IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フィルムの製造システム 図1
  • 特許-フィルムの製造システム 図2
  • 特許-フィルムの製造システム 図3
  • 特許-フィルムの製造システム 図4
  • 特許-フィルムの製造システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】フィルムの製造システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/028 20060101AFI20241106BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65H23/028
B65H23/188
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020199068
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086829
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 啓一
(72)【発明者】
【氏名】大前 通宏
(72)【発明者】
【氏名】田村 海
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】殿川 雅也
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159464(JP,A)
【文献】特開2002-144417(JP,A)
【文献】特開平8-12144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00 - 23/16
B65H 23/24 - 23/34
B65H 75/00 - 75/32
B65H 23/18 - 23/198
B65H 26/00 - 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの製造システムであって、
溶融樹脂をシート状の基材に成形する押出成形装置と、
流れ方向に搬送される前記基材を前記流れ方向に延伸する流れ方向延伸装置と、
前記流れ方向延伸装置を通過した前記基材を幅方向に延伸する幅方向延伸装置であって、前記幅方向における前記基材の一端部を掴む第1クリップと、前記幅方向における前記基材の他端部を掴む第2クリップと、前記第1クリップが走行する第1レールと、前記第2クリップが走行する第2レールとを有する幅方向延伸装置と、
前記フィルムの製造システムの動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記基材を第1搬送速度で搬送しつつ、前記基材を少なくとも前記幅方向に延伸する第1延伸ステップと、
前記流れ方向延伸装置を制御して、前記基材の搬送速度を、前記第1搬送速度から第2搬送速度に上げる速度上昇ステップと、
前記速度上昇ステップを実行した場合、前記搬送速度の上昇によって狭くなる前記基材の幅に応じて、前記幅方向延伸装置の入口側の前記第1レールと前記第2レールとの間隔を狭くするレールパターン変更ステップと、
前記基材を前記第2搬送速度で搬送しつつ、前記基材を前記流れ方向および前記幅方向に延伸する第2延伸ステップと
、前記フィルムの製造システムに実行させる、フィルムの製造システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記速度上昇ステップにおいて、前記基材の搬送速度を前記第1搬送速度から前記第2搬送速度に上げることにより、前記流れ方向における延伸倍率を上げ、
前記レールパターン変更ステップにおいて、前記流れ方向における延伸倍率の上昇によって狭くなる前記基材の幅に応じて、前記幅方向延伸装置の入口側の前記第1レールと前記第2レールとの間隔を狭くする、請求項1に記載のフィルムの製造システム。
【請求項3】
前記幅方向延伸装置は、
前記入口と、
前記基材を前記幅方向に延伸する延伸領域と、
前記流れ方向において前記入口と前記延伸領域との間に配置され、前記基材を加熱する予熱領域と
を有し、
前記レールパターン変更ステップにおいて、前記搬送速度の上昇によって狭くなる前記基材の幅に応じて、前記幅方向延伸装置の前記予熱領域内の前記第1レールと前記第2レールとの間隔を狭くする、請求項1または2に記載のフィルムの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融押出製膜装置と、製膜された樹脂フィルムを流れ方向に延伸する流れ方向延伸装置と、流れ方向に延伸された樹脂フィルムを幅方向に延伸する幅方向延伸装置とを含む、逐次延伸方式のフィルム製造装置が、知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-023170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されるような製造システムでは、例えば、流れ方向における延伸倍率の上昇に伴って基材の搬送速度が上昇した場合、基材の幅が狭くなる(いわゆるネックイン現象)。そのため、作業者が、幅方向延伸装置のレールパターンを、基材の幅に合わせて変更する必要がある。レールパターンを変更するには、作業者が、レールパターンを構成する複数のレールを手作業で移動させるか、または、製造システムの制御パネルを操作して複数のレールを移動させる必要がある。そのため、レールパターンの変更作業に時間および労力がかかり、フィルムの生産効率の向上を図ることが困難である。
【0005】
本発明は、フィルムの生産効率の向上を図ることができるフィルムの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、溶融樹脂をシート状の基材に成形する押出成形装置と、流れ方向に搬送される前記基材を幅方向に延伸する幅方向延伸装置であって、前記幅方向における前記基材の一端部を掴む第1クリップと、前記幅方向における前記基材の他端部を掴む第2クリップと、前記第1クリップが走行する第1レールと、前記第2クリップが走行する第2レールとを有する幅方向延伸装置と、前記押出成形装置および前記幅方向延伸装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、基材を第1搬送速度で搬送しつつ、前記基材を少なくとも前記幅方向に延伸する第1延伸ステップと、前記基材の搬送速度を、前記第1搬送速度から第2搬送速度に上げる速度上昇ステップと、前記速度上昇ステップを実行した場合、前記搬送速度の上昇によって狭くなる前記基材の幅に応じて、前記幅方向延伸装置の入口側の前記第1レールと前記第2レールとの間隔を狭くするレールパターン変更ステップと、前記基材を前記第2搬送速度で搬送しつつ、前記基材を前記流れ方向および前記幅方向に延伸する第2延伸ステップとを実行可能である、フィルムの製造システムを含む。
【0007】
このような構成によれば、作業者が手作業または制御パネルの操作により第1レールおよび第2レールを移動させることなく、基材の搬送速度の上昇に伴って自動的に、幅方向延伸装置の入口側の第1レールと第2レールとの間隔を、基材の幅に合わせて狭くできる。
【0008】
これにより、流れ方向における延伸倍率を上げた場合など、基材の搬送速度が上昇した場合に、幅方向延伸装置において、第1クリップで幅方向における基材の一端部を掴むとともに、第2クリップで幅方向における基材の他端部を掴むことができる。
【0009】
その結果、フィルムの生産効率の向上を図ることができる。
【0010】
本発明[2]は、前記基材を前記流れ方向に延伸する流れ方向延伸装置をさらに備え、前記幅方向延伸装置は、前記流れ方向延伸装置を通過した前記基材を幅方向に延伸し、前記制御装置は、前記速度上昇ステップにおいて、前記第1搬送速度を前記第2搬送速度に上昇させることにより、前記流れ方向における延伸倍率を上げ、前記レールパターン変更ステップにおいて、前記流れ方向における延伸倍率の上昇によって狭くなる前記基材の幅に応じて、前記幅方向延伸装置の入口側の前記第1レールと前記第2レールとの間隔を狭くする、上記[1]のフィルムの製造システムを含む。
【0011】
このような構成によれば、流れ方向における延伸倍率の上昇に伴って基材の幅が狭くなる場合に、自動的に、幅方向延伸装置の入口側の第1レールと第2レールとの間隔を、基材の幅に合わせて狭くできる。
【0012】
そのため、流れ方向延伸装置と幅方向延伸装置とを有する構成においてフィルムの生産効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルムの製造システムによれば、フィルムの生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態としてのフィルムの製造システムによって製造されるフィルムの断面図である。
図2図2は、フィルムの製造システムの概略構成図である。
図3図3は、図2の第2延伸装置を説明する説明図であって、第1延伸ステップを実行中の状態を示す。
図4図4は、フィルムの製造システムの制御を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、図2の第2延伸装置を説明する説明図であって、第2延伸ステップを実行中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.フィルムの製造システム
フィルムFの製造システム1について説明する。
【0016】
図1に示すように、フィルムFは、基材Sと、被膜Cとを備える。基材Sは、基材Sの厚み方向において、第1面S1と、第2面S2とを有する。被膜Cは、基材Sの第1面S1の上に配置される。被膜Cは、基材Sの第1面S1を覆う。被膜Cは、易接着層であってもよい。被膜Cが易接着層である場合、フィルムFは、易接着フィルムである。易接着フィルムは、例えば、モバイル機器、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビなどの画像表示装置の偏光板に使用される。詳しくは、易接着フィルムは、偏光板の偏光子を保護する保護フィルムとして使用される。易接着フィルムは、接着剤層を介して、偏光子と貼り合わされる。易接着フィルムは、易接着層で、偏光子と貼り合わされる。
【0017】
図2に示すように、フィルムFの製造システム1は、押出成形装置2と、流れ方向延伸装置4Aと、塗工装置3と、幅方向延伸装置4Bと、スリット加工装置5と、ナーリング加工装置6と、巻取装置7とを備える。
【0018】
(1)押出成形装置
押出成形装置2は、熱可塑性樹脂が溶融した溶融樹脂を、シート状の基材Sに成形する。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アセテート樹脂(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなど)などが挙げられる。
【0020】
偏光子の保護フィルムとして使用される易接着フィルムを製造する場合、基材Sの材料として、好ましくは、アクリル樹脂が挙げられる。
【0021】
また、偏光子の保護フィルムとして使用される易接着フィルムを製造する場合、アクリル樹脂は、グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂であってもよい。グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂、および、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、高い耐熱性、高い透明性、および高い機械的強度を有するため、偏光度が高くかつ耐久性に優れる偏光板の製造に適する。グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂は、特開2006-283013号公報、特開2006-335902号公報、特開2006-274118号公報に記載されている。ラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。
【0022】
また、基材Sは、アクリル樹脂に加えて、アクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂を含有することにより、アクリル樹脂の複屈折を打ち消して、光学等方性に優れる易接着フィルムを得ることができる。また、易接着フィルムの機械強度を向上させることもできる。
【0023】
なお、基材Sは、酸化防止剤、安定剤、補強材、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、可塑剤、滑剤、フィラーなどの添加剤を含有してもよい。
【0024】
(2)流れ方向延伸装置
流れ方向延伸装置4Aは、流れ方向MDに搬送される基材Sを、加熱した後、流れ方向MDに延伸する。
【0025】
(3)塗工装置
塗工装置3は、基材Sの第1面S1に、塗工液を塗布する。塗工装置としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、キスコーターなどが挙げられる。なお、基材Sの第1面S1には、塗工液が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が、施されてもよい。
【0026】
易接着フィルムを製造する場合、塗工液は、易接着層を形成するための易接着組成物である。
【0027】
易接着層は、バインダ樹脂と、微粒子とを含有する。
【0028】
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。易接着フィルムが偏光子の保護フィルムとして使用される場合、バインダ樹脂は、好ましくは、熱硬化性樹脂である。バインダ樹脂は、複数種類を併用できる。
【0029】
微粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの酸化物、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、例えば、タルク、カオリンなどのケイ酸塩鉱物、例えば、リン酸カルシウムなどのリン酸塩などが挙げられる。易接着フィルムが偏光子の保護フィルムとして使用される場合、微粒子は、好ましくは、酸化物、より好ましくは、酸化ケイ素である。微粒子は、複数種類を併用できる。
【0030】
塗工液(易接着組成物)は、樹脂成分と、上記した微粒子と、分散媒とを含有する。
【0031】
樹脂成分は、上記したバインダ樹脂の被膜(易接着層)を形成する。バインダ樹脂がウレタン樹脂である場合、樹脂成分としては、例えば、水系ウレタン樹脂が挙げられる。水系ウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂の乳化物である非反応型水系ウレタン樹脂、例えば、イソシアネート基をブロック剤で保護したウレタン樹脂の乳化物である反応型水系ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダ樹脂がウレタン樹脂である場合、塗工液は、ウレタン硬化触媒(トリエチルアミンなど)、イソシアネートモノマーを含有してもよい。
【0032】
分散媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
【0033】
(4)幅方向延伸装置
幅方向延伸装置4Bは、基材Sに塗布された塗工液を乾燥する。これにより、塗工液が上記した被膜Cになる。また、幅方向延伸装置4Bは、被膜Cが形成された基材Sを、加熱した後、幅方向TDに延伸する。幅方向TDは、流れ方向MDと直交する。被膜Cが形成された基材Sが幅方向TDに延伸されることにより、上記したフィルムFが得られる。
【0034】
詳しくは、図3に示すように、幅方向延伸装置4Bは、入口41と、出口42と、予熱領域A1と、延伸領域A2と、冷却領域A3とを有する。予熱領域A1は、流れ方向MDにおいて、入口41と延伸領域A2との間に配置される。予熱領域A1は、基材Sを加熱する。延伸領域A2は、流れ方向MDにおいて、予熱領域A1と冷却領域A3との間に配置される。延伸領域A2は、基材Sを幅方向TDに延伸する。冷却領域A3は、流れ方向MDにおいて、延伸領域A2と出口42との間に配置される。冷却領域A3は、基材Sを冷却する。
【0035】
幅方向延伸装置4Bは、複数の第1レール43A~43Iと、複数の第2レール44A~44Iと、複数の第1クリップ45と、複数の第2クリップ46とを、さらに有する。
【0036】
第1レール43A~43Iは、幅方向延伸装置4B内において、入口41から出口42まで、第1レール43A~43Iの順で並ぶ。第1レール43A~43Iが並ぶことにより、第1レールパターンP1が形成される。詳しくは、予熱領域A1内の第1レール43A~43Dは、流れ方向MDに沿って並ぶ。延伸領域A2内の第1レール43E~43Gは、流れ方向MDに対して傾斜する方向に並ぶ。第1レール43E~43Gは、流れ方向MDの下流側に向かうにつれて、第2レール44E~44Gから離れる。冷却領域A3内の第1レール43H、43Iは、流れ方向MDに沿って並ぶ。
【0037】
第2レール44A~44Iは、幅方向TDにおいて、第1レール43A~43Iと間隔を隔てて配置される。第2レール44A~44Iは、幅方向延伸装置4B内において、入口41から出口42まで、第2レール44A~44Iの順で並ぶ。第2レール44A~44Iが並ぶことにより、第2レールパターンP2が形成される。詳しくは、予熱領域A1内の第2レール44A~44Dは、流れ方向MDに沿って並ぶ。第2レール44A~44Dは、幅方向TDにおいて、第1レール43A~43Dと間隔を隔てる。延伸領域A2内の第2レール44E~44Gは、流れ方向MDに対して傾斜する方向に並ぶ。第2レール44E~44Gは、流れ方向MDの下流側に向かうにつれて、第1レール43E~43Gから離れる。幅方向TDにおける第1レール43Fと第2レール44Fとの間隔は、幅方向TDにおける第1レール43Eと第2レール44Eとの間隔よりも広い。幅方向TDにおける第1レール43Gと第2レール44Gとの間隔は、幅方向TDにおける第1レール43Fと第2レール44Fとの間隔よりも広い。冷却領域A3内の第2レール44H、44Iは、流れ方向MDに沿って並ぶ。第2レール44H、44Iは、幅方向TDにおいて、第1レール43H、43Iと間隔を隔てる。
【0038】
複数の第1クリップ45は、第1レールパターンP1を走行する。言い換えると、複数の第1クリップ45は、第1レール43A~43Iを走行する。複数の第1クリップ45のそれぞれは、入口41から出口42まで、幅方向TDにおける基材Sの一端部E1を掴む。
【0039】
複数の第2クリップ46は、第2レールパターンP2を走行する。言い換えると、複数の第2クリップ46は、第2レール44A~44Iを走行する。複数の第2クリップ46のそれぞれは、入口41から出口42まで、幅方向TDにおける基材Sの他端部E2を掴む。
【0040】
(5)スリット加工装置
図2に示すように、スリット加工装置5は、フィルムFを所定の幅に切断する。
【0041】
(6)ナーリング加工装置
ナーリング加工装置6は、所定の幅に切断されたフィルムFの幅方向両端に、ナールを形成する。ナールは、レーザーによって形成される。ナールは、加熱されたエンボスロールによって形成されてもよい。
【0042】
(7)巻取装置
巻取装置7は、ナールが形成されたフィルムFを巻き取る。巻き取りが完了することにより、フィルムFのロールを得ることができる。
【0043】
2.フィルムの製造システムの詳細
フィルムの製造システム1は、制御装置11をさらに備える。
【0044】
制御装置11は、フィルムの製造システム1の動作を制御する。詳しくは、制御装置11は、押出成形装置2、流れ方向延伸装置4A、塗工装置3、幅方向延伸装置4B、スリット加工装置5、ナーリング加工装置6、および巻取装置7と電気的に接続される。制御装置11は、押出成形装置2、流れ方向延伸装置4A、塗工装置3、幅方向延伸装置4B、スリット加工装置5、ナーリング加工装置6、および巻取装置7を制御する。図4に示すように、制御装置11は、第1延伸ステップ(S1)と、速度上昇ステップ(S3)と、レールパターン変更ステップ(S4)と、第2延伸ステップ(S5)とを実行可能である。
【0045】
(1)第1延伸ステップ
第1延伸ステップ(S1)では、制御装置11は、基材Sを第1搬送速度で搬送しつつ、流れ方向延伸装置4Aを通過した基材Sを、幅方向延伸装置4Bで、幅方向TDに延伸する。なお、第1延伸ステップ(S1)では、流れ方向延伸装置4Aで基材Sを流れ方向MDに延伸しなくてもよい。
【0046】
第1延伸ステップ(S1)では、幅方向TDにおける第1レール43Aと第2レール44Aとの間隔は、D1である。なお、幅方向TDにおける第1レール43Bと第2レール44Bとの間隔、幅方向TDにおける第1レール43Cと第2レール44Cとの間隔、および、幅方向TDにおける第1レール43Dと第2レール44Dとの間隔も、D1である。
【0047】
また、幅方向TDにおける第1レール43Iと第2レール44Iとの間隔は、D2である。間隔D2は、間隔D1よりも広い。なお、幅方向TDにおける第1レール43Hと第2レール44Hとの間隔も、D2である。
【0048】
(2)速度上昇ステップ
図4に示すように、作業者が図示しない制御パネルを操作して、フィルムFの延伸倍率を上げると(S2:YES)、制御装置11は、速度上昇ステップ(S3)を実行する。
【0049】
速度上昇ステップ(S3)では、制御装置11は、流れ方向延伸装置4Aを制御して、基材Sの搬送速度を第1搬送速度から第2搬送速度に上げることにより、流れ方向MDにおける延伸倍率を上げる。すると、流れ方向MDにおける延伸倍率の上昇により、基材Sの幅が狭くなる(ネックイン現象)。
【0050】
そのため、図5に示すように、幅方向延伸装置4Bの入口41に入る基材Sの幅W2は、第1延伸ステップ(S1)において幅方向延伸装置4Bの入口41に入る基材Sの幅W1(図3参照)よりも、狭くなる。
【0051】
(3)レールパターン変更ステップ
次に、図4に示すように、制御装置11は、速度上昇ステップ(S3)を実行した場合、レールパターン変更ステップ(S4)を実行する。
【0052】
レールパターン変更ステップ(S4)では、制御装置11は、図5に示すように、速度上昇ステップ(S3)によって狭くなる基材Sの幅W2に応じて、幅方向延伸装置4Bの入口41側の第1レール43Aと第2レール44Aとの間隔を狭くする。制御装置11は、第1レール43Aおよび第2レール44Aを幅方向TDに移動させて、第1レール43Aと第2レール44Aとの間隔を狭くする。レールパターン変更ステップ(S4)により、第1レールパターンP1および第2レールパターンP2の形状が変更される。
【0053】
レールパターン変更ステップ(S4)が実行された後において、幅方向TDにおける第1レール43Aと第2レール44Aとの間隔は、D3である。間隔D3は、間隔D1(図3参照)よりも狭い。なお、幅方向TDにおける第1レール43Bと第2レール44Bとの間隔、幅方向TDにおける第1レール43Cと第2レール44Cとの間隔、および、幅方向TDにおける第1レール43Dと第2レール44Dとの間隔は、幅方向TDにおける第1レール43Aと第2レール44Aとの間隔と同じ、D3である。
【0054】
また、制御装置11は、第1レール43E~Gのそれぞれ、および、第2レール44E~Gのそれぞれを、間隔D3に対して所定の割合で、幅方向TDに移動させて、第1レール43Eと第2レール44Eとの間隔、第1レール43Fと第2レール44Fとの間隔、および、第1レール43Gと第2レール44Gとの間隔を狭くする。
【0055】
なお、本実施形態では、制御装置11は、第1レール43H、43I、および、第2レール44H、44Iを移動させない。
【0056】
第1レール43A~43G、および、第2レール44A~44Gの移動量は、速度上昇ステップ(S3)における基材Sの幅の変動量に基づいて、予め、実験または計算により、求められる。本実施形態では、制御装置11は、第1搬送速度から第2搬送速度に変更した場合の第1レール43A~43Gの移動量、および、第2レール44A~44Gの移動量を、設定値として記憶している。制御装置11は、設定値に基づいて、第1レール43A~43G、および、第2レール44A~44Gを移動させる。
【0057】
これにより、作業者が手作業または制御パネルの操作によって第1レール43A~43Gおよび第2レール44A~44Gを移動させることなく、流れ方向MDにおける延伸倍率の上昇に伴って自動的に、第1レールパターンP1および第2レールパターンP2を、基材Sの幅W2に合わせて変更できる。
【0058】
そのため、流れ方向MDにおける延伸倍率を上げた場合でも、複数の第1クリップ45で、幅方向TDにおける基材Sの一端部E1を掴むとともに、複数の第2クリップ46で、幅方向TDにおける基材Sの他端部E2を掴むことができる。
【0059】
その結果、フィルムFの生産効率の向上を図ることができる。
【0060】
(4)第2延伸ステップ
レールパターン変更ステップ(S4)が完了すると、制御装置11は、第2延伸ステップ(S5)を実行する。
【0061】
第2延伸ステップ(S5)では、制御装置11は、流れ方向延伸装置4Aにおいて、速度上昇ステップ(S3)で設定された延伸倍率で、基材Sを流れ方向MDに延伸し、幅方向延伸装置4Bにおいて、基材Sを第2搬送速度で搬送しつつ、レールパターン変更ステップ(S4)によって変更された第1レールパターンP1および第2レールパターンP2で、基材Sを幅方向TDに延伸する。
【0062】
本実施形態では、第2延伸ステップ(S5)における延伸倍率は、流れ方向MDおよび幅方向TDの両方において、第1延伸ステップ(S1)における延伸倍率よりも高い。
【0063】
3.変形例
(1)制御装置11は、流れ方向MDにおける延伸倍率の上昇に伴う搬送速度の変化量に基づいて、第1レール43A~43Gの移動量、および、第2レール44A~44Gの移動量を計算し、計算結果に基づいて、第1レール43A~43G、および、第2レール44A~44Gを移動させてもよい。
【0064】
また、制御装置11は、速度上昇ステップ(S3)後の基材Sの幅W2を計測して、計測結果に基づいて、第1レール43A~43G、および、第2レール44A~44Gを移動させてもよい。
【0065】
(2)速度上昇ステップ(S3)における基材Sの搬送速度の上昇は、流れ方向MDの延伸倍率を上げるための搬送速度の上昇に限らない。フィルムFの製造システム1の生産速度を上げるための搬送速度の上昇であってもよい。
【0066】
(3)フィルムFの製造システム1は、流れ方向延伸装置4Aを備えなくてもよい。塗工液が塗布された基材Sは、幅方向延伸装置4Bによって、流れ方向MDおよび幅方向TDに延伸(二軸同時延伸)されてもよい。
【0067】
(4)フィルムFの製造システム1は、ナーリング加工装置6の代わりに、マスキングフィルムを繰り出すマスキングフィルム繰出装置と、繰り出されたマスキングフィルムをフィルムFに貼り合わせる貼合装置とを備えてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 フィルムの製造システム
2 押出成形装置
4B 幅方向延伸装置
11 制御装置
43A 第1レール
44A 第2レール
45 第1クリップ
46 第2クリップ
F フィルム
S 基材
S1 第1延伸ステップ
S3 速度上昇ステップ
S4 レールパターン変更ステップ
S5 第2延伸ステップ
図1
図2
図3
図4
図5