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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】弁機構及びシャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A47K3/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021065455
(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公開番号】P2022160925
(43)【公開日】2022-10-20
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3218928(JP,U)
【文献】国際公開第2013/183723(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2444245(KR,B1)
【文献】特開2017-036637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
B05B 1/00-3/18
B05B 7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に収容されて内部に通水路を有する筒状の弁ケースと、前記弁ケースの内部に配置されて湯水の吐水状態を切り換える弁体と、前記弁体の位置を操作する揺動ボタンと、前記揺動ボタンの位置を保持する保持機構を備えた弁機構であって、
前記揺動ボタンは、前記弁ケースの軸線に直交する方向に延びる回動軸により前記弁ケースに対して揺動可能に取り付けられ、
前記ケースには、前記揺動ボタンを露出させる貫通孔が形成され、
前記弁体は、前記揺動ボタンの操作によって、湯水の吐水状態を第1吐水状態と第2吐水状態のいずれかに切り換え、
前記保持機構は、前記弁ケース及び前記揺動ボタンの一方に設けられた係合部と、他方に設けられて前記係合部が係合する被係合部を備えるとともに、前記係合部と前記被係合部とが2位置の間で選択的に係合することにより、前記弁体の位置を、前記第1吐水状態となる第1吐水位置と、前記第2吐水状態となる第2吐水位置のいずれかに保持し、
前記被係合部は、前記被係合部に向かって付勢された前記係合部を保持可能な凹部であり、
前記係合部と前記被係合部は、前記回動軸の軸方向に並設されていることを特徴とする弁機構。
【請求項2】
前記保持機構は、前記係合部を前記被係合部に向かって付勢するスプリングを備え、
前記係合部は、前記スプリングの両端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁機構。
【請求項3】
前記揺動ボタンは、外壁と、前記外壁の周縁から該外壁の厚さ方向に延びる筒状の周壁を有し、
前記係合部は、前記弁ケースの外周面の係合筒部に設けられ、前記被係合部は、前記揺動ボタンの前記周壁に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の弁機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の弁機構を備えるシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁機構及び弁機構を備えるシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
吐止水するための操作ハンドルとは別の操作部材によって、湯水の吐出口からの吐水状態を切り換えることのできる水栓が知られている。こうした水栓は、操作ハンドルを吐水位置に保持したままで、吐出口からの吐水状態を切り換え可能である。例えば、多数の細い水流を吐出するシャワー吐水状態と1本の太い水流を吐出するストレート吐水状態とに切り換えたり、水流を吐出する吐水状態と水流の吐出を停止する止水状態とに切り換えたりすることができる。
【0003】
特許文献1には、操作ハンドルで吐止水する水栓の内部に設けられて、シャワー吐水状態とストレート吐水状態とを切り換える弁機構に係る発明が記載されている。弁機構は、内部に流路を有する吐水口本体と、吐水口本体の内部で湯水の吐水状態を切り換える切換弁体と、回動軸によって取り付けられて切換弁体の位置を操作する切換ボタンを有している。切換ボタンには、流路に沿う方向に付勢するばねが取り付けられ、ばねの先端には係合子が取り付けられている。また、吐水口本体には、係合子が係合する一対の凹部が形成されている。一対の凹部、ばね、及び係合子により、切換ボタンの位置を保持する保持機構が構成されている。
【0004】
切換ボタンの操作によって切換弁体の位置が操作されると、係合子がばねの付勢力によって一対の凹部のいずれかに係合して切換ボタンの位置が保持される。これにより、操作ハンドルが湯水を吐出する位置に維持されたままで、水栓の吐出口からの吐水状態が、シャワー吐水状態とストレート吐水状態のいずれかに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-36637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の弁機構では、切換ボタンに取り付けられたばねが、回動軸と直交する方向に延びている。そのため、切換ボタンが、吐水口本体の軸線方向に長くなってしまい、切換ボタンが大型化してしまう。その結果、弁機構が大型化してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の弁機構は、内部に通水路を有する筒状の弁ケースと、前記弁ケースの内部に配置されて湯水の吐水状態を切り換える弁体と、前記弁体の位置を操作する揺動ボタンと、前記揺動ボタンの位置を保持する保持機構を備えた弁機構であって、前記揺動ボタンは、前記弁ケースの軸線に直交する方向に延びる回動軸により前記弁ケースに対して揺動可能に取り付けられ、前記弁体は、前記揺動ボタンの操作によって、湯水の吐水状態を第1吐水状態と第2吐水状態のいずれかに切り換え、前記保持機構は、前記弁ケース及び前記揺動ボタンの一方に設けられた係合部と、他方に設けられて前記係合部が係合する被係合部を備えるとともに、前記係合部と前記被係合部との係合により、前記弁体の位置を、前記第1吐水状態となる第1吐水位置と、前記第2吐水状態となる第2吐水位置のいずれかに保持し、前記係合部と前記被係合部は、前記回動軸の軸方向に並設されている。
【0008】
この構成によれば、揺動ボタンの位置を保持する保持機構が係合部と被係合部を備え、係合部と被係合部が、揺動ボタンを取り付ける回動軸と平行に並設されている。そのため、係合部と被係合部が回動軸に直交する揺動ボタンと比較して、回動軸に直交する方向の揺動ボタンの大きさを小さくすることができる。揺動ボタンをコンパクトにできることで揺動ボタンの取付スペースを小さくすることができる。弁機構を小型化することができる。
【0009】
また、係合部及び被係合部が回動軸と平行に並設されていることで、保持機構を回動軸の近くに配置したり、遠くに配置したりすることができる。揺動ボタンの設計の自由度が向上する。例えば、荷重を調整することで揺動ボタンの操作性を向上させることができる。
【0010】
なお、ここでの吐水状態には、通水路を介して外部に湯水が吐出される状態だけでなく、湯水の吐出量がゼロとなって止水された状態も含むものとする。
上記の構成において、前記保持機構は、前記係合部を前記被係合部に向かって付勢する付勢部材を備え、前記係合部は、前記付勢部材の両端部に設けられていることが好ましい。この構成によれば、保持機構は、付勢部材の両側で被係合部が係合部に保持される。被係合部の保持状態が安定する。
【0011】
上記の構成において、前記係合部は、前記弁ケースに設けられ、前記被係合部は、前記揺動ボタンに設けられていることが好ましい。この構成によれば、揺動ボタンに付勢部材を組み込まなくてよい。揺動ボタンの構造が簡略化する。また、揺動ボタンの組み付けがし易い。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のシャワーヘッドは、上記の弁機構を備えている。この構成によれば、上記弁機構の効果を奏するシャワーヘッドとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁機構を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のシャワーヘッドの正面図。
図2】シャワーヘッドの分解斜視図。
図3図1のA-A線での側断面図であり、止水状態のときの側断面図。
図4図1のA-A線での側断面図に相当し、吐水状態のときの側断面図。
図5】弁ケースの斜視図。
図6】スライド部材の斜視図。
図7】(a)は揺動ボタンの斜視図、(b)は(a)のB-B線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施形態の弁機構及びシャワーヘッド1について説明する。本実施形態のシャワーヘッド1は、通水部材を介して浴室に取り付けられ、図示しない操作ハンドルにより吐水操作可能に構成されている。弁機構はシャワーヘッド1に設けられて、シャワーヘッド1からの吐水状態を切り換える。本実施形態の弁機構は、操作ハンドルの位置を、シャワーヘッド1から湯水が吐出される状態に維持したままで、水流を吐出する吐水状態と水流の吐出を停止する止水状態とに切り換えることができる。
【0016】
図1に示すように、シャワーヘッド1は、把持部2とヘッド部3を有している。把持部2は使用者が把持可能な長尺状の部分である。把持部2の基端部には、通水部材としての図示しないホースが接続される。ヘッド部3は、把持部2の先端側に設けられて、多数の細い水流であるシャワー吐水を吐出可能である。なお、以下では、シャワーヘッド1におけるヘッド部3側を先端側、把持部2側を基端側として説明する。また、把持部2の軸線に沿う方向を軸方向として説明する。軸方向は湯水の流れ方向に一致する。
【0017】
図2に示すように、把持部2は、第1ケース4と第2ケース5が組み付けられて外殻が形成されている。把持部2の内部には、ヘッド部3からの吐水状態を切り換える弁機構が収容されている。
【0018】
<弁機構について>
図2に示すように、本実施形態の弁機構は、インナーパイプ10、弁ケース20、弁部材T、及び操作部材Sを備えている。
【0019】
図1及び図2に示すように、インナーパイプ10は略円筒状に形成されている。インナーパイプ10の基端部は、第1ケース4及び第2ケース5から露出しており、この露出した部分に通水部材としての図示しないホースが接続される。図2及び図3に示すように、インナーパイプ10の先端側には雄ネジ11が形成されて、弁ケース20の基端側に形成された雌ネジ20aと螺合している。
【0020】
図3図5に示すように、弁ケース20は両端が開口する略円筒状の部材である。弁ケース20の内周面には、基端側(上流側)から先端側(下流側)に向かって段差状に縮径する縮径部21が形成されている。縮径部21より基端側には、後に説明する弁部材Tが収容されている。縮径部21の基端面21aは、後に説明する主弁30の弁座として機能する主弁座VS1を構成する。また、縮径部21より先端側には、後に説明するスライド部材60が軸方向に摺動可能に収容されている。なお、図3図4では、第1ケース4及び第2ケース5の図示を省略している。
【0021】
図5に示すように、縮径部21より先端側には、外周面から突出する一対の軸支部22が形成されている。一対の軸支部22は、弁ケース20の軸方向と直交する方向に並設されている。軸支部22のそれぞれには、貫通孔22aが形成されている。一対の貫通孔22aは、弁ケース20の軸方向と直交する方向に開口している。貫通孔22aには、後に説明する揺動ボタン70を回動可能に連結する回動軸23が挿入されている。
【0022】
また、軸支部22より先端側には、外周面から突出する係合筒部24が形成されている。係合筒部24には、把持部2の軸方向と直交する方向に延びる貫通孔24aが形成されている。つまり、貫通孔24aは、一対の貫通孔22aの開口方向と平行に延びている。貫通孔24aの内部には、付勢部材としてのスプリング25と2つの鋼球26が挿入されている。鋼球26は、スプリング25の両端部に設けられて、スプリング25により貫通孔24aの外方に向けて付勢されている。鋼球26は、本発明の保持機構を構成する係合部に相当し、スプリング25は、本発明の保持機構を構成する付勢部材に相当する。
【0023】
<弁部材Tについて>
図2に示すように、本実施形態の弁部材Tは、主弁30、副弁40、スプリング45、及びケース体50を備えている。主弁30及び副弁40により弁体Vが構成されている。
【0024】
図2図4に示すように、主弁30は、弁ケース20の内部における縮径部21から基端側の部分に収容されている。主弁30は、全体として筒状の部材であり、基端側に位置する大径部31と、先端側に位置する小径部32とを備えている。
【0025】
大径部31の外径は、弁ケース20の縮径部21の内径より大径に形成されている。大径部31の内部には、副弁40の基端側及びスプリング45が収容されている。また、大径部31の内部空間は、後に説明するケース体50の内部空間とともに、弁体Vを水圧で付勢する圧力室Pとして機能する。大径部31の外周面とケース体50の内周面との間には、両面の間をシールする環状のパッキン33が取り付けられている。
【0026】
大径部31の先端側に位置する小径部32の外周面には、軸方向に延びる複数のリブ34が形成されている。リブ34は、小径部32の周壁の周方向に沿って略等間隔となる位置に4つ形成されている。リブ34の外径は、弁ケース20の縮径部21の内径よりも小さく形成されている。小径部32は、弁ケース20の縮径部21の内部で軸方向に摺動可能に収容されている。
【0027】
図2図4に示すように、副弁40は棒状に形成されている。副弁40の軸方向における中央部には、全周に亘って径方向外側に延びる鍔部41が形成されている。鍔部41の外径は、主弁30の小径部32の内径より大きい。また、鍔部41の外径は、主弁30の大径部31に収容されたスプリング45の外径と略等しい。
【0028】
鍔部41より基端側には、小径の基端軸部42が形成され、先端側には、基端軸部42より大径の先端軸部43が形成されている。先端軸部43の外径は、主弁30の小径部32の内径より若干小さく形成されている。先端軸部43は、主弁30の小径部32の内部で軸方向に摺動可能に収容されている。
【0029】
図3及び図4に示すように、主弁30の大径部31と小径部32の境界部分の外周面には、環状のゴム部材からなる外シール部35aが一体に形成されている。外シール部35aの外径は、弁ケース20の縮径部21の内径より大きい。主弁30の外シール部35aは、主弁座VS1として機能する縮径部21の基端面21aに当接して、弁ケース20の縮径部21より基端側からの湯水の流路をシールする。
【0030】
また、主弁30の大径部31と小径部32の境界部分の内周面には、環状のゴム部材からなる内シール部35bが一体に形成されている。内シール部35bの外径は、主弁30の小径部32の内径より大きく、副弁40の鍔部41の外径より若干小さい。内シール部35bの基端面35cは、副弁40の弁座として機能する副弁座VS2を構成する。副弁座VS2として機能する基端面35cは、副弁40の鍔部41の先端面に当接して、副弁40と主弁30との間の湯水の流路をシールする。
【0031】
図3及び図4に示すように、ケース体50は、先端側が開口する有底筒状に形成されており、底壁51と、底壁51の周縁から底壁51の厚さ方向に延びる周壁52を有している。ケース体50は、弁ケース20の基端部の内周面に設けられる段差部20bと、インナーパイプ10の先端との間に挟持されることにより、弁ケース20の内部に固定されている。
【0032】
ケース体50の底壁51の径方向中央部には、軸方向に延びる貫通孔53が形成されている。貫通孔53の内径は、副弁40の基端軸部42の外径よりも若干大きく形成されている。貫通孔53の内部には、副弁40の基端軸部42が摺動可能に収容されている。
【0033】
<操作部材Sについて>
図2に示すように、本実施形態の操作部材Sは、スライド部材60及び揺動ボタン70を備えている。
【0034】
図3図4及び図6に示すように、スライド部材60は略円筒状に形成されている。図3及び図4に示すように、スライド部材60の内側には、軸方向に延びる板状突片62が形成されている。板状突片62の基端縁は、スライド部材60の周壁61の基端縁から突出して、主弁30の小径部32の先端面及び副弁40の先端軸部43の先端に対向している。板状突片62の基端縁は、スライド部材60の軸方向に直交している。スライド部材60の基端部の外周面には、パッキン63が取り付けられている。パッキン63により、弁ケース20とスライド部材60との間の水密状態が保持されている。
【0035】
図6に示すように、スライド部材60の軸方向中間部には、周壁61の対向する外周面から突出する係合凸部64が形成されている。
図2図4及び図7に示すように、揺動ボタン70は、略長方形板状の外壁71と、外壁71の周縁から外壁71の厚さ方向に延びる筒状の周壁72を有している。筒状の周壁72は、周方向に切れ間なく形成されている。揺動ボタン70は、外壁71を底部とする有底筒状に形成されている。図1及び図2に示すように、揺動ボタン70は、第1ケース4に形成された貫通孔4aから外壁71を露出させた状態で取り付けられている。
【0036】
図3図4及び図7に示すように、揺動ボタン70の長手方向に延びる周壁72において対向する箇所には、一対の貫通孔73が形成されている。また、図7(b)に示すように、外壁71の内面には、長手方向に延びる周壁72に沿うように延びて、外壁71に垂直な板状の一対の軸支部74が突出形成されている。軸支部74には貫通孔74aが形成されている。周壁72の貫通孔73及び軸支部74の貫通孔74aは、弁ケース20の軸支部22の貫通孔22aとともに、回動軸23が取り付けられる軸孔を構成している。これにより、揺動ボタン70が弁ケース20に対して揺動可能に取り付けられている。
【0037】
図3図4及び図7に示すように、揺動ボタン70には、周壁72から突出する一対の操作アーム75が形成されている。操作アーム75の内面には、操作アーム75の突出方向に延びる係合溝75aが形成されている。揺動ボタン70が弁ケース20に取り付けられた状態では、スライド部材60の係合凸部64が係合溝75aに係合することで、揺動ボタン70が弁体Vに間接的に連結されている。そして、揺動ボタン70の揺動により、係合凸部64が係合溝75a内を摺動する。これにより、揺動ボタン70の揺動が、スライド部材60の軸方向の移動に変換される。
【0038】
図3図4及び図7(a)に示すように、揺動ボタン70の操作アーム75より軸方向の先端側には、周壁72から突出する一対の保持アーム76、78が形成されている。一対の保持アーム76、78は、貫通孔73に取り付けられた回動軸23の軸線が延びる方向に並設されている。
【0039】
図7(a)に示すように、揺動ボタン70の内部であって、一方の保持アーム76が形成された箇所の周壁72及び保持アーム76には、それぞれ、保持アーム76の突出方向に並設された一対の凹部77が形成されている。凹部77は、保持機構を構成する鋼球26が係合する部分であり、鋼球26を保持可能な大きさ、深さに形成されている。一対の凹部77の間には、凹部77間を連通するように溝77cが形成されている。
【0040】
一対の凹部77のうちの一方は周壁72に形成され、他方は保持アーム76に形成されている。周壁72に形成された凹部77に鋼球26が係合することにより、揺動ボタン70は、弁体Vが吐水状態となる位置で保持される(図4に示す状態)。また、保持アーム76に形成された凹部77に鋼球26が係合することにより、揺動ボタン70は、弁体Vが止水状態となる位置で保持される(図3に示す状態)。周壁72に形成された凹部77を、吐水位置保持凹部77a、保持アーム76に形成された凹部77を、止水位置保持凹部77bという。凹部77は、本発明の保持機構を構成する被係合部に相当する。
【0041】
図3及び図4に示すように、他方の保持アーム78が形成された箇所の周壁72及び保持アーム78にも、それぞれ、保持アーム78の突出方向に並設された一対の凹部79が形成されている。凹部79の形状、形成位置は、凹部77と同様である。周壁72に形成され凹部79は、鋼球26が係合することにより、揺動ボタン70を吐水位置で保持する吐水位置保持凹部79aである。また、保持アーム78に形成された凹部79は、鋼球26が係合することにより、揺動ボタン70を止水位置で保持する止水位置保持凹部79bである。凹部79は、本発明の保持機構を構成する被係合部に相当する。
【0042】
一方の保持アーム76に形成された吐水位置保持凹部77aと、他方の保持アーム78に形成された吐水位置保持凹部79aは、貫通孔73に取り付けられた回動軸23の軸線が延びる方向に並設されている。同様に、一方の保持アーム76側の周壁72に形成された止水位置保持凹部77bと、他方の保持アーム78側の周壁72に形成された止水位置保持凹部79bは、貫通孔73に取り付けられた回動軸23の軸線が延びる方向に並設されている。
【0043】
<弁機構の作用について>
次に本実施形態の弁機構の作用について、その動作とともに説明する。
まず、図示しない操作ハンドルが吐水位置にある状態で、揺動ボタン70が図4に示す吐水状態の位置に保持されている場合について説明する。保持機構を構成する係合部としての鋼球26は、付勢部材としてのスプリング25によって付勢されて、被係合部としての吐水位置保持凹部77a、79aに保持されている。揺動ボタン70は、その先端側が第1ケース4側に入り込むように傾いてその位置が保持されている。これにより、スライド部材60は、弁ケース20内で基端側に保持されている。弁体Vは、スライド部材60の板状突片62によって、主弁30の小径部32及び副弁40の先端軸部43が押されて、スプリング45の付勢力に抗して基端側にその位置が保持されている。
【0044】
弁体Vが図4に示す吐水状態にあるとき、ホースを介してインナーパイプ10内に供給された湯水は、弁ケース20内の通水路を通ってヘッド部3に供給されてシャワー吐水として吐出される。具体的には、インナーパイプ10から供給された湯水は、ケース体50の外側から主弁30のリブ34の間を通り、スライド部材60の内側を通って、ヘッド部3に供給される。また、インナーパイプ10から供給された湯水の一部は、ケース体50の貫通孔53からケース体50の内部に入り、主弁30の大径部31の内部空間からスライド部材60の内側を通って、ヘッド部3に供給される。
【0045】
次に、操作ハンドルをそのままの位置にして、ヘッド部3からのシャワー吐水を止める場合について説明する。シャワー吐水を止めるには、揺動ボタン70の基端側を押して揺動ボタン70を操作する。図3に示すように、揺動ボタン70は、基端側が第1ケース側に入り込むように傾く。このとき、図7(a)に示すように、吐水位置保持凹部77a、79aに保持されていた鋼球26は、吐水位置保持凹部77a、79aと止水位置保持凹部77b、79bの間の突出した部分を乗り越えるようにして、溝77cに沿って移動する。突出した部分を乗り越える際には、鋼球26は、スプリング25の付勢力に抗して貫通孔24a内に入り込む。鋼球26が止水位置保持凹部77b、79bに移動すると、スプリング25の付勢力によって外方へ付勢されて、止水位置保持凹部77b、79bに保持される。
【0046】
また、揺動ボタン70の揺動に伴って、スライド部材60の係合凸部64は、揺動ボタン70の操作アーム75の係合溝75a内を摺動する。これにより、揺動ボタン70の揺動が、スライド部材60のスライド運動に変換される。鋼球26が止水位置保持凹部77b、79bに保持された状態では、スライド部材60は先端側にその位置が保持される。
【0047】
弁体Vの副弁40には、常にスプリング45からの付勢力が作用して、先端側に付勢されている。そのため、スライド部材60の板状突片62により押されていた副弁40は、スプリング45に付勢されて先端側へ移動する。副弁40の鍔部41が、副弁座VS2である内シール部35bの基端面35cに当接する。これにより、主弁30の大径部31の内部空間からスライド部材60への湯水の供給が停止する。
【0048】
主弁30の大径部31の内部空間からの湯水の供給が停止すると、主弁30の大径部31の内部空間とケース体50内部空間は、供給された湯水によって圧力が上昇する。大径部31及びケース体50の内部空間が圧力室Pとして機能することにより、主弁30が付勢されて先端側へ移動する。主弁30の外シール部35aが、主弁座VS1である弁ケース20の縮径部21の基端面21aに当接する。これにより、ケース体50の外側から主弁30のリブ34の間を通ってスライド部材60へ至る湯水の供給が停止する。
【0049】
このように、揺動ボタン70を操作して鋼球26を止水位置保持凹部77b、79bに保持することにより、スプリング45の付勢力と、圧力室Pの圧力とによって、ヘッド部3からの湯水の吐出が停止される。
【0050】
揺動ボタン70には、吐水状態に弁体Vの位置を保持する吐水位置保持凹部77a、79aと、止水状態に弁体Vの位置を保持する止水位置保持凹部77b、79bが形成されている。そして、弁体Vは、常に止水状態となるように付勢されている。付勢に抗して弁体Vの位置を保持する吐水位置保持凹部77a、79aが、揺動ボタン70の周壁72に形成されている。そのため、揺動ボタン70は、付勢力に抗して吐水状態に安定して保持される。
【0051】
本実施形態の弁機構によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の弁機構は、揺動ボタン70の揺動操作によってスライド部材60が軸方向に移動して、弁体Vが保持機構によって保持される。保持機構の係合部である鋼球26と、被係合部である凹部77、79は、揺動ボタン70を弁ケース20に取り付ける回動軸23の軸方向に並設されている。
【0052】
そのため、回動軸23に直交する方向への揺動ボタン70の大きさを小さくすることができる。これにより、揺動ボタン70の取付スペースを小さくすることができ、弁機構を小型化することができる。
【0053】
(2)保持機構を構成する鋼球26と凹部77、79が回動軸23の軸方向に並設されている、そのため、保持機構を回動軸23の近くに設けることが可能である。揺動ボタン70の設計の自由度を向上させることができる。
【0054】
(3)揺動ボタン70の設計の自由度が向上することで、回動軸23に対する保持機構の位置にかかわらず、揺動ボタン70の長手方向の寸法を設定することが可能である。揺動ボタン70を長手方向に長くして、操作荷重を軽くすることもできる。
【0055】
(4)鋼球26は、付勢部材としてのスプリング25により凹部77、79に向けて付勢されている。そのため、鋼球26と凹部77、79との係合状態が安定する。
(5)鋼球26は、スプリング25の両端部に設けられている。そのため、片持ち状態で凹部77、79のいずれかに保持される保持機構に比べて、係合状態が安定する。
【0056】
(6)鋼球26及びスプリング25は、弁ケース20に形成された係合筒部24に設けられ、凹部77、79は、揺動ボタン70に設けられている。そのため、揺動ボタン70の構造が簡略化する。また、揺動ボタン70の組み付けがし易い。
【0057】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0058】
・上記実施形態では、揺動ボタン70は、スライド部材60に連結されて弁体Vの位置を切り換えるが、弁体Vに直接連結されていてもよい。
・弁体Vは主弁30及び副弁40を備える構成でなくてもよい。例えば、副弁40を省略することができる。
【0059】
・操作部材Sのスライド部材60を省略してもよい。
・上記実施形態の弁機構は、揺動ボタン70によって、吐水状態を、吐水状態と止水状態との間で切り換えるが、吐水状態の切り換えはこれに限定されない。シャワー吐水状態とストレート吐水状態との間で切り換えてもよく、吐出口の外周寄りの部分から吐出する外側吐水状態と内周寄りの部分から吐出する内側吐水状態との間で切り換えてもよい。
【0060】
・被係合部としての凹部77、79は、吐水位置保持凹部77a、79aのみが周壁72に設けられているが、吐水位置保持凹部77a、79a及び止水位置保持凹部77b、79bがともに周壁72に設けられていてもよい。この場合、保持アーム76、78が形成されていなくてもよい。
【0061】
・吐水位置保持凹部77a、79a及び止水位置保持凹部77b、79bがともに保持アーム76、78に形成されていてもよい。
・上記実施形態の保持機構は、凹部77、79にスプリング25で付勢された鋼球26が係合するが、保持機構の構成はこれに限定されない。凹凸の関係で係合するものであればよい。例えば、スプリング25を有さず、弁ケース20の係合筒部24の両端部に凸部が形成されていてもよい。
【0062】
・保持機構の係合部は鋼球26で構成されているが、係合部はこれに限定されない。球状以外の形状でもよい。また、金属以外の材質で形成されていてもよい。
・保持機構の鋼球26がスプリング25の一端部のみに設けられて、揺動ボタン70の凹部77、79が対向する周壁72の一方のみに形成されていてもよい。この場合、係合筒部24の他端部は平面状に形成され、揺動ボタン70の周壁72の平面状の内面と当接する。
【0063】
・上記実施形態の弁機構は、シャワーヘッド1に適用される場合に限定されない。シャワーヘッド1以外の流体の制御を行う用途に適用してもよい。
・上記実施形態では、弁機構を構成するインナーパイプ10、弁ケース20、弁部材Tを構成する主弁30、副弁40、ケース体50、操作部材Sを構成するスライド部材60は円筒状に形成されているが、これに限定されない。軸心に直交する断面形状が多角形状や楕円形状等の筒状であってもよい。
【0064】
上記実施形態及び変更例から把握される技術思想について以下に記載する。
(イ)内部に通水路を有する弁ケースと、前記弁ケースの内部に配置されて湯水の吐水状態を切り換える弁体と、前記弁体に対して直接又は間接的に連結されて前記弁体の位置を操作する操作部材と、前記操作部材の位置を保持する保持機構を備えた弁機構であって、前記弁体は、前記操作部材の操作によって、湯水の吐水状態を第1吐水状態と第2吐水状態のいずれかに切り換え、前記保持機構は、前記弁体の位置を、前記第1吐水状態となる第1吐水位置と、前記第2吐水状態となる第2吐水位置のいずれかに保持し、前記操作部材は周壁を有し、前記保持機構は、前記弁ケースに設けられた係合部と、前記周壁に設けられるとともに前記係合部に係合する被係合部を有している。
【0065】
この構成によれば、被係合部の強度が高くなって、係合部と被係合部の係合状態が安定する。第1吐水位置又は第2吐水位置での弁体の保持状態が安定して、通水路からの吐水状態を安定して保持することができる。
【符号の説明】
【0066】
V…弁体、1…シャワーヘッド、20…弁ケース、23…回動軸、25…スプリング(付勢部材、保持機構)、26…鋼球(係合部、保持機構)、30…主弁(弁体)、40…副弁(弁体)、70…揺動ボタン、77、79…凹部(被係合部、保持機構)、77a、79a…吐水位置保持凹部(被係合部、保持機構)、77b、79b…止水位置保持凹部(被係合部、保持機構)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7