(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】1ピースキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 43/24 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B65D43/24 100
(21)【出願番号】P 2020196010
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-163346(JP,A)
【文献】特開2010-083488(JP,A)
【文献】特開2008-001420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0277112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体にストラップバンドによりヒンジ連結された上蓋とを備えた1ピースキャップにおいて、
前記キャップ本体は軸方向に貫通する無底の筒状壁であり、
前記上蓋は、天面壁と、該天面壁の周縁から降下しているスカート壁とを有しており、
前記キャップ本体と前記上蓋との間には、前記ストラップバンドによる旋回によって上蓋を開蓋状態としたときには、該上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係止状態を形成する係合機構が設けられており、
前記係合機構は、前記キャップ本体の筒状壁
の上端部である係合部と、前記上蓋のスカート壁
の外面から間隔をおいて上方に延びる係合片とからなり、
前記上蓋を開蓋状態としたとき、前記係合片と前記スカート壁の外面との間の空間に、前記係合部が入り込むことにより、該上蓋が係止される、ことを特徴とする1ピースキャップ。
【請求項2】
前記係合片は、前記上蓋のスカート壁外面から水平方向に延びている基部と、該基部から上向きに延びている作用部とを有しており、該作用部が前記キャップ本体の筒状壁の上端部を乗り越えることにより係止状態が形成される請求項
1に記載の1ピースキャップ。
【請求項3】
前記筒状壁の上端部は、周方向の一部が切り欠かれた第1の切欠き凹部が形成されており、該第1の切欠き凹部は、底壁部分と該底壁部分の両端から立ち上がった両側端部分とからなり、該底壁部分が、前記上蓋の係止片を係止せしめる上端部となっている請求項
1または
2に記載の1ピースキャップ。
【請求項4】
前記第1の切欠き凹部の底壁部分に、前記ストラップバンドの一端が連結されており、該ストラップバンドの他端が、前記上蓋のスカート壁に連結されている請求項
3に記載の1ピースキャップ。
【請求項5】
前記キャップ本体の前記第1の切欠き凹部と対向する部分には、前記上蓋の旋回先端となる側のスカート壁部分を収容し得る第2の切欠き凹部が形成されている請求項
3または
4に記載の1ピースキャップ。
【請求項6】
前記上蓋の天面壁の内面には、前記スカート壁とは間隔を置いて、容器口部の上端部分と係合するシール用インナーリングが形成されている請求項1~
5の何れかに記載の1ピースキャップ。
【請求項7】
前記ストラップバンドは、屈曲部を有している請求項1~
6の何れかに記載の1ピースキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に装着される1ピースキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
螺子係合や嵌め込み等により容器口部に装着される中空筒状形状のキャップ本体と、このキャップ本体にヒンジ連結された上蓋とからなる1ピースキャップは、飲料や医薬品など、種々の内容物が収容される容器のキャップとして、広く使用されている。
【0003】
この種の1ピースキャップは、上蓋がキャップ本体にヒンジ連結されているため、上蓋を旋回することにより、開け閉めが行われる。従って、上蓋を開蓋方向に旋回して内容物を取り出す際には、開けられた上蓋が閉じないように保持することが必要である。
【0004】
上蓋の開蓋状態を維持する手段として、特許文献1の1ピースキャップでは、上蓋のヒンジバンド近傍に上蓋のスカート壁外面から下方に延びている係止片4がヒンジバンド3の近傍に設けられている。即ち、上蓋をある程度開蓋すると、この係止片4がキャップ本体の上端の周縁を乗り越えるため、上蓋の閉蓋方向への旋回が抑止されるというものである。
【0005】
また、特許文献2にも1ピースキャップが開示されており、この1ピースキャップでは、上蓋のヒンジバンド近傍に上蓋のスカート壁下端から下方に延びている係止片16がヒンジバンド13の近傍に設けられている。即ち、特許文献2では、上蓋をある程度開蓋すると、係止片16が反転して容器口部の外面に当接し、この結果、上蓋の閉蓋方向への旋回が抑止されるようになっている。
【0006】
特許文献1,2の何れも、上蓋を開蓋して内容物の取出しを行うとき、上蓋が閉蓋方向に旋回することがないので、上蓋が邪魔にならずに、内容物の取出しを行うことができるようになっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1,2の1ピースキャップは、何れも上蓋の閉蓋方向への旋回を抑止しているものの、開蓋方向への旋回を許容している。このため、上蓋を開けたときにクリック感を全く生じない。また、これらの1ピースキャップは、何れも開蓋された状態で成形されるという形態を有しているため、大面積の成形金型を使用しなければならず、敷地面積当たりの収率(ポットイールド)が低いという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3には、1ピースキャップではないが、容器口部に装着される容器体10と、容器体10に着脱自在に螺着されるキャップ本体4とを備えた2ピースキャップが開示されており、このキャップ本体4は、容器体10の外部に回転可能に外篏されるリング体2に連結片3(ヒンジバンド)を介して旋回可能に設けられている。この2ピースキャップでは、内容物の取出しに際しては、キャップ本体4を回転させて上昇させた後、連結片(ヒンジバンド)を支点として旋回させた後、容器体10に形成された取出口を通して内容物を取出しものである。このような2ピースキャップにおいて、キャップ本体4の連結片3(ヒンジバンド)の近傍には、下方に延びている係合片47が設けられており、キャップ本体4を開蓋したとき、この係合片47が、容器体10に設けられている螺子突起に係合し、この結果、キャップ本体4の閉蓋方向への旋回が抑止され、キャップ本体4が邪魔とならずに、内容物の取出しを行うことができるというものである。
【0009】
特許文献3の2ピースキャップにおいては、キャップ本体4が1ピースキャップの上蓋と同様の機能を有するものであり、キャップ本体4を開蓋して内容物の取出しを行う際、係合片47が容器体10の螺子突起に係合するため、キャップ本体4は、閉蓋方向への旋回と共に開蓋方向への旋回も抑止されることとなり、ある程度のクリック感を与えることができる。しかしながら、係合片47が係合するのは螺子突起であり、キャップ本体4の旋回を阻止するための係合機構として形成されている部材ではないため、突起高さがさほど高くないばかりか、突起間間隔(ピッチ)が「遊び」となり、係合片47との係合力が十分ではなく、このため、さほどのクリック感を得ることができない。また、このキャップ本体4は、容器体10とは別個に形成されるばかり、リング体2に対してキャップ本体4を開けた状態で成形されるため、やはり、大面積の成形金型が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実公昭57-39330号公報
【文献】実公昭54-34843号公報
【文献】特開2013-230823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、キャップ本体と該キャップ本体にヒンジ連結された上蓋とからなる1ピースキャップにおいて、内容物の取出しに際して、上蓋を開けたとき、上蓋の閉蓋方向への旋回と同時にさらなる開蓋方向への旋回とがしっかりと抑制され、クリック感を与えることができる1ピースキャップを提供することにある。
本発明の他の目的は、上蓋を閉じた状態で成形できる1ピースキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体にストラップバンドによりヒンジ連結された上蓋とを備えた1ピースキャップにおいて、
前記キャップ本体は軸方向に貫通する無底の筒状壁であり、
前記上蓋は、天面壁と、該天面壁の周縁から降下しているスカート壁とを有しており、
前記キャップ本体と前記上蓋との間には、前記ストラップバンドによる旋回によって上蓋を開蓋状態としたときには、該上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係止状態を形成する係合機構が設けられており、
前記係合機構は、前記キャップ本体の筒状壁の上端部である係合部と、前記上蓋のスカート壁の外面から間隔をおいて上方に延びる係合片とからなり、前記上蓋を開蓋状態としたとき、前記係合片と前記スカート壁の外面との間の空間に、前記係合部が入り込むことにより、該上蓋が係止される、ことを特徴とする1ピースキャップが提供される。
【0013】
本発明の1ピースキャップにおいては、次の態様が好適に採用される。
(1)前記係合片は、前記上蓋のスカート壁外面から水平方向に延びている基部と、該基部から上向きに延びている作用部とを有しており、該作用部が前記キャップ本体の筒状壁の上端部を乗り越えることにより係止状態が形成されること。
(2)前記筒状壁の上端部は、周方向の一部が切り欠かれた第1の切欠き凹部が形成されており、該第1の切欠き凹部は、底壁部分と該底壁部分の両端から立ち上がった両側端部分とからなり、該底壁部分が、前記上蓋の係止片を係止せしめる上端部となっていること。
(3)前記第1の切欠き凹部の底壁部分に、前記ストラップバンドの一端が連結されており、該ストラップバンドの他端が、前記上蓋のスカート壁に連結されていること。
(4)前記キャップ本体の前記第1の切欠き凹部と対向する部分には、前記上蓋の旋回先端となる側のスカート壁部分を収容し得る第2の切欠き凹部が形成されていること。
(5)前記上蓋の天面壁の内面には、前記スカート壁とは間隔を置いて、容器口部の上端部分と係合するシール用インナーリングが形成されていること。
(6)前記ストラップバンドは、屈曲部を有していること。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1ピースキャップは、キャップ本体(筒状壁)と上蓋との間に、該上蓋が閉じられている状態のときには非係止状態にあるが、上蓋を旋回して開放したときには、該上蓋の開蓋方向及び閉蓋方向への旋回を抑止する係止状態を形成する係合機構が設けられている。即ち、内容物の取出しのために上蓋を開蓋方向に旋回したとき、ある位置にくると、上蓋が閉蓋方向へは勿論のこと、開蓋方向へも旋回しないように上蓋がキャップ本体に係合することとなる。このため、このような係合関係が生じたとき、クリック感が発生することとなる。
【0015】
また、上蓋がストラップバンドによりキャップ本体(筒状壁)にヒンジ連結されているため、上蓋を開蓋方向に旋回させたとき、上蓋の自由度がかなり高い。これを利用して、上蓋のスカート壁外面から水平方向や上方向に延びている部分を有する係合片を形成した場合にも、上蓋の開蓋方向への旋回が該係合片によって阻害されることがない。即ち、このような係合片を利用して係合機構を設けることができるため、本発明では、上蓋を閉じた状態で成形することができる。例えば、従来公知の1ピースキャップでは、上蓋の開蓋を制御する係合片が、上蓋のスカート壁から下方に延びている形態を有しているため、上蓋が開いている状態でしか成形することができなかったのである。このことから理解されるように、本発明では、上蓋を閉じた状態で成形することができるという利点を有しており、金型面積を小さくし、ポットイールドを向上させることができる。
【0016】
さらに、上蓋をストラップバンドにより旋回させるため、上蓋の開蓋時にキャップ本体の上端部と上蓋の係合片とを確実に係合させることができ、上蓋をがっちりと保持することができるとともに、閉蓋時は上蓋を確実に容器口部に嵌め込むことができ、確実に再栓することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】容器口部に装着されている状態における本発明の1ピースキャップの側面断面を容器口部と共に示す図。
【
図5】
図1の1ピースキャップの開蓋操作のプロセスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図4を参照して、本発明の1ピースキャップAは、大まかに言って、筒状壁1を有するキャップ本体と上蓋3とから構成されている。即ち、筒状壁1は、容器口部100に装着されるキャップ本体として機能するものであり、上蓋3は、一対のストラップバンド5,5によって筒状壁1にヒンジ連結されている。
【0019】
まず、容器口部100について説明すると、この口部100の上端には、外方に拡径した頭部101が形成されており、口部100の外面には、頭部101からある程度間隔をおいて下方に位置する部分に螺条103が形成されており、さらに、その下方には、拡径した顎部105が形成され、最下方には、搬送等のために大径のサポートリング107が形成されている(
図1参照)。
図1から理解されるように、本発明の1ピースキャップAは、容器口部100のサポートリング107よりも上方の部分に装着されて使用されるものである。
【0020】
この1ピースキャップAにおいて、キャップ本体である筒状壁1の内面には、容器口部100の外面に形成されている螺条103と係合する螺条11が形成されており、螺条103と螺条11との螺子係合により、キャップ本体(筒状壁1)は、容器口部100に固定されるようになっている。
【0021】
また、筒状壁1の下端には、破断可能なブリッジ13を介して開封履歴明示バンド(TEバンド)15が設けられており、このTEバンド15の内面には、アンダーカット17が形成されており、キャップ本体1が容器口部100に装着されている状態において、アンダーカット17と容器口部100に設けられている顎部105とが係合し、キャップ本体1の上昇が制限されるように構成されている。即ち、螺子係合により容器口部100に装着されている筒状壁1(キャップ本体)を開蓋方向に回転させると、筒状壁1は、容器口部100の外面に沿って上昇するが、TEバンド15の上昇は、アンダーカット17と顎部105との係合により阻止される。この結果、筒状壁1(キャップ本体)を容器口部100から取り外したときには、TEバンド15は筒状壁1から切り離されたものとなっている。このことから理解されるように、TEバンド15が筒状壁1から切り離されていることが、このキャップ本体が容器口部100から取り外されたという開封履歴を示し、これにより、内容物の差し替え等の不正を防止することができる。
【0022】
また、筒状壁1の外面には、一部の領域を除き、キャップ高さ方向に延びているローレット19が形成されており(
図2~4参照)、これにより、筒状壁1の回転作業を容易に行い得るようになっている。
【0023】
尚、特に
図3の背面図に明瞭に示されているように、筒状壁1の下端面には下方に突出している突起21が設けられており、TEバンド15の上端面には、突起21を受け入れる係合用凹部23が設けられている。
図3から明らかなとおり、これらの突起21と凹部23は、閉蓋方向側が直立面となっており、開蓋方向側が傾斜面となっている。即ち、この1ピースキャップA(キャップ本体)を成形後、容器口部100に被せて閉蓋方向に回転する場合には、突起21の直立面が係合用凹部23の直立面にしっかりと係合するため、TEバンド15はキャップ本体1と一体となって閉蓋方向に回転するため、キャップ本体(1ピースキャップA)を不具合なく容器口部100に装着することができる。
また、容器口部100に装着されている筒状壁1(キャップ本体)を開蓋方向に回転させると、突起21と係合用凹部23の傾斜面同士が係合するため、筒状壁1はTEバンド15より上向きの応力を受け、TEバンド15は、筒状壁1より下向きの応力を受け、この結果、ブリッジ13を破断する応力が発生し、筒状壁1を速やかに上昇させることができる。
【0024】
さらに、筒状壁1の上端は、周方向の一部が切り欠かれており、第1の切欠き凹部Xと第2の切欠き凹部Yとが形成されている。これら切欠き凹部X、Yの機能については、後述する。
【0025】
本発明において、上蓋3は、天面壁25と、天面壁25の周縁から降下したスカート壁27とを有している。このような上蓋3のスカート壁27と筒状壁1(キャップ本体)とが一対のストラップバンド5,5によってヒンジ連結され、従って、上蓋3は、ストラップバンド5,5を支点としての旋回により、開閉可能となっている。一方、上蓋3の天面壁25の内面には、スカート壁27とは間隔を置いて、容器口部100の上端の頭部101と係合するシール用インナーリング29が設けられている。
図1に示されているように、インナーリング29とスカート壁27との間の空間に容器口部100の頭部101が嵌め込まれることにより、良好な密封性が確保されるものである。
【0026】
また、スカート状壁27の内面には、2つの周状突起29a,29bが上下に離れて形成されている。即ち、TEバンド15を有するキャップ本体1が容器口部に装着されている場合には、容器口部100の上端の頭部101は、インナーリング29とスカート壁27との間の空間に深く侵入し、上方の周状突起29aの上側に位置し、この周状突起29aと頭部101との係合により、上蓋3は、がっちりと固定されている。このような状態で、上蓋3を開蓋方向に旋回して上昇させると、TEバンド15が切り離され、容器口部100の頭部101は周状突起29aを乗り越えて周状突起29bの上方に位置し、これにより、上蓋3を上方に移動させての旋回作業を行い易くなっている。
尚、
図3に示されているように、キャップ本体1の上端面と上蓋3のスカート壁27の下端面との間には、小突起30により連結されていることが好ましい。即ち、この小突起30は、容易に破断するものであるが、このような小突起30により、このキャップAの保管、搬送時等において上蓋3が偶発的に開いてしまう不都合を防止することができる。
【0027】
上述した基本的な構造において、筒状壁1(キャップ本体)の上端の周方向の一部が切り欠かれて第1の凹部Xが形成されているが、この凹部Xにストラップバンド5,5の一端が連結されており、ストラップバンド5,5の他端がスカート壁27の外面に連結されている。
【0028】
筒状壁1の上端に形成されている第1の切欠き凹部Xは、背が低くなっている底壁部X1と、その両側端から立ち上がっている側壁部X2,X2とから形成されており、全体として矩形状を有している。上記のストラップバンド5,5の一端は、この第1の切欠き凹部の底壁部X1の上端面に連結され、その他端は、上蓋3のスカート壁27の外面の下端部分に連結されている。
【0029】
本発明において、上記のストラップバンド5,5は、
図3に示されているように、直線状の形態ではなく、屈曲した変形可能な形状で上蓋3(スカート壁27)とキャップ本体1(凹部Xでの底壁部X1)とを連結している。このような形状で連結させることにより、ストラップバンド5,5が弾性をもって変形するので旋回時に上蓋3の位置調整が可能となり、後述する係止片31が上端部33に確実に嵌まり込む。さらに上蓋3の閉蓋時にも確実にスカート壁27とインナーリング29の間に容器口部100の頭部101が嵌め込まれる。
【0030】
尚、スラップバンド5は、図示されているように、一対(2本)設けられているが、一本とすることもできる。ただ、ストラップバンド5は、変形自在の形態を有しているため、1本であると、上蓋3の旋回が不安定になることがある。従って、図示されているように、適当な間隔をあけて一対のストラップバンド5,5を設けることが、上蓋3の旋回を安定して行う上で好適である。
【0031】
本発明においては、上記のストラップバンド5,5を支点としての旋回により上蓋3を開けたとき、上蓋3の開蓋状態を安定に保持するために係合機構が設けられるわけであるが、このような係合機構として、キャップ本体1の凹部Xに対応する上蓋3のスカート壁27の下端外面には、係止片31が設けられている。正確には、この係止片31は、一対のストラップバンド5,5の間の位置に配置されており、上蓋3を旋回して開けたとき、この係止片31は可撓性を有しており、キャップ本体1の上端部、具体的には、凹部Xの底壁部X1の中央部分の上端部33を乗り越えて係止するようになっている。即ち、係止片31と上端部33とにより係合機構が構成されている。上端部33が係止片31と係合する係合部となるわけである。
このような係合機構によれば、係止片31が上端部33と係合して係止されるとき、確実に係止片31が上端部33を乗り越え、上蓋3は、キャップ本体1に対し所定の角度で固定されるため、高いクリック感を得ることができる。
【0032】
上記のような係止片31の形態は、特に制限されないが、キャップ本体(筒状壁1)に対して上蓋3が閉じられた形態で成形できるように、閉じられた空間が形成されないような形態とすべきである。例えば、
図1における係止片31の拡大断面図に示されているように、この係止片31は、水平方向に延びている基部31aと、基部31aの先端から上向きに延びている作用部31bとからなっており、全体としてL字型形状を有している。
【0033】
内容物を取り出すための上蓋3の開蓋方向への旋回及び係止固定は、
図5に示す手順で行われる。
【0034】
まず、容器口部100に装着された1ピースキャップAは、TEバンド15を備えているが、キャップ本体1を開栓方向に回転することにより、キャップ本体1は上昇するが、TEバンド15は、アンダーカット17と顎部105とが係合するため、その上昇が制限される。従って、TEバンド15はキャップ本体1から切り離されると同時に、容器口部100の頭部101は、先に述べたように、上蓋3のスカート壁27の内面の周状突起29aと29bとの間に移動する(
図5(a)参照)。
【0035】
次いで、上蓋3を上方に持ち上げながら、開蓋方向に旋回させる(
図5(b)参照)。即ち、上蓋3は、変形自在なストラップバンド5,5によってキャップ本体1に連結されているため、上蓋3を上方に容易に持ち上げて旋回することが可能となっている。このようにして上蓋3を開蓋方向へ旋回させると、上蓋3の係止片31の作用部31bは、キャップ本体1側の上端部33の外壁面33aに当接することとなる。
【0036】
上蓋3に自由度が無い場合には、上記の状態で上蓋3の旋回が制限されることとなるが、本発明では、上蓋3とキャップ本体1とが変形自在のストラップバンド5,5によって連結されているため、上蓋3を若干上方に移動させることにより、係止片31の作用部31bは、上端部33を乗り越えることとなる。この場合、
図1や
図5(a)に示されているように、外壁面33aの上端を傾斜面33bとすることにより、上蓋3に開蓋方向への旋回にしたがって、係止片31の作用部31bは傾斜面33bに沿って移動し、スムーズに上端部33を乗り越えることとなる。
【0037】
上記のようにして上蓋3を開蓋方向に旋回して係止片31の作用部31bが上端部33を乗り越えると、係止片31の作用部31bとスカート壁27の外面との間の狭い空間に、筒状壁1の上端部33が入り込むこととなる(
図5(c)参照)。
【0038】
即ち、筒状壁1の上端部33が、係止片31の作用部31bとスカート壁27の外面との間に入り込んだ瞬間に上蓋3は、所定の角度で固定される。このため、本発明では、高いクリック感が得られるのである。
【0039】
上記の説明から理解されるように、クリック感を得るためには、係止片31の作用部31bとスカート壁27の外面との間の空間の幅が狭いことが必須である。この空間の幅が広いと、上蓋3がガタついてしまい、安定に位置固定されず(即ち、係止が不十分である)、十分なクリック感を得ることができなくなってしまう。従って、係止片31の基部31aの長さは、このようなクリック感が得られる程度の大きさに設定しておけばよく、厳密ではないが、呼び径28mmキャップで筒状壁の厚みが0.8mmの場合、基部31aの長さdが(
図1参照)0.4~1.0mm程度であればよい。
【0040】
また、係止片31の作用部31bの長さは、この作用部31bが上端部33を乗り越え可能な長さにあれば特に制限されない。
さらに、作用部31bの形状は、成形時の型抜き性を考慮して決定すればよく、例えば外面は、直立面もしくは直立に近い面とすることが好ましく、さらに、作用部31bの内面は、先端部側が広くなるような傾斜面とすることが、上端部33を乗り越え易くするという観点からも好適である。
【0041】
上述した1ピースキャップAでは、例えば筒状壁1(キャップ本体)の外面を覆うような部材はなく、さらに上蓋3に関しても、スカート壁27の外面を覆って型抜きが困難となるような部材も設けられていないため、上蓋3を閉じた形態で成形することができるという大きな利点がある。即ち、成形金型の小面積化を図ることができ、生産効率を高めることができる。
【0042】
従って、本発明の1ピースキャップAでは、閉じられている上蓋3が安定に保持されていることや外観が損なわれないことなどを考慮して種々の態様を採用することができるが、何れも成形後の型抜き性や、成形後のカッティングなどの後加工によって容易に成形し得る形状とすべきである。
【0043】
例えば、キャップ本体1においては、前述した第1の切欠き凹部Xとは反対側の部分に第2の切欠き凹部Yを形成することが好ましい。即ち、第1の切欠き凹部Xは、ストラップバンド5,5が設けられる部分であり、上蓋3の旋回の支点側となるが、この凹部Yは、上蓋3の旋回の先端側となる部分である。この部分に凹部Yを形成することにより、この旋回先端側のスカート壁27aの長さを長くし、閉じられている上蓋3を安定に保持することができる。
【0044】
また、上蓋3の天面壁25の周縁部には、キャップ本体1の上端面を隠すように弧状フランジ41を形成することが好ましく、これにより、上蓋3の開蓋操作を行い易くすることもできる。
さらに、キャップ本体1の強度を高めるために、キャップ本体1の上端の上端面に沿うように、スカート壁17の下端に弧状のフランジ43a,43bを形成し、さらに、凹部Yの両側部分に対向するように、直立ガイド45,45をスカート壁27に形成することが好適である。
【0045】
上述した形態を有する本発明の1ピースキャップAは、各種熱可塑性プラスチック(例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン樹脂)を用いての射出成形、圧縮成形等の熱成形により、上蓋3が閉じた状態で成形される。
【符号の説明】
【0046】
1:キャップ本体
3:上蓋
5:ストラップバンド
11:螺条
15:TEバンド
25:天面壁
27:スカート壁
31:係止片
31a:基部
31b:作用部
X:第1の切欠き凹部
X1:底壁部
X2:側壁部
33:上端部
Y:第2の切欠き凹部
A:1ピースキャップ