(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】細管の溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20241106BHJP
【FI】
B23K26/21 N
(21)【出願番号】P 2020157020
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】落合 耕一
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-050294(JP,A)
【文献】実開昭58-107230(JP,U)
【文献】特開平07-174249(JP,A)
【文献】特開平05-006769(JP,A)
【文献】特開平02-236083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
F16L 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の細管を、前記細管の外径に相当する孔径の貫通孔を有するワッシャの前記貫通孔に挿通した状態で前記ワッシャに前記細管を溶接する方法であって、
前記細管を前記ワッシャの前記貫通孔に挿通させる第1工程と、
前記ワッシャの一端側の外側面からかしめ工具により前記ワッシャの内側に向けて押圧し、前記細管の外周と前記貫通孔の内周とを密着状態とする第2工程と、
前記第2工程の後、前記細管と前記ワッシャの一端側の前記貫通孔の開口との当接部周囲をレーザー溶接により溶接固定する第3工程を有し、
前記第2工程は、前記ワッシャが収容される円形の空間部が中心部に開口しているとともに、前記空間部から放射状に延びる3つの溝で分けられた3つの爪を有する円板状のかしめ変形部材を使用し、前記空間部に前記ワッシャが挿入された状態で前記かしめ変形部材を径方向の内側に向けて押圧して行われ、
前記かしめ変形部材が径方向の内側に向けて押圧されることにより、前記溝と前記かしめ変形部材の外周端との間に設けられた薄肉部分が弾性変形して前記3つの爪が前記かしめ変形部材の中心に向けて変位することを特徴とする細管の溶接方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の細管の溶接方法であって、
前記第1工程、または前記第2工程において、前記ワッシャの一端側の端面から前記細管の一端部が突出しないように前記細管の位置決めがなされることを特徴とする細管の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細管を貫通孔に通して貫通孔の孔壁に溶接する細管の溶接構造および細管の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細管を貫通孔に通して貫通孔の孔壁に溶接する技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、二つの圧力容器を細管によって接続し、一方の圧力容器から細管を通して他方の圧力容器に圧力を伝達する装置が開示されている。細管は、接続用の部品(以下、この部品を単に「ワッシャ」という)を介して圧力容器に接続されている。この細管とワッシャを
図10(A),(B)によって説明する。
図10(A)は、溶接中の細管とワッシャの断面図、
図10(B)は、溶接後の細管とワッシャの断面図である。
図10(A)に示すように、細管1はワッシャ2の貫通孔3に通され、ワッシャ2の先端部にレーザー溶接によって溶接されている。
図10(A)において、二点鎖線Lは、溶接時のレーザー光を示す。
【0003】
細管1は、直径に対して寸法公差が大きくなるものである。例えば、細管1の規格上の呼称で30Gと呼ばれる細管の場合は、φ0.31±0.02の公差を有している。このため、細管1をワッシャ2に溶接するにあたっては、細管1と貫通孔3の孔壁面との間に公差分の隙間が生じることがある。この隙間は、最大-0.02mm~+0.02mmの間で変化する。すなわち、隙間の最大幅は0.04mmになる。細管1の溶接は、この隙間が埋められるように行われていた。このため、
図10(B)に示すように、母材(ワッシャ2)の溶融量を多くして隙間を埋める溶接方法が採られていた。
図10(B)においては、溶接部4がワッシャ2の小径部2aの略全域にわたって拡がるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の溶接構造および溶接方法では、溶接時の溶融量が多いので、溶け込みが細管1の内径側へ貫通するおそれがある。細管1の厚みが薄くなると、このような不具合は顕著になる。
また、細管1とワッシャ2の相対位置を精密に決めることができないという問題もある。この理由は、溶接時に溶融量が多いので、細管1をワッシャ2から多く突出させた状態で溶接を実施しなければならないからである。細管1がワッシャ2から大きく突出すると、細管1に接続される圧力機器の形状に影響を及ぼす。すなわち、細管1の飛び出し部分との干渉を避けるために、圧力機器に穴を広く開けなければならない。このため、細管1が飛び出すことがないように溶接部をコンパクトに形成することが要請されている。
【0006】
本発明の目的は、細管とワッシャとの間に隙間が生じることがなく溶接部がコンパクトになる細管の溶接構造および細管の溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る細管の溶接構造は、金属製の細管を、前記細管の外径に相当する孔径の貫通孔を有するワッシャの前記貫通孔に挿通した状態で前記ワッシャに前記細管を溶接する溶接構造であって、前記細管を前記ワッシャの前記貫通孔に挿通させた状態で、前記ワッシャの一端側の外側面からかしめ処理により前記ワッシャの内側に向けて押圧し、前記細管の外周と前記貫通孔の内周とを密着状態としたうえで、前記細管と前記ワッシャの一端側の前記貫通孔の開口との当接部周囲をレーザー溶接により溶接固定されるものである。
【0008】
本発明は、前記細管の溶接構造において、前記ワッシャは、前記貫通孔に沿って延伸した柱状部材であり、かつ、前記柱状部材は前記かしめ処理により押圧される外側面の外径が他の外側面よりも小径となっていてもよい。
【0009】
本発明は、前記溶接構造において、前記ワッシャの一端側の端面から溶接された前記細管の一端部が突出しなくてもよい。
【0010】
本発明に係る細管の溶接方法は、金属製の細管を、前記細管の外径に相当する孔径の貫通孔を有するワッシャの前記貫通孔に挿通した状態で前記ワッシャに前記細管を溶接する方法であって、前記細管を前記ワッシャの前記貫通孔に挿通させる第1工程と、前記ワッシャの一端側の外側面からかしめ工具により前記ワッシャの内側に向けて押圧し、前記細管の外周と前記貫通孔の内周とを密着状態とする第2工程と、前記第2工程の後、前記細管と前記ワッシャの一端側の前記貫通孔の開口との当接部周囲をレーザー溶接により溶接固定する第3工程を有している方法である。
【0011】
本発明は、前記細管の溶接方法であって、前記第1工程、または前記第2工程において、前記ワッシャの一端側の端面から前記細管の一端部が突出しないように前記細管の位置決めがなされてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、細管とワッシャとの間に隙間が生じることがなく溶接部がコンパクトになる細管の溶接構造および細管の溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る細管の溶接構造に用いる細管とワッシャの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る細管の溶接構造の要部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、かしめ工具の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、かしめ変形部材の構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、かしめ工具の具体例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る細管の溶接方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、かしめ工具の一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、かしめ工具の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る細管の溶接構造および細管の溶接方法の一実施の形態を
図1~
図9を参照して詳細に説明する。
図1に示す細管11は、図示していない圧力センサに圧力を導くためのもので、本発明に係る溶接構造12(
図2参照)によってワッシャ13に溶接されて使用される。細管11とワッシャ13を形成する材料は金属である。ワッシャ13は、細管11が挿通される貫通孔14を有する柱状部材である。貫通孔14の孔径は、細管11の外径に相当する径である。
【0015】
細管11の外径には公差があるため、細管11とワッシャ13との間に
図1中に符号dで示す隙間が生じることがある。
図1は、細管11と貫通孔14との間に最大幅の隙間dが生じる状態で描いてある。
この実施の形態によるワッシャ13は、貫通孔14が軸心部に位置する薄い円柱状に形成されており、細管11が突出する大径部13aと、大径部13aにテーパー部13bを介して接続された小径部13cとを有している。テーパー部13bは、大径部13aから小径部13cに向かうにしたがって次第に外径が小さくなるように形成されており、図示していない圧力容器に開口形状が円形となるように形成された接続口の開口縁に例えば抵抗溶接によって溶接される。
【0016】
細管11をワッシャ13に溶接する溶接構造12は、
図2に示すように、ワッシャ13の小径部13cにかしめ処理を施すことによって形成されたかしめ部12aと、細管11の先端とワッシャ13の先端とを溶接する溶接部12bとによって構成されている。かしめ処理は、細管11をワッシャ13の貫通孔14に挿通させた状態で、ワッシャ13の一端側の外側面(小径部13c)からワッシャ13の内側に向けて押圧して行われる。このかしめ処理は、後述するかしめ工具15(
図3参照)を用いて行われ、細管11の外周と貫通孔14の内周とが密着状態となるように実施される。
【0017】
溶接部12bは、細管11と、ワッシャ13の一端側(小径部13c側)の貫通孔14の開口との当接部周囲をレーザー溶接により溶接固定することによって形成されている。
図2に示すように、この実施の形態による溶接構造12によってワッシャ13に溶接された細管11の一端部は、ワッシャ13の一端側の端面から突出していない。
【0018】
かしめ工具15は、
図3~
図6に示すように構成されている。
図3および
図4は、かしめ工具15の主要部の構成を示し、
図5および
図6は、かしめ工具15の具体的な一例を示す。かしめ工具15は、
図3に示すように、
図3において最も下に描いてある固定ガイド部材21と、固定ガイド部材21の上に重ねられたかしめ変形部材22と、かしめ変形部材22の上に重ねられた移動押圧部材23とを用いて構成することができる。
【0019】
固定ガイド部材21は、後述するかしめ変形部材22を収容可能な凹部24を有し、
図5および
図6に示すように、支持テーブル25(
図5および
図6参照)の支持面25a上に固定されている。支持テーブル25は、板状に形成されて図示していない基台に固定されており、加工対象部材としてのワッシャ13を固定ガイド部材21およびかしめ変形部材22と協働して一方向から(
図6においては下方から)支持する。
【0020】
固定ガイド部材21の凹部24は、
図3において下方に向かうにしたがって次第に接近するように傾斜する第1の傾斜面24aと第2の傾斜面24bとを有し、移動押圧部材23に向けて開口している。第1の傾斜面24aと第2の傾斜面24bは、かしめ変形部材22を支持するとともに、
図3において左右方向と下方への移動を規制する。すなわち、固定ガイド部材21は、自己の内壁面(第1および第2の傾斜面24a,24b)がかしめ変形部材22と当接することでかしめ変形部材22が支持テーブル25の支持面25a上の一方向(
図3においては上方)を除く他の方向への移動を規制する。
【0021】
かしめ変形部材22は、円板状に形成され、支持テーブル25の支持面25a上に置かれた状態で固定ガイド部材21の第1の傾斜面24aおよび第2の傾斜面24bと、後述する移動押圧部材23とに接触している。かしめ変形部材22は、
図4に示すように、自己の中心部に空間部31を有しているとともに、空間部31から放射状に延びる一つの開口溝32および二つの閉口溝33,34を有している。
【0022】
空間部31は、ワッシャ13の小径部13cが収容されるように円形に開口している。空間部31は、かしめ変形部材22の中心部であって支持テーブル25とは反対側に形成された円形凹部35(
図5および
図6参照)の底に開口している。円形凹部35には、ワッシャ13の大径部13aとテーパー部13bとが収容される。円形凹部35の最も径が大きくなる部分の内径は、ワッシャ13の大径部13aの外径より大きい。
【0023】
開口溝32は、かしめ変形部材22の中心部の空間部31から外周端まで延伸している。この実施の形態による開口溝32は、空間部31からかしめ変形部材22の径方向の外側に延びる幅狭部32aと、かしめ変形部材22の外周端から径方向の内側に延びる幅広部32bとによって構成されている。かしめ変形部材22を固定ガイド部材21に組み付ける際には、
図5に示すように、開口溝32の開口端が固定ガイド部材21および移動押圧部材23と当接することがないようにかしめ変形部材22が位置付けられる。
二つの閉口溝33,34は、かしめ変形部材22の中心部の空間部31から外周端方向に延伸するが外周端には至らない溝となるように形成されている。すなわち、二つの閉口溝33,34は、空間部31からかしめ変形部材22の径方向の外側に延びる幅狭部33a,34aと、かしめ変形部材22の外周部であって外周端より径方向の内側に設けられた円形穴33b,34bとによって構成されている。
【0024】
これら一つの開口溝32と、二つの閉口溝33,34とからなる三つの溝は、かしめ変形部材22を周方向に3等分する位置に設けられている。この実施の形態においては、開口溝32の開口端が固定ガイド部材21の第1、第2の傾斜面24a,24bおよび後述する移動押圧部材23と当接することがないように、三つの溝の位置が設定されている。このようにかしめ変形部材22に三つの溝が形成されることにより、
図4に示すように、かしめ変形部材22に空間部31を3方向から囲む第1~第3の爪36~38が構成される。
【0025】
このため、かしめ変形部材22の形状は、いわゆる三爪チャックの形状を模した形状となる。この場合、第1~第3の爪36~38は完全に分離することなく、薄肉部分39で連結される。薄肉部分39は、かしめ変形部材22の二つの閉口溝33,34とかしめ変形部材22の外周端との間の二箇所に設けられている。この実施の形態によるかしめ工具15は、詳細は後述するが、薄肉部分39を弾性変形させて第1~第3の爪36~38を見かけ上、分離しているように動作させて押し付けを行うように構成されている。
【0026】
移動押圧部材23は、支持テーブル25の支持面25aに図示してないガイド部材を介して平行移動自在に支持されているとともに、図示していない押圧装置に連結されている。移動押圧部材23が支持テーブル25に対して平行移動する方向は、固定ガイド部材21およびかしめ変形部材22に対して接離する方向(
図3においては上下方向)である。押圧装置は、かしめ処理を行うときに移動押圧部材23を固定ガイド部材21およびかしめ変形部材22に接近する方向へ所定の荷重で押圧し、かしめ処理後に移動押圧部材23を上記とは反対方向に移動させる。すなわち、移動押圧部材23は、支持テーブル25の支持面25a上の一方向から(
図3においては上方から)自己の内壁面23aでかしめ変形部材22と当接し押圧する。
【0027】
内壁面23aと、第1および第2の傾斜面24a,24bは、互いに60度の角度をなすように構成されている。すなわち、
図3に示すように、移動押圧部材23の内壁面23aと平行な凹部24の底面24cと第1および第2の傾斜面24a,24bとのなす角度θ1,θ2は、それぞれ60度である。このように3つの壁のうち二つ(第1および第2の傾斜面24a,24b)を固定し、他の一つ(移動押圧部材23の内壁面23a)を動かすことにより、かしめ変形部材22の第1~第3の爪36~38に均等な力を発生させることが可能になる。
【0028】
この実施の形態によるかしめ工具15は、
図6に示すように、ワッシャ13をかしめ変形部材22と協働して挟むガイドカバー部材41を備えている。このガイドカバー部材41は、固定ガイド部材21とワッシャ13とに支持テーブル25の支持面25aとは反対側から当接してワッシャ13を保持する。また、ガイドカバー部材41には、ワッシャ13から支持テーブル25とは反対側に延伸する細管11をガイドするガイド孔41aが形成されている。
【0029】
次に、上述した溶接構造12を実現するための溶接方法を説明する。この溶接方法は、
図7のフローチャートに示すように、第1~第3工程S1~S3によって実施される。第1工程S1においては、
図1に示すように、細管11をワッシャ13の貫通孔14に挿通させる。
第2工程S2においては、細管11およびワッシャ13をかしめ工具15に装填し、かしめ処理を行う。すなわち、細管11およびワッシャ13をかしめ変形部材22の空間部31に挿入し、
図6に示すように、細管11とワッシャ13の先端を支持テーブル25に当接させる。このように支持テーブル25に細管11とワッシャ13とが当接することにより、ワッシャ13の一端側の端面から細管11の一端部が突出しないように細管11の位置決めがなされる。なお、この位置決めは、上述した第1工程S1で行うこともできる。空間部31にワッシャ13が挿入されることにより、
図8に示すように、ワッシャ13が第1~第3の爪36~38と接するようになる。
【0030】
次に移動押圧部材23によってかしめ変形部材22を押圧し、かしめ変形部材22を第1および第2の傾斜面24a,24bに所定の荷重で押し付ける。すなわち、ワッシャ13の一端側の外側面から、かしめ工具15によりワッシャ13の内側に向けて押圧する。この押圧により、かしめ変形部材22の二つの閉口溝33,34とかしめ変形部材22の外周端との間の二箇所の薄肉部分39が弾性変形し、三つの溝によって形成された第1~第3の爪36~38が
図8に示す初期位置から
図9に示すかしめ位置までかしめ変形部材22の中心に向けて変位する。このようにかしめ変形部材22が外力を受けることにより、空間部31が可変的に狭められる。
【0031】
この結果、
図9に示すように、ワッシャ13の小径部13cが塑性変形して細管11の外周と貫通孔14の内周とが密着状態になる。このようにかしめ処理を行う第2工程S2を実施した後、細管11とワッシャ13とからなる組立体をかしめ工具15から取り外し、図示していない溶接装置に装着して第3工程S3を実施する。第3工程S3においては、細管11とワッシャ13の一端側の貫通孔14の開口との当接部周囲がレーザー溶接により溶接固定される。レーザー溶接は、レーザー光をワッシャ13と細管11の端面に向けて照射して行うことができる。溶接後は、
図2に示すように、細管11と貫通孔14の開口との当接部に溶接部12bが形成される。この溶接部12bは、ワッシャ13の端面から突出することがない。
したがって、この実施の形態によれば、細管11とワッシャ13との間に隙間が生じることがなく溶接部12bがコンパクトになる細管の溶接構造および細管の溶接方法を提供することができる。
【0032】
この実施の形態によるワッシャ13は、貫通孔14に沿って延伸した柱状部材である。この柱状部材は、かしめ処理により押圧される外側面(小径部13c)の外径が他の外側面(大径部13a)よりも小径となっている。このため、かしめ処理を行うときの荷重を小さくすることができ、かしめ工具15の小型化を図ることができる。
また、この実施の形態においては、ワッシャ13の一端側の端面から溶接された細管11の一端部が突出しないように構成されている。このため、より一層コンパクトな溶接部12bが得られる。
【0033】
この実施の形態による細管11の溶接方法は、細管11をワッシャ13の貫通孔14に挿通させる第1工程S1と、かしめ工具15で細管11の外周と貫通孔14の内周とを密着状態とする第2工程S2と、細管11と貫通孔14の開口との当接部周囲をレーザー溶接により溶接固定する第3工程S3を有している。このため、細管11がかしめによってワッシャ13に固定された状態で溶接を行うことができるから、溶接が容易で、確実に溶接することができる。
【0034】
この実施の形態による細管11の溶接方法によれば、第1工程S1または第2工程S2でワッシャ13の端面から細管11が突出しないように細管11の位置決めがなされる。このため、かしめ処理が行われる以前に細管11の位置を調整できるから、かしめ処理を正確に行うことができる。
【0035】
この実施の形態で示したようにかしめ処理を行った後で溶接を行うことにより、かしめ部分で仮止めをすることができるために次のようなメリットがある。
(1)細管11とワッシャ13とが密着するので、溶け分かれが起き難くなる。
(2)組み易さの向上を図ることができる。すなわち、ワッシャ13の貫通孔14に細管11を挿入したときには、適切な固定がないと溶接作業のときにずれてしまうため、何らかの治工具による固定が必要である。かしめをすると摩擦力で固定できるので、治工具による固定が不要になり作業性が向上する。
(3)機械的強度が向上する。すなわち、かしめ部分がない場合は、溶接後に細管に外力が加えられた際に溶接部だけで外力を受けなければならない。一方、かしめ処理を行うと、かしめ部分に摩擦力が作用し、これが溶接部の機械的強度を補助するため、頑丈で壊れ難い構造にすることができる。
【0036】
上述した実施の形態においては、ワッシャ13にかしめ処理を施すにあたってかしめ変形部材22を有するかしめ工具15を使用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることなく、たとえばコレットチャックのような、外側から加圧して外径を狭める装置を用いてかしめ処理を行うこともできる。
【符号の説明】
【0037】
1…細管、12…溶接構造、13…ワッシャ、13a…大径部(他の外側面)、13c…小径部(かしめ処理により押圧される外側面)、14…貫通孔、S1…第1工程、S2…第2工程、15…かしめ工具、S3…第3工程。