翔体のキャビンの内部からキャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作器具、およびこのような操作器具を備えた飛翔体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人(搭乗者)を収容する容器であるキャビンを備えた気球、飛行船などの飛翔体がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許7031920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の気球などは、上部が開口している箱体の中に搭乗者がおり、単に人がバラストを投下するものであり、外部と隔離されたキャビンに搭乗者が搭乗する場合における投下物の投下方法については何ら開発されていなかった。
本発明は、キャビンを備えた飛翔体においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物を簡単に操作することが可能な操作器具およびこのような操作器具を備えた飛翔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
飛翔体のキャビンの内部から前記キャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作器具であって、
前記操作器具は、操作ワイヤを備え、
前記操作ワイヤは前記キャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端は前記キャビンの内部に設けられたハンドルに接続されるとともに、その他端は前記投下物または前記投下物を収める収納体に切離可能に接続されている、操作器具。
(項目2)
前記操作器具は、前記貫通孔を塞ぐ密閉部材を備える、項目1に記載の操作器具。
(項目3)
前記密閉部材は、
前記操作ワイヤまたは前記ハンドルに設けられた凹状部材または凸状部材と、
前記貫通孔に固定される凸状部材または凹状部材と
を備える、項目2に記載の操作器具。
(項目4)
前記操作ワイヤと、前記投下物または前記投下物を収める収納体とは係合部材によって切離可能に接続されており、前記操作ワイヤの引張操作により前記投下物あるいは前記収納体と前記操作ワイヤとの係合が解除されるように構成されている、項目1に記載の操作器具。
(項目5)
前記係合部材は、係合ピンを備える、項目4に記載の操作器具。
(項目6)
前記操作ワイヤまたは前記ハンドルに設けられる前記凹状部材あるいは前記凸状部材のうちの前記操作ワイヤを取り付けるための凹部には、前記凹部を埋める充填物を備える、項目3に記載の操作器具。
(項目7)
前記操作ワイヤのうちの前記キャビンの外側の部分は、チューブ状のアウターワイヤを含み、前記アウターワイヤ内にインナーワイヤが挿入された構造となっており、
前記密閉部材は、前記アウターワイヤの前記キャビン側の端部を受けるアウター受け部材を含み、前記アウター受け部材は、前記貫通孔上に位置するように前記キャビンの外側に配置されている、項目3に記載の操作器具。
(項目8)
前記凹状部材および前記凸状部材はシリコンを含み、前記ワイヤの表面は真空グリスで被覆されている、項目3に記載の操作器具。
(項目9)
前記投下物は、バラストまたはトレイルロープである、項目1に記載の操作器具。
(項目10)
浮力を発生する気嚢と前記気嚢に吊り下げられたキャビンとを備えた飛翔体であって、
前記キャビンは、項目1~項目9のいずれか一項に記載の操作器具を有している、飛翔体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、キャビンを備えた飛翔体においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物を簡単に操作することが可能な操作器具を備えた飛翔体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1による操作器具100を説明するための図であり、操作器具100の全体構成を示す。
図2図1のR部分を構成する部材の構造を個別に示す図。
図3】操作器具100の非操作時にキャビンの壁部10の貫通孔10aが密閉されている状態を示す図。
図4】操作器具100の操作時にキャビンの壁部10の貫通孔10aの密閉が解除された状態を示す図。
図5】操作器具100および収納体160が取り付けられたキャビン1aを備えた飛翔体1を示す図。
図6】操作器具100の操作でバラストBaを投下するための構造(バラスト投下構造)を示す図。
図6A】収納体160の保持にベルト部材180を用いたバラスト投下構造を示す図。
図6B図6Aのベルト部材を拡大して示す図。
図7】操作器具100の操作でトレイルロープTrを投下するための構造(ロープ投下構造)を示す図。
図8】トレイルロープTrの働きを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
本発明は、キャビンを備えた飛翔体においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物を簡単に操作することが可能な操作器具を得ることを課題とし、
飛翔体のキャビンの内部からキャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作器具であって、
操作器具は、操作ワイヤを備え、
操作ワイヤはキャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端はキャビンの内部に設けられたハンドルに接続されるとともに、その他端は投下物または投下物を収める収納体に切離可能に接続されている、操作器具を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0010】
従って、本発明の操作器具は、飛翔体のキャビンの内部からキャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作ワイヤとして、キャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端がキャビン内部のハンドルに接続され、その他端が投下物またはその収納体に切離可能に接続されたものを備えたものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではない。
【0011】
(飛翔体)
例えば、飛翔体は、キャビンを有するものであれば、気球であっても飛行船であってもよい。
【0012】
(キャビン)
キャビンは、人(搭乗者)を収容する容器であれば、材質や大きさなどは特に限定されない。超高高度への飛翔などを目的とした場合には内部が密閉されたものが好ましい。しかしながらそれ以外の場合では、密閉されていないものでもよい。
【0013】
例えば、キャビンの壁部に形成された操作ワイヤを通す貫通孔には、貫通孔を塞ぐ密閉部材が設けられていることが好ましい。この場合、キャビン内部の気密度を高めることができる。
【0014】
ここで、密閉部材は貫通孔を塞ぐものであればその他の構成は限定されるものではないが、例えば、密閉部材は、操作ワイヤまたはハンドルに設けられた凹または凸状部材(操作側部材)と、キャビンの壁部の貫通孔に固定される凸または凹状部材(キャビン側部材)とを備えるものでもよい。
【0015】
ここで、凹状部材および凸状部材の材料は限定されるものではないが、シリコン、ゴムなどの密着および/または密封性に優れたものが好ましく、操作ワイヤの表面はグリスで被覆されていることが好ましい。キャビンの壁部に形成された貫通孔からの空気の漏れを軽減できるからである。
【0016】
また、ここで、操作ワイヤまたはハンドルに設けられる部材(凹状部材あるいは凸状部材)のうちの操作ワイヤを取り付けるために形成された凹部には、凹部を埋める充填物を備えることが好ましい。この場合、充填物が操作ワイヤと凹状部材あるいは凸状部材との隙間の密閉度をより高める働きをするからである。
【0017】
あるいは、密閉部材は、操作ワイヤまたはハンドルに設けられた、密着面を有する部材(操作側部材)と、キャビンの壁部の貫通孔に固定される、密着面を有する部材(キャビン側部材)とを備え、両部材の密着面を密着させて貫通孔を塞ぐことを可能としたものでもよい。
【0018】
(操作ワイヤと投下物またはその収納体との接続)
操作ワイヤと投下物またはその収納体との接続は切離可能なものであれば、その他の構成は限定されるものではないが、これらの接続には係合部材を用いることが好ましい。
【0019】
これは、操作ワイヤの端部を投下物またはその収納体との切離可能な接続となるように加工する必要がないからである。
【0020】
この場合、操作ワイヤと投下物またはその収納体とは係合部材によって切離可能に接続し、操作ワイヤの引張操作により、係合部材による投下物またはその収納体と操作ワイヤとの接続が解除されるように構成可能である。
【0021】
ここで、係合部材は、係合ピンあるいは係合プレートを備えていてもよい。
【0022】
(操作ワイヤ)
操作ワイヤは、キャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端がキャビンの内部のハンドルに接続され、その他端が投下物またはその収納体に切離可能に接続されているものであればその他の構成は特に限定されるものではないが、操作ワイヤのうちのキャビン外側の部分は、チューブ状のアウターワイヤにインナーワイヤが挿入された構造となっていてもよく、この場合、アウターワイヤのキャビン側端部を受けるアウター受け部材を、貫通孔上に位置するようにキャビンの外側に配置することで貫通孔の密閉度を高めることが可能である。
【0023】
(投下物)
投下物は、飛翔体の重量を軽くするために飛翔体から投下するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、投下物としてはバラストまたはトレイルロープ、落下試験を行うための機材やセンサなどが挙げられる。バラストとしては、例えば、砂や金属製などの錘や水などの液体であり得る。トレイルロープとしては、例えば、ナイロン製や麻製があり得る。しかし、それ以外の素材などから構成されていてもよい。
【0024】
落下試験を行う機材やセンサを搭乗者が所定の高度で落下させることで、微小重力実験などを実施することが可能となる。
【0025】
以上説明したように、本発明の操作器具は、飛翔体のキャビンの内部からキャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作ワイヤとして、キャビンの壁部の貫通孔に挿通され、その一端がキャビン内部のハンドルに接続され、その他端が投下物またはその収納体に切離可能に接続されたものを備えたものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではなく、また、本発明の飛翔体は、上述した操作器具と投下物およびその収納体のうちの少なくとも投下物とを備えたものであるが、以下の実施形態では、操作器具として、キャビンの壁部の貫通孔を密閉する密閉部材を有し、操作ワイヤと投下物を収める収納体とが係合部材によって切離可能に接続されているものを挙げる。
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による操作器具100を説明するための図であり、操作器具100の全体構成を示す。
【0028】
この操作器具100は、飛翔体1のキャビン1a(図5(a)参照)の内部からキャビン1aの外部に設けられた投下物の収納体160を操作するための操作器具である。ここでは、投下物は砂からなるバラストBa(図6参照)であるが、これに限定されるものではなく、ナイロン製のトレイルロープTr(図7参照)でもよい。
【0029】
具体的には、操作器具100は、操作ワイヤ130を備え、操作ワイヤ130はキャビンの壁部10の貫通孔10aに挿通され、その一端はキャビンの内部に設けられたハンドル140に接続されるとともに、その他端は投下物を収める収納体160に切離可能に接続されている。なお、操作ワイヤ130の他端は、投下物を収める収納体160ではなく、投下物に直に切離可能に接続されていてもよい。
【0030】
ここで、操作ワイヤ130のうちのキャビン外側の部分は、チューブ状のアウターワイヤ132にインナーワイヤ131が挿入された構造となっているが、操作ワイヤ130のその他の部分はインナーワイヤ131のみで構成されている。
【0031】
また、操作器具100は、貫通孔10aを塞ぐ密閉部材として内側密閉部材110と外側密閉部材120とを備えている。
【0032】
図2は、密閉部材を説明するための図であり、図1のR部分を構成する部材を個別に示す。図2(a)はインナーワイヤ131の外観を示し、図2(b)は栓部材111の断面構造を示し、図2(c)は、栓受け部材112の断面構造を示し、図2(d)は、キャビンの壁部10の断面構造を示し、図2(e)は、アウター受け部材(凹状部材)122の断面構造を示し、図2(f)は、アウター栓部材(凸状部材)121の断面構造を示す。
【0033】
すなわち、内側密閉部材110は、操作ワイヤ130(またはハンドル140)に設けられた栓部材(凸状部材)111と、貫通孔10aに固定される栓受け部材(凹状部材)112とを備える。ここで、栓部材(凸状部材)111および栓受け部材(凹状部材)112の材料としてシリコンが用いられているが、その材料は、両者の間で密着性を確保できるゴムなどでもよい。インナーワイヤ131の表面は真空グリスで被覆されている。これは、真空グリスにより、インナーワイヤ131とアウターワイヤ132との隙間の気密性、およびインナーワイヤ131とこれが挿通する部材のワイヤ挿通孔との気密性を高めることができるからである。
【0034】
栓部材111および栓受け部材112には図2(b)、(c)に示すように、インナーワイヤ131(図2(a))を挿通するワイヤ挿通孔111aおよび112aが形成されており、ワイヤ挿通孔112aがキャビンの壁部10の貫通孔10a(図2(d))に一致するように栓受け部材112がキャビンの壁部10に対して固定され、栓部材111は、ワイヤ挿通孔111aが栓受け部材112のワイヤ挿通孔112a(図2(c))に一致するように栓受け部材112に係合可能となっている。
【0035】
栓受け部材112の係合端面(図2の紙面左側の端面)には凹部が形成され、栓部材111の係合端面(図2の紙面右側の端面)には凸部が形成され、栓受け部材112の凹部と栓部材111の凸部とが係合するようになっている。
【0036】
ここで、栓部材111の非係合端面(図2の紙面左側の端面)には凹部111bが形成され、この凹部111bの底面にはワイヤ挿通孔111aの一端が開口している。このワイヤ挿通孔111aにインナーワイヤ131が挿通された状態では、凹部111bには充填剤111c(図3参照)が充填されてインナーワイヤ131とワイヤ挿通孔111aとの隙間がシールされるようになっている。
【0037】
また、外側密閉部材120は、アウターワイヤ132のキャビン側の端部(アウター栓部材)121と、これを受けるアウター受け部材122とを含み、アウター栓部材121にはワイヤ挿通孔121aが形成され、アウター受け部材122にはワイヤ挿通孔122aが形成されている。アウター受け部材122はそのワイヤ挿通孔122aが、キャビンの壁部10の貫通孔10aに一致するようにキャビンの壁部10aの外側に固定されている。なお、アウターワイヤ132のキャビンと反対側の端部には、インナーワイヤ131がアウターワイヤ132に出入りしやすくなるように、アウターワイヤ端金具133が取り付けられている。
【0038】
操作ワイヤ130のキャビン外部の部分の先端(キャビンに遠い方の端)では、インナーワイヤ131がアウターワイヤ132から突出した部分が係合ピン(係合部材)150を介して収納体160に切離可能に接続され、操作ワイヤの引張操作により投下物の収納体160と操作ワイヤ130との係合ピン150による係合が解除されるようになっている。
【0039】
具体的には、インナーワイヤ131の先端がワイヤクリップ134により係合ピン150に接続され、係合ピン150と収納体160とが切離可能に接続されている。
【0040】
次に投下物を投下する操作を説明する。
【0041】
図3は、操作器具100の非操作状態を示す断面図であり、図4は、操作器具100の操作状態を示す断面図である。
【0042】
操作器具100の非操作状態(つまりハンドル140を引いていない状態)では、図3に示すように栓部材(凸状部材)111が栓受け部材(凹状部材)112に密着した状態(係合状態)となっており、このため、キャビンの壁10の貫通孔10aは栓部材111および栓受け部材112により密閉されている。
【0043】
このとき、係合ピン150は収納体160に係合しており、投下物は収納体160に収容された状態が保持されている。
【0044】
一方、操作器具100の操作状態(つまりハンドル140を引いた状態)では、図4に示すように栓部材(凸状部材)111が栓受け部材(凹状部材)112から離反した状態(非係合状態)となり、このため、キャビンの壁部10の貫通孔10aは栓受け部材112のワイヤ挿通孔112a(図2(c)参照)を介してキャビン内部の空間とつながってしまう。
【0045】
また、キャビンの壁部10の貫通孔10aは、アウター受け部材122のワイヤ挿貫通孔122a、アウター栓部材121のワイヤ挿通孔121a、およびアウターワイヤ132とインナーワイヤ131との隙間を介してキャビン外部とつながっている。
【0046】
そのため、操作器具100のハンドル140を引くと、一時的にキャビン内部の空気がキャビンの壁部10の貫通孔10aを介してキャビンの外部に漏れることとなる。
【0047】
このとき、係合ピン150は収納体160との係合状態が解除され、つまり、収納体160から外れ、投下物は収納体160から投下される。
【0048】
その後、ハンドル140を戻すと、図3に示すように栓部材111が栓受け部材112に密着した状態(係合状態)となって、キャビンの壁10の貫通孔10aは栓部材111および栓受け部材112により密閉された状態に戻る。
【0049】
図5は、操作器具100および収納体160が取り付けられたキャビン1aを備えた飛翔体1を示す図であり、図5(a)は、飛翔体1の全体を示し、図5(b)は、操作器具100の非操作時の収納体160の状態を示し、図5(c)は、操作器具100の操作時の収納体160の動きを示す。
【0050】
なお、ここで、飛翔体1は浮力を発生する気嚢1bと気嚢1bに吊り下げたれたキャビン1aとを備え、キャビン1aは、上述した操作器具100と、操作器具100により操作されるバラスト投下構造を有している。
【0051】
以下、バラスト投下構造として、収納体160に収めたバラストBaを投下するための構造を説明する。
【0052】
ここでは、収納体160として口が筒状となった袋体を用いており、内部に投下物として砂を充填している。この収納体160は、口が上向きになるよう二つ折りにした状態でキャビンに取り付けられており、係合ピン150が外れると自重で一方の口が下向きとなって投下物である砂を放出するようになっている。以下、具体的な構成の一例を説明する。
【0053】
図6は、操作器具100の操作でバラストBaを投下するための構造(バラスト投下構造)を説明するための図であり、図6(a)は、収納体160がバラストBaを保持している様子を示し、図6(b)は、収納体160からバラストBaが投下される様子を示す。
【0054】
図6に示すバラスト投下構造では、収納体160は筒状の袋体であり、一方の開口端が固定片161によりキャビンの壁部10の外面に固定され、他方の開口端は、接続片162を介してピン係合筒体152に接続されている。また、キャビンの壁部10の外面には、ピン装着筒体151が取り付けられており、係合ピン150によりピン係合筒体152がピン装着筒体151に保持されるようになっている。
【0055】
このバラスト投下構造では、ピン係合筒体152がピン装着筒体151に保持された状態では、収納体160である筒状の袋体の両端の開口はともに上方を向き、筒状の袋体にバラストBaを収容可能な状態となる。
【0056】
係合ピン150がピン装着筒体151から引き抜かれると、係合ピン150によるピン装着筒体151に対するピン係合筒体152の保持が解除され、筒状の袋体の一端の開口が下方を向き、バラストBaが自然落下により筒状の袋体から投下される。
【0057】
以下、バラスト投下の効果を説明する。
【0058】
まず、上昇時は速度調整としてバラスト投下による軽量化により上昇速度を加速することができ、降下時にはバラスト投下による軽量化により下降速度を減速することがきる。
【0059】
なお、図6に示すバラスト投下構造では、投下物を収納した収納体160に接続片162を介して接続されたピン係合筒体152を直接係合ピン150で保持する構成となっているが、係合ピン150にかかる荷重を低減するため、2つ折りにしたベルト部材で収納体160を保持し、ベルト部材の一方の端部をキャビンの壁部に固定し、その他方の端部を係合ピン150で保持するようにしてもよい。
【0060】
図6Aは、収納体160の保持にベルト部材180を用いたバラスト投下構造を示し、図6A(a)は、バラストが収納体160に収納されている状態を示し、図6A(b)は、バラストが収納体160から投下されている状態を示す。図6Bは、図6Aのベルト部材を拡大して示す図であり、図6B(a)は、バラストが収納体160に収納されている状態でのベルト部材の状態を示し、図6B(b)は、バラストが収納体160から投下されている状態でのベルト部材の状態を示す。
【0061】
ベルト部材180は、ベルト本体181と、ベルト本体181に取り付けられた筒状ピンガイド部182と、ベルト本体181にこれから突出するように取り付けられた筒状固定具183とを有し、筒状ピンガイド部182と筒状固定具183とは同軸状に上下に配置されている。ここで、筒状ピンガイド部182は布などの柔らかい材料で構成され、筒状固定具183は樹脂などの硬い材料で構成されている。
【0062】
また、ベルト本体181は、その一端がキャビンの壁部10に固定され、その他端側が折り返し可能となるように布などで構成されており、他端には、係合ピン150と係合するリング状部材181aが取り付けられている。ベルト本体181の折り返された部分には、接続片162の先端に取り付けられた係合リング162aが保持されるようになっている。
【0063】
バラスト投下構造にこのようなベルト部材180を用いた場合、収納体160の一端が、2つ折りにしたベルト本体181の折り曲げ部で保持される。ベルト本体181の一端はキャビンの壁部に固定され、ベルト本体181の他端に取り付けられたリング状部材181aが、筒状ピンガイド部182と筒状固定具183との間で係合ピン150により係止される(図6A(a)、図6B(a))。これにより投下物は収納体160に収納された状態となる。このとき係合ピン150にかかる荷重も軽減される。
【0064】
また、ワイヤ操作により係合ピン150を筒状ピンガイド部182および筒状固定具183から引き抜くと、ベルト本体181の他端に取り付けられたリング状部材181aが、筒状ピンガイド部182と筒状固定具183との間から滑り落ちて投下物の投下が行われる(図6A(b)、図6B(b))。
【0065】
また、投下物はバラストBaに限定されるものではなく、トレイルロープTrであってもよい。この場合は、収納体160である筒状の袋体には、トレイルロープTrを巻き込んで収納しておく。
【0066】
図7は、操作器具100の操作でトレイルロープTrを投下するためのロープ投下構造を説明するための図であり、図7(a)は、収納体160がトレイルロープTrを保持している様子を示し、図7(b)は、トレイルロープTrを投下した状態を示す。
【0067】
ロープ投下構造は、バラスト投下構造におけるバラストBaをトレイルロープTrに置き換えたものであり、ロープ投下構造では、トレイルロープTrの一端は、固定片161によりキャビンの壁部に固定されており、収納体170は底有の袋体であり、この有底の袋体170にはトレイルロープTrが螺旋状に巻かれて収納されている。トレイルロープTrは、例えば、ナイロンや麻などのロープである。
【0068】
ここで、有底の袋体170の上端は、キャビンの壁部10に固定されたピン装着筒体151に、ピン係合筒体152および接続片172により接続されている。
【0069】
具体的には、袋体170は接続片172によりピン係合筒体152に接続されており、ピン係合筒体152は係合ピン150によりピン装着筒体151に保持されるようになっている。係合ピン150をピン係合筒体152およびピン装着筒体151から引き抜くことで、キャビンの壁部10に固定されたピン装着筒体151からピン係合筒体152が外れ、袋体170に収納されているトレイルロープTrは、袋体170とともにトレイルロープTrの他端側が投下されるようになっている。
【0070】
図8は、トレイルロープTrの働きを説明するための図であり、図8(a)は、トレイルロープTrが収納体170に収容されている状態を示し、図8(b)は、トレイルロープTrが収納体170とともに投下されて地表との摩擦力が生じて減速される様子を示す。
【0071】
以下、トレイルロープTrを投下することによる効果を説明する。
【0072】
飛翔体の着陸前、袋体ごとトレイルロープTrを地上に下すことにより、下記のような効果を得ることができる。
【0073】
トレイルロープTrの重さが地面に伝わると気球の下降速度が遅くなる。
【0074】
地表近くの風の影響で気球が上昇した場合には、この上昇により地表から離れたロープの重量により、気球の上昇が妨げられる。
【0075】
風の強さによっては、トレイルロープTrはアンカーとして機能し、その結果、トレイルロープTrの重さと、地表に沿った引っ張りによって、気球の前進が遅くなる。
【0076】
つまり、トレイルロープTrの投下により飛行速度が速度V1から速度V2に減速される。
【0077】
なお、トレイルロープTrの投下のための構造に、図6Aおよび図6Bで説明したベルト体を用いることもできる。
【0078】
このように、本実施形態1の操作器具100は、飛翔体1のキャビン1aの内部からキャビン1aの外部に設けられた、投下物の収納体160を操作するための操作器具であって、操作器具100は、操作ワイヤ130を備え、操作ワイヤ130はキャビン1aの壁部10の貫通孔10aに挿通され、その一端はキャビン1aの内部に設けられたハンドル140に接続されるとともに、その他端は投下物(バラストBa)を収める収納体160に切離可能に接続されているので、キャビン1aを備えた飛翔体1においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物をワイヤで簡単に操作可能とする操作器具を得ることができる。
【0079】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、キャビンを備えた飛翔体においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物を簡単に操作することが可能な操作器具およびこのような操作器具を備えた飛翔体を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 飛翔体
1a キャビン
1b 気嚢
10 キャビンの壁部
10a 貫通孔
111a、112a、122a ワイヤ挿通孔
100 操作器具
110 内側密閉部材
111 栓部材(凸状部材)
112 栓受け部材(凹状部材)
120 外側密閉部材
121 アウター栓部材(凸状部材)
122 アウター受け部材(凹状部材)
130 操作ワイヤ
131 インナーワイヤ
132 アウターワイヤ
133 アウターワイヤ端金具
134 ワイヤクリップ
140 ハンドル
150 係合ピン
151 ピン装着筒体
152 ピン係合筒体
160、170 収納体
161 固定片
162、172 接続片
Ba バラスト
Tr トレイルロープ
【要約】
【課題】本発明の課題は、キャビンを備えた飛翔体においてキャビン内部にいる搭乗者がキャビン外部に設けられている投下物を簡単に操作することが可能な操作器具を得ることである。
【解決手段】本発明の操作器具100は、飛翔体のキャビンの内部からキャビンの外部に設けられた投下物を操作するための操作器具であって、操作器具100は、操作ワイヤ130を備え、操作ワイヤ130はキャビンの壁部10の貫通孔10aに挿通され、その一端はキャビンの内部に設けられたハンドル140に接続されるとともに、その他端は投下物または投下物を収める収納体160に切離可能に接続されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図6B
図7
図8