(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】核医学診断装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20241106BHJP
G01T 1/164 20060101ALI20241106BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/164 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 J
(21)【出願番号】P 2020115852
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛裕
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-007693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248175(US,A1)
【文献】特開2008-281441(JP,A)
【文献】特開平11-337645(JP,A)
【文献】特開2020-091274(JP,A)
【文献】特開2011-133454(JP,A)
【文献】特開2010-122025(JP,A)
【文献】特開2005-017142(JP,A)
【文献】特表平10-512372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 7/12
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射ガンマ線をカウントする半導体ガンマ線検出器であって、前記入射ガンマ線を光に変換するシンチレータ、及び、前記光を電気信号に変換し出力する光電子増倍装置を備える半導体ガンマ線検出器と、
ガンマ線のカウントレートに関する情報
として前記半導体ガンマ線検出器に流れる電流の値を取得する取得部と、
前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器の前記光電子増倍装置に負荷されるバイアス電圧値を制御する制御部と、
を備える、核医学診断装置。
【請求項2】
入射ガンマ線をカウントする半導体ガンマ線検出器であって、前記入射ガンマ線を光に変換するシンチレータ、及び、前記光を電気信号に変換し出力する光電子増倍装置を備える半導体ガンマ線検出器と、
ガンマ線のカウントレートに関する情報として撮影対象の被検体の部位に関する情報を取得する
取得部と、
前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器の前記光電子増倍装置に負荷されるバイアス電圧値を制御する制御部と、
を備える、核医学診断装置。
【請求項3】
入射ガンマ線をカウントする半導体ガンマ線検出器であって、前記入射ガンマ線を光に変換するシンチレータ、及び、前記光を電気信号に変換し出力する光電子増倍装置を備える半導体ガンマ線検出器と、
ガンマ線のカウントレートに関する情報として撮影対象の被検体に投与される薬剤の種類に関する情報を取得する
取得部と、
前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器の前記光電子増倍装置に負荷されるバイアス電圧値を制御する制御部と、
を備える、核医学診断装置。
【請求項4】
入射ガンマ線をカウントする半導体ガンマ線検出器であって、前記入射ガンマ線を光に変換するシンチレータ、及び、前記光を電気信号に変換し出力する光電子増倍装置を備える半導体ガンマ線検出器と、
ガンマ線のカウントレートに関する情報を取得する取得部と、
前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器の前記光電子増倍装置に負荷されるバイアス電圧値を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御されたバイアス電圧値に基づいて、前記ガンマ線のエネルギーを算出する際に用いられるパラメータの値を制御する、
核医学診断装置。
【請求項5】
入射ガンマ線をカウントする半導体ガンマ線検出器であって、前記入射ガンマ線を光に変換するシンチレータ、及び、前記光を電気信号に変換し出力する光電子増倍装置を備える半導体ガンマ線検出器と、
ガンマ線のカウントレートに関する情報を取得する取得部と、
前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器の前記光電子増倍装置に負荷されるバイアス電圧値を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御されたバイアス電圧値に基づいて、前記ガンマ線の検出タイミングを補正する際に用いられるパラメータの値を制御する、
核医学診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の生体組織における機能診断を行うことができる核医学診断装置として、PET(Positron Emission computed Tomography)装置(陽電子断層撮影装置)が知られている。PET装置では、半導体ガンマ線検出器(半導体検出器)が用いられる。例えば、半導体ガンマ線検出器は、シンチレータと、光電子増倍装置とを有する。シンチレータは、被検体内の内部組織から放出されたガンマ線を紫外領域にピークを有する光に変換して出力する。光電子増倍装置は、シンチレータから出力された光を電気信号に変換する。光電子増倍装置としてSiPM(Silicon Photomultipliers)が用いられる。例えば、PET装置の検出器では、シンチレータごとにSiPMが設けられる。
【0003】
ここで、SiPMの時間分解能は、SiPMに印加される逆バイアス電圧の大きさに影響を受ける。SiPMの温度が上がると、信号の立ち上がりを調整するために、例えば、逆バイアス電圧の値が大きくされる。しかしながら、逆バイアス電圧の値を大きくすることは、SiPMの温度が更に上昇してしまう一因となる。また、時間分解能は、SiPMが一定以上の温度になると、指数関数的に劣化してしまう場合がある。そもそも、回路自体が、消費電力の増加に対応できない場合も想定される。
【0004】
また、PET装置における撮影では、被検体の体格、測定部位、及び、被検体に投与される薬剤の種類等に起因して、ガンマ線のカウントレート(計数率)が変化する。ここで、SiPMに印加される最適な逆バイアス電圧の値は、カウントレートに応じて異なると考えられる。しかしながら、PET装置における撮影では、ガンマ線のカウントレートに関わらず、SiPMに印加される逆バイアス電圧の値が一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0248175号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0305784号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0276808号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、半導体ガンマ線検出器本来の性能と安定性とを両立させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る核医学診断装置は、半導体ガンマ線検出器と、取得部と、制御部とを備える。半導体ガンマ線検出器は、入射ガンマ線をカウントする。取得部は、ガンマ線のカウントレートに関する情報を取得する。制御部は、前記カウントレートに関する情報に基づいて、前記半導体ガンマ線検出器に負荷されるバイアス電圧値を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るPET装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検出器モジュールの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るSiPMの模式的な回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態における計数情報のリストの一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態における同時計数情報の時系列リストの一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るPET装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示すステップS101及びステップS102の処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図6に示すステップS101及びステップS102の処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図6に示すステップS101及びステップS102の処理の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る逆バイアス電圧とSiPMの時間分解能との関係の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施形態に係るPET装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るPET装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るPET装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、核医学診断装置の実施形態を詳細に説明する。また、本願に係る核医学診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態及び他の変形例や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0010】
(実施形態)
まず、実施形態に係る核医学診断装置の構成について説明する。実施形態では、核医学診断装置の一例としてPET装置を例に挙げて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るPET装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、実施形態に係るPET装置100は、架台装置10と、コンソール装置20とを備える。架台装置10とコンソール装置20とは、有線又は無線で接続されており、互いに通信可能である。
【0012】
架台装置10は、被検体P内で放出された陽電子が電子と結合して対消滅した際に放出された一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を、半導体ガンマ線検出器(半導体検出器)14によって検出し、半導体ガンマ線検出器14から出力された出力信号から計数情報を生成することにより計数情報を収集する。被検体Pには、例えば、陽電子放出核種で標識された放射性薬剤(放射性医薬品)が投与されている。なお、ガンマ線は、放射線の一例である。
【0013】
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台ドライバ13と、半導体ガンマ線検出器14と、計数情報収集回路15と、処理回路16と、電源制御回路17と、冷却装置(冷却モジュール)18とを備える。なお、架台装置10は、
図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
【0014】
天板11は、被検体Pが載置されるベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台ドライバ13は、後述する寝台制御回路23による制御の下、天板11を移動させる。例えば、寝台ドライバ13は、天板11を移動させることで、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0015】
半導体ガンマ線検出器14は、被検体P内から放出されたガンマ線(対消滅ガンマ線)をカウントし検出する。すなわち、半導体ガンマ線検出器14は、入射されたガンマ線(入射ガンマ線)をカウントする。
図1に示すように、半導体ガンマ線検出器14は、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置された複数の検出器モジュール14aを有する。検出器モジュール14aは、被検体P内から放出されたガンマ線を光に変換し、変換した光を電気信号に変換する。
【0016】
ここで、検出器モジュール14aの構成の一例について説明する。
図2は、実施形態に係る検出器モジュール14aの構成の一例を示す図である。
図2に示すように、検出器モジュール14aは、シンチレータアレイ14bと、SiPMアレイ14cとを有する。
【0017】
シンチレータアレイ14bは、2次元状に配列された複数のシンチレータ14dを有する。シンチレータ14dは、被検体Pの内部組織から放射されたガンマ線を紫外領域にピークを有する光(シンチレーション光)に変換して出力する。
【0018】
SiPMアレイ14cは、2次元状に配列された複数のSiPM14eを有する。複数のSiPM14eのそれぞれは、複数のシンチレータ14dのそれぞれに光学的に接続されている。SiPM14eは、光学的に接続されたシンチレータ14dから出力されたシンチレーション光を電気信号に変換し、この電気信号を出力する。なお、SiPM14eは、所定の利得率で、シンチレーション光を電気信号として増倍する。1つのシンチレータ14dと、このシンチレータ14dに光学的に接続された1つのSiPM14eとの組が、1つの検出器画素に対応する。
【0019】
図3は、実施形態に係るSiPM14eの模式的な回路図である。
図3の例に示すように、各SiPM14eには、複数のAPD(Avalanche Photo Diode)セル14fが2次元状に配列されている。APDセル14fは、光電変換素子であり、シリコンをベースとした半導体である。APDセル14fは、シンチレータ14dからのシンチレーション光の入射を受けて電子・正孔対を爆発的に生成する。この現象は電子雪崩と呼ばれる。電子雪崩によりAPDセル14fは、電流パルスを発生する。
【0020】
各SiPM14eに含まれる複数のAPDセル14fは、共通の出力回路14gを介して波形成形回路14hに接続されている。出力回路14gは、複数のAPDセル14fにより発生された電流パルスを重ね合せて、上述した1つの検出器画素に入射したガンマ線のエネルギーに応じた電流パルスであるエネルギー信号を発生する。そして、出力回路14gは、発生されたエネルギー信号を波形成形回路14hに出力する。波形成形回路14hは、出力回路14gからのエネルギー信号の波形を整形し、整形されたエネルギー信号を計数情報収集回路15に出力する。このようにして波形成形回路14hから出力されるエネルギー信号が、半導体ガンマ線検出器14の出力信号である。
【0021】
計数情報収集回路15は、半導体ガンマ線検出器14の出力信号から計数情報を生成し、生成した計数情報を、後述するメモリ24に格納する電気回路である。
【0022】
例えば、計数情報収集回路15は、半導体ガンマ線検出器14の出力信号から計数情報を生成することにより、計数情報を収集する。この計数情報には、ガンマ線の検出位置、エネルギー値、及び検出時間が含まれる。例えば、計数情報には、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)が含まれる。シンチレータ番号(P)は、ガンマ線をシンチレーション光に変換したシンチレータ14dを識別する番号である。なお、シンチレータ番号(P)に代えて、シンチレータ14dにおいてガンマ線がシンチレーション光に変換された空間位置を示す情報が用いられてもよい。また、エネルギー値(E)は、ガンマ線のエネルギー値である。また、検出時間(T)は、ガンマ線がシンチレーション光に変換された時間である。
【0023】
計数情報収集回路15は、半導体ガンマ線検出器14の出力信号からシンチレータ番号(P)及び検出時間(T)を特定するとともに、エネルギー値(E)を算出する。そして、計数情報収集回路15は、特定されたシンチレータ番号(P)及び検出時間(T)並びに算出されたエネルギー値(E)を含む計数情報を生成する。
【0024】
ここで、計数情報収集回路15は、閾値超過時間(TOT:time-over-threshold)法を用いてエネルギー値(E)を算出する。例えば、計数情報収集回路15は、閾値超過時間法により、半導体ガンマ線検出器14の出力信号が閾値を超えた時間を計測し、計測された時間に基づいてエネルギー値(E)を算出する。このような閾値超過時間法において用いられる閾値は、ガンマ線のエネルギーを算出する際に用いられるパラメータの値の一例である。
【0025】
また、計数情報収集回路15は、ガンマ線がシンチレーション光に変換された実際の時間を特定し、特定された実際の時間を公知のタイムオフセット(timing offset)及び公知のタイムウォーク(timing walk)を用いて補正する。そして、計数情報収集回路15は、補正された時間を検出時間(T)として特定する。このようなタイムオフセット及びタイムウォークは、ガンマ線の検出タイミングを補正する際に用いられるパラメータの値の一例である。
【0026】
なお、
図1においては図示を省略しているが、複数の検出器モジュール14aは、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に計数情報収集回路15を備える。例えば、1つの検出器モジュール14aが1つのブロックに属する場合には、計数情報収集回路15は、検出器モジュール14a毎に備えられる。
【0027】
処理回路16は、取得機能16aと、制御機能16bとを備える。取得機能16aは、半導体ガンマ線検出器14に入射されるガンマ線のカウントレートに関する情報を取得する。制御機能16bは、取得されたガンマ線のカウントレートに関する情報に基づいて、半導体ガンマ線検出器14に印加(負荷)される逆バイアス電圧の値(逆バイアス電圧値)を制御する。取得機能16a及び制御機能16bの詳細については後述する。
【0028】
ここで、例えば、
図1に示す処理回路16の構成要素である取得機能16a及び制御機能16bの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で、処理回路16が備えるメモリに記録されている。処理回路16は、各プログラムをメモリから読み出し、読み出した各プログラムを実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路16は、
図1の処理回路16内に示された各機能を有することとなる。処理回路16は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0029】
なお、取得機能16a及び制御機能16bの全ての処理機能がコンピュータによって実行可能な1つのプログラムの形態で、メモリに記録されていてもよい。この場合、処理回路16は、プログラムをメモリから読み出し、読み出したプログラムを実行することでプログラムに対応する取得機能16a及び制御機能16bを実現する。取得機能16aは、取得部の一例である。制御機能16bは、制御部の一例である。
【0030】
電源制御回路17は、逆バイアス電圧をSiPM14eに印加(負荷)する。例えば、処理回路16の制御機能16bによる制御を受けて、電源制御回路17は、電源(図示せず)から供給された電力に基づいて、制御機能16bにより指定された電力をSiPM14eに供給することにより、逆バイアス電圧をSiPM14eに印加する。ここで、SiPM14eに印加される逆バイアス電圧の値(逆バイアス電圧値)は、制御機能16bにより制御される。逆バイアス電圧はバイアス電圧の一例であり、逆バイアス電圧値はバイアス電圧値の一例である。
【0031】
なお、処理回路16及び電源制御回路17は、半導体ガンマ線検出器14内にあってもよい。すなわち、半導体ガンマ線検出器14が、処理回路16及び電源制御回路17を備えてもよい。
【0032】
冷却装置18は、PET装置100の一部を冷却する。例えば、冷却装置18は、制御機能16bによる制御を受けて、半導体ガンマ線検出器14を冷却する。ここで、冷却装置18による冷却の度合い(冷却レベル)は、制御機能16bにより制御される。
【0033】
コンソール装置20は、操作者によるPET装置100の操作を受け付け、PET画像データの撮影を制御するとともに、架台装置10によって収集された計数情報を用いてPET画像データを再構成する。
図1に示すように、コンソール装置20は、入力インターフェース21と、ディスプレイ22と、寝台制御回路23と、メモリ24と、同時計数情報生成回路25と、画像再構成回路26と、システム制御回路27とを備える。なお、コンソール装置20が備える各回路は、バスを介して接続される。
【0034】
入力インターフェース21は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、フットスイッチ、ジョイスティック等により実現される。入力インターフェース21は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられ、入力された各種指示や各種設定を、システム制御回路27に転送する。例えば、入力インターフェース21は、撮影開始指示の入力に用いられる。
【0035】
ディスプレイ22は、システム制御回路27による制御の下、PET画像データに基づくPET画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。ディスプレイ22は、表示部の一例である。ディスプレイ22は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。寝台制御回路23は、寝台ドライバ13を制御する電気回路である。
【0036】
メモリ24は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。メモリ24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0037】
メモリ24は、各計数情報収集回路15によって生成された計数情報のリストを記憶する。メモリ24が記憶する計数情報のリストは、同時計数情報生成回路25による処理に用いられる。なお、メモリ24が記憶する計数情報のリストは、同時計数情報生成回路25による処理に用いられた後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0038】
図4は、実施形態における計数情報のリストの一例を説明するための図である。
図4に示すように、メモリ24は、検出器モジュール14aを識別するモジュールIDに対応付けて、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を含む計数情報を記憶する。
【0039】
また、メモリ24は、同時計数情報生成回路25によって生成された同時計数情報の時系列リストを記憶する。また、メモリ24が記憶する同時計数情報の時系列リストは、画像再構成回路26による処理に用いられる。なお、メモリ24が記憶する同時計数情報の時系列リストは、画像再構成回路26による処理に用いられた後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0040】
図5は、実施形態における同時計数情報の時系列リストの一例を説明するための図である。
図5に示すように、メモリ24は、同時計数情報の通し番号であるコインシデンスNo.(コインシデンスナンバー)に対応付けて、計数情報の組を記憶する。なお、同時計数情報の時系列リストは、計数情報の検出時間(T)に基づき概ね時系列順に並んでいる。
【0041】
また、メモリ24は、画像再構成回路26によって再構成されたPET画像データを記憶する。また、メモリ24が記憶するPET画像データに基づくPET画像は、システム制御回路27によってディスプレイ22に表示される。
【0042】
図1に戻り、同時計数情報生成回路25は、計数情報収集回路15によって生成された計数情報のリストを用いて同時計数情報の時系列リストを生成する。例えば、同時計数情報生成回路25は、メモリ24に記憶された計数情報のリストから、一対のガンマ線を略同時に計数した計数情報の組を、計数情報の検出時間(T)に基づいて検索する。また、同時計数情報生成回路25は、検索した計数情報の組毎に同時計数情報を生成し、生成した同時計数情報を、概ね時系列順に並べながら、メモリ24に格納する。
【0043】
例えば、同時計数情報生成回路25は、操作者によって入力された同時計数情報を生成する際の条件(同時計数情報生成条件)に基づいて、同時計数情報を生成する。同時計数情報生成条件として、時間ウィンドウ(時間ウィンドウ幅)が指定される。例えば、同時計数情報生成回路25は、時間ウィンドウに基づいて、同時計数情報を生成する。
【0044】
例えば、同時計数情報生成回路25は、メモリ24を参照し、検出時間(T)の時間差が時間ウィンドウ以内にある計数情報の組を、検出器モジュール14a間で検索する。例えば、同時計数情報生成回路25は、同時計数情報生成条件を満たす組として、「P11、E11、T11」と「P22、E22、T22」との組を検索すると、この組を同時計数情報として生成し、メモリ24に格納する。なお、同時計数情報生成回路25は、時間ウィンドウとともにエネルギーウィンドウ(エネルギーウィンドウ幅)を用いて同時計数情報を生成してもよい。例えば、同時計数情報生成回路25は、メモリ24を参照し、検出時間(T)の時間差が時間ウィンドウ以内にあり、かつ、エネルギー値(E)がエネルギーウィンドウ内にある計数情報の組を、検出器モジュール14a間で検索する。エネルギーウィンドウの幅は、ガンマ線のエネルギーを算出する際に用いられるパラメータの値の一例である。また、同時計数情報生成回路25は、架台装置10内に設けられていてもよい。同時計数情報生成回路25は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0045】
画像再構成回路26は、PET画像データを再構成する。例えば、画像再構成回路26は、メモリ24に記憶された同時計数情報の時系列リストを読み出し、読み出した時系列リストを用いてPET画像データを再構成する。また、画像再構成回路26は、再構成したPET画像データをメモリ24に格納する。画像再構成回路26は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0046】
システム制御回路27は、架台装置10及びコンソール装置20を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御回路27は、PET装置100における撮影を制御する。システム制御回路27は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0047】
以上、実施形態に係るPET装置100の全体構成について説明した。ここで、仮に、PET装置による撮影において、ガンマ線のカウントレートに関わらず、SiPMに印加される逆バイアス電圧の値が一定である場合について説明する。この場合、低カウントレート又は高カウントレートでSiPMの性能を最大限活かすことができなくなる。また、SiPMの性能を最大限活かそうとする場合には、高カウントレートの場合でもSiPMを備える検出器の性能が劣化し難くなるように設計する制約がある。
【0048】
そこで、上述した構成のもと、PET装置100は、以下に説明するように、半導体ガンマ線検出器14の本来の性能と安定性とを両立させることができるように構成されている。
【0049】
図6は、実施形態に係るPET装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、例えば、PET装置100が被検体PのPET画像データの撮影を開始した場合に実行される。なお、撮影の開始時には、SiPM14eに印加される逆バイアス電圧の値はデフォルト値「V2」であり、冷却装置18による冷却のレベルは、デフォルトの冷却レベル「FR2」である。また、撮影の開始時には、タイムオフセットはデフォルト値「T
OFFSET2」であり、タイムウォークはデフォルト値「T
WALK2」である。また、撮影の開始時には、エネルギーウィンドウの幅はデフォルト値「W2」であり、閾値超過時間法において用いられる閾値はデフォルト値「Th2」である。
【0050】
図6に示すように、取得機能16aは、半導体ガンマ線検出器14に入射されたガンマ線のカウントレートに関する情報を取得する(ステップS101)。そして、制御機能16bは、入射されたガンマ線のカウントレートに関する情報に基づいて、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであるか否かを判定する(ステップS102)。
【0051】
ここで、入射されたガンマ線のカウントレートに関する情報として、以下、具体例を挙げて説明する。
図7~9は、
図6に示すステップS101及びステップS102の処理の一例を説明するための図である。例えば、取得機能16aは、ステップS101において、入射されたガンマ線のカウントレートに関する情報として、
図7に示すように、半導体ガンマ線検出器14に流れる電流の値を取得する。より具体的には、取得機能16aは、SiPM14eに流れる電流の値を、半導体ガンマ線検出器14に流れる電流の値として取得する。
【0052】
例えば、電源制御回路17とSiPM14eとの間で電流が流れている。電流値が大きくなるほどカウントレートが高くなると考えられる。そこで、電流測定器(図示せず)が、SiPM14eに入力される電流の値又はSiPM14eから出力される電流の値を測定する。そして、取得機能16aは、電流測定器により測定された電流の値を半導体ガンマ線検出器14に流れる電流の値として取得する。
【0053】
そして、制御機能16bは、ステップS102において、
図7に示すように、取得機能16aにより取得された電流の値が閾値を超えているか否かを判定する。制御機能16bは、電流の値が閾値を超えている場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。制御機能16bは、電流の値が閾値を超えていない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0054】
また、カウントレートが所定値以上の高カウントレートとなるような特定の種類の放射性薬剤が投与された被検体PのPET画像データを撮影する場合には、カウントレートが所定値以上の高カウントレートとなると考えられる。そこで、
図8に示すように、取得機能16aは、ステップS101において、撮影対象の被検体Pに投与された放射性薬剤の種類に関する情報を取得してもよい。例えば、メモリ24には、検査情報が記憶されている。そして、検査情報には、被検体Pに投与された放射性薬剤の種類が含まれている。そこで、取得機能16aは、ステップS101において、メモリ24に記憶された検査情報から撮影対象の被検体Pに投与された放射性薬剤の種類を取得してもよい。
【0055】
そして、制御機能16bは、ステップS102において、
図8に示すように、取得機能16aにより取得された放射性薬剤の種類が、高カウントレートとなる特定の種類であるか否かを判定する。制御機能16bは、放射性薬剤の種類が特定の種類である場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。また、制御機能16bは、放射性薬剤の種類が特定の種類ではない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0056】
また、放射性薬剤が投与された被検体Pの撮影対象の部位が、心臓等の放射性薬剤が集積しやすい部位である場合には、カウントレートが所定値以上の高カウントレートとなると考えられる。そこで、
図9に示すように、取得機能16aは、ステップS101において、放射性薬剤が投与された被検体Pの撮影対象の部位に関する情報を取得してもよい。例えば、メモリ24に記憶された検査情報には、撮影対象の部位が含まれている。そこで、取得機能16aは、ステップS101において、メモリ24に記憶された検査情報から撮影対象の部位を取得してもよい。なお、取得機能16aは、スカウト画像データ又はPET画像データから、撮影対象の部位を抽出してもよい。
【0057】
そして、制御機能16bは、ステップS102において、
図9に示すように、取得機能16aにより取得又は抽出された撮影対象の部位が、高カウントレートとなる特定の部位であるか否かを判定する。制御機能16bは、撮影対象の部位が特定の部位である場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。また、制御機能16bは、撮影対象の部位が特定の部位ではない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0058】
なお、取得機能16aは、ステップS101においてガンマ線の線量を示す線量情報を取得してもよい。この場合、制御機能16bは、ステップS102において線量情報が示す線量が閾値を超えたか否かを判定することにより、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであるか否かを判定してもよい。具体的には、制御機能16bは、線量情報が示す線量が閾値を超えた場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。また、制御機能16bは、線量情報が示す線量が閾値を超えていない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0059】
また、取得機能16aは、ステップS101において逆バイアス電圧の値を取得してもよい。この場合、制御機能16bは、ステップS102において逆バイアス電圧の値が閾値を超えたか否かを判定することにより、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであるか否かを判定してもよい。具体的には、制御機能16bは、逆バイアス電圧の値が閾値を超えた場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。また、制御機能16bは、逆バイアス電圧の値が閾値を超えていない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0060】
また、取得機能16aは、ステップS101において、入力インターフェース21を介してユーザから入力された高カウントレートであるか否かを示す情報を取得してもよい。この場合、ステップS102において、制御機能16bは、ステップS101で取得された情報が高カウントレートであることを示すか否かを判定することにより、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであるか否かを判定してもよい。
【0061】
具体的には、制御機能16bは、ステップS101で取得された情報が高カウントレートであることを示す場合(ステップS102:Yes)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートであると判定する。また、制御機能16bは、ステップS101で取得された情報が高カウントレートであることを示さない場合(ステップS102:No)には、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートではないと判定する。
【0062】
図6の説明に戻り、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートでない場合(ステップS102:No)、制御機能16bは、上述した各種のデフォルト値やデフォルトの冷却レベルを変更せずに維持する(ステップS103)。そして、制御機能16bは、
図6に示す処理を終了する。
【0063】
図10は、実施形態に係る逆バイアス電圧とSiPM14eの時間分解能との関係の一例を示すグラフである。
図10に示すグラフでは、横軸が逆バイアス電圧の値を示し、縦軸がSiPM14eの時間分解能を示す指標を示す。
図10の例では、SiPM14eの時間分解能を示す指標が小さくなるほど、時間分解能が高くなる。
図10の例に示すように、ガンマ線のカウントレートが高カウントレートでない場合には、SiPM14eの時間分解能が最大(最高)となるように(すなわち、指標が最小値「TR2」となるように)、SiPM14eに印加される逆バイアス電圧のデフォルト値として「V2」が用いられる。
【0064】
一方、入射されたガンマ線のカウントレートが高カウントレートである場合(ステップS102:Yes)、制御機能16bは、SiPM14eに流れる電流の値を小さくするために、デフォルト値「V2」よりも小さい値「V1」の逆バイアス電圧をSiPM14eに印加するように、電源制御回路17を制御する(ステップS104)。これにより、電源制御回路17は、値が「V1」である逆バイアス電圧をSiPM14eに印加する。
図10の例に示すように、逆バイアス電圧の値が「V1」である場合には、SiPM14eの時間分解能を示す指標が、「TR2」よりも大きい「TR1」となる。このように、ステップS104では、制御機能16bは、入射されたガンマ線のカウントレートに関する情報に基づいて、半導体ガンマ線検出器14に負荷される逆バイアス電圧値を制御する。
【0065】
ここで、ガンマ線のカウントレートが高カウントレートである場合には、半導体ガンマ線検出器14の消費電力が大きくなり発熱量が多くなる。そこで、制御機能16bは、冷却装置18による半導体ガンマ線検出器14に対する冷却のレベルが、デフォルトの冷却レベル「FR2」よりも高い冷却レベル「FR1」となるように、冷却装置18を制御する(ステップS105)。
【0066】
そして、制御機能16bは、ステップS104において変更された逆バイアス電圧の値「V1」に基づいて、各種のパラメータ等を制御する(ステップS106)。そして、制御機能16bは、
図6に示す処理を終了する。
【0067】
図11~13を参照して、ステップS106の処理について具体例を挙げて説明する。
図11~13は、実施形態に係るPET装置100が実行する処理の一例を説明するための図である。
【0068】
例えば、逆バイアス電圧の値に応じてダークカウントレートが変更される。ダークカウントレートとは、例えば、SiPM14eに流れる暗電流に基づくカウントレートである。例えば、逆バイアス電圧の値が大きくなるとダークカウントレートも大きくなり、逆バイアス電圧の値が小さくなるとダークカウントレートも小さくなる。上述した閾値超過時間法において用いられる閾値は、入射されたガンマ線に基づくカウントレートとダークカウントレートとを区別するために用いられる。すなわち、かかる閾値は、暗電流に基づいてガンマ線をカウントせずに、実際に入射されたガンマ線をカウントするために用いられる。ここで、ステップS104で逆バイアス電圧の値が「V1」に変更されているため、閾値超過時間法において用いられる閾値は、変更されることが好ましい。
【0069】
そこで、制御機能16bは、ステップS106において、
図11に示すように、閾値超過時間法において用いられる閾値を変更する。例えば、処理回路16のメモリには、複数の逆バイアス電圧のそれぞれと、各逆バイアス電圧に対応する最適な閾値とが対応付けられて記憶されている。ここで、最適な閾値の一例について説明する。例えば、最適な閾値とは、ダークカウント(SiPM14eに流れる暗電流に基づくカウント)ではなく、実際に入射されたガンマ線(ガンマ線イベント)によるカウントである確率が統計学的に所定の確率よりも高くなるような閾値を指す。例えば、熱雑音の増加や逆バイアス電圧の増加により、ダークカウントレートが高くなる場合には、最適な閾値は高くなる。そして、ステップS106において、制御機能16bは、メモリの記憶内容を参照し、逆バイアス電圧の値「V1」に対応する最適な閾値「Th1」を特定する。そして、ステップS106において、制御機能16bは、閾値超過時間法において用いられる閾値を、デフォルト値「Th2」から閾値「Th1」に変更するように、計数情報収集回路15を制御する。例えば、閾値「Th1」は、デフォルト値「Th2」よりも小さい。このような制御を受けて、計数情報収集回路15は、閾値超過時間法において用いられる閾値を、デフォルト値「Th2」から閾値「Th1」に変更する。このように、制御機能16bは、ステップS104で制御された逆バイアス電圧値に基づいて、閾値を制御する。
【0070】
また、上述したタイムオフセット及びタイムウォークも、逆バイアス電圧の値の変更の影響を受ける。具体的には、逆バイアス電圧の値が変更されるとSiPM14eのキャリアの移動速度も変更されるので、タイムオフセット及びタイムウォークも影響を受ける。そこで、制御機能16bは、ステップS106において、
図12に示すように、タイムオフセット及びタイムウォークを変更する。例えば、処理回路16のメモリには、複数の逆バイアス電圧のそれぞれと、各逆バイアス電圧に対応する最適なタイムオフセット及び最適なタイムウォークとが対応付けられて記憶されている。ここで、最適なタイムオフセット及び最適なタイムウォークの一例について説明する。例えば、最適なタイムオフセットとは、基準とする時間(例えば、信号処理遅延を排し、ガンマ線が相互作用したと推測される時間)が、いずれのチャンネルも同一になるように設定されたタイムオフセットを指す。また、例えば、最適なタイムウォークとは、ゲインが変化した場合において、ガンマ線のエネルギーと立ち上がり時間の関係を適切に補正するタイムウォークを指す。そして、ステップS106において、制御機能16bは、メモリの記憶内容を参照し、逆バイアス電圧の値「V1」に対応する最適なタイムオフセット「T
OFFSET1」及び最適なタイムウォーク「T
WALK1」を特定する。
【0071】
そして、ステップS106において、制御機能16bは、タイムオフセットを、デフォルト値「TOFFSET2」から「TOFFSET1」に変更するように、計数情報収集回路15を制御する。また、ステップS106において、制御機能16bは、タイムウォークを、デフォルト値「TWALK2」から「TWALK1」に変更するように、計数情報収集回路15を制御する。これらの制御を受けて、計数情報収集回路15は、タイムオフセットをデフォルト値「TOFFSET2」から「TOFFSET1」に変更し、タイムウォークをデフォルト値「TWALK2」から「TWALK1」に変更する。このように、制御機能16bは、ステップS104で制御された逆バイアス電圧値に基づいて、タイムオフセット及びタイムウォークを制御する。
【0072】
また、上述したエネルギーウィンドウも、逆バイアス電圧の値の変更の影響を受ける。そこで、制御機能16bは、ステップS106において、
図13に示すように、エネルギーウィンドウの幅や位置を変更する。例えば、処理回路16のメモリには、複数の逆バイアス電圧のそれぞれと、各逆バイアス電圧に対応する最適なエネルギーウィンドウの幅とが対応付けられて記憶されている。ここで、最適なエネルギーウィンドウの幅の一例について説明する。例えば、最適なエネルギーウィンドウの幅とは、エネルギースペクトルがシフト又は縮んでしまっても、総カウント数が変化しないように調整されるエネルギーウィンドウを指す。そして、ステップS106において、制御機能16bは、メモリの記憶内容を参照し、逆バイアス電圧の値「V1」に対応する最適なエネルギーウィンドウの幅「W1」を特定する。
【0073】
そして、ステップS106において、制御機能16bは、
図13に示すように、エネルギーウィンドウの幅を、デフォルト値「W2」から「W1」に変更するように、同時計数情報生成回路25に通知する。具体的には、制御機能16bは、変更後のエネルギーウィンドウの幅「W1」を計数情報のリストに付加し、変更後のエネルギーウィンドウの幅「W1」が付加された計数情報のリストをメモリ24に記憶させる。同時計数情報生成回路25は、計数情報のリストに付加されたエネルギーウィンドウの幅「W1」を取得する。そして、同時計数情報生成回路25は、エネルギーウィンドウの幅を、デフォルト値「W2」から、取得された「W1」に変更する。このように、ステップS106では、制御機能16bは、ステップS104で制御された逆バイアス電圧値に基づいて、エネルギーウィンドウの幅を制御する。
【0074】
なお、メモリ24に複数のファイルが記憶され、複数のファイルのそれぞれには複数のエネルギーウィンドウの幅のそれぞれが登録されていてもよい。そして、同時計数情報生成回路25は、複数のファイルのうちいずれかのファイルに登録されたエネルギーウィンドウの幅を、同時計数情報の時系列リストを生成する際に用いるエネルギーウィンドウの幅として設定してもよい。このような場合、ステップS106で、制御機能16bは、変更後のエネルギーウィンドウの幅「W1」が登録されたファイルの識別子を計数情報のリストに付加する。そして、制御機能16bは、ファイルの識別子が付加された計数情報のリストをメモリ24に記憶させる。そして、同時計数情報生成回路25は、計数情報のリストに付加されたファイルの識別子を取得する。そして、同時計数情報生成回路25は、メモリ24に記憶された複数のファイルのうち、取得された識別子が示すファイルに登録されたエネルギーウィンドウの幅「W1」を取得する。そして、同時計数情報生成回路25は、エネルギーウィンドウの幅を、デフォルト値「W2」から、取得された「W1」に変更する。
【0075】
以上、実施形態に係るPET装置100について説明した。実施形態によれば、高カウントレートの場合に、半導体ガンマ線検出器14において、カウントレートに応じて逆バイアス電圧を変更するとともに、変更後の逆バイアス電圧に応じて各種のパラメータや冷却レベルを変更することで、SiPM14eを備える半導体ガンマ線検出器14の本来の性能と安定性を両立させることができる。
【0076】
また、実施形態によれば、異なるカウントレートの条件下でも、SiPM14eを備える半導体ガンマ線検出器14の性能を安全に最大限活かせるだけでなく、電源系を含む後段回路をそのまま異なる仕様のSiPMに使えるようにすることができる。
【0077】
また、上述した実施形態によれば、臨床検査において、被検体Pの撮影を行った後に、時間をおいて、再度、被検体Pの撮影を行う場合には、被検体P内の放射性薬剤の濃度が低くなっているため、
図6のステップS102で否定判定される。このため、再度、被検体Pの撮影を行う場合には、デフォルトの設定で撮影が行われる。
【0078】
なお、第1の実施形態において、PET装置100がカウントレートに応じて、逆バイアス電圧の値を2段階に変更する場合について説明した。しかしながら、PET装置100は、カウントレートに応じて逆バイアス電圧の値を2段階よりも多い複数段階に変更してもよい。また、PET装置100は、カウントレートに応じて、SiPM14eの特性に合わせて、所定の計算式により逆バイアス電圧の値を連続的に変更してもよい。
【0079】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、プロセッサの回路内のメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内のメモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路とは別に設けられたメモリにプログラムを保存しても構わない。この場合、プロセッサは、このメモリに記憶されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0080】
以上述べた少なくとも1つの実施形態のPET装置100によれば、半導体ガンマ線検出器14の本来の性能と安定性とを両立させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
14 半導体ガンマ線検出器
16a 取得機能
16b 制御機能