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特許7582899端子付電線、及び、端子付電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】端子付電線、及び、端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20241106BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R43/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021068740
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163736
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖光
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-199583(JP,A)
【文献】特開2011-060726(JP,A)
【文献】特開2018-147823(JP,A)
【文献】特開2001-067952(JP,A)
【文献】特開平10-199579(JP,A)
【文献】特開2007-305355(JP,A)
【文献】特開2018-092739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が被覆部で覆われ先端において導体部が露出した電線と、
前記導体部に電気的に接続される端子と、
を備え、
前記端子は、
前記電線の延在方向に沿って形成され、前記導体部と前記被覆部とに当接する基部と、
前記導体部と前記基部とを溶接によって固定した溶接固定部と、
前記基部の側部から立ち上がり前記被覆部の周面の一部に対向して配置された固定片と、
前記固定片に形成され、前記被覆部において溶融して固化した溶融固化部が当接し、前記延在方向に沿って前記電線の後端側への当該溶融固化部の移動、及び、前記固定片の立ち上がり方向に沿って前記基部から離れる側への当該溶融固化部の移動を規制する当接部と、
を含む、端子付電線。
【請求項2】
前記固定片は、前記被覆部に向けて弾性力を付与されている、請求項1に記載の端子付電線。
【請求項3】
前記当接部は、前記固定片において前記電線の先端側に向く縁が切り欠かれて形成され、前記電線の先端側に向く第一端面及び、前記基部側に向く第二端面を有する、請求項1または請求項2に記載の端子付電線。
【請求項4】
前記当接部は、前記固定片の中央部位を貫通して形成される、請求項1または請求項2に記載の端子付電線。
【請求項5】
前記当接部は、前記固定片において前記電線の先端側に向く縁に、前記電線の先端側、及び、前記基部側に向く傾斜端面を有する、請求項1または請求項2に記載の端子付電線。
【請求項6】
外周が被覆部で覆われ先端において導体部が露出した電線と、前記導体部に電気的に接続される端子と、を備え、前記端子は、前記電線の延在方向に沿って形成され、前記導体部と前記被覆部とに当接する基部と、前記導体部と前記基部とを溶接によって固定した溶接固定部と、前記基部の側部から立ち上がり前記被覆部の周面の一部に対向して配置された固定片と、前記固定片に形成され、前記被覆部において溶融して固化した溶融固化部が当接し、前記延在方向に沿って前記電線の後端側への当該溶融固化部の移動、及び、前記固定片の立ち上がり方向に沿って前記基部から離れる側への当該溶融固化部の移動を規制する当接部と、を含む、端子付電線の製造方法であって、
前記溶接固定部と前記導体部とを溶接で固定する工程と、
前記溶接の熱によって前記被覆部の一部が溶融した溶融部を前記当接部の前記規制する側へ入り込ませる工程と、
前記溶融部を固化した前記溶融固化部を形成する工程と、
を含む、端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付電線、及び、端子付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の圧着端子は、基板が電線に電気的に接続される。基板は、電線が延びる方向に沿う長さに形成される。基板は、両側から起立してかしめ加工により電線導体部を挟圧する一対の導体圧着部が形成される。基板は、長さ方向で導体圧着部に並んで両側から起立されかしめ加工により電線被覆部を挟圧する一対の被覆圧着部が形成される。基板は、電線導体部の先端が当接可能でエネルギービーム溶接が可能な当接壁が立設して形成される。そして、この圧着端子と電線の接続方法は、電線導体部の端面を当接壁に突き当てて位置決めし、導体圧着部、及び、被覆圧着部をかしめ加工し、その後に当接壁と導体部の先端とを溶着する。
【0003】
特許文献2に記載の端子付電線は、圧着端子が、上記基板に相当する底板部と、上記導体圧着部に相当する芯線圧着部と、上記被覆圧着部に相当する被覆圧着部と、を有する。そして、この圧着端子の取付方法は、被覆圧着部のかしめ加工と並行して、または、被覆圧着部のかしめ加工の後に、絶縁被覆における被覆圧着部のかしめ部と接触する部分を一時的に融解させ絶縁被覆をかしめ部に溶着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-085901号公報
【文献】特開平09-161580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような端子は、電線との適正な固定の点で更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電線と端子とを適正に固定することができる端子付電線、及び、端子付電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付電線は、外周が被覆部で覆われ先端において導体部が露出した電線と、前記導体部に電気的に接続される端子と、を備え、前記端子は、前記電線の延在方向に沿って形成され、前記導体部と前記被覆部とに当接する基部と、前記導体部と前記基部とを溶接によって固定した溶接固定部と、前記基部の側部から立ち上がり前記被覆部の周面の一部に対向して配置された固定片と、前記固定片に形成され、前記被覆部において溶融して固化した溶融固化部が当接し、前記延在方向に沿って前記電線の後端側への当該溶融固化部の移動、及び、前記固定片の立ち上がり方向に沿って前記基部から離れる側への当該溶融固化部の移動を規制する当接部と、を含む。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付電線の製造方法は、外周が被覆部で覆われ先端において導体部が露出した電線と、前記導体部に電気的に接続される端子と、を備え、前記端子は、前記電線の延在方向に沿って形成され、前記導体部と前記被覆部とに当接する基部と、前記導体部と前記基部とを溶接によって固定した溶接固定部と、前記基部の側部から立ち上がり前記被覆部の周面の一部に対向して配置された固定片と、前記固定片に形成され、前記被覆部において溶融して固化した溶融固化部が当接し、前記延在方向に沿って前記電線の後端側への当該溶融固化部の移動、及び、前記固定片の立ち上がり方向に沿って前記基部から離れる側への当該溶融固化部の移動を規制する当接部と、を含む、端子付電線の製造方法であって、前記溶接固定部と前記導体部とを溶接で固定する工程と、前記溶接の熱によって前記被覆部の一部が溶融した溶融部を前記当接部の前記規制する側へ入り込ませる工程と、前記溶融部を固化した前記溶融固化部を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る端子付電線、及び、端子付電線の製造方法は、電線と端子とを適正に固定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る端子付電線の製造前の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る端子付電線の斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る端子付電線の側面図である。
図4図4は、実施形態に係る端子付電線の側断面図である。
図5図5は、実施形態に係る端子付電線の製造方法のフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る端子付電線の他の例の側面図である。
図7図7は、実施形態に係る端子付電線の他の例の側面図である。
図8図8は、実施形態に係る端子付電線の他の例の側面図である。
図9図9は、実施形態に係る端子付電線の変形例の背面図である。
図10図10は、実施形態に係る端子付電線の変形例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
実施形態の端子付電線100は、車両等に配索されるワイヤハーネスに適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各機器に接続するようにしたものである。実施形態の端子付電線100は、電線Wと、端子1と、を備え、電線Wの先端に端子1を接続したものである。
【0013】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「上下方向Z」という。ここでは、延在方向Xと幅方向Yと上下方向Zとは、相互に略直交する。延在方向Xは、端子1が接続される電線Wの延在する方向に相当し、一方が正面側(先端側)、他方が背面側(後端側)という。幅方向Yと上下方向Zとは、延在方向Xと交差する交差方向に相当し、上下方向Zにおいて一方を上側、他方を下側という。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0014】
電線Wは、図1から図4に示すように、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性の被覆部W2と、を含んで構成される。電線Wは、被覆部W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。導体部W1は、導電性の金属である、銅や、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線を複数束ねた芯線や、複数の素線を撚り合わせた撚り芯線として構成される。被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。被覆部W2は、絶縁性の樹脂材料である、PP(Polypropylene)や、PVC(polyvinyl chloride)、架橋PE(polyethylene)等を押出成形することによって形成される。被覆部W2を構成する絶縁性の樹脂材料は、耐摩耗性や、耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。電線Wは、その先端において、被覆部W2が剥ぎ取られて導体部W1の先端部が被覆部W2の先端から露出して形成される。端子付電線100は、この導体部W1が露出している電線Wの先端に端子1が接続される。実施形態の電線Wは、図1に示すように、線状の延在方向Xと交差する方向の断面形状において導体部W1が略円形状、被覆部W2が略円環形状となっており全体として略円形状に形成され、延在方向Xで略同径に形成される。
【0015】
端子1は、主に、基部2と、溶接固定部3と、固定片4と、当接部5と、を含み構成される。端子1は、基部2と、溶接固定部3と、固定片4と、当接部5と、を含む全体が導電性の金属である、銅や、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で一体に形成され、その表面にすずメッキ等が施された端子金具である。端子1は、導電性の金属が各構成部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金を、プレス加工、及び、折り曲げ加工によって成形して立体的に一体で形成される。
【0016】
基部2は、電線Wの延在方向Xに沿って形成され、導体部W1と被覆部W2とに当接する部分である。基部2は、接続部2Aと、溶接部2Bと、支持部2Cと、固定部2Dと、を含む。基部2は、接続部2Aと、溶接部2Bと、支持部2Cと、固定部2Dと、がこの順で延在方向Xに沿って連続し、延在方向X、及び、幅方向Yにおいて板面を展開する板形状に形成される。ここで、延在方向Xにおいて接続部2Aに向く側を正面側とし、固定部2Dに向く側を背面側とする。
【0017】
接続部2Aは、導電性部材と電気的に接続される部分である。導電性部材は、例えば、アース部材(不図示)である。実施形態の接続部2Aは、板厚を貫通する貫通孔2Aaが形成され、この貫通孔2Aaにボルト等が挿通されてアース部材に対して電気的に接続される。なお、導電性部材は、相手側端子(不図示)であってもよい。この場合、接続部2Aは、相手側端子に対して電気的に接続される雄型、または、雌型の端子接続部として構成される。
【0018】
溶接部2Bは、接続部2Aの延在方向Xの背面側に連続して形成される。溶接部2Bは、幅方向Yの両側に溶接固定部3が形成される。溶接固定部3は、溶接部2Bから折り曲げ加工によって各図で示す上下方向Zの上側に立ち上がって形成される板片として構成される。溶接固定部3は、抵抗溶接やレーザ溶接等の熱によって溶融する部分であり、溶融後に固化することで電線Wの先端に露出した導体部W1と溶接部2Bとを固定する。従って、幅方向Yの両側に溶接固定部3が形成された溶接部2Bは、各溶接固定部3の間で電線Wの導体部W1を配置する幅寸法を有する。また、溶接部2Bは、溶融固化した溶接固定部3によって固定された電線Wの導体部W1が各図で示す上下方向Zの上側の板面に接触して配置される。
【0019】
支持部2Cは、溶接部2Bの延在方向Xの背面側に連続して形成される。支持部2Cは、溶接部2Bから背面側に向かって幅方向Yの幅寸法が大きくなるように広がって形成されている。支持部2Cは、溶接部2Bに向く正面側で幅方向Yの小さい幅寸法が溶接部2Bと同等であり、電線Wの導体部W1を配置する幅寸法を有する。また、支持部2Cは、背面側で幅方向Yの大きい幅寸法が電線Wの被覆部W2を配置する幅寸法を有する。さらに、支持部2Cは、溶接部2Bから背面側に向かって上下方向Zの下側に向けて傾斜して形成されている。従って、支持部2Cは、電線Wの被覆部W2から導体部W1が露出して外径が変化する部分において、導体部W1と被覆部W2とが各図で示す上下方向Zの上側の板面に沿って配置される。
【0020】
また、支持部2Cは、幅方向Yの両側に支持片6が形成される。支持片6は、支持部2Cから折り曲げ加工によって各図で示す上下方向Zの上側に立ち上がって形成される板片として構成される。実施形態の支持片6は、溶接固定部3と延在方向Xにおいて連続して形成されているが、連続していなくてもよい。また、支持片6は、溶接固定部3よりも上下方向Zの高さ寸法が小さく形成されている。各支持片6は、支持部2Cの延在方向Xに沿って形成され、背面側に向かって幅方向Yの間隔が大きくなるように形成されている。従って、各支持片6は、その間に、電線Wの被覆部W2から導体部W1が露出して外径が変化する部分を挟んで支持できる。
【0021】
固定部2Dは、支持部2Cの延在方向Xの背面側に連続して形成される。固定部2Dは、支持部2Cにおいて幅方向Yの幅寸法が大きくなった部分と幅寸法が同等である。固定部2Dは、接続部2A、及び、溶接部2Bと延在方向Xで平行に配置されている。従って、固定部2Dは、電線Wの被覆部W2が各図で示す上下方向Zの上側の板面に沿って配置される。また、固定部2Dは、幅方向Yの両側に固定片4が形成される。固定片4は、固定部2Dから折り曲げ加工によって各図で示す上下方向Zの上側の立ち上がり方向に立ち上がって形成される板片として構成される。各固定片4は、上下方向Zの高さ寸法が電線Wの被覆部W2の直径の半分を超えて形成される。各固定片4は、固定部2Dの延在方向Xに沿って形成されている。従って、各固定片4は、それぞれが電線Wの被覆部W2の周面の一部に対向して配置され、相互の間に被覆部W2を挟んで支持できる。
【0022】
当接部5は、固定片4に形成される。当接部5は、図1から図4に示す実施形態において、固定片4の正面側の縁に形成された切欠として構成されている。当接部5は、矩形状の切欠により構成され、固定片4の正面側の縁を正面側に開放するコ字形状に形成する。当接部5は、延在方向Xにおいて、背面側が塞がって正面側に向く第一端面5Aを形成する。また、当接部5は、上下方向Zにおいて、上側が塞がって下側に向く第二端面5Bを形成する。また、当接部5は、上下方向Zにおいて、第二端面5Bと対向し、下側が塞がって上側に向く第三端面5Cを形成する。当接部5は、電線Wの配置からすると、第一端面5Aが電線Wの先端側に向き、第二端面5Bが電線Wの基部2に対する接触側に向き、第三端面5Cが電線Wの基部2に対する離隔側に向く。
【0023】
上述した端子付電線100を製造する製造方法は、図1から図5に示すように、電線Wを基部2の上側の板面に載置し、抵抗溶接やレーザ溶接等の熱によって溶接固定部3と導体部W1とを溶接で固定する(ステップS1)。このとき、ステップS1の溶接の熱によって被覆部W2の一部が溶融した溶融部W2aを当接部5の中に入り込ませて幅方向Yの外側に出す(ステップS2)。次に、溶融部W2aを固化した溶融固化部W2a’を形成する(ステップS3)。
【0024】
ステップS2において、被覆部W2は、ステップS1で溶接固定部3に加わる熱が溶接部2Bから支持部2Cを経て固定部2Dに伝わり、図4に示すように固定部2Dの板面に沿う部分が溶融して変形する。そして、被覆部W2は、固定片4に挟まれることで溶融部W2aが当接部5の中に入り込み、当接部5から幅方向Yの外側にはみ出す。また、ステップS3において、溶融部W2aは、溶融固化部W2a’として固化し、当接部5の第一端面5A、第二端面5B、及び、第三端面5Cに突き当たる。
【0025】
このような製造方法により形成された端子付電線100は、当接部5の第一端面5Aに溶融固化部W2a’が当接することで、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。また、端子付電線100は、当接部5の第二端面5Bに溶融固化部W2a’が当接することで、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。
【0026】
ここで、例えば、端子を電線に取り付けて端子付電線を製造する際、かしめ加工を行う工程と、溶着を行う工程と、を要する場合、製造工数が多く、製造時間が嵩み、製造コストが高くなる傾向がある。また一方で、端子付電線は、電線Wと端子との脱落を抑制するため、電線Wが延在方向Xの後端側に移動する応力と、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することが要求される。
【0027】
これに対し、実施形態の端子付電線100、及び、端子付電線100の製造方法は、導体部W1を固定する溶接の熱によって被覆部W2が溶融した溶融部W2aを当接部5に入り込ませ、この溶融部W2aを固化した溶融固化部W2a’を形成している。このため、実施形態の端子付電線100、及び、端子付電線100の製造方法によれば、例えば、かしめ加工、及び、溶着の工程を要することがなく、溶接するだけでよく製造を容易に行うことができ、端子1と電線Wとを適正に固定できる。
【0028】
また、実施形態の端子付電線100では、当接部5は、被覆部W2において溶融して固化した溶融固化部W2a’が当接し、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動、及び、固定片4の立ち上がり方向である上下方向Zに沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。このため、実施形態の端子付電線100によれば、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することができ、端子1と電線Wとを適正に固定できる。
【0029】
具体的に、実施形態の端子付電線100は、当接部5の第一端面5Aが、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動を規制し、当接部5の第二端面5Bが、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。なお、実施形態の端子付電線100は、当接部5の第二端面5Bと第三端面5Cとの間で溶融固化部W2a’を上下方向Zで挟むため、電線Wが基部2に対して上下方向Zに振動することを抑制でき、端子1と電線Wとを適正に固定できる。
【0030】
図6から図8は、実施形態に係る端子付電線の他の例の側面図である。図6から図8に示す他の例の端子付電線101,102,103は、上述した端子付電線100に対して端子11,12,13の構成が異なる、具体的に、端子11,12,13は、上述した端子1に対して当接部51,52,53の構成が異なる。従って、端子付電線101,102,103の説明において、上述した端子付電線100、及び、端子1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
図6に示す実施形態の端子付電線101の端子11において、当接部51は、固定片4に形成される。当接部51は、固定片4の正面側の縁に形成された切欠として構成されている。当接部51は、矩形状の切欠により構成され、固定片4の正面側の縁を正面側に開放する逆L字形状に形成する。当接部51は、延在方向Xにおいて、背面側が塞がって正面側に向く第一端面51Aを形成する。また、当接部51は、上下方向Zにおいて、上側が塞がって下側に向く第二端面51Bを形成する。また、当接部51は、上下方向Zにおいて、第二端面51Bに対向し、下側が塞がって上側に向く第三端面51Cを形成する。第三端面51Cは、固定部2Dの上下方向Zの上側の板面と一致する。当接部51は、電線Wの配置からすると、第一端面51Aが電線Wの先端側に向き、第二端面51Bが電線Wの基部2に対する接触側に向き、第三端面51Cが電線Wの基部2に対する離隔側に向く。
【0032】
この端子付電線101を製造する製造方法は、端子付電線100と同様にステップ1からステップ3の工程を含む(図5参照)。ステップS2において、被覆部W2は、ステップS1で溶接固定部3に加わる熱によって溶融して変形した溶融部W2aが当接部51の中に入り込み、当接部51から幅方向Yの外側にはみ出す。また、ステップS3において、溶融部W2aは、溶融固化部W2a’として固化し、当接部51の第一端面51A、第二端面51B、及び、第三端面51Cに突き当たる。このため、実施形態の端子付電線101、及び、端子付電線101の製造方法によれば、溶接するだけでよく製造を容易に行うことができ、端子11と電線Wとを適正に固定できる。また、実施形態の端子付電線101は、当接部51の第一端面51Aが、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動を規制し、当接部51の第二端面51Bが、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。このため、実施形態の端子付電線101によれば、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することができ、端子11と電線Wとを適正に固定できる。なお、実施形態の端子付電線101は、当接部51の第二端面51Bと第三端面51Cとの間で溶融固化部W2a’を上下方向Zで挟むため、電線Wが基部2に対して上下方向Zに振動することを抑制でき、端子11と電線Wとを適正に固定できる。
【0033】
図7に示す実施形態の端子付電線102の端子12において、当接部52は、固定片4に形成される。当接部52は、固定片4の正面側の縁に形成された切欠として構成されている。当接部52は、三角形状の切欠により構成され、固定片4の正面側の縁を正面側に開放するV字形状に形成する。当接部52は、延在方向Xにおいて、正面側が固定片4の縁で開放し、背面側が塞がって正面側に向き、かつ、上下方向Zにおいて、上側が塞がって下側の基部2に向く傾斜端面52Eを形成する。また、当接部52は、上下方向Zにおいて、下側が塞がって上側に向く端面52Cを形成する。端面52Cは、固定部2Dの上下方向Zの上側の板面と一致する。当接部52は、電線Wの配置からすると、傾斜端面52Eが電線Wの先端側、及び、電線Wの基部2に対する接触側に向き、端面52Cが電線Wの基部2に対する離隔側に向く。
【0034】
この端子付電線102を製造する製造方法は、端子付電線100と同様にステップ1からステップ3の工程を含む(図5参照)。ステップS2において、被覆部W2は、ステップS1で溶接固定部3に加わる熱によって溶融して変形した溶融部W2aが当接部52の中に入り込み、当接部52から幅方向Yの外側にはみ出す。また、ステップS3において、溶融部W2aは、溶融固化部W2a’として固化し、当接部52の傾斜端面52E、及び、端面52Cに突き当たる。このため、実施形態の端子付電線102、及び、端子付電線102の製造方法によれば、溶接するだけでよく製造を容易に行うことができ、端子12と電線Wとを適正に固定できる。また、実施形態の端子付電線102は、当接部52の傾斜端面52Eが、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動を規制し、かつ、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。このため、実施形態の端子付電線102によれば、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することができ、端子12と電線Wとを適正に固定できる。なお、実施形態の端子付電線102は、当接部52の傾斜端面52Eと端面52Cとの間で溶融固化部W2a’を上下方向Zで挟むため、電線Wが基部2に対して上下方向Zに振動することを抑制でき、端子12と電線Wとを適正に固定できる。
【0035】
図8に示す実施形態の端子付電線103の端子13において、当接部53は、固定片4に形成される。当接部53は、固定片4の中央部位(縁に掛からない部位)を貫通して形成された孔(実施形態では円形状の孔)として構成されている。当接部53は、孔の一部が、延在方向Xにおいて、背面側が塞がって正面側に向く第一端面53Aを形成する。また、当接部53は、孔の一部が、上下方向Zにおいて、上側が塞がって下側に向く第二端面53Bを形成する。また、当接部51は、孔の一部が、上下方向Zにおいて、第二端面53Bに対向し、下側が塞がって上側に向く第三端面53Cを形成する。また、当接部51は、孔の一部が、延在方向Xにおいて、第一端面51Aに対向し、正面側が塞がって背面側に向く第四端面53Dを形成する。当接部53は、電線Wの配置からすると、第一端面53Aが電線Wの先端側に向き、第二端面53Bが電線Wの基部2に対する接触側に向き、第三端面53Cが電線Wの基部2に対する離隔側に向き、第四端面53Dが電線Wの後端側に向く。
【0036】
この端子付電線103を製造する製造方法は、端子付電線100と同様にステップ1からステップ3の工程を含む(図5参照)。ステップS2において、被覆部W2は、ステップS1で溶接固定部3に加わる熱によって溶融して変形した溶融部W2aが当接部53の中に入り込み、当接部53から幅方向Yの外側にはみ出す。また、ステップS3において、溶融部W2aは、溶融固化部W2a’として固化し、当接部53の第一端面53A、第二端面53B、第三端面53C、及び、第四端面53Dに突き当たる。このため、実施形態の端子付電線103、及び、端子付電線103の製造方法によれば、溶接するだけでよく製造を容易に行うことができ、端子13と電線Wとを適正に固定できる。また、実施形態の端子付電線103は、当接部53の第一端面53Aが、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2a’の移動を規制し、当接部53の第二端面53Bが、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2a’の移動を規制する。このため、実施形態の端子付電線103によれば、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することができ、端子13と電線Wとを適正に固定できる。なお、実施形態の端子付電線103は、当接部53の第二端面53Bと第三端面53Cとの間で溶融固化部W2a’を上下方向Zで挟むため、電線Wが基部2に対して上下方向Zに振動することを抑制でき、端子13と電線Wとを適正に固定できる。また、実施形態の端子付電線103は、当接部53の第一端面53Aと第四端面53Dとの間で溶融固化部W2a’を延在方向Xで挟むため、電線Wが基部2に対して延在方向Xに振動することを抑制でき、端子13と電線Wとを適正に固定できる。
【0037】
図9は、実施形態に係る端子付電線の変形例の背面図である。
【0038】
図9に示す変形例の端子付電線100では、固定片4は、電線Wの被覆部W2に向けて幅方向Yに弾性力を付与されている。具体的に、各固定片4は、図9に一点鎖線で示すように電線Wを取り付ける前は幅方向Yの内側に寄せて傾斜して形成されている。そして、各固定片4の間に電線Wの被覆部W2を配置することで、各固定片4が被覆部W2により幅方向Yの外側に押し広げられる。これにより、各固定片4は、被覆部W2に向けて幅方向Yに弾性力を付与される。
【0039】
図9に示す変形例の端子付電線100は、固定片4が被覆部W2に向けて弾性力を付与されているため、その製造のステップS2(図5参照)において、固定片4の弾性力によって溶融部W2aが当接部53の中に押し込まれて入り込みやすくなる。この結果、実施形態の端子付電線100、及び、端子付電線100の製造方法によれば、製造が容易であり、かつ、溶融固化部W2a’を確実に各端面5A,5B,5Cに当接させて、端子1と電線Wとを適正に固定できる。なお、上記の構造は、端子付電線101,102,103に適用することも可能である。
【0040】
図10は、実施形態に係る端子付電線の変形例の側断面図である。
【0041】
図10に示す変形例の端子付電線100では、基部2の固定部2Dに、上下方向Zに貫通する孔7が形成されている。孔7は、円形状やその他の形状に形成される。
【0042】
図10に示す変形例の端子付電線100は、その製造のステップS2(図5参照)において、導体部W1の溶接時に溶接固定部3に加わる熱によって被覆部W2が溶融して変形し、その溶融部W2bが孔7の中に入り込み、孔7から上下方向Zの下側にはみ出す。さらに、ステップ2の追加工程として、孔7から上下方向Zの下側にはみ出した溶融部W2bを延在方向X、及び幅方向Yを含む面方向に広げて変形させる。この追加工程は、固定部2Dの上下方向Zの下側から孔7を囲む凹型を用いることで実施できる。この追加工程により、固定部2Dの上下方向Zの下側で孔7の周縁に掛かる溶融部W2baが形成される。その後、ステップS3において、溶融部W2a,W2b,W2baを固化した溶融固化部W2a’,W2b’,W2ba’を形成する。
【0043】
図10に示す変形例の端子付電線100は、孔7が、延在方向Xに沿って電線Wの後端側への溶融固化部W2ab’の移動を規制する。また、図10に示す実施形態の端子付電線100は、孔7の周縁が、上下方向Zの上側である固定片4の立ち上がり方向に沿って基部2から離れる側への溶融固化部W2ba’の移動を規制する。このため、実施形態の端子付電線100によれば、電線Wが基部2から離れる側に移動する応力に耐える強度を有することができ、端子1と電線Wとを適正に固定できる。なお、実施形態の端子付電線100は、孔7の内周面で溶融固化部W2b’を囲むため、電線Wが基部2に対して延在方向Xに振動することを抑制でき、端子1と電線Wとを適正に固定できる。また、図10に示す実施形態の端子付電線100、及び、端子付電線100の製造方法によれば、溶接するだけでよく製造を容易に行うことができ、端子1と電線Wとを適正に固定できる。なお、上記の構成は、端子付電線101,102,103に適用することも可能である。
【0044】
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付電線100,101,102,103、及び、端子付電線100,101,102,103の製造方法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。また、本実施形態に係る端子付電線100,101,102,103、及び、端子付電線100,101,102,103の製造方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 端子
2 基部
3 溶接固定部
4 固定片
5 当接部
5A 第一端面
5B 第二端面
11 端子
51 当接部
51A 第一端面
51B 第二端面
12 端子
52 当接部
52E 傾斜端面
13 端子
53 当接部
53A 第一端面
53B 第二端面
100,101,102,103 端子付電線
W 電線
W1 導体部
W2 被覆部
W2a 溶融部
W2a’ 溶融固化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10