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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20241106BHJP
   G01J 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20241106BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01J1/42 H
G01J11/00
H01L31/10 B
H01L27/146 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019567165
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002352
(87)【国際公開番号】W WO2019146725
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011824
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 有正
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健二
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃永
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519435(JP,A)
【文献】特開2013-089919(JP,A)
【文献】特開2000-036586(JP,A)
【文献】特開2016-122716(JP,A)
【文献】特開2018-173379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/42 - G01J 1/46
G01J 1/00 - G01J 1/02
G01J 11/00
G01T 1/20
G01T 1/24
H01L 27/14 - H01L 27/148
H01L 31/00 - H01L 31/0232
H01L 31/08 - H01L 31/119
H04N 5/30 - H04N 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - H04N 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - H04N 25/61
H04N 23/615- H04N 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている、化合物半導体からなるアバランシェフォトダイオードアレイ基板と、
前記アバランシェフォトダイオードアレイ基板が実装されている回路基板と、を備え、
前記回路基板は、互いに並列に接続されて、少なくとも1つのチャンネルを形成する複数の出力ユニットを有し、
各前記出力ユニットは、前記複数のアバランシェフォトダイオードの少なくとも1つと直列に接続されたパッシブクエンチング素子と、前記少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードと直列に接続されていると共に前記パッシブクエンチング素子と並列に接続されている容量素子とを有し、
前記パッシブクエンチング素子は、前記回路基板に設けられた第1ポリシリコン層によって形成され、
前記容量素子は、前記回路基板に設けられた第2ポリシリコン層と、前記第2ポリシリコン層上に積層された誘電体層と、前記誘電体層上に積層された第3ポリシリコン層とによって形成され、
前記第1ポリシリコン層は、前記回路基板の厚み方向において、前記第2ポリシリコン層又は前記第3ポリシリコン層と同一の高さに形成されており、
前記第1ポリシリコン層は、前記回路基板の厚方向から見て、前記第2ポリシリコン層及び第3ポリシリコン層のいずれとも重なっていない、光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている光検出装置が知られている(たとえば、特許文献1)。複数のアバランシェフォトダイオードは、ガイガーモードで動作する。複数のアバランシェフォトダイオードは、化合物半導体からなる半導体基板に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-531753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体からなる半導体基板に形成された複数のアバランシェフォトダイオードがガイガーモードで動作される場合、温度変化に応じてダークパルス及びアフターパルスが増加する。ダークパルス及びアフターパルスによってノイズが増加すると、アバランシェフォトダイオードからの信号が適切に検出されないおそれがある。
【0005】
アバランシェフォトダイオードがガイガーモードで動作される場合には、アバランシェ増倍をクエンチするために、アバランシェフォトダイオードに直列にパッシブクエンチング素子が配置されることが知られている。このパッシブクエンチング素子の抵抗値に応じて、当該パッシブクエンチング素子に接続されたアバランシェフォトダイオード内部で生じているアバランシェ増倍過程が適切にクエンチされるか否かが決まる。クエンチング素子の抵抗値が不十分であると、ラッチングカレントの発生などにより適切なクエンチがなされない場合がある。適切なクエンチのために、必要十分なクエンチング素子の抵抗値を選択する必要がある。
【0006】
パッシブクエンチング素子の抵抗値が大きいほど、パッシブクエンチング素子と直列に接続されたアバランシェフォトダイオードのクエンチに要する時間が増加する。クエンチに要する時間が増加すると、アバランシェフォトダイオードで光を検出できないデッドタイムが増加する。このように、適切なクエンチングとデッドタイムの低減とを両立し、光検出感度及び光検出時間分解能を確保するために、最適な抵抗値のパッシブクエンチング素子を有する回路設計が求められている。
【0007】
パッシブクエンチング素子における寄生容量もパルス信号に影響を与えるため、当該寄生容量の除去も求められている。更に光検出時間分解能を向上するために、パルス信号のピーク値を向上することも求められている。上述した所望の条件の全てを満たすように、化合物半導体からなる半導体基板に形成された複数のアバランシェフォトダイオードをガイガーモードで動作させるデバイスを設計することは、極めて困難である。
【0008】
本発明の一態様は、化合物半導体からなる半導体基板に複数のアバランシェフォトダイオードが形成される構成において、光検出感度と光検出時間分解能の向上を両立した光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光検出装置は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板と、回路基板と、を備えている。アバランシェフォトダイオードアレイ基板は、化合物半導体からなる。回路基板には、アバランシェフォトダイオードアレイ基板が実装されている。アバランシェフォトダイオードアレイ基板には、複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている。複数のアバランシェフォトダイオードは、ガイガーモードで動作する。回路基板は、互いに並列に接続されて、複数の出力ユニットを有する。複数の出力ユニットは、少なくとも1つのチャンネルを形成する。各出力ユニットは、パッシブクエンチング素子と容量素子とを有する。パッシブクエンチング素子は、複数のアバランシェフォトダイオードの少なくとも1つと直列に接続されている。容量素子は、少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードと直列に接続されていると共にパッシブクエンチング素子と並列に接続されている。
【0010】
本一態様では、パッシブクエンチング素子及び容量素子を有する複数の出力ユニットが、アバランシェフォトダイオードアレイ基板とは別体の回路基板に設けられている。このため、複数の出力ユニットがアバランシェフォトダイオードアレイ基板に配置される場合に比べて、複数の出力ユニットを形成できるスペースが拡大され得る。出力ユニットがアバランシェフォトダイオードアレイ基板とは別体の回路基板に設けられれば、アバランシェフォトダイオードの構成と出力ユニットとの間に生じる寄生容量が低減され得る。この場合、アバランシェダイオードアレイ基板と別の製造プロセスを用いることも可能である。したがって、複数の出力ユニットの設計が容易になり得る。上記光検出装置が有する容量素子は、少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードに直列に接続されていると共にパッシブクエンチング素子と並列に接続されている。このため、容量素子の静電容量によって、容量素子と直列に接続されたアバランシェフォトダイオードからのパルス信号のピーク値が向上され得る。したがって、複数のアバランシェフォトダイオードからのパルス信号が検出され易く、更に光検出時間分解能が向上され得る。
【0011】
本一態様では、パッシブクエンチング素子は、回路基板に設けられた第1ポリシリコン層によって形成されてもよい。容量素子は、回路基板に設けられた第2ポリシリコン層と、第2ポリシリコン層上に積層された誘電体層と、誘電体層上に積層された第3ポリシリコン層とによって形成されてもよい。第1ポリシリコン層は、回路基板の厚み方向において、第2ポリシリコン層又は第3ポリシリコン層と同一の高さに形成されている。この場合、簡易な製造工程で上記複数の出力ユニットが形成され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、化合物半導体からなる半導体基板に複数のアバランシェフォトダイオードが形成される構成において、容易な設計で光検出の精度が確保され得る光検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る光検出装置の斜視図である。
図2図2は、光検出装置の断面構成を示す図である。
図3図3は、回路基板の平面図である。
図4図4は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板の光検出領域の平面図である。
図5図5は、回路基板の構成を示す図である。
図6図6は、光検出装置に用いられる回路構成を示す図である。
図7図7は、本実施形態の変形例に係る光検出装置に用いられる回路構成を示す図である。
図8図8は、回路基板の実装領域の平面図である。
図9図9は、アバランシェフォトダイオードからのパルス信号の成分を示す図である。
図10図10は、リチャージパルスの特性を示す図である。
図11図11は、ファストパルスの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
まず、図1から図8を参照して、本実施形態に係る光検出装置の全体の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る光検出装置の斜視図である。図2は、本実施形態に係る光検出装置の断面構成を示す図である。図2では、視認性を向上するため、ハッチングが省略されている。図3は、回路基板の平面図である。図4は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板の一部を示す平面図である。図6は、本実施形態に係る光検出装置に用いられる回路構成を示す図である。図8は、回路基板の一部を示す平面図である。
【0016】
光検出装置1は、図1に示されているように、アバランシェフォトダイオードアレイ基板10と、回路基板50を備えている。以下、「アバランシェフォトダイオード」を「APD」と称する。「アバランシェフォトダイオードアレイ基板」を「APDアレイ基板」と称する。回路基板50は、APDアレイ基板10に対向配置されている。APDアレイ基板10、回路基板50は、いずれも平面視で矩形状を呈している。
【0017】
APDアレイ基板10は、互いに対向する主面10Aと主面10Bと側面10Cを含んでいる。回路基板50は、互いに対向する主面50Aと主面50Bと側面50Cを含んでいる。APDアレイ基板10の主面10Bは、回路基板50の主面50Aと対向している。APDアレイ基板10、回路基板50の各主面と平行な面がXY軸平面であり、各主面に直交する方向がZ軸方向である。
【0018】
回路基板50の側面50Cは、APDアレイ基板10の側面10CよりもXY軸平面方向の外側に位置している。すなわち、平面視で、回路基板50の面積は、APDアレイ基板10の面積よりも大きい。APDアレイ基板10の側面10Cと回路基板50の側面50Cとは、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、回路基板50の外縁とは、一致する。
【0019】
APDアレイ基板10の主面10A上にガラス基板を配置してもよい。ガラス基板とAPDアレイ基板10とは、光学接着剤により光学的に接続される。ガラス基板は、APDアレイ基板10上に直接形成されていてもよい。APDアレイ基板10の側面10Cとガラス基板の側面は、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、ガラス基板の外縁とは、一致する。また、APDアレイ基板10の側面10Cと回路基板50の側面50Cとガラス基板の側面は、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、回路基板50の外縁と、ガラス基板の外縁とは、一致する。
【0020】
APDアレイ基板10は、回路基板50に実装されている。図2に示されているように、APDアレイ基板10と回路基板50とは、バンプ電極25によって接続されている。具体的には、APDアレイ基板10は、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、図3に示されているように回路基板50の中央に配置された実装領域α上においてバンプ電極25で接続されている。本実施形態では、実装領域αは、矩形状を有している。
【0021】
回路基板50は、実装領域αの周りにグラウンド線3、カソード線5、及びアノード線7を有している。グラウンド線3、カソード線5、及びアノード線7は、実装領域αから延在している。グラウンド線3は、後述するグラウンド電極63に接続されている。カソード線5は、実装領域αに実装されたAPDアレイ基板10に電気的に接続され、APDアレイ基板10への電圧の印加に用いられる。アノード線7は、後述するメタル層65,66に接続され、APDアレイ基板10からの信号の読出しに用いられる。
【0022】
APDアレイ基板10は、ガイガーモードで動作する複数のAPD20を有する。複数のAPD20は、図4に示されているように、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て当該半導体基板11の光検出領域βに2次元配列されている。光検出領域βは、矩形状を有しており、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、回路基板50の実装領域αと重なる。
【0023】
APDアレイ基板10は、化合物半導体からなるN型の半導体基板11を有している。半導体基板11は、主面10Aを形成するInPからなる基板12を有する。基板12上に、主面10A側から主面10B側へ順に、InPからなるバッファ層13、InGaAsPからなる吸収層14、InGaAsPからなる電界緩和層15、InPからなる増倍層16が形成されている。吸収層14は、InGaAsからなってもよい。半導体基板11は、GaAs,InGaAs,AlGaAs,InAlGaAs,CdTe,又はHgCdTeなどから形成されてもよい。
【0024】
各APD20は、図2及び図4に示されているように、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、絶縁部21に囲まれている。各APD20は、主面10B側から増倍層16に、不純物がドープされることによって形成されたP型のアクティブエリア22を有している。ドープされる不純物は、たとえば、Zn(亜鉛)である。絶縁部21は、たとえば、ウェットエッチング又はドライエッチングで形成されたトレンチ溝内に、ポリイミド(polyimide)膜を形成することで構成されている。アクティブエリア22は、厚さ方向から見て円形状に形成されており、絶縁部21は、アクティブエリア22の縁に沿って円環状に形成されている。絶縁部21は、APDアレイ基板10の厚さ方向において、半導体基板11の主面10B側から基板12に達している。
【0025】
図5は、本実施形態の変形例に係る光検出装置に用いられるアバランシェフォトダイオードアレイ基板の一部を示す図である。図5に示されているように、アクティブエリア22は、厚さ方向から見て略矩形状に形成されてもよい。ここで、略矩形状とは、角が丸みを帯びている矩形状である。これにより、アクティブエリア22の角への電界の集中が抑制される。この場合、絶縁部21は、略矩形状のアクティブエリア22の縁に沿って環状に形成される。
【0026】
APDアレイ基板10は、絶縁層23及び複数の電極パッド24を有している。絶縁層23は、主面10B側において半導体基板11を覆っている。電極パッド24は、APD20ごとに主面10B側において半導体基板11上に形成されており、アクティブエリア22に接している。電極パッド24は、絶縁層23から露出しており、バンプ電極25を通して、回路基板50と接続されている。
【0027】
回路基板50は、図2に示されているように、バンプ電極25を通して、主面50A側でAPDアレイ基板10と接続されている。回路基板50は、複数の出力ユニット30を有している。複数の出力ユニット30は、図6に示されているように、互いに並列に接続されて、1つのチャンネル40を形成する。複数の出力ユニット30の各々は、APDアレイ基板10に設けられている各APD20に直列に接続されている。各出力ユニット30は、互いに並列に接続されたパッシブクエンチング素子31と容量素子32とを有する。パッシブクエンチング素子31及び容量素子32は、いずれもAPD20と直列に接続されている。
【0028】
図7は、本実施形態の変形例に係る光検出装置に用いられる回路構成を説明するための図である。図7に示されているように、回路基板50に複数のチャンネル40が形成されてもよい。この場合、各チャンネル40が、互いに並列に接続された複数の出力ユニット30によって形成される。複数のチャンネル40の少なくとも1つが、互いに並列に接続された複数の出力ユニット30によって形成されていればよい。
【0029】
回路基板50は、シリコン基板51と、シリコン基板51上に積層された配線層61とを有している。図2に示されているように、シリコン基板51は、主面50B側から主面50A側へ順に、P層52とP層53とP層54とを有している。P層52は、P層53に不純物をドープすることによって設けられている。P層54は、P層53に不純物をドープすることによって設けられている。P層53にドープされる不純物は、たとえばボロンである。シリコン基板51と配線層61との間には、たとえば、熱酸化による素子分離工程で形成された酸化膜層60が設けられている。P層54は、酸化膜層60から露出し、配線層61と接している。
【0030】
配線層61は、絶縁層62と、グラウンド電極63と、電極パッド64と、メタル層65,66と、ビア67,68,69,70と、ポリシリコン層71,72,73と、誘電体層74とを有している。グラウンド電極63、電極パッド64、メタル層65,66、ビア67,68,69,70、ポリシリコン層71,72,73、及び誘電体層74は、APD20ごとに設けられている。グラウンド電極63、電極パッド64、及びメタル層65,66は、同一の層に形成されている。換言すれば、グラウンド電極63、電極パッド64、及びメタル層65,66は、回路基板50の厚み方向において、同一の高さに形成されている。
【0031】
絶縁層62は、たとえば、SiOで形成されている。グラウンド電極63、電極パッド64、及びメタル層65,66は、たとえば、Al、AlCu、又はAlSiCuなどで形成されている。グラウンド電極63、電極パッド64、及びメタル層65,66は、同一材料で形成されてもよい。ビア67,68,69,70は、たとえば、W(タングステン)で形成されている。誘電体層74は、たとえばSiO又はSiで形成されている。
【0032】
配線層61は、絶縁層62に覆われている。シリコン基板51のP層54は、配線層61の絶縁層62からシリコン基板51側に露出したビア67に接続されている。P層54は、ビア67を通してグラウンド電極63に接続されている。グラウンド電極63は、回路基板50の厚み方向において該グラウンド電極63が配置された高さで、電極パッド64、及びメタル層65,66に対して絶縁層62を介して配置されている。グラウンド電極63は、電極パッド64、及びメタル層65,66に、直接、接続されていない。
【0033】
電極パッド64は、絶縁層62から露出し、バンプ電極25を通してAPD20に接続されている。電極パッド64は、図8に示されているように、主面50A側で2次元配列されている。電極パッド64は、ビア68を通してポリシリコン層71に接続されている。ポリシリコン層71は、ビア69を通してメタル層65に接続されている。電極パッド64は、回路基板50の厚み方向において該電極パッド64が配置された高さで、メタル層65,66に対して絶縁層62を介して配置されている。電極パッド64は、メタル層65,66に、直接、接続されていない。ポリシリコン層71は、第1ポリシリコン層に含まれる。
【0034】
ポリシリコン層71は、パッシブクエンチング素子31を構成している。上述した構成によって、パッシブクエンチング素子31は、バンプ電極25、電極パッド64、及びビア68を通して、APD20に直列に接続されている。すなわち、APD20からのパルス信号は、バンプ電極25、電極パッド64、及びビア68を通してパッシブクエンチング素子31に入力される。パッシブクエンチング素子31に入力された上記パルス信号は、パッシブクエンチング素子31、ビア69及びメタル層65を通して、チャンネル40から出力される。
【0035】
電極パッド64は、回路基板50の厚み方向において該電極パッド64が配置された高さで、メタル層66と接続されている。メタル層66は、ビア70を通してポリシリコン層72に接続されている。ポリシリコン層72は、誘電体層74の上に積層されている。誘電体層74は、ポリシリコン層73の上に積層されている。ポリシリコン層73は、不図示のビアを通して、メタル層65に接続されている。ポリシリコン層71とポリシリコン層73とは、回路基板50の厚み方向において同一高さに形成されている。ポリシリコン層71とポリシリコン層72とが、回路基板50の厚み方向において同一高さに形成されてもよい。ポリシリコン層72は、第3ポリシリコン層に含まれる。ポリシリコン層73は、第2ポリシリコン層に含まれる。
【0036】
ポリシリコン層72、誘電体層74、及びポリシリコン層73は、容量素子32を構成している。上述した構成によって、容量素子32は、バンプ電極25、電極パッド64、及びビア68を通して、APD20に直列に接続されている。すなわち、APD20からのパルス信号は、バンプ電極25、電極パッド64、及びビア68を通して容量素子32のポリシリコン層72に入力される。容量素子32のポリシリコン層72に上記パルス信号が入力されたことに応じて、容量素子32のポリシリコン層73からパルス信号が出力される。容量素子32から出力されたパルス信号は、不図示のビア及びメタル層65を通して、チャンネル40から出力される。
【0037】
パッシブクエンチング素子31及び容量素子32は、いずれも、電極パッド64とメタル層65に電気的に接続されている。したがって、パッシブクエンチング素子31及び容量素子32は、互いに並列に接続されている。
【0038】
次に、図9から図11を参照して、光検出装置1の作用効果について説明する。図9は、APD20から出力されるパルス信号を示している。図9に示されているように、APD20からのパルス信号26は、ファストパルス27とリチャージパルス28とに分けられる。ファストパルス27は、パルス信号のピーク値を有するパルス成分である。リチャージパルス28は、ファストパルス27が検出された後に検出されファストパルス27よりも長いパルス幅を有する成分である。
【0039】
図10は、出力ユニット30から容量素子32を取り除き、パッシブクエンチング素子31の抵抗値をパラメータとして、APD20から出力されるパルス信号の波形を示している。図10は、縦軸の単位を電流(A)とし、横軸の単位を時間(s)とした整数グラフである。データa,b,c,dは、それぞれ異なる抵抗値を有するパッシブクエンチング素子31を出力ユニット30に設けた場合のパルス信号のデータである。データa,b,c,dの順で、より高い抵抗値を有するパッシブクエンチング素子31が設けられている。
【0040】
図10に示されているように、パッシブクエンチング素子31の抵抗値が小さいほど、リチャージパルス28の傾斜が急である。リチャージパルス28の傾斜が急であるほど、クエンチに要する時間が短く、APD20で光を検出できないデッドタイムが短い。抵抗値が大きいパッシブクエンチング素子31を用いることで、ラッチングカレント等の発生を抑制した適切なクエンチングを実現することができる。しかし、抵抗値が大きいほどデッドタイムが増加する。
【0041】
パッシブクエンチング素子31の抵抗値に応じて、当該パッシブクエンチング素子31に接続されたAPD20からのパルス信号のパルス幅も変わる。図10に示されているように、パッシブクエンチング素子31の抵抗値が大きいほど、パッシブクエンチング素子31に直列に接続されたAPD20のデッドタイムが増加する。したがって、適切なクエンチングとデッドタイムの低減とを両立し、光検出感度及び光検出時間分解能を確保するために、最適な抵抗値のパッシブクエンチング素子31を有する回路設計が求められている。
【0042】
光検出装置1では、パッシブクエンチング素子31及び容量素子32を有する複数の出力ユニット30が、APDアレイ基板10とは別体の回路基板50に設けられている。このため、複数の出力ユニット30がAPDアレイ基板10に配置される場合に比べて、複数の出力ユニット30を形成できるスペースが拡大され得る。したがって、複数の出力ユニット30の設計が容易になり得る。
【0043】
複数の出力ユニット30が、APDアレイ基板10とは別体の回路基板50に設けられているため、APD20の構成と出力ユニット30との間に生じる寄生容量が低減され得る。APDアレイ基板10と別の製造プロセスを用いることも可能である。APDアレイ基板10及び回路基板50のそれぞれに適した製造プロセスを使うことができることからも、複数の出力ユニット30の設計が容易になり得る。
【0044】
図11は、パッシブクエンチング素子31を一定の値とし、容量素子32の静電容量をパラメータとして、APD20から出力されるパルス信号の波形を示している。図11は、縦軸の単位を電流(A)とし、横軸の単位を時間(s)とした片変数グラフである。データaは、出力ユニット30から容量素子32を取り除いた場合のパルス信号のデータである。データb,c,dは、それぞれ異なる静電容量を有する容量素子32を出力ユニット30に設けた場合のパルス信号のデータである。データb,c,dの順で、より高い静電容量を有する容量素子32が設けられている。
【0045】
図11に示されているように、容量素子32を設けることで、ファストパルス27のピーク値が向上する。容量素子32の静電容量が高いほど、ファストパルス27のピーク値は大きい。したがって、容量素子32を設けることで、複数のAPD20からのパルス信号の時間分解能が向上する。ファストパルス27のピーク値が大きいほど、複数のAPD20からのパルス信号が容易に検出され得る。
【0046】
光検出装置1では、少なくとも1つのAPD20に直列に接続されていると共にパッシブクエンチング素子31と並列に接続されている容量素子32を有している。上記構成によれば、図11を用いて説明した特性により、容量素子32の静電容量によって、容量素子32と直列に接続されたAPD20からのパルス信号のピーク値が向上され得る。したがって、複数のAPD20からのパルス信号が検出され易く、光検出時間分解能が向上し得る。光検出装置1は、所望の光検出感度と光検出時間分解能とを実現しつつ、入射フォトン数を計数できる。
【0047】
化合物半導体からなるAPDアレイ基板10において複数のAPD20がガイガーモードで動作する構成では、各APD20に与える電界強度を低減することで、ノイズの影響が抑制され得る。
【0048】
光検出装置1は、回路基板50上に設けられたポリシリコン層71,73と、ポリシリコン層73上に設けられた誘電体層74と、誘電体層74上に設けられたポリシリコン層72と、を備える。パッシブクエンチング素子31は、ポリシリコン層71によって形成され、容量素子32は、ポリシリコン層73、誘電体層74、及びポリシリコン層72によって形成される。ポリシリコン層71は、回路基板50の厚み方向において、ポリシリコン層72又はポリシリコン層73と同一の高さに形成される。この場合、簡易な製造工程で上記複数の出力ユニット30が形成され得る。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
たとえば、パッシブクエンチング素子31は、ポリシリコン層71の代わりに、金属薄膜によって形成されてもよい。容量素子32は、ポリシリコン層72,73の代わりに、2つのメタル層から形成されてもよい。この場合、容量素子32は、2つの平行なメタル層が誘電体層74を挟んだ構成を有する。
【符号の説明】
【0051】
1…光検出装置、10…APDアレイ基板、20…APD、30…出力ユニット、31…パッシブクエンチング素子、32…容量素子、40…チャンネル、50…回路基板、71,72,73…ポリシリコン層、74…誘電体層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11