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  • 特許-合成床構造およびその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】合成床構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/38 20060101AFI20241106BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E04B5/38 Z
E04B5/32 C
E04B5/32 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020076351
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173020
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078307(JP,A)
【文献】特開平11-257674(JP,A)
【文献】特開2009-030432(JP,A)
【文献】特開2020-105697(JP,A)
【文献】特開2019-031777(JP,A)
【文献】特開2012-122282(JP,A)
【文献】Rotho Blass CTC scew:Self-tapping screws for use in wood-concrete slab kits,Europian Technical Assessment ETA-19/0244 OF 2019/5/20,デンマーク,2019年05月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
E04B 1/99
E04B 5/00-5/48
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆材で被覆された鉄骨梁の上面の左側部分と右側部分とにコンクリートまたはモルタルを介して設けられ、木質材料により構成された木構造床と、前記木構造床の上面に設けられるとともに、前記鉄骨梁の上面の左側部分と右側部分の間の中間部分に設けられた鉄筋コンクリートスラブと、前記鉄骨梁の上面の前記中間部分に溶接され、前記鉄筋コンクリートスラブ内に向けて配置されたスタッドボルトと、前記木構造床と前記鉄筋コンクリートスラブとを接続するために前記木構造床の上面に打ち込まれた木ねじ状のビスと、前記木構造床と前記コンクリートまたはモルタルとを接続するために前記木構造床の下面に打ち込まれたビスとを備え、前記木構造床の下面に耐火被覆材が設けられていない合成床構造であって、
平常時の長期荷重は前記木構造床と前記鉄筋コンクリートスラブの合成床耐力により支持され、火災時の長期荷重は前記木構造床が燃え尽きた際の前記鉄筋コンクリートスラブの短期耐力で支持され、
前記鉄筋コンクリートスラブと前記木構造床の一体性は、前記鉄筋コンクリートスラブが前記ビスから引抜力を受けたときの前記鉄筋コンクリートスラブ内部のコーン破壊の破壊想定面の耐力によって確保されることを特徴とする合成床構造。
【請求項2】
前記木ねじ状のビスは、合成床構造の中央に向けて斜め方向に打ち込まれていることを特徴とする請求項1に記載の合成床構造。
【請求項3】
前記木構造床の内部には、配管設備が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の合成床構造。
【請求項4】
前記木構造床の下面には、前記木構造床の調湿機能を増大するための調湿機能増大手段、または、前記木構造床の下の空間の音響性能を調節するための音響性能調節手段の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の合成床構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載の合成床構造を施工する方法であって、
前記鉄骨梁の上に前記木構造床を載せて位置決めした後に、鉄筋コンクリートスラブ用の配筋を行うステップと、その後、コンクリートを打設することで合成床構造を構築し、この合成床構造と前記鉄骨梁とを一体化するステップとを有することを特徴とする合成床構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)や集成材などからなる構造木の表面をあらわしとするための合成床構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅などの耐火建築物において、CLTや集成材などからなる木構造床を採用する事例が知られている(例えば、特許文献1を参照)。CLTは、ひき板または小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ、または接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた木質板材であり、耐震・耐火性能が高いという特長がある。
【0003】
図6は、従来の木構造床を備えた合成床の一例である。図6(1)に示すように、従来の合成床は、CLTからなる木構造床1と、その上に設けられるトップコンクリート2と、その上に設けられるセルフレべリング材3と、木構造床1の下に設けられる強化石膏ボード等の耐火被覆材4とを備える。また、図6(2)に示すように、木構造床1とトップコンクリート2とをラグスクリュー5で接続する構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-78307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の合成床では、次のような問題がある。まず、木構造床1の下面を強化石膏ボード等の耐火被覆材4で覆う必要があるため、木構造床1の木の表面をあらわしとすることができない。また、耐火被覆材4で覆われるため、RC(鉄筋コンクリート)スラブに比べて床厚さが大きくなり、耐火被覆材4による材料コストが増大する。また、木構造床1のみでは遮音性能が低く、剛床とすることができないことから、遮音性能、剛床確保のために上面にトップコンクリート2を設けると床重量が増大する。このため、上記の問題を解決することのできる構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造木の表面をあらわしとすることができる合成床構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る合成床構造は、木質材料により構成された木構造床と、木構造床の上面に設けられる鉄筋コンクリートスラブと、木構造床と鉄筋コンクリートスラブとを接続するために木構造床の上面に打ち込まれた木ねじ状のビスとを備え、木構造床の下面に耐火被覆材が設けられていないことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の合成床構造は、上述した発明において、平常時の長期荷重は木構造床と鉄筋コンクリートスラブの合成床耐力により支持され、火災時の長期荷重は木構造床が燃え尽きた際の鉄筋コンクリートスラブの短期耐力で支持されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の合成床構造は、上述した発明において、ビスの頭部の形状は、鉄筋コンクリートスラブ内のコーン破壊を生じさせない形状であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の合成床構造は、上述した発明において、ビスは、合成床構造の中央に向けて斜め方向に打ち込まれていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の合成床構造は、上述した発明において、木構造床の内部には、配管設備が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の合成床構造は、上述した発明において、木構造床の下面には、木構造床の調湿機能を増大するための調湿機能増大手段、または、木構造床の下の空間の音響性能を調節するための音響性能調節手段の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る合成床構造の施工方法は、上述した合成床構造を施工する方法であって、梁の上に木構造床を載せて位置決めした後に、鉄筋コンクリートスラブ用の配筋を行うステップと、その後、コンクリートを打設することで合成床構造を構築し、この合成床構造と梁とを一体化するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る合成床構造によれば、木質材料により構成された木構造床と、木構造床の上面に設けられる鉄筋コンクリートスラブと、木構造床と鉄筋コンクリートスラブとを接続するために木構造床の上面に打ち込まれた木ねじ状のビスとを備え、木構造床の下面に耐火被覆材が設けられていないので、木構造床の木の表面をあらわしとすることができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、平常時の長期荷重は木構造床と鉄筋コンクリートスラブの合成床耐力により支持され、火災時の長期荷重は木構造床が燃え尽きた際の鉄筋コンクリートスラブの短期耐力で支持されるので、平常時と火災時において耐力を確保することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、ビスの頭部の形状は、鉄筋コンクリートスラブ内のコーン破壊を生じさせない形状であるので、鉄筋コンクリートスラブと木構造床との一体性を高めることができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、ビスは、合成床構造の中央に向けて斜め方向に打ち込まれているので、鉄筋コンクリートスラブと木構造床との一体性が高まり、構造耐力の向上またはビス数量の削減による施工性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、木構造床の内部には、配管設備が設けられているので、木構造床の下の空間の内装を簡素化することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、木構造床の下面には、木構造床の調湿機能を増大するための調湿機能増大手段、または、木構造床の下の空間の音響性能を調節するための音響性能調節手段の少なくとも一方が設けられているので、木構造床による調湿機能を増大し、または、木構造床の下の空間の音響性能を調節することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る合成床構造の施工方法によれば、上述した合成床構造を施工する方法であって、梁の上に木構造床を載せて位置決めした後に、鉄筋コンクリートスラブ用の配筋を行うステップと、その後、コンクリートを打設することで合成床構造を構築し、この合成床構造と梁とを一体化するステップとを有するので、構造木の表面をあらわしとする合成床構造を容易に施工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る合成床構造の実施の形態を示す図であり、(1)は平常時の側断面図、(2)は火災時の側断面図、(3)は(1)のA-A線に沿った平断面図である。
図2図2は、本発明に係る合成床構造の実施の形態の変形例1を示す図であり、(1)は側断面図、(2)は(1)のA-A線に沿った平断面図である。
図3図3は、本発明に係る合成床構造の実施の形態の変形例2を示す側断面図である。
図4図4は、本発明に係る合成床構造の実施の形態の変形例3、4を示す図であり、(1)は変形例3の側断面図、(2)は(1)のA-A線に沿った平面図、(3)は変形例4の側断面図、(4)は(3)のA-A線に沿った平面図である。
図5図5は、本発明に係る合成床構造の施工方法の実施の形態を示す側断面図であり、(1)は鉄骨梁に施工する場合、(2)はRC梁に施工する場合である。
図6図6は、従来の合成床構造の一例を示す側断面図であり、(1)は例1、(2)は例2である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る合成床構造およびその施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
[合成床構造]
まず、本発明に係る合成床構造の実施の形態について説明する。
図1(1)および(3)に示すように、本実施の形態に係る合成床構造10は、CLT12(木構造床)と、この上に配置されるRCスラブ14(鉄筋コンクリートスラブ)と、CLT12とRCスラブ14とを接続するためにCLT12の上面に打ち込まれた木ねじ状のビス16とを備える。CLT12の下面には耐火被覆材は設けられていない。このようにすれば、CLTの表面をあらわしとすることができる。
【0024】
RCスラブ14は、CLT12の上側に配筋された鉄筋18と、鉄筋18を埋設する態様で打設された板状のコンクリート20により構成される。鉄筋18は、図に示すような格子状配筋に限るものではなく、シングル配筋、千鳥配筋、ダブル配筋などの方法で配置することができる。
【0025】
RCスラブ14の厚さは、例えば、1時間耐火性能を確保する場合は80mm以上、2時間耐火性能を確保する場合は100mm以上に設定することが望ましい。CLTの厚さは、例えば、90mm以上に設定することが望ましい。火災時に熱を伝達する鉄筋18とビス16は、所定間隔(例えば30mm以上)離して配置することが耐火性能を確保する上で望ましい。なお、図1(3)の例では、鉄筋18およびビス16の平面での配置間隔がそれぞれ200mmである場合を想定している。
【0026】
本実施の形態では、平常時の長期荷重は、CLT12とRCスラブ14の合成床耐力により支持される。一方、火災時には、図1(2)に示すように、CLT12が燃え尽きた際のRCスラブ14の短期耐力で長期荷重は支持される。このため、平常時と火災時において耐力を確保することができる。
【0027】
ビス16は、木ねじ状であり、頭部22と軸部24と先端部26とを備える。頭部22は、図示しない工具と嵌合して回転力を受ける大径のものである。軸部24は、頭部22の下側に接続して下部の周面にねじ山が切られた小径の円柱状のものである。先端部26は、軸部22の下端に形成された円錐状の尖った部分であり、ここにも軸部22同様のねじ山が切られている。ビス16には、市販の木質構造用ビス(例えばパネリード(登録商標)等)を用いることができる。図6(2)のような従来の合成床の場合は、ラグスクリューを使用するため下穴処理が必要であるが、本実施の形態のように木ねじ状のビス16を用いれば、下穴処理が不要であるので施工性を向上することができる。
【0028】
ビス16の頭部22の形状は、RCスラブ14内でコーン破壊が生じにくい形状であることが望ましい。すなわち、合成床構造10を構築する場合には、CLT12にビス16を打込んだ後に、コンクリート20を打設し、RCスラブ14とCLT12を一体化する。RCスラブ14とCLT12の一体性は、コーン破壊面Sの耐力によって確保されるため、ビス16の頭部22は、コーン破壊を生じさせない形状であることが望ましい。RC部分のコーン破壊が生じないとすれば、RCスラブ14とCLT12が一体化されていると評価することができる。
【0029】
上記の構成によれば、CLT12の木の表面をあらわしとすることができる。また、CLT12とRCスラブ14の接合にビス16を用いるので、下穴処理が不要である。このため施工性を向上することができる。なお、図6(2)のような従来の合成床の場合は、ラグスクリューを使用するため下穴処理が必要であり、本実施の形態よりも施工性に劣る。
【0030】
また、CLT12は曲げ・せん断を受ける構造機能を有している。CLT12にビス16を打ち込むだけの単純な作業でRCスラブ14とCLT12を一体化することが可能である。
【0031】
また、本実施の形態の合成床構造10は、RCスラブのみからなる床構造に比べて床重量が減少するため、躯体数量の低減が可能である。また、RCスラブと同等程度の床厚さに設定することができるので、一定の遮音性能を確保でき、さらに剛床とすることができる。また、CLT12の下面に耐火被覆材を設けないので、耐火被覆材によるコスト増大のおそれがない。
【0032】
上記の実施の形態において、以下の変形例1~4に示される構成のいずれか一つまたは複数を備えてもよい。
【0033】
(変形例1)
まず、変形例1について説明する。
本変形例1は、図2に示すように、各ビス16の先端部26を、合成床構造10の中央に位置する鉛直線Cに向けて斜め方向に打ち込んだものである。具体的には、ビス16の下側に行くにしたがって鉛直線Cに近づくように斜め方向に打ち込む。こうすることで、RCスラブ14とCLT12との一体性が高まり、構造耐力の向上またはビス数量の削減による施工性の向上を図ることができる。なお、図2(2)の例では、鉄筋18の平面での配置間隔が200mmであり、ビス16の前後方向と左右方向の配置間隔がそれぞれ200mm、400mmである場合を想定している。
【0034】
(変形例2)
次に、変形例2について説明する。
本変形例2は、図3に示すように、CLT12の内部において奥行き方向に延びる空間28を設け、この空間28にスプリンクラー用の配管30(配管設備)を設けたものである。空間28の下側開口は耐火ボード32等、耐火性能が確保される納まりで塞ぐ。こうすることで、CLT12の下の空間34の内装を簡素化することができる。内装制限を解除するためにはスプリンクラーの設置が必要となるが、CLT12を一方向板として設計することでスプリンクラーの設置が可能である。スプリンクラー用の配管30を配置するためにCLT12の一部欠損を許容することで、内装制限を受けても構造木をあらわしとすることができる。
【0035】
(変形例3)
次に、変形例3について説明する。
本変形例3は、図4(1)、(2)に示すように、CLT12の下面に、CLTの調湿機能を増大するための調湿機能増大手段36を設けることによって、調湿効果を付加したものである。調湿機能増大手段36は、合成床のあらわしとなるCLT12の下面に加工形成される凹凸部38でもよいし、凹凸加工を施した木材をCLT12の下面に張り付けることによって構成してもよい。凹凸の形状、大きさ、配置レイアウトは、図4(2)のような正方形の凹部42を格子点状に複数配置するものでもよいし、これ以外であってもよい。また、例えば、図4(3)、(4)に示すようなリブ部46でもよい。構造耐力に問題ないことが確認できれば、CLT部材を直接加工してもよい。
【0036】
木材は、周囲の湿度が高い時には内部に水分を吸収し、乾燥している時には内部の水分を空中に放出する調湿機能を持っている。調湿機能増大手段36を設けて木が空気に触れる表面積を大きくとることで、木材のもつ調湿効果を最大化することが可能である。これにより、室内環境負荷を低減することができる。
【0037】
(変形例4)
次に、変形例4について説明する。
本変形例4は、図4(3)、(4)に示すように、CLT12の下面に、CLTの下の空間34の音響性能を調節するための音響性能調節手段44を設けることによって、音響効果を付加したものである。音響性能調節手段44は、合成床のあらわしとなるCLT12の下面に加工形成されるリブ部46でもよいし、リブを施した木材をCLT12の下面に張り付けることによって構成してもよい。リブの形状、大きさ、配置レイアウトは、図のような線状の凸部50を複数密接配置するものでもよいし、これ以外であってもよい。また、例えば、図4(1)、(2)に示すような凹凸部でもよい。構造耐力に問題ないことが確認できれば、CLT部材を直接加工してもよい。
【0038】
木材は、多孔質な構造であるため、吸音性が高いという特徴がある。音響性能調節手段44を設けることにより、CLT12の下の空間34の音響性能を適宜調節することができ、音響環境に配慮した室を提供することが可能である。
【0039】
上記の実施の形態においては、木構造床がCLTである場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、木質材料により構成される木構造床であればいかなるものでもよい。例えば集成材より構成される木構造床でもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
[合成床構造の施工方法]
次に、本発明に係る合成床構造の施工方法の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、上述した合成床構造10を施工する方法であって、梁の上にCLT12(木構造床)を載せて位置決めした後に、RCスラブ14用の鉄筋18を配筋するステップと、その後、コンクリート20を打設することで合成床構造10を構築し、この合成床構造10と梁とを一体化するステップとを有するものである。
【0041】
図5は、本実施の形態に係る合成床構造の施工方法の説明図である。図5(1)は鉄骨梁に施工する場合、(2)はRC梁に施工する場合の例である。以下、合成床構造10を鉄骨梁に施工する場合と、RC梁に施工する場合とに分けて説明するが、本発明はこれらに限るものではなく、その他の接合方法にも適用可能である。
【0042】
(鉄骨梁に施工する場合)
図5(1)に示すように、耐火被覆材52で被覆された鉄骨梁54にCLT12を載せて位置決めした後に、RCスラブ14用の鉄筋18を配筋し、コンクリート20を打設することで合成床構造10と鉄骨梁54を一体化する。鉄骨梁54の上端の耐火被覆が必要な範囲については、あらかじめCLT12の下側にコンクリートもしくはモルタル56を打設しておくことが望ましい。この場合、コンクリートもしくはモルタル56とCLT12は、CLT12の下面にあらかじめ打ち込んだビス58で接合する。また、鉄骨梁54の上面にスタッドボルト60を溶接しておき、RCスラブ14内に向けて配置する。このようにすれば、鉄骨梁54に対して、CLT12の木の表面をあらわしとする合成床構造10を容易に施工することができる。
【0043】
(RC梁に施工する場合)
図5(2)に示すように、RC梁62を成形するための型枠64にCLT12を載せて仮設ビス66などで位置決めした後に、RCスラブ14用の鉄筋18を配筋し、コンクリート20を打設することで合成床構造10とRC梁62を一体化する。型枠64を脱型した後、仮設ビス66は取り除く。RC梁62に断面欠損が生じないよう梁側フカシコンクリート部68にCLT12を嵌め込むことで、CLT12とRC梁62の境界部に隙間が生じないようにすることが望ましい。このようにすれば、RC梁62に対して、CLT12の木の表面をあらわしとする合成床構造10を容易に施工することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明に係る合成床構造によれば、木質材料により構成された木構造床と、木構造床の上面に設けられる鉄筋コンクリートスラブと、木構造床と鉄筋コンクリートスラブとを接続するために木構造床の上面に打ち込まれた木ねじ状のビスとを備え、木構造床の下面に耐火被覆材が設けられていないので、木構造床の木の表面をあらわしとすることができる。
【0045】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、平常時の長期荷重は木構造床と鉄筋コンクリートスラブの合成床耐力により支持され、火災時の長期荷重は木構造床が燃え尽きた際の鉄筋コンクリートスラブの短期耐力で支持されるので、平常時と火災時において耐力を確保することができる。
【0046】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、ビスの頭部の形状は、鉄筋コンクリートスラブ内のコーン破壊を生じさせない形状であるので、鉄筋コンクリートスラブと木構造床との一体性を高めることができる。
【0047】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、ビスは、合成床構造の中央に向けて斜め方向に打ち込まれているので、鉄筋コンクリートスラブと木構造床との一体性が高まり、構造耐力の向上またはビス数量の削減による施工性の向上を図ることができる。
【0048】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、木構造床の内部には、配管設備が設けられているので、木構造床の下の空間の内装を簡素化することができる。
【0049】
また、本発明に係る他の合成床構造によれば、木構造床の下面には、木構造床の調湿機能を増大するための調湿機能増大手段、または、木構造床の下の空間の音響性能を調節するための音響性能調節手段の少なくとも一方が設けられているので、木構造床による調湿機能を増大し、または、木構造床の下の空間の音響性能を調節することができる。
【0050】
また、本発明に係る合成床構造の施工方法によれば、上述した合成床構造を施工する方法であって、梁の上に木構造床を載せて位置決めした後に、鉄筋コンクリートスラブ用の配筋を行うステップと、その後、コンクリートを打設することで合成床構造を構築し、この合成床構造と梁とを一体化するステップとを有するので、構造木の表面をあらわしとする合成床構造を容易に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る合成床構造およびその施工方法は、集合住宅などの耐火建築物において採用される木構造床を用いた合成床に有用であり、特に、構造木の表面をあらわしとするのに適している。
【符号の説明】
【0052】
10 合成床構造
12 CLT(木構造床)
14 RCスラブ(鉄筋コンクリートスラブ)
16 ビス
18 鉄筋
20 コンクリート
22 頭部
24 軸部
26 先端部
28,34 空間
30 配管(配管設備)
32 耐火ボード
36 調湿機能増大手段
38 凹凸部
44 音響性能調節手段
46 リブ部
54 鉄骨梁
62 RC梁
C 鉛直線
S コーン破壊面
図1
図2
図3
図4
図5
図6