(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20241106BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20241106BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M50/204 401Z
H01M50/204 201
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/262 S
H01M50/264
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/296
H01M50/50 101
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/593
(21)【出願番号】P 2021554094
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031044
(87)【国際公開番号】W WO2021079595
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019193550
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157267(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/162938(WO,A1)
【文献】特開2010-170870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが電極端子を備える複
数の電池セルと、
前記複
数の電池セルを積層した電池積層体において、隣接する電池セル同士の間に介在されるスペーサと、
前記電池積層体の端面を押圧するエンドプレートと、
前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
前記複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電力を出力する出力端子と、
前記電池積層体の下面を覆う、金属製の下部プレートと、
前記出力端子を少なくとも部分的に被覆する、絶縁性の端子カバーと、
を備える電源装置であって、
前記電池積層体の上面側に、前記出力端子が配置され、
前記下部プレート又は締結部材から前記出力端子に至る隙間の経路中に、毛細管現象が発生しない間隔に拡張された幅広領域が一以上形成されて
おり、
前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に配置されており、
前記端子カバーと、前記エンドプレートの上面との間に、前記幅広領域を設けてなる電源装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の電源装置であって、
前記端子カバーが、前記出力端子を中心として、左右に前記エンドプレートの上面に沿って延長されると共に、その上面を端部に向かって下り勾配とした傾斜面をそれぞれ有してなる電源装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の電源装置であって、
前記出力端子が、前記エンドプレートに固定するための第二ボルト及び第三ボルトを備えており、
前記傾斜面が、前記第二ボルト及び第三ボルトを挿通する第二凹部及び第三凹部を形成すると共に、該第二凹部及び第三凹部は、前記傾斜面の端面に連通する切り欠きをそれぞれ形成してなる電源装置。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記端子カバーの上面が、前記エンドプレートの、前記電池積層体を押圧する面側から、背面側に向かって傾斜されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に螺合される金属製のボルトを備えており、
前記エンドプレートは、前記出力端子との界面において、前記ボルトの先端側に、下り勾配の傾斜を形成してなる電源装置。
【請求項6】
それぞれが電極端子を備える複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを積層した電池積層体において、隣接する電池セル同士の間に介在されるスペーサと、
前記電池積層体の端面を押圧するエンドプレートと、
前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
前記複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電力を出力する出力端子と、
前記電池積層体の下面を覆う、金属製の下部プレートと、
を備える電源装置であって、
前記電池積層体の上面側に、前記出力端子が配置され、
前記下部プレート又は締結部材から前記出力端子に至る隙間の経路中に、毛細管現象が発生しない間隔に拡張された幅広領域が一以上形成されており、
前記締結部材が、隣接する各々の前記電池セルの上面を押圧する押圧片を、前記電池セル毎に複数備えており、
前記電源装置が、さらに、
前記スペーサの上端に配置された、前記複数の押圧片を支持する支持部を備えており、
前記支持部と、前記スペーサとの間に、前記幅広領域を形成してなる電源装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池積層体と、前記エンドプレートの間に、絶縁性の端面スペーサを備えており、
前記端面スペーサと、前記出力端子との間に、前記幅広領域を設けてなる電源装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電源装置であって、さらに、
前記複数の電池セルの内、前記電池積層体の端面に配置された電池セルの電極端子と、前記出力端子とを接続する出力バスバーを備えており、
前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に配置されており、
前記出力バスバーと、前記電池積層体の間に、前記幅広領域を設けてなる電源装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記スペーサが、
前記電池セルの主面と接触させる平板部と、
前記平板部の両側側面に形成され、前記平板部と接触された前記電池セルの側面を部分的に覆う横ガイド部と、
を備えており、
前記平板部の側面の内、前記横ガイド部の上部が形成された領域に、前記幅広領域として、前記平板部の両側側面を前記横ガイド部よりも内側に窪ませた凹部を形成してなる電源装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記幅広領域が、1.8mm以上の空間である電源装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の電池セルを複数枚積層して、これら複数の電池セルを直列や並列に接続して総出力端子から電力を取り出すように構成している。
【0003】
電源装置は、様々な環境下で使用されることから、電源装置の内部に水が浸入することがある。仮に密閉性の高い外装ケースを用いたとしても、温度差によって生じた結露水によって、外装ケース内に水が溜まることがある。電源装置の内部で水が溜まると、水を介して電位差のある電池セル間で短絡が生じることがある。
【0004】
このような電源装置においては、結露や外部から浸入した水等による意図しない導通を防ぐ必要がある。特に、多数の電池セルを積層する電池積層体を構成する電源装置においては、安全性を高めるため液絡を回避する構造が必要である。
【0005】
しかしながら、僅かな隙間でも水が入り込む毛細管現象により、液絡が発生すること阻止することは容易でなかった。また、結露を無くすことも困難であるため、従来は毛細管現象による意図しない導通を回避することは容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一は、電池セルを積層した電池積層体を用いた電源装置において、毛細管現象により水が入り込み、意図しない導通が生じ難いようにした電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある側面に係る電源装置は、それぞれが電極端子を備える複数枚の電池セルと、前記複数枚の電池セルを積層した電池積層体において、隣接する電池セル同士の間に介在されるスペーサと、前記電池積層体の端面を押圧するエンドプレートと、前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、前記複数の電池セルを直列及び/又は並列に接続した電力を出力する出力端子と、前記電池積層体の下面を覆う、金属製の下部プレートと、を備える電源装置であって、前記電池積層体の上面側に、前記出力端子が配置され、前記下部プレート又は締結部材から前記出力端子に至る隙間の経路中に、毛細管現象が発生しない間隔に拡張された幅広領域が一以上形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面に係る電源装置によれば、低電圧の下部プレートから高電圧の出力端子に至る隙間の経路中に、幅広の空間を設けたことで、毛細管現象を阻害して液絡の発生を抑え、安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る電源装置を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1の電源装置のIII-III線における垂直断面図である。
【
図4】
図1の電源装置のIV-IV線における垂直断面図である。
【
図5】
図1の電源装置から蓋部を外した状態を示す拡大分解斜視図である。
【
図8】変形例に係る電池積層体を示す側面図である。
【
図12】
図5の電源装置のXII-XII線における要部拡大縦断面図である。
【
図13】
図5の電源装置のXIII-XIII線における要部拡大横断面図である。
【
図14】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図15】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図16】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【
図17】比較例に係る電源装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る電源装置は、さらに、前記出力端子を少なくとも部分的に被覆する、絶縁性の端子カバーを備えており、前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に配置されており、前記端子カバーと、前記エンドプレートの上面との間に、前記幅広領域を設けている。上記構成により、エンドプレートと出力端子との界面の近傍において毛細管現象により液絡が発生する事態を、幅広領域によって抑制できる。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記端子カバーが、前記出力端子を中心として、左右に前記エンドプレートの上面に沿って延長されると共に、その上面を端部に向かって下り勾配とした傾斜面をそれぞれ有している。上記構成により、端子カバーの上面に結露等の水分が生じても、出力端子から遠ざかる方向に流下するように案内することができ、出力端子と液絡を生じる事態を回避できる。
【0014】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記出力端子が、前記エンドプレートに固定するための第二ボルト及び第三ボルトを備えている。
【0015】
前記傾斜面が、前記第二ボルト及び第三ボルトを挿通する第二凹部及び第三凹部を形成すると共に、該第二凹部及び第三凹部は、前記傾斜面の端面に連通する切り欠きをそれぞれ形成している。上記構成により、第二凹部及び第三凹部に結露等の水分が生じても、切り欠きを通じて第二凹部及び第三凹部から排出することで水が溜まる事態を回避できる。
【0016】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記端子カバーの上面が、前記エンドプレートの、前記電池積層体を押圧する面側から、背面側に向かって傾斜されている。上記構成により、端子カバーの上面に結露等の水分が生じても、電源装置の外側に向かって流れるように案内することができ、内部で液絡を生じる事態を回避できる。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に螺合される金属製のボルトを備えている。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記エンドプレートは、前記出力端子との界面において、前記ボルトの先端側に、下り勾配の傾斜を形成している。上記構成により、出力端子のボルトの周囲に結露等の水分が生じても、傾斜に沿って流下するようにして、出力端子の周辺から水分を遠ざけることで液絡を回避し安全性を高めることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記電池積層体と、前記エンドプレートの間に、絶縁性の端面スペーサを備えている。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記端面スペーサと、前記出力端子との間に、前記幅広領域を設けている。上記構成により、エンドプレートと電池積層体との界面の近傍において毛細管現象により液絡が発生する事態を、幅広領域によって抑制できる。
【0021】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記複数の電池セルの内、前記電池積層体の端面に配置された電池セルの電極端子と、前記出力端子とを接続する出力バスバーを備えている。
【0022】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記出力端子が、前記エンドプレートの上面に配置されている。
【0023】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記出力バスバーと、前記電池積層体の間に、前記幅広領域を設けている。上記構成により、エンドプレートと電池積層体との界面の近傍において毛細管現象により液絡が発生する事態を、幅広領域によって抑制できる。
【0024】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記スペーサが、前記電池セルの主面と接触させる平板部と、前記平板部の両側側面に形成され、前記平板部と接触された前記電池セルの側面を部分的に覆う横ガイド部とを備えている。
【0025】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記平板部の側面の内、前記横ガイド部の上部が形成された領域に、前記幅広領域として、前記平板部の両側側面を前記横ガイド部よりも内側に窪ませた凹部を形成している。上記構成により、結露等の水分が毛細管現象により横ガイド部を伝って下から上に登っていく事態を、横ガイド部の上部に凹部を形成したことで阻害し、液絡の回避を図ることができる。
【0026】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記締結部材が、隣接する各々の前記電池セルの上面を押圧する押圧片を、前記電池セル毎に複数備えている。
【0027】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記スペーサの上端に配置された、前記複数の押圧片を支持する支持部を備えている。
【0028】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記支持部と、前記スペーサとの間に、前記幅広領域を形成している。上記構成により、締結部材の押圧片を受ける支持部をスペーサと別部材とし、これらの間に幅広領域を設けたことで、結露等の水分が毛細管現象によりスペーサを伝って締結部材に至る事態を避けることが可能となる。
【0029】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記幅広領域が、1.8mm以上の空間である。
【0030】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動車両は、上記何れかの電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0031】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る蓄電装置は、上記何れかの電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する。
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0033】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
[実施形態1]
【0034】
本発明の実施形態1に係る電源装置100を、
図1~
図7にそれぞれ示す。これらの図において、
図1は実施形態1に係る電源装置100を示す分解斜視図、
図2は
図1の電源装置100の分解斜視図、
図3は
図1の電源装置100のIII-III線における垂直断面図、
図4は
図1の電源装置100のIV-IV線における垂直断面図、
図5は
図1の電源装置100から蓋部35cを外した状態を示す拡大分解斜視図、
図6は
図2の電池積層体10の側面図、
図7はスペーサ16と支持部18の分解斜視図を、それぞれ示している。
(電源装置100)
【0035】
電源装置100は、
図1~
図6に示すように、複数の電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、この電池積層体10の底面に配置される電池側プレート14と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、電池積層体10を下面に配置された伝熱シート40と、伝熱シート40の下面に配置された下部プレート50を備える。
【0036】
電池セル1は、充放電可能な二次電池である。
図2、
図4に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の電池セル1を押圧した状態に固定する。
【0037】
締結部材15は、複数の電池セル1の積層方向に沿って延長された板状に形成される。この締結部材15は、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、下部プレート50の上面に電池積層体10を載置した状態でエンドプレート20同士を締結する。
【0038】
電池側プレート14は、電池積層体10の底面側に配置されると共に、締結部材15と固定される。この電池側プレート14は、金属板等で構成される。また電池側プレート14と電池積層体10の底面との間は、絶縁シート等を介して絶縁される。
【0039】
下部プレート50は、この上面に伝熱シート40を介して載置された電池積層体10を放熱する。また伝熱シート40は、下部プレート50の上面と電池積層体10の下面との間に介在されて、下部プレート50と電池積層体10との熱結合状態を安定させる。これによって、電池セル1の充放電によって電池積層体10が発熱しても、伝熱シート40を介して下部プレート50に熱伝導して放熱する。
(伝熱シート40)
【0040】
伝熱シート40は、絶縁性を備えつつ、熱伝導性に優れた材質で構成される。また伝熱シート40は弾性又は可撓性を有しており、下部プレート50と電池積層体10との間で押圧されて変形し、これらの界面で隙間なく密着して、熱結合状態とする。このような伝熱シート40としては、シリコーン樹脂などが好適に利用できる。また、熱伝導性を増すため酸化アルミニウムなどのフィラーを添加してもよい。
(電池積層体10)
【0041】
電池積層体10は、
図1~
図4に示すように、正負の電極端子2を備える複数の電池セル1と、これら複数の電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー3を備える。これらのバスバー3を介して複数の電池セル1を並列や直列に接続している。
【0042】
バスバー3は、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバー3を構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバー3の金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
【0043】
また、電池積層体10とバスバー3との間にバスバーホルダを配置してもよい。バスバーホルダを用いることで、複数のバスバーを互いに絶縁し、かつ電池セルの端子面とバスバーとを絶縁しながら、複数のバスバーを電池積層体の上面の定位置に配置できる。
(電池セル1)
【0044】
電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とし、一定のセル厚さを有する角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。電池セルには、充電できる全ての電池、例えばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池や、ニッケル水素電池セルなども使用できる。
【0045】
電池セル1は、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。
(電極端子2)
【0046】
電池セル1は、
図2等に示すように天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0047】
電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、
図2等に示すように、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバー3で接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。なお、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0048】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて、電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、
図2、
図4においては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。
(スペーサ16)
【0049】
電池積層体10は、隣接して積層される電池セル1同士の間に、スペーサ16を介在させてもよい。スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。スペーサ16は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。このスペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁できる。また、電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。あるいは、電池セルの表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクフィルムで電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を覆ってもよい。この場合は、スペーサを省略してもよい。
【0050】
図7に示すスペーサ16は、平板部16aと横ガイド部16bと上ガイド部16cを備えている。平板部16aは、電池セル1の主面と接触させる板状の部材である。平板部16aは電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、このスペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁している。また平板部16aは電池セル1の対向面と概ね同様に、幅方向に長い長辺と短辺を有する矩形状としている。
【0051】
横ガイド部16bは、平板部16aの両側側面に形成される。この横ガイド部16bは、平板部16aと接触された電池セル1の側面の隅部を部分的に覆う。横ガイド部16bは、下側の一端部が、隣接する一方の電池セル1に向かって若干突出し、平板部16aの底辺に沿って一部折り曲げられている。このような形状にすることにより、スペーサ16を自立し易くすると共に、突出部分及び折り曲げられた部分で、隣接する電池セル1の下側角部を保持でき、隣接する電池セル1の狭着をより確実にすることができる。
【0052】
上ガイド部16cは、平板部16aの上端縁に形成され、平板部16aと接触された電池セル1の封口板1bの隅部を部分的に覆う。
【0053】
またスペーサ16は、平板部16aの側面の内、横ガイド部16bの上部が形成された領域に、幅広領域60として、平板部16aの両側側面を横ガイド部16bよりも内側に窪ませた凹部16dを形成している。なお
図7の例では、電池セル1同士を絶縁するスペーサ16は複数用意しつつ、支持部18材は予め連結した状態に一体成型されている。
(端面スペーサ17)
【0054】
図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。さらにエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサ17を介在させて、これらを絶縁している。端面スペーサ17も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
(エンドプレート20)
【0055】
エンドプレート20は、
図2等に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
(締結部材15)
【0056】
締結部材15は、電池積層体10の長手方向の両端でそれぞれエンドプレート20同士を締結状態に固定する。この締結部材15は、電池積層体10の側面を覆う締結板15aと、締結板15aの両端でエンドプレート20を固定する固定部15bと、締結板15aの上縁から突出された複数の押圧片15cを備える。固定部15bは、
図2の例では締結板15aの両端をL字状に折曲して、エンドプレート20の主面側にボルトなどにより固定されている。ただ固定部は、締結板の端縁を直線状として、エンドプレートの側面にボルトなどにより固定する構成としてもよい。この場合、締結部の端縁に板材を固定するなどして締結部の端縁を厚くして段差状を形成し、この段差をエンドプレートに係止するように構成してもよい。また係止するエンドプレートの側面側にも、固定部の段差に応じた段差を形成して、段差同士を係合するように構成してもよい。
【0057】
また複数の押圧片15cのそれぞれは、電池積層体10の各電池セル1の上面と当接して、これを押圧する。これにより、各電池セル1を上下方向から押圧片15cで押圧して高さ方向に保持し、振動や衝撃等が電池積層体10に印加されても、各電池セル1が上下方向に位置ずれしないように維持できる。
【0058】
この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは鋼板や鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金等が使用できる。また、締結板15aと固定部15bと押圧片15cは、金属板で一体に形成することが好ましい。また締結部材15を同一の部材で構成しつつ、固定部15bや押圧片15cの厚さを異ならせてもよい。
(出力端子30)
【0059】
また電池積層体10は、複数の電池セル1を直列及び/又は並列に接続した総出力を、出力端子30と接続している。出力端子30は、電源装置100から電力を出力する総端子となる。出力端子30は、電池積層体10の上面側に配置されている。一方で電池積層体10の下側には、下部プレート50が配置されている。下部プレート50は金属製で、グランドラインやアースラインとして利用されており、このため出力端子30との間に電位差が生じている。同様に、締結部材15も金属製で、出力端子30との間に電位差が生じている。
【0060】
このような電源装置において、結露や外部から侵入した水等によって、電位差のある部位同士が意図せず導通されてしまうと、水による短絡すなわち液絡が発生する。一般に電源装置は、様々な環境下で使用されることから、電源装置の周囲が水に晒されて、内部に水が浸入することがある。仮に密閉性の高いケースで周囲を囲んだとしても、温度差によって生じた結露水によって、密閉ケース内部に水が溜まることがある。電源装置の内部で水が溜まると、水を介して電位差のある部位同士で短絡が生じる可能性がある。具体的には、部材同士の僅かな隙間に、毛細管現象により水が入り込んで、吸い上げられる状態となることがある。特に、電源装置の出力となる総出力端子が、水によって下部プレートや締結部材等の低電圧の部位と導通してしまうと、液絡が発生する。このような部材間の隙間を完全に無くすことは困難であるところ、僅かな隙間であっても水が這い上がるため、液絡を回避することは従来容易でなかった。
【0061】
例えば
図17の側面図や
図18の横断面斜視図に示すように、多数の電池セル901をスペーサ16を介して積層した構成においては、電池積層体10の側面において、スペーサ16同士の間に僅かな隙間が存在することが避けられない。このような状態で下部プレート50に水が溜まると、
図17の側面図、
図19の模式横断面図に示すように、スペーサ16間の隙間を伝って、水が電池積層体10の側面を使って上面に這い上がり、出力端子30に至ることが考えられる。この結果、下部プレート50と出力端子30が導通されて液絡が発生する。特に水は、毛細管現象により細かな隙間でも入り込んでしまう性質を有する。部材間の隙間を完全に無くすことは製造公差などの関係から容易でなく、コストもかかる。
(幅広領域60)
【0062】
そこで、本実施形態においては下部プレート50や締結部材15から出力端子30に至る隙間の経路中に、毛細管現象が発生しない間隔に拡張された幅広領域60を一以上形成している。毛細管現象は、狭い隙間で発生するものの、広い隙間では発生しない。そこで本実施形態においては、敢えて広い隙間を設けることで、却って水の侵入を阻害して液絡の発生を抑え、安全性を向上している。
【0063】
幅広領域60は、毛細管現象が発生しない間隔である。毛細管現象の発生条件は、材質によっても異なるところ、発明者らの行った試験によれば、概ね1.8mm以上の空間を設けることで、殆どの毛細管現象を阻止できることを見出した。より好ましくは、幅広領域60を2mm以上の空間とする。
【0064】
幅広領域60の一例として、スペーサ16の横ガイド部16bの幅、すなわち電池セル1の積層方向における長さを、部分的に異ならせている。
図7の分解斜視図に示す例では、スペーサ16の横ガイド部16bを、下部で一方向に突出させ、それ以外の領域では一定幅としている。これにより、横ガイド部16bの下部の幅d2よりも中間の幅d1が狭くなる結果、このようなスペーサ16を積層すると、
図6の側面図に示すように隣接するスペーサ16同士の間に、幅d3(=d2-d1)の幅広領域60aが形成される。スペーサ16同士の間にこのような幅広領域60aが存在すると、毛細管現象が働かない。よって下部プレート50上に万一水が溜まっても、スペーサ16同士の隙間を伝って毛細管現象により水がスペーサ16の上方まで吸い上げられる事態を回避できる。
(変形例)
【0065】
また以上の例ではスペーサ16の下部で横ガイド部16bの幅を広くし、他の部分で狭くする構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものでない。例えばスペーサ16の横ガイド部16bの幅を、下部で狭く、それ以外の部分で広く構成してもよい。このような例を変形例に係る電源装置200として、
図8の側面図に示す。このような構成においても、幅広の幅広領域60a’を設けたことで、スペーサ16’同士を積層した隙間が幅広となって毛細管現象の発生を阻害し、同様に水が這い上がる事態を回避できる。
【0066】
さらに以上の例では、幅広領域60をスペーサ16同士の界面において下部側に設けた例を説明したが、本発明はこの構成に限らず、例えば幅広領域をスペーサ同士の界面の上部側に設けたり、あるいは中間に設けてもよい。また、複数箇所に幅広領域を設けてもよい。
【0067】
さらに以上の例では、電池セル1の積層方向における、スペーサ16間の隙間で毛細管現象が発生することを、幅広領域60で阻止する構成について説明した。同様に、電池セル1の積層方向と交差する、幅方向においても、毛細管現象を阻害する幅広領域60について、以下説明する。
図18に示した通り、電池積層体910の側面側において、電池セル901の側面とスペーサ916との界面の隙間で、毛細管現象により水が吸い上げられる状況が発生し得る。そこで本実施形態に係るスペーサ16においては、
図7に示すように、スペーサ16の上部側面において、内側に窪ませた凹部16dを形成している。このように構成したことで、
図3の断面図に示すように、結露等の水分が毛細管現象により電池セル1の側面と横ガイド部16bとの間を伝って下から上に登っていく経路を、横ガイド部16bの上に凹部16dを形成したことで遮断して、凹部16dよりも上方に登ることを阻害して液絡の回避を図ることができる。
【0068】
さらに加えて、電池セル1間の隙間、すなわち電池セル1の主面とスペーサ16の間の僅かな隙間を伝ってくる水を遮断する構成を、
図18~
図20に示す比較例を参照して説明する。具体的には、
図18の横断面斜視図及び
図20の模式縦断面図に示すように、電池セル901の主面とスペーサ916の間の隙間で毛細管現象が発生し、電池セル901の上面に至った水が、破線矢印で示すように電極端子902や出力端子と液絡することが考えられる。これに対して本実施形態に係る電源装置100においては、従来においては一体構造であったスペーサ16と、締結部材15の押圧片15cを受ける支持部18とを分離して、別部材としている。すなわち
図7の分解斜視図に示すように、スペーサ16と支持部18を別体で構成している。これによって、
図9~
図11に示すように、電池セル1の上面と支持部18との間に幅広の隙間とした幅広領域60を形成することが可能となる。
【0069】
具体的には、
図10の縦断面図に示すように、スペーサ16と電池セル1を交互に積層した状態の電池積層体10で、各スペーサ16の上ガイド部16cと、電池セル1の上面との間に、幅広領域60bを形成している。これによって、
図10において破線矢印で示す水の毛細管現象による這い上がり経路の内、電池セル1の上部で左側に曲がって進もうとする毛細管現象を阻害する。
【0070】
一方で、
図11の斜視図に示すように、スペーサ16と電池セル1を交互に積層した状態の電池積層体10に、別部材とした支持部18を組み合わせた状態で、スペーサ16の上部である上ガイド部16cと支持部18との間に隙間が形成されるようにしている。この隙間を、毛細管現象を阻害する幅広領域60cとすることで、
図9の斜視図において破線で示す水の毛細管現象の経路を阻害する。すなわち、締結部材15は上述した通り、
図2に示すように締結板15aの上面において、隣接する各々の電池セル1の上面を押圧する押圧片15cを、電池セル1毎に複数設けている。一方でスペーサ16の上部には、この複数の押圧片15cを支持する支持部18を設けている。このように、スペーサ16と支持部18とを別部材で構成することで、支持部18とスペーサ16との間に、幅広領域60cを形成することが可能となる。この結果、結露等の水分が毛細管現象によりスペーサ16を伝って締結部材15に至る事態を避けることが可能となる。
【0071】
このようにして、毛細管現象が発生しない間隔に拡張された幅広領域60が、支持部18と電池セル1の上面との間に形成され、仮に電池セル1の上面まで水が毛細管現象により伝ってきたとしても、支持部18と電池セル1の上面との間を進むことを阻害でき、電極側に水が進行することを阻止できる。
(出力端子30)
【0072】
出力端子30は、エンドプレート20の上面に配置されている。この出力端子30は、出力バスバー34と、端子カバー35と、蓋部35cと、ボルト31と、第二ボルト32と第三ボルト33で構成される。出力バスバー34は、電池積層体10の端部に位置する電池セル1の電極端子2と接続されており、複数の電池セル1が直列や並列に接続された電池集合体の総出力端子となる。
(端子カバー35)
【0073】
端子カバー35は、出力バスバー34と金属製のエンドプレート20とを絶縁する絶縁性の部材である。この端子カバー35は樹脂で構成される。好ましくは、出力バスバー34を端子カバー35にインサート成型する。また出力バスバー34を固定した端子カバー35は、貫通孔を開口しており、金属製のボルト31を貫通孔に挿通して、エンドプレート20の上面に設けられたねじ穴に螺合される。さらに、端子カバー35はエンドプレート20の上面に沿って延長されており、その左右を第二ボルト32及び第三ボルト33で、同じくエンドプレート20に螺合して固定する。また、蓋部35cでボルト31の上面を被覆する。
【0074】
図5の斜視図及び
図13の横断面図に示す例では、端子カバー35は、出力端子30を中心として、左右に延伸部36を形成している。各延伸部36の上面を、端部側に向かって下り勾配とした傾斜面としている。これにより、端子カバー35の上面に結露等の水分が生じても、出力端子30から遠ざかる方向に流下するように案内することができ、出力端子30と液絡を生じる事態を回避できる。
【0075】
また延伸部36は、傾斜面の下り部分に、第二ボルト32及び第三ボルト33を挿通する第二凹部37及び第三凹部38を形成している。これら第二凹部37及び第三凹部38は、延伸部36の端面に連通する切り欠き39をそれぞれ形成している。このような構成により、傾斜面の下りに形成された第二凹部37及び第三凹部38に水が流れ落ちてきたり、あるいは結露等の水が溜まったりしても、切り欠き39を通じて第二凹部37及び第三凹部38から排出することで、水が溜まる事態を回避できる。
【0076】
さらに端子カバー35は、
図12の縦断面図に示すように、エンドプレート20が電池積層体10を押圧する面とは反対側に向かって下り勾配となるように、その上面35aを傾斜させている。これにより、端子カバー35の上面に水が溜まっても、電池積層体10側でなく、電源装置100の外側に向かって水を流下させるように案内して、液絡を防止できる。
【0077】
加えて
図13の横断面図に示すように、端子カバー35と、エンドプレート20の上面との間に、幅広領域60dを設けている。これにより、エンドプレート20と出力端子30との界面の近傍において毛細管現象により液絡が発生する事態を、幅広領域60によって抑制できる。
【0078】
さらにエンドプレート20は、
図12の縦断面図に示すように、ボルト31を螺合するねじ穴の底部35bに、下り勾配の傾斜を形成している。これにより、出力端子30のボルト31の周囲に結露等の水分が生じても、傾斜に沿って流下するようにして、出力端子30の周辺から水分を遠ざけることで液絡を回避し安全性を高めることができる。
【0079】
さらに端面スペーサ17と、エンドプレート20との間にも、幅広領域60を設けることができる。
図12の縦断面図に示すように、端面スペーサ17とエンドプレート20の間の隙間を毛細管現象で水が登ってくる事態を、端面スペーサ17とエンドプレート20の接合界面の上部に幅広領域60eを設けて阻止している。さらに端面スペーサ17の上部においても、端面スペーサ17の上端を電池積層体10側に折曲させて、部分的に被覆している部分と、出力端子30を構成する端子カバー35との間に幅広領域60fを設けることで、この部分に毛細管現象が発生することを阻止している。
【0080】
以上の電源装置100は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置100を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置100を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0081】
図14は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、
図14に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0082】
また、
図15は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
(蓄電装置用の電源装置)
【0083】
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。
図16は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0084】
図16に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0085】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0086】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0088】
100、200…電源装置、1、901…電池セル;1X…端子面;1a…外装缶;1b…封口板、2、902…電極端子、3…バスバー、10、910…電池積層体、14…電池側プレート、15…締結部材;15a…締結板;15b…固定部;15c…押圧片、16、16’、916…スペーサ、16a…平板部、16b…横ガイド部、16c…上ガイド部、16d…凹部、17…端面スペーサ、18…支持部、20…エンドプレート、30…出力端子、31…ボルト、32…第二ボルト、33…第三ボルト、34…出力バスバー、35…端子カバー;35a…上面;35b…底部;35c…蓋部、36…延伸部、37…第二凹部、38…第三凹部、39…切り欠き、40…伝熱シート、50…下部プレート、60、60a、60a’、60b、60c、60d、60e、60f…幅広領域、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、d1、d2、d3…隙間HV、EV…車両