(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/058 20060101AFI20241106BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F04D29/058
F16C32/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020086811
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホレンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン バスマー
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3129498(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007973(US,A1)
【文献】特開2010-071286(JP,A)
【文献】特開平08-021396(JP,A)
【文献】実開昭52-011203(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第02820176(FR,A1)
【文献】特開2013-251721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0142827(US,A1)
【文献】登録実用新案第3165612(JP,U)
【文献】特表2003-512004(JP,A)
【文献】特開2007-154753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
F16C 32/00-32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流を生成するための回転子(2)と、前記回転子(2)を軸方向(A)の周りで回転させるための電磁回転駆動部を前記回転子(2)と共に形成する固定子(3)とを有するファンであって、
前記回転駆動部が、外部回転子として設計され、前記回転子(2)が、環状の態様で設計された磁気的有効コア(22)と、前記流体流を生成するための複数の羽根(24)が配置されたハブ(23)を有するインペラ(21)とを有し、前記固定子(3)が、前記回転子(2)を無接触で磁気的に駆動すること及び前記回転子(2)を無接触で前記固定子(3)に対して磁気的に浮上させることを可能とする駆動軸受固定子として設計され、また前記回転子(2)が、前記軸方向(A)に垂直な半径方向平面内に能動的に磁気的に浮上される、ファンにおいて、
前記インペラ(21)の前記ハブ(23)が、前記回転子(2)の前記磁気的有効コア(22)を完全に包囲していること、及び前記固定子(3)が、低透磁性材料で作られた固定子ハウジング(4)内に封入されていることを特徴とする、ファン。
【請求項2】
前記インペラ(21)が、第1のプラスチックからなり、前記固定子ハウジング(4)が、第2のプラスチックからなる、請求項1に記載のファン。
【請求項3】
吸込み側(61)及び加圧側(62)を有する実質的に管状のハウジング(6)を有し、前記回転子(2)及び前記固定子ハウジング(4)が、前記ハウジング(6)内に配置され、前記固定子ハウジング(4)が、複数の支柱(7)によって前記ハウジング(6)内に固定されている、請求項1又は2に記載のファン。
【請求項4】
前記固定子ハウジング(4)が、第1のハウジング部分(41)及び第2のハウジング部分(42)を有し、前記第1のハウジング部分(41)が、前記回転子(2)内に配置され且つ前記回転子(2)の前記磁気
的有効コア(22)によって取り囲まれており、前記第2のハウジング部分(42)が、少なくとも前記回転子(2)の前記磁気的有効コア(22)の外径(DM)と同じ大きさの外径(D2)を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項5】
前記ファン(1)を制御又は調整するための検査デバイス(5)を有し、前記検査デバイス(5)が、前記固定子ハウジング(4)の前記第2のハウジング部分(42)内に配置される、請求項4に記載のファン。
【請求項6】
前記流体流の圧力又は流量を判定することを可能とするセンサ(9)が設けられ、前記センサ(9)が、前記検査デバイス(5)に信号接続され、前記検査デバイス(5)が、前記圧力又は前記流量を調整又は制御するように設計されている、請求項5に記載のファン。
【請求項7】
前記固定子(3)が、半径方向にそれぞれ延びる複数のコイル・コア(31)を有し、各コイル・コア(31)が、電磁回転場を生成するための集中巻線(33)を担持している、請求項1から6までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項8】
前記回転子(2)の前記磁気的有効コア(22)が、環状のリフラックス(222)及び複数の永久磁石(221)を有し、前記リフラックス(222)が、連続的に設計され、且つ軟磁性材料で作られており、各永久磁石(221)が、鎌形状の断面を有するように設計され、且つ前記リフラックス(222)の半径方向内側側面に嵌め込まれている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項9】
熱を散逸させるための熱伝導要素(8)が、前記固定子ハウジング(4)内に設けられ、前記熱伝導要素(8)が、少なくとも前記検査デバイス(5)を取り囲むように設計されている、請求項
5及び6、並びに請求項5を引用する請求項7及び8のいずれか一項に記載のファン。
【請求項10】
前記回転子(2)が、傾きに対する前記回転子(2)の流体力学的安定化のために設計されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項11】
前記インペラ(21)の前記ハブ(23)が、吸込み側端部及び加圧側端部を有し、前記回転子の前記磁気的有効コア(22)が、前記軸方向に関して前記ハブ(23)の前記吸込み側端部よりも前記加圧側端部の近くに配置される、請求項1から10までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項12】
前記インペラ(21)の前記ハブ(23)が、その吸込み側端部に入口領域(231)を有し、前記入口領域(231)において、前記ハブ(23)が、前記吸込み側端部の方向に細くなるように設計されている、請求項11に記載のファン。
【請求項13】
各羽根(24)が前縁(241)を有し、各前縁(241)が、前記軸方向(A)に垂直に延びている、請求項1から12までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項14】
各羽根(24)が後縁(242)を有し、各後縁(242)が、前記軸方向(A)に対して90°とは異なる角度で前記ハブに通じている、請求項1から13までのいずれか一項に記載のファン。
【請求項15】
各羽根(24)が後縁(242)を有し、少なくとも1つの安定化リング(243)が前記後縁(242)に設けられ、前記安定化リング(243)が前記回転子(2)と同軸に配置されている、請求項1から14までのいずれか一項に記載のファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項の前提部分に記載の、流体流を生成するための回転子を有するファンに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンは、様々な装置を冷却するためによく使用され、或いは、様々な建物、システム又はデバイスの換気のためにも使用される。通常、ファンの役割は、流体流を、また特に空気流を生成することであり、流体流は、例えば熱伝達媒体として、特定の場所から熱を取り出すこと、又は熱を供給することもできる。流体流又は空気流はまた、不要なガス集積を除去するために、又は不要なガス集積をフレッシュエアと置き換えるために使用され得る。ファンの使用の実例は、例えばコンピュータにおける電子回路又は電源の冷却である。ファンはまた、所望の流れを生成するため又は圧力レベルを維持するために、管又は配管系に組み入れられ得る。特にそのような適用例では、ファンがコンパクトな設計を有することが、当然のことながら望ましい。それでもなお、そのようなファンは高性能を提供するべきであり、そのことが、ファンがしばしば極度の高回転速度で動作される理由である。
【0003】
多くの適用例では、埃っぽい環境又は汚染された環境でファンが動作される場合もある。特に回転子軸受上の埃又は汚れの堆積物は、過度の摩耗、及び短い耐用期間を招く可能性がある。また、特にこの問題に対処するために、接触なしで、即ち、特に機械的な軸受を伴わずに回転子が支持されるファンが知られている。例えばそのようなファンの場合、回転子は、磁力又は電磁力によって支持され、そのために、通常は少なくとも1つの磁気軸受が設けられる。磁気軸受の場合、受動的な磁気軸受と能動的な磁気軸受とが基本的に区別される。受動的な磁気軸受又は安定装置は、制御又は調整され得ない。これは、通常、磁気抵抗力に基づく。したがって、受動的な磁気軸受又は安定装置は、外部からのエネルギー供給なしで動作する。能動的な磁気軸受は、制御され得る軸受である。能動的な磁気軸受の場合、支持されるべき本体の位置は、例えば電磁場を与えることにより、能動的に影響又は調整され得る。例えば、非接触式の磁気的に支持される回転子を含むファンが、欧州特許第2064450B号明細書から知られている。この明細書では、少なくとも1つの受動的な半径方向磁気軸受と、能動的な即ち調整可能な軸方向磁気軸受システムとを有するファンが提案されている。
【0004】
他方では、機械的な軸受を有さないファンは、機械的な軸受で起こり得るような摩滅の危険性がないので、高純度のガスを搬送するのに特に適している。そのような高純度のガスは、例えばレーザ技術で使用される。
【0005】
ファンにおける回転子の磁気軸受がその価値を証明したとしても、特に高性能を維持するのと同時にファンの設計を可能な限りコンパクトにすることに関して、又はファンの摩耗及び耐用期間に関して、依然として改善の余地がある。具体的には、半導体産業に見られるような化学的に攻撃的な環境では、ファンは、例えば管系において、フォトレジスト、又は半導体生産においてエッチング・ガスとして使用される六フッ化硫黄(SF6:sulfur hexafluoride)などの、固体粒子又は液体の微細小滴を含む腐食性のある蒸気又はガスや、粒子含有空気流などのような攻撃的な物質にさらされる。そのようなより攻撃的な環境は、ファンの摩耗の増大、又はファンの十分でない短い耐用期間をもたらすことが多い。本発明は、これらの問題に取り組むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、回転子のための機械的な軸受を伴わずに動作可能であり且つより攻撃的な環境条件での使用にも適している、非常にコンパクトであると同時に効率的であるファンを提案することである。
【0008】
この問題に対処する本発明の目的は、独立特許請求項の構成によって特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明によれば、空気流を生成するための回転子と、回転子を軸方向の周りで回転させるための電磁回転駆動部を回転子と一緒に形成する固定子と、を有するファンであって、回転駆動部が、外部回転子として設計され、回転子が、環状の態様で設計された磁気的有効コアと、空気流を生成するための複数の羽根(blade)が配置されたハブを有するインペラと、を有し、固定子が、回転子を接触なしで磁気的に駆動させることを可能としまた回転子を固定子に対する接触なしで磁気的に浮上させることを可能とする駆動軸受固定子(bearing and drive stator)として設計され、回転子が、軸方向に垂直な半径方向平面において能動的に磁気的に浮上され、インペラのハブが、回転子の磁気的有効コアを全面的に包囲し、固定子が、低透磁性材料で作られた固定子ハウジング内に封入される、ファンが提案される。
【0010】
流体流は、空気流であることが好ましい。
【0011】
ファンの非常にコンパクトな設計を可能にするために、ファンの電磁回転駆動部は、無軸受モータの原理に従って設計される。今のところ、無軸受モータは、その機能に関する詳細な説明はもはや不要なほどに、当業者には十分に知られている。固定子は、回転子を動作状態において軸方向に接触なしで磁気的に駆動させる-即ち回転させる-ことを可能としまた回転子を固定子に対する接触なしで磁気的に浮上させることを可能とする駆動軸受固定子として設計される。軸方向は、回転子の望ましい回転軸によって決定される。
【0012】
無軸受モータという用語は、回転子が接触なしで磁気的に浮上され、別個の磁気軸受が設けられないという事実を意味する。固定子は、電気駆動部の固定子でもあり、磁気軸受の固定子でもある。固定子は、磁気回転場(magnetic rotary field)を生成させることを可能とする巻線を有し、この磁気回転場は、一方では、回転子の回転をもたらすトルクを回転子に与え、また他方では、回転子の半径方向位置-即ち、半径方向平面における回転子の位置-が能動的に制御又は調整され得るように、自由に調節可能な横方向力を回転子に与える。したがって、回転子の少なくとも3つの自由度が、能動的に調整され得る。軸方向における回転子の偏りに関しては、回転子は、磁気抵抗力によって受動的に磁気的に安定化され、即ち、それは制御不能である。回転子はまた、残りの2つの自由度、つまり、軸方向に垂直な半径方向平面に対する傾きに関して、受動的に磁気的に安定化される。
【0013】
駆動軸受固定子においては軸受ユニットと駆動ユニットとが区別され得ないということが、無軸受モータの原理の本質的側面である。例えば、当技術分野の現況からは、駆動部の固定子と磁気軸受の固定子とが組み合わせられて構造ユニットを形成する、電磁駆動・軸受デバイスが知られている。固定子は、1つ又は複数の軸受ユニット、及び、駆動ユニットを有し、駆動ユニットは、例えば2つの軸受ユニットの間に配置され得る。したがって、そのようなデバイスは、もっぱら磁気軸受として機能する、駆動ユニットから分離され得る軸受ユニットを示す。しかし、そのようなデバイスは、駆動機能とは別に回転子の軸支持を実現する別個の軸受ユニットを実際には有するので、本出願の意味での無軸受モータとして理解されるべきではない。本出願の意味での無軸受モータの場合、固定子を軸受ユニットと駆動ユニットとに分けることはできない。それがまさに、無軸受モータにその名前を与える特性である。
【0014】
本発明のさらなる本質的側面は、回転子の磁気的有効コア及び固定子の両方が、全面的にまた好ましくは密閉的に包囲されることである。このようにして、回転子の磁気的有効コア、及び固定子は、また特に例えば固定子上の巻線又は固定子のコイル・コアは、特に、ファンが例えば腐食性のガス、蒸気、又は他の腐食性若しくは酸性の流体と接触することになる化学的に攻撃的な環境においても、確実に保護される。回転子の磁気的有効コア、及び固定子はまた、スラリーなどの摩耗性流体に対して確実に保護される。磁気的有効コア、及び固定子を全面的に包囲することにより、ファンは、たとえ攻撃的な環境においても、少なくとも、摩耗が著しく減少され、また、相当に長い耐用期間を有する。
【0015】
回転子の磁気的有効コアは、インペラのハブ内で全面的に包囲され、したがって、インペラのハブは、回転子の被覆を形成する。固定子は、低透磁性材料、即ち低い透磁率(磁気伝導率)のみを有する材料で作られた固定子ハウジング内に封入される。この低透磁性材料は、例えば、プラスチックであり得る。本出願の枠内では、低透磁性材料は、慣例の通りに、その透磁性数(比透磁率)が1(真空の透磁性数)からわずかにしか又は少しも逸脱しない材料であると理解される。いかなる場合においても、低透磁性材料は、1.1未満の透磁性数を有する。
【0016】
回転子の磁気コア及び固定子の全面的な被覆に起因して、回転子の磁気的有効コアを封入するハブ、及び固定子ハウジングの壁は、どちらも回転子と固定子との間の磁気空隙内に配置されなければならない。これは、半径方向に関して、回転子及び固定子の磁気的に相互作用する部品間に大きな間隔を必要とするものであり、即ち、回転子及び固定子の磁気回路における磁気空隙は、大きい。意外にも、この大きな磁気空隙にもかかわらず、固定子に対する回転子の確実且つ安定した軸支持が可能である。
【0017】
インペラが第1のプラスチックから作られ、固定子ハウジングが第2のプラスチックから作られることが、好ましい。第1及び第2のプラスチックは、同じプラスチックであってもよく、又は、第1及び第2のプラスチックは、異なるプラスチックであってもよい。
【0018】
好ましい一実施例によれば、ファンは、吸込み側及び加圧側を含む実質的に管状のハウジングを有し、回転子及び固定子ハウジングは、ハウジング内に配置され、固定子ハウジングは、複数の支柱によりハウジング内に固定される。これは、例えば、ファンが管又は管系内に容易に組み入れられてそこで所望の流れ又は圧力を生成することを可能にする。この目的のために、ファンのハウジングは、いずれの場合にも吸込み側及び加圧側の両方にフランジを有することができ、このフランジにより、ファンが管に取り付けられ得る。固定子ハウジングを固定するのに用いられる支柱は、ファンのためのディフューザとして設計され得ることが、有利である。
【0019】
さらに好ましい方策は、固定子ハウジングが、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分を有し、第1のハウジング部分が、回転子内に配置され且つ回転子の磁気コアによって取り囲まれ、また、第2のハウジング部分が、回転子の磁気的有効コアの外径と少なくとも同じ大きさの外径を有することである。固定子ハウジングのこの最適化された形状は、電磁回転駆動部のための電源電子装置などの追加の構成要素が固定子ハウジング内に配置され、したがって固定子ハウジングによって保護されることを可能にする。
【0020】
ファンは、ファンを制御又は調整するための検査デバイスを有することが好ましく、この検査デバイスは、固定子ハウジングの第2のハウジング部分内に配置される。この方策は、特にコンパクトで場所を取らない設計を可能にする。電磁場を生成するための電源電子装置、回転子を駆動し且つ支持するための調整デバイス、及び、必要であればセンサ又は評価ユニットを有し得る、検査デバイス全体は、固定子ハウジング内に組み入れられるか又は内蔵される。したがって、ファンにはエネルギーだけが供給されればよく、また、必要であれば、例えばファンを始動又は停止させるために、又は回転速度を判定するために、信号が供給される。この目的のために、ファンに電気エネルギーを提供する供給ラインが設けられ得る。この供給ラインは、固定子ハウジングを固定する支柱のうちの1つの内側に配置されることが好ましい。
【0021】
さらに、流体流の圧力又は流量を判定することを可能とするセンサが設けられる場合、センサは、検査デバイスに信号接続され、検査デバイスは、圧力又は流量を調整又は制御するように設計されることが、有利である。このようにして、例えば、ファンによって生成された流体流が、制御又は調整され得る。センサは、吸込み側又は加圧側に配置され得る。具体的には、センサは、固定子ハウジングに固定されてもよい。
【0022】
好ましい一実施例によれば、固定子は、半径方向にそれぞれが延在する複数のコイル・コアを有し、各コイル・コアは、回転電磁場を生成するための集中巻線を担持する。固定子は、そのそれぞれが集中巻線を担持する厳密に6つのコイル・コアを有することが、特に好ましい。
【0023】
好ましい一実施例では、回転子の磁気的有効コアは、環状のリフラックス(reflux;還流部分)、及び、複数の永久磁石を有し、リフラックスは、切れ目がないように設計され、且つ、軟磁性材料で作られ、各永久磁石は、鎌形状(三日月状)の断面を有して設計され、且つ、リフラックスの半径方向内側側面に嵌め込まれる。一方では、この実施例により、磁気軸受の非常に良好なトルク及び非常に良好な剛性を得ることができ、また他方では、必要とされる永久磁石材料が特に少量であるので、永久磁石にかかる費用が削減される。
【0024】
さらなる有利な方策は、熱を散逸させるための熱伝導要素が固定子ハウジング内に設けられることであり、この熱伝導要素は、少なくとも検査デバイスを取り囲むように設計される。熱伝導要素は、金属製の熱伝導要素であり且つ例えばアルミニウムで構成されることが好ましい。熱伝導要素は、例えば、第2のハウジング部分の内壁に沿って延在するように、カップ形状とされ得る。
【0025】
回転子の磁気軸受を支持するために、回転子は、傾きに対する回転子の流体力学的安定化のために設計されることが好ましい。この流体力学的安定化により、磁気軸受はまた、軸方向軸受の振動が防止されるように、軸方向に関して有利に減衰される。
【0026】
流体力学的安定化のための様々な方策があり、ここで、そのうちのいくつかを限定的なリストに挙げる。
【0027】
インペラのハブは、吸込み側端部及び加圧側端部を有し、回転子の磁気的有効コアは、軸方向に関してハブの吸込み側端部よりも加圧側端部に接近して配置される。これは、磁気的有効コアが軸方向に関してインペラのハブ内で中心に配置されずに加圧側の方向に変位されることを意味する。
【0028】
インペラのハブは、その吸込み側端部に入口領域を有することができ、この入口領域では、ハブは、吸込み側端部の方向に細くなるように設計される。
【0029】
インペラは、各羽根が前縁を有し、各前縁が軸方向に垂直に延在するように、設計され得る。
【0030】
インペラは、各羽根が後縁を有し、各後縁が軸方向に対して90°とは異なる角度でハブに通じているように、設計され得る。
【0031】
インペラは、各羽根が後縁を有し、回転子と同軸に配置される少なくとも1つの安定化リングが後縁に設けられるように、設計され得る。
【0032】
軸方向に関してハブの吸込み側端部と加圧側端部との間に置かれた位置において各羽根がハブに通じるようにインペラを設計することも、可能である。
【0033】
述べられた方策のうちのいずれかのみが実現されるファンの実施例が可能であり、同様に、述べられた方策の任意の組合せが実現される実施例が可能である。
【0034】
本発明のさらなる有利な方策及び実施例は、従属請求項よりもたらされる。
【0035】
以下、実施例を参照しながら、また、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明によるファンの一実施例の斜視図である。
【
図2】
図1中の断面線II-IIに沿った、実施例の軸方向における断面図である。
【
図4】
図2中の断面線IV-IVに沿った、軸方向に垂直な実施例の断面図である。
【
図6】回転子の磁気的有効コアの変形形態のための固定子及び回転子の磁気的有効コアの、軸方向における断面の斜視図である。
【
図7】
図6中の断面線VII-VIIに沿った斜視図における、
図6の固定子及び磁気的有効コアの軸方向に垂直な断面図である。
【
図8】
図7と同様の図であるが、断面表面に対する平面図である。
【
図9】
図8と同様の図であるが、寸法を明確にするための図である。
【
図10】
図9と同様の図であるが、さらなる寸法を明確にするための図である。
【
図11】
図6と同様の図であるが、断面表面に対する平面図である。
【
図12】熱伝導要素を含む固定子ハウジングの設計に対する第1の変形形態の、軸方向における断面の斜視図である。
【
図13】
図12と同様の図であるが、固定子ハウジングの設計に対する第2の変形形態の図である。
【
図14】
図12と同様の図であるが、固定子ハウジングの設計に対する第3の変形形態の図である。
【
図15】実施例の固定子ハウジングの設計に対する第3の変形形態である、
図14の熱伝導要素の斜視図である。
【
図16】軸方向に沿った断面における、インペラの羽根がファンのハウジング内に配置された回転子の概略断面図である。
【
図17】
図16と同様の図であるが、回転子の流体力学的安定化を伴う回転子の設計に対する変形形態の図である。
【
図18】
図16と同様の図であるが、回転子の流体力学的安定化を伴う回転子の設計に対する変形形態の図である。
【
図19】
図16と同様の図であるが、回転子の流体力学的安定化を伴う回転子の設計に対する変形形態の図である。
【
図20】
図16と同様の図であるが、回転子の流体力学的安定化を伴う回転子の設計に対する変形形態の図である。
【
図21】
図16と同様の図であるが、回転子の流体力学的安定化を伴う回転子の設計に対する変形形態の図である。
【
図22】管内に配置された本発明によるファンの一実施例の変形形態の概略図である。
【
図23】管内に配置された本発明によるファンの一実施例の変形形態の概略図である。
【
図24】管内に配置された本発明によるファンの一実施例の変形形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、参照符号1により全体が指定された本発明によるファンの一実施例を、斜視図で示す。より良い理解のために、
図2及び
図3は、
図1中の断面線II-IIに従ってこの実施例の2つの断面図をなおも示し、
図2は、断面表面に対する平面図を示し、
図3は、斜視図における断面を示す。
【0038】
ファン1は、流体流、例えば空気流又はガス流を生成するための回転子2、及び、回転子2を軸方向Aの周りで回転させるための電磁回転駆動部を回転子2と一緒に形成する固定子3を有する。回転子2及び固定子3は、外部回転子として設計された回転駆動部を形成し、即ち、回転子2は、固定子3を取り囲み、且つ、動作状態において内側の固定子3の周りを回転する。
【0039】
電磁回転駆動部は、無軸受モータの原理に従って設計され、且つ、接触なしで磁気的に駆動されることができ且つコイル・フリーであるように設計された回転子2と、回転子2を動作状態において望ましい回転軸の周りで接触なしで磁気的に駆動させることを可能としまた回転子2を固定子3に対する接触なしで磁気的に浮上させることを可能とする駆動軸受固定子として設計された固定子3と、を有する。望ましい回転軸は、軸方向Aを決定する。固定子3は、回転子2に対して内側に配置される。
【0040】
以下では、軸方向Aを決定する望ましい回転軸は、回転子2が固定子3に対して中心の傾けられていない位置にあるときに回転子2がその周りで回転する回転軸を意味する。そのため、回転子2は、固定子3の中心軸に垂直な平面において中心に配置され、且つ、この平面に対して傾けられない。望ましい回転軸は、通常、固定子3の中心軸と一致する。
【0041】
以下では、軸方向に垂直な方向は、さらに大まかに半径方向と呼ばれる。半径方向平面は、望ましい回転軸又は軸方向Aに垂直な平面を意味し、この平面は、固定子3の磁気中心平面である。半径方向平面は、そのz軸が軸方向Aに延びるデカルト座標系のx-y平面を画定する。
【0042】
より良い理解のために、
図4及び
図5はそれぞれ、
図1に示された実施例の断面を示し、この断面は、断面線IV-IVにより
図2に表わされているように、半径方向平面において、即ち固定子3の磁気中心平面において、軸方向Aに垂直である。
図4は、断面の平面、即ち固定子3の磁気中心平面に対する平面図を示し、
図5は、断面を斜視図で示す。
【0043】
回転駆動部の回転子2は、コイル・フリーであるように設計され、即ち、回転子2上には巻線が設けられない。回転子2は、環状の態様で設計された磁気的有効コア22と、ハブ23及びハブ23上に配置された複数の羽根24を有するインペラ21と、を有する。インペラ21は、軸インペラとして設計される。羽根24は、動作状態において流体流を生成する。インペラ21のハブ23及び羽根24は、第1のプラスチックで構成される。回転子2は、空気流を生成するファン1の回転子2でもあり、インペラ21の回転を引き起こす電磁回転駆動部の回転子2でもある。一体型回転子としても知られるこの実施例は、ファン1の特にコンパクトな設計を可能にする。
【0044】
回転子2の磁気的有効コア22は、軸方向Aにおける高さHR(
図11)及び内側半径IR(
図9)を有する環状ディスク又は円柱状リングの形態で設計される。回転子2の「磁気的有効コア22」は、トルク生成のためにまた磁気軸受力を生成するために固定子3と磁気的に相互作用する、回転子2の領域を意味する。
【0045】
回転子2の磁気的有効コア22は、環状の半径方向外側のリフラックス222と、例えば永久磁石リングとして設計され得る少なくとも1つの永久磁石221と、を有する。当然のことながら、例えばリング・セグメントとしてそれぞれが設計される、複数の永久磁石221が設けられることも可能である。ここで説明される実施例では-
図4及び
図5を特に参照されたい-合計4つの永久磁石221が設けられ、それらは一緒にリングを形成する。各永久磁石221は、
図4及び
図5において参照符号のない矢印によって示されるように、半径方向又は直径方向に磁化される。隣り合う永久磁石221はそれぞれ、相反する方向に磁化され、即ち、半径方向又は直径方向に内向きに磁化された永久磁石221、及び、半径方向又は直径方向に外向きに磁化された永久磁石221は、いずれの場合にも互いに隣り合う。したがって、ここでは、回転子2は、4極であり、即ち、磁極対数2を有して設計される。
【0046】
高磁性の、つまり高い保磁力を有する、これらの強磁性材料又はフェリ磁性材料は、典型的には永久磁石と呼ばれる。保磁力は、材料を消磁するのに必要とされる磁界強度である。本出願の枠内では、永久磁石は、10,000A/m超になる保磁力、より正確には10,000A/m超になる磁気分極の保磁力を有する材料として理解される。回転子の磁気的有効コアの全ての永久磁石221は、ネオジミウム-鉄-ボロン(NdFeB:neodymium-iron-boron)合金、又はサマリウム-コバルト(SmCo:samarium-cobalt)合金で構成されることが好ましい。
【0047】
磁気的有効コア22は、全ての永久磁石221の周りで半径方向外側に配置された環状のリフラックス222をさらに有する。リフラックス222は、強磁性材料で構成され、且つ、磁束を誘導する働きをする。リフラックス222は、全ての永久磁石221を包囲する。
【0048】
回転子2の磁気的有効コア22は、インペラ21のハブ23が回転子2の磁気的有効コア22を全面的に包囲し、また、ハブ23が回転子2の磁気的有効コア22のための被覆を形成するように、インペラ21のハブ23内に配置される。この目的のために、例えば、製造プロセス中、磁気的有効コア22は、ハブ23を作る第1のプラスチックと共に成形することによって封入され得る。しかし、磁気的有効コア22が挿入される環状凹部をハブに設けることも可能である。その後、環状凹部は、適切に成形されたプラスチック・カバーで閉じられ、次いで、プラスチック・カバーは、例えば溶接法によりハブ23の残りの部分に接続される。すると、回転子2の磁気的有効コア22は、密閉的に封入される。
【0049】
固定子3は、星状の態様で配置された複数の-ここでは6つの-コイル・コア31を有する。各コイル・コア31は、棒形状に設計されて固定子3の中心に配置された中心磁極片32から半径方向外向きに延在し、且つ、各コイル・コア31が基本的にT形状の外観を有するように、丸みのある磁極シュー311(
図9も参照)で終端する。全ての磁極シュー311の半径方向外側境界表面はみな、中心磁極片32の長手軸と同軸の円柱上に位置する。
【0050】
回転子2の磁気駆動及び磁気軸支持に必要な電磁回転場を生成するために、コイル・コアは、巻線を担持する。例えば、ここで説明される実施例では、巻線は、いずれの場合にも集中巻線が個別のコイル33として各コイル・コア31に巻回されるように、設計される。これらのコイル33は、動作状態においてそれらの電磁回転場を生成するために使用され、この電磁回転場により、回転子2にトルクがもたらされ、また、この電磁回転場により、回転子2の半径方向位置、即ち軸方向Aに垂直な半径方向平面における回転子2の位置が能動的に制御又は調整され得るように、任意に調節可能な横方向力が半径方向において回転子2に与えられ得る。
【0051】
固定子3の中心磁極片32及びコイル・コア31の両方、並びに回転子2の磁気的有効コア22のリフラックス222は、磁束を誘導するためのフラックス伝導要素として働くので、それぞれ軟磁性材料で作られる。適切な軟磁性材料は、例えば、強磁性材料又はフェリ磁性材料であり、具体的には鉄、ニッケル-鉄、又はシリコン-鉄である。特に、固定子3に対しては、固定子金属薄板積層体としての設計がここでは好まれ、この場合、コイル・コア31及び中心磁極片32は、金属薄板で作られ、即ち、それらは、積み重ねられたいくつかの薄い要素で構成される。回転子2の磁気的有効コア22のリフラックス222もまた、金属薄板で作られ得る。金属薄板設計の代案として、電気的に絶縁され且つ圧縮された金属粒子で構成される軟磁性複合材料もまた、回転子及び/又は固定子のために使用され得る。具体的には、SMC(soft magnetic composite、軟磁性複合材)としても説明されるこれらの軟磁性複合材料は、電気絶縁層で被覆された鉄粉粒子で構成され得る。これらのSMCはその後、粉末冶金法を使用して所望の形状に形成される。
【0052】
すでに述べたように、回転子2及び固定子3による電磁回転駆動部は、無軸受モータの原理に従って設計され、この場合、回転子2は、接触なしで磁気的に駆動され、且つ、固定子3に対する接触なしで磁気的に浮上され、別体の又は分離可能な磁気軸受は、回転子2のために設けられない。軸支持機能及び駆動機能は、同一の固定子3で実現され、この場合、固定子3を軸受ユニットと駆動ユニットとに分けることは不可能である。駆動機能及び軸支持機能は、互いに分離され得ない。「無軸受モータ」という用語は、別体の磁気軸受又は磁気軸受ユニットが回転子2のために設けられないので、そのような回転駆動部に対して確立されるようになっている。これらの特に効率的な無軸受モータは、「非接触」構想の同時実現を伴うそれらの極めてコンパクトな設計により、特に特徴付けられる。
【0053】
したがって、無軸受モータは、回転子2が固定子3に対して磁気的に浮上される電磁回転駆動部であり、別体の磁気軸受又は磁気軸受ユニットは、設けられない。この目的のために、固定子3は、電気駆動部の固定子3でもあり磁気軸受の固定子3でもある、駆動軸受固定子として設計される。駆動軸受固定子3のコイル33により磁気回転場を生成することができ、この磁気回転場は、一方では、回転子2の回転を生じさせるトルクを回転子2に与え、他方では、回転子2の半径方向位置、即ち半径方向平面における回転子2の位置が能動的に制御又は調整され得るように、任意に調節可能な横方向力を回転子2に与える。無軸受モータは、今や当業者には良く知られており、そのため、その機能の詳細な説明は、もはや必要とされない。
【0054】
したがって、回転子2の3つの自由度、即ち、半径方向平面における回転子2の位置(2つの自由度)及び軸方向Aの周りでの回転子2の回転が、能動的に制御又は調整され得る。望ましい回転軸の方向における回転子2の軸方向の偏りに関して、回転子2は、磁気抵抗力により、受動的に磁気的に、即ち制御不能に、安定化又は浮上される。回転子2はまた、残りの2つの自由度、即ち軸方向に垂直な半径方向平面に対する傾きに関して、受動的に磁気的に安定化又は浮上される。したがって、回転子2の半径方向軸支持は、能動的な半径方向磁気軸支持の機能に対応し、軸方向軸支持は、受動的な軸方向磁気軸支持の機能に対応する。
【0055】
従来の磁気軸受とは対照的に、無軸受モータのモータの磁気軸支持及び駆動は、電磁回転場を介して実現される。典型的には、無軸受モータでは、磁気的な駆動及び軸支持機能は、駆動場及び制御場と通常呼ばれる2つの磁気回転場の重ね合わせによって作り出される。固定子3の巻線又はコイル33によって生成されるこれら2つの回転場は、通常、1だけ異なる磁極対数を有する。例えば、駆動場が磁極対数pを有する場合、制御場は、磁極対数p+1又はp-1を有する。半径方向平面において回転子2に作用する接線分力が、駆動場によって生成され、軸方向Aの周りでの回転子2の回転を生じさせるトルクをもたらす。駆動場と制御場とを重ね合わせることにより、半径方向平面において回転子2にかかる任意に調節可能な横方向力を生成することも可能であり、この横方向力により、半径方向平面における回転子2の位置を調整することができる。したがって、固定子3のコイル33によって生成される電磁束を、回転子2の駆動のみを提供する(電)磁束と、回転子2の磁気軸支持のみを実現する(電)磁束とに分けることは、不可能である。
【0056】
一方では、駆動場及び制御場を生成するために、異なる2つの巻線系(winding system)、即ち、駆動場を生成するための巻線系と、制御場を生成するための巻線系とを使用することが可能である。駆動場を生成するためのコイルは、通常、駆動コイルと呼ばれ、制御場を生成するためのコイルは、制御コイルと呼ばれる。これらのコイルに印加される電流は、駆動電流又は制御電流と呼ばれる。他方では、単一の巻線系のみを用いて駆動及び軸支持機能を作り出すことも可能であり、そのため、駆動コイルと制御コイルとの区別がない。これは、検査デバイス5によりその都度判定される駆動電流の値及び制御電流の値が計算-即ち、例えばソフトウェアによる計算-によって追加されるか又は重ねられ、そして得られる全電流がそれぞれのコイル33に印加されるような方法で、実現され得る。この場合、制御コイルと駆動コイルとを区別することは、当然のことながらもはや不可能である。ここで説明される実施例では、後者の変形形態が実現され、即ち、駆動コイルと制御コイルとが区別されないが、1つだけの巻線系が存在し、その6つのコイル33において、駆動及び制御電流の数学的に判定された合計が印加される。しかし、2つの別々の巻線系により、即ち、独立した駆動コイル及び独立した制御コイルにより、本発明によるファン1を設計することも、当然のことながら可能である。
【0057】
例えば無軸受モータとして設計された回転駆動部の回転子の位置、制御、給電、及び調整を判定するためのセンサ技術は、当業者には良く知られており、ここではさらなる説明は必要とされない。
【0058】
本発明によるファン1では、回転子2の磁気的有効コア22がインペラ21のハブ23によって全面的に包囲されるだけではなく、固定子3もまた、低透磁性材料で作られた固定子ハウジング4内に封入される。この低透磁性材料は、第2のプラスチックであることが好ましい。
【0059】
低透磁性材料は、低い透磁率(磁気伝導性)のみを有する材料である。本出願の枠内では、低透磁性材料は-慣例の通りに-その透磁性数(比透磁率)が1(真空の透磁性数)からわずかにしか又は少しも逸脱しない材料であると理解される。いかなる場合においても、低透磁性材料は、1.1未満の透磁性数を有する。したがって、低透磁性材料は、例えばコイル・コア31が作られる強磁性材料よりも著しく低い磁気伝導性を有する。
【0060】
すでに述べたように、固定子ハウジング4が作られるこの低透磁性材料は、第2のプラスチックから作られることが好ましい。したがって、回転子2のインペラ21が第1のプラスチックで作られ、固定子ハウジング4が第2のプラスチックで作られることが、好ましい。当然のことながら、第1のプラスチック及び第2のプラスチックが同じプラスチックであることが可能であり、また、多くの用途にとって望ましい。他方では、第1のプラスチック及び第2のプラスチックが異なるプラスチックであることも、可能である。
【0061】
例えば、第1及び/又は第2のプラスチックは、以下のプラスチックのうちの1つであってもよい:ポリエチレン(PE:polyethylene)、低密度ポリエチレン(LDPE:low density polyethylene)、超低密度ポリエチレン(ULDPE:ultra low density polyethylene)、エチレン酢酸ビニル(EVA:ethylene vinyl acetate)、ポリエチレン・テレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリウレタン(PU:polyurethane)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene fluoride)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:acrylonitrile butadiene styrene)、ポリアクリル酸、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、又はシリコーン。多くの用途に対して、Teflonの商標名で知られている材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)及びペルフルオロアルコキシ・ポリマー(PFA:perfluoroalkoxy-polymer)もまた、第1及び/又は第2のプラスチックとして適している。
【0062】
これらのプラスチックのうちの1つが、回転子2の磁気的有効コア22を密閉的に封入するための第1のプラスチックとして使用され、また、これらのプラスチックのうちの1つが、固定子3を密閉的に封入するための第2のプラスチックとして使用されることが、好ましい。理解には十分であるので、以下では第1のプラスチックと第2のプラスチックの区別はなされない。
【0063】
述べられた全てのプラスチックは低透磁性であるので、即ち、それらのプラスチックは磁束を十分に伝導しないので、半径方向において一方では回転子2の磁気的有効コア22との間にまた他方では固定子3のコイル・コア31の磁極シュー311との間に配置されるハブ23及び固定子ハウジング4の領域は、回転子2と固定子3との間の磁気空隙に割り当てられるべきである。したがって、回転子2と固定子3との間の磁気空隙は、回転子2の磁気的有効コア22と固定子3のコイル・コア31の磁極シュー311との間の半径方向における距離に等しい。したがって、磁気的有効コア22の密閉的封入、及び、固定子3の密閉的封入は、他の無軸受モータと比較して大きな磁気空隙を生じさせる。回転子3が中心に配置されたときの磁気空隙の幅は、例えば4mmであるか、さらに大きいことすらある。これは、4mmの磁気空隙の幅の場合、1つの磁極シュー311から反対側の磁極シュー311まで測定された固定子3の最大直径が回転子2の磁気的有効コア22の内径よりも8mm小さいことを意味する。
【0064】
ファン1は、実質的に管状の形状であり且つ回転子2のインペラ21を同軸的に取り囲むハウジング6を、さらに有する。ハウジング6は、そこを通じてファン1が空気を吸い込む吸込み側61(
図2、
図3)と、そこを通じてファン1が空気を排出する加圧側62と、を有する。回転子2及び回転子2によって包囲される固定子3、並びに固定子ハウジング4全体は、吸込み側61と加圧側62との間で管状ハウジング6内に配置され、固定子ハウジング4は、複数の支柱7を介してハウジング6の加圧側62に取り付けられることが好ましい。各支柱7は、半径方向において固定子ハウジング4から管状ハウジング6の内壁の方向に外向きに延在する。全体の支柱7は、ディフューザとして設計され得る。支柱7は、第1のプラスチック又は第2のプラスチックから作られることが好ましい。
【0065】
ハウジング6は、吸込み側61上の吸込み側フランジ63、及び、加圧側62上の加圧側フランジ64をさらに有する。フランジ63及び64により、ファン1は、簡単なやり方で管又は管系内に組み入れられ得る(例えば、
図22参照)。ここで説明される実施例では、両方のフランジ63、64が、矩形の、特に正方形の形状で設計され、また、各フランジ63、64の各コーナには、いずれの場合にも、簡単なやり方でファン1が別の要素に、例えば別のフランジに取り付けられ得るように、締結手段、例えばねじ(図示せず)のそれぞれの受入れのために、取付け穴65が設けられる。
【0066】
固定子ハウジング4は、軸方向Aに関して上下に配置された第1のハウジング部分41及び第2のハウジング部分42を有し、第1のハウジング部分41は、ハウジング6の吸込み側61に配置され、第2のハウジング部分は、ハウジング6の加圧側62に配置される。各ハウジング部分41、42は、円筒状の形状を有し、第2のハウジング部分42の外径D2(
図2)は、第1のハウジング部分41の外径D1よりも大きい。全体で、固定子ハウジング4は、長い方の線を中心としてLの字を回転させたときに作り出される空間を包囲する。
【0067】
第1のハウジング部分41の外径D1は、第1のハウジング部分41が回転子2のハブ23の中央凹部内に挿入され得るように、この中央凹部の内径よりも小さい。電気回転駆動部の固定子3は、固定子ハウジング4が回転子2のハブ23にある中央凹部内に挿入されたときに固定子3が回転子2の磁気的有効コア22によって取り囲まれるように、固定子ハウジング4の第1のハウジング部分41内に配置される。これは、固定子3が回転子2により半径方向内方に内側に取り囲まれる、外部回転子のための回転駆動部の通常の配置をもたらす。
【0068】
固定子ハウジング4の第2のハウジング部分42の外径D2は、回転子2の磁気的有効コア22の外径DMと少なくとも同じ大きさであるような寸法とされる。固定子ハウジング4をハウジング6内に固定する支柱7は、第2のハウジング部分42上に配置され、且つ、いずれの場合にも第2のハウジング部分42からハウジング6の内壁まで半径方向に延在する。描写によれば回転子2より下に配置される固定子ハウジング4の第2のハウジング部分42内には、ファン1を駆動し且つ調整するのに用いられる検査デバイス5が設けられる。検査デバイス5は、コイル33のための電流を生成する電源電子装置と、回転子2の駆動及び回転子2の半径方向位置を調整又は制御する、調整・制御デバイスを有する。同様に、検査デバイス5は、任意選択の圧力センサ又は流量センサの接続後に作動され得る流量回路及び/又は圧力制御回路を有し得る。電源電子装置は、回路基板又はプリント回路基板(PCB:printed circuit board)として設計されることが好ましい。さらに、検査デバイス5は、様々なセンサ、及び、センサによって供給される信号を処理するための評価ユニットを有し得る。検査デバイス5全体も固定子ハウジング4内に配置されるという事実により、ファン1の極めてコンパクトで場所を取らない設計が達成される。その上、密閉的に封止された固定子ハウジング4内の検査デバイス5はまた、化学的に攻撃的な環境条件の他に、埃及び汚れに対しても保護される。
【0069】
さらに、ケーブル72のためにフィード・スルー71が設けられ、このケーブル72を介して、検査デバイス5にエネルギーが供給される。ケーブル72は、さらに、検査デバイス5への又は検査デバイス5からのアナログ信号又はデジタル信号の伝送のために使用され得る。この目的のために、ケーブル72は、例えば、電圧源に、また、通信インターフェース400(
図22)に接続される。固定子ハウジング4の第2のハウジング部分42からファン1の周囲へのフィード・スルー71は、支柱7のうちの1つに設けられ、又は、フィード・スルー71は、支柱7のうちの1つとして機能することが、特に好ましい。
【0070】
したがって、回転子2の磁気的有効コア22及び固定子3の両方並びに検査デバイス5が密閉的に封入されるので、ファン1は、半導体産業に見られるような問題をはらむ環境での使用に見事に適している。そのような環境には、腐食性の蒸気、ガス、さらには酸性物質が存在する場合があり、それらは、従来のファンには、ほんの短い動作期間後に相当な損傷を与える可能性がある。しかし、ファン1はまた、環境の機械的汚れ、例えば埃又は固体粒子に、特に耐性がある。無軸受の構想、並びに固定子3及び回転子2の磁気的有効コア22の密閉的封入により、ファン1は、高純度環境での使用、又はレーザ技術で使用されるような高純度のガスを搬送するのに、特に適している。
【0071】
図6~
図8は、回転子2の磁気的有効コア22の設計に対する好ましい変形形態を示す。理解には十分であるので、
図6、
図7、及び
図8では、より良好な概説のために回転子2の磁気的有効コア22及び固定子3のみが示されている。
図6は、変形形態を斜視断面図で示し、ここでは、断面は、固定子3の中心磁極片32の中心を通る軸方向Aに作られている。
図7は、この回転子2の磁気的有効コア22に対する変形形態を、
図6中の断面線VII-VIIに沿った斜視断面図で示す。断面は、固定子3の中心を通る軸方向Aに垂直に作られている。
図8は、
図7の断面表面の平面図を示す。
【0072】
この回転子2の磁気的有効コア22に対する同様に環状の変形形態では、環状のリフラックス222、及び、ここでは4つである複数の永久磁石221は、半径方向外側に設けられる。リフラックス222は、切れ目がないように設計され、且つ、軟磁性材料で作られる。4つの永久磁石221のそれぞれは、軸方向Aに垂直な鎌形状の断面を有し、且つ、軸方向Aに関して回転子2の磁気的有効コア22の全高HR(
図11)にわたって延在するように、設計される。永久磁石221は、リフラックス222の半径方向内側側面上に円周方向に関して等距離に配置され、且つ、リフラックス222の半径方向内側側面にある相応に成形された凹部に嵌合される。
【0073】
したがって、各永久磁石221は、2つの円柱セグメントにより半径方向において境界され、即ち、回転子2の磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面223と同じ半径及び同じ中心を有する円柱セグメントにより、半径方向内側に境界され、且つ、その中心が磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面223の中心から変位されておりまたその半径が磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面の半径よりも小さい円柱セグメントにより、半径方向外側に境界される。
【0074】
各永久磁石は、
図6~
図8において参照符号のない矢印によって示されるように、半径方向又は直径方向に磁化される。永久磁石221は、それぞれの隣り合う永久磁石221が相反する方向に磁化されるように、回転子2の円周方向に関して、半径方向又は直径方向において外側に、また、半径方向又は直径方向において内側に、交互に磁化される。したがって、回転子2は、4つの磁極を有して設計され、即ち、磁極対数2を有して設計される。
【0075】
可能な限り強力且つ効率的なファン1のためには、回転子2の高回転速度が好ましく、このことが、回転子2が4つの磁極を有して設計されるのが好ましい理由である。
【0076】
また特に、回転子2の確実な非接触磁気軸支持に関して、回転子2の環状ディスク形状の磁気的有効コア22が-その固有の設計に関係なく-軸方向Aにおける磁気的有効コア22の高さHR(
図11)の少なくとも1.5倍、好ましくは2倍の大きさの内径を有することが、特に好ましい。半径方向に見たときの高さHRが磁気的有効コア22にわたって変化する場合、即ち、高さHRが一定ではない場合、少なくとも磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面223において、磁気的有効コア22の内径が磁気的有効コア22の高さHRの少なくとも1.5倍、好ましくは2倍の大きさであるという条件が満たされるべきである。これは、磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面223における磁気的有効コア22の高さをHRが指定することを意味する。
【0077】
以下では、回転子2の磁気的有効コア22及び固定子3のためのいくつかの好ましい幾何学的寸法が、
図9から
図11に基づいて説明されるが、それらは回転子2の非接触駆動及び回転子2の非接触磁気軸支持に関して特に有利である。
図9及び
図10は、いずれの場合も基本的に
図8と同じ図解を示し、即ち、軸方向Aに垂直な断面を示すが、いくつかの寸法が描かれている。
図11は、基本的に
図6と同じ図解を示し、即ち、軸方向Aにおける断面を示すが、いくつかの寸法が描かれている。
【0078】
MRは、回転子2の環状の磁気的有効コア22の半径方向平面における幾何学的中心を示す。
【0079】
IRは、磁気的有効コア22の内側半径を示す。これは、IRが磁気的有効コア22の内径の半分を示すことを意味する。
【0080】
HRは、磁気的有効コア22の半径方向内側境界表面223での、磁気的有効コア22の軸方向Aにおける高さを示す。
【0081】
BMは、永久磁石221の半径方向における最大厚さを示す。
【0082】
BRは、磁気的有効コア22の半径方向における厚さを示す。
【0083】
MPは、永久磁石221の半径方向外側境界を形成する、半径方向平面に位置する円柱セグメントの幾何学的中心を示す。
【0084】
Eは、中心MPから回転子2の磁気的有効コア22の中心MRまでの距離を示す。
【0085】
MSは、固定子3の又は固定子3の中心磁極片32の半径方向平面における幾何学的中心を示す。
【0086】
ASは、固定子3の外側半径、即ち、磁極シュー311が配置される円柱の半径を示す。
【0087】
BPは、固定子3のコイル・コア31の磁極シュー311の開き角度を示す。この開き角度BPは、円周方向で見たときに中心MSと磁極シュー311の2つの端部とを接続する2本の接続線が囲む角度、即ち、基本的にT字形状のコイル・コア31のTの字の短い方の線の2つの端部から中心MSまでの接続線が囲む角度である。
【0088】
BSは、コイル・コア31の半径方向平面における幅を示す。
【0089】
HSは、コイル・コア31の軸方向Aにおける高さを示す。コイル・コア31の高さHSが半径方向において変化する場合、HSは、半径方向外側端部での、即ち磁極シュー311でのコイル・コア31の高さを示す。ここで説明される実施例では、半径方向で見たときに、高さHSは一定であり、中心磁極片32もまた、軸方向Aにおける高さHSを有する。
【0090】
以下の相対寸法が好ましい。
【0091】
BMとBRとの比は、好ましくは0.5から0.9であり、特に好ましくは0.7である。
【0092】
EとIRとの比は、好ましくは0.25から0.65であり、特に好ましくは0.45である。
【0093】
BSとASとの比は、好ましくは0.25から0.45であり、特に好ましくは0.35である。
【0094】
HRとHSとの比は、好ましくは1.5から2.5であり、特に好ましくは2.0である。
【0095】
磁極シュー311の開き角度BPは、好ましくは30°から45°であり、特に好ましくは40°である。
【0096】
さらに好ましい方策は、例えば検査デバイス5の電源電子装置によって生じる熱及び/又は流れている電流を通じて固定子3によって生じる熱を可能な範囲において最良の形で分散又は散逸させるために、固定子ハウジング4内に熱伝導要素8を設けることである。熱伝導要素8は、良好な熱伝導度を有する材料、例えば金属材料で構成される。熱伝導要素8は、アルミニウムで作られることが好ましい。以下では、熱伝導要素8に対する様々な変形形態が説明されるが、それらの変形形態では、熱伝導要素8は、常にアルミニウムで作られることが好ましい。
【0097】
図12は、熱伝導要素8を含む固定子ハウジング4の設計に対する第1の変形形態を、斜視断面図で示す。熱伝導要素8は、特に電源電子装置によって生じた熱が可能な限り分散されるように、熱伝導要素8が少なくとも検査デバイス5を取り囲むように設計され且つ配置される。
【0098】
図12に示された変形形態では、熱伝導要素8は、内部に検査デバイス5が配置される固定子ハウジング4の第2のハウジング部分42の内部円筒壁に沿って全面的に延在するスリーブとして設計される。熱伝導要素8は、第2のハウジング部分42の円筒壁の内側に直接据えられる。したがって、スリーブとして設計された熱伝導要素8は、固定子ハウジング4の円筒形の第2のハウジング部分42の内径に一致する外径W2を有する。熱伝導要素8は、半径方向において第1のハウジング部分41を越えて突出し、したがって描写によれば回転子2の下に配置される第2のハウジング部分42の端面を境界する環状領域421もまた、その内側が熱伝導要素8で覆われるように、回転的に対称なL字の輪郭を有する。この方策により、特に検査デバイス5によって生じた熱は、第2のハウジング部分42の壁上で広範囲にわたって分散される。この方策により、固定子ハウジング4を作るのに好ましい不十分な熱伝導性のプラスチックにもかかわらず、十分な熱が固定子ハウジング4から散逸され得る。熱は、第2のハウジング部分42の内壁上で可能な限り広範囲にわたって分散されて、プラスチックに取り込まれる。それに加えて、動作状態において特に強力な流体力学的流れに見舞われる固定子ハウジング4の領域に熱が供給されることが好ましく、それにより、熱が確実に散逸される。
【0099】
図13に示された固定子ハウジング4の設計に対する第2の変形形態では、固定子3はまた、熱伝導要素8に熱的に結合される。熱伝導要素8はカップ81を有し、このカップ81は、回転的に対称なU字の輪郭を有する。カップ81は、固定子ハウジング4の第2のハウジング部分42の内部円筒壁に沿って全面的に延在し、且つ、その内部円筒壁に寄り掛かる。したがって、カップ81は、固定子ハウジング4の円筒状の第2のハウジング部分42の内径に対応する外径W2を有する。
【0100】
図12に示された第1の変形形態とは対照的に、第2の変形形態では、熱伝導要素8、より正確にはカップ81は、第1のハウジング部分41と第2のハウジング部分42との境界において、全面的に閉じられる。それに加えて、熱伝導要素8は、軸方向Aに延在する、中心に配置されたバー82を有する。バー82は、軸方向Aにおいてカップ81から固定子3の中心磁極片32を完全に貫いて延在し、且つ、描写(
図13)によれば中心磁極片32よりも上側で終端する。この方策により、固定子3はまた、固定子3において生じた熱もまた固定子ハウジング4を介して、また特に第2のハウジング部分42の壁を介して広範囲にわたって分散されるように、熱伝導要素8に熱的に接続される。固定子3において生じる熱は、主に、例えば銅線で作られるコイル33における電流(いわゆる銅損)と、例えば鉄で作られるコイル・コア31及び中心磁極片32において誘導される渦電流と、再磁化損(remagnetization loss)、いわゆるヒステリシス損とに基づく。渦電流損及びヒステリシス損はまた、合わせて鉄損とも呼ばれる。
【0101】
図14では、熱伝導要素8を含む固定子ハウジング4の設計に対する第3の変形形態が表わされている。より良い理解のために、
図15は、
図14からの熱伝導要素8の斜視図をさらに示す。
【0102】
第3の変形形態では、第2の変形形態におけるように、熱伝導要素8はまた、検査デバイス5を取り囲むカップ81、及び、軸方向Aにおいてカップ81から中心磁極片32の内部を貫いて延在するバー82を有する。それに加えて、第3の変形形態では、円形ディスク形状のプレート83が設けられ、このプレート83は、カップ81と反対の側を向いたバー82の端部に配置され、且つ、半径方向平面に平行である。プレート83は、円筒状の第1のハウジング部分41の内径に対応する直径W1を有する。描写(
図14)によれば、プレート83は、固定子3のコイル33よりも上側に配置され、且つ、吸込み側61上で軸方向Aにおいて第1のハウジング部分41を境界する内部端面411に寄り掛かる。したがって、この第3の変形形態では、熱は、固定子ハウジング4の内部端面411上で広範囲にわたってさらに分散されて、固定子ハウジング4のプラスチックに取り込まれる。したがって、内部端面411はまた、やはり当然のことながらアルミニウムで作られることが好ましいプレート83が熱を送り込む追加の表面として使用され、熱は、その後、入来する流体によって運び去られる。
【0103】
図15では、さらなる有利な方策がさらに示されており、この方策は、当然のことながら第1の変形形態(
図12)又は第2の変形形態(
図13)においても実現され得る。熱伝導要素8は、実際には、複数のスリット84を備えることが好ましく、スリット84のそれぞれは、熱の熱流方向に、即ち半径方向外向きに延在する。熱伝導要素8が-好まれるように-金属材料で、即ち特にアルミニウムで作られている場合、熱伝導要素8における渦電流及び関連する渦電流損は、少なくとも非常に堅調に減少され得るが、スリット84を通じた熱の熱散逸は、無視できるほどにしか影響されない。
図15に表わされた熱伝導要素8の第3の変形形態では、半径方向に延びるスリット84は、プレート83及びカップ81の両方に設けられている。
【0104】
以下では、固定子2のインペラ21の設計に対するいくつかの変形形態が、
図16~
図21に基づいて説明される。これらの描写の全ては概略的なものであり、理解に十分な程度まで単純化されている。インペラ21は、固定子ハウジング4内に封入された固定子3の周りに配置される環状のハブ23と、ハブ23にしっかりと接続されたいくつかの羽根24とを有する。プラスチックで作られることが好ましい羽根24は、ハブ23と一体に製造され得るか、又は、羽根24は、ハブ23とは別に製造され、その後で例えば接着剤を用いて又は溶接法により、ハブ23にしっかりと接続され得る。
【0105】
ハブ23は、ハブ23の第1の部品が最初に製造されるように2部品で製造されることが好ましく、この第1の部品には、回転子2の磁気的有効コア22のための凹部が設けられる。次いで、磁気的有効コア22が、この凹部に挿入される。続いて、磁気的有効コア22がハブ23内に密閉的に封入されるように、カバーとして設計されたハブ23の第2の部品が、好ましくは溶接法によりハブの第1の部品にしっかりと接続される。
【0106】
特に
図3にはっきりと見られ得るように、インペラ21の羽根24は、軸方向Aに対して傾けられるようにそれぞれ設計されることが好ましい。より良い理解のために、この軸方向Aに対する傾きは、概略的な
図16から
図21では表わされていない。これらの
図16から21では、軸方向Aの周りでの回転中に羽根24によって一掃される空間は、いずれの場合にも回転軸に沿った断面-即ち、軸方向Aに沿った断面-において表わされており、そのため、軸方向Aに対する羽根24の傾き、即ち、
図16~
図21におけるそれぞれの断面平面に対する羽根24の傾きは、表わされていない。これらの描写は、いずれの場合にも、それぞれの描画平面上への羽根24の垂直投影に対応する。
【0107】
さらに、
図16~
図21は、いずれの場合にも、磁気的に浮上された回転子2が半径方向平面において即ち固定子3の磁気中心平面において固定子3に対して中心に配置されている動作状態で、インペラ21を示す。
図16から
図21では、固定子ハウジング4のみが示されている。参照符号のない矢印は、いずれの場合にも、流体流、即ち具体的には空気流が流れる方向を示す。描写によれば、いずれの場合にも、吸込み側61は上部にあり、加圧側62は下部にある。
図16から
図21では、幾何学的中心平面RMも参照される。幾何学的中心平面RMは、回転子2の磁気的有効コア22の幾何学的中心を通って延在する、軸方向Aに垂直な平面である。回転子2が固定子3に対して中心に配置されており且つ傾けられていない場合、幾何学的中心平面RM、及び半径方向平面、即ち固定子3の幾何学的中心平面は、一致する。
【0108】
インペラ21の全ての羽根24は、全く同じに設計されることが好ましい。
【0109】
図16は、インペラ21を含む回転子2の第1の変形形態の概略断面図を示し、インペラ21は、ハブ23及び羽根24を有する。各羽根24は、吸込み側61に面する前縁241、及び、加圧側62に面する後縁242を有する。この第1の変形形態では、各羽根24は、中心平面RMに関して対称的に設計され且つ配置される。軸方向Aにおける各羽根24の高さは、半径方向においてハブ23から外側に向かって減少する。中心平面RMに関して対称である前縁241及び後縁242は、いずれの場合にも、
図16に示されるように湾曲していてよい。当然のことながら、前縁241及び後縁242を一直線に、即ち湾曲なしに設計することも可能である。
【0110】
すでに述べたように、回転子2と固定子3との間の磁気回路内の磁気空隙は、一方では回転子2の磁気コア22の完全な封入により、また他方では固定子3の完全な封入により、無軸受モータとして設計された既知の回転駆動部と比較して、かなり大きい。したがって、インペラ21を含む回転子2が動作中の回転子2の流体力学的安定化のために設計されることが、特に好ましい方策である。具体的には、回転子2は、好ましくは、ファン1を流れる流体、即ち、例えば流動空気が、回転子2を軸方向Aにおけるその位置に関して安定させ、且つ、半径方向平面に対するそれぞれの傾きに対して安定させるように、設計されるべきである。そうすることで、回転子2が受動的に磁気的に浮上又は安定化される自由度に関して、流動流体により回転子2が安定化されることが達成される。したがって、流体力学的安定化は、回転子2の受動的な磁気軸支持又は安定化を支援する。流動流体による流体力学的安定化により、軸方向Aにおける回転子2の振動が抑制されるか又は少なくとも大きく減衰されるように、特に回転子2の受動的な磁気軸方向軸支持もまた、減衰される。
【0111】
以下では、限定的なリストにおける様々な変形形態に基づいて、回転子2がどのようにして流体力学的安定化のために設計され得るかに関する方策が説明される。それらの方策のうちのいくつかは組合せも可能であることが、理解される。
【0112】
図17は、羽根24が一方では非対称的な設計を有しまた他方では吸込み側61の方向に変位されている、変形形態を示す。各羽根24は、その重心が明らかに中心平面RMの外側にあり且つ吸込み側61と中心平面RMとの間にあるように、設計され且つ配置される。前縁241は、ハブ23から半径方向において外側に向かって一直線に、即ち湾曲せずに延在し、即ち、前縁241は、軸方向Aに垂直に延在し、前縁241は、ハブ23の吸込み側端部と位置合わせされている。後縁242は、
図16に表わされた変形形態と同様に半径方向において湾曲しているが、やはり吸込み側61の方向に変位されている。
【0113】
図18に表わされた変形形態は、
図17に表わされた変形形態と同様に設計されているが、
図18による変形形態では、羽根24-より正確には羽根24のそれぞれの重心-は、吸込み側61の方向になおもさらに変位されている。それに加えて、各前縁241も湾曲しており、この湾曲は、前縁241の半径方向内側端部が、ハブ23の吸込み側端部と位置合わせされ、前縁241の半径方向外側端部が、ハブ23の吸込み側端部を越えて吸込み側61の方向に突出するような湾曲である。
【0114】
図19に示された変形形態では、回転子2の磁気的有効コア22は、ハブ23の加圧側端部の方向に変位されている。したがって、磁気的有効コア22は、もはや軸方向Aに関してハブ23内で中心に配置されておらず、ハブ23の吸込み側端部よりもハブ23の加圧側端部に接近して配置されている。各前縁241は、半径方向において外側に向かってハブ23から一直線に、即ち湾曲せずに延在し、即ち、各前縁241は、軸方向Aに垂直に延在し、各前縁241は、ハブ23の吸込み側端部と位置合わせされている。後縁242は、いずれの場合にも、
図17に表わされた変形形態と同様に半径方向において湾曲しているが、描写(
図19)によれば、後縁242は、ハブ23の加圧側端部よりも上側でハブ23の外側表面に通じており、即ち、後縁242は、軸方向Aに関してハブ23の加圧側端部まで延在しない。当然のことながら、後縁242を一直線に、即ち湾曲させずに設計することも、
図19に表わされた変形形態で可能である。
【0115】
図20に表わされたインペラ21の変形形態は、
図19に表わされた変形形態と同様に設計されている。しかし、
図20に表わされた変形形態では、インペラ21のハブ23は、その吸込み側端部に入口領域231を有し、この入口領域231では、ハブ23は、吸込み側端部の方向にテーパに(細くなるように)設計される。これは、この入口領域231ではハブ23が円錐形状又は切頭円錐形状に設計されることを意味し、円錐の頂上は、吸込み側に位置する。描写によれば、入口領域231は、軸方向Aに関して磁気的有効コア22よりも上側に配置される。
【0116】
図21に表わされた変形形態は、
図16に表わされた変形形態と同様に設計されている。しかし、
図21に示された変形形態では、同心円状に配置されたいくつかの安定化リング243が設けられ、安定化リング243のそれぞれは、全ての羽根24の後縁242に配置され、且つ、軸方向Aに関して加圧側で羽根24を越えて突出する。各安定化リング243は、いずれの場合にも、回転子2と同軸に配置され、且つ、全ての羽根24の後縁242にわたって延在する。
図21に表わされた変形形態では、3つの同心の安定化リング243が設けられている。当然のことながら、1つだけの安定化リング243を設けることも可能である。
【0117】
すでに述べたように、
図16から
図21で説明された変形形態又は方策は、組み合わせることも可能である。したがって、例えば、
図17から
図20による変形形態において、いずれの場合にも1つ又は複数の安定化リング243を設けることも可能である。各後縁が軸方向Aに対して90°とは異なる角度でまた特に90°未満の角度でハブ23に通じている場合、全ての変形形態(
図16から
図21参照)において実現され得るさらに好ましい方策が存在する。この方策は、半径方向において湾曲した後縁242(
図16から
図21参照)、及び、直線状の即ち湾曲していない後縁(図示せず)の、両方に対して可能である。
【0118】
流体力学的安定化に加えて、又はその代わりとして、コイル33又はそれらによって生成される電磁場により、能動的減衰も提供され得る。この目的のために、コイル33によって生成される回転場は、もはや回転子2に対していかなるトルクももたらさないが永久磁石221によって生成される磁場を弱化又は強化するように、配向される。これは、電流ポインタ(current pointer)と磁束ポインタ(magnetic flux pointer)との間にもはや90°の位相変位が存在しないように、コイルによって生成される回転場が、電流ポインタが磁束ポインタと同じ方向又は反対方向を指すように、調節されることを意味する。
【0119】
この方法はまた、回転子を特に迅速に減速させるために、有利に使用され得る。回転子2内に存在する運動エネルギーは、回転子2内の永久磁石221の磁化を変化させようとすることによって破棄される。この回転子2の運動エネルギーの破棄は、回転子2の回転の急減速をもたらす。
【0120】
さらなる好ましい方策は、流体流の圧力又は流量を判定することを可能とするセンサ9が設けられることであり、この場合、センサ9は、検査デバイス5に信号接続される。検査デバイス5は、圧力又は流量を調整又は制御するように設計されることが好ましい。センサ9は、回転子2の吸込み側又は加圧側に配置され得る。
【0121】
次に、
図22から
図24における概略図に基づいて、流体流、例えば空気流の調整又は制御のためにファン1が設計され且つ配置される、様々な変形形態について説明する。ファン1が管100に組み入れられ且つ管において調整可能又は制御可能な流体流を生成するように意図されている、例示的な性質を有する適用が参照される。管100は、チャンバ200内に配置される。これは、半導体産業における場合にそうであり得るように、耐化学性を必要とするチャンバ200であり得る。
【0122】
図22は、チャンバ200を貫通する管100内にファン1が組み入れられている変形形態を示す。ファンは、管100の第1の区間101と第2の区間102との間に配置される。この目的のために、ファン1の吸込み側フランジ63は、第1の区間101のフランジにしっかりと接続され、加圧側フランジ64は、第2の区間102のフランジにしっかりと接続される。ファン1によって生成される流体流は、参照符号のない矢印によって示される。センサ9は、圧力センサ又は流量センサとして設計され、且つ、吸込み側に、即ちファン1の上流に設けられる。センサ9は、例えば、管100に取り付けられてもよく、又は、ファン1に取り付けられてもよい。センサ9は、例えば信号線91を介して、又は無線で、外部の論理ユニット300に信号接続される。例えば、論理ユニット300は、プログラム可能論理制御装置(PLC:programmable logic controller)として設計される。例えば、論理ユニット300では、センサ9のアナログ信号が、ケーブル72を介して検査デバイス5に送られる。検査デバイス5は、センサ9の信号を用いて管100内の流体流を調整又は制御するために、必要な調整デバイスを有する。これらの調整デバイスにより、流体流は、予め決定可能な所望の値に調整され得る。
【0123】
ファンは、通信インターフェース400にさらに接続され、この通信インターフェース400を介して、使用者はデータを入力すること又は読出すことができる。当然のことながら、そのような実施例は、加圧側、即ちファンの下流にセンサ9が配置される場合でも、又は、ファン1の吸込み側及び加圧側の両方にセンサ9が設けられる場合でも、可能である。
【0124】
図23及び
図24に表わされた変形形態に対しては、
図22に示された変形形態との違いのみが説明される。その他の点では、
図22において与えられた説明は、
図23及び
図24に表わされた変形形態にも同じ形で又は同様の形で当てはまる。
【0125】
図23に表わされた変形形態では、センサ9は、例えばセンサ・ケーブル92を介して、ファン1の固定子ハウジング4内の検査デバイス5に直接接続される。センサ9は、ファン1に又は管100に直接取り付けられ得る。
図23は、センサ9がファン1の加圧側に配置されている一実施例を示す。当然のことながら、ここでは、センサ9がファン1の吸込み側に配置される実施例、又は、センサ9がファン1の吸込み側及び加圧側の両方に設けられる実施例も、可能である。このセンサ9と検査デバイス5との間の直接信号接続を用いたとしても、センサ信号のための必要な評価デバイス、並びに流体流を調節するため又は流体流を調整するための制御又は調整デバイスは、検査デバイス5内に直接組み入れられる。
【0126】
図24に表わされた変形形態では、センサ9は、ファン1内に直接組み入れられる。センサ9は、例えば、ファン1のハウジング6に取り付けられるか、又は-
図24に示されるように-固定子ハウジング4に取り付けられてもよい。センサ9は、固定子ハウジング4の加圧側に取り付けられるか(
図24参照)、又は、固定子ハウジング4の吸込み側に取り付けられてもよい。当然のことながら、ここでは、センサ9が吸込み側及び加圧側の両方に設けられる実施例も、可能である。センサ9は、固定子ハウジング4内に配置された検査デバイス5に信号接続される。さらに、この変形形態では、センサ信号のための必要な評価デバイス、並びに流体流を調節するため又は流体流を調整するための制御又は調整デバイスは、検査デバイス5内に直接組み入れられる。特にこの変形形態では、ファン1は、追加の構成要素を伴わずにファン1がファン1によって生成される空気流を圧力又は流量のための予め決定可能な所望の値に調整することができるように、完全に統合されたセンサ9、具体的には流量センサ9又は圧力センサ9を備える。
【符号の説明】
【0127】
1 ファン
2 回転子
3 固定子
4 固定子ハウジング
5 検査デバイス
6 ハウジング
7 支柱
8 熱伝導要素
9 センサ
21 インペラ
22 磁気的有効コア
23 ハブ
24 羽根
31 コイル・コア
32 中心磁極片
33 コイル、集中巻線
41 第1のハウジング部分
42 第2のハウジング部分
61 吸込み側
62 加圧側
63 吸込み側フランジ
64 加圧側フランジ
65 取付け穴
71 フィード・スルー
72 ケーブル
81 カップ
82 バー
83 プレート
84 スリット
91 信号線
92 センサ・ケーブル
100 管
101 第1の区間
102 第2の区間
200 チャンバ
221 永久磁石
222 リフラックス
223 半径方向内側境界表面
231 入口領域
241 前縁
242 後縁
243 安定化リング
300 論理ユニット
311 磁極シュー
400 通信インターフェース
411 内部端面
421 環状領域
A 軸方向
AS 固定子3の外側半径
BM 永久磁石221の最大厚さ
BP 磁極シュー311の開き角度
BR 磁気的有効コア22の厚さ
BS コイル・コア31の幅
D1 第1のハウジング部分41の外径
D2 第2のハウジング部分42の外径
DM 磁気的有効コア22の外径
E 距離
HR 磁気的有効コア22の高さ
HS コイル・コア31の高さ
IR 磁気的有効コア22の内側半径
MP 円柱セグメントの幾何学的中心
MR 磁気的有効コア22の幾何学的中心
MS 固定子3又は中心磁極片32の幾何学的中心
RM 幾何学的中心平面
W1 プレート83の直径1
W2 熱伝導要素8の外径、カップ81の外径