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特許7582739複数の熱膨張係数ゾーンを形成するためのカスタマイズされたコールドプレート形状
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複数の熱膨張係数ゾーンを形成するためのカスタマイズされたコールドプレート形状
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20241106BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022549255
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021012773
(87)【国際公開番号】W WO2021167711
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】16/792,681
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マコーディク,クレイグ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】エルズワース,ジョセフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】サウスアード,トッド イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ,イーサン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ザルク,ディミトリー
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-237058(JP,A)
【文献】特開2004-153075(JP,A)
【文献】特開2018-018976(JP,A)
【文献】特表2014-515876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234524(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103547441(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却すべき構造物に熱的に結合され該構造物から熱エネルギーを除去するように構成されたコールドプレートを含む装置であって:
前記コールドプレートは、
少なくとも1つの第1材料を含む第1外層及び第2外層;並びに
前記第1外層及び前記第2外層にはめ込まれ、少なくとも1つの第2材料を含む第3層;
を含み、
前記第1材料と前記第2材料は熱膨張係数(CTE)が異なり;
前記第3層は前記第1外層及び前記第2外層に不均一にはめ込まれて、前記コールドプレートの異なるゾーンが異なる局所CTEを有し、前記第3層は、前記少なくとも1つの前記第2材料を貫通する開口部を含み、かつ、前記第1外層及び前記第2外層のうち少なくとも1つからの前記少なくとも1つの前記第1材料の突起部が、前記開口部を部分的又は完全に埋め;かつ
前記異なるゾーンは、異なる温度に達する前記構造物の異なる領域に基づいて定義される、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、少なくとも部分的に、
前記開口部又は前記突起部の位置;
前記開口部又は前記突起部の数;
前記開口部又は前記突起部の間の1つ以上の間隔;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の寸法;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の形状;又は
前記突起部の1つ以上の組成;
に基づく、
装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって:
前記コールドプレートの前記ゾーンのうちの第1ゾーンは、該第1ゾーン内の第1の指定数の突起部に少なくとも部分的に基づいて、前記局所CTEのうちの第1局所CTEを有しており;かつ
前記コールドプレートの前記ゾーンのうちの第2ゾーンは、(i) 前記第1の指定数より少ない、前記第2ゾーン内の第2の指定数の突起部、又は
(ii) 前記第2ゾーン内に突起部がないこと、のいずれかに少なくとも部分的に基づいて、前記局所CTEのうちの第2局所CTEを有している;
装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の寸法;及び
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の組成;
のうち少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいている、
装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって:
前記第1外層及び前記第2外層はアルミニウム又はアルミニウム合金を含み;かつ
前記第3層はアルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛を含む、
装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって:
前記第1外層、前記第2外層及び前記第3層が実質的に平面である、装置。
【請求項7】
基板と、該基板内又は該基板上の複数の電子部品を含む電子デバイス;及び
前記基板に熱的に結合され、前記基板から熱エネルギーを除去するように構成されたコールドプレート;
を含むシステムであって:
前記コールドプレートは、
少なくとも1つの第1材料を含む第1外層及び第2外層;並びに
前記第1外層及び前記第2外層にはめ込まれ、少なくとも1つの第2材料を含む第3層;
を含み、
前記第1材料と前記第2材料は熱膨張係数(CTE)が異なり;
前記第3層は前記第1外層及び前記第2外層に不均一にはめ込まれて、前記コールドプレートの異なるゾーンが異なる局所CTEを有し、前記第3層は、前記少なくとも1つの前記第2材料を貫通する開口部を含み、かつ、前記第1外層及び前記第2外層のうち少なくとも1つからの前記少なくとも1つの前記第1材料の突起部が、前記開口部を部分的又は完全に埋め
前記電子部品は、前記電子デバイスの動作中に前記基板の異なる領域が異なる温度に達するように構成されており;かつ
前記異なる局所CTEを有する前記コールドプレートの前記異なるゾーンは、前記基板の異なる領域に基づいて定義される;
システム。
【請求項8】
請求項7のシステムであって:
前記コールドプレートの前記ゾーンのうち第1ゾーンはCTEが低く、前記電子デバイスの動作中により高い温度に達すると予想される前記基板の前記領域のうち第1領域に関連付けられており;かつ
前記コールドプレートの前記ゾーンのうち第2ゾーンはCTEが高く、前記電子デバイスの動作中により低い温度に達すると予想される前記基板の前記領域のうち第2領域に関連付けられている、
システム。
【請求項9】
請求項7のシステムであって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、少なくとも部分的に、
前記開口部又は前記突起部の位置;
前記開口部又は前記突起部の数;
前記開口部又は前記突起部の間の1つ以上の間隔;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の寸法;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の形状;又は
前記突起部の1つ以上の組成;
に基づく、
システム。
【請求項10】
請求項7に記載のシステムであって:
前記コールドプレートの前記ゾーンのうちの第1ゾーンは、該第1ゾーン内の第1の指定数の突起部に少なくとも部分的に基づいて、前記局所CTEのうちの第1局所CTEを有しており;かつ
前記コールドプレートの前記ゾーンのうちの第2ゾーンは、(i) 前記第1の指定数より少ない、前記第2ゾーン内の第2の指定数の突起部、又は
(ii) 前記第2ゾーン内に突起部がないこと、のいずれかに少なくとも部分的に基づいて、前記局所CTEのうちの第2局所CTEを有している;
システム。
【請求項11】
請求項7に記載のシステムであって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の寸法;及び
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の組成;
のうち少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいている、
システム。
【請求項12】
請求項7に記載のシステムであって:
前記第1外層及び前記第2外層はアルミニウム又はアルミニウム合金を含み;かつ
前記第3層はアルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛を含む、
システム。
【請求項13】
請求項7に記載のシステムであって:
前記第1外層、前記第2外層及び前記第3層が実質的に平面である、システム。
【請求項14】
コールドプレートを得るステップ;及び
前記コールドプレートを冷却すべき構造物に結合するステップであり、前記コールドプレートは前記構造物から熱エネルギーを除去するように構成されている、ステップ;
を含む方法であって:
前記コールドプレートは、
少なくとも1つの第1材料を含む第1外層及び第2外層;並びに
前記第1外層及び前記第2外層にはめ込まれ、少なくとも1つの第2材料を含む第3層;
を含み、
前記第1材料と前記第2材料は熱膨張係数(CTE)が異なり;
前記第3層は前記第1外層及び前記第2外層に不均一にはめ込まれて、前記コールドプレートの異なるゾーンが異なる局所CTEを有し、前記第3層は、前記少なくとも1つの前記第2材料を貫通する開口部を含み、かつ、前記第1外層及び前記第2外層のうち少なくとも1つからの前記少なくとも1つの前記第1材料の突起部が、前記開口部を部分的又は完全に埋め;かつ
前記コールドプレートの前記異なる局所CTEを有する前記異なるゾーンは、異なる温度に達する前記構造物の異なる領域に基づいて定義される;
方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、少なくとも部分的に、
前記開口部又は前記突起部の位置;
前記開口部又は前記突起部の数;
前記開口部又は前記突起部の間の1つ以上の間隔;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の寸法;
前記開口部又は前記突起部の1つ以上の形状;又は
前記突起部の1つ以上の組成;
に基づく、
方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって:
前記コールドプレートの前記異なるゾーンの前記局所CTEが、
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の規模;及び
前記第1外層及び前記第2外層の1つ以上の組成;
のうち少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいている、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に熱管理システムに向けられている。より具体的には、本開示は、複数の熱膨張係数 (CTE) ゾーンを形成するためのカスタマイズされたコールドプレート形状に向けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
熱管理システムは、デバイス内の電子部品その他の部品から熱を除去し、冷却するために、電子デバイス内で日常的に使用されている。電子デバイスから熱エネルギーを効率的に除去する能力は、多くの用途で必要又は望ましい場合がある。例えば、高電力モノリシックマイクロ波集積回路(MMICs)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBTs)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、システムインパッケージ(SiP)、ボールグリッドアレイ(BGAs)、その他の高電力電子部品を使用する用途においては、電子部品が正常に動作し、過度の温度によって損傷しないことを保証するために、しばしば電子部品から熱を除去する必要がある。また、電子部品を基板や他のキャリア上に実装するために使用される実装材料は、通常、異なる熱膨張係数(CTE)によって生じる過度の機械的応力を回避するために、慎重に選択する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、複数の熱膨張係数(CTE)ゾーンを形成するためのカスタマイズされたコールドプレート形状に関するものである。
【0004】
第1の実施形態では、装置が、冷却すべき構造物に熱的に結合され、構造物から熱エネルギーを除去するように構成されたコールドプレートを含む。コールドプレートは、(i)少なくとも1つの第1材料を有する第1外層及び第2外層と、(ii)第1外層及び第2外層にはめ込まれ、少なくとも1つの第2材料を有する第3層とを含む。第1材料と第2材料はCTEが異なる。第3層は、コールドプレートの異なるゾーンが異なる局所CTEを持つように、第1外層及び第2外層に不均一にはめ込まれる。
【0005】
第2の実施形態では、システムは、基板と、基板内又は基板上に複数の電子部品を有する電子デバイスを含む。このシステムには、基板に熱的に結合され、基板から熱エネルギーを除去するように構成されたコールドプレートも含まれる。コールドプレートは、(i)少なくとも1つの第1材料を有する第1外層及び第2外層と、(ii)第1外層及び第2外層にはめ込まれ、少なくとも1つの第2材料を有する第3層とを含む。第1材料と第2材料ではCTEが異なる。第3層は、コールドプレートの異なるゾーンが異なる局所CTEを持つように、第1外層及び第2外層に不均一にはめ込まれる。
【0006】
第3の実施形態では、方法が、(i)第1外層及び第2外層が少なくとも1つの第1材料を有し、(ii)第1外層及び第2外層にはめ込まれた第3層が少なくとも1つの第2材料を有するコールドプレートを得ることを含む。第1材料と第2材料はCTEが異なる。第3層は、コールドプレートの異なるゾーンが異なるローカルCTEを持つように、第1外層及び第2外層に不均一にはめ込まれる。この方法には、コールドプレートを冷却すべき構造物に熱的に結合することも含まれており、コールドプレートは構造物から熱エネルギーを除去するように構成されている。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図面、詳細な説明及びクレームから当業者には容易に明らかであろう。
【0008】
本開示をより完全に理解するために、添付図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に従った複数の熱膨張係数(CTE)ゾーンを持つカスタマイズされたコールドプレート形状を使用するデバイスの例を示している。
図2A】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第1例のコールドプレートを示す。
図2B】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第1例のコールドプレートを示す。
図2C】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第1例のコールドプレートを示す。
図2D】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第1例のコールドプレートを示す。
図3A】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第2例のコールドプレートを示す。
図3B】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第2例のコールドプレートを示す。
図3C】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第2例のコールドプレートを示す。
図3D】本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第2例のコールドプレートを示す。
図4】本開示に従って複数のCTEゾーンを形成するようにコールドプレート形状をカスタマイズする方法の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する図1乃至から図4、及び本特許明細書において本発明の原理を説明するために使用する様々な実施形態は、例示のみを目的としており、本発明の範囲を制限するような解釈は一切すべきではない。当業者であれば、本発明の原理は、適切に配置されたあらゆる種類の装置又はシステムに実装することができることを理解するであろう。
【0011】
前述のように、電子デバイス内では熱管理システムが日常的に使用され、デバイス内の電子部品その他の部品から熱を除去して冷却している。例えば、高電力モノリシックマイクロ波集積回路(MMICs)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBTs)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、システムインパッケージ(SiP)、ボールグリッドアレイ(BGAs)、その他の高電力電子部品を使用する用途においては、電子部品が正常に動作し、過度の温度によって損傷しないことを保証するために、しばしば電子部品から熱を除去する必要がある。また、電子部品を基板や他のキャリア上に実装するために使用される実装材料は、通常、異なる熱膨張係数(CTE)によって生じる過度の機械的応力を回避するために、慎重に選択する必要がある。
【0012】
MMICs、IGBTs、FPGAs、SiPs、BGAsその他の電子部品を冷却するために使用される一般的な手法の1つは、サーマルスプレッダとして機能するベース上に、電子部品を搭載した回路基板、回路カードその他の基板を取り付けることであり、これはベースが電子部品から熱エネルギーを受け取り、その熱エネルギーを広範囲に拡散することを意味する。その後、熱エネルギーをサーマルスプレッダからより簡単に取り除くことができる。特定の例として、電子部品を搭載した回路基板、回路カードその他の基板を、銅製の固体ベース又はその他の金属製の固体ベース上に取り付けることができる。残念ながら、この種のサーマルスプレッダは重いことが多く、比較的高価になることがある。サーマルスプレッダの重量は、特に多数の電子部品を冷却するために多数のサーマルスプレッダが使用される場合には、重量に敏感なデバイス又はシステムで特に問題となる可能性がある。
【0013】
さらに、サーマルスプレッダの熱膨張係数(CTE)を、1つ以上の電子部品を搭載した回路基板、回路カードその他の基板のCTEに厳密に一致させることが必要又は望ましい場合がある。熱膨張係数は、温度の変化によって材料が膨張又は収縮する速度を定義する。サーマルスプレッダのCTEと基板のCTEが一致しないと、サーマルスプレッダと基板の間に応力が発生し、最終的に損傷する可能性がある。例えば、CTEのミスマッチにより、サーマルスプレッダと基板の間に剥離や層剥離が生じることがある。サーマルスプレッダのバルクCTEと基板のCTEを厳密に一致させるのが一般的であるが、それでも基板が基板全体にわたって均一な温度を持たない可能性があるため、異なる領域で異なる応力を発生させてしまうことがある。
【0014】
本開示は、複数のCTEゾーンを有するサーマルスプレッダを形成するためにコールドプレート形状を調整するための様々な技術を提供する。以下でより詳細に説明するように、サーマルスプレッダ(コールドプレートとも呼ばれる)は、サーマルスプレッダの異なる領域又はゾーンが異なるCTEを持つように調整され(又はカスタマイズされ)(tailored)ているため、サーマルスプレッダは、1つ以上の冷却すべき部品(1つ以上のMMIC、IGBT、FPGA、SiP、BGA、その他の電子部品など)を搭載する回路基板、回路カードその他の基板の異なる領域又はゾーンの実際の膨張又は収縮とより密接に一致することができる。例えば、サーマルスプレッダは、基板のうちより高い温度に到達すると予想される1つ以上の領域(基板がより多くの部品又はより高い温度で動作又はより高い温度を発生する部品を搭載する少なくとも1つの領域など)に取り付けられるサーマルスプレッダの1つ以上の領域において、より小さなCTEを持つことができる。また、サーマルスプレッダは、より低い温度に到達すると予想される基板の1つ以上の領域に取り付けられるサーマルスプレッダの1つ以上の領域において、より大きなCTEを持つことができる。例えば、基板に搭載される部品が少ないか全くない、或いは部品がより低い温度で動作又はより低い温度を発生するような領域が少なくとも1つある。
【0015】
サーマルスプレッダのCTEを異なる領域で調整(カスタマイズ)するには、さまざまな方法がある。例えば、CTEが低い材料を、CTEが高い材料の層の間に不均一にはめ込むことがある(又はその逆)。サーマルスプレッダのCTEが異なる領域でどのように変化するかを制御するために、場所、量、サイズ、形状、寸法、組成など、はめ込み材料のさまざまな特性を制御することができる。また、又は別の方法として、寸法や組成などの材料層のさまざまな特性を制御して、サーマルスプレッダのCTEが異なる領域でどのように変化するかを制御することもできる。効果的には、これにより、サーマルスプレッダのCTEをサーマルスプレッダの局所領域の特定の値に合わせて調整しながら、サーマルスプレッダ全体に対して望ましいバルクCTEを維持することができる。
【0016】
サーマルスプレッダが異なる領域に異なるCTEを持つようにサーマルスプレッダを調整する機能は、剥離や層剥離などの損傷を引き起こす可能性のあるストレスを低減又は最小化し、サーマルスプレッダに基板を固定するために必要なボンディングライン(bondline)の厚さを低減又は最小化するのに役立つ。例えば、基板の1つ以上の領域に搭載される電子部品の数や種類などにより、基板の1つ以上の領域がより高い温度に達することがある。サーマルスプレッダが全体的に均一なCTEを持つ場合、基板の1つ以上の領域の温度が高いと、サーマルスプレッダが一部の領域でより大きく、他の領域ではより小さく膨張する可能性があり、これにより大きなストレスが発生する可能性がある。より高い温度に到達すると予想される1つ以上の領域でサーマルスプレッダのCTEが低くなり、より低い温度に到達すると予想される1つ以上の領域でCTEが高くなるようにサーマルスプレッダを調整することで、CTEミスマッチによるストレスを大幅に低減又は最小化することができる。さらに、これは軽量かつ費用対効果の高い方法で達成することができ、サーマルスプレッダの適切な調整に基づいて高い熱性能設計を達成することができる。さらに、サーマルスプレッダ内のCTEの調整は高度にカスタマイズ可能であり、さまざまなパラメータを使用して、さまざまな領域のサーマルスプレッダのCTEを制御又は変更できる。
【0017】
図1は、本開示に従った複数のCTEゾーンを持つカスタマイズされた(tailored)コールドプレート形状(cold plate geometry)を使用するデバイス100の例を示している。図1に示すように、デバイス100は、一般に、回路カードアセンブリ102とサーマルスプレッダ(thermal spreader)又はコールドプレート104を含む。回路カードアセンブリ102は、一般に、コールドプレート104を使用して回路カードアセンブリ102から熱エネルギーを除去することによって冷却される、1つ以上の電子部品その他の部品を含む。ただし、コールドプレート104は、他の適切な部品を冷却するために使用できる。
【0018】
図1に示されている例では、回路カードアセンブリ102は、回路ボード、回路カードその他の基板106を含み、基板106は、様々な電子部品108a ~108b と、電子部品108a ~108b の間或いはそれらを含む電気接続とを搭載するために使用される。基板106は、その上に電気部品及び電気経路を形成又は配置することができる任意の適切な構造を表す。例えば、基板106は、電気部品及び導電性トレースその他の導電経路を搭載するために使用される、剛体プリント回路基板、フレキシブル回路基板その他の適切な構造物を表すことができる。基板106は、コットン紙、織繊維ガラス、又は織ガラスとエポキシ樹脂、炭素、金属、アルミナ又はその他のセラミック、又はポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエステルその他のポリマーなど、任意の適切な材料から形成することができる。また、基板106は、単層の材料を使用するか、積層又は他の方法で接合された複数層の材料を使用するなど、任意の適切な方法で形成することができる。さらに、基板106は、任意の適切なサイズ、形状、寸法を有することができる。特定の例として、基板106は、長さ約5インチ (約12.7センチメートル) の辺を持つ正方形の形状を有して良い。
【0019】
基板106は、任意の適切な数と種類の電子部品108a ~108b を搭載するために使用することができる。本実施例では、電子部品は一般的に、高電力又は高温の電子部品108a と低電力又は低温の電子部品108b とに分けられる。電子部品108a は、一般に、(電子部品108b に対して)より多くの電力を使用して動作するか、或いはデバイス100から除去すべきより多くの熱エネルギーを生成する半導体チップ、集積回路その他の部品を表す。特定の例として、電子部品108a は、1つ以上のMMICチップ、IGBTs、FPGAs、SiPs、BGAs、又はその他の高出力又は高性能の電子部品を含むことができる。電子部品108b は一般に、(電子部品108a と比較して)より少量の電力を使用して動作するか、或いはデバイス100から除去すべきより少量の熱エネルギーを発生する半導体チップ、集積回路その他の部品を表す。特定の例として、電子部品108b は、MMICs、IGBTs、FPGAs、SiPs、及びBGAsよりも消費電力の少ないものなど、1つ以上のパッシブ又はアクティブな電気部品を含むことができる。
【0020】
なお、電子部品を電子部品108a と電子部品108b に分けているのはあくまで例示であることに注意すべきである。デバイス100には、任意の数の電子部品108a と任意の数の電子部品108b を使用することができ、電子部品108a ~108b は基板106上に任意の適切な配置を持つことができる。また、電子部品を低電力・中電力・高電力デバイスに分けたり、低温・中温・高温デバイスに分けたりする場合など、デバイス100内の電子部品が2つ以上に分けられることがあることに注意すべきである。
【0021】
基板106は、1つ以上の追加部品に結合することもできる。この例では、基板106は様々なアンテナ109に結合することができ、そのすべてがこの特定の実施形態では基板106の片側に結合され、そこから延びている(ただし、アンテナ109は他の適切な方法で基板106に結合することができる)。各アンテナ109は、1つ以上のMMICs、IGBTs、FPGAs、SiPs、BGAs、又は他の電子部品など、少なくとも1つの電子部品108a ~108b に電気的に結合することができる。ただし、他の部品又は追加の部品を基板106又は基板106に搭載された電子部品108a ~108b に結合してもよく、或いはデバイス100が基板106に結合された他の部品を含まなくてもよいことに注意すべきである。
【0022】
回路カードアセンブリ102内に異なる量又は種類のデバイスが存在するため、回路カードアセンブリ102の動作中に、基板106の異なる領域又はゾーンで異なる温度(及び場合によっては大幅に異なる温度)が発生することがある。この例では、例えば、基板106のあるゾーン110a は、ゾーン110a がより高出力又はより高温の電子部品108a を搭載する基板106の部分を表しているため、(他のゾーン110b ~110c と比較して)最も高い温度を経験する可能性がある。基板106の別のゾーン110b は、ゾーン110b が低電力又は低温の電子部品108b を搭載する基板106の部分を表しているため、(他のゾーン110a 及び110c と比較して)中間温度を経験する可能性がある。基板106の第3のゾーン110c は、ゾーン110c が基板106の電子部品があるとしてもそれを搭載する部分が少ないことを表しているので、(他のゾーン110a から110b に対して)最低温度を経験する可能性がある。
【0023】
図1に示されているゾーン110a ~110c は、特定の電子部品108a ~108b 及びそれらの電子部品108a ~108b の基板106上の特定の配置に基づいていることに注意すべきである。回路カードアセンブリ102の他の実装が、使用される電子部品108a ~108b 及び基板106上の電子部品108a ~108b の配置を変更することができ、デバイス又はシステム内のゾーン及びゾーンの配置が、任意の実装で変化する可能性がある。また、基板106が電子部品108a ~108b で完全に満たされており、有意なサイズのゾーン110c がない場合など、回路カードアセンブリ102が3種類のゾーン108a ~108c すべてを含む必要はない。
【0024】
コールドプレート104はベース112を含み、ベース112は、回路カードアセンブリ102に(少なくとも熱的に)接続され、回路カードアセンブリ102から熱エネルギーを除去する。コールドプレート104のベース112は、コールドプレート104から熱エネルギーを除去する別の装置又はシステムに結合することもできる。熱エネルギーは、伝導、対流、放射など、任意の適切な方法でベース112から除去することができる。ベース112は、任意の適切なサイズ、形状、寸法を持つことができる。具体的な例として、ベース112は辺の長さが約5インチ(約12.7センチメートル)の正方形をしていて、ベース112は厚さが約0.1インチ(約2.54ミリメートル)であってよい。場合によっては、ベース112は一般に基板106と同じサイズと形状であるが、必ずしもそうである必要はない。コールドプレート104は、任意の適切な方法で回路カードアセンブリ102に取り付けることができる。例えば、コールドプレート104のベース112は、熱伝導性の接着剤を使用して回路カードアセンブリ102の基板106に取り付けたり、ラミネーションなどのプロセスで結合したり、その他の適切な方法で回路カードアセンブリ102に取り付けたりすることができる。
【0025】
前述のように、回路カードアセンブリ102をコールドプレート104に取り付けて動作させると、基板106の異なるゾーン110a ~110c の加熱によってさまざまな問題が発生する可能性がある。特に、異なるゾーン110a ~110c を異なる温度に加熱すると、コールドプレート104の異なる部分も異なる温度に加熱される可能性がある。コールドプレート104が単に基板106のCTEと一致するバルクCTEを持つ場合、コールドプレート104の異なる部分の温度差によって、コールドプレート104の異なる部分が異なる速度で膨張/収縮する可能性がある。これにより、回路カードアセンブリ102とコールドプレート104に応力が発生し、剥離、剥層その他の損傷を引き起こす可能性がある。
【0026】
本開示に従って、コールドプレート104は、コールドプレート104の少なくとも2つの領域又はゾーン114a ~114c が少なくとも2つの異なるローカル(局所的)CTEを持つように調整される。全体として、コールドプレート104のベース112は、基板106のCTEと一致するか、実質的に一致するバルクCTEを持つことができる。ただし、ベース112のCTEは、コールドプレート104の異なるゾーン114a ~114c でローカルに異なる場合がある。この特定の例では、例えば、ゾーン114a ~114c のそれぞれは、基板106のCTEと一致又は実質的に一致するCTEを持つことができ、ゾーン114a は、基板106のCTEよりも小さいが、より高電力又はより高温の電子部品108a のCTEと一致又は実質的に一致する(この例では、基板106よりも低いCTEを持つ)CTEを持つことができる。高出力又は高温の電子部品108a は、他のゾーン114a ~114cの加熱と比較して、動作中にコールドプレート104のゾーン114a をより加熱する可能性があるため、コールドプレート104のゾーン114a は、他のゾーン114b ~114cと比較してCTEが低いように設計することができる。これは、ゾーン114a が他のゾーン114b ~114cと比較して加熱されたときにゆっくりとした速度で膨張することを意味するが、ゾーン114a は他のゾーン114b ~114c と比較してより加熱される。理想的には、ゾーン114a ~114c のCTEを選択して、デバイス100の予想動作温度範囲にわたってコールドプレート104と回路カードアセンブリ102の間の応力を低減又は最小化することができる。
【0027】
コールドプレート104内のベース112のCTEは、任意の適切な方法で調整することができる。例えば、以下でより詳細に説明するように、CTEが低い材料は、CTEが高い材料の層の間に不均一にはめ込まれ或いは埋め込まれることがある(又はその逆もある)。具体的な例としては、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金の層間に、アルミニウム炭化ケイ素(AlSiC)又は熱的熱分解黒鉛(thermal pyrolytic graphite, TPG)が不均一にはめ込まれ或いは埋め込まれている場合があり、この場合、アルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛は、アルミニウム又はアルミニウム合金に比べてCTEが小さい。これらの異なる材料の様々な形態が存在し、コールドプレート104に使用することができる。例えば、アルミニウム炭化ケイ素の種類によってAlSiC-9、AlSiC-10、AlSiC-12があり、アルミニウム合金の種類によってA356アルミニウム合金などの合金がある。使用される特定の材料は、コールドプレート104で得られるCTEに(少なくとも部分的に)依存する場合がある。したがって、ベース112の位置、量、サイズ、形状、寸法又は組成は、コールドプレート104の異なるゾーン114a ~114c で目的のCTEを達成するために、異なる方法で変化させることができる。コールドプレート用のカスタマイズ可能設計の例に関する追加の詳細を、以下に記載する。
【0028】
コールドプレート104は、アルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛(thermal pyrolytic graphite)、アルミニウム又はアルミニウム合金など、任意の適切な材料で形成することができる。ただし、コールドプレート104は、異なるCTEを持つ他の適切な材料から形成することができることに注意すべきである。また、コールドプレート104は、任意の適切な方法で製造することができる。例えば、コールドプレート104は、(i)外側の層がある材料(アルミニウムやアルミニウム合金など)から形成され、(ii)内側の層が外側の層と同じ材料から部分的に形成され、追加の材料(アルミニウム炭化ケイ素や熱分解黒鉛など)から部分的に形成される多層構造として製造することができる。具体的な例としては、アルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛を含む構造物を穴を開けて作製し、アルミニウム炭化ケイ素又は熱分解黒鉛の周囲及び穴を通してアルミニウム又はアルミニウム合金層を形成することができる。特に、複数の層を使用してコールドプレート104を製造することで、製造プロセスで標準的な処理技術を使用できる可能性がある。ただし、コールドプレート104は他の適切な方法で製造することができる。
【0029】
コールドプレート104のゾーン114a ~114c の数とゾーン114a ~114c の位置は、説明のためだけのものであることに注意すべきである。図1では、回路カードアセンブリ102の基板106上の電子部品108a ~108b の配置に基づいて、コールドプレート104のゾーン114a ~114c が定義されている。その結果、コールドプレート104内のゾーン114a ~114cの数と114a ~114c の位置は、特定のアプリケーション又は実装の所望性又は必要性に応じて異なる場合がある。また、コールドプレート104の異なるゾーンには、任意の数のCTEが存在する場合がある。
【0030】
従来の固体金属コールドプレートと比較して、コールドプレート104は大幅な重量削減を達成しながら、改善された局所CTEマッチングを提供することができる。例えば、銅製の固体コールドプレートでは、摂氏あたり約17 ppmの均一なCTEを達成でき、重量は立方インチあたり約0.32ポンド(立方センチメートルあたり約8.86グラム)になる場合がある。対照的に、AlSiC-9とアルミニウム又はアルミニウム合金を使用したコールドプレート104の実装例では、異なる領域で異なる値のカスタマイズ可能なCTEを提供できるが、重量は約0.10ポンド/立方インチ (約2.77グラム/立方センチメートル)にしかならない場合がある。これは大幅な削減であり、装置又はシステムで多数のコールドプレート104が使用される場合、この削減は特に有益である可能性がある。例えば、システムで512個のコールドプレートが使用されており、各コールドプレートが長さ5インチ (12.7センチメートル)、厚さ0.1インチ(2.54ミリメートル)の正方形の形状をしているとする。銅で形成されたコールドプレートの総重量は約409.6ポンド(約185.79キログラム)であり、AlSiC-9とアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたコールドプレートの総重量は約128.0ポンド(約58.06ポンド)である。
【0031】
図1は、複数のCTEゾーンを持つカスタマイズされたコールドプレート形状を使用するデバイス100の一例を示しているが、図1にはさまざまな変更が加えられる場合がある。例えば、複数のCTEゾーンを持つ個別の形状を持つコールドプレート104は、他の適切な装置又はシステムで使用することができる。また、コールドプレート104の形状は、冷却される構造物の異なるゾーンで予想される温度に基づくなど、さまざまな方法で変化する可能性がある。
【0032】
図2A乃至図2Dは、本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有するコールドプレート200の最初の例を示している。コールドプレート200は、例えば、図1の装置100におけるコールドプレート104の可能な実装の1つを表すことができる。ただし、コールドプレート200は、他の適切な装置又はシステムで使用することができる。
【0033】
図2A乃至図2Dに示すように、コールドプレート200は下層202、中間層204、上層206を含む。下層202と上層206は、コールドプレート200の外層を表している可能性があるため、コールドプレート200の下方スキン及び上方スキンと呼ばれることがある。中間層204は、層202と206を形成する材料の間に挟まれた、そうでなければ不均一にはめ込まれた、或いは不均一に埋め込まれた材料の少なくとも1つの層を表す。コールドプレート200の層202及び206の少なくとも一方は、その層202又は206から離れて伸びる突起208を含む。この例では、下層202には突起208が含まれているが、上層206又は両方の層202と206に突起208が含まれていてもよい。中間層204は開口部210を含み、突起部208は開口部210を通って伸びており、層202と206を一緒に結合することができる。突起208は一般的に、開口部210を満たすか、実質的に満たすような大きさである。
【0034】
図2Dに示すように、層202, 204, 206はスタック状に配置又は形成される。説明を簡単にするために、図2Dに示されている層202, 204, 206は、完全には重なっておらず一部破断されているが、実際のコールドプレートでは通常、互いに完全に重なっている。したがって、層202,204,206はコールドプレート200を形成する多層構造を表している。いくつかの実施形態では、各層202, 204, 206は平面であっても実質的平面であってもよく、これはコールドプレート200の厚さを減少又は最小化するのに役立つ(したがって、ボンディングライン(bondline)の厚さを減少又は最小化する)。ただし、コールドプレート200には、他の適切なサイズ、形状、及び寸法がある場合がある。
【0035】
層202, 206と突起208は一般的に1つ以上の第1材料で形成され、中間層204は一般的に1つ以上の第2材料で形成され、第1材料と第2材料は異なるCTEを持つ。コールドプレート200の様々な特性を制御することにより、コールドプレート200の異なる領域又はゾーン212a ~212c で異なるCTEを得ることができる。ここで制御できる特性には、突起208又は開口部210の位置、突起208又は開口部210の数、突起208又は開口部210の間隔、突起208又は開口部210の大きさ、突起208又は開口部210の形状、突起208又は開口部210の寸法、突起208の構成などがある。ここで制御できる特性は、層202, 206の厚さや層202, 206の組成を含んでいてもよいし、そうでなくてもよい。
【0036】
この例では、コールドプレート200の2つのゾーン212a ~212c はより多くの突起208を含み、コールドプレート200の3番目のゾーン212c はより少ない突起208を含む。層202, 206と突起208を形成する1つ以上の材料のCTEが層204を形成する1つ以上の材料よりも高い場合、これによりゾーン212c と比較してゾーン212a ~212b のCTEが高くなる。逆に、層202, 206及び突起208を形成する1つ以上の材料のCTEが層204を形成する1つ以上の材料よりも低い場合、これによりゾーン212c と比較してゾーン212a ~212bのCTEが低くなる。これは、コールドプレート200の異なるゾーン212a ~212c のCTEを調整できる方法の一例であるが、コールドプレートの異なるゾーンのCTEを制御するために、他の特性又は追加の特性を変更することができることに注意されたい。
【0037】
コールドプレート200のある特定の実装では、コールドプレート200は次のように設計することができる。層202と206がA 356アルミニウム合金で形成され、層204がAlSiC-9で形成されているとする。また、各層202, 204, 206は約5.216インチ(約13.249センチメートル)四方であり、層202と206の厚さは約0.03インチ(約0.762ミリメートル)、層204の厚さは約0.04インチ(約1.016ミリメートル)であると仮定する。さらに、層204には、図2Bに示すパターンで配置された円形の開口部210が208個含まれており、各開口部210の直径は約0.25インチ(6.35ミリメートル)であると仮定する。これらのパラメータを考慮すると、コールドプレート200のアルミニウム合金の体積は約2.04立方インチ(約33.43立方センチメートル)、コールドプレート200のAlSiC-9の体積は約0.68立方インチ(約11.14立方センチメートル)、コールドプレート200の総体積は約2.72立方インチ(約44.57立方センチメートル)となる。また、コールドプレート200の密度は約0.10ポンド/立方インチ(約2.77グラム/立方センチメートル)であり、コールドプレート200は約75%のアルミニウム合金と約25%のAlSiC-9である。また、コールドプレート200のゾーン212a ~212b のCTEは約19.1 ppm/℃であり、コールドプレート200のゾーン212c のCTEは約16.5 ppm/℃であろう。
【0038】
コールドプレート200の別の特定の実装では、コールドプレート200は次のように設計することができる。層202と206がA 356アルミニウム合金で形成され、層204がAlSiC-9で形成されているとする。また、各層202, 204, 206は約5.216インチ(約13.249センチメートル)四方であり、層202と206の厚さは約0.03インチ(約0.762ミリメートル)、層204の厚さは約0.12インチ(約3.048ミリメートル)であると仮定する。さらに、層204には、図2Bに示すパターンで配置された円形の開口部210が208個含まれており、各開口部210の直径は約0.25インチ(6.35ミリメートル)であると仮定する。これらのパラメータを考慮すると、コールドプレート200のアルミニウム合金の体積は約2.86立方インチ(約46.86立方センチメートル)、コールドプレート200のAlSiC-9の体積は約2.04立方インチ(約33.43立方センチメートル)、コールドプレート200の総体積は約4.90立方インチ(約80.30立方センチメートル)となる。また、コールドプレート200の密度は約0.10ポンド/立方インチ(約2.77グラム/立方センチメートル)であり、コールドプレート200は約58%のアルミニウム合金と約42%のAlSiC-9である。また、コールドプレート200のゾーン212a ~212b のCTEは約17.0 ppm/℃であり、コールドプレート200のゾーン212c のCTEは約12.8 ppm/℃であろう。
【0039】
図3A乃至3Dは、本開示に従った複数のCTEゾーンを有するカスタマイズされた形状を有する第2の例のコールドプレート300を示す。コールドプレート300は、例えば、図1の装置100におけるコールドプレート104の別の可能な実装を表すことができる。ただし、コールドプレート300は、他の適切な装置又はシステムで使用することができる。
【0040】
図3A乃至3Dに示すように、コールドプレート300は下層302、中間層304、上層306を含む。下層302と上層306は、コールドプレート300の外方層を表し、再びコールドプレート300の下方スキン及び上方スキンと呼ばれることがある。中間層304は、層302と306を形成する材料の間に挟まれた、そうでなければ不均一にはめ込まれた、或いは不均一に埋め込まれた材料の少なくとも1つの層を表す。コールドプレート300の層302及び306の少なくとも一方は、その層302又は306から離れて伸びる突起308を含む。この例では、下層302には突起308が含まれているが、上層306又は両方の層302と306に突起308が含まれていてもよい。中間層304は開口部310を含み、突起部308は開口部310を通って伸びており、層302と306を一緒に結合することができる。突起308は一般的に、開口部310を満たすか、実質的に満たすような大きさである。
【0041】
図3Dに示すように、層302, 304, 306はスタック状に配置又は形成される。説明しやすいように、図3Dに示す層302, 304, 306は、完全には重なっておらず破断されて示されているが、実際のコールドプレートでは通常、互いに完全に重なっている。したがって、層302, 304, 306はコールドプレート300を形成する多層構造を表している。いくつかの実施形態では、各層302, 304, 306は平面であっても実質的平面であってもよく、これはコールドプレート300の厚さを減少又は最小化するのに役立つ(したがって、ボンディングラインの厚さを減少又は最小化する)。ただし、コールドプレート300には、他の適切なサイズ、形状、及び寸法がある場合がある。
【0042】
層302, 306と突起308は一般的に1つ以上の第1材料で形成され、中間層304は一般的に1つ以上の第2材料で形成され、第1材料と第2材料は異なるCTEを持つ。コールドプレート300の様々な特性を制御することにより、コールドプレート300の異なる領域又はゾーン312a ~312c で異なるCTEを得ることができる。ここで制御できる特性には、突起308又は開口部310の位置、突起308又は開口部310の数、突起308又は開口部310の間隔、突起308又は開口部310の大きさ、突起308又は開口部310の形状、突起308又は開口部310の寸法、突起308の構成などがある。ここで制御できる特性は、層303, 306の厚さや層303, 306の組成を含んでいてもよいし、そうでなくてもよい。
【0043】
この例では、コールドプレート300の2つのゾーン312a ~312b は突起308を含み、コールドプレート300の3つ目のゾーン312c は突起308を含まない。層303, 306と突起308を形成する1つ以上の材料のCTEが層304を形成する1つ以上の材料よりも高い場合、これによりゾーン312c と比較してゾーン312a ~312bのCTEが高くなる。逆に、層303, 306及び突起308を形成する1つ以上の材料のCTEが層304を形成する1つ以上の材料よりも低い場合、これによりゾーン312c と比較してゾーン312a ~312bのCTEが低くなる。これは、コールドプレート300の異なるゾーン312a ~312c のCTEを調整できるが、コールドプレートの異なるゾーンのCTEを制御するために他の特性又は追加の特性を変更できる別の例を表していることに注意されたい。
【0044】
コールドプレート300のある特定の実装では、コールドプレート300は次のように設計することができる。層302と306がA 356アルミニウム合金で形成され、層304がAlSiC-9で形成されているとする。また、各層302, 304, 306は約5.216インチ(約13.249センチメートル)四方であり、層302と306の厚さは約0.03インチ(約0.762ミリメートル)、層304の厚さは約0.04インチ(約1.016ミリメートル)であると仮定する。さらに、層304には、図3Bに示すパターンで配置された円形の開口部310が176個含まれており、各開口部310の直径は約0.25インチ(6.35ミリメートル)であると仮定する。これらのパラメータを考慮すると、コールドプレート300のアルミニウム合金の体積は約1.90立方インチ(約31.14立方センチメートル)、コールドプレート300のAlSiC-9の体積は約0.82立方インチ(約13.44立方センチメートル)、コールドプレート300の総体積は約2.72立方インチ(約44.57立方センチメートル)となる。また、コールドプレート300の密度は約0.10ポンド/立方インチ(約2.77グラム/立方センチメートル)であり、コールドプレート300は約70%のアルミニウム合金と約30%のAlSiC-9である。また、コールドプレート300のゾーン312a ~312bのCTEは約17.0 ppm/℃であり、コールドプレート300のゾーン312c のCTEは約14.1 ppm/℃であろう。
【0045】
上記の2つの例に見られるように、さまざまなコールドプレートを設計し、必要な熱性能を実現するように調整することができる。各コールドプレートは、異なるCTEを持つ適切な数の領域又はゾーンを持つように設計でき、各コールドプレートの領域又はゾーンは、コールドプレートのさまざまな特性を調整又は制御することによって、目的のCTEを持つように調整できる。上記の例では、コールドプレートの領域又はゾーン内の特定のCTEを達成できるいくつかの例を示しているが、CTEは必要に応じて、或いは所望に応じて任意の適切な値を達成するように任意の適切な方法で調整できる。さらに、コールドプレート内の異なるCTEを持つ領域又はゾーンの数と配置は、所望に応じて又は必要に応じて変化する可能性があり、通常はコールドプレートを使用して冷却される構造物に基づいて(少なくとも部分的に)決定される場合がある。したがって、例えば、冷却される構造物のより暖かい領域又はゾーンは、より低いCTEを持つコールドプレート内の対応する領域又はゾーンを持つことがあり、冷却される構造物のより冷たい領域又はゾーンは、より高いCTEを持つコールドプレート内の対応する領域又はゾーンを持つことがある。
【0046】
図2A乃至3Dに示すコールドプレート200, 300、又は本開示に従って設計された他のコールドプレートは、任意の適切な方法で製造することができる。例えば、各コールドプレート200, 300のさまざまな層202-206、302-306を別々に製造してから結合又は別の方法で接続したり、各コールドプレート200, 300のさまざまな層202-206、302-306を製造して一体構造又はモノリシック構造を形成したりできる。特定の例として、AlSiC又は他の材料の層を形成し、材料をエッチングして開口部210, 310を形成するなどして、コールドプレート200, 300の中間層204, 304を製造することができる。次に、中間層204, 304の周囲と開口部210, 310を介して、1つ以上の他の材料(アルミニウムやアルミニウム合金など)を堆積又はその他の方法で形成して、層202, 206又は302, 306と、開口部210, 310を介して伸びる突起208, 308を形成することができる。ただし、各コールドプレート200, 300は、他の適切な方法で製造することができることに注意する。
【0047】
図2A乃至3Dは、複数のCTEゾーンを持つ調整された形状を持つコールドプレート200及び300の2例を示しているが、図2A乃至3Dに対して様々な変更を加えることができる。例えば、コールドプレート200と300の個々の部品は、適切なサイズ、形状及び規模(dimension)を持つことができ、各コールドプレート200と300全体は、適切なサイズ、形状及び規模(dimension)を持つことができる。また、特定の材料は、コールドプレート200及び300で使用されるものとして前述されているが、コールドプレート200及び300は、異なる材料が異なるCTEを持つ材料の任意の適切な組み合わせなど、他の任意の適切な材料から製造することができる。
【0048】
図4は、本開示に従って複数のCTEゾーンを形成するようにコールドプレート形状をカスタマイズ(tailor)するための方法400の例を示している。説明を容易にするために、図4に示す方法400は、図1の装置100で使用するように設計されている図2A乃至3Dのコールドプレート200, 300を含むものとして説明されることがある。ただし、図4に示す方法400には、任意の適切な装置又はシステムで使用するように設計された任意の適切なコールドプレートが含まれる場合がある。
【0049】
図4に示すように、ステップ402において、冷却すべき構造物のうち、動作中に異なる(場合によっては大幅に異なる)温度に達すると予想される複数の領域が特定される。これには、例えば、構造物の動作中に異なる温度に達すると予想される構造物の異なる領域又はゾーンを特定するために、電子デバイス、シミュレーションツールその他の適切なアプローチの設計を使用することが含まれる。特定の例として、これには、基板106内又は基板上の異なる種類の電子部品108a ~108b の有無などにより、異なる温度に達すると予想される回路カードアセンブリ102内の基板106の異なるゾーン110a ~110c を特定することが含まれる。
【0050】
冷却する構造物の複数の領域に対応するコールドプレート内の複数の領域をステップ404で定義し、コールドプレート内の複数の領域に関連するCTEをステップ406で特定する。これには、例えば、冷却すべき構造物の異なる予想温度に対処するために、異なるCTEを持つべきコールドプレート104, 200, 300の異なる部分を定義することが含まれる。特定の例として、これには、コールドプレート104, 200, 300の異なるゾーン114a ~114c 、212a ~212c 、312a ~312c の識別が含まれる場合があり、ここで、コールドプレートの異なるゾーンは、一般的に、回路カードアセンブリ102内の基板106の対応するゾーン110a ~110c に整列して取り付けられている場合がある。
【0051】
コールドプレートの異なる領域は、ステップ408でそれらの領域の異なるCTEを取得するように設計されている。これには、例えば、コールドプレート104, 200, 300の異なる領域を設計して、コールドプレートのこれらの領域のCTEを制御又は定義するのに役立つ特定の特性を含めることが含まれる場合がある。上記のように、コールドプレートの領域でCTEを制御するには、さまざまな特性を使用できる。特性の例としては、突起208, 308又は開口部210, 310の位置、突起208, 308又は開口部210, 310の数、突起208, 308又は開口部210, 310の間隔、突起208, 308又は開口部210, 310の大きさ、突起208, 308又は開口部210, 310の形状、突起208, 308又は開口部210, 310の寸法、突起208, 308の組成、層202, 206, 302, 306の厚さ、又は層202, 206, 302, 306の組成が挙げられる。これらの特性のいずれか又は任意の適切な組み合わせをここで使用して、コールドプレート104, 200, 300の異なるゾーン114a ~114c 、212a ~212c 、312a ~312c を設計できる。理想的には、設計されたコールドプレートの領域のCTEは、ステップ406で特定されたCTEと大体一致するか、厳密に一致するが、実際には通常、多少のばらつきがある。
【0052】
異なる領域に異なるCTEを持つコールドプレートをステップ410で作製する。これには、例えば、各コールドプレート104, 200, 300の中間層204, 304を作製し(適切な材料又は材料を堆積してエッチングするなど)、中間層204, 304の周囲及びそれを貫通して、層202, 206, 302, 306を形成することが含まれる。ただし、コールドプレート104, 200, 300の個々の部品又は部品群を作成するために使用される特定の操作が、所望に応じて又は必要に応じて異なる場合があることに注意されたい。作製されたコールドプレートは、ステップ412で冷却すべき構造物に結合される。これには、例えば、熱接着剤、ラミネーション、又は他のボンディング技術を使用するなどして、コールドプレート104, 200, 300を回路カードアセンブリ102の基板106に熱的に結合することが含まれる。
【0053】
図4は、コールドプレート形状をカスタマイズして複数のCTEゾーンを形成する方法400の一例を示しているが、図4にはさまざまな変更が加えられる場合がある。例えば、一連のステップとして表示されている一方、図4のさまざまなステップが重複したり、並行して発生したり、異なる順序で発生したり、任意の回数発生したりすることがある。特定の例として、設計されたコールドプレートの複数の列を、冷却する構造物の複数の列用に作成することができる。また、コールドプレートの設計は、他の適切な方法で得ることができ、コールドプレートの任意の適切な特性を使用して、コールドプレートの異なる領域又はゾーンのCTEを制御することができる。
【0054】
本特許文書全体で使用される特定の語句の定義を示すことは有益であろう。「含む」、「有する」、及びその派生語は、限定のない包含を意味する。「又は」という用語は、「及び/又は」を含む。「関連する」という語句及びその派生語は、含む、含まれる、相互接続する、含有する、含有される、接続する/される、結合する/される、通信する、共同する、インターリーブする、並置する、近接する、拘束する/される、有する、所有する、関係するなどの意味を含む。「少なくとも1つの」というフレーズは、項目のリストと共に使用される場合、リストされた1つ以上の項目の異なる組み合わせを意味し、リスト内の1つの項目のみが必要であろうことを意味する。例えば、「A、B、Cのうち少なくとも1つ」には、A、B、C、AとB、AとC、BとC、AとBとCのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0055】
本出願の説明は、特定の要素、ステップ又は機能が、クレームの範囲に含まれなければならない必須又は重要な要素であることを意味すると解釈べきではない。特許対象の範囲は、認められるクレームによってのみ定義される。さらに、「means for」又は「step for」という正確な単語が特定のクレームにおいて明示的に使用され、その後に機能を識別する分詞句が続く場合を除き、いずれのクレームも、添付されたクレーム又はクレーム要素のいずれかに関して米国特許法35U.S.C.§112(f)を援用しない。クレーム内の「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「部品」、「素子」、「メンバー」、「装置」、「マシン」、「システム」、「プロセッサ」又は「コントローラ」のような用語の使用は、クレーム自体の特徴によって更に修正又は強化された、関連する技術分野の専門家に知られている構造を指すものと理解され、意図されており、35U.S.C.§112(f)を援用するものではない。すなわち、機能的クレームの技術的範囲は、明細書に記載された実施例に限定されない。
【0056】
本開示は、特定の実施形態及び一般的に関連する方法を説明してきたが、これらの実施形態及び方法の変更及び置換は、当業者には明らかである。したがって、上記の実施形態例の説明は、本開示を定義又は制約するものではない。他の変化、代替、変更も、以下のクレームによって定義されるように、本開示の精神と範囲から逸脱することなく可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4