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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】角底包装袋および角底包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/14 20060101AFI20241106BHJP
   B31B 70/64 20170101ALI20241106BHJP
   B31B 155/00 20170101ALN20241106BHJP
   B31B 160/20 20170101ALN20241106BHJP
   B31B 170/20 20170101ALN20241106BHJP
【FI】
B65D30/14 J
B31B70/64
B31B155:00
B31B160:20
B31B170:20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020122916
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022024357
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】大澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 知也
(72)【発明者】
【氏名】要藤 昭男
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332049(JP,A)
【文献】特開2001-206390(JP,A)
【文献】特開2018-131210(JP,A)
【文献】特開2004-115118(JP,A)
【文献】特開2017-190137(JP,A)
【文献】特開2019-199304(JP,A)
【文献】特開2002-046197(JP,A)
【文献】特開2000-334861(JP,A)
【文献】特開2009-057071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/14
B31B 70/64
B31B 155/00
B31B 160/20
B31B 170/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層が塗工紙からなる層と最内層がシーラント層の2層のみの積層体からなる四角筒状の側面部と、
前記側面部と底部シール部により接合することで、当該側面部の四角筒状の開口の一端を塞ぐ底面部と、
を有する角底包装袋であって、
前記底面部は、前記側面部を構成する積層体Aとは異なり、かつ、最外層が二軸延伸フィルムからなる層であり、最内層がシーラント層からなり、紙を有しない積層体からなり、
前記底面部は、折り畳んだ状態で平面視において台形状であり、
前記側面部は、一対の平面部と一対の側部とが4つの側部シール部により接合することで構成され、
前記積層体Aを構成する各層において、フィルムの分子配向の傾きの差や前記底部シール部及び前記4つの側部シール部のフィルムの熱収縮の差がなく、
前記四角筒状の開口の他端は開口部であり、
前記開口部が開いた状態において、前記側面部の積層体同士は前記4つの側部シール部でのみ重なる
ことを特徴とする角底包装袋。
【請求項2】
前記側面部は、前記側部および前記底面部を折り曲げることで折り畳みが可能であることを特徴とする請求項1に記載の角底包装袋。
【請求項3】
請求項2に記載の角底包装袋の製造方法であって、一対の平面部と一対の側部からなる四角筒状の側面部のうち、少なくとも平面部を構成する平面部フィルムを搬送させる搬送工程を含み、
前記搬送工程において、前記平面部フィルムの搬送方向が、前記側面部の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と一致していることを特徴とする角底包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角底包装袋、角底包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、雑貨品などの包装として、樹脂等からなる軟質フィルム製の包装袋が用いられる場合がある。このような包装袋として、一対の平面部、一対の側面部および底面部を有する角底包装袋が知られている。角底包装袋は、包装袋を構成する各面部の接合形態や軟質フィルムの搬送方向などの製造方法の違いにより種々の形態が存在する(例えば、特許文献1、2)。多くの形態の場合、角底包装袋は、扁平形状に折り畳まれた状態に製造され、その扁平形状の折り畳まれ方もそれぞれ異なる。
【0003】
特許文献1には、プラスチックフィルム等のラミネートフィルムから四角筒形の自立袋(角底包装袋)を製造するための方法が記載されている。この方法は、四角筒形の自立袋の製造方法において帯状筒状体を1単位長さづつ間欠供給し、前面材を残した状態で後面材と両側面材に切目を入れる。そして、切断端縁部を側面材の折襞の幅だけ折返し、開き面に底面材を重合させ、開き面に対して底面材の左右両側縁部のみを熱シールする。さらに、折返し片を底面材とともに元に折戻し、底面材の2つの端縁部を開き面に熱シールし、底面材を取付けた袋体を帯状筒状体から切離す、という各工程からなる。特許文献1の四角筒形の自立袋の製造方法においては、自立袋の上下方向は、ラミネートフィルムの流れ方向と一致している。
【0004】
特許文献2には、プラスチックフィルム等のラミネートフィルムから包装材料(角底包装袋)を製造する方法が記載されている。この方法では、前壁面、後壁面および側壁面がそれぞれ、溶接シームにより結合される別個の材料区分から形成される。前壁面および後壁面の材料区分が、互いにオーバラップされて共通の第1搬送方向で搬送されるフラットな第1および第2材料メインウェブによって形成される。折畳まれてサイド折畳みウェブとして形成されたフラットな第3材料ウェブからサイド折畳み区分が定尺切断されて、第1搬送方向に対して横方向の第2搬送方向で、一方の材料メインウェブに載置されるように搬送される。バッグ底部を成す別個の材料区分を形成するフラットな第4材料ウェブが、両材料メインウェブの少なくとも一方に統合され、次いで、第1搬送方向に対して平行に搬送されかつサイド折畳み区分および両材料メインウェブと隣接する側縁部に沿って溶着される。特許文献2の包装材料の製造方法においては、包装材料の上下方向は、ラミネートフィルムの流れ方向と直交している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-334861号公報
【文献】特開2000-254984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、特許文献1、2などに示す角底包装袋に使用するプラスチックフィルム等のラミネートフィルムとして、延伸フィルムを最外層に設けた積層体を用いる。しかしながら、この積層体を用いて角底包装袋を製造すると、製造された直後の、折り畳まれて扁平形状の角底包装袋は、角底包装袋の四隅に反りが生じることがある。この反りは、一般にS字カールと呼ばれる。この反りが生じた場合、例えば、出荷のため、複数の角底包装袋を結束して箱等に収納する際に、かさ高になり収まりが悪い。また、角底包装袋にこのような反りが生じると、角底包装袋に食品等の充填物を充填する際に、充填を行うための開口部が開きにくくなる場合がある。
本発明は、延伸フィルムを最外層に設けた積層体を用いる場合に比較して、反りが生じにくい角底包装袋および角底包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、最外層が塗工紙からなる層と最内層がシーラント層の2層のみの積層体からなる四角筒状の側面部と、側面部と底部シール部により接合することで、側面部の四角筒状の開口の一端を塞ぐ底面部と、を有する角底包装袋であって、底面部は、側面部を構成する積層体Aとは異なり、かつ、最外層が二軸延伸フィルムからなる層であり、最内層がシーラント層からなり、紙を有しない積層体からなり、底面部は、折り畳んだ状態で平面視において台形状であり、側面部は、一対の平面部と一対の側部とが4つの側部シール部により接合することで構成され、積層体Aを構成する各層において、フィルムの分子配向の傾きの差や底部シール部及び4つの側部シール部のフィルムの熱収縮の差がなく、四角筒状の開口の他端は開口部であり、開口部が開いた状態において、側面部の積層体同士は4つの側部シール部でのみ重なることを特徴とする角底包装袋が提供される。
ここで、側面部は、側部および底面部を折り曲げることで折り畳みが可能であるようにすることができる。この場合、角底包装袋の製造時に容積が小さくなる。
【0008】
さらに、本発明によれば、一対の平面部と一対の側部からなる積層体からなる四角筒状の側面部のうち、少なくとも平面部を構成する平面部フィルムを搬送させる搬送工程を含み、搬送工程において、前記平面部フィルムの搬送方向が、側面部の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と一致していることを特徴とする角底包装袋の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反りが生じにくい角底包装袋および角底包装袋の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態における包装袋の構成例を示す図である。
図2】包装袋を折り畳んだ状態を示した図である。
図3】(a)~(c)は、底面部についてさらに詳しく説明した図である。
図4】(a)~(c)は、側面部を構成する積層体の断面図である。
図5】S字カールについて示した図である。
図6】包装袋の製造方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<包装袋の全体説明>
図1は、本実施の形態における角底包装袋10(以下、単に「包装袋10」という。)の構成例を示す図である。
図示するように本実施の形態の包装袋10は、包装袋10の側面を構成する側面部11と、包装袋10の底面を構成する底面部12とを備える。
側面部11は、一対の平面部11aと一対の側部11bとが交互に接合され、2つの側部11bのそれぞれが対向する位置に配置された四角筒状である。
底面部12は、側面部11の四角筒状の開口の一端を塞ぐように接合されている。
【0012】
側面部11の平面部11aと側部11bとの接合は、これらを構成する積層体同士の熱溶着によるものである。その結果、積層体同士が熱溶着することで外側に突出する側部シール部SL、SRが生じる。側面部11にこのようなシール部SL、SRを設けることで、包装袋10の自立性が向上する。
【0013】
また、側面部11の四角筒状の開口の一端を塞ぐ底面部12側とは反対側の他端は、開口部Kとなっている。そして、開口部Kから、包装袋10に充填物を充填することができる。充填物は、特に限られるものではないが、例えば、食品、医療品、雑貨品などである。そして、充填後に開口部Kを封止することで、包装袋10に充填した充填物を、封入した状態で流通させることができる。また、包装袋10の上方において、側部シール部SL、SRには、切り込みである開け口11cが設けられている。そして、消費者は、開け口11cを引裂き開始部として、側面部11を引き裂くことで、包装袋10に充填された充填物を取り出すことができる。
【0014】
また、包装袋10は、側部11bおよび底面部12が、予め定められた折り線により折り曲げ可能となっている。そして、折り畳んだ状態では、包装袋10の対向する2つの平面部11aが近接し、包装袋10の内部の空間は、ほぼ消滅する。そして、包装袋10は、扁平形状となる。
対して、側部11bおよび底面部12を折り曲げず、伸ばした状態では、包装袋10は、広がった状態となり、この状態において、側面部11は四角筒状である。
【0015】
図2は、包装袋10を折り畳んだ状態を示した図である。
側部11bは、矩形状であり、四角筒状の一端と他端とをつなぐ方向に延び、半折する折り線Tにて谷折りに半折してV字状となり、V字の頂部V1を包装袋10の内部方向に突出させつつ折り畳むことができる。なおこの場合、図2に示すように、2つの側部11bの頂部V1は、互いに対向している。
【0016】
図3(a)~(c)は、底面部12についてさらに詳しく説明した図である。図3(a)は、底面部12を伸ばした状態を示している。図示するように、底面部12は、矩形状であり、包装袋10を折り畳んだ状態において、袋内方に凸となるように折り曲げられる。底面部12は、袋内方に凸となるように折り曲げられる谷折りとなる折り線Tと、袋外方に凸となるように折り曲げられる山折りとなる折り線Yとを有する。図3(a)において、折り線Tは点線、折り線Yは一点鎖線で示している。折り線Tは、一対の平面部11aとの中間部に、一対の平面部11aと平行かつ底面部12の周縁部より内側で終端する直線部T1と、直線部T1の両端部T2から対応する底面部12の角部に向かって延びるV字状部T3と、を有して形成されている。折り線Yは、折り線Tにおける直線部T1の両端部T2から底面部12の短辺に向かってほぼ垂直に延びている。底面部12が袋内方に凸となるように折り曲げられることにより、底面部12は、一対の平面部11aのそれぞれとが互いに近接するように折られ、図3(b)に示す状態となる。
なお、折り畳んだ状態では、底面部12は、図2に示すように、平面視で台形状に折り畳まれる。直線部T1に相当するこの台形の上辺を頂部V2とすると、底面部12は、頂部V2を、包装袋10の内部方向であり開口部Kの方向に突出させつつ折り畳まれている。
図2に示すように、半折されて長方形状に折り畳まれた側部11bと、台形状に折り畳まれた底面部12が重なる箇所は三角形状部Wである。この三角形状部Wでは、側部11bは、底面部12に挟まれつつ畳まれ重なっている。
【0017】
また、図3(c)は、底面部12の底部シール部SDについて示した図である。この底部シール部SDは、矩形状の底面部12の四辺のそれぞれに沿って設けられ、底面部12と平面部11aおよび側部11bとを、これらを構成する積層体同士の熱溶着によりそれぞれ接合しているものである。
【0018】
<側面部11および底面部12の層構成の説明>
次に、側面部11および底面部12の層構成について説明を行う。
図4(a)~(c)は、側面部11を構成する積層体の断面図である。
このうち、図4(a)~(b)は、本実施の形態の側面部11の積層体の断面構成を示し、図4(c)は、従来使用されている側面部の積層体の一例の断面構成を示している。なお、図中下方は、包装袋10の内部側であり、図中上方は、包装袋10の外部側である。また、ここで説明する側面部11には、平面部11aおよび側部11bの双方を含む。
従来の角底包装袋の側面部は、印刷適性、強度を考慮して、最外層に二軸延伸フィルムが用いられる。印刷は二軸延伸フィルムに施され、印刷層Prは二軸延伸フィルムの内側に位置する場合が多い。この場合、この二軸延伸フィルムに起因して、製造直後の包装袋の四隅に、反りが生じることがある。詳細には、四隅の隣り合う角部において片方が上に、もう片側が下にカールした反りが生じる。これは、S字カールとも呼ばれる。
【0019】
図5は、S字カールについて示した図である。
この場合、従来の包装袋である包装袋10Jの平面部は、上部において手前側である一方の側方向で上にカールし、奥側である他方の側で下にカールしている。シール部SLJ、SRJ、SDJは、シール部SLJ、SRJ、SDJのない部分より剛性を有しているために反りが生じにくく、シール部のない上部開口部KJの角部において反りが生じやすい。
【0020】
反りが生じるのは、以下の通りであると考えられる。
二軸延伸フィルムは、フィルム製造時に縦方向と横方向とに引っ張られて延伸され、樹脂の分子がこれらの向きに配向する。このとき、フィルムの幅方向中央部付近では、分子の配向方向がフィルムの縦方向または横方向と一致するが、幅方向端部付近では、フィルムの縦方向または横方向に一致せず、これらの方向から傾く方向に配向することがある。そして、最外層に二軸延伸フィルムを用いた積層体から側面部を形成した従来の包装袋10Jにおいて、図1のように、一対の平面部を対向させて配した場合、それぞれの平面部の最外層の二軸延伸フィルムの分子の配向の向きが、異なる向きとなり、その異なりが大きいときに反りが生じると考えられる。また、同様のことは、一対の側部においても言うことができる。
さらに、包装袋10Jの製造時に、各シール部SLJ、SRJ、SDJを形成するためのヒートシールにおいて、対向する一対の平面部の最外層の二軸延伸フィルムの配向の向きの異なりが大きいことで、熱収縮に差が生じ、各シール部SLJ、SRJ、SDJの中でも熱収縮率が大きい箇所と小さい箇所が生じることも、包装袋10Jの四隅の反りの原因と考えられる。上述したように、反りはシールが施されていない上部開口部KJの角部にて生じやすい。
【0021】
その結果、包装袋10Jの製造直後の折り畳まれた状態で、包装袋10Jの四隅に反りが生じることがある。つまり上述したS字カールが生じる。そして、S字カールが生じると、上述したように、例えば、出荷のため、数十枚の包装袋10Jを結束した結束体はかさ高くなり、この結束体を箱等に収納する際に、収まりが悪くなる場合がある。さらに、包装袋10Jに食品等の充填物を充填する際に、充填を行うための上部開口部KJが開きにくくなる場合がある。特に、S字カールは、包装袋10Jの側面部を構成する積層体が、側面部の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と、積層体を構成するフィルムの流れ方向とが一致している場合に生じやすい。
そこで、本実施の形態では、最外層に二軸延伸フィルムを用いない側面部11を使用することで、この問題の抑制を図っている。
【0022】
本実施の形態における側面部11を構成する積層体は、最外層112が紙の積層体Aである。また、側面部11に印刷を行いたい場合は、紙の外面側に印刷が施される。
さらに、印刷を保護するコートが施されていてもよい。
【0023】
最外層112を構成する紙として使用することができる紙の種類は、製品の外観や形態によって適宜選択すればよく、特に限られるものではないが、例えば、晒クラフト紙、片艶晒クラフト紙などのクラフト紙、クラフト紙に塗料を塗工した塗工紙、箔用原紙、上質紙、レーヨン紙、純白ロール紙等が挙げられる。この中でも、強度があり、表面が平滑で印刷適性に優れることから塗工紙が好ましい。また、包装袋10を製造する工程において、包装袋10を1袋ずつに切り分けるなどの切断を行う際に、紙粉が発生する量が少ないことが好ましい。紙粉の発生量が少ない紙の場合、切断線の見栄えもよいため好ましい。この観点からも、塗工紙が好ましい。さらに、側面部11の側部11bは、折り曲げることから、折曲げ適性に優れていることが好ましい。この観点からは、クラフト紙、純白ロール紙が好ましい。
また、紙の坪量は、20g/m以上70g/m以下であることが好ましい。
【0024】
側面部11を構成する積層体Aの最内層111は、シーラント層である。最内層111は、熱溶着を行い各シール部SL、SR、SDを形成するための層であり、合成樹脂製の未延伸フィルムまたは、層状に押し出された合成樹脂が用いられる。最内層111を形成する合成樹脂の材料としては、熱溶着が可能であれば、特に限られるものではない。例えば、ポリエチレン(PE)系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、ポリプロピレン(PP)系樹脂、エチレン-ポリプロピレン共重合体等の樹脂が使用できる。また、ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの何れも使用することができる。なお、これらの樹脂のうち1種類だけ使用してもよいが、2種類以上を併用することもできる。
また、最内層111の厚さは、15μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0025】
最内層111は、包装袋10の内面側に配される。そして、上述したように、平面部11aを構成する積層体と側部11bを構成する積層体とが交互に接合するときには、それぞれの最内層111同士が熱溶着することで接合する。また、上述した側面部11を構成する積層体と底面部12を構成する積層体とが接合するときも、それぞれの最内層111、121同士が熱溶着することで接合する。そのため、各面を構成する最内層111、121は互いに熱溶着可能な樹脂であることが好ましく、同種類の樹脂であることが好ましい。
【0026】
側面部11を構成する積層体Aは、最外層112は紙である。そのため、二軸延伸フィルムの分子配向の傾きの差や熱収縮の差が生じることがないため、上述したS字カールが生じない。その結果、出荷のため、数十枚の包装袋10を結束した結束体はかさ高くなることがなく、この結束体を箱等に収納する際に、収まりがよい。さらに、包装袋10に食品等の充填物を充填する際に、充填を行うための開口部が開きやすい。本発明の包装袋10の側面部11を構成する積層体Aが、側面部11の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と、積層体Aを構成するフィルムの流れ方向とが一致する場合であっても、S字カールは生じない。
そして、側面部11を構成する積層体Aの最外層112に紙を用いることで、プラスチックの使用量を低減することができ、環境負荷が、より少ない包装袋10となる。また、この観点からは、最外層112を構成する紙の重量は、包装袋10の重量に対し、50%以上を占めることが好ましい。
【0027】
また、本実施の形態の側面部11を構成する積層体Aは、必要に応じて、最外層112の紙と最内層111との間に中間層113を用いてもよい。
【0028】
中間層113は、気体遮断性、水蒸気遮断性、機械的強靭性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性品性等の機能性を付与することができる層であり、合成樹脂からなる延伸フィルムや、延伸フィルムにアルミニウム、マグネシウムなどの金属、酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機物を蒸着させた蒸着膜を設けた蒸着フィルムや、延伸フィルムにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムであってもよい。中間層113に用いる延伸フィルムを形成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルムである。これらの延伸フィルムは一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよい。引裂き性を求める場合には、引裂き方向に延伸された一軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。また、アルミニウム、マグネシウムなどの金属箔を用いることができる。
中間層113の厚さは、これらの機能性を付与することができる厚さであればよく、例えば、6μm以上50μm以下である。
【0029】
中間層113として、二軸延伸フィルムを用いてもよい。二軸延伸フィルムを中間層113として使用した場合、最外層112に二軸延伸フィルムを用いた場合より、S字カールが生じにくい。これは、中間層113の二軸延伸フィルムの外側には、紙からなる最外層112を有するために、ヒートシールによる熱収縮の影響が少ないためである。
【0030】
底面部12は、最外層122に紙を用いず二軸延伸フィルムを用いた積層体Bを用いることが好ましい。本実施形態において、底面部12として、紙を最外層に用いた積層体を使用した場合、後述する包装袋10を製造する際に、各シール部を施す前に底面部12の切断工程がある場合、切断の際に紙から出る紙粉が、包装袋10の内部に混入しやすい。また、本実施形態において底面部12は、図3(a)で説明したように、折り方が複雑である。そして、紙を最外層に用いた積層体からなる底面部12の場合、この折り込みに対応できるための強度が不足しやすい。そのため、底面部12には最外層122に二軸延伸フィルムを用いた積層体Bを用いるのが好ましい。
【0031】
底面部12を構成する積層体Bの最内層121については、上述した側面部11を構成する積層体Aの最内層111に用いた種々の材料を使用することができる。ただし、側面部11と熱溶着を行う観点からは、側面部11の最内層111と同種の材料を使用することが好ましい。
【0032】
底面部12を構成する積層体Bの最外層122に用いる二軸延伸フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系の樹脂を用いることができる。なお、これらの樹脂のうち1種類だけ使用してもよいが、2種類以上を併用することもできる。また、必要に応じて、セロハン、不織布などを併せて使用することもできる。
また、ここで挙げた例では、二軸延伸フィルムを用いたが、一軸延伸フィルムであってもよい。ただし、ここに印刷を行う場合は、印刷適性が求められ、そのためには、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムであることが好ましい。
積層体Bも積層体Aと同様に、中間層を有していてもよい。
積層体A及び積層体Bは、いずれもドライラミネート法や押出しラミネート法などの公知の方法で積層される。
【0033】
<包装袋10の製造方法の説明>
次に、包装袋10の製造方法について説明を行う。
包装袋10の製造方法は特に限定されないが、例えば次のように製造する。
ここでは、包装袋10の側面部11を構成する積層体Aのフィルムの搬送方向が、側面部11の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と一致して搬送させる搬送工程を含んでいる場合の製造方法の一例を挙げる。
包装袋10の側面部11を構成する、紙を最外層112に用いた積層体Aである側面部フィルムを準備する。また、包装袋10の底面部12を構成する、二軸延伸フィルムを最外層122に用いた積層体Bである底面部フィルムを準備する。
側面部フィルムはあらかじめ側部フィルムと平面部フィルムとが分かれていてもよいが、製造段階において切り分けてもよい。
【0034】
側部フィルムは、半分に折り畳まれる。また、底面部12は、底面部フィルムを矩形状に切断し、底面部12を上述したように平面視台形状に折り畳む。
【0035】
次に、折り曲げられた側部フィルムおよび底面部12を、一対の平面部フィルムにより、予め定められた位置で挟み込む。
【0036】
より詳細には、図6を用いて説明する。
図6では、包装袋10の製造方法の一例を示している。この製造方法における装置200は、ロール210およびロール220を有し、ロール210およびロール220が回転することで、送られたフィルムを矢印C方向に搬送する。この矢印C方向は、積層体Aを構成するフィルムの流れ方向である。
ここでは、流れ方向に沿って折り曲げられた一対の長尺の側部フィルム11bFが、それぞれのV字の頂部V1が互いに向き合うように搬送され、平面視台形状に折られた底面部12の両端部の折り込み部分で挟持される。
そして、上下方向から一対の平面部フィルムHF1、HF2が、ロール210およびロール220の間に送り込まれる。平面部フィルムHF1と平面部フィルムHF2との間に、側部フィルム11bFおよび底面部12が挟み込まれ、その後、側部シール部SL、SR、底部シール部SDが施される。これにより、平面部フィルムHF1、平面部フィルムHF2、側部フィルム11bFおよび底面部12は、一体化し、帯状フィルムBFとなる。
【0037】
次に、幅方向に2袋以上の包装袋10を備えて製造している場合には、搬送方向に沿って、帯状フィルムBFを切断する。これにより、包装袋10が長手方向に繋がった帯状袋が形成される。
さらに、側部シール部SL、SRの一部に切り込みを入れることで、開け口11cを形成する。
そして、帯状袋を搬送方向に直交する方向で、底部シール部SDの下方にて切断する。これにより、個々の包装袋10に分離され、包装袋10が製造される。
【0038】
ここで、紙を有する積層体の場合、製造段階で切断を行う際に、紙の種類にもよるが切断面から紙粉が出やすい。底面部12は、一対の平面部フィルムHF1、HF2で挟まれて各シール部SL、SR、SDを形成する前に底面部フィルムから切断される。そのため、一対の平面部フィルムHF1、HF2で挟まれる際に、帯状フィルムBFの内部に紙粉が混入し、最終的に紙粉は、包装袋10の内部に混入してしまう恐れがある。よって、この製造方法により包装袋10を形成する場合、底面部12は、紙を有しない積層体であることが好ましい。対して、平面部11aおよび側部11bを切断するのは、各シール部を形成し帯状フィルムBFとなった後であるため、切断により紙粉が出ても、紙粉は、包装袋10の内部に混入することはない。
【0039】
また、図6に示すように、本実施の形態では、包装袋10を底面部12を下方になるように載置したときに、上下方向となる方向に沿って、平面部フィルムHF1、HF2、側部フィルム11bFを搬送する。最外層に二軸延伸フィルムを用いた積層体からなる平面部フィルム、側部フィルムにてこの製造方法を用いた場合、包装袋の上下方向に沿って平面部フィルム及び側部フィルムが搬送されているため、特に上述したS字カールが生じやすい。本実施の形態では、包装袋10をこのような製造方法で製造する場合でも、S字カールを抑制することができる。少なくとも、側面部11のうち、平面部11aを構成する平面部フィルムの搬送方向が、側面部11の四角筒状の開口の一端と他端とを結ぶ方向と一致していること、すなわち包装体10の上下方向に沿っていることが好ましい。
【0040】
以上詳述した形態では、側面部11は、4枚のフィルムが接合することで、四角筒状としていたが、その枚数は、特に限られるものではない。例えば、1枚のフィルムを巻回させ接合することで、四角筒状の側面部を形成してもよい。また、この場合、側部シール部は、図1のように、側面部の角部に設けてもよく、何れかの面内に形成してもよい。さらに、側部シール部を角部に設ける場合、図1のように、外側に突出させてもよく、突出させなくてもよい。
最外層に二軸延伸フィルムを用いた平面部フィルム、側部フィルムを用いた場合、本実施形態に示した、包装袋の上下方向に沿って平面部フィルム、側面部フィルムが搬送される製造方法であった場合に、S字カールが発生しやすいため、本発明の効果は顕著に現れるが、本発明は、この製造方法に限定されず、平面部フィルムが包装袋の左右方向に沿って搬送される包装袋であってもよい。
また、以上詳述した形態では、図1図3に示したような折り方で包装袋10を折り畳んだが、折り方は、これに限られるものではなく、他の折り方でも適用可能である。
【0041】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
10…包装袋、11…側面部、11a…平面部、11b…側部、12…底面部、111、121…最内層、112、122…最外層、113…中間層、SL、SR、SD…シール部、K…開口部、Pr…印刷層、T、Y…折り線
図1
図2
図3
図4
図5
図6