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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】エアフィルター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20241106BHJP
   B01D 39/18 20060101ALI20241106BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/18
A61L9/014
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021056722
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153938
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000201881
【氏名又は名称】倉敷繊維加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 紫乃
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284649(JP,A)
【文献】特開2009-190269(JP,A)
【文献】特開2018-061918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-22
B01D 39/00-20
B01D 46/00-64
B01J 20/00-34
B32B 23/00-22
D04H 1/00-76
D21H 21/00-56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子、固体酸粒子及び固体塩基粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子(A)、樹脂バインダー(B)及びセルロースナノファイバー(C)の混合物が通気性基材(D)に固着されてなるエアフィルターであって、
粒子(A)の平均粒子径が0.1μm以上200μm以下であり、
樹脂バインダー(B)が、水性エマルジョン中の固形分に由来するものであり、
セルロースナノファイバー(C)が、平均径が1~100nmでアスペクト比(繊維長/繊維径)が100以上のセルロース繊維であり、かつ
樹脂バインダー(B)に対するセルロースナノファイバー(C)の質量比(C/B)が0.001~0.1である、エアフィルター
【請求項2】
通気性基材(D)に対する粒子(A)の質量比(A/D)が0.05~5である請求項1に記載のエアフィルター。
【請求項3】
粒子(A)に対する樹脂バインダー(B)の質量比(B/A)が0.02~0.5である請求項1又は2に記載のエアフィルター。
【請求項4】
粒子(A)が活性炭粒子である請求項1~のいずれかに記載のエアフィルター。
【請求項5】
通気性基材(D)が不織布である請求項1~のいずれかに記載のエアフィルター。
【請求項6】
プリーツ加工されてなる請求項1~のいずれかに記載のエアフィルター。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のエアフィルターを用いたフィルターモジュール。
【請求項8】
粒子(A)と、樹脂バインダー(B)の水性エマルジョンと、セルロースナノファイバー(C)との混合液を、通気性基材(D)に塗布してから乾燥する、請求項1~のいずれかに記載のエアフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルター及びその製造方法に関する。また、当該エアフィルターを用いたフィルターモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりにともなって、生活空間の有害物質を除去して、室内や車両内の空気を清浄化することが望まれるようになっている。そのため、揮発性有機化合物(VOC)、酸性ガス、塩基性ガス、臭気物質、ウイルスなど、様々な有害物質を空気中から除去することのできるフィルターが各種提案されている。
【0003】
特許文献1には、1μm以下の平均粒子径を有する吸着剤の微粒子を、少量のバインダーで不織布に担持した濾材が記載されている。そしてその実施例には、二酸化ケイ素にアミノ基を有する化合物が担持されてなる吸着剤をアクリレート系ラテックスバインダで、ポリエステル樹脂からなる複合繊維を用いて製造した不織布に固定した濾材が例示されている。この濾材によれば、空気中のVOCを効果的に吸着除去できるとされている。
【0004】
また特許文献2には、通気性基材と吸着剤とバインダーとを含むエアフィルター濾材において、前記吸着剤が平均粒子径1~50μmの多孔質粒子であり、前記バインダーが特定の樹脂からなるエアフィルター濾材が記載されている。またそのバインダーとして、特定の粒子径のエマルジョンバインダーを特定量使用することも記載されている。そしてこれにより、アルデヒドの吸着性能に優れたエアフィルターが提供できるとされている。
【0005】
このような、通気性基材に吸着剤粒子などの機能性粒子が固着されたエアフィルターは、運搬、設置時に振動が加わり、機能性粒子の脱落が発生する。また、使用時にエアに曝されたり、振動が加わったりすることで、機能性粒子の脱落が発生する。機能性粒子の脱落は、機能低下の原因となるため、その低減が求められている。またフィルターをプリーツ形状に加工する場合、プリーツの筋付けをするときに物理的衝撃が加わるため、機能性粒子の脱落が発生して、機能の低下とともに生産性も低下してしまうことが問題となっている。
【0006】
こうした機能性粒子の脱落を減らすためには、通気性基材への固着に使用するバインダーの量を増加させることが有効である。しかしながら、その量が多くなると機能性粒子の表面を覆ってしまい、有効な表面積が減少して機能が低下してしまう。このように、機能性粒子の脱落低減と機能の向上とは、相反する関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-157250号公報
【文献】特開2017-158916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、吸着性能などの機能が優れているとともに、吸着剤粒子などの機能性粒子の脱落を抑制できるエアフィルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、多孔質粒子、固体酸粒子及び固体塩基粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子(A)、樹脂バインダー(B)及びセルロースナノファイバー(C)の混合物が通気性基材(D)に固着されてなるエアフィルターを提供することによって解決される。
【0010】
このとき、通気性基材(D)に対する粒子(A)の質量比(A/D)が0.05~5であることが好ましい。粒子(A)に対する樹脂バインダー(B)の質量比(B/A)が0.02~0.5であることも好ましい。樹脂バインダー(B)に対するセルロースナノファイバー(C)の質量比(C/B)が0.001~0.1であることも好ましい。
【0011】
またこのとき、粒子(A)が活性炭粒子であることが好ましい。通気性基材(D)が不織布であることも好ましい。エアフィルターがプリーツ加工されてなることも好ましい。
【0012】
前記エアフィルターを用いたフィルターモジュールが好適な実施態様である。また、粒子(A)と、樹脂バインダー(B)の水性エマルジョンと、セルロースナノファイバー(C)との混合液を、通気性基材(D)に塗布してから乾燥する、前記エアフィルターの製造方法も、好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエアフィルターは、吸着性能などの機能が優れているとともに、吸着剤粒子などの機能性粒子の脱落を抑制できる。したがって、空気清浄機やエアコンなどのエアフィルターモジュールに好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエアフィルターは、多孔質粒子、固体酸粒子及び固体塩基粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子(A)、樹脂バインダー(B)及びセルロースナノファイバー(C)の混合物が通気性基材(D)に固着されてなるエアフィルターである。以下、具体的に説明する。
【0015】
本発明で用いられる通気性基材(D)は、エアを通過させることができるシート状のものであればよく、用途や目的に応じて選択される。通気性基材(D)としては、例えば繊維基材や多孔質基材を用いることができる。なかでも、通気性、強度、可撓性などの観点から、繊維基材が好適に用いられる。通気性繊維基材としては、織布やニット地を用いることもできるが、性能とコストのバランスから不織布が好ましく用いられる。
【0016】
通気性基材(D)として用いられる不織布としては、カーディング法、エアレイド法、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、静電紡糸法等で得られたウェブを、サーマルボンド法等の熱による接着方法、ケミカルボンド法等のバインダーによる接着方法、ニードルパンチ法、水流交絡法等の物理的交絡方法で製造したものを用いることができる。用いられる不織布の目付(面積当たりの重量)は、好適には15~500g/mである。当該目付は、より好適には25g/m以上であり、またより好適には300g/m以下である。不織布の素材は特に限定されず、ポリエステル、ビニロン、レーヨン、アクリル、ナイロン、ポリオレフィンなどが用いられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
通気性基材(D)に固着される粒子(A)は、多孔質粒子、固体酸粒子及び固体塩基粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子である。これらの粒子は、その表面において有害物質を吸着するなどしてその機能を発揮するので、本発明の構成を採用する意義が大きい。
【0018】
多孔質粒子としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル(多孔質二酸化ケイ素)、珪藻土などが例示される。多孔質粒子は、表面積が大きいのでその表面で様々な分子を吸着することができる。例えば、揮発性有機化合物(VOC)、酸性ガス、塩基性ガスなど幅広い化合物を吸着することができる。また、吸着する代わりに触媒として働くような場合であってもその表面積が大きいことによって反応速度を大きくすることができる。しかしながら、多孔質粒子の表面に存在する細孔が塞がれると表面積が小さくなり吸着性能などの機能が低下するので、水溶性樹脂を使用する代わりにセルロースナノファイバー(CNF)を用いる本発明を採用する意義が大きい。多孔質粒子の中でも、吸着効率や触媒効率の観点から活性炭、ゼオライト及びシリカゲルが好ましく、活性炭が特に好ましい。
【0019】
固体酸粒子としては、ケイ酸アルミニウム、酸性基を表面に有するゼオライト、酸性基を表面に有する活性炭、酸性基を表面に有するシリカゲル、酸性基を表面に有するイオン交換樹脂などが例示される。固体酸粒子は、粒子の表面に存在する酸性ポイントにおいて、塩基性ガスを補足することができる。固体酸粒子で補足される塩基性ガスとしては、アンモニア、アミンなどが挙げられる。一方、固体塩基粒子としては、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、塩基性基を表面に有するゼオライト、塩基性基を表面に有する活性炭、塩基性基を表面に有するシリカゲル、塩基性基を表面に有するイオン交換樹脂などが例示される。固体塩基粒子は、粒子の表面に存在する塩基性ポイントにおいて、酸性ガスを補足することができる。固体塩基粒子で補足される酸性ガスとしては、二酸化硫黄(SO)などの硫黄酸化物、一酸化窒素(NO)などの窒素酸化物、酢酸、塩化水素、硫化水素などが挙げられる。
【0020】
粒子(A)の平均粒子径は、粒子の種類やフィルターの用途によって適宜調整される。粒子(A)の平均粒子径が大きすぎる場合には、単位重量当たりの表面積が小さくなるために、吸着性能などの機能が低下するとともに粒子が脱落しやすくなる。したがって、粒子(A)の平均粒子径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。一方、粒子(A)の平均粒子径が小さすぎる場合には、粉体の取扱いが困難になるとともに、フィルターを通過したエア中に微粉が混入することがある。したがって、粒子(A)の平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。活性炭粒子を用いる場合の平均粒子径の下限値は、好適には5μm以上であり、より好適には10μm以上である。
【0021】
なお、本発明における平均粒子径は、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定されるメジアン径(D50)である。
【0022】
本発明のエアフィルターにおいて、通気性基材(D)に対する粒子(A)の質量比(A/D)が0.05~5であることが好ましい。質量比(A/D)が小さすぎる場合には、吸着性能などの機能が低下するおそれがある。質量比(A/D)は、より好適には0.1以上であり、さらに好適には0.2以上であり、特に好適には0.3以上である。本発明によれば、大量の粒子(A)を通気性基材(D)に固着させた場合であっても効果的に粒子(A)の脱落を防止することができる。したがって、質量比(A/D)が0.8以上というような非常に大量の粒子(A)を通気性基材(D)に固着させることもできる。その場合、エアフィルターの効果を長時間持続させることができる。一方、質量比(A/D)が大きすぎる場合には、粒子(A)が脱落しやすくなる。質量比(A/D)は、より好適には3.5以下であり、さらに好適には2.5以下である。
【0023】
粒子(A)を通気性基材(D)に固着させるための樹脂バインダー(B)は特に限定されない。しかしながら、樹脂バインダー(B)が、水性エマルジョン中の固形分に由来するものであることが好ましい。水性エマルジョン中では固体の樹脂粒子が水中に分散しているので、乾燥後にはこの樹脂粒子を介して粒子(A)が通気性基材(D)に固着される。このとき、水性エマルジョンの水相中にはバインダーとなる樹脂が溶解している訳ではないので、粒子(A)の表面全体を当該樹脂が覆うことがなく、粒子(A)同士、あるいは粒子(A)と通気性基材(D)とを接着しながらも、吸着性などの機能の低下を抑制することができる。
【0024】
本発明のエアフィルターの製造に用いられる水性エマルジョンとしては、アクリル樹脂エマルジョン、SBRエマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョンなどを用いることができる。これらの中でも、アクリル樹脂エマルジョンが好ましい。アクリル樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリレートと他の種類のモノマーとの共重合体のエマルジョンであってもよい。水性エマルジョンの固形分(樹脂)濃度は、20~70質量%であることが好ましい。また、水性エマルジョン中の樹脂粒子の平均粒子径は50~500nmであることが好ましい。
【0025】
本発明のエアフィルターにおいて、粒子(A)に対する樹脂バインダー(B)の質量比(B/A)が0.02~0.5であることが好ましい。質量比(B/A)が小さすぎる場合には、粒子(A)が脱落しやすくなるおそれがある。質量比(B/A)は、より好適には0.04以上であり、さらに好適には0.06以上である。一方、質量比(B/A)が大きすぎる場合には、吸着性能などの機能が低下するおそれがある。質量比(B/A)は、より好適には0.4以下であり、さらに好適には0.3以下である。
【0026】
本発明のエアフィルターにおいては、粒子(A)及び樹脂バインダー(B)に加えて、さらにセルロースナノファイバー(C)を含む混合物が通気性基材(D)に固着されている。セルロースナノファイバー(C)を含むことによって、粒子(A)の脱落を抑制することができる。また、塗工液がセルロースナノファイバー(C)を含むことによって、塗工液の粘度が上昇するので、粒子(A)の沈降を抑制することができるとともに、均一に塗布することが容易になる。しかも、カルボキシメチルセルロース(CMC)のような水溶性の増粘剤を用いた場合と比べて、粒子(A)の表面全体を覆わないので、吸着性などの機能を維持することができる。セルロースナノファイバー(C)としては、平均径が1~100nmで、アスペクト比(繊維長/繊維径)が100以上のセルロース繊維が好適に用いられる。通常、セルロースナノファイバー(C)の含水組成物が上記水性エマルジョンに配合される。
【0027】
本発明のエアフィルターにおいて、樹脂バインダー(B)に対するセルロースナノファイバー(C)の質量比(C/B)が0.001~0.1であることが好ましい。質量比(C/B)が小さすぎる場合には塗工液の粘度が低くなって、塗工液を均一に塗布することが困難になるおそれがあるとともに、フィルターから粒子(A)が脱落しやすくなるおそれもある。質量比(C/B)は、より好適には0.002以上であり、さらに好適には0.005以上である。一方、質量比(C/B)が大きすぎる場合には、吸着性能などの機能が低下するおそれがあるとともに塗工液の粘度が高くなりすぎるおそれがある。質量比(C/B)は、より好適には0.08以下であり、さらに好適には0.06以下である。
【0028】
本発明のエアフィルターの好適な製造方法は、粒子(A)と、樹脂バインダー(B)の水性エマルジョンと、セルロースナノファイバー(C)との混合液を、通気性基材(D)に塗布してから乾燥する方法である。当該混合液に含まれる溶媒の主成分は水である。作業環境やコストを考慮すれば、有機溶媒を含まないことが好ましい。水性エマルジョンに含まれる水と、セルロースナノファイバー(C)の含水組成物に含まれる水以外に、粘度等を調整するためにさらに水を加えてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、アレルゲン低減化剤、難燃剤などを本発明の効果が損なわれない範囲で配合してもよい。
【0029】
前記混合液を通気性基材(D)に塗工する方法は特に限定されず、浸漬法、ロールコーター法、スプレー法、スクリーン印刷法、グラビアコート法等の塗工方法を採用することができる。均一かつ多量に塗布するためには、浸漬法が好ましい。通気性基材(D)を前記混合液に浸漬した後で、必要に応じてマングルなどで余分な液を絞ってから、乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、100~200℃で水分を除去して乾燥させることが好ましい。
【0030】
こうして得られたエアフィルターをそのままモジュールに組み込んでも構わないが、好適には、プリーツ加工を施してからモジュールに組み込まれる。こうすることによって、空気清浄機などの装置内に、濾過面積の大きいフィルターをコンパクトに収容することができる。このとき、本発明のエアフィルターは、プリーツ加工時の衝撃に対しても粒子(A)が脱落しにくい。
【0031】
本発明のエアフィルターは、空気清浄機、エアコン(家庭用、自動車用)、加湿器、掃除機、OA機器、燃料電池(家庭用、自動車用)など、各種の機器に組み込むことができる。多量の粒子(A)を固着することができるとともにプリーツ加工にも適しているので、長時間にわたって、その機能を維持することができる。
【実施例
【0032】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本実施例における評価方法は、以下のとおりである。
【0033】
(1)付着均一性
フィルターの外観を、目視及び光学顕微鏡で観察し、以下のように評価した。
A:均一に付着した
B:少しムラが観察された
C:付着ムラが激しかった
【0034】
(2)付着力評価(方法1)
フィルターを15cm×15cmの大きさに裁断して試料とした。白色紙を敷き、試料をその上方5cmの高さに保持し、鉛筆で5回叩き、紙上に脱落した粉体の量を目視で確認し、以下のように評価した。
A:脱落しなかった
B:ごく少量脱落した
C:少量脱落した
D:多く脱落した
【0035】
(3)付着力評価(方法2)
フィルターを15cm×15cmの大きさに裁断して試料とした。レシプロ式プリーツマシンで、間隔5mmで10回プリーツの筋付けを行い、作業後の刃とスクリーンへの粉体汚れの付着を目視確認した。
A:汚れはなかった
B:少量汚れた
C:激しく汚れた
【0036】
(4)SO吸着性能
フィルターを12cm×12cmの大きさに裁断して試料とした。ガスフロー試験機を用い、30ppmのSOガスを含む空気を、線速度10cm/sec、流量60L/minで流し、開口面積が100cmのフィルターを通過させ、通過後のSO濃度を1分後に測定し、下記式にしたがって除去率を算出した。ここでaはフィルター通過前のSO濃度であり、bはフィルター通過後のSO濃度である。
除去率(%)=[(a-b)/a]×100
【0037】
実施例1
通気性基材として、ポリエステル短繊維とビニロン短繊維からなる30g/mのクロスウェブを、30g/mのSBR樹脂と臭素系難燃剤の混合物で固着した、総目付60g/mのケミカルボンド不織布を用いた。当該不織布に塗布するために用いた塗工液は、アクリル樹脂エマルジョンに、粉末活性炭及び含水セルロースナノファイバー(CNF)を混合したものである。
【0038】
アクリル樹脂エマルジョンは、平均粒径200nmのアクリル樹脂粒子が水中に分散しているものであり、その固形分は45質量%である。当該エマルジョン中のアクリル樹脂がバインダー樹脂として働く。活性炭粉末として、平均粒子径40μmの無添着粉末活性炭を用いた。CNFとして、平均繊維径が3nmでアスペクト比が100以上のCNFの含水物を用いた。さらに水を加えて粘度を調整した。
【0039】
前記塗工液に前記ケミカルボンド不織布を浸漬して、当該不織布に含水組成物を塗工し、その後マングルで絞り、160℃で乾燥することによってフィルターを得た。活性炭粉末の付着量は33g/m、樹脂バインダーの付着量は3.3g/m、CNFの付着量は0.04g/mであった。また、得られたフィルターを用いて、上記(1)~(4)にしたがってフィルター性能を評価した。以上の結果を表1にまとめて示す。
【0040】
実施例2~8、比較例1~5
塗工液の組成を変えることによって、各成分の付着量が表1に示すように変更されたフィルターを作成した。比較例1及び3では、CNFの代わりにカルボキシメチルセルロース(CMC)を溶解させて用い、比較例2、4及び5ではCNFとCMCのいずれも用いなかった。フィルターにおける各成分の付着量とフィルター性能の評価結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】