(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/72412 20210101AFI20241106BHJP
B62J 27/00 20200101ALI20241106BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241106BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20241106BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20241106BHJP
H04M 1/72421 20210101ALI20241106BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H04M1/72412
B62J27/00
B62J45/00
G08B21/00 U
G08B25/10 A
H04M1/72421
H04M1/00 U
(21)【出願番号】P 2021050273
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 祐史
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176566(JP,A)
【文献】特開2015-110385(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02026287(EP,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017171(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
B62J 27/00
B62J 45/00
G08B 21/00
G08B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末に、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信工程と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定工程と、
前記受信工程で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定工程によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程と、
を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記通信状態判定工程が、前記鞍乗型車両と通信がなされていると判定された場合に、前記無線通信のアンテナ出力を下げる下げ工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記鞍乗型車両の移動速度に応じて、前記無線通信のアンテナ出力を変動させることを特徴とする、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記無線通信のアンテナ出力は、前記鞍乗型車両の移動速度の増加に応じて下がることを特徴とする、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記転倒判定工程では、前記通信が途絶えたと判定された場合に、
前記無線通信のアンテナ出力が最大でない場合には、前記アンテナ出力を上げ、
前記無線通信のアンテナ出力が最大である場合には、前記鞍乗型車両が転倒したと判定することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、所定の通信先に通報の送信を行う通報工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記通報工程による通報の送信のキャンセルを受け付ける受付工程をさらに備えることを特徴とする、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記受付工程は、通報の送信をキャンセルする操作を受け付ける操作オブジェクトを前記携帯端末の表示部に表示する工程であることを特徴とする、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記携帯端末の位置を検知する検知工程をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、前記所定の通報先に検知した前記携帯端末の位置をさらに送信することを特徴とする、請求項6乃至8の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
ウェアラブル端末から前記鞍乗型車両のライダの生体情報を取得する取得工程をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、前記所定の通報先に取得した前記生体情報をさらに送信することを特徴とする、請求項6乃至9の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記転倒判定工程では、前記鞍乗型車両との無線通信の通信強度に応じて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定することを特徴とする、請求項1乃至10の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項12】
鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末において用いられる情報処理方法であって、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信工程と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定工程と、
前記受信工程で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定工程によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程と、
を備えることを特徴とする、情報処理方法。
【請求項13】
鞍乗型車両及び前記鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末を含むシステムであって、
前記携帯端末は、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信手段と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定手段と、
前記受信手段で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定手段によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定手段と、
を備え、
前記鞍乗型車両は、
前記鞍乗型車両の起動時に前記携帯端末と無線通信を確立する通信手段と、
前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を取得する取得手段と、
前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を、前記通信手段を介して前記携帯端末に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の転倒を検知して通報するプログラム、情報処理方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両において、車体の転倒を検知して自動通報する技術が知られている。特許文献1には、転倒発生時であっても通報が必要でない場合に、通報をキャンセルできるキャンセルスイッチに関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、車体の転倒はバイクのセンサによって判断して通信部より通報することになっているが、バイクに通信部を組みこむ場合には、バイク自体に通報可能な通信機能を備えさせる必要が有り、その通信に対して月額料金などのコストが掛かることの課題がある。一方で、バイクに通報機能を設けない場合には、通報を行う外部装置において、より正確にバイクの転倒を検知することが課題となる。
【0005】
本発明の目的は、携帯端末によって鞍乗型車両の転倒を好適に検知することにある。また、携帯端末の通信ユニットを利用して転倒時の通報を行うことにより、通信費を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末に、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信工程と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定工程と、
前記受信工程で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定工程によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程と、
を実行させることを特徴とする、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、携帯端末が転倒を判断して、予め設定している連絡先へ自動的に通報を行うことが可能となる。また、鞍乗型車両に通報を行うための広帯域無線通信のユニットを設ける必要が無く、ライダのスマートフォン等を利用することができ、通信費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の側面図。
【
図6】携帯端末における転倒時の基本フローチャート。
【
図7】鞍乗型車両における転倒時のフローチャート。
【
図8】携帯端末における転倒時処理の詳細なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
各図において、矢印X、Y、Zは互いに直交する方向を示し、X方向は鞍乗型車両の前後方向、Y方向は鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)、Z方向は上下方向を示す。鞍乗型車両の左、右は前進方向で見た場合の左、右である。以下、鞍乗型車両の前後方向の前方または後方のことを単に前方または後方と呼ぶ場合がある。また、鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)の内側または外側のことを単に内側または外側と呼ぶことがある。
【0011】
<第1の実施形態>
<通報システムの全体構成>
以下では本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る通報システムの全体構成を示す図である。本システムは、鞍乗型車両100、携帯端末200、外部機器300、400、及びウェアラブル端末500を含んで構成される。なお、本発明を限定する意図はなく、他の装置が含まれてもよい。
【0012】
本システムは、鞍乗型車両100の転倒を検知して、鞍乗型車両100のライダが所有する携帯端末200が各種情報を収集し、所定の連絡先、例えば緊急連絡先(119番)、知人の携帯端末、情報蓄積サーバなどの外部機器へ移動体通信(4G、5G)などの広帯域無線通信により通報を行う。これらの所定の連絡先は事前に設定可能である。外部機器300は所定の連絡先として設定された知人の携帯端末を示し、外部機器400は例えば119番によって接続される消防署の端末や、病院等の端末を示す。
【0013】
携帯端末200は、Bluetooth(登録商標)ユニット103を介した無線通信(ここではBluetooth通信)によって鞍乗型車両100との通信を行い、この無線通信が途絶えた場合に鞍乗型車両が転倒したと判断する。なお、携帯端末200は、この判断を鞍乗型車両100の走行中に行うため、鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信し、受信した移動速度が所定の速度以上である場合に上述の判断を行う。転倒したと判断した場合には携帯端末200は、鞍乗型車両100、ウェアラブル端末500や自装置から各種情報を取得して、所定の連絡先に転倒した旨と、取得した情報とを通知する。ウェアラブル端末500は、鞍乗型車両100のライダが身に着けているスマートウォッチ等であり、例えばライダの心拍、血圧、心電、血中酸素等の生体情報を検知することができ、検知した生体情報を携帯端末200へ無線通信(例えば、Bluetooth通信)により送信する。
【0014】
このように、本システムでは、携帯端末200が各種情報を収集し、鞍乗型車両100の転倒を判断し、広帯域無線通信により通報を行う。これにより、鞍乗型車両100に広帯域無線通信を行うためのユニットを別途設ける必要がなく、好適に通報を行うことができる。
【0015】
<鞍乗型車両の概要>
図2は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両100の右側の側面図、
図3は鞍乗型車両100の正面図である。
【0016】
鞍乗型車両100は、長距離の移動に適したツアラー系の自動二輪車であるが、本発明は他の形式の自動二輪車を含む各種の鞍乗型車両に適用可能であり、また、内燃機関を駆動源とする車両のほか、モータを駆動源とする電動車両にも適用可能である。以下、鞍乗型車両100のことを車両100と呼ぶ場合がある。また、本実施形態では、車両の一例として二輪の鞍乗型車両を例に説明するが、本発明を限定する意図はなく例えば四輪駆動車両など種々の車両に適用可能である。
【0017】
車両100は、前輪FWと後輪RWとの間にパワーユニット2を備える。パワーユニット2は本実施形態の場合、水平対向六気筒のエンジン21と変速機22とを含む。変速機22の駆動力は不図示のドライブシャフトを介して後輪RWに伝達され、後輪RWを回転する。
【0018】
パワーユニット2は車体フレーム3に支持されている。車体フレーム3は、X方向に延設された左右一対のメインフレーム31を含む。メインフレーム31の上方には、燃料タンク5やエアクリーナボックス(不図示)が配置されている。燃料タンク5の前方には、ライダに対して各種の情報を表示する電子画像表示装置等を備えたメータパネルMPが設けられている。
【0019】
メインフレーム31の前側端部には、ハンドル8によって回動される操向軸(不図示)を回動自在に支持するヘッドパイプ32が設けられている。メインフレーム31の後端部には、左右一対のピボットプレート33が設けられている。ピボットプレート33の下端部とメインフレーム31の前端部とは左右一対のロワアーム(不図示)により接続され、パワーユニット2はメインフレーム31とロワアームとに支持される。メインフレーム31の後端部には、また、後方へ延びる左右一対のシートレール(不図示)が設けられており、シートレールはライダが着座するシート4aや同乗者が着座するシート4b及びリアトランク7b等を支持する。
【0020】
ピボットプレート33には、前後方向に延びるリアスイングアーム(不図示)の前端部が揺動自在に支持されている。リアスイングアームは、上下方向に揺動可能とされ、その後端部に後輪RWが支持されている。後輪RWの下部側方には、エンジン21の排気を消音する排気マフラ6がX方向に延設されている。後輪RWの上部側方には左右のサドルバック7aが設けられている。
【0021】
メインフレーム31の前端部には、前輪FWを支持するフロントサスペンション機構9が構成されている。フロントサスペンション機構9は、アッパリンク91、ロワリンク92、フォーク支持体93、クッションユニット94、左右一対のフロントフォーク95を含む。
【0022】
アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれメインフレーム31の前端部に上下に間隔を開けて配置されている。アッパリンク91及びロワリンク92の各後端部は、メインフレーム31の前端部に設けられた支持部31a、31bに揺動自在に連結されている。アッパリンク91及びロワリンク92の各前端部は、フォーク支持体93に揺動自在に連結されている。アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれ前後方向に延びるとともに実質的に平行に配置されている。
【0023】
クッションユニット94は、コイルスプリングにショックアブソーバを挿通した構造を有し、その上端部は、メインフレーム31に揺動自在に支持されている。クッションユニット94の下端部は、ロワリンク92に揺動自在に支持されている。
【0024】
フォーク支持体93は、筒状をなすとともに後傾している。フォーク支持体93の上部前部には、アッパリンク91の前端部が回動可能に連結されている。フォーク支持体93の下部後部には、ロワリンク92の前端部が回動可能に連結されている。
【0025】
フォーク支持体93には操舵軸96がその軸回りに回転自在に支持されている。操舵軸96はフォーク支持体93を挿通する軸部(不図示)を有する。操舵軸96の下端部にはブリッジ(不図示)が設けられており、このブリッジには左右一対のフロントフォーク95が支持されている。前輪FWはフロントフォーク95に回転自在に支持されている。操舵軸96の上端部は、リンク97を介して、ハンドル8によって回動される操向軸(不図示)に連結されている。ハンドル8の操舵によって操舵軸96が回転し、前輪FWが操舵される。
【0026】
車両100は、前輪FWを制動するブレーキ装置19Fと後輪RWを制動するブレーキ装置19Fとを備える。ブレーキ装置19F、19Rはブレーキレバー8a又はブレーキペダル8bに対するライダの操作により作動可能に構成されている。ブレーキ装置19F、19Rは、例えば、ディスクブレーキである。ブレーキ装置19F、19Rを区別しない場合は、これらを総称してブレーキ装置19と呼ぶ。
【0027】
車両100の前部には、車両100の前方に光を照射するヘッドライト11が配置されている。本実施形態のヘッドライト11は右側の光照射部11Rと、左側の光照射部11Lとを左右対称に備える二眼タイプのヘッドライトユニットである。しかし、一眼タイプや三眼タイプのヘッドライユニット、或いは、左右非対称の二眼タイプのヘッドライトユニットも採用可能である。
【0028】
車両100の前部はフロントカウル12で覆われ、車両100の前側の側部は左右一対のサイドカウル14で覆われている。フロントカウル12の上方にはスクリーン13が配置されている。スクリーン13は走行中にライダが受ける風圧を軽減する風防であり、例えば、透明な樹脂部材で形成されている。
【0029】
フロントカウル12の側方には左右一対のサイドミラーユニット15が配置されている。サイドミラーユニット15にはライダが後方を視認するためのサイドミラー(不図示)が支持されている。
【0030】
本実施形態の場合、フロントカウル12は、カウル部材121~123により構成されている。カウル部材121はY方向に延在してフロントカウル12の本体を構成し、カウル部材122はカウル部材121の上側の部分を構成している。カウル部材123はカウル部材121から下方向に離間して配設されている。
【0031】
カウル部材121とカウル部材123との間、及び、左右一対のサイドカウル14の間に、ヘッドライト11を露出させる開口が形成され、この開口の上縁はカウル部材121により画定され、下縁はカウル部材123により画定され、左右の側縁はサイドカウル14で画定される。
【0032】
フロントカウル12の背後には車両100の前方の状況を検知する検知デバイスとしてとして撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bが配置されている。レーダーユニット16Bは例えばミリ波レーダである。撮像ユニット16AはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子と、レンズ等の光学系とを含み、車両100の前方の画像を撮像する。撮像ユニット16Aはフロントカウル12の上部を構成するカウル部材122の背後に配置されている。カウル部材122には、これを貫通する開口122aが形成されており、撮像ユニット16Aは開口122aを通して車両100の前方の画像を撮像する。
【0033】
レーダーユニット16Bはカウル部材121の背後に配置されている。カウル部材121の存在により、車両100の正面視で検知ユニット(外界監視機器)16の存在を目立たなくすることができ、車両100の外観が悪化することを回避することができる。カウル部材121は樹脂等、電磁波の透過が可能な材料で構成される。
【0034】
撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bは、車両正面視でフロントカウル12のY方向の中央部に配置されている。撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bを車両100のY方向の中央部に配置することで、車両100の前方の左右に、より広い撮像範囲、検知範囲を得ることができ、車両100の前方の状況をより見落としなく検知できる。また、一つの撮像ユニット16A及び一つのレーダーユニット16Bにより車両100の前方を、左右均等に監視することができることから、撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bをそれぞれ複数設けずに、一つずつ設けた構成において、特に有利である。
【0035】
<通報システムの制御構成>
図4は本実施形態に係る通報システムの制御構成を示すブロック図であり、後述する説明との関係で必要な構成のみが図示されている。本システムは、鞍乗型車両100と、携帯端末200と、外部機器300、400、600と、ウェアラブル端末500を含んで構成される。なお、これらの構成は一例であり、本発明を限定する意図はない。例えば、鞍乗型車両100、携帯端末200、及び1つの外部機器のみで構成されてもよいし、さらに多くの外部機器が含まれてもよい。
【0036】
鞍乗型車両100は制御部(ECU)101、転倒検知センサ102、Bluetoothユニット103、記憶部104、クラクション105、車速センサ106、GPS107及び、メータパネルMPを備える。制御部101は、CPUに代表されるプロセッサを含む。記憶部104にはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。なお、記憶部104は制御部101の内部に組み込まれてもよい。制御部101は、他のコンポーネント102~106とバス等の信号線で接続され、信号を送受することができ、鞍乗型車両100の全体を制御する。
【0037】
メータパネルMPは、ライダに対する鞍乗型車両100の各種のパラメータや警告表示を行う。本実施形態では、少なくとも通報の停止操作を行うための操作オブジェクト(第2の操作オブジェクト)をメータパネルMPに表示する。また、ヘルメットにマイクとスピーカが内蔵されているものであれば、通報の停止操作を音声によってガイドし、音声入力により受け付けるように制御するものであってもよい。
【0038】
転倒検知センサ102は、鞍乗型車両100の傾きを検知する振り子部材を内蔵し、振り子部材が60~70度の角度ほど傾くとスイッチが入り信号を出力する。これらの信号が制御部101に入力されると、制御部101は鞍乗型車両100が転倒したと判断し、エンジンを停止する。また、制御部101は、Bluetoothユニット103を介して鞍乗型車両100が転倒したことを携帯端末200へ通知する。
【0039】
Bluetoothユニット103は、無線通信を行うユニットの一例であり、無線通信(Bluetooth通信)を介して携帯端末200と信号を送受信する。Bluetoothユニット103は鞍乗型車両100の起動時に起動され、携帯端末200と通信接続を行う。無線通信は、例えば、無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth、NFCや赤外線通信など、所定範囲内で通信可能な通信方法であればよい。通信範囲としては、例えば、鞍乗型車両100から例えば半径5m~20mを含む領域として設定され、鞍乗型車両100が転倒してライダが鞍乗型車両100と離れた場合であっても所定範囲内において携帯端末200との通信を確保することが望ましい。
【0040】
クラクション105は、本実施形態において、Bluetoothユニット103による携帯端末200との無線通信が途絶えた(すなわち、鞍乗型車両100の転倒を検知した)ことに応じて、鳴動して警報を行う。なお、警報においては音のみの例について説明するが、本発明を限定する意図はなく、クラクション105による警報に代えて又は追加して、例えばヘッドライト11やウィンカーなどを点灯又は点滅させるようにしてもよい。本実施形態に係る制御部101は、後述する制御部201と同様に、RSSI値で測定された通信強度が所定の閾値以下となった場合に無線通信が途絶えたと判断する。
【0041】
車速センサ106は、車両100の車速を検知する。車速センサ106は例えばフロントフォーク95に支持され、前輪FWの回転量を検知するセンサである。車速センサ106で検知された車速は、記憶部104へ記憶される。記憶部104はリングバッファを有しており、新たな車速情報が古い車速情報に上書きされる構成である。記憶部104に記憶された車速情報は、無線通信を介して周期的又は不定期に携帯端末200へ送信される。また、車速センサ106は、その他の鞍乗型車両100に関する速度、例えば車両100の前後方向、左右方向、上下方向の加速度を検知する加速度センサや、車両100のロール方向、ピッチ方向、ヨー方向の角速度を検知する角速度センサを有し、各種速度情報を記憶部104へ記憶してもよい。これらの鞍乗型車両100の速度、加速度、角速度をまとめて車速に関する情報と称するが、本実施形態の各処理においては基本的に鞍乗型車両100の移動速度を示す情報が用いられる。鞍乗型車両100の速度を示す情報は、上記移動速度について上述したように、無線通信を介して周期的又は不定期に携帯端末200へ送信され、通信状態の判定を行うか否かの判断基準として用いられる。なお、携帯端末200が不図示の速度センサを備え、その速度センサによって測定された移動速度が鞍乗型車両100の移動速度として用いられてもよい。
【0042】
GPS107は、鞍乗型車両100の現在位置を取得する。本実施形態においては、携帯端末200が備えるGPS205が携帯端末200の現在位置を取得し、転倒判定がなされた場合に行われる通報に、取得した現在位置を示す情報を含ませることができる。ここで、その携帯端末200の現在位置の代わりに、GPS107が取得した鞍乗型車両100の現在位置が用いられてもよい。この場合、本システムでは転倒判定がなされた際には携帯端末200と鞍乗型車両100との通信は途絶えているため、鞍乗型車両100の現在位置を示す情報が周期的又は不定期に携帯端末200に送信され、転倒判定の直前に受信した情報が用いられる。
【0043】
次に、携帯端末200の構成について説明する。携帯端末200は、鞍乗型車両100のライダが所有するスマートフォン等の携帯機器を示す。ここでは本発明を実施する上で必要な構成を主に説明する。従って、以下で説明する構成に加えてさらに他の構成が含まれてもよい。携帯端末200は、制御部201、記憶部202、外部通信機器203、表示操作部204、スピーカ208、及び速度センサを備える。外部通信機器203は、GPS205、無線機器206、及び通報部207を含む。
【0044】
制御部201は、CPUに代表されるプロセッサを含む。記憶部202にはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。なお、記憶部202は制御部201の内部に組み込まれてもよい。制御部201は、他のコンポーネント203、204、208とバス等の信号線で接続され、信号を送受することができ、携帯端末200の全体を制御する。
【0045】
制御部201は、外部通信機器203の通報部207を用いて広域ネットワークを介して外部機器300、400、600の少なくとも1つへ通報を行う。また、制御部201は、GPS205、及び無線機器206を介して、各種情報を取得する。GPS205は、携帯端末200の現在位置を取得する。これにより、例えば、通報を行う際に位置情報を付与することができる。無線機器206は、無線通信を介して、鞍乗型車両100やウェアラブル端末500と信号を送受することができる。無線通信は、例えば、無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth、NFCや赤外線通信など、所定範囲内で通信可能な通信方法であればよい。通信範囲としては、例えば、鞍乗型車両100から例えば半径5m~20mを含む領域として設定されうる。また、鞍乗型車両100との通信接続は、鞍乗型車両100の起動時に行われる。
【0046】
本実施形態においては、制御部201は、無線機器206による鞍乗型車両100との通信が途絶えたと判定された場合に、鞍乗型車両100が転倒したと判断する。制御部201は、例えば無線機器206による鞍乗型車両100からの信号の通信強度(電波強度)をRSSI値で測定し、測定したRSSI値が所定の閾値以下となった場合に通信が途絶えたと判定してもよい。ここで閾値の値は特に限定されず、例えば-60dBmであってもよく、-80dBmであってもよく、-90dBmであってもよく、所望の値を設定することができる。上述のように、鞍乗型車両100の制御部101においても、制御部101と同様に無線通信の途絶の判定が行われるが、通信状態の悪化を検知できるのであれば特にこのような測定方法には限定されず、また制御部201と制御部101とで異なる方法による判定が行われてもよい。
【0047】
ここでは、無線機器206のアンテナ出力が高いほど通信が途絶えにくく、アンテナ出力が低いほど通信は途絶えやすい。そのことに鑑みて、制御部201は、状況に応じたアンテナ出力の調整を行ってもよい。例えば制御部201は、一度携帯端末200と鞍乗型車両100との通信が確立された場合に、それ以降に生じる転倒をより正確に検知するため、アンテナ出力を下げてもよい。また例えば、制御部201は、鞍乗型車両100の移動速度に応じてアンテナ出力を変動させてもよい。この場合、移動速度が速いほど転倒時に危険な状態になりやすいという観点から、制御部201は鞍乗型車両100の移動速度が速いほどアンテナ出力を下げることができる。さらに例えば、制御部201は、通信が途絶えたと判定された場合に、無線通信のアンテナ出力が最大でなければアンテナ出力を上げてから再度通信が途絶えているかどうかの判定を行い、アンテナ出力が最大であれば鞍乗型車両100が転倒しているとの判定をしてもよい。このような処理によれば、通信が途絶えたと判定されてから即転倒の判定を行わず、確認できる最大までアンテナ出力を上げた上でなお通信が途絶えている場合に転倒が生じていると判定することができる。以下、単純にアンテナ出力と記載する場合、無線機器206による無線通信のアンテナ出力を指すものとする。
【0048】
表示操作部204は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイであり、各種表示を行うとともに、ユーザ操作を受け付けることができる。表示操作部204には、転倒を検知した際に通報を行うことを停止するための操作オブジェクトが選択可能に表示される。当該操作オブジェクトは、上述したように鞍乗型車両100のメータパネルMPにも表示されてもよく、転倒が発生したもののライダが問題なく動ける場合に通報を停止するものである。なお、ユーザ操作を受け付けるのは操作オブジェクトを介するものには限定されず、例えば操作オブジェクトを操作する代わりに、通信の回復した鞍乗型車両100が転倒状態から起こされたことを転倒検知センサ102が検知した場合に停止するようにしてもよい。また、通報の停止操作を行うことを許容する期間は、転倒時の車速(移動速度)に応じて動的に変化させてもよい。例えば、車速が0~5km以内であればライダが負傷している可能性は低く、鞍乗型車両100がライダ自身によって起こされる可能性が高いため、走行中に転倒した場合と比較してより長い期間が停止操作を行う期間として設けられてもよい。また例えば、制御部201は、不図示のマイクを介した音声入力によって通報の停止指示を受け付けてもよく、鞍乗型車両100の備える機械式スイッチ(例えば、ハンドルスイッチ)の押下などの操作を検知したことに応じて通報の停止指示を受け付けてもよい。
【0049】
スピーカ208は、転倒検知時において警報音を出力する。スピーカ208による警報は、ライダによる上記停止操作によって停止されてもよいし、別途の停止ボタン等の操作入力により停止されてもよい。なお、警報音は、転倒時において表示操作部204に後述する通報の停止画面が表示されると、ライダにその旨を知らせるために表示と同時に出力されることが望ましく、さらには最大音量で出力されることが望ましい。音量については事前に設定可能な構成としてもよい。また、警報音だけでなく、音声合成によるメッセージをスピーカ208により再生してもよい(例えば、アラーム音の後に「バイクで転倒事故発生!助けてください」など)。音声合成であれば、より明確に周囲に対して何が起きているかを伝えることができる。
【0050】
外部機器300は、予め設定された連絡先である通報先の端末を示す。外部機器300は、例えばスマートフォン等の携帯端末であり、ライダが事前に登録した知人が所有する端末である。制御構成については、携帯端末200と同様であるため詳細な構成については省略する。外部機器300の表示操作部301には、携帯端末200によって通報された内容が表示される。表示内容の詳細については後述する。
【0051】
外部機器400は、通報部207による通報が着信する、例えば緊急連絡先(119番など)の端末である。ここで、通報部207は外部機器400が音声着信に応答した場合において、自動音声を出力するようにしてもよい。これは転倒時のライダが何らかの原因で通話不可能な場合が想定されるためである。例えば、通報部207はデフォルト設定として自動音声による通話を行い、表示操作部204等に自動音声からライダ自身が通話を行うための切替ボタンを表示させるようにしてもよい。当該切替ボタンが操作されると、自動音声が終了し、通常の音声通話に切り替わる。自動音声の内容には、例えば転倒事故の発生、発生場所、発生時刻やライダの生体情報などが含まれる。
【0052】
外部機器600は、本システムにおけるデータサーバの一例であり、携帯端末200から送信される各種情報を蓄積する機器である。これらの情報は、事故の調査等に利用されるものである。通信方式としては例えば電子メールの形式であってもよく、その他の情報を送信することが可能な通信方式であってもよい。受信した情報は、データ記憶部601に記憶される。
【0053】
ウェアラブル端末500はライダが装着しているスマートウォッチなどのウェアラブル端末であり、ライダの生体情報を検知して携帯端末200へ送信する。ウェアラブル端末500は、生体情報検知センサ501と、データ送信部502を備える。生体情報検知センサ501は、ウェアラブル端末500を装着しているライダの心拍、血圧、心電、血中酸素等の生体情報を検知する。これらの生体情報は、データ送信部502によって定期的に携帯端末200へ送信されてもよいし、鞍乗型車両100の転倒時における携帯端末200からの要求に従ってその際の最新データを送信するようにしてもよい。なお、携帯端末200から要求があった場合には、その際の最新データに加えて、その後の一定期間について生体情報を検知して送信することが望ましい。これにより、転倒時におけるライダの体調変化等を検知することができる。
【0054】
<本システムの通信接続>
図5は本実施形態に係る通報システムにおける各装置の通信接続関係を示す図である。
図5に示すように、携帯端末200が本通報システムの中心的な役割を担う。
【0055】
携帯端末200は、Bluetooth通信等の無線通信(第1の通信)を鞍乗型車両100のBluetoothユニット103と確立する。当該通信は、鞍乗型車両100の起動時に接続が確立され、走行中の移動速度を示す情報や、転倒検知センサ102によって転倒が検知された際にその旨や各種情報を送受するために用いられる。また、携帯端末200は、Bluetooth通信等の無線通信(第3の通信)をウェアラブル端末500と確立する。当該通信は、ウェアラブル端末500の起動時に接続が確立され、ライダの生体情報等が送受される。
【0056】
さらに、携帯端末200は、広帯域無線通信(第2の通信)を介して、各外部機器300、400、600との通信を行うことができる。携帯端末200は、例えば外部機器400へ緊急通報を行うとともに、電子メール等により外部機器300や外部機器600へ位置情報、生体情報、及び車速などの各種情報を通知する。
【0057】
<携帯端末の処理手順>
図6は本実施形態に係る携帯端末200における転倒時の基本フローの処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。本実施形態に係る携帯端末200は、周期的に又は不定期に鞍乗型車両100の移動速度を示す情報を取得しており、無線機器206の通信が途絶えた場合にS604以降の処理を進める。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0058】
まずS601で携帯端末200の制御部201は、鞍乗型車両100の起動時において、無線機器206を介して鞍乗型車両100のBluetoothユニット103と通信接続を確立する。続いて、S602で制御部201は、S601で接続した無線通信接続を介して、鞍乗型車両100から情報を受信したかどうかを判断する。情報を受信していなければS602の判断を繰り返し行う。ここで制御部201は、鞍乗型車両100の移動速度を示す情報を受信し、S603へと処理を進める。S603で制御部201は、鞍乗型車両100の移動速度が所定値以上であるか否かを判断する。ここでの所定値とは、任意の速度値を設定できるものであるが、例えば走行中に発生した転倒を検知するように時速10kmとしてもよい。所定値以上であれば処理はS604に進み、所定値以上でなければ処理をS602へと戻す。すなわち、S602~S603において制御部201は、転倒の検知を待機する。
【0059】
S604で制御部201は、鞍乗型車両100の転倒検知のために、鞍乗型車両100との通信が途絶えたことを検知する。転倒を検知する際に行う処理については
図8Bを用いて後述する。S605で制御部201は、アンテナ出力が最大であるか否かを判断する。アンテナ出力が最大である場合には処理はS607へと進み、そうでない場合には処理はS606へと進む。S606で制御部201は、アンテナ出力を上げて処理をS602~S603の転倒検知待ちの状態へと戻す。S607で制御部201は、転倒時処理を実行し、処理を終了する。転倒時処理の詳細については
図8Aを用いて後述する。
【0060】
また、鞍乗型車両100と携帯端末200との間で通信が途絶えたとしても、転倒して通信が途絶えたのか、それ以外の理由で通信が途絶えたのか判定できない。この場合、鞍乗型車両100と携帯端末200との間で通信が途絶え場合において、それ以後、所定時間の間、携帯端末200の移動速度が所定値以上の場合には、鞍乗型車両100と携帯端末200が一緒に移動していると考えられることから、転倒していないと判断することが出来る。
【0061】
<鞍乗型車両の転倒時の処理手順>
図7は本実施形態に係る鞍乗型車両100における転倒時の処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部101のCPUがROMや記憶部104に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0062】
まずS701で鞍乗型車両100の制御部101は、鞍乗型車両100の起動時において、Bluetoothユニット103を介して携帯端末200と無線通信の通信接続を確立する。続いて、S702で制御部101は、車速センサ106によって取得された鞍乗型車両100の移動速度を記憶部104へ格納するとともに、無線通信を介して携帯端末200へ送信する。当該送信は周期的であっても不定期であってもよい。
【0063】
次に、S703で制御部101は、携帯端末200との通信接続が途絶えたか否かを判断する。途絶えていなければ処理はS702へと戻る。一方で、携帯端末200との通信接続が途絶えていれば、処理はS704へと進み、制御部101は、車両転倒時の処理を行い、処理を終了する。車両転倒時の処理は、例えばクラクション105を鳴動させる警報処理など、鞍乗型車両100の転倒が発生したことを周囲に通知する処理である。クラクション105を鳴動させた場合、制御部101は、鞍乗型車両100のメータパネルMPに表示される操作オブジェクト(後述する停止ボタン1003と同様)の操作に応じてその鳴動を停止させてもよい。また制御部101は、転倒の検知から携帯端末200との通信が回復した場合に、後述する
図10に示されるような携帯端末200のGUIを介した通報の停止操作によって、クラクションの鳴動処理を終了してもよい。
【0064】
<携帯端末の転倒時処理の詳細>
図8は本実施形態に係る携帯端末200における上記S607の転倒時処理の詳細手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0065】
S604で鞍乗型車両100との通信が途絶えたことを検知すると、S801で制御部201は、スピーカ208によって警報音を出力する。また、S802で制御部201は、予め設定された転倒時の連絡先の情報を記憶部202から取得する。さらに、S803で制御部201は、後述する操作オブジェクトを含む通報停止画面1000を表示操作部204に表示する。通報停止画面1000の詳細については
図10を用いて後述する。なお、S801乃至S803の処理の順序は特に限定する意図はなく任意の順序でよい。
【0066】
次に、S804で制御部201は、上記操作オブジェクトが操作されることにより、通報の停止操作を受け付けたかどうかを判断する。停止操作を受け付けた場合はS805に進み、そうでない場合はS808に進む。当該判断は、例えば通報停止画面1000の表示を開始してから、所定時間(例えば、30秒など)が経過するまでの間に停止操作を受け付けなければ停止操作を受け付けなかったと判断し通報処理へ移行する。また、上記所定時間については、上述したように、転倒直前の車速に応じて変更してもよい。なお、ここでは通報の停止指示を行うための操作オブジェクトの操作について説明しているが、これに限らず例えばライダが転倒した鞍乗型車両100を立て直した場合にも停止操作を受け付けたものとしてS808の処理を実行してもよい。鞍乗型車両100が立て直されたことについては、例えば、鞍乗型車両100との通信が回復した場合に、転倒検知センサ102の信号入力が停止したことをトリガとして判断してもよい。また、停止操作は鞍乗型車両100、に設けられたボタンの長押しなどで行う様にしてもよい。S808で制御部201は、出力していた警報音の出力を停止し、処理を終了する。
【0067】
一方、S805で制御部201は、ウェアラブル端末500からライダの生体情報を取得する。なお、本通報システムにおいてウェアラブル端末500はオプションであり必須の構成ではない。つまり、ライダがウェアラブル端末500を装着していなければ、S805の処理はスキップされる。続いて、S806で制御部201は、GPS205を介して現在の位置情報を取得する。その後、S807で制御部201は、転倒が発生した旨と、必要に応じて生体情報や位置情報、車速情報などを事前に設定された連絡先に通報し、処理を終了する。なお、複数の連絡先が設定されている場合には、順次通報を行う。これらの通報は、例えば、緊急連絡先である外部機器400、外部機器300、外部機器600の順で優先的に行われる。
【0068】
<設定画面>
図9は、本実施形態に係る携帯端末200で表示される連絡先の設定画面900の一例を示す。設定画面900は表示操作部204に表示される。なお、以下で説明する設定画面900は、携帯端末200からの指示に基づいてメータパネルMPに操作可能に表示されてもよい。
【0069】
設定画面900は、
図9に示すように、緊急連絡先901、ユーザ設定の電話通信の連絡先設定902、及びユーザ設定の電子メールの宛先設定904の設定欄を含んで構成される。各設定欄には、それぞれの連絡先を入力して設定することができる。また、緊急連絡先901には、デフォルト設定として「119」が予め設定されている。設定画面900は、さらに、連絡先設定902と宛先設定904のそれぞれに対応して、追加ボタン903、905を含んで構成される。各追加ボタン903、905が選択されると、連絡先や宛先の設定欄を増やすことができる。
【0070】
また、設定画面900は、OKボタン906と、キャンセルボタン907とを含んで構成される。OKボタン906が選択されると、設定画面900上で設定した連絡先等が決定し、記憶部202に保存される。一方、キャンセルボタン907が選択されると、設定画面900上で設定した連絡先等がキャンセルされ、設定情報は変更されない。
【0071】
<通報停止画面>
図10は、本実施形態に係る携帯端末200で表示される通報停止画面1000の一例を示す。通報停止画面1000は表示操作部204に表示される。なお、以下で説明する通報停止画面1000と同等の画面が、携帯端末200からの指示に基づいてメータパネルMPに操作可能に表示されるものであるが、詳細な説明については省略する。
【0072】
通報停止画面1000は、
図10に示すように、鞍乗型車両100であるバイクの転倒を検知したため、所定時間(ここでは、30秒)経過後において、連絡先1001及び宛先1002に通報を行う旨の表示と、問題がない場合は停止ボタンを選択して通報の停止を促す表示とを含んで構成される。さらに、通報停止画面1000は、停止ボタン1003と、通報ボタン1004とを含む。停止ボタン1003が選択されると、携帯端末200は通報の停止操作を受け付けたと判断し、警報処理及び通報処理を停止して鞍乗型車両100へ停止操作を受け付けた旨を通知する。また、通報ボタン1004が選択されると、携帯端末200は、上記所定時間の経過を待つことなく、通報処理を開始する。なお、停止ボタン1003は第1の操作オブジェクトの一例である。また、鞍乗型車両100のメータパネルMPに表示される第2の操作オブジェクトは、停止ボタン1003と同等のものが表示される。さらに、メータパネルMPには通報ボタン1004に対応するボタンが表示されてもよい。また、停止ボタン1003は、上記所定時間が経過した後も表示が継続されることが望ましい。これは、救助者が到着した際に操作することによって警報を停止するためである。
【0073】
<通報画面>
図11は、本実施形態に係る外部機器300で表示される通報画面1100の一例を示す。通報画面1100は表示操作部301に表示される。なお、以下で説明する通報画面1100は、他の外部機器で表示されてもよい。
【0074】
通報画面1100は、例えば設定画面900のユーザ設定で事前に設定された宛先設定904で設定されたアドレスへ通知され、当該外部機器300において表示された画面である。なお、外部機器300への通知方法として種々の通知方法を適用することができる。例えば、外部機器300へは通報画面1100の画面情報が送信されてもよいし、転倒した旨とともに、位置情報、生体情報等の各種情報のみが送信されてもよい。また、外部機器300においては、本通報システムに関連するアプリケーションがインストールされていれば、それらの情報を利用して当該アプリケーション上で通報画面1100を表示してもよいし、任意のブラウザ画面上で表示するようにしてもよい。また、メッセージや情報のみを電子メールで受信して、メーラーのアプリケーション上で表示するようにしてもよい。或いはSNSアプリケーション上で表示するようにしてもよい。
【0075】
通報画面1100は、鞍乗型車両100のライダが転倒した旨のメッセージ1101、転倒位置を示すマップ1102、ライダの生体情報1103、及びライダへの音声発信ボタン1104を含んで構成される。これらの構成要素は表示する上記アプリケーションに応じてそれぞれを取捨選択され得る。
【0076】
マップ1102には、転倒位置を示すマップ上のマーク1105、転倒直前の車速1106、及び転倒位置の詳細情報1107が表示される。生体情報1103には、例えば、心電図や心拍数、血圧、血中酸素が表示される。音声発信ボタン1104を選択すると、外部機器300は携帯端末200へ音声発信を行う。
【0077】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、少なくとも以下のプログラム、情報処理方法及びシステムを開示する。
【0078】
1.上記実施形態のプログラムは、
鞍乗型車両(例えば100)と無線通信が可能な携帯端末(例えば200)に、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信工程(例えばS602)と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定工程(例えばS604)と、
前記受信工程で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定工程によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程(例えばS604)と、
を実行させることを特徴とする。
この実施形態によれば、携帯端末200と鞍乗型車両100との通信が途絶えたか否かに応じて、携帯端末200において鞍乗型車両100の転倒を検知することができる。また、携帯端末200で転倒を判断することができるため、スマートフォン等の携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うこともできる。
【0079】
2.上記実施形態では、
前記通信状態判定工程が、前記鞍乗型車両と通信がなされていると判定された場合に、前記無線通信のアンテナ出力を下げる工程をさらに含む。
この実施形態によれば、通信を開始してからアンテナの出力を下げることにより、より正確に転倒を検知することが可能となる。
【0080】
3.上記実施形態では、
前記鞍乗型車両の移動速度に応じて、前記無線通信のアンテナ出力を変動させる。
この実施形態によれば、鞍乗型車両100の移動速度による危険性に応じて、転倒検知の正確性を変動させることが可能となる。
【0081】
4.上記実施形態では、
前記無線通信のアンテナ出力は、前記鞍乗型車両の移動速度の増加に応じて下がる。
この実施形態によれば、鞍乗型車両100の移動速度が増加する、すなわち転倒による危険性が増加するにしたがって、転倒検知の正確性を向上させることが可能となる。
【0082】
5.上記実施形態では、
前記転倒判定工程で、前記通信が途絶えたと判定された場合に、
前記無線通信のアンテナ出力が最大でない場合には、前記アンテナ出力を上げ(例えばS606)、
前記無線通信のアンテナ出力が最大である場合には、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する(例えばS607)。
この実施形態によれば、通信が悪化した場合にアンテナの出力を上げることにより、無線通信を維持できるように努め、なお維持できない場合に転倒を検知することが可能となる。
【0083】
6.上記実施形態では、
前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、所定の通信先に通報の送信を行う工程(例えばS807)をさらに含む。
この実施形態によれば、携帯端末200で鞍乗型車両100の転倒を検知した際に、携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うことができる。よって、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
【0084】
7.上記実施形態では、
前記通報工程による通報の送信のキャンセルを受け付ける工程(例えばS803)をさらに含む。
この実施形態によれば、携帯端末200の通信機能による通報が必要ない場合には、その通報をキャンセルすることが可能となる。
【0085】
8.上記実施形態では、
前記受付工程は、通報の送信をキャンセルする操作を受け付ける操作オブジェクトを前記携帯端末の表示部に表示する工程(例えばS803)をさらに備える。
この実施形態によれば、通報を停止するための操作オブジェクトが携帯端末200の操作表示部に表示されるため、通報の必要のない転倒においては通報をキャンセルすることが可能となる。
【0086】
9.上記実施形態では、
前記携帯端末の位置を検知する検知工程(例えばS806)をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、前記所定の通報先に検知した前記携帯端末の位置をさらに送信する。
この実施形態によれば、携帯端末200の位置情報を送信するため、転倒位置の特定が円滑に行われることが可能となる。
【0087】
10.上記実施形態では、
ウェアラブル端末から前記鞍乗型車両のライダの生体情報を取得する取得工程(例えばS805)をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したとの判定がある場合に、前記所定の通報先に取得した前記生体情報をさらに送信する
この実施形態によれば、転倒時のライダの生体情報を通報先に知らせることができ、通知先において緊急性を判断することができる。
【0088】
11.上記実施形態では、
前記転倒判定工程では、前記鞍乗型車両との無線通信の通信強度に応じて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する
この実施形態によれば、転倒の判断基準として無線通信の通信強度を用いることが可能となる。
【0089】
12.上記実施形態の情報処理方法は、
鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末において用いられる情報処理方法であって、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信工程(例えばS602)と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定工程(例えばS603)と、
前記受信工程で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定工程によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程(例えばS603)と、
を備える。
この実施形態によれば、携帯端末200と鞍乗型車両100との通信が途絶えたか否かに応じて、携帯端末200において鞍乗型車両100の転倒を検知することができる。また、携帯端末200で転倒を判断することができるため、スマートフォン等の携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うこともできる。
【0090】
13.上記実施形態の鞍乗型車両及び前記鞍乗型車両と無線通信が可能な携帯端末を含むシステムは、
前記鞍乗型車両から前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を受信する受信手段と、
前記鞍乗型車両との通信状態を判定する通信状態判定手段と、
前記受信手段で受信した情報に基づく前記鞍乗型車両の移動速度が所定の速度以上である場合であって、前記通信状態判定手段によって通信が途絶えたと判定された場合に、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定手段と、
を備える携帯端末と、
前記鞍乗型車両は、
前記鞍乗型車両の起動時に前記携帯端末と無線通信を確立する通信手段と、
前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を取得する取得手段と、
前記鞍乗型車両の移動速度を示す情報を、前記通信手段を介して前記携帯端末に送信する送信手段と、
を備える鞍乗型車両と、を備える。
この実施形態によれば、携帯端末200と鞍乗型車両100との通信が途絶えたか否かに応じて、携帯端末200において鞍乗型車両100の転倒を検知することができる。また、携帯端末200で転倒を判断することができるため、スマートフォン等の携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うこともできる。
【0091】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
100:鞍乗型車両、101:制御部、102:転倒検知センサ、103:Bluetoothユニット、104:記憶部、MP:メータパネル、105:クラクション、106;車速センサ、107:GPS、200:携帯端末、201:制御部、202:記憶部、203:外部通信機器、204:表示操作部、205:GPS、206:無線機器、207:通報部、208:スピーカ、209:速度センサ、300:外部機器、301:表示操作部、400:外部機器、500:ウェアラブル端末、501:生体情報検知センサ、502:データ送信部、600:外部機器、601:データ記憶部