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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/356 20060101AFI20241106BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20241106BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20241106BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
D06M15/356
D06M13/328
D06M13/463
D06M15/53
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020216945
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102291
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】桶田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】天谷 友彦
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095975(JP,A)
【文献】特開2012-041651(JP,A)
【文献】特開2015-101795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;
(B)一般式(B1)で表される繰返し構造単位を有する、カチオン性ポリマー
(式中、
1は、炭素数2~4のヒドロキシアルカンから水素原子2個を除去してなる2価の基であり、
2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1~3のアルキル基であり、
-は、対イオンである。);及び
(C)ノニオン界面活性剤を含む、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して5~20質量%である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
一般式(B1)において、R1が2-ヒドロキシトリメチレン基又は1-ヒドロキシトリメチレン基であり、かつR2がすべてメチル基である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分の25℃における粘度が20~140mPa・sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(B)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(C)成分が、アルコール若しくは脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、又はポリオキシエチレン基を付加した硬化ヒマシ油である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項7】
アルコール若しくは脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物が、一級イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:10~100モル)である、請求項6に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項8】
ポリオキシエチレン基を付加した硬化ヒマシ油におけるエチレンオキサイドの平均付加モル数が10~100モルである、請求項6に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項9】
(C)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項10】
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が0.05~3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項11】
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が2~50である、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内における液体柔軟剤の市場規模は拡大傾向にあり、なかでも繊維製品へ消臭性を付与する機能を持つ柔軟剤のシェアは年々伸長している。
消臭技術のうち、香りによるマスキングは、使用者に強い印象を与えるため多くの柔軟剤で用いられているが、スメハラ等の懸念もある。
柔軟剤で採用されている消臭技術としては、例えば、包接化合物である高度分岐環状デキストリンの配合(特許文献1)や、塩化ベンザルコニウム等の抗菌剤の配合(特許文献2)が知られている。
他の消臭技術として、カチオン性ポリマーの配合が知られている(特許文献3)
その他、消臭とは別の目的でカチオン性ポリマーを配合する技術が知られている(特許文献4~8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-1490号公報
【文献】特開2001-200475号公報
【文献】特開2015-101795号公報
【文献】特表2019-506500号公報
【文献】特表2015-531008号公報
【文献】特開2012-172283号公報
【文献】特開2012-87440号公報
【文献】特開2011-236518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カチオン性ポリマーを配合した柔軟剤は消臭性を繊維製品へ付与できるが、保管中に分離が起きて外観が悪化するという課題を本発明者は見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を鋭意検討した結果、本発明者は、特定構造のカチオン界面活性剤を基剤として含む液体柔軟剤へ、特定構造のカチオン性ポリマーとノニオン界面活性剤とを配合すると、保管中の分離に対する安定性(分離安定性)を有しつつ、繊維製品(特に、化学繊維製品)へ優れた消臭性を付与できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔11〕に関するものである。
〔1〕下記の(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;
(B)一般式(B1)で表される繰返し構造単位を有する、カチオン性ポリマー
(式中、
1は、炭素数2~4のヒドロキシアルカンから水素原子2個を除去してなる2価の基であり、
2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1~3のアルキル基であり、
-は、対イオンである。);及び
(C)ノニオン界面活性剤を含む、液体柔軟剤組成物。
〔2〕(A)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して5~20質量%である、前記〔1〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔3〕一般式(B1)において、R1が2-ヒドロキシトリメチレン基又は1-ヒドロキシトリメチレン基であり、かつR2がすべてメチル基である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔4〕(B)成分の25℃における粘度が20~140mPa・sである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔5〕(B)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔6〕(C)成分が、アルコール若しくは脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、又はポリオキシエチレン基を付加した硬化ヒマシ油である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔7〕アルコール若しくは脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物が、一級イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:10~100モル)である、前記〔6〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔8〕ポリオキシエチレン基を付加した硬化ヒマシ油におけるエチレンオキサイドの平均付加モル数が10~100モルである、前記〔6〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔9〕(C)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔10〕(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)が0.05~3である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔11〕(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が2~50である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明の液体柔軟剤組成物は、分離安定性を有しつつ、繊維製品へ優れた消臭性を付与できる。したがって、本発明は従来製品にはない付加価値を有する液体柔軟剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
(A)成分は柔軟基材であり、繊維製品へ柔軟性を付与するために配合する。
(A)成分は「エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」であるカチオン界面活性剤である。
【0009】
炭素数10~26の炭化水素基(以下、「長鎖炭化水素基」ともいう)の炭素数は、17~26が好ましく、18~24がより好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性付与効果が良好であり、26以下であると液体柔軟剤組成物のハンドリング性が良好である。
長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。長鎖炭化水素基が不飽和である場合、二重結合の位置はいずれの箇所にあっても構わないが、二重結合が1個の場合には、その二重結合の位置は長鎖炭化水素基の中央であるか、中央値を中心に分布していることが好ましい。
長鎖炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても、構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。鎖状の炭化水素基としては、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
長鎖炭化水素基は、分断基によって分断されていてもよい。分断は1ヶ所でもよく、2ヶ所以上であってもよい。好ましくは1ヶ所である。
分断基はエステル基(-COO-)又はアミド基(-NHCO-)である。長鎖炭化水素基が分断基を2つ以上有する場合、各分断基は、同じであっても異なっていてもよい。
なお、分断基が有する炭素原子は、長鎖炭化水素基の炭素数にカウントする。
長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
「エステル基(-COO-)又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物(以下、「アミン化合物」ともいう)」における長鎖炭化水素基の数は1~3個である。好ましくは2個(2級アミン化合物)又は3個(3級アミン化合物)であり、より好ましくは3個である。
【0010】
アミン化合物としては、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R1~R3はそれぞれ独立に、-CH2CH(Y)OCOR4(Yは水素原子又はCH3であり、R4は炭素数7~21の炭化水素基である)、-(CH2nNHCOR5(nは2又は3であり、R5は炭素数7~21の炭化水素基である)、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)、又は、-(CH2nNH2(nは2又は3である)であり、
1~R3のうちの少なくとも1つは、-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2nNHCOR5である。)
一般式(A1)における基「-CH2CH(Y)OCOR4」中、Yとしては水素原子が好ましい。
4としては、炭素数15~19の炭化水素基が好ましい。一般式(A1)で表される化合物中にR4が複数存在するとき、該複数のR4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
4の炭化水素基は、炭素数8~22の脂肪酸(R4COOH)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R4の素となる脂肪酸(R4COOH)は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖脂肪酸でも分岐脂肪酸でもよい。なかでも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R4のもととなる脂肪酸の飽和/不飽和比率(質量比)は、90/10~0/100が好ましく、90/10~40/60より好ましく、90/10~70/30が特に好ましい。
4が不飽和脂肪酸残基である場合、シス体とトランス体が存在するが、シス体/トランス体の質量比率は、40/60~100/0が好ましく、70/30~90/10が特に好ましい。
4の素となる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などが挙げられる。なかでも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて、以下の条件(a)~(c)を満たすように調整した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。
(a)飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の比率(質量比)が90/10~0/100、より好ましくは90/10~40/60、特に好ましくは90/10~70/30である。
(b)シス体/トランス体の比率(質量比)が40/60~100/0、より好ましくは70/30~90/10である。
(c)炭素数18の脂肪酸が60質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満であり、炭素数21~22の脂肪酸が1質量%未満である。
一般式(A1)における、基「-(CH2nNHCOR5」中、nは3が好ましい。
5は、炭素数15~19の炭化水素基が好ましい。一般式(A1)で表される化合物中にR5が複数存在するとき、該複数のR5は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
5としては、R4と同様のものが具体的に挙げられる。
【0011】
一般式(A1)において、R1~R3のうち、少なくとも1つは-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2nNHCOR5)である。R1~R3のうち2つが、-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2nNHCOR5)であることが好ましい。
1~R3のうち、1つ又は2つが-CH2CH(Y)OCOR4及び/又は-(CH2nNHCOR5)である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)、又は、-(CH2nNH2(nは2又は3である)であり、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH、又は、-(CH2nNH2であることが好ましい。ここで、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。-CH2CH(Y)OHにおけるYは、-CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。-(CH2nNH2におけるnは、-(CH2nNHCOR5中のnと同様である。
【0012】
一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1-1)~(A1-7)で表される3級アミン化合物が挙げられる。
((A1-1)~(A1-7)の各式中、R9はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基であり、(A1-6)~(A1-7)の各式中、R10はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基である。)
【0013】
9及びR10における炭素数7~21の炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR4における炭素数7~21の炭化水素基と同様のものが挙げられ、好ましくは、炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である。なお、一般式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0014】
(A)成分は、アミン化合物の塩であってもよい。
アミン化合物の塩は、アミン化合物を酸で中和することにより得られる。中和に用いる酸は有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸や、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は公知の方法により実施できる。
アミン化合物の4級化物は、アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキルや、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は公知の方法により実施できる。
【0015】
一般式(A1)及び(A1-1)~(A1-7)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
例えば、一般式(A1-1)で表される化合物(以下「化合物(A1-1)」という)及び一般式(A1-2)で表される化合物(以下「化合物(A1-2)」という)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物と、メチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、柔軟性付与を良好にする観点から、「化合物(A1-1)/化合物(A1-2)」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性付与の観点から「化合物(A1-1)の4級化物/化合物(A1-2)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0016】
一般式(A1-3)で表される化合物(以下「化合物(A1-3)」という)、一般式(A1-4)で表される化合物(以下「化合物(A1-4)」という)及び一般式(A1-5)で表される化合物(以下「化合物(A1-5)」という)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、化合物(A1-3)、(A1-4)及び(A1-5)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性付与の観点から、化合物(A1-3)が1~60質量%、化合物(A1-4)が5~98質量%、化合物(A1-5)が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-3)が30~60質量%、化合物(A1-4)が10~55質量%、化合物(A1-5)が5~35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1-3)、(A1-4)、(A1-5)の各4級化物の存在比率は、柔軟性付与の観点から質量比で、化合物(A1-3)の4級化物が1~60質量%、化合物(A1-4)の4級化物が5~98質量%、化合物(A1-5)の4級化物が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-3)の4級化物が30~60質量%、化合物(A1-4)の4級化物が10~55質量%、化合物(A1-5)の4級化物が5~35質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(A1-3)、(A1-4)、(A1-5)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30~99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0017】
一般式(A1-6)で表される化合物(以下「化合物(A1-6)」という)及び一般式(A1-7)で表される化合物(以下「化合物(A1-7)という」)は、一般式(1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物と、N-メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、J.Org.Chem.,26,3409(1960)に記載の公知の方法で合成したN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-1,3-プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、「化合物(A1-6)/化合物(A1-7)」で表される存在比率が質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
またその4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルを用いることが好ましく、「化合物(A1-6)の4級化物/化合物(A1-7)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0018】
(A)成分としては、
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
一般式(A1-1)~(A1-7)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
一般式(A1-3)~(A1-5)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0019】
(A)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(A)成分は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(例えば、一般式(A1-3)~(A1-5)で表される化合物の混合物)してもよい。
【0020】
(A)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは5~20質量%、更に好ましくは8~15質量%である。(A)成分の含量が5質量%以上であると優れた柔軟性付与機能が発揮され、更に、後述の(B)成分を液体柔軟剤組成物中に安定配合できる。20質量%以下であると分離や増粘が更に抑制される。
【0021】
〔(B)成分:カチオン性ポリマー〕
(B)成分は、繊維製品へ消臭性を付与するために配合する。ここで、消臭とは、繊維製品に付着した不快な臭気の除去(除臭)及び/又は、繊維製品からの不快な臭気の発生の抑制(防臭)等をいう。
(B)成分は、一般式(B1)で表される繰返し構造単位を有する、カチオン性ポリマーである。
(式中、
1は、炭素数2~4のヒドロキシアルカンから水素原子2個を除去してなる2価の基であり、
2は、同一でも異なっていてもよい炭素数1~3のアルキル基であり、
-は、対イオンである。)
【0022】
一般式(B1)について説明する。
1におけるヒドロキシ基の位置は特に制限されない。R1の例としては、2-ヒドロキシトリメチレン基(-CH2CH(OH)CH2-)や、1-ヒドロキシトリメチレン基(-CH(OH)CH2CH2-)等が挙げられ、2-ヒドロキシトリメチレン基が好ましい。
2は、すべてメチル基であることが好ましい。
-としては、塩素イオン、臭素イオン、塩化物イオンや、臭化物イオン等が挙げられ、塩素イオンが好ましい。
一般式(B1)で表される繰返し構造単位の数は、例えば10~1000である。
【0023】
(B)成分の25℃における粘度は、例えば20~140mPa・sである。粘度は、B型粘度計を用いて測定できる。
【0024】
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。市販品としては、Barquat PQ(ロンザ社製)や、カチオマスターPD(PD―7)(四日市合成株式会社製)(アミン・エピクロルヒドリン縮合型ポリマー水溶液)等が挙げられる。
(B)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0025】
(B)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%、更に好ましくは0.2~2質量%である。(B)成分の含量が0.1質量%以上であると、より優れた消臭性付与機能が発揮され、10質量%以下であると、より高い分離安定性が得られる。
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)は、好ましくは2~50、より好ましくは10~40、更に好ましくは20~30である。A/Bが2以上であると、分離安定性により優れた液体柔軟剤組成物が得られ、50以下であると、より高い消臭性を付与できる。
【0026】
〔(C)成分:ノニオン界面活性剤〕
(C)成分は、(B)成分配合による分離の発生を抑制する(換言すれば、液体柔軟剤組成物へ分離安定性を付与する)ために配合する。
(C)成分としては、液体柔軟剤分野で公知のノニオン界面活性剤を特に制限なく使用できる。例として、アルコール又は脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
「アルコール又は脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物」を構成するアルコール及び脂肪酸の炭素鎖部分は分岐及び直鎖のいずれでもよく、不飽和基を含んでいてもよい。炭素鎖には分布があってもよい。炭素鎖の炭素数は好ましくは6~20、更に好ましくは8~18である。炭素鎖が直鎖である場合、その炭素数は好ましくは6~14、更に好ましくは8~12、特に好ましくは10~12である。炭素鎖が分岐鎖である場合、その炭素数は好ましくは6~18、更に好ましくは9~18、特に好ましくは13である。
ノニオン界面活性剤の原料としては、エクソンモービル社製エクサール、BASF社製LUTENSOL(ルテンゾール)シリーズ、協和発酵工業製オキソコールや、Shell社製DOBANOLシリーズ等を使用できる。(C)成分がアルコールのアルキレンオキシド付加物である場合、その原料として1級アルコール及び2級アルコールのいずれも使用できる。炭素数13のアルコールは、例えばドデセンから製造されるが、その出発原料はブチレン及びプロピレンのいずれでもよい。
炭素鎖が不飽和基を含む場合、その炭素数は18が特に好ましい。不飽和基の立体異性体構造は、シス体又はトランス体のいずれかであってもよく、両者の混合物であってもよいが、シス体/トランス体の比率が25/75~100/0(質量比)であることが特に好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(EO)が好ましいが、EOに加えてプロピレンオキサイド(PO)又はブチレンオキサイド(BO)を更に付加してもよい。EOの平均付加モル数は好ましくは10~100モル、更に好ましくは20~80モル、特に好ましくは40~70モルである。EOとともに付加するPO又はBOの平均付加モル数は、好ましくは1~5、更に好ましくは1~3モルである。この態様では、EOを付加した後にPO又はBOを付加してもよく、PO又はBOを付加した後にEOを付加してもよい。
「アルコール又は脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物」の好ましい例としては、ノニルアルコールのEO及びPO付加物(平均付加モル数:EO:9モル。PO:1モル)、一級イソノニルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:40モル)、一級イソデシルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:20モル)、ラウリルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:20モル)、一級イソへキサデシルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:60モル)、一級イソトリデシルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:40モル又は60モル)、トリデシルアルコールのEO付加物(EOの平均付加モル数:50モル)や、ラウリン酸のEO付加物(EOの平均付加モル数:20モル)等が挙げられる。市販品としては、日本エマルジョン製エマレックスシリーズ、三洋化成製エマルミンシリーズ、ライオン化学製TDAシリーズ、日本触媒製ソフタノールシリーズや、BASF社製LUTESOLシリーズや、日光ケミカルズ製NIKKOLシリーズ等を使用できる。
【0027】
(C)成分の他の例としては、EOの平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレン(以下、POE)基を付加した硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POEソルビット脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステルや、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油及びPOEソルビット脂肪酸エステルが好ましく、EOの平均付加モル数が30~70モルのPOE硬化ヒマシ油が好ましい。
【0028】
(C)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(C)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0029】
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.5~7質量%、特に好ましくは1~4質量%である。(C)成分の含量が0.1~10質量%であるとより優れた配合効果が発揮される。
【0030】
〔(B)成分と(C)成分の配合比率〕
(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)は、好ましくは0.05~3、更に好ましくは0.1~2である。この質量比範囲であると、各成分による配合効果(すなわち、分離安定性を有しつつ、消臭性を繊維製品へ付与する)が更に向上する。
【0031】
〔任意成分〕
液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(C)の必須成分以外の下記の任意成分を配合してもよい。
【0032】
〔(D)成分:香料〕
(D)成分は、液体柔軟剤組成物への香りつけや、同組成物による処理後の繊維製品への香りつけ(香りによるマスキング効果の発揮を含む)のために配合する。
(D)成分は、後述のカプセル化香料(機能性カプセル)に芯物質として含まれる香料とは別の、カプセルに内包されていない香料(フリー香料)である。
(D)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(D)成分としては柔軟剤分野で汎用されている香料を特に制限なく使用できるが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
なお、香料成分として使用される化合物のなかには、悪臭受容体のアンタゴニストとして作用するものがある。液体柔軟剤組成物の消臭効果を高めるために、例えば、特開2017-101224号公報、特開2015-193643号公報や、特表2020-500589号公報等に記載の嗅覚受容体のアンタゴニストを(D)成分として使用してもよい。
(D)成分の例としては、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料や、動物性香料等が挙げられる。具体例としては、βヨノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシリサリシレート、δダマスコン、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール及びベンズアルデヒドが挙げられ、繊維製品の防臭性をより向上させるメチルジヒドロジャスモネート、ジヒドロミルセノール及びβヨノンが好ましい。
【0033】
(D)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(香料組成物)してもよい。
香料組成物に用いる香料成分に特に制限はなく目的に応じて適宜選択できる。
香料組成物には、液体柔軟剤に一般的に使用される溶剤及び/又は酸化防止剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、ジプロピレングリコール(DPG)等が挙げられる。香料用酸化防止剤としては、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
【0034】
(D)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.001~2質量%、更に好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0035】
〔機能性カプセル〕
機能性カプセルは、カプセル内に内包された芯物質に起因する様々な機能を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合する。
機能性カプセルは、芯物質と当該芯物質を覆う壁物質とから構成される。
【0036】
芯物質としては、液体柔軟剤分野でカプセル封入物質として一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、香料、精油、増白剤、虫除け剤、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、スキンケア剤、酵素、プロバイオティクス、染料、顔料、香料前駆体、冷感剤、温感剤、フェロモン等の誘引剤、抗菌剤、漂白剤、香味料、甘味料、ワックス、薬剤、肥料や、除草剤等が挙げられる。
芯物質は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0037】
壁物質としては、液体柔軟剤分野でカプセル化材料として一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、ゼラチンや寒天等の天然系高分子や、油脂やワックス等の油性膜形成物質や、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質等を挙げることができる。
壁物質は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0038】
香料を芯物質とするカプセル化香料の具体例としては、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」;ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、AURORACAPS及びCOSMICCAPSや;IFF社製のUNICAP101及びUNICAP503等が挙げられる。
冷感剤を芯物質とする冷感カプセルの具体例としては、SALVONA Technologies社製のMultiSal SalCool、HydroSal FreshCool、SalSphere SalCoolや、日華化学株式会社製のネオアージュAROMA-C等が挙げられる。
温感剤を芯物質とする温感カプセルの具体例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンRMC-TOや、SALVONA Technologies社製のHydrosal Heat等が挙げられる。
他の具体例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンNFHO-W(抗菌効果)や、リケンレジンRMC-HBP(防虫効果)及びRMC-PT(防虫効果)等が挙げられる。
【0039】
機能性カプセルの平均粒子径は10~30μmであることが好ましい。前記粒子径を有する機能性カプセルは、繊維製品への吸着性に優れ、かつ液体柔軟剤組成物中に安定に分散することができる。
機能性カプセルは単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
機能性カプセルの含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0040】
〔包接基剤〕
包接基剤は、繊維製品の消臭性をより高めるために配合する。
包接基剤としては、シクロデキストリンや高度分岐環状デキストリン等が挙げられる。
高度分岐環状デキストリンとしては、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し、重合度が50~10000のグルカンであるデキストリンが挙げられる。内分岐環状構造部分はα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状のグルカン鎖であり、外分岐構造部分は内分岐環状構造部分に結合した非環状のグルカン鎖である。高度分岐環状デキストリンの例としては、クラスターデキストリン(グリコ栄養食品株式会社製)等が挙げられる。
包接基剤は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
包接基剤の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~5質量%である。
【0041】
〔防腐剤〕
防腐剤は、液体柔軟剤組成物の防腐力や殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために配合する。
防腐剤としては、液体柔軟剤分野で公知の成分を特に制限なく使用できる。具体例としてはイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチル-3-イソチアゾロン、2-ベンジル-3-イソチアゾロン、2-フェニル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4,5-ジクロロイソチアゾロン、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、これらの混合物などが挙げられる。なかでも、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが好ましく、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの混合物がより好ましく、前者が約77質量%と後者が約23質量%との混合物やその希釈液(例えば、イソチアゾロン液)が特に好ましい。
ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、類縁化合物としてジチオ-2,2-ビス(ベンズメチルアミド)や、これらの混合物などが挙げられる。なかでも、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが特に好ましい。
安息香酸類としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルや、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
防腐剤は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
防腐剤の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0042】
〔粘度調節剤〕
粘度調節剤は液体柔軟剤組成物の使用性を向上するために配合する。
粘度調節剤の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウムや、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも塩化カルシウムが好ましい。
粘度調節剤は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
粘度調節剤の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.001~0.5質量%、更に好ましくは0.003~0.2質量%である。
【0043】
〔水〕
液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、イオン交換水、純水や、蒸留水等を使用できる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の含量は特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。含量が50質量%以上であると、ハンドリング性がより良好となる。
【0044】
〔忌避剤〕
忌避剤は、昆虫(蚊、ブヨ、アブ、刺しバエ、ダニ、蛾、アリ等)に対する忌避性を繊維製品に付与するために配合する。
忌避剤としては、ジエチルトルアミド、パラメンタン-3,8-ジオール、アニスオイル、シンナミックアセテート、ネリルプロピオネート、メチルアンスラニレート、シトロネラ、蟻酸ネリル、環状テルペンアルコール、ヒノキ油、ベバー油、ブロモアンファー、ローレル油、ユーカリプタス油などが挙げられる。
なかでも、蚊の忌避効果の持続性及び安全性に優れている、パラメンタン-3,8-ジオール、ジエチルトルアミド、ローレル油が好ましく、パラメンタン-3,8-ジオール、ジエチルトルアミドがさらに好ましい。
【0045】
〔皮膚保護成分〕
皮膚保護成分は、皮膚保湿性を繊維製品へ付与するために配合する。
皮膚保護成分としては、液体状パラフィン、ワセリン、モンタンロウ、スクアラン、スクアレン、オリーブ油、アボガド油、月見草油、ホホバ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ハッカ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ホホバ油、セラミドや、擬似セラミド類などが挙げられる。
【0046】
〔紫外線吸収剤〕
紫外線吸収剤は、対紫外線防御性を繊維製品に付与するために配合する。
紫外線吸収剤としては、アミノ安息香酸誘導体(p-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸エチル、p-アミノ安息香酸グリセリル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミル等);サリチル酸誘導体(サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ミリスチル等);ケイ皮酸誘導体(ジイソプロピルケイ皮酸メチル、p-メトキシケイ皮酸エチル、p-メトキシケイ皮酸イソプロピル、p-メトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル、p-メトキシケイ皮酸ブチル等);ベンゾフェノン誘導体(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2、2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等);アゾール系化合物(ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等)や;4-t-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0047】
〔抗菌剤〕
抗菌剤は、抗菌性を繊維製品に付与するために配合する。
抗菌剤としては、ダイクロサン、トリクロサン、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリンや、ポリリジン等が挙げられる。
【0048】
〔抗ウイルス剤〕
抗ウイルス剤は、抗ウイルス剤性を繊維製品に付与するために配合する。
抗ウイルス剤としては、炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、EOの平均付加モル数が3~5モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテルや、リシノレイン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0049】
〔水溶性溶剤〕
水溶性溶剤は、液体柔軟剤組成物の安定性を更に向上させるために配合する。
水溶性溶剤としては、炭素数2~3の1級アルコール(エタノール、イソプロパノール等);炭素数2~6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)や;炭素数3~8の多価アルコール(グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)等が挙げられる。
なかでも、香気や価格の点から、炭素数2~3の1級アルコール及び多価アルコールが好ましく、エタノール及びグリセリンが更に好ましい。
水溶性溶剤は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0050】
〔その他の任意成分〕
前記の成分以外に、酸化防止剤や消泡剤等の添加剤を含有してもよい。
【0051】
〔液体柔軟剤組成物のpH〕
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを、好ましくは1~6、更に好ましくは2~4の範囲に調整する。
pH調整には、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジメチルアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩や、アルカリ金属珪酸塩等を使用できる。
【0052】
〔液体柔軟剤組成物の粘度〕
液体柔軟剤組成物の粘度は特に制限されないが、25℃における粘度は、好ましくは500mPa・s未満、更に好ましくは300mPa・s未満である。粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定できる。
【0053】
〔製造方法〕
液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分及び(C)成分を含む油相と、水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、得られた乳化物に、(B)成分を添加、混合することにより、液体柔軟剤組成物を製造できる。
なお、(B)成分の添加は上記の方法に限定されない。例えば、(B)成分の一部を(A)成分及び(C)成分を含む油相に配合した後、(A)成分の融点以上の温度条件下で水相と混合して乳化物を調製し、この乳化物に(B)成分の残量を添加してもよい。
また、(C)成分の添加も上記の方法に限定されない。例えば、(C)成分の一部又は全量を含む水相と、(A)成分を含む油相とを混合して、乳化物を調製してもよい。
【0054】
〔液体柔軟剤組成物の使用方法〕
液体柔軟剤組成物を用いた繊維製品の処理方法は特に制限されず、従来の液体柔軟剤と同様に使用できる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水に液体柔軟剤組成物を溶解させて処理を行う、又はたらいのような容器中で液体柔軟剤組成物を水に溶解させ、更に繊維製品を入れて浸漬処理する方法がある。いずれも場合も適度な濃度に希釈して使用するが、浴比(繊維製品に対する処理液の重量比)は3~100倍、特に5~50倍であることが好ましい。具体的には、全使用水量に対して、(A)成分の濃度が好ましくは0.01ppm~1000ppm、さらに好ましくは0.1ppm~300ppmとなるような量で使用される。
処理可能な繊維製品の種類は限定されない。繊維製品の例としては、衣類、カーテン、ソファー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツや、マクラカバー等が挙げられる。繊維製品の素材も特に限定されず、綿、絹やウール等の天然繊維でもよく、ポリエステル等の化学繊維でもよいが、化学繊維が好ましい。
【実施例
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0056】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
下記のA-1を使用した。

A-1:特開2003-12471号公報の実施例4に記載の手順に従って合成したカチオン界面活性剤。A-1は、一般式(A1-3)、(A1-4)及び(A1-5)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15~17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
【0057】
〔(B)成分:カチオン性ポリマー〕
下記のB-1~B-2を使用した。

B-1:Barquat PQ(ロンザ社製)。B-1は、一般式(B1)(式中、R1は2-ヒドロキシトリメチレン基であり、R2は全てメチル基であり、X-は塩素イオンである)で表される繰返し構造単位を有するカチオン性ポリマーである。

B-2:MERQUAT100(NALCO社製)。B-2は、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体であるが、式B-1のR1の要件を満たさないため、比較例で使用した。
【0058】
〔(C)成分:ノニオン界面活性剤〕
下記のC-1~C-4を使用した。

C-1:商品名:TA-600-75(ライオンケミカル(株)社製)。C-1は、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルEO60モル(一級イソトリデシルアルコール(C13)の平均EO60モル付加物)である。

C-2:レオコールTDA-400-75(ライオンスペシャリティーケミカルズ株式会社製)。C-2は、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルEO40モル(一級イソトリデシルアルコール(C13)の平均EO40モル付加物)である。

C-3:NIKKOL HCO-60(日光ケミカルズ株式会社製)。C-3は、POE硬化ヒマシ油(EOの平均付加モル数:60モル)である。

C-4:NIKKOL HCO-40(日光ケミカルズ株式会社製)。C-4は、POE硬化ヒマシ油(EOの平均付加モル数:40モル)である。
【0059】
〔(D)成分:香料〕
下記表に示す組成を有する香料組成物D-1を使用した。表中の各香料成分の数値は、香料組成物D-1の総質量に対する質量%である。

D-1
【0060】
〔その他の成分〕
下記の共通成分E-1を使用した。表中の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する値である。
【0061】
E-1
【0062】
〔液体柔軟剤組成物の調製方法〕
後述の表1に示す組成を有する液体柔軟剤組成物を調製した。表1中、各成分の数値の単位は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する質量%である。
表1中の「A/B」は、(A)成分と(B)成分との質量比を示す。
表1中の「B/C」は、(B)成分と(C)成分との質量比を示す。
【0063】
液体柔軟剤組成物を、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)と攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)とを用い、次の手順により調製した。
まず、(A)成分、(C)成分及び(D)成分を混合攪拌して油相混合物を得た。
他方、防腐剤をバランス用イオン交換水に溶解して水相混合物を得た。バランス用イオン交換水の質量は、980gから、油相混合物、(B)成分及び共通成分(防腐剤を除く)の合計量を差し引いた残部に相当した。
次に(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌(回転速度1,500rpm)は、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。
しかる後、(B)成分及び共通成分(防腐剤を除く)を添加し、必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)又は水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpH2.5(25℃)に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の柔軟剤組成物を得た。得られた柔軟剤組成物の粘度(25℃)を、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定した。
【0064】
〔繊維製品へ消臭性を付与する能力の評価〕
液体柔軟剤組成物が消臭性を繊維製品へ付与する能力を、処理した繊維製品の部屋干し臭を指標に評価した。
一般家庭に存在する生乾き臭が気になる使い古しの化学繊維からなるスポーツウエアを評価布とした。評価布を、二槽式洗濯機(三菱電機製CW-C30A1-H)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で10分間洗浄し(標準使用量、標準コース、浴比20倍、25℃の水道水使用)、1回目のすすぎ(3分間)を行い、続く2回目のすすぎ時に液体柔軟剤組成物にて3分間の柔軟処理(試験布1.5kgに対して、液体柔軟剤組成物10mL、浴比20倍、25℃の水道水使用)を行った。柔軟処理後に脱水した評価布を、室内(25℃、100%RH)で6時間放置(部屋干し)した。
部屋干し後の評価布の臭いを以下の評価基準に従い官能評価した。評価は、専門パネラー2名で行った。2名の平均点(小数第1位まで算出)を下記判定基準に適用して、液体柔軟剤組成物の部屋干し臭抑制効果を判定した。判定結果を表1の「消臭性」欄に示す。平均値が3.0点未満を合格とした。

<評価基準>
0点:異臭が全くしない。
1点:異臭がやっと感知できる程度に感じられる。
2点:異臭が弱く感じられる。
3点:異臭がやや強く感じられる。
4点:異臭が強く感じられる。
5点:異臭が強烈に感じられる。
【0065】
〔分離安定性の評価〕
80mLの液体柔軟剤組成物を、軽量PSガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に入れて密栓したものを評価用サンプルとした。評価用サンプルを、25℃下で3ヶ月保管して、保管後の状態(液体柔軟剤組成物の分離の程度)を、下記の基準に基づき評価した。評価は、専門パネラー5名で行った。5名の平均点(小数点第1位まで算出)を下記判定基準に適用して、液体柔軟剤組成物の分離安定性を判定した。結果を表1の「分離安定性」欄に示す。商品価値上、○以上を合格とした。

<評価基準>
3点:保存前のサンプルと同等と認められる。
2点:わずかに分離が認められる。
1点:明らかに分離が認められる。

<判定基準>
◎:2.5点以上
○:1.5点以上、2.5点未満
×:1.5点未満
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、柔軟剤分野で利用可能である。
【0067】
【表1】