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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】包装システム
(51)【国際特許分類】
   B65B 31/04 20060101AFI20241106BHJP
   B65G 65/46 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65B31/04 C
B65G65/46 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024079704
(22)【出願日】2024-05-15
【審査請求日】2024-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599176698
【氏名又は名称】ニューロング工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 博之
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-320066(JP,A)
【文献】特開平08-169416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/04
B65G 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、
粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置と、
前記袋保持装置に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置と、を備え、
前記袋保持装置は、
袋を保持する保持部と、
前記保持部が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する不活性ガス排出部と、
前記保持部及び前記不活性ガス排出部が設けられた本体部と、
前記本体部を第1位置と第2位置とに移動させる移動部と、を備え、
前記第1位置は、前記保持部に袋が装着される位置であり、
前記第2位置は、前記充填装置が袋に対して粉粒体の充填を開始する位置であり、
前記本体部が前記第1位置の際に前記保持部が保持している袋の内部に対して、前記不活性ガス排出部より不活性ガスを排出し、その後、前記本体部を前記第2位置に移動させる、
ことを特徴とする包装システム。
【請求項2】
前記本体部が前記第1位置から前記第2位置に移動している途中及び/又は、前記本体部が前記第2位置に位置している際に、前記不活性ガス排出部から袋の内部に対して不活性ガスを排出する、
ことを特徴とする請求項記載の包装システム。
【請求項3】
前記不活性ガス排出部は、第1不活性ガス排出部であり、
前記充填装置は、
粉粒体を搬送して先端部から排出する粉粒体搬送手段と、
前記粉粒体搬送手段の先端部に設けられ、不活性ガスを排出する第2不活性ガス排出部と、を備え、
前記粉粒体搬送手段は、前記本体部が前記第1位置にある場合は、その先端部が前記保持部が保持している袋の外部に位置し、前記本体部が前記第2位置にある場合は、その先端部が前記保持部が保持している袋の内部に位置するように配設されており、
前記本体部が前記第2位置でかつ前記粉粒体搬送手段が粉粒体の排出を開始する前に、前記第2不活性ガス排出部により前記保持部が保持している袋の内部に対して不活性ガスを排出する、
ことを特徴とする請求項記載の包装システム。
【請求項4】
袋を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、
粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置と、
前記袋保持装置に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置と、 前記充填装置によって粉粒体が充填された袋内の気体を脱気する脱気ユニットと、前記脱気ユニットを待機位置と前記脱気ユニットが袋の内部に進入する脱気位置とに移動させる脱気ユニット移動部と、を有する脱気装置と、を備え、
前記袋保持装置は、
袋を保持する保持部と、
前記保持部が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する前記袋保持装置の不活性ガス排出部と、を備え、
前記脱気ユニットは、
袋内の気体を脱気する脱気部と、
不活性ガスを排出する前記脱気ユニットの不活性ガス排出部と、を備えている、
ことを特徴とする包装システム。
【請求項5】
前記脱気装置は、前記脱気ユニットの不活性ガス排出部により不活性ガスを排出しつつ、前記脱気部により袋内を脱気する、
ことを特徴とする請求項記載の包装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋を用いて粉粒体を包装する包装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉粒体をオーガにより搬送して袋に対して充填する粉粒体供給装置が広く知られている。従来、このような粉粒体供給装置において、オーガの先端部に窒素を排出する不活性気体混入装置を設け、袋内にオーガの先端部を進入させると共に、上記不活性気体混入装置から窒素を排出することによって、袋内の空気を窒素ガスに置換して、粉粒体の変質を防止するものが案出されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-192898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の粉粒体供給装置のように、オーガの先端部から窒素を排出する構成では、袋の上部に空気が残存してしまい、袋内のガス置換が不十分なことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、粉粒体が充填される袋内の空気を不活性気体に効果的に置換可能な包装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、袋を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置と、前記袋保持装置に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置と、を備え、前記袋保持装置は、袋を保持する保持部と、前記保持部が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する不活性ガス排出部と、前記保持部及び前記不活性ガス排出部が設けられた本体部と、前記本体部を第1位置と第2位置とに移動させる移動部と、を備え、前記第1位置は、前記保持部に袋が装着される位置であり、前記第2位置は、前記充填装置が袋に対して粉粒体の充填を開始する位置であり、前記本体部が前記第1位置の際に前記保持部が保持している袋の内部に対して、前記不活性ガス排出部より不活性ガスを排出し、その後、前記本体部を前記第2位置に移動させる、ことを特徴とする包装システムである。
また、本発明の一態様は、袋を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置と、前記袋保持装置に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置と、前記充填装置によって粉粒体が充填された袋内の気体を脱気する脱気ユニットと、前記脱気ユニットを待機位置と前記脱気ユニットが袋の内部に進入する脱気位置とに移動させる脱気ユニット移動部と、を有する脱気装置と、を備え、前記袋保持装置は、袋を保持する保持部と、前記保持部が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する前記袋保持装置の不活性ガス排出部と、を備え、前記脱気ユニットは、袋内の気体を脱気する脱気部と、不活性ガスを排出する前記脱気ユニットの不活性ガス排出部と、を備えている、ことを特徴とする包装システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、粉粒体が充填される袋内の空気を不活性気体に効果的に置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る包装システムの概略図である。
図2】(a)は第1位置にある本体部を示す模式図であり、(b)は第2位置にある本体部を示す模式図である。
図3】粉粒体搬送手段を示す模式図。
図4】脱気装置を示す模式図。
図5】脱気棒を示す模式図。
図6】(a)は袋保持装置の不活性ガス供給部を示す模式図であり、(b)は図2(a)のA方向視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る包装システム1について図面に基づいて説明をする。なお、以下の説明において、図1における紙面方向を包装システム1の前後方向(X軸方向)、上記前後方向及び包装システム1の上下方向(Z軸方向)と直交する方向を左右方向(Y軸方向)というものとする。また、粉粒体とは、粉体、粒体、もしくはこれら粉体及び粒体の混合物を言い、例えば、とうもろこし粉、脱脂粉乳、小麦粉、トナーなどを言う。
【0010】
<包装システムの概要>
包装システム1は、袋を用いて粉粒体を包装する装置であり、給袋装置2と、袋保持装置3と、充填装置5と、袋搬送装置6、脱気装置7と、袋シール装置9と、制御部8と、を備えて構成されている。給袋装置2は、袋保持装置3の前方に配置されており、積載部21と、供給部22と、を備えている。積載部21には、粉粒体が充填される前の袋Bが積載されており、供給部22は、上記積載部21の上方に配置されている。供給部22は、アーム部221と、吸引部222と、を備えており、アーム部221の先端に吸引部222が設けられている。吸引部222は、不図示の負圧源に接続されており、積載部21の袋を吸引して保持可能に構成されている。アーム部221は、上下方向にスライド移動可能かつ前後方向に回動可能に構成されており、下方に向かって移動して積載部21上の袋Bに吸引部222を接触させて吸着させる。そして、この状態でアーム部2221が後方に向かって回動することにより、吸引部222に保持された袋Bが開口部を上方に向けた形で袋保持装置3へと受け渡される。
【0011】
袋保持装置3は、充填装置5が粉粒体を充填する際に粉粒体を充填する袋Bを保持する装置であり、本体部31と、保持部32と、開袋部33と、ガイド部35(図2参照)と、移動部36と、不活性ガス供給部(第1不活性ガス供給部)37と、を備えている。図1及び図2に示すように、本体部31は、中央部に充填装置5の粉粒体搬送手段52(案内筒521)が嵌挿される開口31aを有しており、保持部32は、上記本体部31の下端部において左右方向(袋の幅方向)に所定の距離を存して配置された一対のクランプ32a,32bを備えたクランプ装置として構成されている。上記一対のクランプ32a,32bは、給袋装置2から供給された袋の両端部を挟持するように構成されており、これらクランプ32a,32bに挟持された袋は、その開口が本体部31の開口31a(充填装置5の粉粒体搬送手段52)と対向するように配置される。
【0012】
開袋部33は、左右方向において上記一対のクランプ32a,32bの間に位置し、フレーム部材に支持された前後方向に対向する一対の吸引部33a(図5(b)参照)を備えて構成されている。そして、クランプ32a,32bによって挟持された袋Bの上縁部を吸引によって保持しながら前後方向に離れるように両側から引っ張ることによって、上記袋Bの口を開かせるように構成されている。
【0013】
ガイド部35は、本体部31の下端部に設けられた開閉可能なくちばし状のガイドであり、本体部31の開口31aを下方から塞ぐ第1状態(図2(a)の実線)と、本体部31の開口31aを開放する第2状態(図2(a)の破線)と、に移行可能に構成されている。具体的には、ガイド部35は、前後方向に対向する一対のガイド部材35a,35bによって構成されており、これらガイド部材35a,35bの下端部が互いに接離可能に前後方向に回動するようになっている。上述した開袋部33によって袋Bの口が開かれると、ガイド部35は上述した第1状態から第2状態に向かって移行し、上記第1状態から第2状態へと移行する間において、ガイド部材35a,35bの先端部(下端部)が近接して左右方向から視た際に前後方向の幅が下方に向かって狭くなる先細り形状となり、上記袋の口の中にガイド部材35a,35bが入り込む。そして、ガイド部材35a,35bが前後方向離れる方向に更に回動することによって上述した第2状態となり、袋Bの口を内側から開いた状態に支持すると共に、本体部31の開口31aから袋Bの内部までの間の空間を周囲から囲って粉粒体の飛散を防止するようになっている。
【0014】
移動部36は、上述した本体部31を第1位置と第2位置との間で移動させるように構成されている。第1位置は、給袋装置2から袋を受け渡される位置(袋が装着される位置)であり、第2位置は、充填装置5が粉粒体の充填を開始する際の位置である。移動部36は、上記保持部32が給袋装置2から袋Bが受け渡され、ガイド部35が第1状態から第2状態へとなるまでは、本体部31を基準位置である第1位置に位置させる。そして、ガイド部35が第2状態となったことに基づいて、第1位置から粉粒体の充填開始位置である第2位置まで本体部31を上昇させる。本体部31が第1位置から第2位置に上昇することによって、保持部32に保持された袋Bの位置が図2(a)の位置から図2(b)の位置へと上昇し、これにより、袋内部に充填装置5の粉粒体搬送手段52の先端が進入し、粉粒体の排出が可能となる。
【0015】
充填装置5は、上述したように保持部32に保持された袋内に粉粒体を充填するための装置であり、ホッパ51と、ホッパ51に供給された粉粒体を搬送する粉粒体搬送手段52と、を備えている。図3に示すように、粉粒体搬送手段52は、オーガによって構成されており、案内筒521と、案内筒521の内部で回転する回転体522と、を備えている。回転体522は、搬送軸にらせん状に巻回されたスクリュー羽根(螺旋羽根)を有しており、回転することによって下流側(本実施の形態では下方側)に向かって粉粒体を搬送する。案内筒521の下流端(下端)には粉粒体の排出口521aが設けられており、上記回転体522の回転によって搬送されて来た粉粒体が外部に排出される。
【0016】
また、上記粉粒体搬送手段52の下端部には、脱気部53と、不活性ガス供給部(第2不活性ガス供給部)55と、が設けられている。脱気部53は、案内筒521の下流端部において上記排出口521aよりも粉粒体搬送方向上流側に設けられており、フィルタ531と、負圧室532と、を備えている。フィルタ531は、気体は通過可能であるが、粉粒体については通過不能に構成されており、案内筒521の外周を覆うように構成されている。また、負圧室532は、フィルタの径方向外側にてその外周を覆うように構成されていると共に、不図示の負圧源に接続されている。フィルタ531に対応する部分の案内筒521には複数の細孔が設けられており、負圧室532が減圧されると、案内筒521内を搬送される粉粒体内に含まれている空気などの気体がフィルタ531を介して負圧室532へと吸引され、脱気される。
【0017】
また、不活性ガス供給部55は、負圧室532の径方向外側に設けられたガス供給室551を備えて構成されている。ガス供給室551は、不図示の不活性ガス供給源(本実施の形態では窒素供給源)と接続されており、その底部及び下部側面にガス噴出部(第2不活性ガス排出部)552,553が設けられている。なお、これら底部及び下部側面のガス噴出部552,553には、フィルタが設けられており、ガス供給室551内に粉粒体が侵入しないように構成されている。不活性ガス供給部55は、上記移動部36によって充填開始位置である第2位置まで上昇させられた袋Bに対して、粉粒体搬送手段52が粉粒体の排出を開始する前に袋B内に不活性ガスを噴出する。これにより、袋内の気体が不活性ガスに置換され、その後、粉粒体搬送手段52から脱気部53によって脱気された粉粒体が袋内に排出される。袋内への粉粒体の排出が開始されると、移動部36は、粉粒体の排出に従って、第2位置から第1位置へと向かって下降し、保持部32に接続されたロードセルからの出力信号に基づいて、袋B内に規定量の粉粒体が排出されたことに基づいて、粉粒体搬送手段52からの粉粒体の排出が停止される。
【0018】
袋搬送装置6は、充填装置5によって粉粒体が充填された袋を下流工程の装置へと搬送するように構成されており、上部搬送部61と、下部搬送部62と、を備えている。上部搬送部61は、開口縁の下方側を前後方向からクランプして袋Bの上部を保持するクランプ装置であり、袋Bの全幅をクランプした状態で左右方向に移動可能に構成されている。下部搬送部62は、粉粒体が充填された袋を下方から支持するように構成されたベルト袋搬送装置であり、上部搬送部61と協働して左右方向に袋Bを搬送することができるようになっている。
【0019】
脱気装置7は、充填装置5によって粉粒体が充填された袋内を脱気するための脱気装置であり、保持部71と、脱気棒(脱気ユニット)72と、脱気棒移動部(脱気ユニット移動部)73と、不活性ガス供給部(第3不活性ガス供給部、図4参照)75と、を備えている。より詳しくは、図4に示すように、保持部71は、袋搬送装置6によって搬送されて来た袋Bの幅方向(左右方向)端部を前後方向にクランプする一対のクランプ71a,71bによって構成されており、これらクランプ71a,71bは袋Bの幅方向にスライド移動可能に構成されている。
【0020】
脱気棒72は、図5に示すように、袋B内に挿入される棒状部材であり、その中程から先端部に掛けて内部に負圧室721が形成されている。負圧室721は、不図示の負圧源に接続されており、その内部を減圧可能に構成されている。また、負圧室721の外周部は、粉粒体は通過不能でかつ気体は通過可能なフィルタ722によって構成されており、負圧室721が減圧されることによって、袋B内を真空脱気することができるようになっている。即ち、上記負圧室721及びフィルタ722によって袋内の気体を吸引する脱気部724が構成されており、上記袋内の気体を吸引する吸引手段としての負圧室721の外側にフィルタ722が配置されることによって、粉粒体が負圧室721内部に侵入しないようになっている。
【0021】
脱気棒移動部(第2移動部)73は、脱気棒72を待機位置(図1の位置)と、脱気位置(図4及び図5の位置)と、に移動させるように構成されている。待機位置は、非脱気時において待機する位置であり、脱気棒72の下方に粉粒体が充填された袋が搬送可能なように脱気位置よりも上方に退避した位置となっている。脱気位置は、袋搬送装置6から袋Bが保持部71に受け渡されて保持部71が袋Bを保持したことに基づいて移動させられる位置であり、脱気棒72が待機位置から脱気位置に移動することによって、袋B内部に脱気棒72が進入し、袋B内が脱気可能な状態となる。上記脱気位置では、図5に示すように、負圧室721が形成された脱気領域が袋内の粉粒体内に挿し込まれており、この状態で負圧室721が減圧されると、粉粒体が含有している気体を含む袋内の気体が吸引される。脱気棒72によって袋B内が脱気されると、袋B内が真空状態に近づくと共に、袋B内の粉粒体が圧縮されて安定した形状となる。そして、その後、脱気棒移動部(第2移動部)73によって脱気棒72が上昇させられて袋から引き抜かれる。
【0022】
なお、負圧源から脱気棒72の負圧室721までの吸引経路75には、酸素濃度を計測する酸素濃度センサー74が接続されており、脱気棒72より吸引された気体を測定し、袋B内の残存酸素濃度を計測できるようになっている(図4参照)。本実施の形態では、この酸素濃度センサー74によって計測された残存酸素濃度が所定の濃度以下になったことに基づいて、上記脱気棒72を上昇させる。また、残存酸素濃度が所定の濃度以下にならなかった場合であっても、所定時間が経過した段階で脱気棒72は上昇させられる。加えて、残存酸素濃度が所定の濃度以下にならなかった場合、作業者に対してその旨を報知したり、当該残存酸素濃度が所定の濃度以下にならなかった袋Bを不良品として選別するようにしたりしても良い。
【0023】
脱気棒72が引き抜かれると、上記一対のクランプ71a,71bが左右方向離れる方向に移動して袋Bの口を閉じると共に、その状態で袋搬送装置6の上部搬送部61が袋Bの上縁の下方をクランプする。これにより、脱気された袋Bは口が閉じた状態で下流側へと搬送され、袋シール装置9へと受け渡される。袋シール装置9は、袋Bを前後方向からクランプし、加熱及び加圧するシール部91を備えており、このシール部91によって袋Bの上部が加熱及び加圧されることによって、袋Bの口がシールされる(閉じられる)。なお、袋Bは、その上部の内側が熱圧着可能なように構成されている。
【0024】
<袋保持装置の不活性ガス供給部>
ついで、上述した袋保持装置3の不活性ガス供給部37の構成について、詳しく説明をする。粉粒体の袋包装において、袋内に空気が含まれていると、空気内の酸素によって粉粒体が酸化(劣化)し、袋内の粉粒体の保存期限に大きな影響を与えてしまう。このため、上述したように充填装置5は、粉粒体搬送手段52の先端に不活性ガス供給部55を設け、粉粒体搬送手段52から袋B内に粉粒体を供給する前に、袋B内の空気を不活性ガス(本実施の形態では窒素)に置換するように構成されている。
【0025】
しかしながら、上述した充填装置5の不活性ガス供給部55は、粉粒体搬送手段52が袋Bの底部まで挿し込まれた状態(本体部31が第2位置まで上昇した状態)で不活性ガスを噴出する。窒素の比重は空気とほとんど変わらないため、袋B内の空気は底部から除々に窒素ガスに置換されるが、例えば、上記充填装置5の不活性ガス供給部55のみで袋B内の空気を窒素ガスに置換しようとした場合、袋Bの上部については空気と窒素ガスとの置換が不十分であったり、袋B内の空気を十分に窒素ガスに置換しようとすると袋Bへの粉粒体の充填時間が長くなり、タクトタイムが延びてしまったりする問題があった。
【0026】
このため、本実施の形態では、図2及び図6に示すように、上記充填装置5の他に、袋保持装置3の本体部31にも不活性ガス供給部37を設けている。この不活性ガス供給部37は、不活性ガス供給源である圧力タンク371と、袋B内に不活性ガスを供給するガス供給部であるガス噴出ノズル372と、圧力タンク371からガス噴出ノズル372への不活性ガスの供給を制御する制御弁373と、を備えている。圧力タンク371は、不図示の不活性ガス発生源と接続されており、不活性ガス発生源から供給された不活性ガスを任意の圧力に貯圧可能に構成されている。この圧力タンク371の容量や圧力設定によって、不活性ガス供給部37からのガスの噴出圧力及び噴出回数が設定される。また、圧力タンク371内の圧力は、付属の圧力計371aによって確認できるようになっている。
【0027】
ガス噴出ノズル372は、不活性ガスを排出する不活性ガス排出部であり、図6(b)に示すように、本体部31の開口31aに沿ってその内周の4箇所に配置され、不活性ガスの噴出口である下端部ができる限り袋Bに近づくよう、ガイド部35と干渉しない範囲内で下方側まで延設されている。また、ガス噴出ノズル372は、噴出したガスが袋B内に効率よく到達するよう、ガイド部35のガイド部材35a,35bの内側に位置しており、ガス噴出ノズル372から噴出したガスは、ガイド部材35a,35bによって周囲を覆われた内部空間を通って、袋Bの内部に到達する。なお、このガス噴出ノズル372の数、径の大きさ、長さなどは、袋Bの長さや大きさに応じて変更しても良い。
【0028】
制御弁373は、圧力タンク371からガス噴出ノズル372の噴出口までの間のガス供給路に配置され、ガス噴出ノズル372の噴出口からガスの噴出のオン/オフを制御している。より詳しくは、本実施形態において、制御弁373は、制御部8によって制御される遮断弁によって構成されており、遮断状態において圧力タンク371とガス噴出ノズル372との間を遮断し、開放状態において圧力タンク371とガス噴出ノズル372との間を連通させて、圧力タンク371内の不活性ガスを噴出させる。
【0029】
本実施の形態では、図2(a)に示すように、制御部8は、本体部31が第1位置で給袋装置2から保持部32が袋を受け渡された後、ガイド部35が第2状態となったことに基づいて、制御弁373を制御してガス噴出ノズル372から袋B内に向けて不活性ガスを噴射させる(第1噴射)。また、その後、移動部36により、本体部31が第1位置から第2位置へと上昇している間にも、制御部8は、制御弁373を制御してガス噴出ノズル372から袋B内に向けて不活性ガスを噴射させる(第2噴射)。
【0030】
上記第1噴射された不活性ガスは、ガイド部35の内側を通って袋B内へと到達し、袋内で拡散される。そして、この状態で、本体部31が袋Bと共に第1位置から第2位置に向かって上昇するため、慣性により、第1噴射された不活性ガスは袋Bの底部側へと移動する。また、本体部31の上昇中にガス噴出ノズル372から不活性ガスが第2噴射されるため、袋Bの上部部分の空気もこの第2噴射の不活性ガスでガス置換される。
【0031】
このようにすることによって、本実施の形態では、充填装置5によって粉粒体を袋B内に充填する前に、袋B内の空気を不活性ガスに置換することができる。また、粉粒体の排出の前に充填装置5の不活性ガス供給部55からも不活性ガスを噴出して、更に、袋B内の環境を不活性ガスによって置換された環境とすることができる。そして、充填装置5は、脱気部53によって粉粒体を脱気して排出することも相俟って、極めて高い置換率で不活性ガスにガス置換された袋内環境で粉粒体を袋Bに充填することができる。
【0032】
<脱気装置の不活性ガス供給部>
ついで、脱気装置7の不活性ガス供給部(第3不活性ガス供給部)75について、詳しく説明をする。上述したように、本実施の形態においては、粉粒体は不活性ガスが充満した袋内環境下にて袋Bに充填され、この状態を極力保つように袋搬送装置6の上部搬送部61にて袋Bの上部をクランプした状態で脱気装置7へと袋Bが搬送される。しかしながら、上部搬送部61にてクランプされた位置よりも上方側の部分については、袋Bの開口を通して外部の空気が流入可能となっていると共に、脱気棒72を挿入する際には、上部搬送部61によるクランプも解除されるため、袋Bの上部部分については、どうしも空気が混入した状態が生じ得る。
【0033】
このため、本実施の形態では、脱気装置7は、図5に示すように、脱気棒72の上部部分から不活性ガスを排出可能に設けられている。より詳しくは、不活性ガス供給部75は、脱気棒72の内、外周にフィルタ722が設けられると共に粉粒体P内に挿入されて真空脱気を行う脱気領域よりも上方の領域に不活性ガスを排出する不活性ガス排出部756が配置されており、脱気棒72が脱気位置(図4及び図5の位置)に位置した際に、袋Bの上部でかつ粉粒体Pの上面よりも上方から不活性ガスを排出することができるように構成されている。即ち、脱気棒72は、負圧室721及びフィルタ722を有する脱気部724と、不活性ガス排出部756と、が一体的に移動可能に構成された脱気ユニットとなっている。
【0034】
不活性ガス供給部75は、図1及び図5に示すように、不活性ガス供給源である圧力タンク751(図1参照)と、不活性ガス排出部756と、制御弁753(図1参照)と、を備えている。圧力タンク751は、不図示の不活性ガス発生源と接続されており、不活性ガス発生源から供給された不活性ガスを任意の圧力に貯圧可能に構成されている。この圧力タンク751の容量や圧力設定によって、不活性ガス排出部752からのガスの噴出圧力及び噴出回数が設定される。また、圧力タンク751内の圧力は、付属の圧力計によって確認できるようになっている。
【0035】
不活性ガス排出部752は、ガス供給室752と、フィルタ部755と、を備えており、ガス供給室752は、上述した圧力タンク751と接続して不活性ガスが供給されるようになっていると共に、その側面が不活性ガスの噴出口となっている。このガス供給室752の側面(側部外周)には、不活性ガスは通過可能でかつ粉粒体は通過不能な上述したフィルタ部755が設けられており、ガス噴出を停止した際にガス供給室752内に粉粒体が侵入しないように構成されている。
【0036】
制御弁753は、圧力タンク751からガス供給室752までの間のガス供給路に配置され、ガス供給室752の側面からの不活性ガスの噴出のオン/オフを制御している。より詳しくは、本実施形態において、制御弁753は、制御部8によって制御される遮断弁によって構成されており、遮断状態において圧力タンク751とガス供給室752との間を遮断し、開放状態において圧力タンク751とガス供給室752との間を連通させて、圧力タンク751内の不活性ガス(本実施の形態では窒素ガス)を噴出させる。
【0037】
制御部8は、脱気棒72が脱気位置に位置したことに基づいて、上記制御弁753を開放状態にして不活性ガス供給部75から袋Bへの不活性ガスの噴出を開始させると共に、脱気棒72による脱気を開始させる。これにより、袋B内は、不活性ガス供給部75から不活性ガスが供給されながら、真空脱気されるため、脱気が終了した時点における袋B内に僅かに残された気体は、ほとんどが不活性ガスに置換された状態となる。特に、上方から不活性ガスが供給されつつ、粉粒体内から脱気棒72の脱気部724によって吸引されるため、袋内の空気を効率よく不活性ガスにガス置換することができる。
【0038】
<まとめ>
上述したように本実施の形態に係る包装システム(1)は、袋(B)を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、
粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置(3)と、
前記袋保持装置(3)に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置(5)と、を備え、
前記袋保持装置(3)は、
袋を保持する保持部(32)と、
前記保持部(32)が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する不活性ガス排出部(372)と、を備えている。
【0039】
このように、充填装置5が粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置3に不活性ガス排出部372を設けたことによって、粉粒体を充填する前に任意のタイミングで袋B内に不活性ガスを供給することができる。これにより、内部の気体環境が不活性ガスに置換された状態の袋内に対して粉粒体を充填することができるため、袋内に残存している酸素等の非不活性気体を減少させることができ、以って、粉粒体の劣化を防止してその保存期間を延ばすことができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態では、不活性ガス排出部の排出口が袋外に位置しているため、指向性を重視して、不活性ガス排出部としてガス噴出ノズル372を用いたが、例えば、ガス噴出ノズルの長さ等はどのように設定しても良い。また、例えば、不活性ガス排出部の排出口を袋内に位置するように設計しても良く、この場合は、よりガスの拡散を重視した形状や、ガスの排出口にフィルタを設けるようにしても良い。更に、不活性ガスとして窒素を用いたがこれに限らず、例えば、アルゴンガスなど、どのような不活性ガスを用いても良い。また、上述した実施の形態では、個別に分離された袋に対して粉粒体を充填したが、本実施の形態において、袋とは、上述したように各袋が分離された状態のもの以外にも、フィルムを背中合わせでシールして筒状にしたものも含み、所謂、ピロー型包装機(特に縦ピロー型包装システム)に対しても適用しても良い。この場合、例えば、不活性ガス排出部は袋保持部の一部として機能するセーラーなどに設けられる。
【0041】
前記袋保持装置(3)は、
前記保持部(32)及び前記不活性ガス排出部(372)が設けられた本体部(31)と、
前記本体部(31)を第1位置と第2位置とに移動させる移動部(36)と、を備え、
前記第1位置(例えば、図2(a)参照)は、前記保持部に袋が装着される位置であり、
前記第2位置(例えば、図2(b)参照)は、前記充填装置(5)が袋に対して粉粒体の充填を開始する位置であり、
前記本体部(31)が前記第1位置の際に前記保持部(32)が保持している袋の内部に対して、前記不活性ガス排出部(372)より不活性ガスを排出し、その後、前記本体部(31)を前記第2位置に移動させる。
【0042】
このように、不活性ガス排出部372により第1位置に位置している際に袋内不活性ガスを排出し、その後、不活性ガスが排出された袋を本体部と共に第2位置に移動させることによって、袋内に排出させた不活性ガスを底部側へと効率良く移動させることができる。これにより、袋内に偏りなく、不活性ガスを供給してガス置換を行うことができる。
【0043】
前記本体部(31)が前記第1位置から前記第2位置に移動している途中及び/又は、前記本体部(31)が前記第2位置に位置している際に、前記不活性ガス排出部(372)から袋の内部に対して不活性ガスを排出する。
【0044】
このように、第1位置から第2位置に移動している途中に不活性ガス排出部372から不活性ガスを排出するように構成することによって、袋上部の気体についても効率良く不活性ガスに置換することができる。また、上述した実施の形態では、第1位置から第2位置に移動している途中に不活性ガス排出部372から不活性ガスを排出するように構成したが、粉粒体が袋内に充填される前であれば、本体部31が第2位置に位置している際に不活性ガス排出部372から不活性ガスを排出するように構成しても良い。また、第1位置から第2位置に移動している途中及び本体部31が第2位置に位置している際の両方において不活性ガスを排出するように構成しても良い。
【0045】
前記不活性ガス排出部(372)は、第1不活性ガス排出部であり、
前記充填装置(5)は、
粉粒体を搬送して先端部から排出する粉粒体搬送手段(52)と、
前記粉粒体搬送手段(52)の先端部に設けられ、不活性ガスを排出する第2不活性ガス排出部(552,553)と、を備え、
前記粉粒体搬送手段(52)は、前記本体部(31)が前記第1位置にある場合は、その先端部が前記保持部が保持している袋の外部に位置し、前記本体部が前記第2位置にある場合は、その先端部が前記保持部が保持している袋の内部に位置するように配設されており、
前記本体部(31)が前記第2位置でかつ前記粉粒体搬送手段(52)が粉粒体の排出を開始する前に、前記第2不活性ガス排出部(552,553)により前記保持部(31)が保持している袋の内部に対して不活性ガスを排出する。
【0046】
このように、充填装置5にも不活性ガス排出部552,553を設けることによって、袋保持装置3の不活性ガス排出部372と相俟って、粉粒体を充填する際の袋B内の気体を不活性ガスの置換率を高める事ができる。また、高い不活性ガスの置換率とタクトタイムの短縮化を両立することができる。
【0047】
前記充填装置(5)によって粉粒体が充填された袋内の気体を脱気する脱気ユニット(72)と、前記脱気ユニット(72)を待機位置と前記脱気ユニット(72)が袋(B)の内部に進入する脱気位置とに移動させる脱気ユニット移動部(73)と、を有する脱気装置(7)を備え、
前記脱気ユニット(72)は、
袋内の気体を脱気する脱気部(724)と、
不活性ガスを排出する第3不活性ガス排出部(756)と、を備えている。
【0048】
このように、脱気ユニット72に不活性ガス排出部756を設けたことによって、粉粒体が充填された袋を真空脱気する際に混入し得る僅かな気体についても不活性ガスに置換し、袋内に残存する非不活性気体を極めて少なくすることができる。
【0049】
前記脱気装置(7)は、前記第3不活性ガス排出部(756)により不活性ガスを排出しつつ、前記脱気部(724)により袋内を脱気する。
【0050】
このように、脱気部724により袋内を脱気しつつ、第3不活性ガス排出部756から不活性ガスを排出することによって、袋内に残存する非不活性気体を極めて少なくすることができる。なお、これら脱気部724及び第3不活性ガス排出部756を同時に駆動させず、第3不活性ガス排出部756から不活性ガスを排出し、その後、脱気部724によって脱気しても良い。また、第3不活性ガス排出部756から先行して不活性ガスを排出し始め、その後、脱気部724よる脱気を開始し、脱気部724も先に第3不活性ガス排出部756を停止したり、脱気部724も後に第3不活性ガス排出部756を停止したりしても良いし、第3不活性ガス排出部756に先行して脱気部724による脱気を開始しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1:包装システム/3:袋保持装置/5:充填装置/7:脱気装置/31:本体部/32:保持部/36:移動部/52:粉粒体搬送手段/72:脱気ユニット/73:脱気ユニット移動部/372:不活性ガス排出部/552,553:第2不活性ガス排出部/724:脱気部/756:第3不活性ガス排出部/B:袋
【要約】
【課題】粉粒体が充填される袋内の空気を不活性気体に効果的に置換することができる。
【解決手段】包装システム(1)は、袋を用いて粉粒体を包装する包装システムであって、粉粒体を充填する袋を保持する袋保持装置(3)と、袋保持装置(3)に保持された袋に対して粉粒体を充填する充填装置と、を備え、袋保持装置(3)は、袋を保持する保持部(32)と、保持部(32)が保持している袋内に対して不活性ガスを排出する不活性ガス排出部(372)と、を備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6