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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 380
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021007120
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111589
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 尚孝
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210175(JP,A)
【文献】国際公開第2020/227176(WO,A1)
【文献】特開2013-034549(JP,A)
【文献】特開2019-092653(JP,A)
【文献】特開2013-013512(JP,A)
【文献】特開2012-016459(JP,A)
【文献】特開2004-242948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血管構造に基づいて、解剖学的に対称な第1の血管及び第2の血管を含む部位について、前記第1の血管の基部側に位置する第1の血管領域を含む第1のボクセル、前記第1の血管の末端側に位置する第2の血管領域を含む第2のボクセル、前記第2の血管の基部側に位置する第3の血管領域を含む第3のボクセル及び前記第2の血管の末端側に位置する第4の血管領域を含む第4のボクセルを含む複数のボクセルに分割されたマトリクスのイメージング領域と、前記イメージング領域に流入する血液をラベリングするためのラベリングパルスを印加するラベリング領域とを設定する設定部と、
ASL(Arterial Spin Labeling)法を用いて、前記ラベリング領域に前記ラベリングパルスを印加して、第1の時相及び第2の時相を含む複数の時相で前記イメージング領域のデータを収集する収集部と、
前記データに基づいて、前記時相ごとに画像を生成する生成部と、
前記第1の時相の画像と前記第2の時相の画像との間における前記複数のボクセルの信号値の時間変化に基づいて、前記部位の血管領域の異常性を判定する判定部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の血管及び前記第2の血管は、前記部位に含まれる左右に対称な血管であり、
前記判定部は、前記第1の時相の画像及び前記第2の時相の画像それぞれについて、同じ時相の画像で前記第1の血管の血管領域を含むボクセルの信号値と前記第2の血管の血管領域を含むボクセルの信号値とをさらに比較して、前記部位の血管領域の異常性を判定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記ラベリング領域の端面と接する血管上の位置、前記ラベリング領域の厚さ、血流速度及び前記血管構造に基づいて、前記第1の血管領域と前記第2の血管領域との境界及び前記第3の血管領域と前記第4の血管領域との境界の位置と、前記イメージング領域のデータを収集する時相及び時間間隔とを算出し、
前記収集部は、前記境界の位置、前記時相及び時間間隔に基づいて、前記イメージング領域のデータを収集する、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記血管構造に基づいて、前記第1の血管領域と前記第2の血管領域との境界及び前記第3の血管領域と前記第4の血管領域との境界を検出し、検出した境界に基づいて、前記イメージング領域及び前記ラベリング領域を設定する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記境界の位置及び前記血液のT1値から前記ラベリングパルス印加後の前記血液のラベリング持続時間を算出し、算出したラベリング持続時間に基づいて、前記イメージング領域及び前記ラベリング領域を設定する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記ラベリング持続時間及び血流速度からラベリング移動距離を算出し、算出したラベリング移動距離に基づいて、前記イメージング領域及び前記ラベリング領域を設定する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
少なくとも血管構造に基づいて、それぞれが異なる血管領域を含む複数のボクセルに分割されたマトリクスのイメージング領域と、前記イメージング領域に流入する血液をラベリングするためのラベリングパルスを印加するラベリング領域とを設定する設定部と、
ASL(Arterial Spin Labeling)法を用いて、前記ラベリング領域に前記ラベリングパルスを印加して前記イメージング領域のデータを収集する収集部と、
前記データに基づいて画像を生成する生成部と、
前記画像に含まれる前記複数のボクセルの信号値を比較することで、前記血管領域の異常性を判定する判定部と
を備え、
前記設定部は、前記血管構造に基づいて、前記異なる血管領域の境界を検出し、検出した境界の位置及び前記血液のT1値から前記ラベリングパルス印加後の前記血液のラベリング持続時間を算出し、算出したラベリング持続時間及び血流速度からラベリング移動距離を算出し、算出したラベリング移動距離に基づいて、前記イメージング領域及び前記ラベリング領域を設定する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記設定部は、前記境界の位置及び前記ラベリング移動距離から前記ラベリング領域の位置を決定することで、当該ラベリング領域を設定する、
請求項6又は7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記設定部は、前記境界の位置及び前記ラベリング移動距離から前記イメージング領域の位置及び大きさを決定することで、当該イメージング領域を設定する、
請求項6~8のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記設定部は、磁場強度に応じて前記血液のT1値を決定し、決定したT1値に基づいて、前記イメージング領域及び前記ラベリング領域を設定する、
請求項1~9のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記部位は、脳であり、
前記第1の血管領域及び前記第3の血管領域、主幹動脈であり、
前記第2の血管領域及び前記第4の血管領域は、非主幹動脈である、
請求項1~のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置の一例として、病院等に設置されるような一般的なMRI装置の磁場強度と比べて低い磁場強度の静磁場を用いたMRI装置が知られている。このような低磁場強度のMRI装置は、通常、商用電源で稼働可能であり、装置の大きさもコンパクトであることから、ポータブルMRIとも呼ばれる。
【0003】
近年では、このようなポータブルMRIを救急車に搭載して、救急車内のソリューションに利用することが検討されている。例えば、脳梗塞の検査では、発症後、早期に前方循環系の主幹動脈閉塞(Large Vessel Occlusion:LVO)の有無を特定することが重要であることから、ポータブルMRIを用いて、救急車内でLVOの有無を判定することが検討されている。
【0004】
しかしながら、一般的に、ポータブルMRIは、低磁場強度であるために、TOF(Time Of Flight)効果が低い、撮影に時間がかかる、低分解能である、SNR(Signal to Noise Ratio)が低い等の制約がある。そのため、ポータブルMRIでは、MRA(MR Angiography)の手法として一般的なTOF法を用いて血管を撮像することが難しく、LVOの有無を判定することが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-533811号公報
【文献】国際公開第2016/167047号
【文献】特開2015-208679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、低磁場強度で血管の異常性を判定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るMRI装置は、設定部と、収集部と、生成部と、判定部とを備える。設定部は、少なくとも血管構造に基づいて、それぞれが異なる血管領域を含む複数のボクセルに分割されたマトリクスのイメージング領域と、前記イメージング領域に流入する血液をラベリングするためのラベリングパルスを印加するラベリング領域とを設定する。収集部は、ASL(Arterial Spin Labeling)法を用いて、前記ラベリング領域に前記ラベリングパルスを印加して前記イメージング領域のデータを収集する。生成部は、前記データに基づいて画像を生成する。判定部は、前記画像に含まれる前記複数のボクセルの信号値を比較することで、前記血管領域の異常性を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるLVとnon-LVとの境界の検出の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるLVとnon-LVとの境界の検出の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるLVとnon-LVとの境界の検出の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるLVとnon-LVとの境界の検出の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるラベリングスラブの設定の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるラベリングスラブの設定の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるラベリングスラブの設定の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるイメージングスラブの設定の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるイメージングスラブの設定の一例を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるイメージングスラブの設定の一例を示す図である。
図13図13は、第1の実施形態に係る設定機能によって行われるイメージングスラブの設定の一例を示す図である。
図14図14は、第1の実施形態に係る収集機能によって行われるデータ収集の一例を示す図である。
図15図15は、第1の実施形態に係る収集機能によって行われるデータ収集の一例を示す図である。
図16図16は、第1の実施形態に係る判定機能によって行われる信号の有無の判定の一例を示す図である。
図17図17は、第1の実施形態に係る判定機能によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
図18図18は、第1の実施形態の第1の変形例に係る判定機能によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
図19図19は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
図20図20は、第3の実施形態に係るMRI装置によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
図21図21は、第3の実施形態に係るMRI装置によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本願に係るMRI装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【0011】
例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送受信コイル4、局所コイル5、送信回路6、受信回路7、架台8、入力インタフェース9、ディスプレイ10、記憶回路11、及び、処理回路12~14を備える。
【0012】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、撮像空間を挟んで鉛直方向に対向するように配置された一対の磁石を含み、撮像空間に対して鉛直方向の静磁場を発生させる。または、例えば、静磁場磁石1は、撮像空間を挟んで水平方向に対向するように配置された一対の磁石を含み、撮像空間に対して水平方向の静磁場を発生させるものでもよい。例えば、静磁場磁石1は、永久磁石によって実現される。
【0013】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置され、撮像空間に傾斜磁場を発生させる。例えば、傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル及びZコイルを含み、各コイルが、対応する軸に沿って磁場強度が直線的に変化する傾斜磁場を発生させる。ここで、Y軸は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の方向と一致し、Z軸は、撮像空間に対して被検体Sが挿入される方向と一致し、X軸は、Y軸及びZ軸それぞれに直交する方向と一致するように設定される。これにより、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。
【0014】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2のXコイル、Yコイル及びZコイルに個別に電流を供給することで、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0015】
ここで、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場は、それぞれ静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生する磁気共鳴信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿って磁気共鳴信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。また、スライス傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域(2D撮像)の場合には、スライス領域の方向、厚さ及び枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域(3D撮像)の場合には、スライス方向の位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために用いられる。これにより、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
【0016】
送受信コイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、撮像空間に配置された被検体SにRF(Radio Frequency)磁場を印加し、当該RF磁場によって被検体Sから発生する磁気共鳴信号を受信する。具体的には、送受信コイル4は、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、撮像空間に配置された被検体SにRF磁場を印加する。また、送受信コイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生する磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路7へ出力する。
【0017】
局所コイル5は、被検体Sから発生した磁気共鳴信号を受信する。具体的には、局所コイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されており、撮像が行われる際に対象部位に装着される。そして、局所コイル5は、送受信コイル4によって印加されたRF磁場の影響によって対象部位から発生した磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路7へ出力する。なお、局所コイル5は、被検体SにRF磁場を印加する機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所コイル5は、送信回路6に接続され、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。例えば、局所コイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルをコイルエレメントとして組み合わせて構成されたフェーズドアレイコイルである。
【0018】
送信回路6は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルスを送受信コイル4に出力する。具体的には、送信回路6は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルスの波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルスを生成する。増幅器は、変調器によって生成されたRFパルスを増幅して送受信コイル4に出力する。
【0019】
受信回路7は、送受信コイル4又は局所コイル5から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成し、生成した磁気共鳴データを処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択器、前段増幅器、位相検波器、及び、A/D(Analog/Digital)変換器を備える。選択器は、送受信コイル4又は局所コイル5から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することで磁気共鳴データを生成し、生成した磁気共鳴データを処理回路15に出力する。なお、ここで、受信回路7が行うものとして説明した各処理は、必ずしも全ての処理が受信回路7で行われる必要はなく、送受信コイル4又は局所コイル5で一部の処理(例えば、A/D変換器による処理等)が行われてもよい。
【0020】
架台8は、撮像空間を形成する開口部8aを有し、開口部8aの周囲で静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送受信コイル4を支持する。
【0021】
入力インタフェース9は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース9は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路17に出力する。例えば、入力インタフェース9は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース9は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース9の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ10は、各種情報を表示する。具体的には、ディスプレイ10は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ10は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0023】
記憶回路11は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路11は、処理回路12~17に接続されており、各処理回路によって入出力される各種データを記憶する。例えば、記憶回路11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0024】
処理回路12は、収集機能12aを有する。収集機能12aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、k空間データを収集する。具体的には、収集機能12aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに従って傾斜磁場電源3、送信回路6及び受信回路7を駆動することで、各種のパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路6が送受信コイル4にRFパルスを供給するタイミング及び供給する高周波パルスの強さ、受信回路7が磁気共鳴信号をサンプリングするタイミング等を規定した情報である。そして、収集機能12aは、パルスシーケンスを実行した結果として受信回路7から出力される磁気共鳴データを受信し、記憶回路11に記憶させる。このとき、記憶回路11に記憶される磁気共鳴データは、前述した各傾斜磁場によってリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向の各方向に沿った位置情報が付与されることで、2次元又は3次元のk空間に対応するk空間データとして記憶される。
【0025】
処理回路13は、生成機能13aを有する。生成機能13aは、処理回路15によって収集されたk空間データから画像を生成する。具体的には、生成機能13aは、処理回路15によって収集されたk空間データを記憶回路11から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、2次元又は3次元の画像を生成する。そして、生成機能13aは、生成した画像を記憶回路11に記憶させる。
【0026】
処理回路14は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路14は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ10に表示し、入力インタフェース9を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路14は、操作者によって入力された撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを処理回路15に出力することで、k空間データを収集させる。また、例えば、処理回路14は、処理回路13を制御することで、処理回路12によって収集されたk空間データから画像を再構成させる。また、例えば、処理回路14は、操作者からの要求に応じて記憶回路11から画像を読み出し、読み出した画像をディスプレイ10に表示させる。
【0027】
そして、本実施形態では、処理回路14は、設定機能14aと、判定機能14bとを有する。なお、設定機能14a及び判定機能14bについては、後に詳細に説明する。
【0028】
ここで、上述した処理回路12~14は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路11に記憶される。そして、各処理回路は、記憶回路11から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。
【0029】
なお、ここでは、単一のプロセッサによって各処理回路が実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限られず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて各処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図1に示す例では、単一の記憶回路11が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0030】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、病院等に設置されるような一般的なMRI装置の磁場強度(例えば、1.5T(Tesla)、3T等)と比べて低い磁場強度(例えば、0.064T)の静磁場を静磁場磁石1が発生させるものである。このような低磁場強度のMRI装置は、通常、商用電源で稼働可能であり、装置の大きさもコンパクトであることから、ポータブルMRIとも呼ばれる。
【0031】
近年では、このようなポータブルMRIを救急車に搭載して、救急車内のソリューションに利用することが検討されている。例えば、脳梗塞の検査では、発症後、早期に前方循環系のLVOの有無を特定することが重要であることから、ポータブルMRIを用いて、救急車内でLVOの有無を判定することが検討されている。
【0032】
しかしながら、一般的に、ポータブルMRIは、低磁場強度であるために、TOF効果が低い、撮影に時間がかかる、低分解能である、SNRが低い等の制約がある。そのため、ポータブルMRIでは、MRAの手法として一般的なTOF法を用いて血管を撮像することが難しく、LVOの有無を判定することが難しいという課題がある。
【0033】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、TOF法と比べて低磁場強度でも良好に血管を撮像することが可能なASL法を用いることで、低磁場強度で血管の異常性を判定することができるように構成されている。
【0034】
ここで、ASL法は、撮像対象の血管を含むように設定されたイメージング領域に流入する血液にラベリングパルスを印加した後に所定時間が経過した時点でイメージング領域のデータを収集するタグモードの収集と、ラベリングパルスの印加の有無や印加の位置をタグモードと異ならせてイメージング領域のデータを収集するコントロールモードの収集とを行い、各モードで収集されたデータから生成された画像を差分することで、背景組織が抑制された血管の画像を生成する手法である。
【0035】
具体的には、本実施形態では、処理回路14の設定機能14aが、少なくとも血管構造に基づいて、それぞれが異なる血管領域を含む複数のボクセルに分割されたマトリクスのイメージング領域と、当該イメージング領域に流入する血液をラベリングするためのラベリングパルスを印加するラベリング領域とを設定する。また、処理回路12の収集機能12aが、ASL法を用いて、ラベリング領域にラベリングパルスを印加してイメージング領域のデータを収集する。また、処理回路13の生成機能13aが、収集機能12aによって収集されたデータに基づいて画像を生成する。そして、処理回路14の判定機能14bが、生成機能13aによって生成された画像に含まれる複数のボクセルの信号値を比較することで、血管領域の異常性を判定する。
【0036】
ここで、設定機能14aは、設定部の一例である。また、収集機能12aは、収集部の一例である。また、生成機能13aは、生成部の一例である。また、判定機能14bは、判定部の一例である。
【0037】
例えば、設定機能14aは、血管構造に基づいて、異なる血管領域の境界を検出し、検出した境界に基づいて、イメージング領域及びラベリング領域を設定する。また、例えば、設定機能14aは、磁場強度に応じて血液のT1値を決定し、決定したT1値に基づいて、イメージング領域及びラベリング領域を設定する。
【0038】
また、設定機能14aは、異なる血管領域の境界の位置及び血液のT1値からラベリングパルス印加後の血液のラベリング持続時間を算出し、算出したラベリング持続時間に基づいて、イメージング領域及びラベリング領域を設定する、また、設定機能14aは、ラベリング持続時間及び血流速度からラベリング移動距離を算出し、算出したラベリング移動距離に基づいて、イメージング領域及びラベリング領域を設定する。
【0039】
また、設定機能14aは、異なる血管領域の境界の位置及びラベリング移動距離からラベリング領域の位置を決定することで、当該ラベリング領域を設定する。また、設定機能14aは、異なる血管領域の境界の位置及びラベリング移動距離からイメージング領域の位置及び大きさを決定することで、当該イメージング領域を設定する。
【0040】
また、収集機能12aは、複数の時相でイメージング領域のデータを収集し、生成機能13aは、時相ごとに画像を生成し、判定機能14bは、各画像に含まれる複数のボクセルの信号値の時間変化に基づいて、血管領域の異常性を判定する。また、設定機能14aは、ラベリング領域の端面と接する血管上の位置、ラベリング領域の厚さ、血流速度及び血管構造に基づいて、異なる血管領域の境界の位置と、イメージング領域のデータを収集する時相及び時間間隔とを算出し、収集機能12aは、当該境界の位置、当該時相及び時間間隔に基づいて、イメージング領域のデータを収集する。
【0041】
ここで、例えば、異なる血管領域は、脳の主幹動脈と非主幹動脈とである。
【0042】
以下、脳の前方循環系の動脈におけるLVOの有無を判定する場合を例に挙げて、本実施形態に係るMRI装置100によって行われる処理について具体的に説明する。なお、以下では、主幹動脈をLVと呼び、非主幹動脈をnon-LVと呼ぶ。また、以下では、イメージング領域及びラベリング領域の一例として、それぞれがスラブ状の領域である場合の例を説明し、スラブ状のイメージング領域をイメージングスラブと呼び、スラブ状のラベリング領域をラベリングスラブと呼ぶ。
【0043】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
例えば、図2に示すように、まず、設定機能14aが、血管構造に基づいて、被検体の画像からLVとnon-LVとの境界点を検出する(ステップS11)。
【0045】
具体的には、設定機能14aは、血管構造に基づいて、前方循環系の左右の動脈それぞれについて、被検体の画像からLVとnon-LVとの境界点を検出する。
【0046】
図3~6は、第1の実施形態に係る設定機能14aによって行われるLVとnon-LVとの境界の検出の一例を示す図である。
【0047】
例えば、図3に示すように、設定機能14aは、血管を含む頭部の立体モデル21とカメラ等によって撮像された被検体の画像22とをレジストレーションすることによって、LV及びnon-LVの位置を特定する。このとき、例えば、設定機能14aは、立体モデル21における頭部の表面形状と被検体の画像22における頭部の表面形状とをレジストレーションさせる。そして、設定機能14aは、特定したLV及びnon-LVの位置からそれぞれの境界点(図3に×印で示す点)を検出する。
【0048】
または、例えば、図4に示すように、設定機能14aは、事前にMRI装置100によって撮像された画像と血管を含む頭部の立体モデルとをレジストレーションすることによって、LV及びnon-LVの位置を特定し、特定したLV及びnon-LVの位置からそれぞれの境界点(図4に×印で示す点)を検出してもよい。
【0049】
または、例えば、設定機能14aは、脳血管を検出する機械学習モデルを用いて、カメラ又はMRI装置100によって撮像された被検体の画像からLV及びnon-LVの位置を特定し、それぞれの境界点を検出してもよい。
【0050】
または、例えば、図5に示すように、設定機能14aは、カメラ又はMRI装置100によって撮像された被検体の画像から血管構造と対応する特徴点を検出することで、LVとnon-LVとの境界点を検出してもよい。例えば、設定機能14aは、被検体の画像から鼻の下を通るアキシャル面と目の中心を通るサジタル面とを検出する。また、設定機能14aは、検出したアキシャル面とサジタル面とが交差する線上で頭部の表面から所定の長さ(例えば、3cm等)だけ頭部の内側にある点を検出し、検出した点をLVとnon-LVとの境界点とする。
【0051】
または、例えば、図6の(A)及び(B)に示すように、設定機能14aは、LVとnon-LVとの境界点を通る断面を検出してもよい。または、例えば、設定機能14aは、LVとnon-LVとの境界点を通るボリューム領域を検出してもよい。
【0052】
図2に戻り、続いて、設定機能14aは、磁場強度に応じて血液のT1値を決定する(ステップS12)。
【0053】
例えば、設定機能14aは、MRI装置100で用いられる磁場強度が固定されている場合には、予め記憶回路11に記憶されたT1値の情報を参照することで、血液のT1値を決定する。
【0054】
または、例えば、設定機能14aは、MRI装置100で用いられる磁場強度が変更可能となっている場合には、予め記憶回路11に記憶された磁場強度とT1値の関係を示すデータを参照することで、磁場強度から血管のT1値を決定してもよい。または、設定機能14aは、予め定義された磁場強度とT1値との関係を示す数式に従ってT1値を算出することで、磁場強度から血管のT1値を決定してもよい。
【0055】
続いて、設定機能14aは、LVとnon-LVとの境界の位置及び血液のT1値から、ラベリングパルス印可後に血液信号のSNRが閾値より大きい状態が続く時間を算出することで、血液のラベリング持続時間Tを算出する(ステップS13)。
【0056】
例えば、ラベリングパルス印加後に時間tが経過した時点の信号強度Mz(t)は、以下の式(1)で表される。
【0057】
Mz(t)=M0{1-2exp(-t/T1)} ・・・(1)
【0058】
そこで、例えば、設定機能14aは、上記式(1)に基づいて、ラベリング持続時間Tを算出する。このとき、設定機能14aは、iso-chromatレベルでラベリング持続時間Tを推定するために、SNRの閾値を用いる。例えば、担保したいSNR(Mz/ノイズレベル)が1.1である場合には、設定機能14aは、SNR>1.1となる時間tを算出し、算出された時間tをラベリング持続時間Tとする。この場合に、ノイズレベルは、操作者によって入力されてもよいし、予め記憶回路11に記憶されてもよいし、事前にスキャンを行うことによって推定されてもよい。ここで、スキャンによってノイズレベルを推定する場合は、本撮像と同様のパルスシーケンスをラベリングは行わずに2回実行し、収集されたデータを差分することによってノイズレベルを求めてよい。
【0059】
なお、上記SNRによる計算はiso-chromatレベルのものであり、実際のSNRを用いたものではない。そこで、例えば、設定機能14aは、イメージングスラブに含まれるボクセルのマトリクスが2×2×1であり、一つのボクセルがnon-LVで満たされたと仮定した場合の信号値からSNRを求めることで、ラベリング持続時間Tを算出してもよい。例えば、上記式(1)において、該当ボクセルに含まれる血管の密度からM0が定義される。なお、M0は、経験値に基づいて決定されてもよいし、事前に同一の条件でスキャンを行うことによって推定されてもよい。
【0060】
続いて、設定機能14aは、ラベリング持続時間T及びLVOの血流速度からラベリング移動距離xを算出する(ステップS14)。
【0061】
例えば、設定機能14aは、LVを流れる血液の血流速度をvとした場合に、x=v×Tによって、ラベリング移動距離xを求める。ここで、ラベリング移動距離xは、血液信号が残存する最大距離である。この場合に、血流速度は、予め決められて記憶回路11に記憶されてもよいし、超音波診断装置によって測定されてもよいし、MRI装置100で他のパルスシーケンス(例えば、Phase Contrast法のパルスシーケンス)を実行することによって測定されてもよい。例えば、血流速度は、予め決められる場合は、内頚動脈の一般的な速度である200cm/s程度に設定される。
【0062】
または、例えば、設定機能14aは、血管における位置をrとし、位置rにおける血流速度をv(r)とした場合に、x=v(r)×dTによって、ラベリング移動距離xを求めてもよい。
【0063】
続いて、設定機能14aは、ラベリング移動距離xに基づいて、境界面よりLV側の血管走行に沿ってx/2の位置に端面が接するようにラベリングスラブを設定する(ステップS15)。
【0064】
具体的には、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとの境界の位置及びラベリング移動距離xからラベリングスラブの位置を決定することで、当該ラベリングスラブを設定する。
【0065】
図7~9は、第1の実施形態に係る設定機能14aによって行われるラベリングスラブの設定の一例を示す図である。
【0066】
例えば、図7に示すように、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとの境界点を通る境界面から血管走行に沿ってproximal(基部)側にx/2だけ離れた位置に上端面が位置付けられるように、ラベリングスラブLの位置を設定する。
【0067】
これにより、ラベリングスラブLの下流側にLVとnon-LVとがそれぞれx/2ずつ含まれるようにイメージングスラブI1及びI2を設定した場合に、イメージングスラブI1及びI2内でLV及びnon-LVそれぞれにおける血液信号を持続させることができるようになる。
【0068】
なお、このとき、例えば、設定機能14aは、LVとnon-LVとの境界点を検出する際に用いた立体モデルや事前にMRI装置100によって撮像された画像に基づいて、血管走行を特定する。または、例えば、設定機能14aは、頭部の形状から自動的に血管走行を特定するように定義されたアルゴリズムによって血管走行を特定してもよい。
【0069】
または、例えば、図8に示すように、設定機能14aは、血管構造を用いずに、LVの平均的な歪曲率Aを用いて、x/2×Aによって直線距離を算出し、LVとnon-LVとの境界点からproximal側に当該直線距離だけ離れた位置にラベリングスラブの上端面が位置付けられるように、ラベリングスラブを設定してもよい。なお、ここでいう歪曲率Aは、点間の曲線距離に対する直線距離の比率である。
【0070】
なお、ASL法には、STAR(signal targeting with alternating radiofrequency)系と、FAIR(flow-sensitive alternating inversion recovery)系とがある。ここで、STAR系は、タグモードにおいて、イメージングスラブに流入する血液の上流部分にラベリングパルスを印加するものである。また、FAIR系は、タグモードにおいて、イメージングスラブに流入する血液の上流部分及びイメージングスラブを含む範囲にラベリングパルスを印加し、コントロールモードにおいて、イメージングスラブを含む範囲にラベリングパルスと同様のコントロールパルスを印加するものである。
【0071】
そこで、例えば、STAR系が用いられる場合には、設定機能14aは、上述した方法でラベリングスラブを設定する。一方、FAIR系が用いられる場合には、例えば、図9に示すように、設定機能14aは、イメージングスラブの下端面がLVとnon-LVとの境界点から血管走行に沿ってproximal側にx/2だけ離れた位置に位置付けられるように、イメージングスラブI1及びI2、ラベリングスラブLを設定する。なお、このとき、イメージングスラブの下端面が位置付けられる位置は、必ずしも、境界点から血管走行に沿ってx/2だけ離れた位置に一致する必要はなく、境界点から血管走行に沿ってx/2より短い距離だけ離れた位置であってもよい。
【0072】
図2に戻り、続いて、設定機能14aは、境界面及びラベリングパルス印加領域の上端面に接する面を端面とするボクセルを有する2×2×1のイメージングスラブを設定する(ステップS16)。
【0073】
具体的には、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈に対して、右側のLVを含むボクセル、右側のnon-LVを含むボクセル、左側のLVを含むボクセル、及び、左側のnon-LVを含むボクセルの四つのボクセルに分割されたマトリクスのイメージングスラブを設定する。
【0074】
このとき、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとの境界の位置及びラベリング移動距離xからイメージングスラブの位置及び大きさを決定することで、当該イメージングスラブを設定する。
【0075】
図10~13は、第1の実施形態に係る設定機能14aによって行われるイメージングスラブの設定の一例を示す図である。
【0076】
例えば、図10の(A)及び(B)に示すように、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとの境界点を通る境界面から血管方向に沿ってproximal側にx/2だけ離れた位置に下端面が位置付けられるようにイメージングスラブの位置及び大きさを決定することで、LVを含むイメージングスラブI1を設定する。また、設定機能14aは、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとの境界点を通る境界面から血管方向に沿ってdistal(末端)側にx/2だけ離れた位置に上端面が位置付けられるようにイメージングスラブの位置及び大きさを決定することで、non-LVを含むイメージングスラブI2を設定する。なお、このとき、イメージングスラブI1の下端面及びイメージングスラブI2の上端面が位置付けられる位置は、必ずしも、境界点から血管走行に沿ってx/2だけ離れた位置に一致する必要はなく、境界点から血管走行に沿ってx/2より短い距離だけ離れた位置であってもよい。
【0077】
ここで、設定機能14aは、イメージングスラブI1の上端面とイメージングスラブI2の下端面とが接し、かつ、イメージングスラブI1の下端面がラベリングスラブLの上端面と最も近い位置となるように、各イメージングスラブの位置及び大きさを決定する。
【0078】
これにより、ラベリングスラブLの下流側に、前方循環系の左右の動脈それぞれにおけるLVとnon-LVとがそれぞれx/2ずつ含まれるように二つのイメージングスラブI1及びI2が設定される。
【0079】
そして、設定機能14aは、イメージングスラブI1及びI2それぞれが被検体の正中面で左右方向に分割された二つのボクセルを含むように、各イメージングスラブを設定する。これにより、設定機能14aは、イメージングスラブI1及びI2を合わせて、右側のLVを含むボクセル、右側のnon-LVを含むボクセル、左側のLVを含むボクセル、及び、左側のnon-LVを含むボクセルの四つのボクセルに分割された2×2×1のマトリクスのイメージングスラブを設定する。ここで、2×2×1は、直方体のボクセルが、コロナル面内で2行×2列に配列され、かつ、サジタル面内で2行×1列に配列されることを意味する。
【0080】
なお、ここでは、イメージングスラブI1の下端面がラベリングスラブLの上端面と最も近い位置となるように各イメージングスラブの位置及び大きさを設定する場合の例を説明したが、イメージングスラブの設定方法はこれに限られない。
【0081】
例えば、図11に示すように、設定機能14aは、血管の芯線によって得られる曲線構造に対する回帰直線を求め、当該回帰直線と直交するように各イメージングスラブを設定してもよい。この場合に、例えば、設定機能14aは、LV及びnon-LVのそれぞれに対する回帰直線を求めて各イメージングスラブを設定してもよいし、いずれか一方に対する回帰直線を求めて各イメージングスラブを設定してもよい。
【0082】
または、例えば、図12に示すように、設定機能14aは、LVとnon-LVとの境界点を通る境界面からLV及びnon-LVそれぞれを同じ長さだけ含むような傾いたスラブ(オブリーク)を設定することで、各イメージングスラブを設定してもよい。
【0083】
または、例えば、図13に示すように、設定機能14aは、頸部が略直線に沿って走行していると仮定し、OM(Orbitmeatal)ライン(図13に一点鎖線で示す線)やAC(Anterior Comisure)-PC(Posterior Comisure)に基づいて各イメージングスラブを設定してもよい。ここで、OMラインは、眼窩中心と外耳孔中心とを結ぶ線である。また、AC-PCラインは、前交連と後交連とを結ぶ線である。または、例えば、設定機能14aは、操作者からスラブの位置及び大きさを受け付けることで、各イメージングスラブを設定してもよい。
【0084】
なお、いずれの例でも、イメージングスラブに含まれるボクセルは、ラベリングスラブと重ならないように設定されるのが望ましい。また、イメージングスラブとラベリングスラブとは必ずしも接する必要はなく、イメージングスラブに含まれるボクセルの大きさは、ラベリングスラブに含まれるボクセルの大きさより小さくてもよい。
【0085】
図2に戻り、続いて、収集機能12aが、Tを最終収集時間とするような4D ASL収集を実行し、生成機能13aが、収集されたデータに基づいて画像を生成する(ステップS17)。
【0086】
具体的には、収集機能12aは、ASL法を用いて、設定機能14aによって設定されたラベリングスラブにラベリングパルスを印加してイメージングスラブのデータを収集する。
【0087】
ここで、収集機能12aは、複数の時相でイメージングスラブのデータを収集する。そして、生成機能13aは、時相ごとに画像を生成する。
【0088】
図14及び15は、第1の実施形態に係る収集機能12aによって行われるデータ収集の一例を示す図である。
【0089】
例えば、図14に示すように、収集機能12aは、ラベリングスラブにラベリングパルスを印加した後に、ラベリング持続時間Tの間、連続的に複数の時相(図14に示すph1、ph2、ph3、ph4)でデータを収集する。
【0090】
具体的な例として、例えば、収集機能12aは、T=500msである場合に、位相エンコード数(PE)=2、スライスエンコード数(SE)=1、繰り返し時間(Repetition Time:TR)=3msとしたGRE(Gradient Echo)法を用いることで、500ms/(2×1×3)=83時相のデータを収集する。なお、収集機能12aがデータを収集する時相の数はこれに限られず、83時相より少なくてもよい。なお、以下では、収集機能12aが4時相分のデータを収集する場合の例を説明する。
【0091】
ここで、例えば、図15に示すように、ラベリングスラブLの上端面とイメージングスラブI1の下端面との間におけるLVの血管走行に沿った長さをr1(イメージングスラブI1の下端面がラベリングスラブLの上端面と接する場合は、r1=0)、イメージングスラブI1におけるLVの血管走行に沿った長さをr2とすると、t0=r1/vの時点で、イメージングスラブI1のボクセルの下端に血液が流入し、t1=(r1+r2)/vの時点で、イメージングスラブI2のボクセルの下端に血液が流入することになる。また、ラベリングスラブLの上下方向の長さをl、イメージングスラブI2におけるnon-LVの血管走行に沿った長さをr3とすると、t3=(r1+r2+r3+l)/vの時点で、ラベリングされた血液の下端がイメージングスラブI2のボクセルの上端面を通過することになる。
【0092】
すなわち、本例では、ラベリング持続時間Tの時点で、ラベリングされた血液の下端がイメージングスラブI2のボクセルの上端面に到達して血液信号が消失するが、イメージングスラブの大きさが小さい場合は、t3の時点で血液信号が消失することになる。その場合は、t3以降はデータを収集しても血液が描出されないため、データの収集は不要である。
【0093】
図2に戻り、続いて、判定機能14bが、生成機能13aによって生成された画像に含まれる各ボクセルの信号値から信号の有無を判定する(ステップS18)。
【0094】
具体的には、判定機能14bは、生成機能13aによって生成された画像に含まれる右側のLVを含むボクセル、右側のnon-LVを含むボクセル、左側のLVを含むボクセル、及び、左側のnon-LVを含むボクセルの四つのボクセルについて、それぞれの信号値から信号の有無を判定する。
【0095】
図16は、第1の実施形態に係る判定機能14bによって行われる信号の有無の判定の一例を示す図である。
【0096】
例えば、図16に示すように、判定機能14bは、四つのボクセルそれぞれについて、予め決められた閾値を用いて、信号値が閾値以上の場合は信号あり(1)と判定し、信号値が閾値未満の場合は信号なし(0)と判定する。
【0097】
このとき、例えば、判定機能14bは、背景信号の変動と血液信号の変動とを区別するため、生成機能13aによって時相ごとに生成された各画像のボクセルの信号値を比較することで、信号値の時間変化から信号の有無を判定してもよい。例えば、判定機能14bは、前後の時相におけるボクセルの信号値の変化が所定の閾値より大きい場合に、信号値が増加しているときは、前の時相のボクセルは信号なし、後の時相のボクセルは信号ありと判定し、信号値が減少しているときは、前の時相のボクセルは信号あり、後の時相のボクセルは信号なしと判定する。
【0098】
続いて、判定機能14bは、各ボクセルの信号の時間変化に基づいてLVOの有無を判定する(ステップS19)。
【0099】
図17は、第1の実施形態に係る判定機能14bによって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
【0100】
例えば、図17の(A)~(D)に示すように、コロナル面内で2行×2列の四つのボクセルのデータが4時相分あったとする。この場合、例えば、判定機能14bは、図17の(D)に示すように、全ての時相でLV側(図17における下側の行)の左右のボクセルの信号の有無が同じであり、かつ、途中の時相(図17の例では3時相目)からnon-LV側(図17における上側の行)の左右のボクセルの信号の有無が異なっている場合に、LVOありと判定する。
【0101】
一方、例えば、判定機能14bは、図17の(B)及び(C)に示すように、全ての時相でLV側の左右のボクセルの信号の有無が同じであり、かつ、全ての時相でnon-LV側の左右のボクセルの信号の有無が同じである場合に、LVOなしと判定する。
【0102】
以上、本実施形態に係るMRI装置100によって行われる処理の処理手順について説明した。ここで、処理回路12~14がプロセッサによって実現される場合、ステップS11~S16の処理は、例えば、処理回路14が設定機能14aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS17の処理は、例えば、処理回路12及び処理回路13がそれぞれ収集機能12a及び生成機能13aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS18及びS19の処理は、例えば、処理回路14が判定機能14bに対応する所定のプログラムを記憶回路11から読み出して実行することにより実現される。
【0103】
上述したように、第1の実施形態では、設定機能14aが、少なくとも血管構造に基づいて、それぞれが異なる血管領域を含む複数のボクセルに分割されたマトリクスのイメージングスラブと、当該イメージングスラブに流入する血液をラベリングするためのラベリングパルスを印加するラベリングスラブとを設定する。また、収集機能12aが、ASL法を用いて、ラベリングスラブにラベリングパルスを印加してイメージングスラブのデータを収集する。また、生成機能13aが、収集機能12aによって収集されたデータに基づいて画像を生成する。そして、判定機能14bが、生成機能13aによって生成された画像に含まれる複数のボクセルの信号値を比較することで、血管領域の異常性を判定する。
【0104】
このように、第1の実施形態では、TOF法と比べて低磁場強度でも良好に血管を撮像することが可能なASL法を用いることによって、低磁場強度で血管の異常性を判定することができる。
【0105】
これにより、例えば、ポータブルMRIを用いて、救急車内でLVOの有無を判定できるようになる。また、救急車内のソリューションとして、完全自動でLVOの有無を判定できるようになり、操作者の経験等によらずにLVの有無を判定できるようになる。
【0106】
なお、上述した実施形態では、脳の前方循環系の動脈を対象とし、LVとnon-LVとの境界を検出することによってLVOの有無を判定する場合の例を説明したが、血管領域の異常性を判定する例はこれに限られない。
【0107】
例えば、中大脳動脈(Middle cerebral artery:MCA)を対象とし、M1区域とM2区域との境界を検出することによって血管領域の異常性を判定してもよい。または、例えば、脳底動脈(Basilar Artery:BA)と後大脳動脈(Posterior Cerebral Artery:PCA)との境界を検出することによって血管領域の異常性を判定してもよい。
【0108】
また、血管領域の境界は必ずしも連続している必要はない。例えば、MCAにおけるM1区域とM3区域とがそのような例に該当する。
【0109】
以上、第1の実施形態について説明したが、本実施形態は、上述した構成の一部を適宜に変更して実施することも可能である。
【0110】
(第1の実施形態の第1の変形例)
例えば、第1の実施形態では、判定機能14bが、各ボクセルの信号値から信号の有無(0,1)を判定した後にLVOの有無を判定する場合の例を説明したが、LVOの有無の判定方法はこれに限られない。例えば、判定機能14bは、各ボクセルの信号値から直接、LVOの有無を判定してもよい。
【0111】
図18は、第1の実施形態の第1の変形例に係る判定機能14bによって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
【0112】
例えば、図18に示すように、判定機能14bは、全ての時相でLV側(図18における下側)の左右のボクセルそれぞれの信号値が高値とみなせる閾値より大きく、かつ、左右のボクセルの信号値が略一定とみなせる範囲内に収まっており、さらに、途中の時相(図18の例では3時相目)からnon-LV側(図18における上側)の左右のボクセルの片方の信号値が低値とみなせる閾値より小さくなった場合に、LVOありと判定する。
【0113】
(第1の実施形態の第2の変形例)
また、例えば、第1の実施形態で説明したMRI装置100によって行われる処理は、必ずしも図2に示した順序で実行される必要はない。例えば、ステップS11の処理とステップS12の処理とは、実行される順序が逆になってもよい。
【0114】
以上、第1の実施形態について説明したが、本願が開示する実施形態はこれに限られない。以下では、本願に係るMRI装置の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0115】
(第2の実施形態)
まず、第1の実施形態では、脳の前方循環系の動脈におけるLVOの有無を判定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、脳の後方循環系の動脈におけるLVOの有無を判定する場合も、同様の実施形態を適用可能である。以下では、そのような場合の例を第2の実施形態として説明する。
【0116】
図19は、第2の実施形態に係るMRI装置100によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
【0117】
例えば、図19に示すように、本実施形態では、設定機能14aは、血管構造に基づいて、前方循環系の動脈AC及び後方循環系の動脈PCのそれぞれについて、被検体の画像からLVとnon-LVとの境界点を検出する。
【0118】
また、設定機能14aは、前方循環系の動脈ACのLVを含むボクセル、前方循環系の動脈ACのnon-LVを含むボクセル、後方循環系の動脈PCのLVを含むボクセル、及び、後方循環系の動脈PCのnon-LVを含むボクセルの四つのボクセルに分割された2×2×1のマトリクスのイメージングスラブを設定する。ここで、2×2×1は、直方体のボクセルが、サジタル面内で2行×2列に配列され、かつ、コロナル面内で2行×1列に配列されることを意味する。
【0119】
そして、判定機能14bは、生成機能13aによって生成された画像に含まれる前方循環系の動脈ACのnon-LVを含むボクセル、後方循環系の動脈PCのLVを含むボクセル、後方循環系の動脈PCのnon-LVを含むボクセルの四つのボクセルの信号値に基づいて、LVOの有無の判定を行う。
【0120】
ここで、本実施形態のように後方循環系の動脈を対象とする場合、脳内の血管の構造上、例えば、図19の右上に示すボクセルのように、後方循環系の動脈PCのnon-LVを含むボクセルに前方循環系の動脈ACのnon-LVが混在することがあり得る。
【0121】
そこで、例えば、判定機能14bは、後方循環系の動脈PCのnon-LVと前方循環系の動脈ACのnon-LVとが混在するボクセルについては、前方循環系の動脈ACからの信号値を推定して除去する、又は、後方循環系の動脈PCからの信号値のみを推定することで、信号値を補償する。
【0122】
例えば、判定機能14bは、当該ボクセル内における血管密度の比率に基づいて、後方循環系の動脈PCからの信号値を推定する。または、例えば、判定機能14bは、時相ごとに、LVとnon-LVとの血流量の比率に基づいて、LV側の信号値からnon-LV側の信号値を推定してもよい。この場合、例えば、判定機能14bは、予め記憶回路11に記憶された脳に関する解剖学的な情報から血管密度や血流量の比率を取得する。
【0123】
(第3の実施形態)
また、第1の実施形態では、設定機能14aが、四つのボクセルに分割された2×2×1のマトリクスのイメージングスラブを設定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、イメージングスラブのマトリクスに含まれるボクセルの数が四つより多い場合も、同様の実施形態を適用可能である。以下では、そのような場合の例を第3の実施形態として説明する。
【0124】
図20及び21は、第3の実施形態に係るMRI装置100によって行われるLVOの有無の判定の一例を示す図である。
【0125】
例えば、図20に示すように、本実施形態では、設定機能14aは、第1の実施形態におけるイメージングスラブI1及びI2をそれぞれ二つに分割することで、血管走行に沿って四つのイメージングスラブI1~I4を設定する。
【0126】
そして、設定機能14aは、イメージングスラブI1~I4それぞれが被検体の正中面で左右方向に分割された二つのボクセルを含むように、各イメージングスラブを設定する。これにより、設定機能14aは、イメージングスラブI1~I4を合わせて、右側のLVのproximal側部分を含むボクセル、右側のLVのdistal側部分を含むボクセル、右側のnon-LVのproximal側部分を含むボクセル、右側のnon-LVのdistal側部分を含むボクセル、左側のLVのproximal側部分を含むボクセル、左側のLVのdistal側部分を含むボクセル、左側のnon-LVのproximal側部分を含むボクセル、及び、左側のnon-LVのdistal側部分を含むボクセルの八つのボクセルに分割された4×2×1のマトリクスのイメージングスラブを設定する。ここで、4×2×1は、直方体のボクセルが、コロナル面内で4行×2列に配列され、かつ、サジタル面内で2行×1列に配列されることを意味する。
【0127】
ここで、例えば、イメージングスラブのマトリクスが、HF方向(頭尾方向)で二つ以上のボクセルを含み、かつ、当該二つ以上のボクセルが位相エンコードのステップに対応する場合を考える。この場合に、例えば、設定機能14aは、イメージングスラブのマトリクスを撮像可能な最大マトリクス数nとする場合は、以下の式(2)を満たすようにTRを設定する。
【0128】
n×1×TR<t3 ・・・(2)
【0129】
ここで、t3は、前述したように、ラベリングされた血液の下端がイメージングスラブI2のボクセルの上端面を通過する時間である。
【0130】
また、例えば、2時相目の最もdistal側のボクセルの信号値をSとすると、信号値Sは、ボクセルの大きさに応じて低下することになる。そこで、例えば、設定機能14aは、信号値Sが以下の式(3)を満たすように、ボクセルの大きさを設定する。
【0131】
S>閾値 ・・・(3)
【0132】
そして、判定機能14bは、設定機能14aによって設定された八つのボクセルの信号値に基づいて、LVOの有無の判定を行う。
【0133】
例えば、図21に示すように、コロナル面内で4行×2列の八つのボクセルのデータが4時相分あったとする。この場合、例えば、判定機能14bは、全ての時相でLV側(図21における下側の2行)の左右のボクセルの信号の有無が同じであり、かつ、途中の時相(図17の例では3時相目)からnon-LV側(図21における上側の2行)の左右のボクセルの信号の有無が異なっている場合に、LVOありと判定する。
【0134】
以上、本願に係るMRI装置100に係る第1~第3の実施形態について説明した。
【0135】
ここで、上述した各実施形態では、本明細書における収集部を処理回路12の収集機能12aによって実現し、生成部を処理回路13の生成機能13aによって実現し、設定部及び判定部を処理回路14の設定機能14a及び判定機能14bによって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における収集部、生成部、設定部及び判定部は、実施形態で述べた収集機能12a、生成機能13a、設定機能14a及び判定機能14bによって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0136】
また、上記説明では、「プロセッサ」が各処理機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、各処理機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該処理機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれるなお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その処理機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合して、その処理機能を実現するようにしてもよい。
【0137】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0138】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、低磁場強度で血管の異常性を判定することができる。
【0139】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0140】
100 MRI装置
12~14 処理回路
12a 収集機能
13a 生成機能
14a 設定機能
14b 判定機能
図1
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