(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電流検出回路、同期整流型の降圧DC/DCコンバータおよびその制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2021045005
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石野 勉
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-508632(JP,A)
【文献】特開2008-120170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧DC/DCコンバータの制御回路であって、
前記ローサイドトランジスタがオンの期間に、前記ローサイドトランジスタに流れる電流を示す電流検出信号を生成する電流検出回路と、
前記電流検出信号にもとづいて、前記ハイサイドトランジスタおよび前記ローサイドトランジスタを制御するためのパルス信号を生成するパルス変調器と、
を備え、
前記電流検出回路は、
キャパシタと、
(i)第1フェーズにおいて、前記キャパシタの第1端を接地ラインと接続し、前記キャパシタの第2端を、前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタが接続されるスイッチングラインと接続し、(ii)第2フェーズにおいて、前記キャパシタの前記第1端をハイインピーダンスとし、前記キャパシタの前記第2端を前記接地ラインと接続するスイッチ回路と、
ハイインピーダンス入力を有し、前記第2フェーズにおいて前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧にもとづく電流検出信号を出力する出力回路と、
を備える、制御回路。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、
前記キャパシタの前記第1端と前記接地ラインの間に設けられ、前記第1フェーズにおいてオンとなる第1スイッチと、
前記キャパシタの前記第2端と前記スイッチングラインの間に設けられ、前記第1フェーズにおいてオンとなる第2スイッチと、
前記キャパシタの前記第2端と前記接地ラインの間に設けられ、前記第2フェーズにおいてオンとなる第3スイッチと、
その一端が前記キャパシタの前記第1端と接続され、前記第2フェーズにおいてオンとなる第4スイッチと、
を含む、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記出力回路は、
前記第2フェーズにおいて前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧を、電流信号に変換する電圧/電流変換回路をさらに含む、請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記電圧/電流変換回路は、
第1端が電源ラインと接続される第1トランジスタと、
第1端が前記電源ラインと接続され、その制御端子が前記第1トランジスタの制御端子と接続される第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの第2端と接地ラインの間に設けられる抵抗と、
前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧と、前記第1トランジスタの前記第2端の電圧とを受け、その出力ノードが前記第1トランジスタの前記制御端子と接続されるオペアンプと、
を含み、前記第2トランジスタに流れる電流を出力する、請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のコントローラを備える、同期整流型の降圧DC/DCコンバータ。
【請求項7】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むプッシュプルのスイッチング回路とともに使用され、前記ローサイドトランジスタに流れるソース電流を検出する電流検出回路であって、
キャパシタと、
(i)第1フェーズにおいて、前記キャパシタの第1端を接地ラインと接続し、前記キャパシタの第2端を、前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタが接続されるスイッチングラインと接続し、(ii)第2フェーズにおいて、前記キャパシタの前記第1端をハイインピーダンスとし、前記キャパシタの前記第2端を前記接地ラインと接続するスイッチ回路と、
ハイインピーダンス入力を有し、前記第2フェーズにおいて前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧にもとづく電流検出信号を出力する出力回路と、
を備える、電流検出回路。
【請求項8】
前記スイッチ回路は、
前記キャパシタの前記第1端と前記接地ラインの間に設けられ、前記第1フェーズにおいてオンとなる第1スイッチと、
前記キャパシタの前記第2端と前記スイッチングラインの間に設けられ、前記第1フェーズにおいてオンとなる第2スイッチと、
前記キャパシタの前記第2端と前記接地ラインの間に設けられ、前記第2フェーズにおいてオンとなる第3スイッチと、
その一端が前記キャパシタの前記第2端と接続され、前記第2フェーズにおいてオンとなる第4スイッチと、
を含む、請求項7に記載の電流検出回路。
【請求項9】
前記出力回路は、
前記第2フェーズにおいて前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧を、電流信号に変換する電圧/電流変換回路をさらに含む、請求項7または8に記載の電流検出回路。
【請求項10】
前記電圧/電流変換回路は、
第1端が電源ラインと接続される第1トランジスタと、
第1端が前記電源ラインと接続され、その制御端子が前記第1トランジスタの制御端子と接続される第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの第2端と接地ラインの間に設けられる抵抗と、
前記キャパシタの前記第1端に発生する電圧と、前記第1トランジスタの前記第2端の電圧とを受け、その出力ノードが前記第1トランジスタの前記制御端子と接続されるオペアンプと、
を含み、前記第2トランジスタに流れる電流を出力する、請求項9に記載の電流検出回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項7から10のいずれかに記載の電流検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローサイドトランジスタの電流検出に関する。
【背景技術】
【0002】
同期整流型の降圧コンバータ、モータ駆動用のインバータ回路、さまざまな電力変換装置において、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタを含むプッシュプル型のスイッチング回路が用いられる。
【0003】
スイッチング回路あるいはその負荷を制御するために、スイッチング回路に流れる電流を監視する必要がある。電流検出の方式としては、電流経路上にセンス抵抗を挿入し、センス抵抗の電圧降下を検出するもの、ハイサイドトランジスタやローサイドトランジスタのオン抵抗にもとづく電圧降下を検出するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング回路が電流ソースモードで動作する場合に、ローサイドトランジスタに流れる電流を検出したい場合がある。電流ソースモードでは、ローサイドトランジスタには逆向きに電流が流れるため、スイッチング回路の出力ノードには、負電圧が発生するため、ローサイドトランジスタのオン抵抗にもとづく電流検出が困難である。
【0006】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ローサイドトランジスタの電流を検出可能な電流検出回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、電流検出回路である。この電流検出回路は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むプッシュプルのスイッチング回路とともに使用され、ローサイドトランジスタに流れるソース電流を検出する。電流検出回路は、キャパシタと、(i)第1フェーズにおいて、キャパシタの第1端を接地ラインと接続し、キャパシタの第2端を、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが接続されるスイッチングラインと接続し、(ii)第2フェーズにおいて、キャパシタの第1端をハイインピーダンスとし、キャパシタの第2端を接地ラインと接続するスイッチ回路と、ハイインピーダンス入力を有し、第2フェーズにおいてキャパシタの第1端に発生する電圧にもとづく電流検出信号を出力する出力回路と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧DC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、ローサイドトランジスタがオンの期間に、ローサイドトランジスタに流れる電流を示す電流検出信号を生成する電流検出回路と、電流検出信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを制御するためのパルス信号を生成するパルス変調器と、を備える。電流検出回路は、キャパシタと、(i)第1フェーズにおいて、キャパシタの第1端を接地ラインと接続し、キャパシタの第2端を、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが接続されるスイッチングラインと接続し、(ii)第2フェーズにおいて、キャパシタの第1端をハイインピーダンスとし、キャパシタの第2端を接地ラインと接続するスイッチ回路と、ハイインピーダンス入力を有し、第2フェーズにおいてキャパシタの第1端に発生する電圧にもとづく電流検出信号を出力する出力回路と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、ローサイドトランジスタの電流を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電流検出回路の回路図である。
【
図2】
図2は、第1フェーズにおける電流検出回路の等価回路図である。
【
図3】
図3は、第2フェーズにおける電流検出回路の等価回路図である。
【
図6】
図6は、出力回路の構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、DC/DCコンバータの回路図である。
【
図8】
図8は、DC/DCコンバータを備える電子機器の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、モータ駆動システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係るハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含む同期整流型の降圧DC/DCコンバータの制御回路は、ローサイドトランジスタがオンの期間に、ローサイドトランジスタに流れる電流を示す電流検出信号を生成する電流検出回路と、電流検出信号にもとづいて、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを制御するためのパルス信号を生成するパルス変調器と、を備える。電流検出回路は、キャパシタと、(i)第1フェーズにおいて、キャパシタの第1端を接地ラインと接続し、キャパシタの第2端を、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが接続されるスイッチングラインと接続し、(ii)第2フェーズにおいて、キャパシタの第1端をハイインピーダンスとし、キャパシタの第2端を接地ラインと接続するスイッチ回路と、ハイインピーダンス入力を有し、第2フェーズにおいてキャパシタの第1端に発生する電圧にもとづく電流検出信号を出力する出力回路と、を備える。
【0014】
この構成によれば、キャパシタとスイッチ回路の組み合わせを用いることにより、ローサイドトランジスタの電圧降下を、正電圧として検出することができ、電圧降下にもとづく電流検出信号を生成できる。
【0015】
一実施形態において、スイッチ回路は、キャパシタの第1端と接地ラインの間に設けられ、第1フェーズにおいてオンとなる第1スイッチと、キャパシタの第2端とスイッチングラインの間に設けられ、第1フェーズにおいてオンとなる第2スイッチと、キャパシタの第2端と接地ラインの間に設けられ、第2フェーズにおいてオンとなる第3スイッチと、その一端がキャパシタの第1端と接続され、第2フェーズにおいてオンとなる第4スイッチと、を含んでもよい。この構成によれば、スイッチングラインに発生する負電圧を、正電圧に変換できる。
【0016】
一実施形態において、出力回路は、第2フェーズにおいてキャパシタの第1端に発生する電圧を、電流信号に変換する電圧/電流変換回路をさらに含んでもよい。電流信号に変換することで、後段のパルス変調器において、他の信号との加算処理や減算処理が容易になる。
【0017】
一実施形態において、電圧/電流変換回路は、第1端が電源ラインと接続される第1トランジスタと、第1端が電源ラインと接続され、その制御端子が第1トランジスタの制御端子と接続される第2トランジスタと、第1トランジスタの第2端と接地ラインの間に設けられる抵抗と、キャパシタの第1端に発生する電圧と、第1トランジスタの第2端の電圧とを受け、その出力ノードが第1トランジスタの制御端子と接続されるオペアンプと、を含み、第2トランジスタに流れる電流を出力してもよい。
【0018】
一実施形態において、制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0019】
(実施形態)
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
図1は、実施形態に係る電流検出回路300の回路図である。電流検出回路300は、ハイサイドトランジスタ402およびローサイドトランジスタ404を含むプッシュプルのスイッチング回路400とともに使用される。ハイサイドトランジスタ402は、電源ライン(あるいは入力電圧ライン)INとスイッチングラインSWの間に設けられ、ローサイドトランジスタ404は、スイッチングラインSWと接地ラインGNDの間に設けられる。ハイサイドトランジスタ402およびローサイドトランジスタ404は、ドライバ回路410によって駆動される。スイッチングラインSWには、インダクタ、コイル、リアクトルなどの誘導素子が接続される。
【0023】
スイッチング回路400の出力電流IOUTが、正方向(図中、右向きに流れる)に流れる動作モード(電流ソースモードという)では、ハイサイドトランジスタ402のオン期間中は、入力ラインINからスイッチングラインSWに向かって電流IHが流れ、このときのスイッチングラインSWの電圧は、
VSW=VIN-RON_H×IH
となる。RON_Hは、ハイサイドトランジスタ402のオン抵抗である。
【0024】
また、ローサイドトランジスタ404のオン期間中は、接地ラインGNDからスイッチングラインSWに向かって電流ILが流れ、このときのスイッチングラインSWの電圧は、
VSW=-RON_L×IL
となる。RON_Lはローサイドトランジスタ404のオン抵抗である。
【0025】
電流検出回路300は、ローサイドトランジスタ404に流れる電流ILを検出し、電流ILを示す電流検出信号ISを出力する。
【0026】
電流検出回路300は、キャパシタC31、スイッチ回路310、出力回路320を備える。
【0027】
スイッチ回路310は、キャパシタC31、スイッチングラインSW、接地ラインGNDと接続されており、第1フェーズ(サンプリングフェーズ)φ1と第2フェーズ(ホールドフェーズ)φ2が切りかえ可能に構成される。第1フェーズφ1および第2フェーズφ2は、図示しないコントローラによって制御される。
【0028】
スイッチ回路310は、(i)第1フェーズφ1において、キャパシタC31の第1端n1を接地ラインGNDと接続し、キャパシタC31の第2端n2を、スイッチングラインSWと接続する。
【0029】
またスイッチ回路310は、(ii)第2フェーズφ2において、キャパシタC31の第1端n1をハイインピーダンスとし、キャパシタC31の第2端n2を接地ラインと接続する。
【0030】
スイッチ回路310は、複数のスイッチの組み合わせで構成することができ、複数のスイッチの配置は特に限定されない。
【0031】
出力回路320は、ハイインピーダンス入力を有しており、第2フェーズφ2においてキャパシタC31の第1端n1に発生する電圧VSNSを受け、第1端n1の電圧VSNSにもとづく電流検出信号ISを出力する。出力回路320が生成する電流検出信号ISは、電圧信号であってもよく、この場合、出力回路320は、バッファ(アンプ)であってもよい。また電流検出信号ISは、電流信号であってもよく、この場合、出力回路320は電圧/電流変換回路であってもよい。
【0032】
以上が電流検出回路300の構成である。続いてその動作を説明する。
図2は、第1フェーズφ1における電流検出回路300の等価回路図である。
図3は、第2フェーズφ2における電流検出回路300の等価回路図である。
【0033】
図2を参照する。第1フェーズφ1において、キャパシタC31の第1端n1は接地され、第2端n2に、スイッチングラインSWの電圧V
SWが印加される。これにより、キャパシタC31は、電圧V
SWで充電される。
【0034】
図3を参照する。続く第2フェーズφ2において、キャパシタC31の第2端n2が接地され、第1端n1の電圧V
n1が、検出電圧V
SNSとして後段の出力回路320に出力される。第1端n1の電圧V
n1は、スイッチング電圧V
SWの極性を反転した電圧であり、正電圧となる。出力回路320は、正の検出電圧V
SNSにもとづいて、電流検出信号ISを生成する。出力回路320はハイインピーダンス入力を有するため、第2フェーズφ2の間、キャパシタC31の電荷は保持され、したがって電圧V
n1は一定である。
【0035】
図4は、
図1の電流検出回路300の動作波形図である。ハイサイドトランジスタ402とローサイドトランジスタ404は相補的にオンとなる。実際には、ハイサイドトランジスタ402のオン区間とローサイドトランジスタ404のオン区間の間には、デッドタイムが挿入されるが、ここでは省略している。
【0036】
ローサイドトランジスタ404のオン区間(ローサイドオン区間)TLに着目する。スイッチングラインSWの電圧VSWは、上述したように負電圧であり、
VSW=-RON_L×IL
に従って変化する。
【0037】
ローサイドオン区間TLとなると、電流検出回路300は第1フェーズφ1となる。このとき、キャパシタC31の第1端n1の電圧Vn1は0Vとなり、第2端n2の電圧Vn2は、スイッチングラインSWの電圧VSWと等しく、負電圧となる。キャパシタC31の両端間電圧は、スイッチング電圧VSWの絶対値と等しい。
【0038】
センシングタイミング(時刻t0)において、第2フェーズφ2に切り替わる。第2フェーズφ2となると、キャパシタC31の両端はハイインピーダンスとなるため、電荷が保存される。したがって第2フェーズφ2の間、その両端間電圧は、時刻t0におけるスイッチング電圧VSWの絶対値VSW(SH)と等しい電圧レベルに維持される。第2フェーズφ2では、第2端n2が0Vとなるため、第1端n1の電圧Vn1は、スイッチング電圧VSW(SH)の絶対値を示す正の電圧|VSW(SH)|となり、この電圧Vn1が、検出電圧VSNSとして出力される。
【0039】
以上が電流検出回路300の動作である。この電流検出回路300によれば、キャパシタC31とスイッチ回路310の組み合わせを用いることにより、ローサイドトランジスタ404の電圧降下を、正電圧として検出することができ、電圧降下にもとづく電流検出信号ISを生成できる。
【0040】
続いてスイッチ回路310の構成例を説明する。
図5は、
図1のスイッチ回路310の構成例の回路図である。複数のスイッチSW1~SW4と、ドライバ回路312を含む。第1スイッチSW1は、キャパシタC31の第1端n1と接地ラインGNDの間に設けられる。第2スイッチSW2は、キャパシタC31の第2端n2とスイッチングラインSWの間に設けられる。
【0041】
第3スイッチSW3は、キャパシタC31の第2端n2と接地ラインGNDの間に設けられる。第4スイッチSW4は、その一端がキャパシタC31の第1端n1と接続され、その他端が、スイッチ回路310の出力ノードとなる。
【0042】
ドライバ回路312は第1フェーズφ1において、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオンし、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4をオフとする。またドライバ回路312は第2フェーズφ2において、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をオフし、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4をオンとする。ドライバ回路312には、図示しない上位のコントローラから、電流検出のタイミングを示す制御信号(センス指令)が入力されており、制御信号に応じて、第1フェーズφ1と第2フェーズφ2を切りかえる。
【0043】
図6は、出力回路320の構成例を示す回路図である。
図6の出力回路320は、電圧/電流変換回路322であり、前段からの検出電圧V
SNSを電流信号の電流検出信号ISに変換する。
【0044】
電圧/電流変換回路322は、PMOSトランジスタである第1トランジスタM31、第2トランジスタM32と、抵抗R31と、オペアンプOA31と、を含む。第1トランジスタM31は、第1端(ソース)が電源ラインVDDと接続される。第2トランジスタM32は、第1端が電源ラインVDDと接続され、その制御端子(ゲート)が第1トランジスタM31の制御端子(ゲート)と接続される。
【0045】
抵抗R31は、第1トランジスタM31の第2端(ソース)と接地ラインGNDの間に設けられる。オペアンプOA31は、前段のスイッチ回路310からの検出電圧VSNSと、第1トランジスタM31の第2端(ドレイン)の電圧とを受け、その出力ノードが第1トランジスタM31の制御端子(ゲート)と接続される。第2トランジスタM32に流れる電流が、電流検出信号ISとなる。
【0046】
オペアンプOA31においてイマジナリショートが成り立つから、抵抗R31と第1トランジスタM31の接続ノードの電圧は、検出電圧VSNSと等しくなる。したがって抵抗R31にはVSNS/R31の電流が流れ、この電流が第1トランジスタM31にも流れる。第1トランジスタM31に流れる電流IM31は、第2トランジスタM32によってコピーされ、あるいは必要に応じて増幅されて、出力される。第2トランジスタM32に流れる電流IM32は、検出電圧VSNSに比例する。
【0047】
続いて電流検出回路300の用途を説明する。
【0048】
図7は、DC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、同期整流型の降圧コンバータ(Buckコンバータ)であり、入力端子P1の入力電圧V
INを降圧し、出力端子P2に接続される負荷に電力を供給する。
【0049】
スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタC1、ブートストラップキャパシタC2および制御回路200を備える。制御回路200はひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
【0050】
制御回路200のハイサイドゲート(HG)ピンは、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続され、ローサイドゲート(LG)ピンは、同期整流トランジスタM2のゲートと接続される。スイッチングピンSWは、スイッチングトランジスタM1と同期整流トランジスタM2を接続するスイッチングラインと接続される。接地ピン(GND)は接地される。ブートストラップ(VB)ピンには、ブートストラップキャパシタC2が接続される。フィードバック(FB)ピンには、DC/DCコンバータ100の出力に応じたフィードバック信号が入力される。定電圧出力のDC/DCコンバータ100の場合、フィードバック信号は、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTに応じた信号である。定電流出力のDC/DCコンバータ100の場合、フィードバック信号は、DC/DCコンバータ100の出力電流IOUTに応じた信号である。
【0051】
制御回路200は、パルス変調器202、電流検出回路204、レベルシフタ206、ハイサイドドライバ208、ローサイドドライバ210、ダイオードD1を備える。ダイオードD1は、外付けのブートストラップキャパシタC2とともにブートストラップ回路を形成しており、ダイオードD1のカソードは、VBピンと接続されており、そのアノードには定電圧VREGが印加される。スイッチングトランジスタM1はPチャンネル/PNP型のトランジスタであってもよく、その場合、ブートストラップ回路は省略される。
【0052】
なお、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2は、制御回路200に集積化してもよい。
【0053】
パルス変調器202は、フィードバックピンFBのフィードバック信号VFBが目標レベルに近づくように、パルス変調されるパルス信号を生成する。パルス変調器202の制御方式や構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。たとえばパルス変調器202は、パルス幅変調器であり、フィードバック信号VFBがその目標信号VREFに近づくように、パルス信号のデューティサイクルをフィードバック制御してもよい。あるいはパルス変調器202は、パルス周波数変調器であってもよい。
【0054】
また、パルス変調器202は、電圧モードのコントローラを含んでもよいし、ピーク電流モードあるいは平均電流モードのコントローラを含んでもよい。あるいはパルス変調器202は、ピーク電流モードであってもよい。
【0055】
またパルス変調器202は、リップル制御のコントローラを含んでもよく、具体的にはヒステリシス制御(Bang-Bang制御)方式、ボトム検出オン時間固定方式、ピーク検出オフ時間固定方式のコントローラを含んでもよい。
【0056】
パルス変調器202は、その内部で生成したパルス信号にもとづいて、ハイサイド制御信号HINとローサイド制御信号LINを生成する。
【0057】
レベルシフタ206は、ハイサイド制御信号HINをレベルシフトする。ハイサイドドライバ208は、レベルシフト後のハイサイド制御信号HIN’に応じて、スイッチングトランジスタM1を駆動する。ローサイドドライバ210は、ローサイド制御信号LINに応じて同期整流トランジスタM2を駆動する。
【0058】
電流検出回路204は、同期整流トランジスタM2に流れる電流を検出し、電流検出信号ISを生成する。パルス変調器202が電流モードのコントローラを含む場合、電流検出信号ISは、パルス信号のデューティサイクルや周波数に反映される。あるいは電流検出信号ISは、軽負荷状態の検出や、過電流の検出に利用してもよい。
【0059】
電流検出回路204は、上述の電流検出回路300のアーキテクチャを用いて構成される。スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2は、
図1のハイサイドトランジスタ402およびローサイドトランジスタ404に対応付けることができる。パルス変調器202は、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2のスイッチングと同期して、同期整流トランジスタM2がオンの期間中に、適切なタイミングで、電流センス指令SNSを生成する。電流検出回路204は、電流センス指令SNSに応答して、第1フェーズφ1と第2フェーズφ2を切りかえて、電流検出信号ISを生成する。
【0060】
図8は、DC/DCコンバータ100を備える電子機器700の一例を示す図である。電子機器700は、たとえば、携帯電話端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、タブレット端末、ポータブルオーディオプレイヤなどの電池駆動型デバイスである。電子機器700は、筐体702、電池704、マイクロプロセッサ706およびDC/DCコンバータ100を備える。DC/DCコンバータ100は、その入力端子に電池704からの電池電圧V
BAT(=VIN)を受け、出力端子に接続されるマイクロプロセッサ706に、出力電圧V
OUTを供給する。
【0061】
あるいはDC/DCコンバータ100は、自動車に搭載される電装機器に利用することができ、あるいは、バッテリの充電器などに利用することができる。
【0062】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示、あるいは本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0063】
電流検出回路300の用途は、DC/DCコンバータには限定されず、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むプッシュプル型のスイッチング回路の電流検出に広く適用可能である。
【0064】
たとえばモータを負荷とする、三相インバータやHブリッジ回路のローサイドトランジスタの電流検出に、電流検出回路300を利用することができる。
図9は、モータ駆動システム500の回路図である。
【0065】
モータ502は三相DCモータであり、三相コイルを含む。インバータ504はモータ502と接続される三相インバータであり、3本のレグを含み、各レグはハイサイドトランジスタMHとローサイドトランジスタMLを含む。
【0066】
電流検出回路506は、各相の電流を検出する。コントローラ508は、電流検出回路によって検出される電流にもとづいて、制御信号Sctrlを生成する。ドライバ510は、制御信号Sctrlにもとづいてインバータ504を駆動する。
【0067】
電流検出回路506におけるローサイドトランジスタMLの電流検出に、上述の電流検出回路300を利用することができる。
【0068】
実施形態は、本開示あるいは本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0069】
400 スイッチング回路
IN 入力ライン
SW スイッチングライン
GND 接地ライン
402 ハイサイドトランジスタ
404 ローサイドトランジスタ
410 ドライバ回路
300 電流検出回路
C31 キャパシタ
310 スイッチ回路
312 ドライバ回路
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
SW4 第4スイッチ
320 出力回路
322 電圧/電流変換回路
M31 第1トランジスタ
M32 第2トランジスタ
M33 第3トランジスタ
R31 抵抗
OA31 オペアンプ
100 DC/DCコンバータ
102 ドライバ
104 電流検出回路
M1 スイッチングトランジスタ
M2 同期整流トランジスタ
L1 インダクタ
C1 出力キャパシタ
C2 ブートストラップキャパシタ
P1 入力端子
P2 出力端子
200 制御回路
202 パルス変調器
204 電流検出回路
206 レベルシフタ
208 ハイサイドドライバ
210 ローサイドドライバ
700 電子機器
702 筐体
704 電池
706 マイクロプロセッサ
500 モータ駆動システム
502 モータ
504 インバータ
506 電流検出回路
508 コントローラ
510 ドライバ