(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】圧力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01L9/00 303U
(21)【出願番号】P 2020170298
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】米田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】徳田 智久
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-029627(JP,A)
【文献】特開平11-304563(JP,A)
【文献】特開2001-134330(JP,A)
【文献】特開2001-272293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234140(US,A1)
【文献】特開平09-329516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00 ~ 9/18
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラム層と、
前記ダイアフラム層に形成された受圧領域と、
前記ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により前記受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成された第1ブリッジ回路と、
前記ダイアフラム層に設けられた測温素子と、
前記測温素子を含み、少なくとも配線の一部が前記受圧領域上に設けられて前記測温素子の測定した温度を出力する
第2回路と、
前記
第2回路の出力に基づいて前記受圧領域の故障を判定するように構成された判定部と
を備え、
前記測温素子は、前記受圧領域の中央部に形成されている圧力測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧力測定装置において、
前記受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記
第2回路と電源とを接続する第1接続パッドと、
前記受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、
前記ダイアフラム層上に形成され、前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を、前記測温素子を経由し、かつ前記受圧領域を通って接続する配線とを備える
ことを特徴とする圧力測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力測定装置において、
前記受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記
第2回路とグランドとを接続する第1接続パッドと、
前記受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、
前記ダイアフラム層上に形成され、前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を、前記測温素子を経由して、かつ前記受圧領域を通って接続する配線とを備える
ことを特徴とする圧力測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力測定装置において、
前記ダイアフラム層は、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成され、
前記配線は、<100>方向に延在して形成されているp型半導体拡散抵抗であることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項5】
ダイアフラム層と、
前記ダイアフラム層に形成された第1受圧領域および第2受圧領域と、
前記ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により前記第1受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成される第1ブリッジ回路と、
前記ダイアフラム層に設けられた測温素子と、
前記測温素子を含み、少なくとも配線の一部が前記第1受圧領域および前記第2受圧領域の上に設けられて前記測温素子の測定した温度を出力する
第2回路と、
前記ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により前記第2受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成される第3のブリッジ回路と、
前記
第2回路の出力に基づいて前記第1受圧領域および前記第2受圧領域の故障を判定するように構成された判定部と
を備え
前記測温素子の一部は、前記第1受圧領域および前記第2受圧領域に形成されている圧力測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の圧力測定装置において、
前記第1受圧領域および前記第2受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記
第2回路と電源とを接続する第1接続パッドと、
前記第1受圧領域および前記第2受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、
前記ダイアフラム層上に形成され、前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を、前記測温素子を経由し、かつ前記第1受圧領域および前記第2受圧領域を通って接続する配線と
を備えることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項7】
請求項5記載の圧力測定装置において、
前記第1受圧領域および前記第2受圧領域より外側の前記ダイアフラム層の上に形成され、前記
第2回路とグランドとを接続する第1接続パッドと、
前記第1受圧領域および前記第2受圧領域より外側の前記ダイアフラム層上に形成され、前記測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、
前記ダイアフラム層上に形成され、前記第1接続パッドと前記第2接続パッドとの間を、前記測温素子を経由して、かつ前記第1受圧領域および前記第2受圧領域を通って接続する配線と
を備えることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の圧力測定装置において、
前記ダイアフラム層は、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成され、
前記配線は、<100>方向に延在して形成されているp型半導体拡散抵抗であることを特徴とする圧力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、石油、石油化学、化学プラントなどにおいて、プロセス流体の流量、圧力、液位、比重などを測定するために、ピエゾ抵抗素子をダイアフラムの受圧領域に設けた圧力測定装置が用いられている(特許文献1参照)。この種の圧力測定装置では、圧力センサの温度補正のために、温度測定素子が用いられている。
【0003】
また、この種の圧力測定装置では、ダイアフラムが破壊した状態を検知することが、故障診断として非常に重要である。例えば、ダイアフラムに設けられた4つのピエゾ抵抗素子によるブリッジ回路の中点電位と、ダイアフラムの外部に設けた基準電位発生回路との電位差より、ダイアフラムの破壊を検知する技術がある(特許文献2参照)。この技術では、ブリッジ回路の2つの中点B、Cにおける電位差VBCと、中点Bにおける電位と基準電位発生回路の基準電位との電位差VCE、および中点Cにおける電位と基準電位発生回路の基準電位との電位差VBEとを比較している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-329516号公報
【文献】特開2001-272293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した故障診断では、電位差VBC、電位差VCE、および電位差VBEの3つの電位差を用いており、取り扱う信号が多いという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、取り扱う信号の増加を抑制して、圧力測定装置の故障診断ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力測定装置は、ダイアフラム層と、ダイアフラム層に形成された受圧領域と、ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成された第1ブリッジ回路と、ダイアフラム層に設けられた測温素子と、測温素子を含み、少なくとも配線の一部が受圧領域上に設けられて測温素子の測定した温度を出力する第2回路と、第2回路の出力に基づいて受圧領域の故障を判定するように構成された判定部とを備え、測温素子は、受圧領域の中央部に形成されている。
【0008】
請求項1上記圧力測定装置の一構成例において、受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、第2回路と電源とを接続する第1接続パッドと、受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、ダイアフラム層上に形成され、第1接続パッドと第2接続パッドとの間を、測温素子を経由し、かつ受圧領域を通って接続する配線とを備える。
【0009】
上記圧力測定装置の一構成例において、受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、第2回路とグランドとを接続する第1接続パッドと、受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、ダイアフラム層上に形成され、第1接続パッドと第2接続パッドとの間を、測温素子を経由して、かつ受圧領域を通って接続する配線とを備える。
【0010】
上記圧力測定装置の一構成例において、ダイアフラム層は、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成され、配線は、<100>方向に延在して形成されているp型半導体拡散抵抗である。
【0011】
本発明に係る圧力測定装置は、ダイアフラム層と、ダイアフラム層に形成された第1受圧領域および第2受圧領域と、ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により第1受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成される第1ブリッジ回路と、ダイアフラム層に設けられた測温素子と、測温素子を含み、少なくとも配線の一部が第1受圧領域および第2受圧領域の上に設けられて測温素子の測定した温度を出力する第2回路と、ダイアフラム層に設けられ、ピエゾ抵抗効果により第2受圧領域の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成される第3のブリッジ回路と、第2回路の出力に基づいて第1受圧領域および第2受圧領域の故障を判定するように構成された判定部とを備え測温素子の一部は、第1受圧領域および第2受圧領域に形成されている。
【0012】
上記圧力測定装置の一構成例において、第1受圧領域および第2受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、第2回路と電源とを接続する第1接続パッドと、第1受圧領域および第2受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、ダイアフラム層上に形成され、第1接続パッドと第2接続パッドとの間を、測温素子を経由し、かつ第1受圧領域および第2受圧領域を通って接続する配線とを備える。
【0013】
上記圧力測定装置の一構成例において、第1受圧領域および第2受圧領域より外側のダイアフラム層の上に形成され、第2回路とグランドとを接続する第1接続パッドと、第1受圧領域および第2受圧領域より外側のダイアフラム層上に形成され、測温素子の一端に接続する第2接続パッドと、ダイアフラム層上に形成され、第1接続パッドと第2接続パッドとの間を、測温素子を経由して、かつ第1受圧領域および第2受圧領域を通って接続する配線とを備える。
【0014】
上記圧力測定装置の一構成例において、ダイアフラム層は、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成され、配線は、<100>方向に延在して形成されているp型半導体拡散抵抗である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、測温素子に接続される配線を、受圧領域の上を通すことで、新たに取り扱う信号を増加させることなく、圧力測定装置の故障診断ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る圧力測定装置の構成を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1に係る圧力測定装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態2に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態2に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態2に係る他の圧力測定装置の一部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る圧力測定装置について説明する。
【0018】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る圧力測定装置について、
図1A、
図1Bを参照して説明する。この圧力測定装置は、ダイアフラム層101を備える圧力センサと、圧力算出部108と、判定部109とを備える。ダイアフラム層101は、例えば、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成することができる。ダイアフラム層101は、例えば、基台111の上に形成されている。基台111には、厚さ方向に基台111を貫通する貫通孔112が形成されている。基台111は、例えば、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成することができる。
【0019】
ダイアフラム層101には、受圧領域102が形成されている。受圧領域102は、例えば、平面視で円形とされている。受圧領域102は、基台111に形成された貫通孔112の空間により規定される、ダイアフラム層101の一部の領域である。
【0020】
受圧領域102の外周部のダイアフラム層101には、ピエゾ抵抗効果により受圧領域102の歪みを測定する4つの第1抵抗素子103a,第2抵抗素子103b,第3抵抗素子103c,第4抵抗素子103dが設けられている。これらの抵抗素子は、受圧領域102のピエゾ効果が発生する箇所に配置される。例えば、主表面を(100)面としたn型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層101の所定の箇所に、p型不純物であるホウ素(B)が、例えば、1018(atoms/cm3)程度の濃度で導入されたp型の領域から、上記抵抗素子が構成できる。
【0021】
各抵抗素子は、平面視で長方形の形状とされ、長方形の長手方向が、シリコン単結晶の<110>方向に延在している。第1抵抗素子103a,第2抵抗素子103b,第3抵抗素子103c,第4抵抗素子103dにより、第1ブリッジ回路が構成されている。ただし、第1ブリッジ回路は、ピエゾ抵抗効果により受圧領域102の歪みを測定する、1つまたは複数の抵抗素子から構成することができる。なお、第1ブリッジ回路を構成する抵抗素子の個数は、4個に限定されない。
【0022】
また、ダイアフラム層101には、測温素子104が設けられている。測温素子104は、例えば、受圧領域102より外側のダイアフラム層101に配置することができる。測温素子104は、n型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層101の所定の箇所に、p型不純物であるBが、例えば、1018(atoms/cm3)程度の濃度で導入されたp型の領域から構成することができる。
【0023】
また、受圧領域102より外側のダイアフラム層101の上には、上述したブリッジ回路と電源106とを接続する第1接続パッド105aと、測温素子104の一端に接続する第2接続パッド105bとが形成されている。また、ダイアフラム層101の上には、第1接続パッド105aと測温素子104の他端とを接続する配線107が、受圧領域102を通って(受圧領域102の上を通過して)形成されている。配線107は、ダイアフラム層101の上に形成され、第1接続パッド105aと第2接続パッド105bとの間を、測温素子104を経由し、かつ受圧領域受圧領域102を通って接続する。そして測温素子104と、一端を第2接続パッド105bに接続され、他端をグランドに接続された圧力測定装置外に設けた外部抵抗110とで第2回路が構成される。
【0024】
配線107は、主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンから構成されたダイアフラム層101の上で、<100>方向に延在して形成されている。配線107は、例えば、n型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層101に、p型不純物であるBを、1019(atoms/cm3)程度の濃度に導入することで、p型半導体拡散抵抗として形成することができる。
【0025】
この例において、4つの第1抵抗素子103a,第2抵抗素子103b,第3抵抗素子103c,第4抵抗素子103dは、受圧領域102の周方向に等間隔で配置されている。また、第1抵抗素子103a,第2抵抗素子103b,第3抵抗素子103c,第4抵抗素子103dの長手方向は、電流が流れる向きになっており、この向きは、ダイアフラム層101を構成している主表面を(100)面としたn型単結晶シリコンの<110>方向となっている。
【0026】
また、第1接続パッド105aと第1抵抗素子103aの一端とが接続し、第1抵抗素子103aの他端と第2抵抗素子103bとの一端とが接続し、第2抵抗素子103bの他端と第3接続パッド105cとが接続している。また、第1接続パッド105aと第3抵抗素子103cとの一端とが接続し、第3抵抗素子103cの他端と第4抵抗素子103dの一端とが接続し、第4抵抗素子103dの他端と、第4接続パッド105dとが接続している。
【0027】
また、第1抵抗素子103aの他端と第2抵抗素子103bとの一端とを接続する配線に、第5接続パッド105eが接続している。また、第3抵抗素子103cの他端と第4抵抗素子103dの一端とを接続する配線に、第6接続パッド105fが接続している。
【0028】
また、第1接続パッド105aと第3接続パッド105cとに電源106が接続している。電源106の+側が第1接続パッド105aに接続し、電源106の-側が第3接続パッド105cに接続している。また、図中でグランド接続部が複数ある箇所は、それらが接続されていることを示しており、第2接続パッド105bは所定の外部抵抗110を介して、第4接続パッド105dは直接、それぞれ電源106の-側に接続されている。
【0029】
また、圧力算出部108は、上述した第1ブリッジ回路から出力される信号より受圧領域102が受けた圧力値を求める。圧力算出部108は、測温素子104が接続されている第1接続パッド105aと第2接続パッド105bとの間の電位値に基づいて、即ち、第2回路の測定温度出力に基づいて第1ブリッジ回路から出力される信号を補正し、補正した信号により受圧領域102が受けた、温度補正された圧力値を求める。なお、補正信号は、温度の他、静圧測定信号などとすることができる。この例において、圧力算出部108は、上述したように各抵抗素子および各接続パッドが接続されている状態で、第5接続パッド105eおよび第6接続パッド105fからの出力により、受圧領域102が受けた真の圧力値を求める。
【0030】
また、判定部109は、第1接続パッド105aと第2接続パッド105bとの間の電位値に基づいて、即ち、第2回路の測定温度出力に基づいて、受圧領域102の故障を判定する。例えば、受圧領域102に損傷が発生し、受圧領域102を通る配線107が断線すると、電源106から測温素子104に対して供給される電力が0となり、第2接続パッド105bにおける電位が0となる。判定部109は、上述した状態を検出することで、受圧領域102に破損が発生したものと判定することができる。
【0031】
以上に説明したように、実施の形態1によれば、第1接続パッド105aと測温素子104の一端とを接続する配線107を、受圧領域102の上を通すことで、新たに取り扱う信号を増加させることなく、圧力測定装置の故障診断ができる。また、上述したように、測温素子104や配線107を<100>方向に延在させることで、受圧領域102が受ける圧力の影響を緩和することが可能となる。
【0032】
ところで、
図2に示すように、測温素子104aの一部は、受圧領域102に形成されている構成とすることもできる。他の構成は、
図1A,
図1Bを用いて説明した圧力測定装置と同様である。また、
図3に示すように、測温素子104bが、受圧領域102の中央部に形成されている構成とすることもできる。この場合、測温素子104bの一端と第2接続パッド105bとを、配線107bで接続する。また、第1接続パッド105aと測温素子104の他端とを、配線107aで接続する。他の構成は、
図1A,
図1Bを用いて説明した圧力測定装置と同様である。
【0033】
また、
図4に示すように、電源106の極性を逆にして、第1ブリッジ回路および第
2回路に印加する構成とすることもできる。例えば、電源106の-側を第1接続パッド105aに接続し、電源106の+側を第3接続パッド105cに接続する。他の構成は、
図1A,
図1Bを用いて説明した圧力測定装置と同様である。この構成では、受圧領域102に損傷が発生し、配線107aまたは配線107bが断線すると、電源106から測温素子104bに対して供給される電力が0となり、第2接続パッド105bにおける電位が、電源106から供給される電位(電位値V
in)となる。判定部109は、上述した、第2接続パッド105bにおける電位が電位値V
inとなる状態を検出することで、受圧領域102に破損が発生したものと判定することができる。
【0034】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る圧力測定装置について、
図5を参照して説明する。この圧力測定装置は、ダイアフラム層201を備える圧力センサを備える。ダイアフラム層201は、例えば、主表面を(100)面とした単結晶シリコンから構成することができる。ダイアフラム層201には、第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bが形成されている。第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bの各々は、例えば、平面視で円形とされている。
【0035】
ダイアフラム層201は、例えば、基台(不図示)の上に形成され、基台には、厚さ方向に基台を貫通する2つの貫通孔が形成されている。第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bは、上述した2つの貫通孔の空間により規定される、ダイアフラム層201の一部の領域である。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0036】
第1受圧領域202aの外周部のダイアフラム層201には、ピエゾ抵抗効果により第1受圧領域202aの歪みを測定する、2つの第1抵抗素子203a、第2抵抗素子203bが設けられている。また、第2受圧領域202bの外周部のダイアフラム層201には、ピエゾ抵抗効果により第2受圧領域202bの歪みを測定する、2つの第3抵抗素子203c、第4抵抗素子203dが設けられている。これらの抵抗素子は、各受圧領域のピエゾ効果が発生する箇所に配置される。例えば、主表面を(100)面としたn型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層201の所定の箇所に、p型不純物であるホウ素(B)が、例えば、1018(atoms/cm3)程度の濃度で導入されたp型の領域から、上記抵抗素子が構成できる。
【0037】
各抵抗素子は、平面視で長方形の形状とされ、長方形の長手方向が、シリコン単結晶の<110>方向に延在している。そして、第1抵抗素子203aと第2抵抗素子203bとにより第1ブリッジ回路が、第3抵抗素子203cと第4抵抗素子203dとにより、第3ブリッジ回路が、それぞれ構成されている。
【0038】
また、ダイアフラム層201には、測温素子204が設けられている。測温素子204は、第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bより外側の、ダイアフラム層201に配置することができる。測温素子204は、例えば、第1受圧領域202aと第2受圧領域202bとの間のダイアフラム層201に配置することができる。測温素子204は、n型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層201の所定の箇所に、p型不純物であるBが、例えば、1018(atoms/cm3)程度の濃度で導入されたp型の領域から構成することができる。
【0039】
第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bより外側のダイアフラム層201の上には、上述したブリッジ回路と電源206とを接続する第1接続パッド205aが形成されている。また、ダイアフラム層201の上には、第1接続パッド205aと測温素子204の一端とを、第1受圧領域202aを通って接続する第1配線207aが形成されている。
【0040】
また、第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bより外側のダイアフラム層201の上には、第2接続パッド205bが形成されている。また、ダイアフラム層201の上は、第2接続パッド205bと測温素子204の他端とを、第2受圧領域202bを通って接続する第2配線207bが形成されている。第1配線207aおよび第2配線207bは、ダイアフラム層201の上に形成され、第1接続パッド205aと第2接続パッド205bとの間を、測温素子204を経由して、かつ第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bを通って接続する配線である。そして、測温素子204と、一端を第2接続パッド205bに接続され、他端をグランドに接続された圧力測定装置外に設けた外部抵抗210とで第2回路が構成される。
【0041】
第1配線207a、第2配線207bの各々は、主表面を(100)面とした単結晶シリコンから構成されたダイアフラム層201の上で、<100>方向に延在して形成されている。第1配線207a、第2配線207bは、例えば、n型の単結晶シリコンから構成されているダイアフラム層201に、p型不純物であるBを、1019(atoms/cm3)程度の濃度に導入することで形成することができる。
【0042】
この例において、第1接続パッド205aと第1抵抗素子203aの一端とが接続し、第1抵抗素子203aの他端と第2抵抗素子203bとの一端とが接続し、第2抵抗素子203bの他端と第3接続パッド205cとが接続している。また、第1接続パッド205aと第3抵抗素子203cとの一端とが接続し、第3抵抗素子203cの他端と第4抵抗素子203dの一端とが接続し、第4抵抗素子203dの他端と、第4接続パッド205dとが接続している。
【0043】
また、第1抵抗素子203aの他端と第2抵抗素子203bとの一端とを接続する配線に、第5接続パッド205eが接続している。また、第3抵抗素子203cの他端と第4抵抗素子203dの一端とを接続する配線に、第6接続パッド205fが接続している。
【0044】
また、第1接続パッド205aと第3接続パッド205cとに電源206が接続している。電源206の+側が第1接続パッド205aに接続し、電源206の-側が第3接続パッド205cに接続している。また、図中でグランド接続部が複数ある箇所は、それらが接続されていることを示しており、第2接続パッド205bは所定の抵抗を介して、第4接続パッド205dは直接、それぞれ電源206の-側に接続されている。
【0045】
なお、図示していないが、実施の形態2に係る圧力測定装置は、上述した第1ブリッジ回路から出力される信号(第5接続パッド205eの電位値)と第3ブリッジ回路から出力される信号(第6接続パッド205fの電位値)とを、第1接続パッド205aと第2接続パッド205bとの間の電位値、即ち、測温素子204を含む第2回路の測定温度出力に基づいてそれぞれ補正し、補正した信号により第1受圧領域202aが受けた圧力と第2受圧領域202bが受けた圧力との差圧の値を求める圧力算出部を備える。なお、補正信号は、温度の他、静圧測定信号などとすることができる。この例において、圧力算出部は、上述したように各抵抗素子および各接続パッドが接続されている状態で、第5接続パッド205eおよび第6接続パッド205fからの出力により、第1受圧領域202aが受けた圧力値と第2受圧領域202bが受けた圧力値との差を求める。
【0046】
また、図示していないが、実施の形態2に係る圧力測定装置は、第1接続パッド205aと第2接続パッド205bとの間の電位値、即ち、測温素子204を含む第2回路の測定温度出力を元に、ダイアフラム層201の故障を判定する判定部を備える。例えば、ダイアフラム層201に損傷が発生し、第1配線207aまたは第2配線207bが断線すると、電源206から測温素子204に対して供給される電力が0となり、第2接続パッド205bにおける電位が0となる。判定部は、上述した状態を検出することで、ダイアフラム層201(第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202b)に破損が発生したものと判定することができる。
【0047】
以上に説明したように、実施の形態2によれば、測温素子204に接続する第1配線207a、第2配線207bを、第1受圧領域202a、第2受圧領域202bの上を通過させるので、新たに取り扱う信号を増加させることなく、圧力測定装置の故障診断ができる。また、上述したように、測温素子204や第1配線207a、第2配線207bを<100>方向に延在させることで、第1受圧領域202a、第2受圧領域202bが受ける圧力の影響を緩和することが可能となる。
【0048】
ところで、
図6に示すように、第1配線207a、測温素子204、および第2配線207bが、平面視で、同一の直線(下層の直線)上に配置(配列)する構成とすることもできる。また、
図7に示すように、測温素子204aの一部が、第1受圧領域202aおよび第2受圧領域202bに形成される構成とすることもできる。
【0049】
なお、
図8に示すように、
図5の構成から電源206の極性を逆にして第1ブリッジ回路、第
2回路、および第3ブリッジ回路に印加する構成とすることもできる。具体的には、電源206の-側を第1接続パッド205aに接続し、電源206の+側を第3接続パッド205cに接続する。また、第3の接続パッド205cと第4の接続パッド205dとを結線する。他の構成は、
図5を用いて説明した圧力測定装置と同様である。この構成では、ダイアフラム層201に損傷が発生し、第1配線207aまたは第2配線207bが断線すると、電源206から測温素子204に対して供給される電力が0となり、第2接続パッド205bにおける電位が、電源206から供給される電位(電位値V
in)となる。判定部は、上述した、第2接続パッド205bにおける電位が電位値V
inとなる状態を検出することで、第1受圧領域202a、または第2受圧領域202bに破損が発生したものと判定することができる。
【0050】
以上に説明したように、本発明によれば、測温素子に接続される配線を、受圧領域の上を通すことで、新たに取り扱う信号を増加させることなく、圧力測定装置の故障診断ができるようになる。
【0051】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0052】
101、201…ダイアフラム層、102、202a、202b…受圧領域、103a、203a…第1抵抗素子、103b、203b…第2抵抗素子、103c、203c…第3抵抗素子、103d、203d…第4抵抗素子、104、204…測温素子、105a、205a…第1接続パッド、105b、205b…第2接続パッド、105c、205c…第3接続パッド、105d、205d…第4接続パッド、105e、205e…第5接続パッド、105f、205f…第6接続パッド、106、206…電源、107、207a、207b…配線、108…圧力算出部、109…判定部、110,210…外部抵抗、111…基台、112…貫通孔。