(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241106BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241106BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
B23K26/00 P
(21)【出願番号】P 2020068440
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】是松 克洋
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064746(JP,A)
【文献】特開2019-158811(JP,A)
【文献】特開2019-140167(JP,A)
【文献】特開2006-173520(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表面及び第二表面を有するウエハの前記第一表面側から前記ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハに対して透過性を有する光を出力し、前記ウエハを伝搬した前記光を検出する撮像部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に第一の改質領域と該第一の改質領域よりも前記レーザ光の入射面側に位置する第二の改質領域とが形成されるように設定された第一加工条件で前記照射部を制御する第一処理と、
前記第一処理の後において、前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、前記第一加工条件が適正か否かを判定する第二処理と、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより、前記ウエハの内部に、前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域が形成されると共に、前記ウエハの厚さ方向における前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域の間に第三の改質領域が形成されるように設定された第二加工条件で前記照射部を制御する第三処理と、
前記第三処理の後において、前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第一の改質領域、前記第二の改質領域、及び前記第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、前記第二加工条件が適正か否かを判定する第四処理と、を実行するように構成されている、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記改質領域に係る状態として、前記改質領域の状態及び前記改質領域から延びる亀裂の状態の少なくともいずれか一方を特定する、請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記改質領域の位置を特定し、該位置に基づいて、前記
第一加工条件が適正か否かを判定する、請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一表面及び前記第二表面の少なくともいずれか一方に前記亀裂が伸展しているか否かを特定し、該伸展しているか否かに基づいて、前記
第一加工条件又は前記第二加工条件が適正か否かを判定する、請求項2又は3記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第二処理において、前記第一表面及び前記第二表面の少なくともいずれか一方に前記亀裂が伸展している場合に、前記第一加工条件が適正でないと判定する、請求項4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記亀裂の伸展量を特定し、該伸展量に基づいて、前記
第一加工条件が適正か否かを判定する、請求項2~5のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ウエハの厚さ方向に交差する方向への前記亀裂の蛇行の幅を特定し、該蛇行の幅に基づいて、前記
第二加工条件が適正か否かを判定する、請求項2~6のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、互いに異なる前記改質領域から延びる亀裂同士が繋がっているか否かを特定し、該繋がっているか否かに基づいて、前記
第一加工条件が適正か否かを判定する、請求項2~7のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に前記第三の改質領域が形成されるように設定された第三加工条件で前記照射部を制御する第五処理と、
前記第五処理の後において、前記光を検出した前記撮像部から出力される信号に基づいて、前記第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、前記第三加工条件が適正か否かを判定する第六処理と、を更に実行するように構成されている、請求項2~8のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第六処理において、前記第一表面及び前記第二表面の少なくともいずれか一方に前記亀裂が伸展している場合に、前記第三加工条件が適正でないと判定する、請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記
第一加工条件又は前記第二加工条件が適正でないと判定した場合において、
適正でないと判定した加工条件の判定結果に応じて、前記
適正でないと判定した加工条件を補正する第七処理を更に実行するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記撮像部により撮像が行われる前記ウエハの厚さ方向における各領域について所定の輝度で前記撮像部による撮像が行われるよう、各領域の前記ウエハの厚さ方向における位置に応じた光量で前記撮像部から光が出力されるように、前記撮像部を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記改質領域の加工前において、前記撮像部により撮像が行われる前記ウエハの厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように前記撮像部を制御すると共に、前記改質領域の加工後において、前記撮像部により撮像された各領域の画像と対応する領域の前記シェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されており、
前記第二処理及び前記第四処理では、前記差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定する、請求項1~12のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記撮像部により撮像が行われる前記ウエハの厚さ方向における各領域について、前記ウエハの厚さ方向における位置に応じた収差補正が行われるように前記照射部及び前記撮像部の少なくともいずれか一方を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されている、請求項1~13のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
ウエハにレーザ光が照射されることにより前記ウエハの内部に第一の改質領域と該第一の改質領域よりも前記レーザ光の入射面側に位置する第二の改質領域とが形成されるように設定された第一加工条件に基づき前記ウエハを加工することと、
前記第一加工条件に基づき加工された前記ウエハの撮像結果に基づいて、前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、前記第一加工条件が適正か否かを判定することと、
前記ウエハに前記レーザ光が照射されることにより、前記ウエハの内部に、前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域が形成されると共に、前記ウエハの厚さ方向における前記第一の改質領域及び前記第二の改質領域の間に第三の改質領域が形成されるように設定された第二加工条件に基づき前記ウエハを加工することと、
前記第二加工条件に基づき加工された前記ウエハの撮像結果に基づいて、前記第一の改質領域、前記第二の改質領域、及び前記第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、前記第二加工条件が適正か否かを判定することと、を含むレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板と、半導体基板の一方の面に形成された機能素子層と、を備えるウエハを複数のラインのそれぞれに沿って切断するために、半導体基板の他方の面側からウエハにレーザ光を照射することにより、複数のラインのそれぞれに沿って半導体基板の内部に複数列の改質領域を形成するレーザ加工装置が知られている。特許文献1に記載のレーザ加工装置は、赤外線カメラを備えており、半導体基板の内部に形成された改質領域、機能素子層に形成された加工ダメージ等を半導体基板の裏面側から観察することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置では、レーザ光の集光点を複数形成しながら加工層を形成することによって、加工層の形成速度の向上を図る場合がある。一方、本発明者らの知見によれば、対象物の厚さ方向に複数の集光点を同時に形成してレーザ光を照射すると、一方の集光点に形成される改質領域から延びる亀裂が、他方の集光点での改質領域の形成及びその亀裂の進展に影響を及ぼす結果、亀裂量(亀裂の長さ)が不安定になる虞がある。このような問題は、集光点を同時に複数形成しない場合(1焦点である場合)においても生じうる。すなわち、例えば1焦点で、最初に入射面から遠い側の改質領域が形成された後に、入射面に近い側の改質領域が形成されるような場合において、入射面から遠い側の亀裂が十分に延びきっていない状態で入射面に近い側の改質領域が加工されることにより、総亀裂量が不安定になるおそれがある。亀裂量が不安定となった場合には、亀裂を境界として対象物を切断した際の切断面の品質(すなわち加工品質)が低下する。
【0005】
亀裂量が不安定になることを抑制すべく、同時に形成される改質領域(或いは1焦点で連続的に形成される複数の改質領域)から延びる亀裂同士が互いに繋がらないように、例えば、亀裂同士が繋がらないだけ十分に離間させた複数の改質領域を先行して形成した後に、該複数の改質領域の間(ウエハの厚さ方向における間)に改質領域を形成し、最終的に全ての改質領域に渡る亀裂を形成することが考えられる。このように、外側の改質領域を形成した後に内側の改質領域を形成する加工方法については、加工方法が複雑であり、適切な加工条件の設定が難しい。加工条件が適切に設定されない場合には、加工されたウエハの品質を十分に担保できないおそれがある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ウエハの厚さ方向において外側の改質領域及び内側の改質領域を形成する場合において、ウエハの品質を担保することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るレーザ加工装置は、第一表面及び第二表面を有するウエハの第一表面側からウエハにレーザ光を照射する照射部と、ウエハに対して透過性を有する光を出力し、ウエハを伝搬した光を検出する撮像部と、制御部と、を備え、制御部は、ウエハにレーザ光が照射されることによりウエハの内部に第一の改質領域と該第一の改質領域よりもレーザ光の入射面側に位置する第二の改質領域とが形成されるように設定された第一加工条件で照射部を制御する第一処理と、第一処理の後において、光を検出した撮像部から出力される信号に基づいて、第一の改質領域及び第二の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第一加工条件が適正か否かを判定する第二処理と、ウエハにレーザ光が照射されることにより、ウエハの内部に、第一の改質領域及び第二の改質領域が形成されると共に、ウエハの厚さ方向における第一の改質領域及び第二の改質領域の間に第三の改質領域が形成されるように設定された第二加工条件で照射部を制御する第三処理と、第三処理の後において、光を検出した撮像部から出力される信号に基づいて、第一の改質領域、第二の改質領域、及び第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第二加工条件が適正か否かを判定する第四処理と、を実行するように構成されている。
【0008】
本発明の一態様に係るレーザ加工装置では、第三処理において、第二加工条件に基づいて、ウエハの厚さ方向における外側の改質領域(第一の改質領域及び第二の改質領域)及びその間の内側の改質領域(第三の改質領域)が形成され、第四処理において、撮像部から出力される信号に基づき各改質領域に係る状態が特定され、特定結果に基づき、第二加工条件が適正か否かが判定される。このように、外側の改質領域及び内側の改質領域が実際に形成されるように加工されて、加工後の各改質領域の状態に基づき加工条件の適否が判定されることにより、最終的なウエハの加工状態に基づいて加工条件の適否が判定されることになる。このことで、加工条件の適否が精度良く判定され、加工後のウエハの品質を担保することができる。更に、本発明の一態様に係るレーザ加工装置では、第一処理において、第一加工条件に基づいて、ウエハの厚さ方向における外側の改質領域(第一の改質領域及び第二の改質領域)のみが形成され、第二処理において、撮像部から出力される信号に基づき外側の改質領域に係る状態が特定され、特定結果に基づき第一加工条件が適正か否かが判定されている。例えば、最終的なウエハの加工状態においてフルカット状態(改質領域から延びる亀裂がウエハの両端面にまで延びた状態)に加工される場合等においては、最終的なウエハの加工状態から得られる改質領域に係る情報が少なく、加工条件の適否を高精度に判定できないおそれがある。この点、一部の改質領域(外側の改質領域)のみが形成された状態において、一部の改質領域に係る情報に基づき、当該一部の改質領域の形成に係る加工条件(第一加工条件)の適否が判定されることにより、最終的なウエハの加工状態よりも多くの情報(改質領域に係る情報)が得られるウエハの加工状態に基づいて、より高精度に加工条件の適否を判定することができる。なお、発明者らの知見によれば、ウエハの厚さ方向において外側の改質領域及び内側の改質領域が形成される場合においては、外側の改質領域に係る状態が、加工後のウエハの品質や分割性により影響を及ぼすと考えられる。この点、第二処理において、外側の改質領域の形成に係る加工条件(第一加工条件)の適否が判定されることによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0009】
制御部は、改質領域に係る状態として、改質領域の状態及び改質領域から延びる亀裂の状態の少なくともいずれか一方を特定してもよい。これにより、加工後のウエハの状態が適切に特定され、加工条件の適否をより高精度に判定することができる。このことで、より好適にウエハの品質を担保することができる。
【0010】
制御部は、改質領域の位置を特定し、該位置に基づいて、加工条件が適正か否かを判定してもよい。加工条件が適切でない場合には、改質領域の位置が所望の位置とならない場合がある。改質領域が所望の位置となっているか否かに応じて加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0011】
制御部は、第一表面及び第二表面の少なくともいずれか一方に亀裂が伸展しているか否かを特定し、該伸展しているか否かに基づいて、加工条件が適正か否かを判定してもよい。これにより、例えば最終的なウエハの加工状態においてフルカット状態に加工したい場合において、第二処理の段階で第一表面及び第二表面に亀裂が伸展していないこと、並びに、第四処理の段階で第一表面及び第二表面に亀裂が伸展していることを判定すること等により、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0012】
制御部は、第二処理において、第一表面及び第二表面の少なくともいずれか一方に亀裂が伸展している場合に、第一加工条件が適正でないと判定してもよい。これにより、最終的な加工状態よりも前の加工状態において、確実に、亀裂が表裏面に到達していないST状態(内部観察しやすい状態)とすることができる。このことで、加工状態に係る情報を適切且つ豊富に得ることができる。また、仮に最終加工状態がフルカット状態とされる場合であっても、それよりも前の状態(その後にまだ加工される状態)において亀裂が表裏面に到達している場合には、最終的な加工状態においてチップ品質及び分割性が悪化すると考えられる。このため、最終的な加工状態よりも前の加工状態においてST状態であることを、加工条件が適切であるとされる条件とすることによって、チップ品質及び分割性を担保することができる。
【0013】
制御部は、亀裂の伸展量を特定し、該伸展量に基づいて、加工条件が適正か否かを判定してもよい。加工条件が適切でない場合には、亀裂の伸展量が所望の長さとならない場合がある。亀裂の伸展量から加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0014】
制御部は、ウエハの厚さ方向に交差する方向への亀裂の蛇行の幅を特定し、該蛇行の幅に基づいて、加工条件が適正か否かを判定してもよい。加工条件が適切でない場合には、亀裂の蛇行の幅が大きく場合がある。亀裂の蛇行の幅から加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0015】
制御部は、互いに異なる改質領域から延びる亀裂同士が繋がっているか否かを特定し、該繋がっているか否かに基づいて、加工条件が適正か否かを判定してもよい。加工条件が適切でない場合には、亀裂同士を繋げたくない場合に亀裂同士が繋がることや、亀裂同士を繋げたい場合に亀裂同士が繋がらないことがある。亀裂同士が繋がっているか否かに応じて加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0016】
制御部は、ウエハにレーザ光が照射されることによりウエハの内部に第三の改質領域が形成されるように設定された第三加工条件で照射部を制御する第五処理と、第五処理の後において、光を検出した撮像部から出力される信号に基づいて、第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第三加工条件が適正か否かを判定する第六処理と、を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、内側の改質領域のみが形成された状態において、内側の改質領域に係る情報に基づき、当該内側の改質領域の形成に係る加工条件(第三加工条件)の適否が判定される。外側及び内側の改質領域が形成される場合、外側の改質領域のみが形成される場合に加えて、内側の改質領域のみが形成される場合についても、改質領域に係る情報から加工条件の適否が判定されることにより、より高精度に加工条件の適否を判定することができる。
【0017】
制御部は、第六処理において、第一表面及び第二表面の少なくともいずれか一方に亀裂が伸展している場合に、第三加工条件が適正でないと判定してもよい。これにより、最終的な加工状態よりも前の加工状態において、確実に、亀裂が表裏面に到達していないST状態(内部観察しやすい状態)とすることができる。このことで、加工状態に係る情報を適切且つ豊富に得ることができる。また、仮に最終加工状態がフルカット状態とされる場合であっても、それよりも前の状態(その後にまだ加工される状態)において亀裂が表裏面に到達している場合には、最終的な加工状態においてチップ品質及び分割性が悪化すると考えられる。このため、最終的な加工状態よりも前の加工状態においてST状態であることを、加工条件が適切であるとされる条件とすることによって、チップ品質及び分割性を担保することができる。
【0018】
制御部は、第二処理において、第一表面及び前記第二表面の少なくともいずれか一方に亀裂が伸展している場合に、第一加工条件が適正でないと判定し、第六処理において、第一表面及び第二表面の少なくともいずれか一方に亀裂が伸展している場合に、第三加工条件が適正でないと判定してもよい。これにより、最終的な加工状態よりも前の加工状態において、確実に、亀裂が表裏面に到達していないST状態(内部観察しやすい状態)とすることができる。このことで、加工状態に係る情報を適切且つ豊富に得ることができる。また、仮に最終加工状態がフルカット状態とされる場合であっても、それよりも前の状態(その後にまだ加工される状態)において亀裂が表裏面に到達している場合には、最終的な加工状態においてチップ品質及び分割性が悪化すると考えられる。このため、最終的な加工状態よりも前の加工状態においてST状態であることを、加工条件が適切であるとされる条件とすることによって、チップ品質及び分割性を担保することができる。
【0019】
制御部は、加工条件が適正でないと判定した場合において、該加工条件の判定結果に応じて、加工条件を補正する第七処理を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、判定結果に基づき加工条件が補正され、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0020】
制御部は、撮像部により撮像が行われるウエハの厚さ方向における各領域について所定の輝度で撮像部による撮像が行われるよう、各領域のウエハの厚さ方向における位置に応じた光量で撮像部から光が出力されるように、撮像部を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、ウエハの厚さ方向(深さ方向)における各撮像領域毎に一定若しくは最適な輝度になるように、撮像部の光量を決定することができる。これにより、各改質領域に係る状態を適切に特定することができる。
【0021】
制御部は、改質領域の加工前において、撮像部により撮像が行われるウエハの厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように撮像部を制御すると共に、改質領域の加工後において、撮像部により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されており、第二処理及び第四処理では、差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定してもよい。シェーディング補正処理によって取得される差分データは、デバイスパターンや点欠陥、画面の明るさのムラ等のノイズが除去された画像データであり、観察したい改質領域及び亀裂状態等のみの画像データである。このような差分データに基づき改質領域に係る状態が特定されることにより、加工後のウエハの状態が適切に特定される。これによって、より好適に加工後のウエハの品質を担保することができる。
【0022】
制御部は、撮像部により撮像が行われるウエハの厚さ方向における各領域について、ウエハの厚さ方向における位置に応じた収差補正が行われるように照射部及び撮像部の少なくともいずれか一方を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されていてもよい。例えばフルカット加工が行われる場合には、各改質領域の間隔が狭く、また、亀裂の伸展量も小さいことから、ウエハの厚さ方向における各位置毎に収差補正を加えなければ鮮明な観察ができない。この点、上述したように、ウエハの厚さ方向における各領域についてウエハの厚さに応じた収差補正が行われることにより、鮮明な観察が可能になり、改質領域に係る状態をより適切に特定することができる。
【0023】
本発明の一態様に係るレーザ加工方法は、ウエハにレーザ光が照射されることによりウエハの内部に第一の改質領域と該第一の改質領域よりもレーザ光の入射面側に位置する第二の改質領域とが形成されるように設定された第一加工条件に基づきウエハを加工することと、第一加工条件に基づき加工されたウエハの撮像結果に基づいて、第一の改質領域及び第二の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第一加工条件が適正か否かを判定することと、ウエハにレーザ光が照射されることにより、ウエハの内部に、第一の改質領域及び第二の改質領域が形成されると共に、ウエハの厚さ方向における第一の改質領域及び第二の改質領域の間に第三の改質領域が形成されるように設定された第二加工条件に基づきウエハを加工することと、第二加工条件に基づき加工されたウエハの撮像結果に基づいて、第一の改質領域、第二の改質領域、及び第三の改質領域に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第二加工条件が適正か否かを判定することと、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ウエハの厚さ方向において外側の改質領域及び内側の改質領域を形成する場合において、ウエハの品質を担保することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実行形態のレーザ加工装置の構成図である。
【
図3】
図2に示されるウエハの一部分の断面図である。
【
図4】
図1に示されるレーザ照射ユニットの構成図である。
【
図5】
図1に示される検査用撮像ユニットの構成図である。
【
図6】
図1に示されるアライメント補正用撮像ユニットの構成図である。
【
図7】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図8】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図9】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図10】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図11】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図12】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図13】レーザ照射ユニットによる加工例を説明する図である。
【
図14】レーザ照射ユニットによる加工例を説明する図である。
【
図16】外側SD層の加工状態に応じたウエハの状態を説明する図である。
【
図17】内側SD層の加工状態に応じたウエハの状態を説明する図である。
【
図25】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
【
図26】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
【
図27】加工条件導出処理に係る画面イメージである。
【
図28】レーザ加工方法(加工条件導出処理)の一例に係るフローチャートである。
【
図29】レーザ加工方法(加工条件導出処理)の他の例に係るフローチャートである。
【
図30】加工方法による撮像区間の違いを説明する図である。
【
図31】輝度キャリブレーション処理のフローチャートである。
【
図32】シェーディング補正処理のフローチャートである。
【
図33】各種補正処理を行う場合のレーザ加工方法(加工条件導出処理)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実行形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0027】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ2と、レーザ照射ユニット3(照射部)と、複数の撮像ユニット4,5,6と、駆動ユニット7と、制御部8と、ディスプレイ150(入力部,表示部)とを備えている。レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11に改質領域12を形成する装置である。
【0028】
ステージ2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、対象物11を支持する。ステージ2は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動可能であり、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。なお、X方向及びY方向は、互いに垂直な第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は、鉛直方向である。
【0029】
レーザ照射ユニット3は、対象物11に対して透過性を有するレーザ光Lを集光して対象物11に照射する。ステージ2に支持された対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。
【0030】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延び易いという特性を有している。このような改質領域12の特性は、対象物11の切断に利用される。
【0031】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、対象物11に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0032】
撮像ユニット4は、対象物11に形成された改質領域12、及び改質領域12から延びた亀裂の先端を撮像する。
【0033】
撮像ユニット5及び撮像ユニット6は、制御部8の制御のもとで、ステージ2に支持された対象物11を、対象物11を透過する光により撮像する。撮像ユニット5,6が撮像することにより得られた画像は、一例として、レーザ光Lの照射位置のアライメントに供される。
【0034】
駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6を支持している。駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6をZ方向に沿って移動させる。
【0035】
制御部8は、ステージ2、レーザ照射ユニット3、複数の撮像ユニット4,5,6、及び駆動ユニット7の動作を制御する。制御部8は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部8では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。
【0036】
ディスプレイ150は、ユーザから情報の入力を受付ける入力部としての機能と、ユーザに対して情報を表示する表示部としての機能とを有している。
【0037】
[対象物の構成]
本実行形態の対象物11は、
図2及び
図3に示されるように、ウエハ20である。ウエハ20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。なお、本実行形態では、ウエハ20は機能素子層22を有するとして説明するが、ウエハ20は機能素子層22を有していても有していなくてもよく、ベアウエハであってもよい。半導体基板21は、表面21a(第二表面)及び裏面21b(第一表面)を有している。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含んでいる。機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0038】
ウエハ20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実行形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
【0039】
[レーザ照射ユニットの構成]
図4に示されるように、レーザ照射ユニット3は、光源31と、空間光変調器32と、集光レンズ33と、を有している。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。空間光変調器32は、光源31から出力されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器32は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。集光レンズ33は、空間光変調器32によって変調されたレーザ光Lを集光する。なお、集光レンズ33は、補正環レンズであってもよい。
【0040】
本実行形態では、レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射することにより、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12a,12bを形成する。改質領域12aは、2列の改質領域12a,12bのうち表面21aに最も近い改質領域である。改質領域12bは、2列の改質領域12a,12bのうち、改質領域12aに最も近い改質領域であって、裏面21bに最も近い改質領域である。
【0041】
2列の改質領域12a,12bは、ウエハ20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12a,12bは、半導体基板21に対して2つの集光点C1,C2がライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。レーザ光Lは、例えば集光点C1に対して集光点C2が進行方向の後側且つレーザ光Lの入射側に位置するように、空間光変調器32によって変調される。なお、改質領域の形成に関しては、単焦点であっても多焦点であってもよいし、1パスであっても複数パスであってもよい。
【0042】
レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。一例として、厚さ400μmの単結晶シリコン<100>基板である半導体基板21に対し、表面21aから54μmの位置及び128μmの位置に2つの集光点C1,C2をそれぞれ合わせて、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。このとき、例えば2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至る条件とする場合、レーザ光Lの波長は1099nm、パルス幅は700n秒、繰り返し周波数は120kHzとされる。また、集光点C1におけるレーザ光Lの出力は2.7W、集光点C2におけるレーザ光Lの出力は2.7Wとされ、半導体基板21に対する2つの集光点C1,C2の相対的な移動速度は800mm/秒とされる。なお、例えば加工パス数が5とされる場合、上述したウエハ20に対して、例えば、ZH80(表面21aから328μmの位置)、ZH69(表面21aから283μmの位置)、ZH57(表面21aから234μmの位置)、ZH26(表面21aから107μmの位置)、ZH12(表面21aから49.2μmの位置)が加工位置とされてもよい。この場合、例えば、レーザ光Lの波長は1080nmであり、パルス幅は400nsecであり、繰り返し周波数は100kHzであり、移動速度は490mm/秒であってもよい。
【0043】
このような2列の改質領域12a,12b及び亀裂14の形成は、次のような場合に実行される。すなわち、後の工程において、例えば、半導体基板21の裏面21bを研削することにより半導体基板21を薄化すると共に亀裂14を裏面21bに露出させ、複数のライン15のそれぞれに沿ってウエハ20を複数の半導体デバイスに切断する場合である。
【0044】
[検査用撮像ユニットの構成]
図5に示されるように、撮像ユニット4(撮像部)は、光源41と、ミラー42と、対物レンズ43と、光検出部44と、を有している。撮像ユニット4はウエハ20を撮像する。光源41は、半導体基板21に対して透過性を有する光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I1を出力する。光源41から出力された光I1は、ミラー42によって反射されて対物レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。このとき、ステージ2は、上述したように2列の改質領域12a,12bが形成されたウエハ20を支持している。
【0045】
対物レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された光I1を通過させる。つまり、対物レンズ43は、半導体基板21を伝搬した光I1を通過させる。対物レンズ43の開口数(NA)は、例えば0.45以上である。対物レンズ43は、補正環43aを有している。補正環43aは、例えば対物レンズ43を構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、半導体基板21内において光I1に生じる収差を補正する。なお、収差を補正する手段は、補正環43aに限られず、空間光変調器等のその他の補正手段であってもよい。光検出部44は、対物レンズ43及びミラー42を透過した光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I1を検出する。なお、近赤外領域の光I1を検出(撮像)する手段はInGaAsカメラに限られず、透過型コンフォーカル顕微鏡等、透過型の撮像を行うものであればその他の撮像手段であってもよい。
【0046】
撮像ユニット4は、2列の改質領域12a,12bのそれぞれ、及び、複数の亀裂14a,14b,14c,14dのそれぞれの先端を撮像することができる(詳細については、後述する)。亀裂14aは、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14bは、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂である。亀裂14cは、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14dは、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂である。
【0047】
[アライメント補正用撮像ユニットの構成]
図6に示されるように、撮像ユニット5は、光源51と、ミラー52と、レンズ53と、光検出部54と、を有している。光源51は、半導体基板21に対して透過性を有する光I2を出力する。光源51は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I2を出力する。光源51は、撮像ユニット4の光源41と共通化されていてもよい。光源51から出力された光I2は、ミラー52によって反射されてレンズ53を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。
【0048】
レンズ53は、半導体基板21の表面21aで反射された光I2を通過させる。つまり、レンズ53は、半導体基板21を伝搬した光I2を通過させる。レンズ53の開口数は、0.3以下である。すなわち、撮像ユニット4の対物レンズ43の開口数は、レンズ53の開口数よりも大きい。光検出部54は、レンズ53及びミラー52を通過した光I2を検出する。光検出部54は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I2を検出する。
【0049】
撮像ユニット5は、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光I2を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また、撮像ユニット5は、同様に、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12a,12bの形成位置から戻る光I2を検出することにより、改質領域12a,12bを含む領域の画像を取得する。これらの画像は、レーザ光Lの照射位置のアライメントに用いられる。撮像ユニット6は、レンズ53がより低倍率(例えば、撮像ユニット5においては6倍であり、撮像ユニット6においては1.5倍)である点を除いて、撮像ユニット5と同様の構成を備え、撮像ユニット5と同様にアライメントに用いられる。
【0050】
[検査用撮像ユニットによる撮像原理]
図5に示される撮像ユニット4を用い、
図7に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っている半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点F(対物レンズ43の焦点)を移動させる。この場合、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、当該先端14eを確認することができる(
図7における右側の画像)。しかし、亀裂14そのもの、及び表面21aに至っている亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、それらを確認することができない(
図7における左側の画像)。なお、半導体基板21の表面21aに裏面21b側から焦点Fを合わせると、機能素子層22を確認することができる。
【0051】
また、
図5に示される撮像ユニット4を用い、
図8に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っていない半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点Fを移動させる。この場合、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、当該先端14eを確認することができない(
図8における左側の画像)。しかし、表面21aに対して裏面21bとは反対側の領域(すなわち、表面21aに対して機能素子層22側の領域)に裏面21b側から焦点Fを合わせて、表面21aに関して焦点Fと対称な仮想焦点Fvを当該先端14eに位置させると、当該先端14eを確認することができる(
図8における右側の画像)。なお、仮想焦点Fvは、半導体基板21の屈折率を考慮した焦点Fと表面21aに関して対称な点である。
【0052】
以上のように亀裂14そのものを確認することができないのは、照明光である光I1の波長よりも亀裂14の幅が小さいためと想定される。
図9及び
図10は、シリコン基板である半導体基板21の内部に形成された改質領域12及び亀裂14のSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
図9の(b)は、
図9の(a)に示される領域A1の拡大像、
図10の(a)は、
図9の(b)に示される領域A2の拡大像、
図10の(b)は、
図10の(a)に示される領域A3の拡大像である。このように、亀裂14の幅は、120nm程度であり、近赤外領域の光I1の波長(例えば、1.1~1.2μm)よりも小さい。
【0053】
以上を踏まえて想定される撮像原理は、次のとおりである。
図11の(a)に示されるように、空気中に焦点Fを位置させると、光I1が戻ってこないため、黒っぽい画像が得られる(
図11の(a)における右側の画像)。
図11の(b)に示されるように、半導体基板21の内部に焦点Fを位置させると、表面21aで反射された光I1が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図11の(b)における右側の画像)。
図11の(c)に示されるように、改質領域12に裏面21b側から焦点Fを合わせると、改質領域12によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について吸収、散乱等が生じるため、白っぽい背景の中に改質領域12が黒っぽく映った画像が得られる(
図11の(c)における右側の画像)。
【0054】
図12の(a)及び(b)に示されるように、亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、例えば、先端14e近傍に生じた光学的特異性(応力集中、歪、原子密度の不連続性等)、先端14e近傍で生じる光の閉じ込め等によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について散乱、反射、干渉、吸収等が生じるため、白っぽい背景の中に先端14eが黒っぽく映った画像が得られる(
図12の(a)及び(b)における右側の画像)。
図12の(c)に示されるように、亀裂14の先端14e近傍以外の部分に裏面21b側から焦点Fを合わせると、表面21aで反射された光I1の少なくとも一部が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図12の(c)における右側の画像)。
【0055】
[加工条件導出処理]
以下では、ウエハ20の切断等を目的として改質領域を形成する処理の前処理として実行される、加工条件導出処理について説明する。なお、以下で説明する加工条件判定処理等の処理は、加工条件導出処理以外の処理、例えば加工条件を導出した後の各種検査処理において実行されてもよい。加工条件とは、どのような条件・手順でウエハ20を加工するかを示す、加工に係るレシピである。
【0056】
まず、加工条件を導出する対象の加工方法について、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13及び
図14は、レーザ照射ユニット3による加工例を説明する図である。
図13に示されるように、レーザ照射ユニット3は、レーザ光の集光点を複数形成しながら改質領域を形成することによって、改質領域の形成速度の向上を図っている。
図13に示される例において、空間光変調器32には、少なくともレーザ光Lを複数(ここでは2つ)に分岐するための分岐パターンが表示される。これにより、空間光変調器32に入射したレーザ光Lは、空間光変調器32において2つのレーザ光L1,L2に分岐されると共に、集光レンズ33によって集光され集光点C1及び集光点C2を形成する。
【0057】
空間光変調器32は、少なくとも、ウエハ20におけるレーザ光Lの入射面である裏面21bに交差するZ方向について、互いに異なる位置に集光点C1及び集光点C2が形成されるように、レーザ光Lを分岐させる。すなわち、レーザ照射ユニット3は、ウエハ20の厚さ方向に複数の集光点が同時に形成されるようにレーザ光を照射する。このため、集光点C1及び集光点C2をウエハ20に対して相対移動させることにより、改質領域12として、Z方向に互いに異なる位置に2列の改質領域121及び改質領域122が形成される。改質領域121は、レーザ光L1及びその集光点C1に対応し、改質領域122は、レーザ光L2及びその集光点C2に対応する。集光点C1及び改質領域121は、集光点C2及び改質領域122に対して裏面21bと反対側(ウエハ20の表面21a側)に位置する。空間光変調器32は、分岐パターンの調整により、Z方向における集光点C1と集光点C2との距離Dz(縦分岐量)が可変とされている。さらに、空間光変調器32は、レーザ光Lをレーザ光L1,L2に分岐させるに際して、集光点C1と集光点C2との水平方向(図示の例ではX方向)の距離Dx(横分岐量)を変更可能とされている。
図13の例では、空間光変調器32は、集光点C1をX方向(加工進行方向)について集光点C2よりも前方に位置するように、距離Dxを0よりも大きくしている。
【0058】
ここで、ウエハ20の厚さ方向に複数の集光点C1,C2が同時に形成されるようにレーザ光が照射される場合においては、一方の集光点(例えば集光点C1)に形成される改質領域(例えば改質領域121)から延びる亀裂が、他方の集光点(例えば集光点C2)での改質領域(例えば改質領域122)の形成及びその亀裂の伸展に影響を及ぼす場合がある。この場合には、他方の集光点の亀裂量が不安定になり、亀裂を境界としてウエハ20を切断した際の切断面の品質、すなわち加工品質が低下するおそれがある。
【0059】
これに対して、例えば
図14に示される加工例では、集光点C1と集光点C2とのZ方向についての距離Dzが比較的大きくされている。これにより、
図14(a),(b)に示されるように、改質領域121から延びる亀裂121cと、改質領域122から延びる亀裂122cとが、互いに繋がらないようにレーザ光L1,L2の照射が行われる。そして、
図14に示される加工例では、
図14(b),(c)に示されるように、集光点C1と集光点C2との間の位置にレーザ光L3の集光点C3が形成されるようにレーザ光L3の照射を行うことにより、第3集光点C3に形成される改質領域123から延びると共に改質領域121と改質領域122とに渡る亀裂123cを形成する。亀裂122c及び亀裂121cは、亀裂123cが形成されることによりさらに伸展し、全体として、表面21aから裏面21bに渡る亀裂12cを形成する。
【0060】
このように、互いに亀裂が繋がらないように互いに十分に離間した外側SD層(改質領域121,122)が形成された後に、ウエハ20の厚さ方向における外側SD層の間に内側SD層(改質領域123)が形成される加工方法によれば、同時に形成される改質領域について一方の改質領域から延びる亀裂が他方の改質領域の形成及びその亀裂の伸展に影響を及ぼすことがなく、加工品質の低下を抑制しながら、ウエハ20を適切にフルカット状態とすることができる。フルカット状態とは、ウエハ20における亀裂が裏面21b及び表面21aにまで到達した状態である。なお、ウエハ20の内部に極わずかに亀裂14がつながっていない箇所があったとしても、該つながっていない箇所が、標準的なテープエキスパンド(例えば拡張量15mm、拡張速度5mm/secのテープエキスパンド)にてつながりウエハ20の分割が可能になるレベルである状態はフルカット状態であるとする。極わずかに亀裂14がつながっていない箇所とは、改質層部における再凝固箇所(レーザ照射時の溶融後に再凝固する箇所)、又は、チップ品質を良好にすべくあえて亀裂14をつながない黒スジ箇所等である。しかしながら、上述したような加工方法については、工程が複雑であり、該加工方法に適した加工条件を適切に設定することが難しい。以下では、上述した加工方法(互いに亀裂が繋がらないように互いに十分に離間した外側SD層が形成された後に外側SD層の間に内側SD層が形成される加工方法)によりウエハ20の加工を行う場合における加工条件導出処理について説明する。以下では、上述した加工方法によってウエハ20をフルカット状態とする場合の加工条件導出処理を説明する。なお、フルカット加工は、上述したようにウエハ20の裏面21b側からレーザ光を入射することにより行われてもよいし、ウエハ20の表面21a側からレーザ光を入射することにより行われてもよい。
【0061】
上述した加工方法では、外側SD層が形成された後に外側SD層の間に内側SD層が形成される。このような加工方法としては、例えば
図15(a)に示されるように、2焦点で、最初に一対の外側SD層(SD1,SD1)が形成された後に、一対の内側SD層(SD2,SD2)が形成されるパターンや、1焦点で、表面21a側の外側SD層(SD1)、裏面21b側の外側SD層(SD2)、表面21a側の内側SD層(SD3)、裏面21b側の内側SD層(SD4)が順に形成されるパターン等が考えられる。いずれのパターンにおいても、外側SD層が形成された後に内側SD層が形成される点においては共通している。そして、このような加工方法の場合、例えば、外側SD層の形成に係る加工条件と、内側SD層の形成に係る加工条件とをそれぞれ別に設定する必要がある。そこで、本実施形態に係る加工条件導出処理では、
図15(b)に示されるように、最終的なウエハ20の加工状態だけではなく、外側SD層のみを加工した状態、及び、内側SD層のみを加工した状態においてそれぞれ、加工条件の適否を判定し、各加工条件の適否の判定結果に基づいて、加工条件を導出する。
【0062】
具体的には、制御部8は、外側SD層のみを形成するように設定された第一加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する外側SD層形成処理(第一処理)、外側SD層形成処理において形成された外側SD層に係る状態に基づき第一加工条件の適否を判定する処理(第二処理)、内側SD層のみを形成するように設定された第三加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する内側SD層形成処理(第五処理)、内側SD層形成処理において形成された内側SD層に係る状態に基づき第三加工条件の適否を判定する処理(第六処理)、外側SD層及び内側SD層を形成するように設定された第二加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する全SD層形成処理(第三処理)、及び、全SD層形成処理において形成された外側SD層及び内側SD層に係る状態に基づき第二加工条件の適否を判定する処理(第四処理)を順次実行する。そして、制御部8は、各加工条件の判定結果に基づいて、最終的な加工条件を決定する(詳細は後述)。以下、制御部8による各処理を詳細に説明する。
【0063】
(外側SD層形成処理及び第一加工条件の適否を判定する処理)
制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることにより、
図16等に示されるようにウエハ20の内部に、外側SD層である、改質領域121(第一の改質領域)と該改質領域121よりもレーザ光の入射面である裏面21b側に位置する改質領域122(第二の改質領域)とが形成されるように設定された第一加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する外側SD層形成処理を行う。制御部8は、例えばディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだ第一加工条件を仮決定する。加工条件とは、例えばレーザ光のパルスエネルギー(出力及び周波数調整を含む)、収差補正、パルス幅、パルスピッチ、改質層数、集光点数等である。ディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報とは、例えばウエハ厚さ、最終的な加工目標(フルカット等)等である。
【0064】
制御部8は、外側SD層形成処理の後において、撮像ユニット4から出力される信号(すなわち撮像結果)に基づいて、外側SD層である改質領域121及び改質領域122に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、外側SD層形成のための第一加工条件(仮決定している第一加工条件)が適正か否かを判定する。制御部8は、改質領域121,122に係る状態として、改質領域121,122の状態及び改質領域121,122から延びる亀裂14の状態を特定する。
【0065】
図16は、外側SD層の加工状態に応じたウエハ20の状態を説明する図である。
図16(a)~
図16(c)において上段は外側SD層のみを形成した場合のウエハ20の断面の状態を示しており、下段は上段の状態から更に内側SD層を形成した場合のウエハ20の断面の状態を示している。
図16(a)は外側SD層形成のために照射されるレーザ光によってウエハ20に加わる分断力(切断に係る力)が弱い状態、
図16(b)は当該分断力が最適である状態、
図16(c)は当該分断力が強い状態、をそれぞれ示している。
【0066】
図16(b)に示されるような、外側SD層形成のためのレーザ光の分断力が適正である場合には、
図16(b)の下段に示されるように、外側SD層に続いて内側SD層(改質領域123a,123b)が形成されると、ウエハ20における亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となる。また、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅も所定値以下(例えば2μm以下)等に抑えることができる。この場合には、加工後において割れ残りが発生しないように完全にウエハ20を分割(切断)することができる。このため、制御部8は、外側SD層である改質領域121及び改質領域122に係る状態が
図16(b)の上段の状態である場合には、第一加工条件が適正であると判定する(判定方法の詳細については後述)。
【0067】
一方で、例えば
図16(a)の上段に示されるように、外側SD層形成のための分断力が弱い場合には、改質領域121及び改質領域122から延びる亀裂14の伸展量が短くなり、
図16(a)の下段に示されるように、その後に内側SD層(改質領域123a,123b)が形成されても、ウエハ20における亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態とならない。この場合には、加工後において割れ残りが発生し(例えば30%程度が割れ残ってしまい)、加工品質を担保することができない。このため、制御部8は、外側SD層である改質領域121及び改質領域122に係る状態が
図16(a)の上段の状態である場合には、第一加工条件が適正でないと判定する(判定方法の詳細については後述)。また、例えば
図16(c)の上段に示されるように、外側SD層形成のための分断力が強い場合には、亀裂14の伸展量が過度に大きくなり、まだ内側SD層を形成する前であるにもかかわらず、亀裂14が裏面21bに到達したハーフカット(HC)状態、及び、亀裂14が表面21aに到達したBHC(Bottom side half-cut)状態となってしまう。この場合、亀裂14の蛇行量も大きくなってしまう。そして、
図16(c)の下段に示されるように、伸展量が大きい外側SD層の亀裂14が内側SD層の形成を阻害してしまうため、フルカット状態となりにくくなり、加工後において割れ残りが発生し(例えば10%程度が割れ残ってしまい)、加工品質を担保することができない。このため、制御部8は、外側SD層である改質領域121及び改質領域122に係る状態が
図16(c)の上段の状態である場合には、第一加工条件が適正でないと判定する(判定方法の詳細については後述)。
【0068】
第一加工条件に関する判定方法の詳細について、
図18(a)及び
図19(a)を参照して説明する。制御部8は、撮像ユニット4によって裏面21b側から各点に焦点Fが合わせられて取得された内部観察結果に基づき、第一加工条件の適否を判定する。制御部8は、
図18(a)に示されるように、内部観察結果に基づき、裏面21bに亀裂14が伸展しているか否か(HC状態であるか否か)の情報、ウエハ20内部における亀裂量(亀裂14の伸展量)、ウエハ20内部における亀裂14の凹凸の有無、黒スジの有無(改質領域121から裏面21b側に延びる亀裂14である上亀裂の先端が観察されるか)、改質層位置(改質領域121,122の位置)、表面21aに亀裂14が伸展しているか否か(BHC状態であるか否か)の情報等を特定する。
図19(a)は、外側SD層を形成した場合のウエハ20の内部観察結果(入射面である裏面21bの観察結果を含む)の一部を示している。
図19(a)の上段は、入射面である裏面21bの観察結果を示している。
図19(a)の上段に示されるように、裏面21bに亀裂14が到達している場合(HC状態)においては、入射面である裏面21bにおいて亀裂14が観察される。一方で、裏面21bに亀裂14が到達していない場合(ST状態)においては、裏面21bにおいて亀裂14が観察されない。なお、裏面21bに亀裂14が到達しているか否かについては、改質領域122から上方向(裏面21b方向)に伸展する亀裂14の先端が観察されるか否かに応じて判定してもよい。すなわち、改質領域122から裏面21b方向に伸展する亀裂14の先端が観察される場合にはST状態であって裏面21bに亀裂14が到達しておらず、当該亀裂14の先端が観察されない場合にはHC状態であって裏面21bに亀裂14が到達していると判定してもよい。
図19(a)の中段は、ウエハ20の厚さ方向における改質領域121及び改質領域122の間の領域の観察結果を示している。
図19(a)の中段に示されるように、観察結果に基づき、黒スジ有の場合(改質領域121から裏面21b側に延びる亀裂14である上亀裂の先端が確認される場合)と、黒スジ無の場合(上亀裂の先端が確認されない場合)とを区別することができる。
図19(a)の下段は、ウエハ20の厚さ方向における改質領域121及び表面21aの間の領域の観察結果を示している。
図19(a)の下段に示されるように、観察結果に基づき、表面21aにまで亀裂14が到達しており改質領域121から表面21a側に延びる亀裂14の先端が観察されない場合(BHC状態である場合)と表面21aにまで亀裂14が到達しておらず亀裂14の先端が観察される場合(ST状態である場合)とを区別することができる。
【0069】
制御部8は、裏面21bに亀裂14が伸展しているHC状態であるか否かを特定し、HC状態であるか否かに基づいて、第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、HC状態である場合に第一加工条件が適正でないと判定してもよい。また、制御部8は、表面21aに亀裂14が伸展しているBHC状態であるか否かを特定し、BHC状態であるか否かに基づいて、第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具合的には、制御部8は、BHC状態である場合に第一加工条件が適正でないと判定してもよい。これらの判定は、「最終的にフルカット状態とする場合において、まだ外側SD層しか形成されていない状態であるにもかかわらず亀裂14が裏面21b(又は表面21a)に到達している場合には、第一加工条件の分断力が強すぎる」との判断によるものである。
【0070】
制御部8は、ウエハ20内部における亀裂量を特定し、亀裂量に基づいて、第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、例えば亀裂量が最適値±5μm程度以内である場合に第一加工条件が適正であると判定してもよい。また、制御部8は、ウエハ20内部における亀裂14の凹凸の有無を特定し、該凹凸の有無に基づいて第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、ウエハ20内部において亀裂14の凹凸が無い場合に第一加工条件が適正であると判定してもよい。
【0071】
制御部8は、黒スジの有無、具体的には、改質領域121から裏面21b側に延びる亀裂14である上亀裂の先端が観察されるか否かを特定してもよい。当該上亀裂の先端が観察されるとは、互いに異なる改質領域である改質領域121及び改質領域122から延びる亀裂14同士が繋がっていないことを示している。すなわち、制御部8は、互いに異なる改質領域である改質領域121及び改質領域122から延びる亀裂14同士が繋がっているか否かを特定してもよい。そして、制御部8は、改質領域121及び改質領域122から延びる亀裂14同士が繋がっている場合(黒スジ無しの場合)に、第一加工条件が適正でないと判定してもよい。このような判定は、「外側SD層の亀裂同士が繋がっている場合には互いの亀裂の伸展等に影響を及ぼしてしまうため、第一加工条件の分断力が強すぎる」との判断によるものである。
【0072】
制御部8は、改質層位置(改質領域121,122の位置)を特定し、該位置に基づいて、第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、例えば改質層位置が最適値±4μm程度以内である場合に第一加工条件が適正であると判定してもよい。
【0073】
(内側SD層形成処理及び第三加工条件の適否を判定する処理)
制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることにより、
図17等に示されるようにウエハ20の内部に、内側SD層である、改質領域123a及び改質領域123b(第三の改質領域)が形成されるように設定された第三加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する内側SD層形成処理を行う。制御部8は、例えばディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだ第三加工条件を仮決定する。加工条件とは、例えばレーザ光のパルスエネルギー(出力及び周波数調整を含む)、収差補正、パルス幅、パルスピッチ、改質層数、集光点数等である。ディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報とは、例えばウエハ厚さ、最終的な加工目標(フルカット等)等である。
【0074】
制御部8は、内側SD層形成処理の後において、撮像ユニット4から出力される信号(すなわち撮像結果)に基づいて、内側SD層である、改質領域123a,123bに係る状態を特定し、特定した情報に基づき、内側SD層形成のための第三加工条件(仮決定している第三加工条件)が適正か否かを判定する。制御部8は、改質領域123a,123bに係る状態として、改質領域123a,123bの状態及び改質領域123a,123bから延びる亀裂14の状態を特定する。
【0075】
図17は、内側SD層の加工状態に応じたウエハ20の状態を説明する図である。
図17(a)~
図17(d)において上段は内側SD層のみを形成した場合のウエハ20の断面の状態を示しており、下段は上段の状態に加えて更に外側SD層が形成されている場合のウエハ20の断面を示している。
図17(a)は内側SD層形成のために照射されるレーザ光によってウエハ20に加わる分断力(切断に係る力)が弱く且つ内側SD層形成に係る位置ズレが生じている状態、
図17(b)は当該分断力(切断に係る力)が弱い状態、
図17(c)は当該分断力が最適である状態、
図17(d)は当該分断力が強い状態、をそれぞれ示している。
【0076】
図17(c)に示されるような内側SD層形成のためのレーザ光の分断力が適正である場合には、
図17(c)の下段に示されるように、外側SD層及び内側SD層が形成されると、ウエハ20における亀裂14が裏面21b及び表面21aにまで到達したフルカット状態となる。また、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅も所定値以下(例えば2μm以下)に抑えることができる。この場合には、加工後において割れ残りが発生しないように完全にウエハ20を分割(切断)することができる。このため、制御部8は、内側SD層である改質領域123a,123bに係る状態が
図17(c)の上段の状態である場合には、第三加工条件が適正であると判定する(判定方法の詳細については後述)。
【0077】
ここで、外側SD層の亀裂状態が最適である条件下では、内側SD層の亀裂状態は比較的マージンが広く、例えば
図17(b)に示されるように内側SD層形成のための分断力が弱い場合や、
図17(d)に示されるように内側SD層形成のための分断力が強い場合においても、外側SD層及び内側SD層が形成された状態において、適切にフルカット状態とすると共に、亀裂14の蛇行の幅も所定値以下(例えば2μm以下)に抑えることができる場合がある。この場合には、加工後において割れ残りが発生しないように完全にウエハ20を分割(切断)することができる。このため、制御部8は、内側SD層である改質領域123a,123bに係る状態が
図17(b)又は
図17(d)の上段の状態である場合には、第三加工条件が適正であると判定してもよい(判定方法の詳細については後述)。ただし、内側SD層の亀裂状態のマージンが広かったとしても、分断力があまりにも弱く最終的にフルカット状態とならない場合や、分断力があまりにも強く亀裂14の蛇行量が大きくなる場合には、当然に、制御部8は、第三加工条件が適正でないと判定する(判定方法の詳細については後述)。
【0078】
また、例えば
図17(a)の上段に示されるように、分断力が弱く且つ内側SD層形成に係る位置ズレが生じている場合には、改質領域123a,123bから延びる亀裂14が外側SD層の亀裂14に繋がらなくなり、フルカット状態とならず、加工後において割れ残りが発生し(例えば80%程度が割れ残ってしまい)、加工品質を担保することができない。このような場合には、制御部8は、第三加工条件が適正でないと判定する(判定方法の詳細については後述)。
【0079】
第三加工条件に関する判定方法の詳細について、
図18(b)及び
図19(b)を参照して説明する。制御部8は、撮像ユニット4によって裏面21b側から各点に焦点Fが合わせられて取得された内部観察結果に基づき、第三加工条件の適否を判定する。制御部8は、
図18(b)に示されるように、内部観察結果に基づき、裏面21bに亀裂14が伸展しているか否か(HC状態であるか否か)の情報、ウエハ20内部における亀裂量(亀裂14の伸展量)、ウエハ20内部における亀裂14の凹凸の有無、改質層位置(改質領域123a,123bの位置)、表面21aに亀裂14が伸展しているか否か(BHC状態であるか否か)の情報等を特定する。
図19(b)は、内側SD層を形成した場合のウエハ20の内部観察結果の一部を示している。
図19(b)に示されるように、内部観察結果に基づき、ウエハ20の内部における亀裂の凹凸の大きさが特定される。
図19(b)の左図では、亀裂の凹凸が2μm以下である例を示しており、
図19(b)の右図では、亀裂の凹凸が5.6μmである例を示している。
【0080】
制御部8は、裏面21bに亀裂14が伸展しているHC状態であるか否かを特定し、HC状態であるか否かに基づいて、第三加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、HC状態である場合に第三加工条件が適正でないと判定してもよい。また、制御部8は、表面21aに亀裂14が伸展しているBHC状態であるか否かを特定し、BHC状態であるか否かに基づいて、第三加工条件が適正か否かを判定してもよい。具合的には、制御部8は、BHC状態である場合に第三加工条件が適正でないと判定してもよい。これらの判定は、「最終的にフルカット状態とする場合において、内側SD層しか形成されていない状態であるにもかかわらず亀裂14が裏面21b(又は表面21a)に到達している場合には、第三加工条件の分断力が強すぎる」との判断によるものである。
【0081】
制御部8は、ウエハ20内部における亀裂量を特定し、亀裂量に基づいて、第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、例えば亀裂量が最適値±5μm程度以内である場合に第三加工条件が適正であると判定してもよい。また、制御部8は、ウエハ20内部における亀裂14の凹凸の有無を特定し、該凹凸の有無に基づいて第一加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、ウエハ20内部において亀裂14の凹凸が無い場合(例えば2μm以下である場合)に第三加工条件が適正であると判定してもよい。
【0082】
制御部8は、改質層位置(改質領域123a,123bの位置)を特定し、該位置に基づいて、第三加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、例えば改質層位置が最適値±4μm程度以内である場合に第三加工条件が適正であると判定してもよい。
【0083】
(全SD層形成処理及び第二加工条件の適否を判定する処理)
制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることにより、ウエハ20の内部に、外側SD層(改質領域121,122)が形成されると共に、ウエハ20の厚さ方向における改質領域121及び改質領域122の間に内側SD層(改質領域123a,123b)が形成されるように設定された第二加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する全SD層形成処理を行う。制御部8は、例えばディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだ第二加工条件を仮決定する。加工条件とは、例えばレーザ光のパルスエネルギー(出力及び周波数調整を含む)、収差補正、パルス幅、パルスピッチ、改質層数、集光点数等である。ディスプレイ150(
図25参照)によって受付けられる情報とは、例えばウエハ厚さ、最終的な加工目標(フルカット等)等である。
【0084】
制御部8は、全SD層形成処理の後において、撮像ユニット4から出力される信号(すなわち撮像結果)に基づいて、外側SD層(改質領域121,122)及び内側SD層(123a,123b)に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、全SD層形成のための第二加工条件(仮決定している第二加工条件)が適正か否かを判定する。制御部8は、改質領域121,122,123a,123bに係る状態として、改質領域121,122,123a,123bの状態及び改質領域121,122,123a,123bから延びる亀裂14の状態を特定する。
【0085】
第二加工条件に関する判定方法の詳細について、
図18(c)及び
図19(c)を参照して説明する。制御部8は、撮像ユニット4によって裏面21b側から各点に焦点Fが合わせられて取得された内部観察結果に基づき、第二加工条件の適否を判定する。制御部8は、
図18(c)に示されるように、内部観察結果に基づき、裏面21bに亀裂14が伸展しているか否か(HC状態であるか否か)の情報、裏面21bにおける亀裂14の蛇行量(HC蛇行量)、改質層及び亀裂先端の鮮明度、表面21aに亀裂14が伸展しているか否か(BHC状態であるか否か)の情報等を特定する。
図19(c)は、外側SD層及び内側SD層を形成した場合のウエハ20の内部観察結果(入射面である裏面21bの観察結果を含む)の一部を示している。
図19(c)の上端は、入射面である裏面21bの観察結果を示している。
図19(c)の上段に示されるように、裏面21bにおける亀裂14の蛇行量(HC蛇行量)が特定される。ここでの蛇行量とは、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向(裏面21bに交差する方向)への亀裂14の蛇行の幅である。
図19(c)の左図では、HC蛇行量が2μm以下である例を示しており、
図19(c)の右図では、HC蛇行量が5.2μmである例を示している。
図19(c)の中段は、ウエハ20の内部観察結果を示している。
図19(c)の中段に示されるように、観察結果に基づき、ウエハ20の内部において改質層及び亀裂先端が鮮明であるか不鮮明であるかを区別することができる。
図19(c)の下段は、ウエハ20の内部観察結果を示している。
図19(c)の下段に示されるように、観察結果に基づき、表面21aにまで亀裂14が到達しており亀裂14の先端が観察されない場合(BHC状態である場合)と表面21aにまで亀裂14が到達しておらず亀裂14の先端が観察される場合(ST状態である場合)とを区別することができる。
【0086】
制御部8は、裏面21bに亀裂14が伸展しているHC状態であるか否かを特定し、HC状態であるか否かに基づいて、第二加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、HC状態である場合に第二加工条件が適正であると判定してもよい。また、制御部8は、表面21aに亀裂14が伸展しているBHC状態であるか否かを特定し、BHC状態であるか否かに基づいて、第二加工条件が適正か否かを判定してもよい。具合的には、制御部8は、BHC状態である場合に第二加工条件が適正であると判定してもよい。これらの判定は、「最終的にフルカット状態とする場合において、全SD層が形成されている状態で亀裂14が裏面21b(又は表面21a)に到達している場合には、第二加工条件の分断力が適正である」との判断によるものである。
【0087】
制御部8は、裏面21bにおける亀裂14の蛇行量(HC蛇行量)を特定し、HC蛇行量に基づいて、第二加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、例えばHC蛇行量が5μm程度以内である場合に第二加工条件が適正であると判定してもよい。
【0088】
制御部8は、ウエハ20内部における改質層及び亀裂先端の鮮明度を特定し、鮮明度に基づいて、第二加工条件が適正か否かを判定してもよい。具体的には、制御部8は、改質層及び亀裂先端の少なくともいずれか一方が鮮明である場合に第二加工条件が適正でないと判定してもよい。当該判定は、「フルカット状態とすべきであるのに、改質層又は亀裂先端が鮮明である場合にはフルカット状態となっておらず、第二の加工条件の分断力が弱すぎる」との判断によるものである。
【0089】
(内部観察結果に基づく判定に係るアルゴリズム)
上述した、内部観察結果に基づく各種判定に関して、亀裂14を検出(特定)するアルゴリズム、及び、改質領域に係るだ痕を検出(特定)するアルゴリズムについて、詳細に説明する。
【0090】
図20及び
図21は、亀裂検出について説明する図である。
図20においては、内部観察結果(ウエハ20内部の画像)が示されている。制御部8は、
図20(a)に示されるようなウエハ20内部の画像について、まず、直線群140を検出する。直線群140の検出には、例えばHough変換又はLSD(Line Segment Detector)等のアルゴリズムが用いられる。Hough変換とは、画像上の点に対してその点を通る全ての直線を検出し特徴点をより多く通る直線に重み付けしながら直線を検出する手法である。LSDとは、画像内の輝度値の勾配と角度を計算することにより線分となる領域を推定し、該領域を矩形に近似することにより直線を検出する手法である。
【0091】
つづいて、制御部8は、
図21に示されるように直線群140について亀裂線との類似度を算出することにより、直線群140から亀裂14を検出する。亀裂線は、
図21の上図に示されるように、線上の輝度値に対しY方向に前後が非常に明るいという特徴を持つ。このため、制御部8は、例えば、検出した直線群140の全ての画素の輝度値を、Y方向の前後と比較し、その差分が前後とも閾値以上である画素数を類似度のスコアとする。そして、検出した複数の直線群140の中で最も亀裂線との類似度のスコアが高いものをその画像における代表値とする。代表値が高いほど、亀裂14の存在する可能性が高いという指標になる。制御部8は、複数の画像における代表値を比較することにより、相対的にスコアが高いものを亀裂画像候補とする。
【0092】
図22~
図24は、だ痕検出について説明する図である。
図22においては、内部観察結果(ウエハ20内部の画像)が示されている。制御部8は、
図22(a)に示されるようなウエハ20の内部の画像について、画像内のコーナー(エッジの集中)をキーポイントとして検出し、その位置、大きさ、方向を検出して特徴点250を検出する。このようにして特徴点を検出する手法としては、Eigen、Harris、Fast、SIFT、SURF、STAR、MSER、ORB、AKAZE等が知られている。
【0093】
ここで、
図23に示されるように、だ痕280は、円形や矩形等の形が一定間隔で並ぶため、コーナーとしての特徴が強い。このため、画像内の特徴点250の特徴量を集計することにより、だ痕280を高精度に検出することが可能になる。
図24に示されるように、深さ方向にシフトして撮像した画像毎の特徴量合計を比較すると、改質層毎の亀裂列量を示すような山の変化が確認できる。制御部8は、当該変化のピークをだ痕280の位置として推定する。このように特徴量を集計することによって、だ痕位置だけでなくパルスピッチを推定することも可能になる。
【0094】
(加工条件の決定に係る処理)
制御部8は、上述した各加工条件の判定結果に基づいて、最終的な加工条件を決定する。制御部8は、外側SD層の形成に係る第一加工条件(仮決定している第一加工条件)について、該第一加工条件で形成された外側SD層の状態に基づく該第一加工条件の判定結果に基づき、該第一加工条件が適正でない場合には第一加工条件を変更する。制御部8は、第一加工条件を変更する場合には、判定結果に応じて第一加工条件を補正する補正処理(第七処理)を実行する。補正処理では、例えばレーザ光のパルスエネルギー(出力及び周波数調整を含む)、収差補正、パルス幅、パルスピッチ、改質層数、集光点数等が補正された新たな第一加工条件が設定される。制御部8は、新たに設定した第一加工条件で再度加工を行い、該第一加工条件の判定結果に基づいて、該第一加工条件を外側SD層の加工条件とするか否かを決定する。制御部8は、第一加工条件が適正な加工条件となるまで、補正処理、再加工、判定を繰り返す。
【0095】
同様に、制御部8は、内側SD層の形成に係る第三加工条件(仮決定している第三加工条件)について、該第三加工条件で形成された内側SD層の状態に基づく該第三加工条件の判定結果に基づき、該第三加工条件が適正でない場合には該第三加工条件を変更する。制御部8は、第三加工条件を変更する場合には、判定結果に応じて第三加工条件を補正する補正処理(第七処理)を実行する。制御部8は、新たに設定した第三加工条件で再度加工を行い、該第三加工条件の判定結果に基づいて、該第三加工条件を内側SD層の加工条件とするか否かを決定する。制御部8は、第三加工条件が適正な加工条件となるまで、補正処理、再加工、判定を繰り返す。
【0096】
制御部8は、上述した処理によって最適化された第一加工条件及び第三加工条件を考慮して第二加工条件(外側SD層及び内側SD層の形成に係る加工条件)を仮決定する。そして、制御部8は、該第二加工条件で形成された外側SD層及び内側SD層の状態に基づく該第二加工条件の判定結果に基づき、該第二加工条件が適正でない場合には該第二加工条件を変更する。制御部8は、第二加工条件を変更する場合には、判定結果に応じて第二加工条件を補正する補正処理(第七処理)を実行する。制御部8は、第二加工条件を変更する場合には、判定結果に応じて、第二加工条件のうち外側SD層の形成に係る加工条件を変更するのか、或いは、内側SD層の形成に係る加工条件を変更するのかを決定する。制御部8は、新たに設定した第二加工条件で再度加工を行い、該第二加工条件の判定結果に基づいて、該第二加工条件を最終的な加工条件とするか否かを決定する。制御部8は、第二加工条件が適正な加工条件となるまで、補正処理、再加工、判定を繰り返す。
【0097】
なお、加工条件導出処理においては、外側SD層に関する加工及び判定、内側SD層に関する加工及び判定、外側SD層及び内側SD層に関する加工及び判定を行って最終的な加工条件を導出するとして説明したがこれに限定されない。例えば、加工条件導出処理では、内側SD層単独での加工及び判定を行わずに、外側SD層に関する加工及び判定、並びに、外側SD層及び内側SD層に関する加工及び判定のみを行って、最終的な加工条件を導出してもよい。
【0098】
(加工条件導出処理に係る画面イメージ)
次に、加工条件導出処理に係るGUI(Graphical User Interface)の一例について、
図25~
図27を参照して説明する。以下では、外側SD層に関する加工及び判定、並びに、外側SD層及び内側SD層に関する加工及び判定のみを行って、最終的な加工条件を導出する例(内側SD層単独での加工及び判定を行わない例)を説明する。
図25~
図27は、加工条件導出処理に係るディスプレイ150の画面イメージである。
【0099】
図25は、ウエハ加工情報の設定画面(ユーザ入力受付画面)の一例である。
図25に示されるように、ディスプレイ150には、判定内容と、加工品質と、判定方法・基準とが表示されている。このうち、少なくとも判定内容の各項目については、ユーザ入力に基づき設定される。なお、判定内容の各項目については固定値とされていてもよい。また、加工品質及び判定方法・基準の各項目については、ユーザ入力に基づき設定されてもよいし、判定内容に設定された内容に基づき自動的に設定されてもよい。
【0100】
判定内容には、実行される判定に係る情報が表示されており、「FC条件出し」「ウエハ厚さ」が表示されている。「FC条件出し」とは、フルカット状態になると想定される改質領域が形成された後に、加工条件の判定が行われて加工条件が決定(導出)されることを示す情報である。
図25に示される例では、「FC条件出し」が「実行」とされている。「ウエハ厚さ」は、ウエハ20の厚さを示す情報である。「ウエハ厚さ」は、例えば複数の選択肢からユーザに選択されることにより入力される。
【0101】
加工品質には、加工後のウエハ20に求める品質が表示されており、「亀裂状態」「HC直進性」「端面凹凸幅」が表示されている。「亀裂状態」とは、フルカット状態又はST状態等の亀裂の情報である。「HC直進性」とは、HC蛇行量の情報である。「端面凹凸幅」とは、端面における亀裂の凹凸幅の情報である。
【0102】
判定方法・基準には、加工条件の判定処理における合格基準が表示されており、外側SD層の形成に係る第一加工条件の合格基準として、「裏面亀裂状態」「SD1(改質領域121)亀裂量」「SD2(改質領域122)亀裂量)」「SD1下端位置」「SD2下端位置」「端面凹凸幅」「黒スジ」「表面亀裂状態」の合格基準が表示される。第一加工条件の合格基準であるので、「裏面亀裂状態」はST、「黒スジ」は有、「表面亀裂状態」はSTが設定される。また、外側SD層及び内側SD層の形成に係る第二加工条件の合格基準として、「裏面亀裂状態」「HC蛇行量」「改質層撮像状態」「表面亀裂状態」「亀裂状態」の合格基準が表示される。第二加工条件の合格基準であるので、「裏面亀裂状態」はHC、「改質層撮像状態」(改質層の鮮明度)は不鮮明、「表面亀裂状態」はBHC、「亀裂状態」(総合的な亀裂状態)はFC(フルカット)が設定される。
【0103】
図26は、外側SD層の加工結果画面の一例である。加工結果確認画面は、加工した後の判定結果(ここでは第一加工条件の判定結果)を表示すると共に、第一加工条件の補正に係るユーザ入力を受け付ける画面である。
図26に示される例では、ディスプレイ150に、判定内容と、加工品質と、判定結果とが表示されている。判定内容及び加工品質は、上述したウエハ加工情報の設定画面(
図25)において設定された情報である。詳細には、加工結果確認画面においては、ウエハ加工情報の設定画面(
図25)において設定された情報に加えて、判定内容の項目として加工位置(ここでは外側SD層)が表示されている。
【0104】
図26に示される例では、判定結果が表示される領域の左部分に、判定項目、基準(合格基準)、結果、合否が表示されている。また、判定結果が表示される領域の中央部分に、加工結果が基準値であると仮定した場合の外側SD層及び亀裂を描画した図(推定加工結果)と、実際の加工結果の外側SD層及び亀裂を描画した図とが表示されている。また、判定結果が表示される領域の右部分に、SD1(改質領域121)から裏面21b側に延びる亀裂14である上亀裂の先端観察結果と、SD1(改質領域121)から表面21a側に延びる亀裂14である下亀裂の先端観察結果とが表示されている。いま、SD1亀裂量及びSD2亀裂量の項目において、合格基準である60±5μmを満たしておらず、具体的には合格基準よりも亀裂量が小さく、不合格(合否NG)となっている。この場合、第一加工条件の補正が推奨されるため、「再加工を奨励します。実施しますか?」とのメッセージが表示され、ユーザ入力に応じて、第一加工条件の補正及び再加工を実施することが可能になっている。ここでは、第一加工条件の補正及び再加工が実施された後に、第一加工条件が合格基準を満たし、その後、外側SD層及び内側SD層の加工が行なわれて、
図27に示される、外側SD層及び内側SD層の加工結果画面が表示されたとする。
【0105】
図27は、外側SD層及び内側SD層の加工結果画面の一例である。加工結果確認画面は、加工した後の判定結果(ここでは第二加工条件の判定結果)を表示すると共に、第二加工条件の補正に係るユーザ入力を受け付ける画面である。
図27に示される例では、ディスプレイ150に、判定内容と、加工品質と、判定結果とが表示されている。
【0106】
図27に示される例では、判定結果が表示される領域の左部分に、判定項目、基準(合格基準)、結果、合否が表示されている。また、判定結果が表示される領域の中央部分に、加工結果が基準値であると仮定した場合の外側SD層及び内側SD層並びにその亀裂を描画した図と、実際の加工結果の外側SD層及び内側SD層並びにその亀裂を描画した図とが表示されている。また、判定結果が表示される領域の右部分に、裏面21bにおけるHC直進性(HC蛇行量)及び亀裂14の端面凹凸幅の観察結果が表示されている。いま、HC蛇行量の項目において、合格基準である5μm以内を満たしておらず、不合格(合否NG)となっている。この場合、第二加工条件の補正が推奨されるため、「外側SD層の再加工を奨励します。実施しますか?」とのメッセージが表示される。ユーザは、不合格の内容に応じて、外側SD層に係る第一加工条件の補正及び再加工を行うか、内側SD層に係る第三加工条件の補正及び再加工を行うかを選択可能になっている。そして、ユーザ入力に応じて、第一加工条件の補正及び再加工、或いは、第三加工条件の補正及び再加工を実施することが可能になっている。
【0107】
[レーザ加工方法]
本実施形態のレーザ加工方法について、
図28及び
図29を参照して説明する。
図28及び
図29は、いずれもレーザ加工方法のフローチャートである。
図28は、外側SD層に関する加工及び判定、内側SD層に関する加工及び判定、外側SD層及び内側SD層に関する加工及び判定を行って最終的な加工条件を導出する処理を示している。
図29は、内側SD層単独での加工及び判定を行わずに、外側SD層に関する加工及び判定、並びに、外側SD層及び内側SD層に関する加工及び判定のみを行って、最終的な加工条件を導出する処理を示している。
【0108】
図28に示される処理では、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受け付ける(ステップS1)。具体的には、ディスプレイ150は、少なくともウエハ厚さの情報の入力を受け付ける。これにより、外側SD層及び内側SD層を加工してフルカット状態とする加工方法について、外側SD層の形成に係る第一加工条件、及び、内側SD層の形成に係る第三加工条件が自動で仮決定される。
【0109】
つづいて、制御部8は、仮決定した第一加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20に外側SD層を加工する(ステップS2)。つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS3)。そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS4)。
【0110】
つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、外側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、第一加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS5)。第一加工条件が適正でない場合には、制御部8は、新たな第一加工条件の入力を受け付け(ステップS1)、再度ステップS2以降の処理が実施される。一方で、第一加工条件が適正である場合には、制御部8は、該第一加工条件を第一加工条件として本決定する。つづいて、ステップS6の処理が実行される。
【0111】
ステップS6の処理では、仮決定した第三加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20に内側SD層を加工する(ステップS6)。つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS7)。そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS8)。
【0112】
つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、内側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、第三加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS9)。第三加工条件が適正でない場合には、制御部8は、新たな第三加工条件の入力を受け付け(ステップS10)、再度ステップS6以降の処理が実施される。一方で、第三加工条件が適正である場合には、制御部8は、該第三加工条件を第三加工条件として本決定する。つづいて、ステップS11の処理が実行される。
【0113】
ステップS11の処理では、本決定された第一加工条件及び第三加工条件に基づき仮決定される第二加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20に外側SD層及び内側SD層を加工する(ステップS11)。つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS12)。そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS13)。
【0114】
つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、外側SD層及び内側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、第二加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS14)。第二加工条件が適正でない場合には、制御部8は、判定結果に応じて外側SD層の形成に係る第一条件を再調整するか(或いは内側SD層の形成に係る第三加工条件を再調整するか)を判定する(ステップS15)。制御部8は、ユーザ入力に応じて当該判定を行ってもよい。第一加工条件を再調整する場合には、制御部8は、新たな第一加工条件の入力を受け付け(ステップS1)、再度ステップS2以降の処理が実施される。第三加工条件を再調整する場合には、制御部8は、新たな第三加工条件の入力を受け付け(ステップS16)、再度ステップS6以降の処理が実施される。一方で、第二加工条件が適正である場合には、制御部8は、該第二加工条件を最終的な加工条件として本決定する。
【0115】
図29に示される処理では、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受け付ける(ステップS21)。具体的には、ディスプレイ150は、少なくともウエハ厚さの情報の入力を受け付ける。これにより、外側SD層及び内側SD層を加工してフルカット状態とする加工方法について、外側SD層の形成に係る第一加工条件が自動で仮決定される。
【0116】
つづいて、制御部8は、仮決定した第一加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20に外側SD層を加工する(ステップS22)。つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS23)。そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS24)。
【0117】
つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、外側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、第一加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS25)。第一加工条件が適正でない場合には、制御部8は、新たな第一加工条件の入力を受け付け(ステップS1)、再度ステップS2以降の処理が実施される。一方で、第一加工条件が適正である場合には、制御部8は、該第一加工条件を第一加工条件として本決定する。つづいて、ステップS26の処理が実行される。
【0118】
ステップS26の処理では、本決定された第一加工条件に基づき仮決定される第二加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20に外側SD層及び内側SD層を加工する(ステップS26)。つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS27)。そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS28)。
【0119】
つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、外側SD層及び内側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、第二加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS29)。第二加工条件が適正でない場合には、制御部8は、新たな第一加工条件の入力を受け付け(ステップS1)、再度ステップS2以降の処理が実施される。一方で、第二加工条件が適正である場合には、制御部8は、該第二加工条件を最終的な加工条件として本決定する。
【0120】
[作用効果]
次に、本実施形態に係るレーザ加工装置1の作用効果について説明する。
【0121】
本実施形態に係るレーザ加工装置1は、ウエハ20の裏面21b側からウエハ20にレーザ光を照射するレーザ照射ユニット3と、ウエハ20に対して透過性を有する光を出力し、ウエハ20を伝搬した光を検出する撮像ユニット4と、制御部8と、を備え、制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に改質領域121と改質領域122とが形成されるように設定された第一加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する第一処理と、第一処理の後において、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、改質領域121,122に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第一加工条件が適正か否かを判定する第二処理と、ウエハ20にレーザ光が照射されることにより、ウエハ20の内部に、改質領域121,122が形成されると共に、ウエハ20の厚さ方向における改質領域121,122の間に改質領域123a,123bが形成されるように設定された第二加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する第三処理と、第三処理の後において、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、改質領域121,122,123a,123bに係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第二加工条件が適正か否かを判定する第四処理と、を実行するように構成されている。
【0122】
本実施形態に係るレーザ加工装置1では、第三処理において、第二加工条件に基づいて、ウエハ20の厚さ方向における外側SD層(改質領域121,122)及びその間の内側SD層(改質領域123a,123b)が形成され、第四処理において、撮像ユニット4から出力される信号に基づき外側SD層及び内側SD層に係る状態が特定され、特定結果に基づき、第二加工条件が適正か否かが判定される。このように、外側SD層及び内側SD層が実際に形成されるように加工されて、加工後の外側SD層及び内側SD層の状態に基づき加工条件の適否が判定されることにより、最終的なウエハ20の加工状態に基づいて加工条件の適否が判定されることになる。このことで、加工条件の適否が精度良く判定され、加工後のウエハ20の品質を担保することができる。更に、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、第一処理において、第一加工条件に基づいて外側SD層のみが形成され、第二処理において、撮像ユニット4から出力される信号に基づき外側SD層に係る状態が特定され、特定結果に基づき第一加工条件が適正か否かが判定されている。例えば、最終的なウエハ20の加工状態においてフルカット状態(改質領域から延びる亀裂がウエハ20の両端面にまで延びた状態)に加工される場合等においては、最終的なウエハ20の加工状態から得られる改質領域に係る情報が少なく、加工条件の適否を高精度に判定できないおそれがある。この点、一部の改質領域(外側SD層)のみが形成された状態において、一部の改質領域に係る情報に基づき、当該一部の改質領域の形成に係る加工条件(第一加工条件)の適否が判定されることにより、最終的なウエハ20の加工状態よりも多くの情報(改質領域に係る情報)が得られるウエハ20の加工状態に基づいて、より高精度に加工条件の適否を判定することができる。なお、発明者らの知見によれば、ウエハ20の厚さ方向において外側SD層及び内側SD層が形成される場合においては、外側SD層に係る状態が、加工後のウエハ20の品質により影響を及ぼすと考えられる。この点、第二処理において、外側SD層の形成に係る加工条件(第一加工条件)の適否が判定されることによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0123】
制御部8は、改質領域に係る状態として、改質領域の状態及び改質領域から延びる亀裂14の状態の少なくともいずれか一方を特定する。これにより、加工後のウエハ20の状態が適切に特定され、加工条件の適否をより高精度に判定することができる。このことで、より好適にウエハ20の品質を担保することができる。
【0124】
制御部8は、改質領域の位置を特定し、該位置に基づいて、加工条件が適正か否かを判定する。加工条件が適切でない場合には、改質領域の位置が所望の位置とならない場合がある。改質領域が所望の位置となっているか否かに応じて加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0125】
制御部8は、裏面21b及び表面21aの少なくともいずれか一方に亀裂14が伸展しているか否かを特定し、該伸展しているか否かに基づいて、加工条件が適正か否かを判定する。これにより、例えば最終的なウエハ20の加工状態においてフルカット状態に加工したい場合において、外側SD層のみが形成されている第二処理の段階で裏面21b及び表面21aに亀裂が伸展していないこと、並びに、外側SD層及び内側SD層が形成されている第四処理の段階で裏面21b及び表面21aに亀裂14が伸展していることを判定すること等により、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0126】
制御部8は、亀裂14の伸展量を特定し、該伸展量に基づいて、加工条件が適正か否かを判定する。加工条件が適切でない場合には、亀裂14の伸展量が所望の長さとならない場合がある。亀裂14の伸展量から加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0127】
制御部8は、ウエハ20の厚さ方向に交差する方向への亀裂14の蛇行の幅を特定し、該蛇行の幅に基づいて、加工条件が適正か否かを判定する。加工条件が適切でない場合には、亀裂14の蛇行の幅が大きく場合がある。亀裂14の蛇行の幅から加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0128】
制御部8は、互いに異なる改質領域から延びる亀裂14同士が繋がっているか否かを特定し、該繋がっているか否かに基づいて、加工条件が適正か否かを判定する。加工条件が適切でない場合には、亀裂14同士を繋げたくない場合に亀裂14同士が繋がることや、亀裂14同士を繋げたい場合に亀裂14同士が繋がらないことがある。亀裂14同士が繋がっているか否かに応じて加工条件の適否が判定されることにより、加工条件を適切に判定することができる。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0129】
制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に内側SD層が形成されるように設定された第三加工条件でレーザ照射ユニット3を制御する第五処理と、第五処理の後において、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、内側SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、第三加工条件が適正か否かを判定する第六処理と、を更に実行するように構成されている。このような構成によれば、内側SD層のみが形成された状態において、内側SD層に係る情報に基づき、当該内側SD層の形成に係る加工条件(第三加工条件)の適否が判定される。外側SD層及び内側SD層が形成される場合、外側SD層のみが形成される場合に加えて、内側SD層のみが形成される場合についても、改質領域に係る情報から加工条件の適否が判定されることにより、より高精度に加工条件の適否を判定することができる。
【0130】
制御部8は、第一加工条件を導出するに際して、裏面21b及び表面21aの少なくともいずれか一方に亀裂14が伸展している場合に、第一加工条件が適正でないと判定し、第三加工条件を導出するに際して、裏面21b及び表面21aの少なくともいずれか一方に亀裂14が伸展している場合に、第三加工条件が適正でないと判定してもよい。これにより、最終的な加工状態よりも前の加工状態において、確実に、ST状態(内部観察しやすい状態)とすることができる。このことで、加工状態に係る情報を適切且つ豊富に得ることができる。また、仮に最終加工状態がフルカット状態とされる場合であっても、それよりも前の状態(その後にまだ加工される状態)において亀裂14が裏面21b又は表面21aに到達している場合には、最終的な加工状態においてチップ品質及び分割性が悪化すると考えられる。このため、最終的な加工状態よりも前の加工状態においてST状態であることを、加工条件が適切であるとされる条件とすることによって、チップ品質及び分割性を担保することができる。
【0131】
制御部8は、加工条件が適正でないと判定した場合において、該加工条件の判定結果に応じて、加工条件を補正する第七処理を更に実行するように構成されている。このような構成によれば、判定結果に基づき加工条件が補正され、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0132】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、実施形態では、加工条件を導出する対象の加工方法について、外側SD層が形成された後に内側SD層が形成されるとして説明したがこれに限定されず、加工条件を導出する対象の加工方法においては、外側SD層及び内側SD層が同時に形成されてもよいし、内側SD層が外側SD層よりも先に形成されてもよい。
【0133】
また、例えばウエハ20に対して、第1方向(X方向)に沿ってレーザ光を照射し改質領域等を形成した後に、第1方向とは異なる第2方向(Y方向)に沿って、既に形成されている改質領域を跨ぐようにレーザ光を照射して改質領域を形成する場合がある。このような場合には、上述したような、内部観察結果(改質層位置、黒スジ有無)や裏表面観察結果(HC蛇行/BHC蛇行)に基づいて、X方向の加工(先加工)とY方向の加工(後加工)とで異なる加工条件を導出してもよい。具体的には、例えばX方向及びY方向でチップ辺の長さが異なる場合(例えば0.2mm×15mm等)、X方向及びY方向でユーザが求める品質が異なる場合(例えばX方向は亀裂の蛇行2μm以内、Y方向は亀裂の蛇行10μm以内等)、RF-ID等、チップサイズが非常に小さく先加工か後加工かで品質に差が生じやすい場合等において、X方向の加工(先加工)とY方向の加工(後加工)とで異なる加工条件を導出してもよい。
【0134】
(内部観察に関する設定の調整)
また、例えば、レーザ加工装置は、ウエハに対する内部観察時の設定をより詳細に調整してもよい。
図30は、加工方法による撮像区間の違いを説明する図である。
図30(a)は、フルカット加工を行う場合の撮像区間を示しており、
図30(b)はそれ以外の加工(例えばBHC加工)を行う場合の撮像区間を示している。いずれの加工においても、表面21aに関して対象な仮想焦点についても撮像を行っている。すなわち、
図30(a),(b)のウエハにおいて下半分のSD層は仮想焦点に係る領域である。
図30に示されるように、フルカット加工を行う場合には、ウエハ20の厚さ方向におけるトータルの撮像区間が広くなる。また、フルカット加工を行う場合には、各改質領域(SD1~SD4)の間隔が狭くなり亀裂14の伸展量も小さくなる。このため、フルカット加工を行う場合には、ウエハ20の厚さ方向において内部観察に関する設定をより詳細に調整する等を実施しなければ、改質領域及び亀裂を鮮明に観察することができないことが考えられる。
【0135】
具体的には、制御部8は、フルカット加工を行う場合においても改質領域等を鮮明に観察するために、以下を行う。
【0136】
第一に、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正(各厚さ方向に最適な収差補正)が行われるように撮像ユニット4を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されている。制御部8は、例えば加工条件から推定されるSD加工位置(改質領域形成位置)に応じた各領域について、空間光変調器32又は対物レンズ43の補正環43aを調整することにより、最適な収差補正を実施する。
【0137】
第二に、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定(例えば一定若しくは最適)の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されている。内部観察においては、観察深さが深くなるほど、十分な輝度を確保するために多量の光量が必要になる。すなわち、深さ毎に必要な光量が変化する。そのため、観察前又はレーザ装置立ち上げ時、デバイス変更時等の度に、深さ毎に最適な輝度値になるように必要な光量を把握する必要がある。輝度キャリブレーション処理では、厚さ方向における各位置を観察する際の光量を決定し、各位置の観察時において、当該光量で撮像ユニット4から光が出力されるように設定される。
【0138】
輝度キャリブレーション処理では、
図31に示されるように、最初に輝度キャリブレーションに係る入力が受け付けられる(ステップS71)。当該輝度キャリブレーションに係る入力とは、例えば加工条件の導出に関して入力されるウエハ厚さの入力等であってもよい。つづいて、制御部8は、輝度キャリブレーションに係る入力(例えばウエハ厚さ)に応じて、キャリブレーション実施区間を決定する。ここでのキャリブレーション実施区間とは、例えば輝度キャリブレーションを実施する複数のZHの情報である。なお、キャリブレーション実施区間はユーザが決定して入力してもよい。つづいて、撮像ユニット4による撮像位置が、キャリブレーション実施区間の1つのZHに設定される(ステップS73)。そして、当該ZHにおいて撮像される輝度が最適な輝度になるように光源41の光量が調整され(ステップS74)、当該ZHと光量とが対応付けて記憶される(ステップS75)。光源41の調整は開口絞り等が利用される。全てのZHについて光量の調整が完了するまで、ステップS73~S75の処理が実施される。そして、このようにして調整された光量が、各位置の観察時において撮像ユニット4の光源41から出力されることにより、各位置の観察を適切に輝度で行うことができる。
【0139】
第三に、制御部8は、改質領域の加工前において、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように撮像ユニット4を制御すると共に、改質領域の加工後において、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されている。この場合、制御部8は、当該差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定する。
【0140】
シェーディング補正処理では、
図32(a)に示されるように、SD加工(改質領域の加工)の前に、各内部観察位置(判定位置)におけるシェーディング用画像が取得される。そして、SD加工が行われて、各内部観察位置(判定位置)について、
図32(b)に示されるようなSD加工後の画像が取得される。そして、各内部観察位置について、SD加工後の画像とシェーディング用画像との差分データ(
図32(c)参照)が取得される(シェーディング補正が実施される)。なお、SD加工後の画像とシェーディング用画像との位置ずれがある場合には、ずれ量に応じた補正を実施してもよい。シェーディング補正によってシェーディングされるものは、例えばデバイスパターン、点欠陥、画面の明るさのムラ等である。
【0141】
上述した収差補正処理、輝度キャリブレーション処理、シェーディング補正処理を実施する場合の、レーザ加工方法(加工条件導出処理)について、
図33を参照して説明する。なお、
図33においては、加工処理及び判定処理について簡略化して記載している(第一加工条件に係る処理、第二加工条件に係る処理等を区別することなく記載している)。
図33に示されるように、最初に、ディスプレイ150がウエハ加工情報のユーザ入力を受け付ける(ステップS51)。具体的には、ディスプレイ150は、少なくともウエハ厚さの情報の入力を受け付ける。これにより、加工条件が自動で仮決定される。
【0142】
つづいて、制御部8は、輝度キャリブレーション処理を実施する(ステップS52)。具体的には、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定(例えば一定若しくは最適)の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4に設定を行う。
【0143】
つづいて、制御部8は、シェーディング補正用の画像(シェーディング用画像)を取得する(ステップS53)。具体的には、制御部8は、SD加工前の各内部観察位置における画像をシェーディング用画像として取得する。
【0144】
つづいて、制御部8は、加工条件に基づいてレーザ照射ユニット3を制御することにより、ウエハ20にSD層を加工する(ステップS54)。つづいて、制御部8は、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正を実施する(ステップS55)。制御部8は、例えば加工条件から推定されるSD加工位置(改質領域形成位置)に応じた各領域について、空間光変調器32又は対物レンズ43の補正環43aを調整することにより、最適な収差補正を実施する。
【0145】
つづいて、撮像ユニット4によって、加工されたウエハ20が撮像される(ステップS56)。制御部8は、シェーディング補正を実施する(ステップS57)。具体的には、制御部8は、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを取得する。
【0146】
そして、制御部8は、ディスプレイ150に撮像結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS58)。つづいて、制御部8は、撮像結果に基づいて、SD層に係る状態を特定し、特定した情報に基づき、加工が適正であるか(すなわち、加工条件が適正であるか)否かを判定する(ステップS59)。ここでの判定処理については、制御部8は、シェーディング補正後の差分データを用いて行う。ステップS59において加工条件が適正でない場合には、制御部8は新たな加工条件の入力を受け付け、再度加工処理が実施される。この場合、
図33に示されるように、再度輝度キャリブレーション処理(ステップS52)から実施されてもよいし、SD加工(ステップS54)から実施されてもよい。一方で、加工条件が適正である場合には、制御部8は、該加工条件を加工条件として本決定し処理が終了する。
【0147】
以上のように、制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について所定の輝度で撮像ユニット4による撮像が行われるよう、各領域のウエハ20の厚さ方向における位置に応じた光量で撮像ユニット4から光が出力されるように、撮像ユニット4を制御する輝度キャリブレーション処理を更に実行するように構成されている。このような構成によれば、ウエハ20の厚さ方向(深さ方向)における各撮像領域毎に一定若しくは最適な輝度になるように、撮像ユニット4の光量を決定することができる。これにより、各改質領域に係る状態を適切に特定することができる。
【0148】
制御部8は、改質領域の加工前において、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域についてシェーディング用画像を撮像するように撮像ユニット4を制御すると共に、改質領域の加工後において、撮像ユニット4により撮像された各領域の画像と対応する領域のシェーディング用画像との差分データを特定するシェーディング補正処理を更に実行するように構成されており、判定処理では、差分データに基づき、改質領域に係る状態を特定する。シェーディング補正処理によって取得される差分データは、デバイスパターンや点欠陥、画面の明るさのムラ等のノイズが除去された画像データであり、観察したい改質領域及び亀裂状態等のみの画像データである。このような差分データに基づき改質領域に係る状態が特定されることにより、加工後のウエハ20の状態が適切に特定される。これによって、より好適に加工後のウエハ20の品質を担保することができる。
【0149】
制御部8は、撮像ユニット4により撮像が行われるウエハ20の厚さ方向における各領域について、ウエハ20の厚さ方向における位置に応じた収差補正が行われるように撮像ユニット4を制御する収差補正処理を更に実行するように構成されている。例えばフルカット加工が行われる場合には、各改質領域の間隔が狭く、また、亀裂の伸展量も小さいことから、ウエハ20の厚さ方向における各位置毎に収差補正を加えなければ鮮明な観察ができない。この点、上述したように、ウエハ20の厚さ方向における各領域についてウエハ20の厚さに応じた収差補正が行われることにより、鮮明な観察が可能になり、改質領域に係る状態をより適切に特定することができる。
【0150】
図34は、収差補正処理、輝度値キャリブレーション処理、及びシェーディング補正処理を実施することによる効果について説明する図である。
図34(a)はこれらの処理を何も施していない画像であり、
図34(b)は収差補正処理のみを施した画像であり、
図34(c)は収差補正処理及び輝度値キャリブレーション処理を施した画像であり、
図34(d)は収差補正処理、輝度値キャリブレーション処理、及びシェーディング補正処理を施した画像である。
図34に示されるように、これらの処理が施されることによって、画像における亀裂14等の鮮明度が大幅に向上していることがわかる。
【0151】
(加工条件導出処理の自動化について)
上述した実施形態では、ウエハ加工情報が入力されることにより、仮の加工条件が自動で導出され、該加工条件に基づき推定加工結果イメージが自動で導出されて表示されると共に実際の加工結果のイメージが表示され、実際の加工結果が推定加工結果に一致するまで加工条件の補正が行われて、最終的な加工条件が導出されるとして説明した。しかしながら、このような加工条件導出処理は、その全てが自動で実施されなくてもよい。
【0152】
例えば、加工条件導出処理を自動化するための第一ステップでは、ウエハ加工情報に基づく加工条件(仮の加工条件)について、ユーザが手動で生成し設定してもよい。そして、生成した加工条件での実際の加工結果を取得し、入力されたウエハ加工情報と手動で生成した加工条件との組み合わせ毎に、実際の加工結果と対応付けてデータベースに蓄積してもよい。
【0153】
さらに、第二ステップでは、上記データベースに蓄積した情報を学習することにより、ウエハ加工情報及び加工条件から、推定加工結果を導出するモデルを生成してもよい。そして、上述したデータベース内のデータを分析することにより、ウエハ加工情報及び加工条件から、最適な(一番精度のたかい)推定加工結果を導出する回帰モデルを生成してもよい。この場合の分析手法としては、多変量解析や機械学習を利用してもよい。具体的には、単回帰、重回帰、SGD回帰、Lasso回帰、Ridge回帰、決定木、サポートベクター回帰、ベイズ線形回帰、深層学習、k-近傍法等の分析手法を用いてもよい。
【0154】
さらに、第三ステップでは、入力されたウエハ加工情報から目標の加工結果を得るための最適な加工条件(レシピ)を自動導出する回帰モデルを生成してもよい。すなわち、入力されたウエハ加工情報に対して加工条件のパラメータを調整しながら当該回帰モデルに入力(シミュレーション)し、目標とする加工結果を出力する最適な加工条件を探索してもよい。このような最適化手法としては、例えばグリッドサーチ、ランダムサーチ、ベイズ最適化等の手法を用いることができる。
【0155】
さらに、第四ステップでは、シミュレーションした結果(推定加工結果)と実際の加工結果とを比較することにより、条件を修正する必要があった場合にはそのデータをデータベースに蓄積し、再度回帰モデルを生成(アクティブラーニング)することにより、実運用を通して回帰モデルの精度を向上させてもよい。このように、推定加工結果と実加工結果との差から加工条件を補正することにより、実加工結果をフィードバックして回帰モデルの精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0156】
1…レーザ加工装置、3…レーザ照射ユニット(照射部)、4…撮像ユニット(撮像部)、8…制御部。