(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20241106BHJP
【FI】
C02F1/28 F
(21)【出願番号】P 2020208764
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 響
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】松澤 大起
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-028406(JP,A)
【文献】実開昭53-029163(JP,U)
【文献】特開2002-254076(JP,A)
【文献】特開平07-096277(JP,A)
【文献】特開平06-198277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/78
B01D 15/00-15/42
B01D 24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象である被処理水が供給される水処理槽と、
前記水処理槽の内部に前方に向かって移動可能に配置された複数の担体充填槽と、
板状部材で構成され、前記水処理槽の左右方向の内側壁面に一端が固定された複数の可動部材と、
を備え、
前記被処理水が流れる上流側から見たとき、各可動部材の他端は、それぞれ各担体充填槽と重畳しており、
非運転時において、各可動部材の他端は、それぞれ各担体充填槽の前記上流側の外側壁面に接しておらず、運転時において、各可動部材の他端は、それぞれ各担体充填槽の前記上流側の外側壁面に接する、水処理装置。
【請求項2】
前記担体充填槽は、前記水処理槽に対して着脱自在である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記複数の可動部材は、前記内側壁面に対して一端が固定された板状の弾性部材、又は、前記内側壁面に対して一端が回動可能に固定された板状部材である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記担体充填槽は、移動に供する回転部材を外側壁面に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記水処理槽は、前記回転部材をガイドするレール部を有する、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記レール部は、前記水処理槽の長手方向に延在する第1レール部と、前記長手方向と交差する方向に延在する第2レール部と、を含む、請求項5に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水を吸着材に接触させ、排水中に含まれる溶存物質を除去する水処理装置が知られている。このような水処理装置は、イオン交換樹脂、活性炭、ゼオライトなどの吸着材を備えた吸着処理槽を有しており、排水中の溶存物質を吸着材で吸着することにより、溶存物質の除去が可能である。吸着材は、一定量の溶存物質を吸着すると吸着能力が低下する。そのため、水処理装置は、処理水(処理後の排水)に含まれる溶存物質の濃度や使用時間に応じて、適宜吸着材を交換しながら運転される。
【0003】
原水(処理前の排水)が供給される上流側の吸着材は、原水に含まれる溶存物質の濃度が高いため、吸着性能が劣化していても多くの溶存物質を吸着することができる。これに対し、下流側の吸着材は、溶存物質の濃度が低下した排水から溶存物質を回収する必要があるため、高い処理能力を必要とする。したがって、下流側の吸着材を新しい吸着材に交換し、下流側の吸着材を上流側の吸着材として再利用する場合がある。このような水処理装置は、連続的な水処理を行うために多数の吸着処理槽を備え、多段吸着方式で運用される(例えば、特許文献1及び特許文献2)。多段吸着方式とは、使用する吸着処理槽を順番に切り換えて、休止状態にした一部の吸着処理槽の吸着材を入れ換える方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-60241号公報
【文献】特開平3-137905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の多段吸着方式では、吸着材が充填された吸着処理槽を複数設置する必要があり、水処理装置の占有面積が大きくなる。また、多段吸着方式では、一部の吸着処理槽を休止状態にするために水の流れを順次変えていく方法を採用している。したがって、従来の多段吸着方式では、必要な弁の個数が増え、運転操作も複雑になるというデメリットを有していた。
【0006】
本発明の一実施形態の課題の一つは、運転操作が簡易であり、メンテナンス性に優れた水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における水処理装置は、浄化対象である被処理水が供給される水処理槽と、前記水処理槽の内部に前方に向かって移動可能に配置された複数の担体充填槽と、を備える。
【0008】
前記担体充填槽は、前記水処理槽に対して着脱自在であってもよい。
【0009】
前記水処理装置は、前記水処理槽の左右方向の内側壁面に取り付けられた複数の可動部材をさらに備えてもよい。前記複数の可動部材は、前記内側壁面に対して一端が固定された板状の弾性部材であってもよい。前記可動部材は、前記内側壁面に対して一端が回動可能に固定された板状部材であってもよい。運転時において、前記可動部材の他端は、隣接する2つの担体充填槽の間に位置してもよい。
【0010】
前記担体充填槽は、上部に被処理水の流入口を有し、下部に被処理水の流出口を有していてもよい。前記複数の担体充填槽は、前段の担体充填槽における被処理水の流出口と、前記前段の担体充填槽に隣接する後段の担体充填槽における被処理水の流入口とが近接して配置されていてもよい。
【0011】
前記担体充填槽は、前方の外側壁面及び後方の外側壁面の少なくとも一方に弾性部材を有していてもよい。
【0012】
前記水処理槽は、最も前方に位置する担体充填槽の前方への移動を前記水処理槽の前方の内側壁面から離間した位置で抑止する抑止部材を有していてもよい。
【0013】
前記水処理装置は、前記複数の担体充填槽を移動させる移送装置をさらに備えてもよい。
【0014】
前記担体充填槽は、底部又は側壁に孔部を有していてもよい。
【0015】
前記担体充填槽は、側壁が二重壁で構成されていてもよい。
【0016】
前記担体充填槽は、移動に供する回転部材を外壁に有していてもよい。前記水処理槽は、前記回転部材をガイドするレール部を有していてもよい。前記レール部は、前記水処理槽の長手方向に延在する第1レール部と、前記長手方向と交差する方向に延在する第2レール部と、を含んでもよい。
【0017】
前記移送装置は、前記水処理槽の後方内部に配置され、前記水処理槽の前後方向に伸縮動作を行う伸縮部材を含んでもよい。。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の水浄化システムにおける概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の水処理装置における運転状態を説明するための平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の水処理装置における可動部材の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の吸着材を交換する際における水処理装置の動作を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態の吸着材を交換する際における水処理装置の動作を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態の水処理装置における支持部材と担体充填槽との連結部付近の拡大図である。
【
図9】本発明の一実施形態の変形例の水処理装置における支持部材と担体充填槽との連結部付近の拡大図である。
【
図10】本発明の一実施形態の水処理装置における担体充填槽の構成を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態の水処理装置における担体充填槽の構成を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す側断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の水処理装置における遮蔽部材の構成を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態の水処理装置における担体充填槽の構成を示す図である。
【
図16】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態の水処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0020】
本明細書において、重力が働く方向を「下」、その逆の方向を「上」とする。また、水処理装置について、被処理水が流入する側を「前」、被処理水が流出する側を「後」とする。したがって、被処理水の上流側を「前方」と呼び、下流側を「後方」と呼ぶ場合がある。「左」及び「右」は、水処理装置を後方から前方に向かって見た場合を基準として定義される。
【0021】
(第1実施形態)
[水浄化システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態の水浄化システム1000における概略構成を示す図である。本実施形態の水浄化システム1000は、水処理装置100、原水槽200及び送水ポンプ300を備える。原水槽200は、浄化対象である原水210を貯留するタンクである。原水210は、例えば、工場廃水や生活排水である。送水ポンプ300は、配管250を介して原水槽200から原水210を受け取り、配管350を介して水処理装置100に原水210を供給する。ただし、
図1に示す例は、水浄化システム1000の一例にすぎない。すなわち、水浄化システム1000は、これらの構成に加えて他の要素(例えば、原水のpHを調整する調整槽等)を備えてもよいし、これらの構成から一部の要素(例えば、送水ポンプ300)が省略されてもよい。
【0022】
[水処理装置の構成]
以下、水処理装置100の構成について説明する。前述した
図1は、水処理装置100を左側方から見た構成を示す側断面図に対応する。
図2は、本発明の一実施形態の水処理装置100の構成を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の水処理装置100は、水処理槽10、複数の担体充填槽20及び移送装置30を備える。
【0023】
水処理槽10は、浄化対象である被処理水110が供給される処理槽である。本実施形態の場合、被処理水110は、原水槽200から供給される原水210である。水処理槽10の内部には、複数の担体充填槽20が配置される。水処理槽10の流入口11は、送水ポンプ300に対して配管350を介して連結される。水処理槽10の流出口12は、配管150を介して、図示しない後段の処理槽(例えば、消毒槽等)に連結される。水処理槽10の内部は、流入口11から流入した被処理水110によって満たされ、その被処理水110の中に複数の担体充填槽20が沈められた構成となっている。
【0024】
水処理槽10は、さらに、可動部材13を有する。可動部材13は、水処理槽10の左右方向の内側壁面に所定の間隔を空けて配置されている。後述するように、可動部材13は、担体充填槽20の前後方向の外側壁面を利用して水処理槽10の内部を複数の区画に分離する仕切り部材として機能する。
図2に示すように、水処理装置100が運転状態にある場合、被処理水110が形成する水流によって、可動部材13は、自由端側が担体充填槽20の前方の外側壁面に押し当てられた状態となる。
【0025】
担体充填槽20は、被処理水110から溶存物質(コロイド粒子や微粒子)を除去するための処理槽である。担体充填槽20の内部には、活性炭を担体とする吸着材29が充填されている。本実施形態では、担体充填槽20の内部に充填した吸着材29に対して被処理水110を接触させることにより、被処理水110に含まれる溶存物質を活性炭の細孔内に吸着させて除去する。特に、本実施形態では、吸着材29として、細孔内部に鉄を担持した活性炭を用いるため、被処理水110に含まれるリンを効率よく除去することができる。鉄を担持した活性炭によるリンの除去については、例えば、特開2019-107632号公報に記載されている。なお、本実施形態では、担体として活性炭を用いた物理吸着を利用する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、担体としてゼオライトを用いた化学吸着を利用することも可能である。
【0026】
担体充填槽20は、被処理水110が供給される流入口21、及び、被処理水110が排出される流出口22を有する。担体充填槽20は、水処理槽10に対して着脱自在であり、上下方向に搬入及び搬出が可能である。また、担体充填槽20は、後述する移送装置30の支持部材33と連結するための連結部23を有する。これにより、水処理槽10の内部において、担体充填槽20を水平方向に移動させることが可能である。
【0027】
移送装置30は、複数の担体充填槽20を移動させる機能を有する。具体的には、本実施形態の移送装置30は、複数の担体充填槽20を被処理水110の上流側(水処理槽10の流入口11に近い側)に向かって移動させる役割を有する。
図1に示すように、本実施形態において、移送装置30は、ロープ31を巻き上げる牽引装置32、及び、ロープ31に対して所定間隔で固定され、各担体充填槽20に連結された支持部材33を含む。牽引装置32は、例えばウィンチである。
【0028】
図2に示すように、支持部材33は、長手方向を有する柱状又は板状の部材であり、水処理槽10の左右方向の側壁に架け渡されている。支持部材33は、ロープ31と連結するための連結部33aと、担体充填槽20の連結部23と連結するための連結部33bとを含む。支持部材33の連結部33bと担体充填槽20の連結部23とは、例えば、長さが可変の連結部材を用いて連結する。
図1及び
図2では、連結部材の図示を省略しているが、例えば連結部材としてレバーホイストを用いることができる。
【0029】
水処理装置100の流入口11から供給された被処理水110は、担体充填槽20の流入口21から担体充填槽20の内部に供給される。担体充填槽20の内部に供給された被処理水110は、担体充填槽20の流出口22に向かって流れる。その際、被処理水110は、吸着材29に接触しながら移動するため、被処理水110に含まれる溶存物質が吸着材29に吸着される。このように、担体充填槽20の内部では、被処理水110に対して下向流で吸着処理が行われる。担体充填槽20の流出口22から流出した被処理水110は、隣接する後段の担体充填槽20の流入口21に向かい、再び担体充填槽20の内部を通過する。なお、ここでは、被処理水110に対して下向流で吸着処理を行う例を示したが、上向流で吸着処理を行ってもよい。
【0030】
以上のサイクルを繰り返すことにより、被処理水110は4つの担体充填槽20を用いた多段吸着方式で浄水処理が行われる。
図1において、一点鎖線で示す矢印は、水処理槽10の流入口11から流出口12に向かう被処理水110の流れを表している。最終段(最も下流側)の担体充填槽20の流出口22から流出した被処理水110は、水処理槽10の流出口12から配管150を介して後段の処理槽に供給される。最終段の担体充填槽20にて吸着処理を完了した処理済みの被処理水110は、一般的に処理水と呼ばれる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態の水処理装置100における運転状態を説明するための平面図である。具体的には、
図3(A)は、非運転時における水処理装置100の状態を示し、
図3(B)は、運転時における水処理装置100の状態を示す。説明を簡単にするため、
図3では、
図1及び
図2に示した移送装置30及び吸着材29の図示は省略する。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態の水処理装置100における可動部材13の構成を示す図である。
図4(A)は、
図3(A)に示す担体充填槽20を被処理水110の上流側から見た図であり、
図4(B)は、
図3(A)に示す担体充填槽20を被処理水110の下流側から見た図である。
【0033】
図3(A)に示すように、担体充填槽20は、水処理槽10の内側に所定の間隔で配置されている。ただし、隣接する担体充填槽20の間の間隔は、一定である必要はなく、それぞれ異なる間隔で離間してもよい。また、各担体充填槽20の流入口21及び流出口22が直線上に並ぶように配置された例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、流入口21を左側(又は右側)に寄せ、流出口22を右側(又は左側)に寄せることにより、平面視において、被処理水110が担体充填槽20の内部を斜めに通過するようにしてもよい。被処理水110が担体充填槽20の内部を斜めに通過すると、被処理水110と吸着材29との接触時間が増えるため、溶存物質の除去効率を向上させることができる。
【0034】
可動部材13は、水処理槽10の左右方向の内側壁面に所定の間隔で取り付けられている。ただし、隣接する可動部材13の間の間隔は一定である必要はなく、担体充填槽20の配置に合わせてそれぞれ異なる間隔で離間してもよい。
図3(A)、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、可動部材13は、一端は、水処理槽10の内側壁面に取り付けられ、他端は、自由端になっている。本実施形態において、可動部材13は、板状の弾性部材である。具体的には、可動部材13は、板状に加工したゴム製の部材で構成されている。このとき、可動部材13の他端(自由端)は、隣接する担体充填槽20の間に位置する。すなわち、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、被処理水110の上流側又は下流側から見たとき、可動部材13の端部と担体充填槽20とが重畳するような位置関係となっている。
【0035】
ここで、
図3(A)に示す状態の水処理槽10の内部に対し、被処理水110を連続的に供給すると、水処理装置100は、
図3(B)に示す運転状態に遷移する。
図3(B)において、一点鎖線で示す矢印は、水処理槽10の流入口11から流出口12に向かう被処理水110の流れを表している。本実施形態の場合、担体充填槽20の外部も被処理水110で満たされるため、水処理槽10の内部には、全体的に被処理水110による水流が発生する。
【0036】
図3(B)に示すように、水処理槽10の内部に水流が発生すると、弾性部材で構成される可動部材13は、水流に押されて下流側に向かって湾曲する。湾曲した各可動部材13の端部は、各担体充填槽20の前方の外側壁面に押し当てられ、密着した状態となる。このように、一対の可動部材13とそれらの可動部材13に接する担体充填槽20の前方の外側壁面とが仕切りとして機能し、水処理槽10は、複数の区画に分離される。つまり、前段の担体充填槽20で吸着処理が行われた被処理水110は、ほぼ全てが後段の担体充填槽20の内部に流入する。
【0037】
[吸着材を交換する際における水処理装置の動作]
次に、担体充填槽20の内部に配置された吸着材29を交換する際における水処理装置100の動作について説明する。水処理装置100を運転していると、上流側の吸着材29は多量の溶存物質を吸着して吸着効率が徐々に低下する。また、下流側の吸着材29は、被処理水110に含まれる微量な溶存物質を吸着する必要があるため、上流側よりも高い吸着性能を必要とする。そのため、本実施形態の水処理装置100では、所定時間ごとに運転を一時停止し、吸着材29の交換を行う。
【0038】
吸着材29の交換タイミングは、吸着性能が所定のレベルを下回ったと判断された時点とすればよい。例えば、水処理槽10の流出口12付近に濃度センサを設け、被処理水110の溶存物質の濃度(例えば、リン濃度)を監視し、溶存物質の濃度が所定値を上回ったとき、吸着性能が所定のレベルを下回ったと判断することができる。ただし、この例に限らず、例えば、あらかじめ吸着材29の吸着性能の経時変化を調べておき、吸着材29の使用時間を管理して交換タイミングを決定してもよい。
【0039】
図5及び
図6は、本発明の一実施形態の吸着材29を交換する際における水処理装置100の動作を説明するための図である。具体的には、
図5は、水処理装置100の平面図であり、
図6は、水処理装置100の側断面図である。説明を簡単にするため、移送装置30など一部の構成について図示を省略する。
【0040】
まず、
図5(A)及び
図6(A)に示すように、水処理装置100の運転を一時停止したら、最も上流側の担体充填槽20を上方に持ち上げて、水処理槽10から搬出する。担体充填槽20の搬出は、クレーンなどの重機を用いてもよし、大型のウィンチなどの牽引装置を用いてもよい。本実施形態では、担体充填槽20の中に吸着材29を充填したまま担体充填槽20を搬出する。
【0041】
次に、移送装置30を元に戻し、
図5(B)及び
図6(B)に示すように、各担体充填槽20を被処理水110の上流側に向かって移動させる。本実施形態では、
図1及び
図2に示した牽引装置32を用いてロープ31を引っ張り、各支持部材33に連結された3つの担体充填槽20をまとめて上流側に移動させる。その際、弾性部材で構成された可動部材13は、担体充填槽20に押し退けられて上流側に向かって曲がる。したがって、可動部材13は、担体充填槽20の移動の妨げとはならない。
【0042】
先頭の担体充填槽20が最も上流側の位置まで移動したら、
図5(C)及び
図6(C)に示すように、水処理槽10の最も下流側の位置に対して新たな担体充填槽20を搬入する。新たに搬入される担体充填槽20の内部には、再生された(脱着処理が施された)吸着材29が充填されている。再生された吸着材29は、前回の吸着材29の交換時に水処理装置100から搬出された吸着材であってもよい。ただし、この例に限らず、新たに供給される吸着材29は、未使用の吸着材であってもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態では、水処理槽10の内部に複数の担体充填槽20を配置することにより、吸着塔のような設備を個々に設ける必要がなく、水処理装置の占有面積を小さくすることができる。また、吸着材29を交換するに当たり、必要な操作は担体充填槽20の脱着及び水平移動で足りるため、水の流れを順次変えるような複雑な運転操作が不要である。したがって、本実施形態によれば、運転操作が簡易であり、メンテナンス性に優れた水処理装置を提供することができる。
【0044】
(第1実施形態の変形例1)
本実施形態では、移送装置30を用いて担体充填槽20を移動させる例について説明したが、この例に限られるものではなく、担体充填槽20を手動で移動させることも可能である。この場合、移送装置30は、省略することができる。
【0045】
また、本実施形態の水処理装置100の底部、又は、担体充填槽20の底部にエアレーション装置を設けてもよい。すなわち、水処理装置100の底部、又は、担体充填槽20の底部においてエアレーションを行うことにより、担体充填槽20の浮力を増加させることが可能である。水処理装置100に対して、このようなエアレーション装置を設けた場合、担体充填槽20の移動に要する力を低減することができるため、牽引装置32を省略したり移送装置30を省略したりして、手動で担体充填槽20を移動させることが可能である。
【0046】
(第1実施形態の変形例2)
本実施形態では、可動部材13として、板状の弾性部材を用いる例を示したが、この例に限られるものではない。可動部材13は、一端が固定され、他端が自由に動くことができる部材であればよい。例えば、可動部材13として、金属材料又はプラスチック材料で構成された板状の部材を用いてもよい。この場合、可動部材13の一端を水処理槽10の内側壁面に対して回動可能に支持し、他端が自由に動けるようにしておけばよい。また、バネ等を用いて可動部材13を下流側に向けて付勢し、可動部材13の自由に動く側の端部を担体充填槽20の前方の外側壁面に押し付ける構成としてもよい。本変形例の可動部材13は、一端が回動可能に支持されているため、各担体充填槽20が前方に移動する際の動きを妨げることがない。
【0047】
(第1実施形態の変形例3)
本実施形態では、担体として活性炭を用いた吸着処理により被処理水110を浄化する例を示したが、この例に限るものではない。例えば、微生物を用いた生物処理により被処理水110を浄化することも可能である。生物処理を利用する場合、吸着材29に代えて、微生物を担持させた担体を担体充填槽20に充填すればよい。この場合、担体としては、例えば、多孔質樹脂で構成された数センチ角の部材を用いることができる。
【0048】
前述の変形例1で述べたように、担体充填槽20の内部でエアレーションを行う場合、微生物として好気性微生物を用いることにより担体充填槽20を曝気槽として機能させることができる
【0049】
(第1実施形態の変形例4)
本実施形態では、担体充填槽20の内部に対し、直接的に吸着材29を充填する例を示したが、バスケットタイプの容器に充填した吸着材29を担体充填槽20の内部に配置してもよい。容器は、充填した吸着材29が抜け落ちない程度の間隙を有するメッシュ状又は網目状の部材で構成すればよい。
【0050】
本変形例によれば、吸着材29の交換時において、最も上流側の担体充填槽20の中から、先に容器ごと吸着材29を取り出し、その後、担体充填槽20を搬出する。容器がメッシュ状または網目状であるため、内部の被処理水110は、搬出時に外部に排出される。したがって、本変形例によれば、担体充填槽20の搬出に要する負荷を低減することができる。
【0051】
担体充填槽20の水処理槽10への搬入時は、先に担体充填槽20を水処理槽10の中に搬入しておき、その後、容器に入れた吸着材29を担体充填槽20の内部に搬入すればよい。この場合、容器の壁が被処理水110を通すため、吸着材29を被処理水110に沈める際の負荷を低減することができる。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の水処理装置100aについて説明する。具体的には、本実施形態の水処理装置100aは、水処理槽10の左右方向の側壁の上面に、移送装置30の支持部材33の移動を補助するレール部を有する。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0053】
図7は、本発明の一実施形態の水処理装置100aの構成を示す図である。具体的には、
図7(A)は、水処理装置100aの平面図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示すレール部14の構成を示す拡大図である。
図7(A)に示すように、本実施形態の水処理装置100aは、水処理槽10の左右方向の側壁10aの上面にレール部14を有する。レール部14は、
図7(B)に示すように、筐体14aの内部に、回転可能に支持された複数の回転体14bが直線状に配置された構造を有する。本実施形態のレール部14は、いわゆるローラーレールである。本実施形態の水処理装置100aは、移送装置30の支持部材33がレール部14の上を移動するため、担体充填槽20の移動に要する力が少なくて済むという利点を有する。
【0054】
図8は、本発明の一実施形態の水処理装置100aにおける支持部材33と担体充填槽20との連結部付近の拡大図である。
図8(A)は、支持部材33と担体充填槽20との連結部付近の外観を示し、
図8(B)は、支持部材33の連結部33bと連結部材34との連結箇所を側方から見た図を示している。
図8(A)に示すように、支持部材33の連結部33bと担体充填槽20の連結部23とは、連結部材34を用いて連結される。本実施形態において、連結部材34は、例えばレバーホイストである。ただし、この例に限らず、連結部材34は、長さが可変のチェーンやロープを含む装置であってもよい。つまり、連結部材34は、支持部材33の移動に伴って担体充填槽20を移動させることができるように、両者を連結できる部材であればよい。連結部材34は、連結部33bと連結部23との間の距離を変更するための機構を備えていることが好ましい。
【0055】
本実施形態において、支持部材33の連結部33bは、開口部33cを有する。
図8(B)に示すように、連結部材34は、フック部34aを開口部33cに引っ掛けることにより支持部材33に連結される。ここでは図示を省略するが、担体充填槽20の連結部23と連結部材34との連結方法についても、
図8(B)と同様の構成を用いている。本実施形態では、連結部材34としてレバーホイストを用いるため、支持部材33と担体充填槽20との間の距離は可変である。そのため、水処理装置100aの運転時は、担体充填槽20の底部と水処理槽10の底部とが接するようにしておき、非運転時は、担体充填槽20を若干持ち上げて移動の際の負荷を低減してもよい。また、
図8(A)に示すように、レール部14は、水処理槽10の左右方向の側壁10aの上面10bに対してクランプ14cにより固定されている。ただし、この例に限らず、レール部14は、上面10bに対してボルト等により固定されてもよい。
【0056】
(第2実施形態の変形例)
図9は、本発明の一実施形態の変形例の水処理装置100aにおける支持部材33と担体充填槽20との連結部付近の拡大図である。具体的には、
図9は、支持部材33と担体充填槽20との連結部付近の外観を示している。
図8に示した構造と異なる点は、
図9に示す例では、担体充填槽20の左右方向の側壁に固定された連結部材35が、直接的に支持部材33の連結部33bと連結している点である。
【0057】
連結部材35は、柱状の部材であり、先端にフック部35aを有する。
図8(B)を用いて説明した構造と同様に、連結部材35は、フック部35aを連結部33bの開口部33cに引っ掛けることにより支持部材33に連結される。なお、
図9では、連結部材35として柱状の部材を例示したが、この例に限らず、連結部材35の一部にロープ又はチェーンを含ませることにより、担体充填槽20の動きに自由度をもたせてもよい。
【0058】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の担体充填槽20aについて説明する。具体的には、本実施形態の担体充填槽20aは、底部24に複数の孔25が設けられている。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0059】
図10は、本発明の一実施形態の水処理装置における担体充填槽20aの構成を示す図である。具体的には、
図10(A)は、担体充填槽20aの平面図であり、
図10(B)は、
図10(A)に示す線分A-Aに沿って担体充填槽20aを切断した断面図である。
図10(A)に示すように、本実施形態の担体充填槽20aは、底部24に対して複数の孔25が設けられている。
【0060】
複数の孔25の配置は、規則的であってもよいし、不規則であってもよい。本実施形態では、複数の孔25の外形が円形である例を示したが、この例に限らず、複数の孔25の外形は、多角形、楕円形その他の形状であってもよい。ただし、担体充填槽20aの内部に配置された吸着材29が流出しないように、孔25の径は、吸着材29の径よりも小さいことが望ましい。
【0061】
本実施形態では、複数の孔25を水の流出又は流入のための孔として用いる。例えば、第1実施形態において説明したように、吸着材29を交換する際、最も上流側の担体充填槽20aを水処理槽10から搬出するが、担体充填槽20aの内部は、被処理水110及び吸着材29で満たされている。本実施形態では、担体充填槽20aを持ち上げた際、複数の孔25から被処理水110が排出されるため、担体充填槽20aの搬出に要する負荷を低減することができる。
【0062】
逆に、水処理槽10の最も下流側に担体充填槽20aを搬入する際、担体充填槽20aの内部は空気で満たされている。他方、水処理槽10の内部は、被処理水110で満たされているため、そのまま担体充填槽20aを搬入すると、浮力が強すぎて沈めるのに時間がかかってしまう。この場合において、本実施形態では、担体充填槽20aを被処理水110の中に沈める際、被処理水110が複数の孔25から担体充填槽20aの内部に流入するため、担体充填槽20aを沈める際に要する負荷及び時間を低減することができる。
【0063】
本実施形態の担体充填槽20aは、複数の孔25を用いて被処理水110を流出させたり流入させたりするため、各孔25の径は、大きいほど作業時間を低減することができる。ただし、前述のとおり、複数の孔25の径は、担体充填槽20aの内部から吸着材29が流出しない範囲に収めることが望ましい。
【0064】
以上のように、本実施形態の水処理装置は、複数の担体充填槽20aのそれぞれの底部24に複数の孔25が設けられているため、担体充填槽20aの水処理槽10への搬入及び搬出の負荷を低減することができる。なお、本実施形態では、担体充填槽20aの底部24に複数の孔25を設ける例を示したが、この例に限らず、前後方向又は左右方向の側壁の一部(好ましくは、側壁の下部)に複数の孔を設けてもよい。
【0065】
(第3実施形態の変形例)
図11は、本発明の一実施形態の水処理装置における担体充填槽20bの構成を示す図である。具体的には、
図11(A)は、担体充填槽20bの平面図であり、
図11(B)は、
図11(A)に示す線分B-Bに沿って担体充填槽20bを切断した断面図である。
図11(A)に示すように、本実施形態の担体充填槽20bは、底部24に対して複数の孔25が設けられている。さらに、担体充填槽20bは、内部に仕切り壁26を有することにより、一部の側壁が二重壁27を構成している。二重壁27は、内部に空洞28を有し、空気が充填されている。ただし、この例に限らず、空洞28の内部には、発泡体を設けてもよい。
【0066】
図11に示す担体充填槽20bは、二重壁27が浮力体として機能するため、吸着材29の交換時に前方へ移動させる際、移動に要する負荷を軽減することができる。また、最も上流側の担体充填槽20bを水処理槽10から搬出する際、担体充填槽20bの浮力が強いため、搬出に要する負荷を低減することができる。さらに、
図10に示した担体充填槽20aと同様に、担体充填槽20bの底部24にも複数の孔25が設けられている。そのため、担体充填槽20bの浮力が強くても、被処理水110の中に担体充填槽20bを沈める際に要する負荷を低減することができる。
【0067】
なお、
図11では、担体充填槽20bの底部24に複数の孔25が設けられた例を示したが、複数の孔25は省略してもよい。この場合であっても、担体充填槽20bの前方及び上方への移動に要する負荷を低減するという効果が得られる。
【0068】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の水処理装置100cについて説明する。具体的には、本実施形態の水処理装置100cは、担体充填槽20cが互いに近接して配置される。ここで「近接して配置される」とは、密接して配置されている場合、及び、接してはいないが僅かな距離を空けて配置されている場合を含む。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0069】
図12は、本発明の一実施形態の水処理装置100cの構成を示す側断面図である。本実施形態では、個々の担体充填槽20cが互いに近接して配置されているため、第1実施形態の水処理装置100に比べて、水処理槽10の内部に配置される担体充填槽20cの数を増やすことができる。すなわち、水処理装置100cの全体の処理能力を高めることができる。
【0070】
本実施形態では、各担体充填槽20cを交互に逆向きに配置する。すなわち、
図12に示すように、複数の担体充填槽20cは、前段の担体充填槽20cの流出口22と後段の担体充填槽20cの流入口21とが近接して配置される。したがって、最も上流側の担体充填槽20cに供給された被処理水110は、下向流と上向流を交互に繰り返しながら後方へ流れる。
【0071】
本実施形態の場合、各担体充填槽20cが近接して配置されるため、第1実施形態のように、隣接する担体充填槽20cの間に可動部材を設ける必要がない。ただし、水処理槽10と担体充填槽20cとの間に隙間がある場合は、遮蔽部材を設けて未処理の被処理水110が後方に流れないようにすることが望ましい。
【0072】
図13は、本発明の一実施形態の水処理装置100cにおける遮蔽部材15の構成を示す図である。具体的には、
図13(A)は、水処理装置100cの平面図である。
図13(B)は、
図13(A)に示す担体充填槽20cを被処理水110の上流側から見た図であり、
図13(c)は、
図13(A)に示す担体充填槽20cを被処理水110の下流側から見た図である。
【0073】
図13(A)に示すように、本実施形態の担体充填槽20cは、左右方向の外側壁面に遮蔽部材15を有する。遮蔽部材15は、担体充填槽20cの外側壁面から水処理槽10の左右方向の内側壁面に到達する高さを有しており、担体充填槽20cの外側壁面と水処理槽10の内側壁面との両方に密接する。そのため、水処理槽10の流入口11から供給された未処理の被処理水が、各担体充填槽20cの横を通過して流出口12に到達することがない。
【0074】
遮蔽部材15は、弾性部材で構成される。例えば、遮蔽部材15として、ゴム製の部材を用いることができる。本実施形態では、半円形状のゴム製の部材を担体充填槽20cの外側壁面の前方側端部に取り付けている。
図13(B)及び
図13(C)に示すように、遮蔽部材15は、担体充填槽20cの高さと略同一の長さを有する。これにより、水処理槽10の内側壁面と担体充填槽20cの左右方向の外側壁面との間を未処理の被処理水110が流れることを防ぐことができる。
【0075】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態及び第4実施形態とは異なる構造の水処理装置100dについて説明する。具体的には、本実施形態の水処理装置100dは、複数の担体充填槽20dそれぞれの左右方向の外側壁面に、移動に供する回転部材41を有すると共に、水処理槽50が各担体充填槽20dの回転部材41の移動をガイドするレール部51を有する。本実施形態において、第1実施形態及び第4実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0076】
図14は、本発明の一実施形態の水処理装置100dの構成を示す図である。具体的には、
図14(A)は、水処理装置100dの平面図であり、
図14(B)は、水処理装置100dの側断面図である。
図15は、本発明の一実施形態の水処理装置100dにおける担体充填槽20dの構成を示す図である。具体的には、
図15(A)は、担体充填槽20dを上流側から見た図であり、
図15(B)は、担体充填槽20dを側方から見た図である。
【0077】
図14に示すように、本実施形態の水処理装置100dは、左右方向の外側壁面に回転部材41を備えた複数の担体充填槽20dと、左右方向の内側壁面にレール部51を有する水処理槽50とを含む。本実施形態では、各担体充填槽20dが、回転部材41を介して水処理槽50に接している。そのため、前方への移動の際に回転部材41の回転体41aが回転することにより、担体充填槽20dの移動に要する負荷を低減することができる。本実施形態において、回転部材41は、支持台41bに埋め込まれ、回転可能に支持された回転体41aを有する。回転部材41は、回転体41aを回転させることにより担体充填槽20dの移動を補助する。本実施形態の回転部材41は、いわゆるボールキャスターである。ただし、この例に限らず、回転部材41としては、キャスタータイプの車輪であってもよい。
【0078】
他方、水処理槽50は、左右方向の内側壁面に、回転部材41の移動をガイドするレール部51を有する。
図14(B)に示すように、レール部51は、水処理槽50の長手方向に延在する第1レール部51aと、長手方向に交差する方向に延在する第2レール部51bとを含む。本実施形態では、第1レール部51aと第2レール部51bとは略直交する。
【0079】
レール部51は、水処理槽50の内側壁面に設けられた溝部である。各担体充填槽20dは、レール部51の内側に回転体41aを接触させながら移動する。各担体充填槽20dが前方に移動する際、各回転部材41は、第1レール部51aにガイドされる。最も上流側の担体充填槽20dを上方に搬出する際は、回転部材41は、第2レール部51bにガイドされる。同様に、最も下流側に担体充填槽20dを搬入する際は、回転部材41は、第2レール部51bにガイドされる。本実施形態では、回転部材41の回転体41aがあらゆる方向に回転可能である。したがって、回転部材41は、各担体充填槽20dにおける前後方向への移動だけでなく、上下方向の移動についても補助することができる。
【0080】
本実施形態では図示を省略しているが、未処理の被処理水110が水処理槽50と担体充填槽20dとの隙間を通過して後方に流れないように、担体充填槽20dの左右方向の外側壁面には遮蔽部材が設けられている。遮蔽部材としては、第4実施形態で説明した遮蔽部材15を用いることができる、具体的には、
図13に示したように、各担体充填槽20dの外側壁面の前方側端部に、担体充填槽20dの高さと略同一の長さの遮蔽部材15を設ける。最も上流側に位置する担体充填槽20dに設けられた遮蔽部材15が水流を遮ることにより、未処理の被処理水110が水処理槽50の内側壁面と担体充填槽20dの左右方向の外側壁面との隙間を通過することを防ぐことができる。
【0081】
(第5実施形態の変形例)
本実施形態では、複数の担体充填槽20dそれぞれの左右方向の外側壁面に移動に供する回転部材41を設け、各担体充填槽20dの移動を補助する例を示した。しかし、この例に限られるものではなく、他の外側壁面に回転部材41を設けて担体充填槽20dの移動を補助することも可能である。
【0082】
例えば、各担体充填槽20dの底部の外側壁面に回転部材41を設けた場合、各担体充填槽20dの前後方向への移動を補助することができる。この場合、水処理槽50の底部の内側壁面に、第1レール部51a(水処理槽50の長手方向に延在するレール部)を設けて回転部材41をガイドすればよい。
【0083】
また、各担体充填槽20dの前方の外側壁面又は後方の外側壁面に回転部材41を設けた場合、各担体充填槽20dの上下方向への移動を補助することができる。この場合、水処理槽50の前方の内側壁面又は後方の内側壁面に、第2レール部51b(水処理槽50の長手方向に交差する方向に延在するレール部)を設けて回転部材41をガイドすればよい。
【0084】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態及び第4実施形態とは異なる構造の水処理装置100eについて説明する。具体的には、本実施形態の水処理装置100eは、水処理槽10の内側に配置された複数の担体充填槽20eを前方に移動させる機能を有している。本実施形態において、第1実施形態及び第4実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0085】
図16は、本発明の一実施形態の水処理装置100eの構成を示す図である。具体的には、
図16(A)は、水処理装置100eの平面図であり、
図16(B)は、水処理装置100eの側断面図である。一点鎖線で示した矢印は、水処理装置100eを流れる被処理水110の流れを示している。
【0086】
本実施形態の水処理装置100eは、移送装置60を備える。移送装置60は、水処理槽10の内側に配置された複数の担体充填槽20eを前方に移動させる機能を有する。本実施形態において、移送装置60は、水処理槽10の後方の角部に設けられている。ただし、移送装置60は、水処理槽10の後方に配置されていればよく、角部以外の位置に配置してもよい。
【0087】
移送装置60は、水処理槽10の前後方向に伸縮動作を行う伸縮部材60aを含む。伸縮部材60aは、例えば、棒状部材(ロッド)の先端に、担体充填槽20eを押すための平板を設けた構造を有する。ただし、この例の限らず、担体充填槽20eを押すことができる構造であれば、如何なる構造であってもよい。
【0088】
伸縮部材60aの伸縮動作は、例えば、油圧式、電動式又はガス式のアクチュエータ(例えば、電動シリンダ等)を用いて実現してもよいし、ラックアンドピニオンを用いて実現してもよい。また、ラックアンドピニオンを用いる場合、回転ハンドル等を設けて手動で伸縮動作を行えるようにしてもよい。伸縮部材60aを水処理槽10の前方に向かって伸ばすことにより、担体充填槽20eを前方へ押し出すことができる。
【0089】
また、複数の担体充填槽20eは、前方の外側壁面及び後方の外側壁面の少なくとも一方に弾性部材61を有する。
図16(A)に示すように、本実施形態の弾性部材61は、各担体充填槽20eの前方の外側壁面及び後方の外側壁面における左右の側端部に設けられている。
図16(B)に示すように、弾性部材61は、担体充填槽20eの上下方向の長さ(高さ)に合わせた長さで設けられている。ただし、弾性部材61は、少なくとも水処理槽10の底部から被処理水110の水面の高さまでの長さがあればよい。
【0090】
弾性部材61は、例えばゴム製の部材であり、いわゆるパッキンとして機能する。本実施形態の水処理装置100eは、運転時に、移送装置60を用いて各担体充填槽20eを前方に押し付けて処理を行う。その際、
図16(A)に示すように、各担体充填槽20eの弾性部材61は、互いに押し付けられて密着する。そのため、未処理の被処理水110が、水処理槽10の内側壁面と担体充填槽20eの左右方向の外側壁面との隙間を通って後方に流れてしまうことを防ぐことができる。
【0091】
本実施形態の水処理装置100eにおいて、担体充填槽20eの内部に充填された吸着材(図示せず)を交換する際(すなわち非運転時)には、移送装置60の伸縮部材60aを縮ませて、各担体充填槽20eの拘束を解く。この状態で、最も上流側の担体充填槽20eを搬出する。次に、移送装置60の伸縮部材60aを伸ばして各担体充填槽20eを前方に向かって押し出し、水処理槽10の最も後方側にスペースを空ける。その後、空いたスペースに新しい吸着材を充填した担体充填槽20eを搬入する。以上の過程を経て、吸着材の交換作業が終了する。
【0092】
以上のように、本実施形態の水処理装置100eは、伸縮部材60aを含む移送装置60と弾性部材61とを備えることにより、効率のよい水処理と吸着材の交換とを行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、運転操作が簡易であり、メンテナンス性に優れた水処理装置を提供することができる。
【0093】
(第6実施形態の変形例)
本実施形態では、水処理槽10の後方のみに移送装置60を設けた例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、移送装置60は、水処理槽10の前方及び後方に設けてもよい。前方に設けた移送装置は、後方に向かって各担体充填槽20eを移動させることができる。そのため、水処理槽10の上流側にスペースを空けたい場合などには、前方に設けた移送装置によって各担体充填槽20eを下流側に寄せることができる。
【0094】
(第7実施形態)
本実施形態では、第1実施形態及び第4実施形態とは異なる構造の水処理装置100fについて説明する。具体的には、本実施形態の水処理装置100fは、水処理槽10fの内側に、複数の担体充填槽20fの前方への移動を抑止する部材が設けられている。本実施形態において、第1実施形態及び第4実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0095】
図17は、本発明の一実施形態の水処理装置100fの構成を示す図である。具体的には、
図17(A)及び
図17(B)は、水処理装置100fの平面図であり、
図17(C)は、担体充填槽20fの側面図である。
【0096】
図17(A)に示すように、本実施形態の水処理槽10fは、前方の内側壁面の近傍に抑止部材16aを有する。抑止部材16aは、例えば、金属材料又は樹脂材料(プラスチック材料を含む)で構成される柱状部材である。抑止部材16aは、最も前方に位置する担体充填槽20fの前方への移動を抑止するストッパとして機能する部材である。すなわち、
図17(A)に示す例では、担体充填槽20fは、水処理槽10fの前方の内側壁面から抑止部材16aの厚み分だけ離間した位置よりも先に進めないように構成されている。
【0097】
上述の構成により、水処理槽10fの前方の内側壁面と最も前方に位置する担体充填槽20fとの間には、抑止部材16aの厚み分のスペースが確保される。したがって、水処理槽10fにおける被処理水110の流入口11と担体充填槽20fの流入口21の上下方向の位置とが異なっていても、被処理水110の流れが妨げられることはない。
【0098】
図17(B)は、水処理槽10fの前方の内側壁面から所定の距離だけ離隔した位置に板状の抑止部材16bを設けた例である。
図17(B)に示す例では、担体充填槽20fは、抑止部材16bが設けられた位置よりも先に進めない。そのため、水処理槽10fの前方の内側壁面と最も前方に位置する担体充填槽20fとの間には、所定の距離のスペースを確保することができる。
【0099】
図17(A)及び
図17(B)に示した構成において、各担体充填槽20fの前方の外側壁面には、弾性部材71が設けられている。弾性部材71は、例えばゴム製の部材である。
図17(C)に示すように、弾性部材71は、担体充填槽20fの外側壁面の縁に沿って流入口21を囲むように設けられている。ただし、弾性部材71の形状は、この例に限られるものではない。例えば、外側壁面の上端部又は下端部に位置する弾性部材71は、省略されていてもよい。すなわち、
図17(C)に示す弾性部材71のうち、抑止部材16a又は16bと接しない部分については省略されていてもよい。
【0100】
本実施形態では、水処理装置100fの運転時、第1実施形態又は第2実施形態で説明した移送装置30(図示せず)を用いて、各担体充填槽20fを前方に寄せる。そのため、最も前方に位置する担体充填槽20fの弾性部材71は、水処理装置100fの運転時において、抑止部材16a又は16bに密着する。これにより、未処理の被処理水110が、水処理槽10fの左右方向の内側壁面と担体充填槽20fの左右方向の外側壁面との隙間を通って後方に流れてしまうことを防ぐことができる。
【0101】
(第7実施形態の変形例1)
本実施形態では、担体充填槽20fの前方の外側壁面に弾性部材71を設ける例を示したが、この例に限らず、担体充填槽20fの後方の外側壁面に弾性部材71を設けてもよいし、弾性部材71を省略してもよい。この場合、最も前方に位置する担体充填槽20fが直接的に抑止部材16a又は16bに当接したり、担体充填槽20f同士が直接的に当接したりする。しかし、担体充填槽20fと抑止部材16a又は16bとの密着性、又は、担体充填槽20f同士の密着性が悪くなければ、本実施形態の効果を大きく損なうことはない。
【0102】
(第7実施形態の変形例2)
図17(B)に示す例では、水処理槽10fの左右方向の内側壁面に対して左右方向に延在する抑止部材16bを設けた例を示した。しかし、この例に限らず、水処理槽10fの前方の内側壁面に対して前後方向に延在する抑止部材(図示せず)を設けてもよい。この場合においても上述した本実施形態の効果を損なうことはない。
【0103】
本発明の各実施形態及びそれらの変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。上述した各実施形態又はそれらの変形例の水処理装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0104】
また、上述した各実施形態又はそれらの変形例の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0105】
10…水処理槽、10a…側壁、10b…上面、11…流入口、12…流出口、13…可動部材、14…レール部、14a…筐体、14b…回転体、14c…クランプ、15…遮蔽部材、16a、16b…抑止部材、20、20a、20b、20c、20d…担体充填槽、21…流入口、22…流出口、23…連結部、24…底部、25…孔、26…仕切り壁、27…二重壁、28…空洞、29…吸着材、30…移送装置、31…ロープ、32…牽引装置、33…支持部材、33a、33b…連結部、33c…開口部、34…連結部材、34a…フック部、35…連結部材、35a…フック部、41…回転部材、41a…回転体、41b…支持台、50…水処理槽、51…レール部、51a…第1レール部、51b…第2レール部、60…移送装置、60a…伸縮部材、61、71…弾性部材、100、100a、100c、100d…水処理装置、110…被処理水、150…配管、200…原水槽、210…原水、250…配管、300…送水ポンプ、350…配管、1000…水浄化システム