(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ねじ接続部を締め付ける方法および複数ねじ回し装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B23P19/06 Q
B23P19/06 T
B23P19/06 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021030958
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】10 2020 105 104.2
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171564(JP,A)
【文献】特表2015-505279(JP,A)
【文献】特開2012-157951(JP,A)
【文献】特開平01-216730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00- 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のねじ回しツール(10)および少なくとも1つの別の第2のねじ回しツール(20)を有する複数ねじ回し装置(1)を使用することによってねじ接続部を締め付ける方法であって、前記ねじ接続部のねじ軸線(A)は、互いに固定された位置に配置されており、前記ねじ接続部はそれぞれ、ねじ山付きボルト(5)と、該ねじ山付きボルト(5)のねじ山(5A)に螺合されかつベース(U)に対して支持されたナット(6)とから構成されており、前記ねじ回しツール(10,20)はそれぞれ、
交換可能なブッシング(21)であって、該交換可能なブッシング(21)は、ツール軸線(A10,A20)を中心に回転可能に前記ねじ回しツール(10,20)に配置されており、前記交換可能なブッシング(21)に、前記ねじ山(5A)の長手方向部分(L)に螺合することができる張力ねじ山(23)が実現されている、交換可能なブッシング(21)と、
前記交換可能なブッシング(21)を前記ねじ山(5A)に対して着脱するための回転駆動装置(45)と、
前記ツール軸線(A10,A20)に沿って、前記交換可能なブッシング(21)によって引張り力を加えることによって、前記ねじ山付きボルト(5)を長手方向に緊張させるための手段と、
前記ナット(6)を締め直す目的で前記ナット(6)に連結することができる形状嵌合ツールと、
を有しており、
前記ねじ回しツール(10,20)はそれぞれ、長手方向駆動装置(50a,50b)によって前記ツール軸線(A10,A20)の長手方向に可動であり、少なくとも1つの作動駆動装置(60a,60b)によって、前記ねじ回しツール(10,20)は、前記ツール軸線(A10,A20)のうちの少なくとも1つに対して直角である方向に互いに対して可動であり、
ある時点において、両方の前記ねじ回しツール(10,20)は、前記ベース(U)に対して同時に支持され、前記第1のねじ回しツール(10)の前記交換可能なブッシング(21)および前記第2のねじ回しツール(20)の前記交換可能なブッシング(21)はそれぞれ、前記ねじ山付きボルト(5)の前記ねじ山(5A)に螺合され、
前記第2のねじ回しツール(20)の位置を変更せずに、以下のステップ、すなわち、
a)前記回転駆動装置(45)によって、前記第1のねじ回しツール(10)の前記交換可能なブッシング(21)を前記ねじ山付きボルトから緩め、前記長手方向駆動装置(50a)によって、前記ねじ回しツール(10)を持ち上げるステップと、
b)前記作動駆動装置(60a,60b)によって、前記第1のねじ回しツール(10)を前記第2のねじ回しツール(20)に対して、前記第1のねじ回しツール(10)の前記ツール軸線(A10)が別のねじ山付きボルト(5)の前記ねじ軸線(A)に整列する新たな位置へ移動させるステップと、
c)前記新たな位置において、前記第1のねじ回しツール(10)を前記長手方向駆動装置(50a)によって下降させ、前記回転駆動装置(45)によって、前記交換可能なブッシング(21)を前記別のねじ山付きボルト(5)に螺合するステップと、
d)前記交換可能なブッシング(21)によって引張り力を加えることによって、前記別のねじ山付きボルト(5)を長手方向に緊張させ、長手方向緊張を維持しながら、前記ナット(6)を締め直すステップと、
e)今度は前記第2のねじ回しツール(20)のために、前記第1のねじ回しツール(10)の位置を変更することなく、前記ステップa)~d)を繰り返すステップと、
が続く、方法。
【請求項2】
それぞれの前記ねじ回しツール(10,20)を前記新たな位置へ移動させるための制御システムが設けられており、該制御システムは、前記ねじ山付きボルト(5)の位置を特定するように設計されたセンサ(70)によってセンサ制御されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記作動駆動装置(60a,60b)の電気的、液圧的または空気圧的な作動を特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ツール軸線(A10,A20)同士の間の距離を前記作動駆動装置(60a,60b)によって変更することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ツール軸線(A10,A20)の距離の変更を線形移動において行うことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ツール軸線(A10,A20)の距離の変更を円弧状移動または2つの円弧状移動の組合せにおいて行うことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記ねじ回しツール(10,20)はキャリア(40)に配置されており、前記ねじ回しツール(10,20)を前記キャリア(40)に対して旋回させることによって、前記円弧状移動を行うことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記長手方向駆動装置(50a,50b)の電気的、液圧的または空気圧的な作動を特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
それぞれの前記ねじ回しツール(10,20)にのみ割り当てられた回転駆動装置(45)によって、前記交換可能なブッシング(21)を着脱することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
保持ツール(80)を有する回転防止手段が設けられており、前記保持ツール(80)は、前記交換可能なブッシング(21)の螺合の期間中、中立位置と対応保持位置との間で前後に可動に設計されており、前記保持ツール(80)に実現された対応保持面(81)が、前記ねじ山付きボルト(5)に回動防止当接接触させられ、当接接触の位置は、前記交換可能なブッシング(21)に螺合される前記ねじ山(5A)の前記長手方向部分(L)とは異なることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
それぞれの前記ねじ回しツール(10,20)を前記新たな位置へ移動させるためのロボット制御システムが設けられており、前記ロボット制御システムは、前記保持ツール(80)の前後の移動も制御することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ねじ接続部のための複数ねじ回し装置であって、前記ねじ接続部のねじ軸線(A)は、互いに固定された位置に配置されており、前記ねじ接続部はそれぞれ、ねじ山付きボルト(5)と、前記ねじ山付きボルト(5)のねじ山(5A)に螺合されかつベース(U)に対して支持されたナット(6)とから構成されており、前記複数ねじ回し装置は、第1のねじ回しツール(10)および少なくとも1つの別の第2のねじ回しツール(20)を有し、前記各ねじ回しツール(10,20)はそれぞれ、
交換可能なブッシング(21)であって、該交換可能なブッシング(21)は、ツール軸線(A10,A20)を中心に回転可能に前記ねじ回しツール(10,20)に配置されており、前記交換可能なブッシング(21)に、前記ねじ山(5A)の長手方向部分(L)に螺合することができる張力ねじ山(23)が実現されている、交換可能なブッシング(21)と、
前記交換可能なブッシング(21)を前記ねじ山(5A)に対して着脱するための回転駆動装置(45)と、
前記ツール軸線(A10,A20)に沿って前記交換可能なブッシング(21)によって引張り力を加えることによって前記ねじ山付きボルト(5)を長手方向に緊張させるための手段と、
前記ナット(6)を締め直す目的で該ナット(6)に連結することができる形状嵌合ツールと、
を有している、複数ねじ回し装置において、
前記各ねじ回しツール(10,20)はそれぞれ、長手方向駆動装置(50a,50b)によって前記ツール軸線(A10,A20)の長手方向に可動に設計されており、前記ねじ回しツール(10,20)は、少なくとも1つの作動駆動装置(60a,60b)によって、前記ツール軸線(A10,A20)のうちの少なくとも1つに対して直角の方向に互いに対して可動であることを特徴とする、複数ねじ回し装置。
【請求項13】
それぞれの前記ねじ回しツール(10,20)にそれ自体の
作動駆動装置(60a,60b)が割り当てられていることを特徴とする、請求項12記載の複数ねじ回し装置。
【請求項14】
前記
作動駆動装置(60a,60b)は、電気的、液圧的または空気圧的に作動されることを特徴とする、請求項12または13記載の複数ねじ回し装置。
【請求項15】
前記ねじ回しツール(10,20)は、キャリア(40)に配置されており、前記ねじ回しツール(10,20)のうちの少なくとも1つは、前記作動駆動装置(60a,60b)によって前記キャリア(40)に対して可動であることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の複数ねじ回し装置。
【請求項16】
前記ねじ回しツール(10,20)のうちの少なくとも1つは、前記キャリア(40)に配置された軸(41,42)を中心に旋回させることができるアーム(61,62)の自由端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項15記載の複数ねじ回し装置。
【請求項17】
前記ねじ回しツール(10,20)はそれぞれ、前記キャリア(40)に配置された軸(41,42)を中心に旋回させることができるアーム(61,62)の自由端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項16記載の複数ねじ回し装置。
【請求項18】
前記長手方向駆動装置(50a,50b)は、互いに独立して、それぞれの前記アーム(61,62)を前記軸(41,42)の長手方向に対して平行に移動させるように設計されていることを特徴とする、請求項16または17記載の複数ねじ回し装置。
【請求項19】
前記複数ねじ回し装置は、ツールモジュール(1.1)と、空間的に別個の供給モジュール(1.2)とから構成されており、前記ツールモジュール(1.1)には、前記ねじ山付きボルト(5)を長手方向に緊張させるための手段を含む前記ねじ回しツール(10,20)と、前記回転駆動装置(45)と、前記長手方向駆動装置(50a,50b)と、前記作動駆動装置(60a,60b)とがまとめられており、前記供給モジュール(1.2)には、少なくとも前記ねじ山付きボルト(5)を長手方向に緊張させるための手段を作動させるための電源がまとめられており、供給ライン(85)、好ましくは柔軟な供給ラインが、前記電源の構成部分として、前記供給モジュール(1.2)から前記ツールモジュール(1.1)まで前記電源の一部として通じていることを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項記載の複数ねじ回し装置。
【請求項20】
前記供給モジュール(1.2)の構成部分は、前記回転駆動装置(45)、前記長手方向駆動装置(50a,50b)および前記作動駆動装置(60a,60b)のための電源でもあり、第2の、好ましくは柔軟な供給ライン(86)が、前記電源の構成部分として、前記供給モジュール(1.2)から前記ツールモジュール(1.1)まで通じていることを特徴とする、請求項19記載の複数ねじ回し装置。
【請求項21】
前記供給モジュール(1.2)は、好ましくは、該供給モジュールに回転可能に取り付けられたローラまたはホイール要素(90)を介して前記ベース(U)に対して平行に可動に設計されており、前記供給モジュール(1.2)は、柔軟なまたは枢動式のプッシュ型またはプル型リンク機構(91)を介して前記ツールモジュール(1.1)に機械的に接続されていることを特徴とする、請求項19または20記載の複数ねじ回し装置。
【請求項22】
保持ツール(80)であって、該保持ツール(80)に対応保持面(81)が実現されており、該対応保持面(81)は、前記交換可能なブッシング(21)に螺合される前記ねじ山(5A)の前記長手方向部分(L)とは異なる位置において前記ねじ山付きボルト(5)に対して配置することができる、保持ツール(80)と、中立位置と、前記対応保持面(81)が前記ねじ山付きボルト(5)に回動防止当接接触する対応保持位置との間で前記保持ツール(80)を前後に移動させるための駆動装置と、から構成された回転防止手段が設けられていることを特徴とする、請求項12から21までのいずれか1項記載の複数ねじ回し装置。
【請求項23】
それぞれの前記ねじ回しツール(10,20)それ自体に、保持ツール(80)と、該保持ツール(80)の駆動装置とが設けられていることを特徴とする、請求項22記載の複数ねじ回し装置。
【請求項24】
前記保持ツール(80)の前記駆動装置は、前記ツール軸線(A10,A20)に沿った前記ねじ回しツール(10,20)の移動に連結されていることを特徴とする、請求項23記載の複数ねじ回し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ接続部を締め付ける方法であって、ねじ接続部のねじ軸線は、互いに固定された位置に配置されており、ねじ接続部はそれぞれ、ねじ山付きボルトと、ねじ山付きボルトのねじ山に螺合されかつベースに対して支持されたナットとから構成されている、方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、ねじ接続部を締め付ける方法に特に適した複数ねじ回し装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ねじ回し装置を使用してねじ接続部を締め付ける方法は、欧州特許第2607685号明細書から公知である。この装置は、フランジに沿って一列に配置された多数のねじ接続部を締め付けるまたは締め直すように設計されている。各ねじ接続部は、ねじ山付きボルトと、ねじ山付きボルトのねじ山に螺合されたナットから構成されており、ナットはフランジの上側に支持されている。緊張によるねじ接続部の締付けと、それに続くフランジに対するナットの回転とは、自己推進式車両に配置されたねじ回しツールによって達成される。それぞれの締め付けられるねじ接続部の上にねじ回しツールを位置決めするために、車両には位置センサが装備されている。後者の位置信号に基づいて、ねじ回しツールが配置された車両は、ねじ回しツールがねじ接続部のねじ軸線と軸方向に整列したことを信号が示すまで、制御された形式で駆動される。この目的のために、位置センサの位置信号は、制御ユニットにおいて、車両を駆動するための信号に処理される。制御ユニットはまた、ナットを緊張させかつ締め直すプロセスを制御するように設計されている。
【0004】
一列に配置されたねじ接続部を締め付ける方法は、国際公開第2008/092768号からも公知である。ねじ接続部の締付けは、並列に接続された複数のねじ回しツールによって同時に達成される。各ねじ回しツールは液圧接続部を有し、液圧接続部は、共通の液圧ユニットに液圧的に接続されている。したがって、締付け装置は、並行作動のために液圧並列回路に接続されている。
【0005】
複数のねじ回しツールを、一列に配置されたねじ接続部に沿って一緒に搬送することができかつこれらのねじ接続部の上の位置へ移動させることができるねじ回し装置が、欧州特許第2671673号明細書から公知である。ねじ回しツールは、まずそれぞれのねじ接続部のねじ山付きボルトを機械的に長手方向に緊張させることにより、液圧的に作動する。
【0006】
公知の方法および装置は、例えば、風力発電設備の個々のタワー部分を互いに接続するフランジねじ締結部において一般的であるように、一列に連続して配置されたねじ接続部に適している。この場合、上側のタワー部分のリングフランジは、その下に配置された風力発電設備のタワー部分のリングフランジに支持されている。フランジは、フランジの周囲に沿って均等に分散されて一列に配置された多数のねじ接続部によって螺合される。
【0007】
公知の方法および装置は、ねじ接続部が一列に均等に配置されているのではなく、互いに異なる位置に配置されている場合には、あまり適切ではないかまたは不適切でさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、複数ねじ回し装置によって実施することができ、一列に連続して配置されたねじ接続部を締め付けるのみならず、ねじ軸線が互いに他の位置に配置されたねじ接続部を締め付けるのにも適した方法を提供することである。さらに、適切な複数ねじ回し装置が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1の特徴を有する、ねじ接続部を締め付ける方法が提案される。
【0010】
この方法の場合、少なくとも2つのねじ回しツールを有する複数ねじ回し装置が使用され、ねじ回しツールはそれぞれ、
交換可能なブッシングであって、交換可能なブッシングは、ツール軸線を中心に回転可能にねじ回しツールに配置されており、交換可能なブッシングに、ねじ山の長手方向部分に螺合することができる張力ねじ山が実現されている、交換可能なブッシングと、
交換可能なブッシングをねじ山に対して着脱するための回転駆動装置と、
ツール軸線に沿って、交換可能なブッシングによって引張り力を加えることによって、ねじ山付きボルトを長手方向に緊張させるための手段と、
ナットを締め直す目的でナットに連結することできる形状嵌合ツールと、
を有している。
【0011】
ねじ回しツールはそれぞれ、長手方向駆動装置によってツール軸線の長手方向に可動であり、したがって、可動に設計されている。また、少なくとも1つの作動駆動装置によって、ねじ回しツールは、ツール軸線のうちの少なくとも1つに対して直角である方向に互いに対して可動である。
【0012】
ある時点において、両方のねじ回しツールは、ベースに対して同時に支持される。この時点で第1のねじ回しツールの交換可能なブッシングおよび第2のねじ回しツールの交換可能なブッシングはそれぞれ、ねじ山付きボルトのねじ山に螺合され、両ねじ回しツールにおいて、それぞれのねじ山付きボルトを長手方向に緊張させる手段が作動され、すなわち、両交換可能なブッシングは、好ましくは液圧によって、それぞれのねじ山付きボルトに引張り力を加える。
【0013】
次に、第2のねじ回しツールの位置を変更せずに、当該ねじ回しツールが最初にさらに作動され、すなわち、ねじ山付きボルトに引張り力を加え、第1のねじ回しツールの作動停止に続いて、以下のステップ、すなわち、
a)回転駆動装置によって、第1のねじ回しツールの交換可能なブッシングをねじ山付きボルトから緩め、長手方向駆動装置によって、ねじ回しツールを持ち上げるステップと、
b)作動駆動装置によって、第1のねじ回しツールを第2のねじ回しツールに対して、第1のねじ回しツールのツール軸線が別のねじ山付きボルトのねじ軸線に整列する新たな位置へ移動させるステップと、
c)新たな位置において、第1のねじ回しツールを長手方向駆動装置によって下降させ、回転駆動装置によって、交換可能なブッシングを別のねじ山付きボルトに螺合するステップと、
d)交換可能なブッシングによって引張り力を加えることによって、別のねじ山付きボルトを長手方向に緊張させ、長手方向緊張を維持しながら、ナットを締め直すステップと、
e)今度は第2のねじ回しツールのために、第1のねじ回しツールの位置を変更することなく、ステップa)~d)を繰り返すステップと、
が続く。
【0014】
第2のねじ回しツールの作動停止は、ステップd)の後、すなわち、別のねじ山付きボルトに引張り力が加えられ始めた後に行われる。各時点で、ねじ回しツールのうちの少なくとも1つが、加えられた液圧によって作動され、したがってこのねじ回しツールはベースに対して強い圧力下で支持されるので、ねじ回しツールの交互の再位置決め時に高い精度が達成される。
【0015】
本発明の目的を達成するためにさらに提案されるのは、請求項12の特徴を有する、ねじ接続部のための複数ねじ回し装置である。
【0016】
この複数ねじ回し装置は、ねじ回しツールがそれぞれ、長手方向駆動装置によってツール軸線の長手方向に可動に設計されており、ねじ回しツールが、少なくとも1つの作動駆動装置によって、ツール軸線のうちの少なくとも1つに対して直角の方向に互いに対して可動であることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の方法および請求項に記載の装置は、互いに一列に配置されたねじ接続部を締め付けるのみならず、そのねじ軸線が互いに他の位置に配置されている、例えば、ねじ軸線が互いに横方向または斜め方向にずれて配置されている、かつ/または1つのねじ接続部から別のねじ接続部までの距離が変化しているようなねじ接続部を順に締め付けるためにも適している。
【0018】
追加の利点は、この方法が、実質的に鉛直方向でのねじ締結部を締め付けるのみならず、鉛直方向に対して著しく角度が付けられたねじ締結部のためにも、さらには、例えば、水平のねじ軸線を有するねじ接続部、およびオーバーヘッドねじ締結部にも適していることである。ねじ接続部が、例えばフランジ接続部である場合、フランジの向きは、水平であるのみならず、傾斜していてもよいし、さらには、鉛直方向であってもよい。
【0019】
したがって、全体として、従来技術と比較して、ねじ接続部を締め付けるためのより柔軟な方法が幅広い用途で提供される。特別に設計された複数ねじ回し装置は、様々な用途状況における高い柔軟性も特徴とする。
【0020】
装置の少なくとも2つのねじ回しツールは、少なくとも1つの提供された作動駆動装置によって、それらのツール軸線に対して横方向に互いに移動できることが重要である。作動駆動装置が作動されると、一方のねじ回しツールはその位置および回転角を保持するのに対し、他方のねじ回しツールは、それ自体のツール軸線に対して直角または横方向に移動を実施する。その結果、ねじ回しツールの相対的な移動が生じる。
【0021】
ねじ締結プロセスの各時点で、少なくとも1つのねじ回しツールがそれぞれのねじ山付きボルトにしっかりと接続されることも重要である。これにより、特定の場所における固定された位置が常に保証される。固定された位置により、他方のまたは別のねじ回しツールは、作動駆動装置の作動によって、まだ締め付けられていない別のねじ山付きボルトの上方の新たな位置へ移動することができ、この位置において、この他方のねじ回しツールのツール軸線が別のねじ山付きボルトに整列する。この新たな位置への移動は高精度で行われる。なぜならば、再位置決めの間、第1のねじ回しツールはねじ山付きボルトへの不動の係合、ベースでの支持、ひいてはその結果、固定された位置および回転角度を維持するからである。
【0022】
したがって、全体として、この方法は、それぞれ新たなねじ締結位置への反復移動を特徴とし、したがって、常に固定された位置において不動の接続が保証され、この接続は、次いで、それぞれの別のねじ山付きボルトにおけるねじ締結によって別の位置において不動の接続が保証されたとき即座に中止または解除される「自己前進式」方法である。
【0023】
ツール軸線に沿った交換可能なブッシングによる引張り力の付与によるねじ山付きボルトの長手方向の緊張は、順に、時間的に部分的に重なり合ってまたは並行して、すなわち、同時に行われてもよい。第1の場合では、2つのねじ山付きボルトのプリテンションが順に続いて生じ、第2の場合では、プリテンションは同時に行われる。例えば、2つのねじ回しツールは、さらなる第3のねじ回しツールが、すなわち、別のねじ軸線の上方に再位置決めされながら作動することも可能である。
【0024】
次のねじ締結位置の正確な位置を検出するためにセンサが使用されてもよい。それらのセンサシステムは、その都度緊張させられるボルト自体を検出するようにまたは1つの隣接するボルトまたは2つの隣接するボルトを検出するように設計されてもよい。ねじ接続部の検出は、例えばねじ接続部のボルト頭がそこに配置されている場合、それぞれのフランジの下方で行われてもよい。
【0025】
したがって、方法および装置の1つの設計は、それぞれのねじ回しツールを新たな位置へ移動させるためのロボット制御システムを提案し、ロボット制御システムは、ねじ山付きボルトの位置を特定するように設計されたセンサによってセンサ制御される。
【0026】
ねじ軸線に対して横方向に移動するアクチュエータのために、電気的、液圧的または空気圧的な作動が提案される。ねじの長手方向で作動する長手方向駆動装置のためにも、電気的、液圧的または空気圧的な作動が提案される。
【0027】
ツール軸線同士の間の距離は、単一または複数の作動駆動装置によって変更される。ツール軸線同士の間の距離は、様々な方法で変更されてもよい。例えば、距離の変更は、線形、すなわち、直線移動または直線移動プロセスにおいて行われてもよい。これは、ねじ接続部が実質的に一列に配置されている場合に有利である。
【0028】
別の変形態様では、ツール軸線の距離の変更は、非線形移動において、特に1つの円弧状移動によってまたは2つ以上の円弧状移動の組合せによって行われる。最も単純な形式での各円弧状移動は、円の経路に沿った移動である。
【0029】
好ましくは、ねじ回しツールは、共通のキャリアに配置されている。この場合、円弧状移動は、ねじ回しツールをキャリアに対して旋回させることによって行われる。ねじ回しツールを互いに反対の旋回方向に同時に旋回させることも可能である。これは、同時にまたは非同時に行われてよい。
【0030】
ねじ回しツールはそれぞれ、キャリアに配置された軸を中心に旋回させることができるアームの自由端部に取り付けられてもよい。長手方向駆動装置は、それぞれのアームをツール軸線に対して平行に移動させるために、互いに独立している。
【0031】
さらに、回転駆動装置によって、交換可能なブッシングを着脱することが提案される。それぞれのねじ回しツールそれ自体には、好ましくは回転駆動装置が割り当てられており、これにより、回転駆動装置は、他の1つまたは複数のツールの回転駆動装置とは独立して作動する。
【0032】
また、回転防止手段も提案される。回転防止手段は、交換可能なブッシングがねじ山付きボルトのねじ山に螺合されるときかつ螺合されている間、ねじ山付きボルトが同時に回転するのを防止するように設計されている。同時回転の結果、交換可能なブッシングとボルトとの間のねじ山係合が短くなりすぎる可能性があり、これは、その後のボルト緊張プロセスにとって大きなリスクとなる可能性がある。
【0033】
回転防止手段は、中立位置と対応保持位置との間で前後に可動に設計された保持ツールを特徴とする。少なくともナットの締め直し/螺合の期間中、保持ツールに実現された対応保持面を、ねじ山付きボルトに回動防止当接接触させ、この当接接触の位置は、交換可能なブッシングに螺合されるねじ山の長手方向部分とは異なることが理解されよう。
【0034】
また、それぞれのねじ回しツールをその新たなまたはさらに別の位置へ制御して移動させるためのプロセス制御システムも提案される。好ましくは、プロセス制御システムは、螺合ツールのその他の機能、好ましくは、追加的な保持ツールの制御された前後の移動をも調整および制御する。
【0035】
好ましくは、複数ねじ回し装置は、2つのモジュール、すなわち、ツールモジュールと、空間的に別個の供給モジュールとから構成されており、ツールモジュールには、ねじ山付きボルトを長手方向に緊張させかつナットを締め直すための手段を含むねじ回しツールと、回転駆動装置と、長手方向駆動装置と、作動駆動装置とがまとめられている。供給モジュールには、少なくともねじ山付きボルトを長手方向に緊張させるための手段を作動させるための電源がまとめられている。電源の構成部分は、供給モジュールからツールモジュールまで通じている、好ましくは柔軟な設計の供給ラインである。
【0036】
好ましくは、供給モジュールの構成部分は、とりわけ回転駆動装置、長手方向駆動装置および作動駆動装置のための電源である。この電源の構成部分として、第2の、好ましくは柔軟な供給ラインが、供給モジュールからツールモジュールまで通じている。
【0037】
ツールモジュールおよび供給モジュールの、大部分で調整された移動のために、方法および装置の1つの設計では、供給モジュールは、好ましくは、供給モジュールに回転可能に取り付けられたローラまたはホイール要素を介してベースに対して平行に可動に設計されており、供給モジュールは、柔軟なまたは枢動式のプッシュ型またはプル型リンク機構を介してツールモジュールに機械的に接続されていることが提案される。
【0038】
方法および装置の別の設計の場合、供給モジュールは中心位置に固定されて配置され、ツールモジュールはこの中心位置の周りを1つのねじ締結部から別のねじ締結部へ移動する。また、この代替的な設計では、好ましくは柔軟な設計の供給ラインが、供給モジュールからツールモジュールまで通じている。
【0039】
交換可能なブッシングが螺合されている間、望ましくない同時回転に対してねじ山付きボルトを固定するために、複数ねじ回し装置は回転防止手段を備えている。これは、保持ツールから成り、保持ツールには対応保持面が実現されており、対応保持面は、交換可能なブッシングに螺合されるねじ山の長手方向部分とは異なる位置においてねじ山付きボルトに対して配置することができる。対応保持ツールは、中立位置と対応保持位置との間で前後に可動であり、対応保持位置において、対応保持面は、ねじ山付きボルトに回動防止当接接触する。ねじ山付きボルトとの係合までの前進運動は、電動式の駆動装置によってまたはばね機構の圧力下で行われてもよい。
【0040】
各ねじ回しツールには、独自の保持ツールと、この保持ツール用の独自の駆動装置とが設けられている。好ましくは、保持ツールの駆動装置は、ツール軸線に対して平行なそれぞれのねじ回しツールの移動に連結されている。
【0041】
例示的な実施形態が、図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】半シェルとしてのみ表されたねじ接続されたリングフランジによってタワーセグメントの接続領域が形成された、風力発電設備の2つのタワーセグメントと、ねじ締結部を締め付けるまたは締め直すためにリングフランジに配置された複数ねじ回し装置との、内部斜視図である。
【
図2】
図1の1つのユニット「A」を示す拡大図である。
【
図3】異なる実施形態における
図1および
図2の部品を示す図である。
【
図4】
図1、
図2および
図3とは反対方向から見た斜視図で複数ねじ回し装置のツールモジュールを示す図である。
【
図8】1つのステーションにおける複数ねじ回し装置のねじ回しツールのうちの1つの部分的な断面図であり、このステーションにおいて、ねじ回しツールはねじ接続部のねじ山付きボルトに螺合されており、ねじ山付きボルトの長手方向緊張が開始することができる。
【
図9】ツールモジュールの別の実施形態を示しており、この場合、ツールモジュールには付加的な回転防止手段が実現されている。
【
図10a)】下側部分に細部「A」を示した、ねじ山付きボルトに適用することができかつねじ山付きボルトが同時に回転することを防止することができる回転防止手段の変化態様を示す図である。
【
図10b)】下側部分に細部「B」を示した、ねじ山付きボルトに適用することができかつねじ山付きボルトが同時に回転することを防止することができる回転防止手段の変化態様を示す図である。
【
図10c)】下側部分に細部「C」を示した、ねじ山付きボルトに適用することができかつねじ山付きボルトが同時に回転することを防止することができる回転防止手段の変化態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、この場合、風力発電設備のタワーにおいて使用するための、ツールモジュール1.1および個別の供給モジュール1.2から構成された、以下ではねじ回しロボットとも呼ばれる複数ねじ回し装置1を示す。この場合、複数ねじ回し装置1は、風力発電設備の2つのタワー部分2の接続領域において、そこに存在するねじ締結部を締め付けるまたは締め直すために特に使用される。それぞれ上側タワー部分2のフランジ3は、その下に位置する風力発電設備のタワー部分のフランジ4に支持されている。フランジ3,4は、この場合一列に配置されかつフランジ3,4の周囲にわたって均等に分散させらされたねじ接続部によってねじ接続されている。
【0044】
図8は、2つのフランジ3,4を含むねじ接続部のうちの1つを示している。ねじ接続部は、ねじ軸線Aに位置し、この場合、ねじ山付きボルト5、ねじ山付きボルト5に螺合された第1のナット6およびねじ山付きボルト5に螺合された第2のナット7から構成されている。ナット6は、上方からフランジ3に対して当接しており、この当接接触面は、以下ではベースUとも呼ばれる。他方のナット7は、下方から他方のフランジ4に対して当接している。
【0045】
第2のナット7の代わりに、ねじ山付きボルトには、下方からフランジ4に当接する拡大されたボルト頭が設けられてもよい。すなわち、ねじ山付きボルト5は、押さえねじとして実現されてもよい。
【0046】
図8はさらに、ねじ引張りシリンダの形態のねじ回しツール10,20を示す。ねじ引張りシリンダは、2つの機能を実施することができる。ねじ引張りシリンダは、ねじ山付きボルト5を長手方向に緊張させることができ、緊張させている間に、その過程でベースUから解放されたナット6を締め直すことができる。この締め直しは、タブルターニングとも呼ばれる。この締め直しは、ねじ下ろしとも呼ばれる。
【0047】
ねじ山付きボルト5の長手方向緊張は、ねじ接続部のねじ軸線Aにおける専ら軸方向の移動において行われる。この目的のために、ねじ軸線Aと一致するツール軸線A10,A20で可動な交換可能なブッシング21が、ねじ引張りシリンダ10,20の円筒形ハウジング30内に配置されている。交換可能なブッシング21の端部には、ねじ山付きボルトのねじ山5Aに螺合するためのめねじ山として実現された張力ねじ山23が設けられている。
【0048】
交換可能なブッシング21は、円筒形ハウジング30内に恒久的に配置されてもよい。代替的に、交換可能なブッシング21は交換可能形式で配置されてもよく、これにより、交換可能なブッシング21は、他のねじ山サイズを有するねじ締結部のための、対応する異なる寸法の交換可能なブッシングと交換することができる。
【0049】
引張りプロセスの開始前に、交換可能なブッシングの張力ねじ山23が、交換可能なブッシング21をツール軸線A10,A20を中心に回転させる回転駆動装置によって、ナット6を超えて突出したねじ山5Aのねじ山端部に螺合される。ねじ締結の結果、張力ねじ山23が長手方向部分Lにおいてねじ山5Aに螺合させられる。
【0050】
液圧力によって、ねじ山付きボルト5は、ねじ山5Aの長手方向部分Lにおける専ら軸方向の引張り力によって長手方向に緊張させられる。この場合は液圧によって加えられる締付け力および/または締付け圧力は、例えば、プロセス制御ユニットのドキュメンテーションモジュールに記憶され、これによりドキュメント化されてもよい。引張り装置が液圧により作動されることによって所定のプリテンション力がねじ山付きボルト5に加えられながら、ナット6が締め直される。この場合に実際に加えられるトルクまたは締付けモーメントおよびナット6の締め直しにおける回転角は、同様にドキュメンテーションモジュールに記憶される。
【0051】
円筒形ハウジング30の中央に配置された交換可能なブッシング21は、好ましくは電気的に駆動される回転駆動装置によって螺合される。次いで、交換可能なブッシング21に引張り力が加えられ、これにより、ねじ山付きボルト5が延伸または緊張する。緊張の期間にわたり、ナット6の下側はベースUから解放され、これにより、ナット6を比較的小さな回転抵抗で回転させることができ、隙間なくベースUと再び接触するまで締め直すまたはねじ下げることができる。これは、例えば、指定された締付けモーメントで実施され、これもドキュメント化される。
【0052】
前述の回転駆動装置または別の回転駆動装置は、回転スリーブ33を駆動するように設計されており、回転スリーブ33は、ナット6の周囲に配置され、ナット6を同時に嵌合式に駆動する。回転スリーブ33のための駆動装置は、変速機34も含み、変速機34は、円筒形ハウジングの開口部を通じて回転スリーブ33に作用し、回転スリーブ、ひいてはナット6を回転させる。
【0053】
液圧式の引張り機構は、耐圧性の円筒形ハウジング30によって包囲されている。ベースUの方向への剛性の継続部は、ナット6を包囲する下方へ開放した支持管を形成している。支持管は、円筒形ハウジング30の一部であるかまたは代替的に、例えば回転方向で固定された形式で円筒形ハウジング30に取り付けられた、円筒形ハウジング30から独立した構成部分であってもよい。ベースUの側において、支持管は、ナット6を包囲するリングの形式の支持面が設けられており、これにより、大きな支持力を、液圧を加える間の対応当接部を形成するベースUへ分散させることができる。
【0054】
円筒形ハウジング30の側面には、液圧接続部37(
図4)が設けられており、これを介して、円筒形ハウジング30の内部に実現される液圧シリンダの液圧作動チャンバを、供給モジュール1.2の液圧ポンプに接続することができる。
【0055】
ねじ回しツール10,20の液圧シリンダには、長手方向に可動にピストンが配置されている。液圧シリンダに液圧を供給することにより、ピストンは、ピストンに作用するばねの力に逆らって持ち上がる。ばねは、液圧作動空間が最小になる基本位置にピストンを保持しようとする。
【0056】
ピストンは、交換可能なブッシング21を軸方向に駆動するように設計されている。この目的のために、ピストンには、交換可能なブッシング21が支持される段部が設けられてもよい。液圧ポンプが圧力流体を作動チャンバに供給すると、ピストンが持ち上がり、交換可能なブッシング21をツール軸線A10,A20に沿って駆動する。この過程において、円筒形ハウジング30は、対応当接部を形成するベースUに対して高圧下で支持される。ねじ山付きボルト5の上記の長手方向緊張が生じる。
【0057】
液圧ポンプによって提供される圧力の大きさおよび圧力期間は、主な機能を調整および制御する、ねじ回しロボットに設けられたプロセス制御ユニットによって自動的に設定される。
【0058】
図4~
図7は、複数ねじ回し装置1のツールモジュール1.1の構造設計の例と、新たなまたは別のねじ締結位置へのプロセス制御された自動的な移動を含む、ツールモジュール1.1によって行うことができるねじ締結方法とを示している。
【0059】
この例示的な実施形態の場合、ツールモジュール1.1は、液圧ねじ引張りシリンダ10,20として設計された、
図8を参照して既に説明した合計2つのねじ回しツールを備えている。しかしながら、モジュールは、ねじ締結方法を実施する目的で1つまたは複数のこのようなねじ回しツールを備えていてもよい。
【0060】
第1のねじ回しツール10の円筒形ハウジング30は、第1のアーム61の自由端部に堅固に取り付けられており、第1のアーム61は、第1のアーム61を旋回させることができるために、キャリア40に不動式に配置された軸41に取り付けられている。同様に、第2のねじ回しツール20の円筒形ハウジング30は、第2のアーム62の自由端部に堅固に取り付けられており、第2のアーム62は、第2のアーム62は旋回させることができるために、キャリア40に不動式に配置された第2の軸42に取り付けられている。その結果、各ねじ回しツール10,20を、それぞれの軸41,42を中心に、円の弧である円弧上で旋回させることができる。
【0061】
例示的な実施形態では、キャリア40は、両アーム61,62が貫通したフレームである。これは、各アーム61,62を二段式のダブルアームとして実現する可能性を提供し、ダブルアームの自由端部にそれぞれの円筒形ハウジング30が取り付けられており、これにより、構造全体の強度を高めている。
【0062】
特に好ましい設計における二段式のダブルアームとしての2つの各アーム61,62は、回転駆動装置45として機能する電気モータを収容するためのスペースを提供する。1つのこのような回転駆動装置45が各アーム61,62に配置されている。
【0063】
例示的な実施形態の場合、回転駆動装置45は2つの機能を実施する。第1の機能は、交換可能なブッシングをねじ山付きボルト5に対して着脱するために、ねじ回しツール10または20に配置された交換可能なブッシング21をそれぞれツール軸線A10またはA20を中心に回転させる機能である。第2の機能は、ナット6に連結することができかつナット6を締め付けるまたはねじ下げることができる形状嵌合ツールとしての回転スリーブ33(
図8)を回転させる機能である。
【0064】
回転駆動装置45が両機能を連続して実施できるようにするために、ここで説明する装置の場合、ここで説明する装置における回転駆動装置45の電気モータの下流に接続された切り替え変速機が設けられている。切り替え変速機の第1の位置では、回転駆動装置45は、交換可能なブッシング21のみを駆動し、他方の位置では、回転スリーブ33のみを駆動する。この切り替えも、ロボット制御システムによって制御される。
【0065】
代替的に、装置は、交換可能なブッシング21のための第1の駆動装置と、回転スリーブ33のための第2の別個の駆動装置とを備えていてもよい。
【0066】
ねじ回しツール10,20をねじ接続部まで下降させるまたは再び上昇させるために、それぞれの交換可能なブッシング21の回転とは無関係に、各ねじ回しツール10,20には、それぞれ、それ自体の長手方向駆動装置50aおよび50bが設けられている。長手方向駆動装置50a,50bは、それぞれのアーム61,62、ひいてはねじ回しツールをもキャリア40に対して昇降させるように設計されている。
【0067】
2つの長手方向駆動装置50a,50bは、互いに独立して動作し、これにより、円筒形ハウジング30が取り付けられたアーム61,62を、個別に、すなわち、他方のアームから独立して昇降させることができる。長手方向駆動装置50a,50bの作動もまた、ロボット制御システムの制御信号に依存して行われる。
【0068】
アーム61,62は、作動駆動装置60a,60bによって、キャリア40に対して移動される。作動駆動装置60a,60bの作動の結果、それぞれのねじ回しツール10,20は、それ自体のツール軸線A10,A20に対して直角に、ひいては横方向に移動を行う。その結果、ねじ回しツールが相対的に移動し、この移動はツール軸線A10,A20間の距離を変化させる。
【0069】
作動駆動装置60aの作動の結果、第1のアーム61、ひいては第1のねじ回しツール10は、軸41を中心に旋回する。別の作動駆動装置60bの作動の結果、第2のアーム62、ひいては第2のねじ回しツール20は、軸42を中心に旋回する。
【0070】
この目的のために、
図7に示したように、作動駆動装置60a,60bは、アーム61,62と係合するねじスピンドルを有している。
【0071】
作動駆動装置60a,60bおよび長手方向駆動装置50a,50bはそれぞれ、プロセス制御信号に依存して電気モータによって動かされる。原則として、駆動装置が液圧式または空気圧式の設計であることも可能である。
【0072】
さらに、2つの作動駆動装置60a,60bを提供する代わりに、1つの作動駆動装置のみを提供することが可能である。例えば、適切な変速機によって、1つの作動駆動装置が両方のアーム61,62を同時に駆動し、両方のアーム61,62を、軸41,42を中心に互いに旋回させてもよい。
【0073】
本明細書に記載の装置により、従来技術のように、線形駆動装置または予定された円形経路に沿って転がる駆動装置を必要とすることなく、1つのねじ接続部から別のねじ接続部への順次移動を行うことができる。本明細書に説明する方法の場合、少なくとも1つのねじ接続部への堅固な接続が常に保証される。この接続は、別のねじ接続への堅固な接続が確立された後にのみ解放される。
【0074】
したがって、全体として、この方法は、新たなねじ締結位置への反復移動を特徴とし、したがって、1つのねじ締結部から別のねじ締結部への移動または転がり移動である1つの位置から別の位置への移動のない、「自己前進」方法である。
【0075】
ねじ締結プロセス中の任意の時点で、少なくとも1つのねじ回しツール10,20がそれぞれのねじ山付きボルト5に螺合され、同時にベースUに支持される。このねじ回しツールにおいて、それぞれのねじ山付きボルトを長手方向に緊張させるための手段が作動され、すなわち、交換可能なブッシングが引張り力を加える。したがって、少なくともこの1つの位置では、安全で不動の接続、すなわち、固定された位置が保証される。同時に、他方のねじ回しツール、すなわち、液圧的に作動されていないねじ回しツールを、1つまたは複数の作動駆動装置60a,60bによって、別の、まだ締め付けられていないねじ山付きボルト5の上方の新たな位置へ移動させることができる。新たな位置への移転は高精度で行うことができる。なぜならば、移転中に少なくとも1つのねじ回しツール10,20が、ねじ山付きボルト5でその堅固な係合を維持し、同時にベースUに支持されるからである。
【0076】
新たなねじ締結位置へ移動または移転する方法は、実用的な例に基づいて、個々のステップで以下に説明される。開始点は、両方のねじ回しツール10,20が液圧で作動され、すなわち、各ねじ回しツールがねじ接続部のねじ山付きボルト5にねじ接続され、両ねじ回しツール10,20の円筒形ハウジング30が液圧力によりベースUに支持されているという状況である。この状況から開始して、次の方法ステップ、つまり、
a)第1のねじ回しツール10の液圧による作動停止、および回転駆動装置45の作動により、第1のねじ回しツール10の交換可能なブッシングをそれぞれのねじ山付きボルト5から緩め、次に、第1の長手方向駆動装置50aの作動により、第1のねじ回しツール10をねじ接続部から上昇させかつ解放する;b)作動駆動装置60aまたは代替的に両作動駆動装置60a,60bの作動により、第1のねじ回しツール10のみをそれ自体のツール軸線A10に対して直角に、ひいては横方向に、ツール軸線A10が別のねじ山付きボルト5のねじ軸線Aに整列する新たな位置へ移動させる。このステップの間、ツール軸線A10と、固定位置のねじ回しツール20のツール軸線A20との間の距離が変化する;c)このように決定された新たな位置において、長手方向駆動装置50aによって第1のねじ回しツール10を下降させ、次いで、回転駆動装置45によって交換可能なブッシング21を別のねじ山付きボルト5に螺合する;d)第1のねじ回しツール10に液圧を供給し、交換可能なブッシング21によって引張り力を加えることにより、別のねじ山付きボルト5を長手方向に緊張させ、長手方向緊張を維持しながら、回転スリーブ33を用いて当該ナット6を締め付け、回転スリーブ33の回転駆動によって駆動する;e) 次いで、ステップa)~d)を反復するが、今度は、第1のねじ回しツール10の位置を変化させずに、他方の、これまで位置的に固定されていたねじ回しツール20を移転させることによって行う
を実施する。
【0077】
「自己前進」移転によって機能するこの方法の決定的な利点は、一時的な固定点へのツールモジュール1.1の不動の接続が常に保証されることである。この不動の接続は、新たな、同様に不動の接続が確立された場合にのみ解放される。ツールモジュール1.1は常に少なくとも1つのねじ接続部にクランプされ、同時にベースUに支持されるため、この方法は、鉛直方向の複数のねじ接続部にのみ適しているわけではない。むしろ、この方法は、鉛直方向に対して角度付けられたねじ接続部および水平のねじ軸線を有する複数のねじ接続部にも適している。ツールモジュール1.1を使用することによって、複数のオーバーヘッドねじ接続でさえ、安全かつ完全に自動的に実施することができる。
【0078】
ロボット制御システムまたはプロセス制御システムは、それぞれのねじ回しツール10,20を新たな位置へ移転させることに伴う全ての動作を制御および監視し、制御システムは、回転駆動装置45、長手方向駆動装置50a,50bおよび作動駆動装置60a,60bの機能を監視および制御するように設計されている。同じプロセス制御は、ねじ山付きボルト5を長手方向に緊張させるための液圧機構およびナット6を締め直すための形状嵌合ツールも制御する。
【0079】
説明したように、ねじ回しツール10,20の移転は順次行われる。他方、ねじ山付きボルト5の長手方向緊張は、順次行われる必要はなく、両ねじ山付きボルトにおいて同時に行われてもよい。
【0080】
合計3つのねじ回しツールを備えて設計されている複数ねじ回し装置の場合、これらのツールのうちの2つは、例えば、それぞれのねじ山付きボルト5を長手方向に緊張させる間に、同時に第3のねじ回しツールが、別のねじ締結部へ再位置決め、すなわち、移転される。
【0081】
それぞれの次のねじ締結位置を確実に見つけ、それぞれのねじ回しツール10,20をこの次のねじ締結位置へ移動させるために、キャリア40に取り付けられたセンサ70が設けられている。センサ70は、信号によってプロセス制御装置、すなわち、ロボット制御装置に接続される。適切なセンサは、特に、画像キャプチャカメラ、レーザセンサまたは誘導センサである。個々のねじ締結位置の正確な位置、特に個々のねじ軸線Aの位置が不明であり、前もって固定位置データ記録として記憶されていない場合、センサ70によって、それぞれの次のねじ締結位置を好ましくは検出することができる。
【0082】
センサ70のセンサシステムは、緊張させるそれぞれの次のねじ山付きボルト5またはそのねじ軸線Aをそれぞれ検出するようにまたは隣接するまたは2つの隣接するねじ山付きボルトを検出するように設計されていてもよい。
【0083】
図9は、交換可能なブッシング21が螺合されるときにねじ山付きボルト5の意図しない同時回転を防止するための手段を示す。回転防止手段の構成部分は、保持ツール80である。保持ツール80は、中立位置と、対応保持位置との間で前後に移動させることができ、好ましくは電気的にまたは代替的に単純なばね力によって駆動される。各ねじ回しツール10,20には、それ自体の関連する保持工具80が設けられている。
【0084】
少なくとも、交換可能なブッシング21の螺合の期間中、保持ツール80に設けられた対応保持面81を、ねじ山付きボルト5にまたはねじ山付きボルト5と、回転方向で固定されて当接接触させる。この当接接触は嵌合式であってもよいし、摩擦式であってもよい。当接接触の位置は、交換可能なブッシング21に螺合されるねじ山5Aの長手方向部分Lであることはできないことが理解される。
【0085】
図10a)、
図10b)および
図10c)は、対応保持面81が当接接触するねじ山付きボルト5の位置の異なる可能性があることを示している。
【0086】
図10a)および
図10b)によれば、ねじ山付きボルト5の2つの端部のうちの一方に内部多角形または外部多角形が設けられている場合、保持ツール80の対応保持面81は、軸方向移動によってこの多角形と当接接触し、その結果、嵌合、ひいては回転に対する固定が達成される。
【0087】
図10b)の場合、この回転防止手段は、ねじ回しツール10,20の交換可能なブッシング21内において省スペース形式で実現されており、保持ツール80は、図示されていないばね機構の圧力下で、ねじ側多角形に自動的に係合することができる。
【0088】
代替的に、
図10c)に示したように、保持ツール80の対応保持面81を、例えばねじ山に対する強力な摩擦接続によって、ねじ山付きボルト5のねじ山と直接に当接接触させてもよい。ねじ山とのこの半径方向の接触は、ねじ山の山頂またはフランクのいずれかにおいて行われてもよい。
【0089】
ねじ山付きボルト5を長手方向に緊張させるための装置、ナット6を締め直すための装置、回転駆動装置45、長手方向駆動装置50a,50bおよび作動駆動装置60a,60bを含むねじ回しツール10,20はツールモジュール1.1にまとめられているのに対し、電源のためのアセンブリは供給モジュール1.2に配置されている。これは、液圧ポンプを備える液圧供給部、ねじ回しツール10,20の作動のための制御装置、加えて、電源、回転駆動装置45、長手方向駆動装置50a,50b、作動駆動装置60a,60bおよびそれぞれのナット6を締め付けるための回転スリーブ33の作動のための制御装置を含む。
【0090】
図1~
図3によれば、液圧のための好ましくは柔軟な供給ライン85は、供給モジュール1.2から2つのねじ回しツールの液圧接続部37に通じている。さらに、電気供給ライン86は、供給モジュール1.2からツールモジュール1.1まで通じている。
【0091】
供給ライン85,86は、共通のラインストランドを形成していてもよい。さらに、ロボット制御システムの制御および監視信号のために、モジュール1.1,1.2の間に有線または無線の信号接続が設けられていてもよい。
【0092】
図1および
図2による変化態様の場合、供給モジュール1.2は、トレーラーの形式でツールモジュール1.1によって引っ張られるまたは代替的に押し付けられる。この目的のために、供給モジュール1.2は、供給モジュール1.2に回転可能に取り付けられたローラ90またはホイール要素によって、ベースUでかつベースUに対して平行に移動させることができる。引張り力または押付力を伝達するために、キャリア40は、柔軟なまたは枢動式のプッシュ型またはプル型リンク機構91を介して供給モジュール1.1に機械的に接続されている。
【0093】
対照的に、
図3による変化態様の場合、供給モジュール1.2は、中央に配置された位置に不動に配置され、ツールモジュール1.1は、供給モジュール1.2の周囲を1つのねじ締結部から別のねじ締結部へ移動する。この設計の場合、同様に、ここには図示されていない、好ましくはやはり柔軟で曲げやすい設計の供給ラインは、供給モジュール1.2からツールモジュール1.1に通じている。
【符号の説明】
【0094】
1 装置、複数ねじ回し装置
1.1 ツールモジュール
1.2 供給モジュール
2 タワー部分
3 フランジ
4 フランジ
5 ねじ山付きボルト
5A ねじ山
6 ナット
7 別のナット
10 ねじ回しツール、ねじ引張りシリンダ
20 ねじ回しツール、ねじ引張りシリンダ
21 交換可能なブッシング
23 張力ねじ山
30 円筒形ハウジング
33 回転スリーブ
34 変速機
37 液圧接続部
40 キャリア
41 軸
42 軸
45 回転駆動装置
50a 長手方向駆動装置
50b 長手方向駆動装置
60a 作動駆動装置
60b 作動駆動装置
61 アーム
62 アーム
70 センサ
80 保持ツール
81 対応保持面
85 供給ライン
86 供給ライン
90 ローラ
91 プッシュ型またはプル型リンク機構
A ねじ軸線
A10 ツール軸線
A20 ツール軸線
L 長手方向部分
U ベース