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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M3/00 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021009506
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113336
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 涼
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-027754(JP,A)
【文献】特開2008-245458(JP,A)
【文献】特開2002-051557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路と、PWM制御回路と、を有する電圧変換回路であって、前記スイッチング回路が入力電圧に応じた出力電圧を出力し、前記PWM制御回路が前記出力電圧に応じて前記スイッチング回路のオン/オフ動作を制御することで前記出力電圧を安定させる、電圧変換回路と、
前記入力電圧が既定電圧より低いときのみ前記出力電圧を昇圧する、電圧補正回路と、
入力端子と、
出力端子と、を含む電源ユニットを2つ備え、
前記2つの電源ユニットのそれぞれの前記入力端子は、互いに電気的に絶縁され、
前記2つの電源ユニットは、それぞれの前記出力端子から出力される前記出力電圧を並列接続して構成する1つの駆動電圧で負荷装置を駆動し、
前記2つの電源ユニットのうちの1つの電源ユニットの前記入力電圧が低下したときに当該入力電圧の低下に伴う前記駆動電圧低下を検出して、前記2つの電源ユニットのうちの他の電源ユニットがその低下した前記駆動電圧を所定の電圧に復旧し、
前記電圧補正回路は、前記1つの電源ユニットの前記入力電圧が遮断されたときに、前記入力電圧が前記既定電圧より低くなったことを検出して前記出力電圧を昇圧することで、前記入力電圧の遮断による前記出力電圧の低下速度を減少させ、前記負荷装置に供給する前記駆動電圧の瞬時電圧降下幅を抑制する、電力供給装置。
【請求項2】
前記瞬時電圧降下幅は、前記負荷装置が停止しない範囲に制御される、請求項に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記電圧補正回路の各々はコンパレータと出力素子とを有し、前記コンパレータは前記入力電圧を監視し、前記入力電圧が前記既定電圧より低くなったことを検出して前記出力素子を非導通状態から導通状態に切り替える、請求項1又は2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記出力素子は、フォトカプラまたはトランジスタを含む、請求項に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記スイッチング回路の入出力間は電気的に絶縁されていない、請求項1からまでのいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記スイッチング回路は絶縁トランスを有し、前記スイッチング回路の入出力間は電気的に絶縁されている、請求項1からまでのいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記電圧変換回路の前記スイッチング回路と前記出力端子との間にダイオード素子が直列に接続されており、前記ダイオード素子の2端子間の電位差を補正する信号を前記PWM制御回路に提供するカソード制御回路を更に含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記入力電圧が遮断されていた前記1つの電源ユニットに再度入力電圧が供給されたとき、当該入力電圧が前記既定電圧以上に上昇したことを検出して、前記電圧補正回路が前記出力電圧を昇圧する制御を停止する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項9】
前記2つの電源ユニットのそれぞれは、前記入力電圧を前記入力端子に供給する入力回路をさらに備え、前記入力回路には、互いに電気的に絶縁されている複数の外部電源のうち、対応する前記外部電源から電圧が供給され、前記入力回路は、前記供給された電圧を前記入力電圧に変換する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項10】
前記入力回路は、AC/DCコンバータまたはDC/DCコンバータを含む、請求項に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力供給装置に関し、特に、PWM制御方式を利用したスイッチング電源ユニットを複数並列接続して冗長運転を行う電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力された電圧を所望の電圧に変換して出力する電力変換装置として、PWM(Pulse Width Modulation)制御方式を利用して出力電圧を安定化するスイッチング電源ユニットが広く知られている。近年、重要なサーバーや医療機器等の停止させることができないシステムへの電力供給の信頼性を高めるために、特定の電源ユニットが停止しても電力供給が停止しないように、複数のスイッチング電源ユニットを並列接続して冗長運転を行い所定の電力を供給する電力供給装置が利用されている。
【0003】
このような冗長運転方式では、負荷装置が必要とする電力を、複数の電源ユニットが分担して供給している。したがって、複数の電源ユニットのうちの一部のユニットが停止したときでも、他の電源ユニットからの出力電力を増加させて必要な電力の供給を維持し、この出力電圧によって駆動される負荷装置の運転を連続して継続することができる。しかしながら、PWM制御方式を利用するスイッチング電源ユニットは、出力電圧の低下を検出してはじめて逐次出力電力を増加させるため、電圧低下の検出から出力電力の増加までには一定の時間遅れを生じる。
【0004】
このことから、たとえ冗長運転を行っていたとしても、一部の電源ユニットが停止したときは、その後に他の電源ユニットが出力電圧を増加させて所定の電力供給に復旧するまで間に、瞬時電圧降下が生じる。この電圧降下幅が大きいと駆動されている負荷装置が停止する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示はこのような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の電源ユニットを並列接続して冗長運転を行う電力供給装置において、一部の電源ユニットが停止したときの瞬時電圧降下幅を抑制し、この電圧降下による負荷装置の停止を回避する電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様の電力供給装置は、スイッチング回路と、PWM制御回路と、を有する電圧変換回路であって、スイッチング回路が入力電圧に応じた出力電圧を出力し、PWM制御回路が出力電圧に応じてスイッチング回路のオン/オフ動作を制御することで出力電圧を安定させる、電圧変換回路と、入力電圧が既定電圧より低いときのみ出力電圧を昇圧する、電圧補正回路と、入力端子と、出力端子と、を含む電源ユニットを2つ備え、2つの電源ユニットのそれぞれの入力端子は、互いに電気的に絶縁され、2つの電源ユニットは、それぞれの出力端子から出力される出力電圧を並列接続して構成する1つの駆動電圧で負荷装置を駆動し、2つの電源ユニットのうちの1つの電源ユニットの入力電圧が低下したときに当該入力電圧の低下に伴う前駆動電圧が低下を検出して、2つの電源ユニットのうちの他の電源ユニットがその低下した駆動電圧を所定の電圧に復旧する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電力供給装置によれば、複数の電源ユニットを並列接続して冗長運転を行う電力供給装置において、一部の電源ユニットが停止したときの瞬時電圧降下幅を抑制し、この電圧降下による負荷装置の停止を回避する電力供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、電力供給装置の第1実施形態のブロック回路図である。
図2図2は、図1の電力供給装置の第1実施形態の詳細な回路図である。
図3A図3Aは、電圧補正回路を接続しない電力供給装置において、1つの電源ユニットへの入力が遮断されたときのタイミングチャートである。
図3B図3Bは、電力供給装置の第1実施形態において、1つの電源ユニットへの入力が遮断されたときのタイミングチャートである。
図4A図4Aは、電圧補正回路を接続しない電力供給装置において、1つの電源ユニットを再起動するときのタイミングチャートである。
図4B図4Bは、電力供給装置の第1実施形態において、1つの電源ユニットを再起動するときのタイミングチャートである。
図5図5は、図2の電力供給装置の第1実施形態の詳細な回路図の変形例である。
図6図6は、電力供給装置の第2実施形態のブロック回路図である。
図7図7は、図6の電力供給装置の第2実施形態の詳細な回路図である。
図8図8は、図7の電力供給装置の第2実施形態の詳細な回路図の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1に電力供給装置1の第1実施形態のブロック回路図を示す。電力供給装置1は、2つの電源ユニット10、20を備える。一方の電源ユニット10は、電圧変換回路11と、電圧変換回路11と並列に接続された電圧補正回路12と、入力端子13と、出力端子14と、を含む。
【0011】
電圧変換回路11は、スイッチング回路15とPWM制御回路16とを有する。スイッチング回路15は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、入力端子13から供給される入力電圧Vin1に応じて変換電圧VoA1を出力する。スイッチング回路15は、一定の周期で高速スイッチングを行い、入力電圧Vin1のオンとオフを繰り返す。そして、この一定の周期の中でオンしている時間を増減させる、すなわち、オン/オフ比(Duty比)を変化させることで変換電圧VoA1を調整することができる。
【0012】
PWM制御回路16は、スイッチング回路15の変換電圧VoA1に応じてスイッチング回路15のオン/オフ動作を制御することで変換電圧VoA1を安定化する。PWM制御回路16は、スイッチング回路15の変換電圧VoA1を監視し、スイッチング回路15へ変換電圧VoA1に応じた制御信号を送信する。
【0013】
例えば、変換電圧VoA1が所定の電圧よりも高いときは、スイッチング素子のオン/オフ比を減少(オン時間を短く)させる信号を送信し、スイッチング回路15はこの信号を受信して、スイッチング素子のオン時間を短くして変換電圧VoA1を低下させる。また、変換電圧VoA1が所定の電圧よりも低いときは、スイッチング素子のオン/オフ比を増加(オン時間を長く)させる信号を送信し、スイッチング回路15はこの信号を受信して、スイッチング素子のオン時間を長くして変換電圧VoA1を上昇させる。変換電圧VoA1は、直列に接続されたダイオード素子17を介して出力端子14から出力電圧VoK1として出力される。
【0014】
電圧補正回路12は、電圧変換回路11への入力電圧Vin1を常時直接的に監視しており、電圧変換回路11への入力電圧Vin1が既定電圧より低いときのみ変換電圧VoA1を昇圧する機能を有する。電圧補正回路12は、既定電圧より低い入力電圧Vin1を検出することにより入力電圧Vin1の低下を検出すると、PWM制御回路16にスイッチング素子のオン/オフ比を増加させる信号を送信する。PWM制御回路16はこの電圧補正回路12からの信号を受信すると、スイッチング回路15の変換電圧VoA1に応じて決まるスイッチング素子のオン/オフ比よりも、さらにオン/オフ比を増加させる信号をスイッチング回路15に送信する。これによりさらに、変換電圧VoA1を昇圧する。なお、既定電圧よりも低い入力電圧Vin1が検出されない間は、電圧補正回路12はこのような動作はしない。
【0015】
他方の電源ユニット20も、一方の電源ユニット10と同一の回路構成を有し同一の回路動作をする。すなわち、他方の電源ユニット20は、電圧変換回路21と、電圧変換回路21と並列に接続された電圧補正回路22と、入力端子23と、出力端子24と、を含む。電圧変換回路21は、スイッチング回路25とPWM制御回路26とを有し、PWM制御回路26は、スイッチング回路25の変換電圧VoA2に応じてスイッチング素子のオン/オフ動作を制御することで変換電圧VoA2を安定化する。また、電圧補正回路22は、電圧変換回路21への入力電圧Vin2が既定電圧より低いときのみ変換電圧VoA2を昇圧する機能を有する。
【0016】
図1に示すように、電力供給装置1は、2つの電源ユニット10、20のそれぞれの出力端子14、24から出力される出力電圧VoK1、VoK2を並列接続して構成する1つの駆動電圧Voutを負荷装置30に出力してこれを駆動する。これら2つの電源ユニット10、20のそれぞれの入力端子13、23は、互いに電気的に絶縁されている。これら2つの電源ユニット10、20は冗長運転を行い、負荷装置30に供給する電力を、2つの電源ユニット10、20で分担して供給している。
【0017】
また、2つの電源ユニット10、20のいずれか一方の電源ユニット10の入力電圧Vin1が低下すると、負荷装置30への供給電力が不足して駆動電圧Voutが一旦低下する。その電圧低下を検出して2つの電源ユニット10、20のうちの他方の電源ユニット20が供給する電力を増加させて、一旦低下した駆動電圧を所定の電圧に復旧するように機能する。
【0018】
このような機能をどのようにして実現されるかについて以下に説明する。まず、図1に示された第1実施形態の電力供給装置1において、仮に、2つの電源ユニット10、20のそれぞれの電圧補正回路12、22を接続しない構成の動作について説明する。
【0019】
一方の電源ユニット10の入力が遮断されると、電圧変換回路11への入力電圧Vin1が低下する。入力電圧Vin1が低下すると、スイッチング回路15の、スイッチング素子がオン/オフする際の電圧も低下しその結果変換電圧VoA1も低下する。このとき、電圧変換回路11のPWM制御回路16は、変換電圧VoA1の低下を検出して、スイッチング素子のオン/オフ比を増加させる信号を送信し、スイッチング回路15はこの信号を受信して、スイッチング素子のオン時間を長くして変換電圧VoA1を上昇させ、所定の変換電圧VoA1を維持する。
【0020】
ただし、電源ユニット10の入力が遮断されたとき、入力電圧Vin1は単調に低下し続けるため、変換電圧VoA1の低下を検出してスイッチング回路15にスイッチング素子のオン時間を長くさせる動作だけでは、所定の変換電圧VoA1を維持できなくなり、いずれ変換電圧VoA1も低下する。その結果、電源ユニット10の出力端子14からの出力電圧VoK1も低下する。
【0021】
電力供給装置1の2つの電源ユニット10、20は、並列接続され冗長運転されており、負荷装置30が必要とする電力を、2つの電源ユニット10、20で分担して供給している。したがって、電源ユニット10の出力端子14からの出力電圧VoK1が低下すると、負荷装置30への供給電力が不足して駆動電圧Voutも低下する。駆動電圧Voutが低下すると、連動してもう一方の電源ユニット20の出力端子24から出力される出力電圧VoK2も低下する。出力端子24の出力電圧VoK2が低下すると、さらに電源ユニット20のスイッチング回路25の変換電圧VoA2も低下する。
【0022】
電圧変換回路21のPWM制御回路26は、この変換電圧VoA2の低下を検出すると、スイッチング素子のオン/オフ比を増加させる信号を送信し、スイッチング回路25はこの信号を受信して、スイッチング素子のオン時間を長くして変換電圧VoA2を上昇させ、一旦低下した電源ユニット20の出力電圧VoK2を所定の電圧に復旧させる。このように、電源ユニット10の入力が完全に遮断され、電源ユニット10からの出力が完全に停止しても、負荷装置30が必要とする電力は電源ユニット20が単独で供給することができる。
【0023】
しかしながら、電源ユニット20のPWM制御回路26が、電源ユニット20の出力電圧VoK2の接点の電圧の低下を検出してスイッチング回路25にスイッチング素子のオン時間を長くする制御信号を送信し、スイッチング回路25がこの信号を受信して、スイッチング素子のオン時間を長くして変換電圧VoA2を上昇させて、出力端子24からの出力電圧VoK2を復旧させるためには一定の時間を要する。したがって、電源ユニット10への入力が遮断されたときのように急激に出力電圧VoK1が低下する場合には、電源ユニット20が供給電力を増強するまでの間に、駆動電圧Voutに一時的な瞬時電圧降下が生じることは不可避である。
【0024】
次に、電源ユニット10に電圧補正回路12を設けたときの動作を説明する。電圧補正回路12は、入力電圧Vin1が既定電圧より低下したことを検出すると、PWM制御回路16の入力端子のうち変換電圧VoA1を監視する端子の電圧を引き下げる。この入力端子の接点の電圧が引き下げられると、PWM制御回路16は変換電圧VoA1の低下を検出したときと同じ動作、つまり、スイッチング回路15にスイッチング素子のオン時間を長くする信号を出力して変換電圧VoA1を昇圧させる動作を行う。この機能により、電圧変換回路11は、入力電圧Vin1が既定電圧より低い間は、入力電圧Vin1に対応して出力されるべき本来の変換電圧VoA1よりも、所定の割合で昇圧された変換電圧VoA1を出力し続ける。
【0025】
このように、電圧補正回路12は、変換電圧VoA1が低下し停止に至るまでの過渡応答において、変換電圧VoA1を昇圧しその低下速度を減少させることができる。したがって、電源ユニット20により一時的に低下した駆動電圧Voutが復旧されるまでの間に生じる瞬時電圧降下の降下幅を、電源ユニット10の電圧補正回路12が、出力電圧VoK1を所定の割合で昇圧している分だけ抑制することができる。
【0026】
駆動電圧Voutにより電力を供給される負荷装置30には、通常、動作可能な電源電圧範囲が設定されており、瞬時電圧降下により駆動電圧Voutが、この動作可能な電源電圧範囲を下回ると負荷装置30が停止することがある。したがって、瞬時電圧降下幅は、負荷装置が停止しない範囲に設定されることが必須であり、瞬時電圧降下の降下幅を抑制する機能は重要である。
【0027】
以上、電源ユニット10の入力が遮断された場合について説明したが、電源ユニット20の入力が遮断された場合についても、電源ユニット20の電圧補正回路22および電源ユニット10により同様な動作をさせることができる。
【0028】
図2に、図1の電力供給装置の第1実施形態の詳細な回路図を示す。スイッチング回路15は、入力電圧Vin1のオン/オフ比を切り替えてパルスする信号を生成するスイッチング素子、このスイッチング素子を駆動する駆動回路SW、およびインダクタとコンデンサから構成されるローパスフィルタを有する。このスイッチング素子は、例えば、絶縁ゲート型電界効果トランジスタで構成し得る。
【0029】
PWM制御回路16は、スイッチング回路15の出力電圧VoK1から抵抗分圧回路により生成された電圧と基準電圧Vref1とを比較するコンパレータCom1、および、このコンパレータCom1の出力に応じて、スイッチング回路15の駆動回路SWを制御する制御部PWM、から構成される。
【0030】
電圧補正回路12は、入力電圧Vin1を抵抗分圧回路により生成された電圧と基準電圧Vref2を比較するコンパレータCom2により、入力電圧Vin1を監視する。さらに、このコンパレータCom2の出力と基準電圧Vref3を比較するコンパレータCom3により、入力電圧Vin1があらかじめ決められた既定電圧より低くなったことに応答して、出力素子を非導通状態から導通状態に切り替える。
【0031】
この出力素子が導通状態となることで、PWM制御回路16のコンパレータCom1の入力電圧Vphは、入力電圧Vin1を抵抗分圧することにより生成された電圧よりもさらに低下する。したがって、PWM制御回路16には、スイッチング回路15の変換電圧VoA1の実際の電圧を抵抗分圧した電圧よりもさらに低い電圧が入力される。その結果、本来のPWM制御回路16の補正に対して過剰な補正を行うことになり、スイッチング回路15の変換電圧VoA1を、本来出力すべき電圧よりもさらに昇圧する。
【0032】
電圧補正回路12の出力素子は、フォトカプラを用いて構成することができる。また、フォトカプラの替わりにトランジスタを用いてもよい。
【0033】
スイッチング回路15の入出力間は、スイッチング素子によりオン/オフ、つまり導通/非導通を制御されるが、電気的に完全に絶縁されていなくてよい。
【0034】
図3Aおよび図3Bに、図1の電力供給装置1の1つの電源ユニットへの入力が遮断されたときのタイミングチャートを示す。図3Aは、PWM制御を行う2つの電源ユニットを並列接続して冗長運転を行う一般的な電力供給装置、すなわち、図1の電力供給装置1において電圧補正回路12、22を接続しない構成のときに、1つの電源ユニットへの入力が遮断されたときのタイミングチャートである。図3Bは、電力供給装置1の第1実施形態において、1つの電源ユニットへの入力が遮断されたときのタイミングチャートである。
【0035】
まず、図3Aに記載のタイミングチャートについて説明する。定常運転時は一方の電源ユニット10に入力電圧Vin1が入力され、他方の電源ユニット20に入力電圧Vin2が入力され、それぞれの出力電圧VoK1および出力電圧VoK2が並列接続されて負荷装置30に供給する駆動電圧Voutを生成している。ここで、出力電圧VoK1、出力電圧VoK2、および駆動電圧Voutは概ね同一の電圧値であり、負荷装置30に供給する電力を一方の電源ユニット10および他方の電源ユニット20で分担して提供している。
【0036】
ここで、電源ユニット10への入力が遮断されると、入力電圧Vin1が低下する。入力電圧Vin1の低下量が一定の範囲内であれば、PWM制御により出力電圧VoK1は維持される。しかし、既定電圧(a1)を大きく超えて入力電圧Vin1が低下すると出力電圧VoK1も低下し始める(a3)。並列接続されている出力電圧VoK2もそれと連動して低下し始める(a2)。
【0037】
電源ユニット20のPWM制御回路26が出力電圧VoK2の低下を検出すると、スイッチング回路25がスイッチング素子のオン時間を長くして出力電圧VoK2を昇圧する。出力電圧VoK1は引き続き低下し電源ユニット10は停止に至るが、電源ユニット20が供給する電力を増加することで駆動電圧Voutは所定の電圧に復旧する。そして、電力供給装置1は電源ユニット20が単独で電力を供給することで定常運転に復帰する。
【0038】
しかしながら、電源ユニット20が出力電圧VoK2の低下を検出してから駆動電圧Voutを所定の電圧に復旧するまでには一定の時間を要する。したがって、その間に駆動電圧Voutの瞬時電圧降下が生じることは不可避である。
【0039】
次に、図3Bに記載のタイミングチャートについて説明する。定常運転時は図3Aに記載のタイミングチャートと同様であり、一方の電源ユニット10に入力電圧Vin1が入力され、他方の電源ユニット20に入力電圧Vin2が入力され、それぞれ出力電圧VoK1および出力電圧VoK2を出力し、それらの出力を並列接続して負荷装置30に供給する駆動電圧Voutを生成している。ここで、出力電圧VoK1、出力電圧VoK2、およびVoutは概ね同一の電圧値であり、負荷装置30に供給する電力を電源ユニット10および電源ユニット20で分担して提供している。
【0040】
ここで、電源ユニット10への入力が遮断されると、入力電圧Vin1が低下する。入力電圧Vin1の低下量が一定の範囲内であれば、PWM制御により出力電圧VoK1は維持される。しかしながら、図3Aに示した通り、一般的なPWM制御だけでは既定電圧(a1)を大きく超えて入力電圧Vin1が低下すると出力電圧VoK1(a3)も低下し始めることが知られている。
【0041】
そこで、電圧補正回路12が、入力電圧Vin1が時刻t1において既定電圧A1まで低下したことに応答して、コンパレータCom3の出力電圧Vcpがローレベルとなり、時刻t2において出力素子(図2のバイポーラトランジスタ)を非導通状態から導通状態に切り替える。PWM制御回路16は、スイッチング回路15の変換電圧VoA1を監視する入力端子を有し、電圧補正回路12の出力素子が導通状態なると、この入力端子の入力電圧Vphがローレベルに引き下げられる。
【0042】
この入力端子への入力電圧Vphが低下すると、PWM制御回路16は変換電圧VoA1が低下したときと同様な動作、すなわち、スイッチング回路15のスイッチング素子のオン時間を長くする信号を送信して変換電圧VoA1を昇圧する動作を行う。昇圧動作には一定の時間を要するが、実際に出力端子14の出力電圧VoK1が低下し始める時刻t3よりも先行して、時刻t2から昇圧する動作を開始しているので、出力端子14の出力電圧VoK1が時刻t3から低下し始めた直後からPWM制御回路16による昇圧動作が出力電圧VoK1に寄与する。
【0043】
一方、時刻t3において、出力電圧VoK1が低下し始めると、連動して出力電圧VoK2も低下する。電源ユニット20のPWM制御回路26がこの電圧低下を検出すると、スイッチング回路25がスイッチング素子のオン時間を長くする制御を行う。出力電圧VoK1は引き続き低下し電源ユニット10は停止に至るが、電源ユニット20が供給する電力を増加させることで駆動電圧Voutは所定の電圧に復旧する。そして、電力供給装置1は電源ユニット20が単独で電力を供給して定常運転に復帰する。
【0044】
時刻t3の直後からPWM制御回路16による昇圧動作が寄与することで、時刻t3以降の出力電圧VoK1の低下速度を減少させることができる。このように、時刻t3からの出力電圧VoK1の低下の傾きが緩やかになることで駆動電圧Voutの電圧低下の傾きも緩やかになる。このように、駆動電圧Voutの電圧低下が遅れることで、その電圧低下幅が小さいうちに電源ユニット20の電力供給の増加が寄与する。よって、駆動電圧Voutが所定の電圧に復旧するまでの間に生じる瞬時電圧降下の降下幅を、dVoutだけ抑制することができる。
【0045】
図4Aおよび図4Bに、図1の電力供給装置1において入力が遮断された1つの電源ユニットを再起動するときのタイミングチャートを示す。
【0046】
図4Aは、PWM制御を行う2つの電源ユニットを並列接続して冗長運転を行う一般的な電力供給装置、すなわち、図1の電力供給装置1において電圧補正回路12、22を接続しない構成において、入力が遮断された1つの電源ユニットを再起動するときのタイミングチャートである。電力供給装置1は電源ユニット10が停止している間は、電源ユニット20単独での電力供給により定常運転されている。
【0047】
ここで、電源ユニット10に入力電圧Vin1が供給されると、入力電圧Vinの上昇に応じて出力電圧VoK1が上昇し、出力電圧VoK1が所定の電圧に達した時点で定電圧を出力する動作に収束される。図4Aでは、PWM制御のみで制御されており、出力電圧VoK1が上昇する傾きはb1領域およびb2領域において同様となるように設定されている。
【0048】
図4Bは、電力供給装置1の第1実施形態において、入力が遮断された1つの電源ユニット10を再起動するときのタイミングチャートである。電力供給装置1は電源ユニット10が停止している間は、電源ユニット20単独の電力供給により定常運転されている。
【0049】
ここで、電源ユニット10に入力電圧Vin1が供給されると、その入力電圧Vin1がB3よりも低い間は、電圧補正回路12のコンパレータCom3の出力電圧Vcpがローレベルであり、出力素子(図2のバイポーラトランジスタ)を導通状態に維持している。したがって、PWM制御回路16のスイッチング回路15の変換電圧VoA1を監視する入力端子の入力電圧は、実際の変換電圧VoA1に対応した電圧よりも低くなる。よって、B1領域では、入力電圧Vin1に対応して本来出力すべき変換電圧VoA1よりも高い電圧となり、変換電圧VoA1はダイオード素子17を介して出力端子14から出力する出力電圧VoK1も高くなる。
【0050】
しかしながら、入力電圧Vin1が上昇して時刻t1において既定電圧B3に達すると、電圧補正回路12のコンパレータCom3の出力電圧Vcpがハイレベルになり、時刻t2において出力素子(図2のバイポーラトランジスタ)が導通状態から非導通状態に切り替わる。これにより、PWM制御回路16のスイッチング回路15の変換電圧VoA1を監視する入力端子の入力電圧は、実際の変換電圧VoA1に対応した電圧となり、時刻t3以降のB1領域では、電圧補正回路12は寄与せず、PWM制御回路16だけで変換電圧VoA1を維持する定常運転に復帰する。
【0051】
このように、入力が遮断された1つの電源ユニット10を再起動するときにおいても、電圧補正回路12は動作するものの再起動特性への影響は全くない。
【0052】
図5に、図4の電力供給装置1の第1実施形態の詳細な回路図の変形例を示す。この第1実施形態の変形例では、スイッチング回路15の入力側と出力側は絶縁トランスにより結合され、スイッチング回路15の入出力間が電気的に常時絶縁された構成である。
【0053】
図1に示す電力供給装置1は、さらに、一方の電源ユニット10の入力端子13と電圧変換回路11との間にさらに入力回路18を含んでよい。この入力回路18は、入力端子13に入力される電圧Vext1を電圧変換回路11への入力電圧Vin1に変換する。この入力回路18はAC/DCコンバータまたはDC/DCコンバータを含み得る。
【0054】
他方の電源ユニット20についても同様に、入力端子23と電圧変換回路21との間にさらに入力回路28を含んでよい。この入力回路28は、入力端子23に入力される電圧Vext2を電圧変換回路21への入力電圧Vin2に変換する。この入力回路18はAC/DCコンバータまたはDC/DCコンバータを含み得る。
【0055】
一方の電源ユニット10に入力端子13と他方の電源ユニット20に入力端子23とは電気的に互いに絶縁されている。一方の電源ユニット10に入力されるVext1と他方の電源ユニット20に入力されるVex2とは、互いに独立に供給される。
【0056】
<第2実施形態>
図6に、電力供給装置101の第2実施形態のブロック回路図を示す。一方の電源ユニット110には、電圧変換回路111のスイッチング回路115と出力端子114との間に、電圧変換回路111から出力される変換電圧VoA1が低下した際に出力端子114から電圧変換回路111へ電流が流れることを防止する、ダイオード素子117が直列に接続されている。
【0057】
このようなダイオード素子117の2端子(アノード及びカソード)間には電位差が生じる場合がある。第2実施形態では、この電位差を補正する信号をPWM制御回路116に提供するカソード制御回路119を更に含む。このカソード制御回路119は、電圧変換回路111の変換電圧VoA1及び出力端子の出力電圧VoK1に応じた信号を供給する。また、この第2実施形態では、電圧補正回路112は、電圧変換回路111への入力電圧Vin1が既定電圧より低いときに、カソード制御回路119を介して変換電圧VoA1を昇圧させる。
【0058】
同様に、他方の電源ユニット120には、電圧変換回路121のスイッチング回路125と出力端子124との間に、電圧変換回路121から出力される変換電圧VoA2が低下した際に出力端子124から電圧変換回路121へ電流が流れることを防止するダイオード素子127が直列に接続されている。
【0059】
このようなダイオード素子127の端子(アノード及びカソード)間には電位差が生じる場合がある。この電位差を補正する信号をPWM制御回路126に提供するカソード制御回路129を更に含んでもよい。このカソード制御回路129は、電圧変換回路121の変換電圧VoA2及び出力端子の出力電圧VoK2に応じた電圧を供給する。また、この変形例では、電圧補正回路122は、電圧変換回路121への入力電圧Vin2が既定電圧より低いときに、カソード制御回路129を介してPWM制御回路126の動作を制御し変換電圧VoA2を昇圧させる。
【0060】
図7に、図6の電力供給装置の第2実施形態の詳細な回路図を示す。カソード制御回路119は、変換電圧VoA1を抵抗分圧することにより生成された電圧と出力電圧VoK1を抵抗分圧することにより生成された電圧とを比較するコンパレータCom4からなる。コンパレータCom4の出力は、PWM制御回路116のコンパレータCom1の基準電圧Vref1側の端子に入力され、変換電圧VoA1と出力電圧VoK1との電位差を補正したPWM制御を行うことができる。
【0061】
また、電圧補正回路112の出力は、カソード制御回路のVoA1側の抵抗分圧回路に接続され、入力電圧Vin1が既定電圧よりも低いときに、PWM制御回路がスイッチング回路115の変換電圧VoA1をより昇圧する制御を行うように動作する。その余の構成は図5に示す第1実施形態と同様である。
【0062】
図8に、図7の電力供給装置の第2実施形態の詳細な回路図の変形例を示す。この第2実施形態の変形例では、スイッチング回路15の入力側と出力側は絶縁トランスにより結合され、スイッチング回路15の入出力間が電気的に常時絶縁された構成である。
【0063】
以上、図1図6に示された電源ユニットを2つ有する構成の電力供給装置について説明したが、本開示はこれには限定されず、電源ユニットを3つ以上の複数個有する電力供給装置をも含む。この場合、複数の電源ユニットのそれぞれの出力端子から出力される出力電圧を並列接続して構成する1つの駆動電圧で負荷装置を駆動する。複数の電源ユニットのそれぞれの入力端子は、互いに電気的に絶縁されている。これら並列接続された複数の電源ユニットは、冗長運転を行い、負荷装置が必要とする電力を、複数の電源ユニットで分担して供給する構成とし得る。
【0064】
また、複数の電源ユニットのうちの1つ電源ユニットの入力電圧が低下したときに駆動電圧が低下することを検出して、これら複数の電源ユニットのうちの他の電源ユニットが、出力する電力を増加させて、低下した前記駆動電圧を所定の電圧に復旧する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1、101 電力供給装置
10、20、110、120 電源ユニット
11、21、111、121 電圧変換回路
12、22、112、122 電圧補正回路
13、23、113、123 入力端子
14、24、114、124 出力端子
15、25、115、125 スイッチング回路
16、26、116、126 PWM制御回路
17、27、117、127 ダイオード素子
18、28、118、128 入力回路
30、130 負荷装置
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8