(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】吸引装置、吸引方法、溶接システム、溶接方法、及び付加製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20241106BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20241106BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241106BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241106BHJP
【FI】
B23K9/29 J
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021096813
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎井 直樹
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-329651(JP,A)
【文献】特開昭50-47851(JP,A)
【文献】特開2002-96173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
B33Y 10/00 - 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置であって、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出される、
ことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記第一経路、前記第二経路、及び前記第三経路の各経路に含まれる前記管状部材は、各経路において、複数の管状部材を含み、
前記複数の管状部材は、各々着脱自在である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記第二経路は、フィルターを有し、
前記フィルターは、厚さ方向において互いに対向する第一面及び第二面を有し、
前記ガス又は前記エアロゾルが前記フィルターの前記第一面に流入する入口と、前記ガス又は前記エアロゾルが前記フィルターの前記第二面から流出する出口と、の距離は、前記厚さ方向に垂直な平面上において10cm以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記第二経路は、少なくとも一つの計器を有し、
さらに、前記第二経路は、前記計器に接続されている前記管状部材内に配置された圧力損失部材と、空圧回路外への流出方向にのみ流体の流れを許容する逆止弁と、のうち少なくとも一つを有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記第二経路は、少なくともフロート式流量計を有し、
前記フロート式流量計は、前記フロート式流量計のフロートの位置を監視するセンサを備える、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項6】
少なくとも、前記センサにより、予め定めた値以下への流量減少が検出されるとアラーム信号及び作業強制停止信号のうち少なくとも一つを出力する異常検出部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の吸引装置。
【請求項7】
吸引装置を用いてガス又はエアロゾルを吸引する吸引方法であって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
を備え、
前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替えることにより、前記吸引噴出口の吸引機能と噴出機能とを切り替え、
前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、
前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスを噴出する、
ことを特徴とする吸引方法。
【請求項8】
シールドガスを溶接部に供給するシールドガス供給ノズルと、前記シールドガスを吸引する吸引ノズルと、を有する溶接トーチと、
ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置と、
を備える溶接システムであって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出され、
前記溶接トーチの前記吸引ノズルは、前記吸引装置の前記吸引噴出口に接続される
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項9】
請求項8に記載の溶接システムを用いて溶接する溶接方法。
【請求項10】
請求項8に記載の溶接システムによって溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層造形物を積層造形する付加製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置、吸引方法、溶接システム、溶接方法、及び付加製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機、溶接装置、付加製造装置等の各種機械には、粉塵、水素源、ヒューム等の除去を目的とした吸引機構を設ける場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、溶接で発生する水素源を吸引する溶接装置を開示している。より具体的には、特許文献1の溶接装置は、溶接ワイヤを案内するとともに当該溶接ワイヤに溶接電流を供給するコンタクトチップと、コンタクトチップから突き出された溶接ワイヤの周囲を囲み、且つ当該溶接ワイヤの先端部に向けて開口してガスを吸引する吸引部と、を有する。そして、吸引部が、コンタクトチップから突き出された溶接ワイヤの周囲および当該溶接ワイヤの先端部近傍から、当該溶接ワイヤから放出された水素源を吸引することによって、溶接金属中の拡散性水素量を低減することを図っている。
【0004】
また、特許文献2は、溶接で発生するヒュームを吸引する機構を備えたレーザ溶接装置を開示している。より具体的には、特許文献2の溶接装置は、レーザ光を集光し被溶接材に照射する加工ヘッドと、レーザ光の照射部に溶接ワイヤを給送する給送手段と、レーザ光の照射により形成された溶融プールおよびその近傍を保護するシールドガス供給手段と、加工ヘッドあるいは被溶接材を移動させる手段と、溶融部から生ずるヒュームやスパッタなどの溶接生成物を吸引する吸引手段と、レーザ反射光や溶融部の輻射熱から加工ヘッドを保護する保護手段と、溶接金属表面に体積した溶接生成物を除去するクリーニング手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-137518号公報
【文献】特開2012-000630号公報
【文献】特開2017-087203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工機、溶接装置、付加製造装置等の各種機械の作業で発生する粉塵、水素源、ヒューム等は、吸引機構を有する装置(以降、吸引装置と称する)に入り込むため、吸引装置内の清掃、計器の検査、フィルターの交換等のメンテナンスが必要となる。アーク溶接や付加製造技術に含まれるアーク溶接を活用したWAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)等は、特にヒュームの発生量が多く、上記メンテナンスを頻繁に行わないといけない。しかしながら、特許文献1、2には、吸引装置のメンテナンスについては記載されていない。
【0007】
吸引装置のメンテナンスについて、例えば特許文献3には、加工機用の集塵装置が開示されている。特許文献3の加工機用の集塵装置は、加工される対象物から発生する煙や粉塵を吸引して引き込むダクトの途中に設けられる加工機用の集塵装置であって、筒型に設けられ、吸引する空気によって内部に回転気流を発生させる本体と、本体の内壁面に沿って設けられ、回転気流によって空気から分離された煙や粉塵を捕獲する第1捕獲部と、本体の内部の途中から、本体の一方端を貫通して外部に延出する排気管と、を備える。しかしながら、特許文献3は、吸引装置としては大型のもので、簡易的に持ち運びできず、例えば、作業位置を転々とする現場溶接や現場加工には適さず、汎用的では無い。なお、特許文献1や特許文献2にも吸引装置の汎用性やコンパクト性について、特に記載されていない。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンス性が良好で、構造が簡易的かつコンパクトで汎用性の高い吸引装置、吸引方法、溶接システム、溶接方法、及び付加製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、吸引装置に係る下記[1]の構成により達成される。
[1] ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置であって、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出される、
ことを特徴とする吸引装置。
【0010】
本発明の上記目的は、吸引方法に係る下記[2]の構成により達成される。
[2] 吸引装置を用いてガス又はエアロゾルを吸引する吸引方法であって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
を備え、
前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替えることにより、前記吸引噴出口の吸引機能と噴出機能とを切り替え、
前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、
前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスを噴出する、
ことを特徴とする吸引方法。
【0011】
本発明の上記目的は、溶接システムに係る下記[3]の構成により達成される。
[3] シールドガスを溶接部に供給するシールドガス供給ノズルと、前記シールドガスを吸引する吸引ノズルと、を有する溶接トーチと、
ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置と、
を備える溶接システムであって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出され、
前記溶接トーチの前記吸引ノズルは、前記吸引装置の前記吸引噴出口に接続される
ことを特徴とする溶接システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンス性が良好で、構造が簡易的かつコンパクトで汎用性の高い吸引装置、吸引方法、溶接システム、溶接方法、及び付加製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る吸引装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は吸引装置の各要素を収容する筐体の側面図であり、
図3(b)は筐体の正面図である。
【
図4】
図4(a)~(g)はそれぞれ、変形例に係るフィルターを厚さ方向から見た図である。
【
図5】
図5(a)~(c)はそれぞれ、変形例に係るフィルターを厚さ方向から見た図である。
【
図6】
図6(a)~(c)はそれぞれ、変形例に係るフィルターを厚さ方向から見た図である。
【
図9】管状部材の内部に配置された圧力損失部材を示す図である。
【
図10】溶接システムの概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る吸引装置、吸引方法、溶接システム、溶接方法、及び付加製造方法についての実施形態を説明する。なお、各図は、本発明の説明のために作成されたものであり、本発明の実施形態は、図示の内容に限らない。
【0015】
<吸引装置>
図1は、実施形態に係る吸引装置1の構成例を示す図である。
図1に示す吸引装置1は、加工機、溶接装置、付加製造装置等の各種装置に用いられ、これら各種装置によって発生する異物であるガスやエアロゾルを吸引する。例えば、吸引装置1が加工機に用いられる場合には、吸引装置1は加工される対象物から発生する煙や粉塵等を吸引する。また、吸引装置1が溶接蔵置や付加製造装置に用いられる場合には、吸引装置1は、溶接ワイヤから放出された水素源が含まれるガスや、高温のアークによって金属及び酸化物が蒸発することによって発生するヒューム等を吸引する。
【0016】
吸引装置1は、圧縮ガスが流入する流入口3と、ガス又はエアロゾルを吸引し、又は後述する経路切替によって圧縮ガスを噴出する吸引噴出口5と、経路切替部7と、エジェクタ10と、フィルター20と、逆止弁31,33,35と、電磁弁37と、流量計41と、真空度計43、圧力計45と、分岐管51,53,55,57,59と、これら各要素を繋ぐ管状部材A~Rと、これら各要素を収容する筐体2と、を備えている。
【0017】
管状部材A~Rとしては、種類、径、材質等は特に問わず、一般的なゴム製、樹脂製のものを用いればよいが、例として鋼管、ホース、チューブ等が挙げられる。管状部材Aは流入口3と分岐管51とを接続する。管状部材Bは分岐管51と電磁弁37とを接続する。管状部材Cは分岐管51と圧力計45とを接続する。管状部材Dは電磁弁37と分岐管53とを接続する。管状部材Eは分岐管53とエジェクタ10の駆動口11とを接続する。管状部材Fは分岐管53と経路切替部7とを接続する。管状部材Gは吸引噴出口5と分岐管55とを接続する。管状部材Hは分岐管55と逆止弁31とを接続する。管状部材Iは逆止弁31と分岐管57とを接続する。管状部材Jは分岐管57と経路切替部7とを接続する。管状部材Kは分岐管55とフィルター20とを接続する。管状部材Lはフィルター20と逆止弁33とを接続する。管状部材Mは逆止弁33と分岐管57とを接続する。管状部材Nは経路切替部7と分岐管59とを接続する。管状部材Oは分岐管59と真空度計43とを接続する。管状部材Pは分岐管59と逆止弁35とを接続する。管状部材Qは分岐管59と流量計41とを接続する。管状部材Rは流量計41とエジェクタ10の吸込口13とを接続する。なお、図中の経路の交差部には、実質的に流体の障害となるものはない。
【0018】
流入口3とエジェクタ10の駆動口11との間を繋ぐ管状部材A,B,D,Eを含む経路を第一経路と呼ぶ。吸引噴出口5とエジェクタ10の吸込口13との間を繋ぐ管状部材G,K,L,M,J,N,Q,Rを含む経路を第二経路と呼ぶ。流入口3と吸引噴出口5との間を繋ぐ管状部材A,B,D,F,J,I,H,Gを含む経路を第三経路と呼ぶ。第一経路及び第三経路は、経路の一部を共通としており、具体的には管状部材A,B,Dを共通とする。第二経路及び第三経路は、経路の一部を共通としており、具体的には管状部材G,Jを共通とする。
【0019】
第一~第三経路はそれぞれ複数の管状部材A~Rを含み、これら複数の管状部材A~Rは各々着脱自在である。したがって、第一~第三経路がそれぞれ単一の管状部材によって構成される場合と比べ、管状部材A~Rの着脱が容易でありメンテナンス性が向上する。
【0020】
特に、本実施形態においては、吸引噴出口5から粉塵等の異物が吸引されるため、吸引噴出口5近傍の管状部材G,K,Hが汚染されやすい。しかしながら、それぞれの管状部材G,K,Hが独立して着脱自在であるので、メンテナンスが必要な管状部材G,K,Hのみ着脱して清掃又は交換することが可能である。また、図示の管状部材Hは全長が比較的長いため、全体のうち吸引噴出口5に近い部位だけ汚染される傾向にある。したがって、管状部材Hは、継手等を介して複数の管状部材に分割されることにより、汚染された部位のみ交換しやすいように構成してもよい。
【0021】
流入口3は、吸引装置1が吸引機能または噴出機能を発現するための圧縮ガスが流入する入力部である。後述するように、吸引装置1は、吸引機能と噴出機能とを簡便な構成で切り替え可能である。なお、入力する圧縮ガスの種類は特に問わないが、一般的にはコストの観点から圧縮エアを用いると良い。また、圧縮ガスのゲージ圧は、0.2~1.0MPaの範囲内であることが好ましい。圧縮ガスのゲージ圧は、圧力計45によって計測される。
【0022】
吸引噴出口5は、主な機能として吸引を行い、各種エンドエフェクタに繋げて使用される。例えば、吸引装置1が溶接装置に用いられる場合、吸引噴出口5は溶接トーチに繋げられる。この吸引噴出口5は上述の通り、主に吸引を目的とした出力部であるが、空圧回路内の清掃を目的に、後述する経路切替により圧縮ガスを吸引噴出口5から噴出することができ、粉塵、水素源、ヒューム等が堆積して汚染された経路を清掃することができる。この清掃機能により、吸引装置1のオーバーホールの頻度を少なくできるため、メンテナンス性が向上する。
【0023】
経路切替部7は、第二経路と第三経路との間に配置され、第二経路と第三経路との接続を切り替えることによって吸引噴出口5における吸引機能と噴出機能とを切り替える。本実施形態の経路切替部7は、管状部材N,Jを接続する経路7Aに切り替えることで吸引機能を発現させ、管状部材F,Jを接続する経路7Bに切り替えることで噴出機能を発現させる。装置のコンパクト化の観点から経路切替部7は空圧回路内で一か所に留めておくことが好ましい。経路切替部としては、汎用切替バルブを適用することが好ましい。
【0024】
エジェクタ10は、圧縮ガスをノズルから高速で噴射することにより、ノズル周辺の空気が吸引されて圧力が低下する現象を利用し、負圧を発生させる装置である。エジェクタは一般的に、圧縮ガスを流入する駆動口と、この圧縮ガスを高速で噴射することにより吸引作用が働く吸込口と、駆動口と吸込口から入った流体を外に排出する吐出口と、の三つの口を有する。
【0025】
図2には、実施形態に係るエジェクタ10が示されている。エジェクタ10は、管状部材A,B,D,E(第一経路)を介して流入口3に接続する駆動口11と、管状部材G,K,L,M,J,N,Q,R(第二経路)を介して吸引噴出口5に接続する吸込口13と、外部に接続する吐出口15と、を有する。エジェクタ10は、T字管であり、一般的なエジェクタの機能を有する。即ち、駆動口11から水平方向に圧縮エア等の駆動ガスを流入させることにより、管内の細径となる部分であるノズル17で流速が増し、T字の垂直線にあたる管が吸込口13となり、当該吸込口13を介してガスやエアロゾルの吸引が行われる。
【0026】
吸込口13によって吸引されるガス又はエアロゾルは、第二経路に配置されたフィルター20によって汚染物質が除去されている。より具体的には、フィルター20は、吸引噴出口5から吸引されたガスやエアロゾルから空圧回路を汚染する物質を除去するために用いられる。吸引されるガスとしては例えば水素源の気化ガスを含有するシールドガスがあり、その水素源は油分や水分であるため、空圧回路内で凝縮するおそれがある。吸引されるエアロゾルとしては、例えば水素源の液体粒子を含むエアロゾルや、ヒュームや粉塵等がある。さらに水素源の凝縮液体とヒュームや粉塵が狭い空圧回路内で混合されると、固着し閉塞のおそれが強くなる。そのため、フィルター20は吸引噴出口5近傍に配置することが好ましい。
図1の例では、フィルター20は、吸引噴出口5近傍の管状部材Kに接続されている。
【0027】
そして、フィルター20によって汚染物質が除去されたガスやエアロゾルは、エジェクタ10の吸込口13によって吸引され、駆動ガスによって吐出口15に送られて外部に排出される。このように、エジェクタ10は構造がシンプルで長寿命であり、電源を必要としないため、空圧回路の簡易化、装置のコンパクト化に最適といえる。
【0028】
図3(a)には、吸引装置1の各要素を収容する筐体2の側面図が示されている。
図3(b)には、吸引装置1の各要素を収容する筐体2の正面図が示されている。なお、
図3(b)には図示されていないが、筐体2の正面には、吸引装置1の各種操作スイッチや、流量計41、真空度計43、圧力計45等の計器、流入口3、吸引噴出口5等を配置してよい。
図3(a)及び(b)には、筐体2内部のケース(不図示)に設置されたフィルター20が破線で示されている。フィルター20の形状は、図示の例では直方体とされている。
【0029】
フィルター20は、その厚さ方向(
図3(a)の紙面奥行き方向。
図3(b)の左右方向。)において互いに対向する第一面21及び第二面23を有する。そして、第一面21には、吸引噴出口5から吸入されたガス又はエアロゾルが流入する入口25が近接して対向配置され、第二面23には、フィルター20内を通ったガス又はエアロゾルが流出する出口27が近接して対向配置される。なお、入口25や出口27は、フィルター20を収容するケース部材(不図示)に設けられた孔である。入口25は管状部材Kに接続され、出口27は管状部材Lに接続される。フィルター20によってヒュームや粉塵等を効率よく捕集するため、入口25と出口27との間の、フィルター20の厚さ方向に垂直な平面上の距離Lは、十分長いことが好ましく、10cm以上であることが好ましく、15cm以上であることがより好ましく、18cm以上であることがさらに好ましい。
図3(a)のように、フィルター20の厚さ方向から見た形状が矩形状の場合は、当該矩形状の対角線D上に入口25及び出口27を配置すれば、入口25と出口27との距離Lを長くできてよい。
【0030】
フィルター20は、フィルター20の長寿命化によるメンテナンス性の向上、装置のコンパクト化の観点から、厚さ方向における厚さTが小さく、厚さ方向から見た面積Sが大きい形状が好ましい。より具体的には、厚さTは、7.0cm以下であることが好ましく、4.5cm以下であることがより好ましく、3.0cm以下であることがさらに好ましい。面積Sは、100cm2以上であることが好ましく、150cm2以上であることがより好ましく、250cm2以上であることがさらに好ましい。厚さ方向から見た面積Sと、厚さ方向における厚さTとの比S/Tは、10以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。
【0031】
なお、入口25及び出口27の個数は、単数に限らず、それぞれ複数であってもよい。
図4(a)~(g)はそれぞれ、変形例に係るフィルター20を厚さ方向から見た図である。
図4(a)~(g)のフィルター20は、
図3(a)及び(b)のフィルター20と同様の直方体形状であるが、第一面21に設けられる入口25及び第二面23に設けられる出口27の個数及び配置が異なる。なお、
図4(a)~(g)において、入口25は黒色の丸で示され、出口27は白抜きの丸で示されている。また、フィルター20の第一面21又は第二面23の矩形状の二つの対角線D1,D2のうち、左上から右下に向かって延びるものを第一対角線D1とし、左下から右上に向かって延びるものを第二対角線D2とする。
【0032】
図4(a)のフィルター20においては、入口25及び出口27が二つずつ配置される。二つの入口25,25はそれぞれ、第一対角線D1の左上部及び第二対角線D2の左下部に配置される。二つの出口27,27はそれぞれ、第一対角線D1の右下部及び第二対角線D2の右上部に配置される。すなわち、第一面21又は第二面23を厚さ方向から見た矩形状の四隅に、入口25、入口25、出口27、出口27がこの順で配置される。
【0033】
図4(b)のフィルター20においては、入口25及び出口27が二つずつ配置される。二つの入口25,25はそれぞれ、第一対角線D1の左上部及び右下部に配置される。二つの出口27,27はそれぞれ、第二対角線D2の左下部及び右上部に配置される。すなわち、第一面21又は第二面23を厚さ方向から見た矩形状の四隅に、入口25、出口27、入口25、出口27がこの順で配置される。
【0034】
図4(c)のフィルター20においては、入口25及び出口27が三つずつ配置される。三つの入口25,25のうち二つはそれぞれ、第一対角線D1の左上部及び第二対角線D2の左下部に配置される。三つの出口27,27のうち二つはそれぞれ、第一対角線D1の右上部及び第二対角線D2の右下部に配置される。すなわち、第一面21又は第二面23を厚さ方向から見た矩形状の四隅に、入口25、入口25、出口27、出口27がこの順で配置される。さらに、残りの一つの入口25は、二つの出口27,27の中間部に配置され、残りの一つの出口27は、二つの入口25,25の中間部に配置される。
【0035】
図4(d)のフィルター20においては、入口25が一つ配置され、出口27が二つ配置される。入口25は、第一対角線D1と第二対角線D2とが交わる矩形状の中心Oに配置される。二つの出口27,27はそれぞれ、第二対角線D2の左下部及び右上部に配置される。すなわち、入口25は、第二対角線D2上において、二つの出口27,27の間の中央に配置される。
【0036】
図4(e)のフィルター20においては、入口25が一つ配置され、出口27が四つ配置される。入口25は、第一対角線D1と第二対角線D2とが交わる矩形状の中心Oに配置される。四つの出口27,27,27,27はそれぞれ、第一対角線D1の左上部及び右下部並びに第二対角線D2の左下部及び右上部に配置される。すなわち、第一面21又は第二面23を厚さ方向から見た矩形状の四隅に、四つの出口27,27,27,27が配置され、これら四つの出口27,27,27,27の中央に入口25が配置される。
【0037】
図4(f)のフィルター20においては、入口25が二つ配置され、出口27が一つ配置される。二つの入口25,25それぞれ、第二対角線D2の左下部及び右上部に配置される。出口27は、第一対角線D1と第二対角線D2とが交わる矩形状の中心Oに配置される。
すなわち、出口27は、第一対角線D1上において、二つの入口25,25の間の中央に配置される。
【0038】
図4(g)のフィルター20においては、入口25が四つ配置され、出口27が一つ配置される。四つの入口25,25,25,25はそれぞれ、第一対角線D1の左上部及び右下部並びに第二対角線D2の左下部及び右上部に配置される。出口27は、第一対角線D1と第二対角線D2とが交わる矩形状の中心Oに配置される。すなわち、第一面21又は第二面23を厚さ方向から見た矩形状の四隅に、四つの入口25,25,25,25が配置され、これら四つの入口25,25,25,25の中央に出口27が配置される。
【0039】
図4(a)~(g)のフィルター20によれば、入口25から出口27に向かう流体の透過体積を大きくすることができ、ヒュームや粉塵等が効率良く捕集できる。
【0040】
フィルター20の形状は、
図3(a)~(b)及び
図4(a)~(g)に示したような直方体形状に限定されるものではなく、任意の形状が選択でき、例えば、円柱形状や角柱形状であってもよい。
【0041】
図5(a)~(c)はそれぞれ、変形例に係るフィルター20を厚さ方向から見た図である。
図5(a)~(c)のフィルター20は円柱形状であり、厚さ方向から見た第一面21及び第二面23が円形状である。
【0042】
図5(a)のフィルター20においては、入口25及び出口27が一つずつ配置される。入口25及び出口27は、フィルター20を厚さ方向から見た円形状の直径E上の両端部に配置される。すなわち、入口25及び出口27は、周方向に180度の位相で配置される。
【0043】
図5(b)には、フィルター20を厚さ方向から見た円形状の二つの直径E1,E2が示されている。これら二つの直径E1,E2は、中心Oにおいて互いに直交する。このフィルター20においては、入口25及び出口27が二つずつ配置される。二つの入口25,25は、一方の直径E1の両端部に配置され、二つの出口27,27は、他方の直径E2の両端部に配置される。すなわち、入口25及び出口27は、周方向に90度の位相で交互に配置される。
【0044】
図5(c)には、フィルター20を厚さ方向から見た円形状の二つの直径E1,E2が示されている。これら二つの直径E1,E2は、中心Oにおいて互いに直交する。このフィルター20においては、入口25が四つ配置され、出口27が一つ配置される。二つの入口25,25は一方の直径E1の両端部に配置され、他の二つの入口25,25は他方の直径E2の両端部に配置される。出口27は中心Oに配置される。すなわち、四つの入口25,25,25,25は周方向に90度の位相で配置され、これらの入口25,25,25,25の中央に出口27が配置される。
【0045】
図6(a)~(c)はそれぞれ、変形例に係るフィルター20を厚さ方向から見た図である。
図6(a)~(c)のフィルター20は六角柱形状であり、厚さ方向から見た第一面21及び第二面23が六角形形状である。
【0046】
図6(a)のフィルター20においては、入口25及び出口27が一つずつ配置される。入口25及び出口27は、フィルター20を厚さ方向から見た六角形形状の180度位相が異なる頂点同士を結ぶ対角線Fの両端部に配置される。すなわち、入口25及び出口27は、周方向に180度の位相で配置される。
【0047】
図6(b)には、フィルター20を厚さ方向から見た六角形形状において、対角線Fと中心Oにおいて直交する直交線Gが示されている。このフィルター20においては、入口25及び出口27が二つずつ配置される。二つの入口25,25は、対角線Fの両端部に配置され、二つの出口27,27は、直交線Gの両端部に配置される。すなわち、二つの入口25,25及び二つの出口27,27は、周方向に90度の位相で交互に配置される。
【0048】
図6(c)には、フィルター20を厚さ方向から見た六角形形状の180度位相が異なる頂点同士を結ぶ三つの第一~第三対角線F1,F2,F3が示されている。このフィルター20においては、入口25が六つ配置され、出口27が一つ配置される。二つの入口25,25は第一対角線F1の両端部に配置され、二つの入口25,25は第二対角線F2の両端部に配置され、二つの入口25,25は第三対角線F3の両端部に配置される。出口27は中心Oに配置される。すなわち、六つの入口25は、周方向に60度の位相で配置され、これらの入口25の中央に出口27が配置される。
【0049】
以上のような
図5(a)~(c)及び
図6(a)~(c)のフィルター20によれば、入口25から出口27に向かう流体の透過体積を大きくすることができ、ヒュームや粉塵等が効率良く捕集できる。
【0050】
なお、
図4(a)~(g)、
図5(a)~(c)、及び
図6(a)~(c)のフィルター20においても、入口25と出口27との距離L、フィルター20の厚さT及び面積S、並びに比S/Tは、
図3(a)及び(b)を用いて上述した好適な範囲とすることが望ましい。
【0051】
逆止弁31,33,35は、空圧回路上において、流体の方向を一方向に制限するために用いる。本実施形態において、逆止弁31は管状部材Iから管状部材Hに向かう流体の流れのみを許容し、逆止弁33は管状部材Lから管状部材Mに向かう流体の流れのみを許容し、逆止弁35は管状部材Pから空圧回路外に向かう流体の流れのみを許容する。
【0052】
電磁弁37は、流入口3近傍に配置される。本実施形態においては、電磁弁37は、管状部材A,Bを介して流入口3に接続される。吸引装置1は、電磁弁37の開閉を制御することで、吸引の起動及び停止を制御する吸引装置起動制御部70を備えてもよい。
【0053】
図7に示すように、吸引装置起動制御部70は、各種装置による作業の開始または停止を知らせる信号を受信する受信器71と、受信器が受信した信号に基づいて吸引装置1の起動停止信号を生成する判定器73と、圧縮ガスのエジェクタ10への供給を制御する電磁弁37と、判定器73が生成した起動停止信号に基づいて電磁弁37を駆動する電磁弁駆動装置75と、を備えてもよい。
【0054】
例えば、吸引装置1が溶接装置に用いられる場合、溶接電源から出力されるアークスタート信号が吸引装置起動制御部70に入力され、電磁弁37の開閉が行われる。そして、吸引装置起動制御部70は、溶接が開始されたときに、電磁弁37を開いてエジェクタ10へ圧縮ガスを供給して吸引が開始されるように制御する。また、吸引装置起動制御部70は、溶接が停止したとき、または停止から少し遅れて、電磁弁37を閉じてエジェクタ10への圧縮ガスの供給を止めて吸引が停止されるように制御する。そのため圧縮ガスは必要なときだけ消費されることとなり、圧縮ガスの消費量が抑制される。
【0055】
本実施形態に用いられる計器は、流量計41、真空度計43、圧力計45が挙げられるが、これに限定する必要はなく、必要に応じて計器を追加すればよい。流量計41及び真空度計43は、吸引噴出口5からのガス又はエアロゾルの吸引量を把握するために用い、圧力計45は流入口3からの圧縮ガスの消費量や吸引力を生じさせる駆動力を把握するために用いると良い。
【0056】
流量計41は例えばフロート式の流量計であり、第二経路において、フィルター20の下流に配置されることが好ましい。また、流量計41は、フロートの位置を監視するセンサを備えることが好ましい。吸引装置1は、センサにより、予め定めた値以下への流量減少、即ち吸込量の異常、が検出されるとアラーム信号及び作業強制停止信号のうち少なくとも一つを出力する異常検出部60を有することが好ましい。
【0057】
図8に示すように、異常検出部60は、吸引流量に比例したアナログ信号またはデジタル信号を出力する流量計41と、アナログ信号またはデジタル信号で吸引流量の異常値の基準となる閾値を出力する基準閾値設定器61と、流量計41の信号と基準閾値設定器61の信号とを受けて異常を判定し、アラーム信号や作業強制停止信号を出力する異常判定器63と、を備える。また、異常検出部60は、異常判定器63が出力した信号を受けてアラームを発生するブザー、バイブレーション又は警告灯等の聴覚的、触覚的又は視覚的な伝達手段によって、異常を伝達する異常表示器65を備える。さらに、異常検出部60は、異常判定器63が出力した作業強制停止信号を受けて、吸引装置1が用いられる各種装置の作業を停止させる機能を持つ作業停止制御部67を備える。吸引装置1が溶接装置に用いられる場合、作業停止制御部67は、溶接トーチでのアーク出力を指示するトーチスイッチ信号に割り込んで溶接を停止させる。
【0058】
流量計41がフロート式の場合、基準閾値設定器61は、フロートの位置の上限及び下限の少なくともいずれか一方に設置されたフォトセンサである。また、異常表示器65及び作業停止制御部67は、いずれか一方だけ設けられた構成としても良い。このような異常検出部60を用いることで、作業者が吸引量の異常に気付かず作業を続行することが抑制される。
【0059】
<吸引装置の経路>
本実施形態においては、吸引装置1内の空圧回路に、少なくとも、流入口3とエジェクタ10の駆動口11との間を繋ぐ管状部材A,B,D,Eを含む第一経路と、吸引噴出口5とエジェクタ10の吸込口13との間を繋ぐ管状部材G,K,L,M,J,N,Q,Rを含む第二経路と、流入口3と吸引噴出口5との間を繋ぐ管状部材A,B,D,F,J,I,H,Gを含む第三経路と、を有する。以下、
図1を参照し、吸引噴出口5で吸引作用が起こる場合の経路と噴出作用が起こる場合の経路の切替え方法について説明する。
【0060】
<吸引経路>
吸引噴出口5からガス又はエアロゾルを吸引してエジェクタ10の吸込口13に導く空圧回路は、少なくともエジェクタ10を作動させる第一経路と吸引経路となる第二経路で構成される。第一経路は、
図1上のA,B,D,Eで示す管状部材によって繋げられた経路を取る。したがって、第一経路は、経路切替部7の経路7Aが開かれて第二経路が接続され、経路7Bが閉じられて第三経路が接続されていない場合に、圧縮エアがエジェクタ10の駆動口11に流入する経路となる。
【0061】
第二経路は、
図1上のG,K,L,M,J,N,Q,Rで示す管状部材によって繋げられた経路を取る。経路切替部7の経路7Aが開けられて第二経路が接続され、経路7Bが閉じられて第三経路が接続されていない場合、管状部材Nは管状部材Jにつながる。管状部材Jは経路切替部7と分岐管57に接続される。分岐管57は、管状部材Iによって逆止弁31に接続され、管状部材Mによって逆止弁33に接続される。逆止弁31は、管状部材H、分岐管55、及び管状部材Gを介して吸引噴出口5に接続される。逆止弁33は、管状部材L、フィルター20、管状部材K、分岐管55、及び管状部材Gを介して吸引噴出口5に接続される。ここで、逆止弁31は管状部材Iから管状部材Hに向かう流体の流れのみを許容し、逆止弁33は管状部材Lから管状部材Mに向かう流体の流れのみを許容する。したがって、経路切替部7の経路7Aが開状態でエジェクタ10の吸込口13から吸引が行われる場合には、吸引噴出口5から吸入されたガス又はエアロゾルは、管状部材G、分岐管55、管状部材H、逆止弁31の経路は通らず、管状部材G、分岐管55、管状部材K、フィルター20、管状部材L、逆止弁33の経路を通って、エジェクタ10の吸込口13に導かれる。このように、吸引噴出口5から、ガス又はエアロゾルが吸引される。
【0062】
<噴出経路>
吸引噴出口5から圧縮エア等の駆動ガスを噴出する噴出経路は、少なくとも第三経路で構成される。第三経路は、管状部材A,B,D,F,J,I,H,Gによって繋げられた経路を取る。即ち、第三経路は、経路切替部7の経路7Aが閉じられて第二経路が接続されておらず、経路7Bが開かれて第三経路が接続されている場合に、圧縮ガスがエジェクタ10を介さず経路切替部7の経路7Bを介して管状部材Jに流入する経路となる。なお、この場合も、管状部材Eを介して、エジェクタ10の駆動口11にも圧縮ガスが入る経路は形成されているが、エジェクタ10は、圧縮ガスを管内の細径となる部分であるノズル17(
図2参照)から高速で噴射する機構ゆえに圧損が大きく、他に圧損の小さいガスの逃げ道がある場合は、ノズル17を通過する流体の量は低下する。よって、分岐管53に到達した圧縮ガスの大部分は、管状部材Fの方向へ流れる。
【0063】
管状部材Jは、管状部材Iを介して逆止弁31に接続し、管状部材Mを介して逆止弁33に接続する。ここで、逆止弁31は管状部材Iから管状部材Hに向かう流体の流れのみを許容し、逆止弁33は管状部材Lから管状部材Mに向かう流体の流れのみを許容する。したがって、経路切替部7の経路7Bが開状態で吸引噴出口5から噴出が行われる場合には、圧縮ガスは、管状部材M、逆止弁33、管状部材L、フィルター20、管状部材K,Gの経路を通らず、管状部材I、逆止弁31、管状部材H,Gの経路を通り、吸引噴出口5に到達する。このように、流入口3から流入した圧縮ガスは、吸引噴出口5から噴出する。
【0064】
<経路の切替>
経路切替部7は、第二経路と第三経路との間に配置され、第二経路中の管状部材Nと管状部材Jが繋がる経路7Aと、第二経路中の管状部材Fと管状部材Jが繋がる経路7Bと、の切替を行うことで、第二経路と第三経路との接続を切り替える。上記のように、一つの経路切替部7のみで、吸引経路と噴出経路が容易に切り替えられる。簡易的な空圧回路を実現するためには、経路切替部7として汎用切替バルブが用いられることが好ましい。しかし、汎用切替バルブを用いた場合、経路切替時に3方向の管状部材F,J,Nが同時接続されるタイミングが生じることがある。そのため、経路切替時に、圧縮ガスが第二経路の管状部材Nに流入し、第二経路の圧力が負圧から正圧に瞬時に変化し、その衝撃によって真空度計43等の計器が故障するリスクが生じる場合がある。
【0065】
よって、好ましくは、第二経路のうち、真空度計43が配置されている経路、本実施形態で言うなれば、流量計41から経路切替部7につながる経路間において、空圧回路外への流出方向にのみ流体の流れを許容する逆止弁35を備えること、及び/又は、真空度計43に接続されている管状部材O内に圧力損失部材を備えることが好ましい。
【0066】
圧力損失部材としては、管状部材O内の圧力損失を大きくできるものであれば特にその形状、材質等は限定されないが、例えば、六角穴付止ネジ9が適用できる。
図9には、真空度計43と分岐管59とを繋ぐ管状部材Oが示されている。
図9の例では、一対の六角穴付止ネジ9,9が、管状部材Oの内部に、分岐管59側から挿入されている。そして、真空度計43側の六角穴付止ネジ9が、その外周の管状部材Oに締め付けられた結束バンド8等によって、固定される。
【0067】
このように、管状部材O内に圧力損失部材が配置されることにより、仮に圧縮ガスが第二経路に流入した場合であっても、管状部材Oにおける圧力変化の急峻な変化が抑制され、真空度計43の故障を防止することができる。また、逆止弁35が設けられることにより、仮に圧縮ガスが第二経路に流入した場合であっても、逆止弁35を介して、圧縮ガスを外部に排出することができ、真空度計43の故障を防止することができる。圧力損失部材と逆止弁35のうち、より好ましくは逆止弁35を備えると良く、さらに好ましくは逆止弁35と圧力損失部材の両方を備えるとよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の吸引装置1によれば、第二経路と第三経路との間に配置され、第二経路と第三経路との接続を切り替える経路切替部7を備え、経路切替部7によって第二経路が接続される場合、第一経路及び第二経路によって吸引噴出口5からガス又はエアロゾルが吸引され、経路切替部7によって第三経路が接続される場合、第三経路によって吸引噴出口5から圧縮ガスが噴出される。したがって、構造が簡易的かつコンパクトで汎用性が高く、メンテナンス性が良好である。
【0069】
<溶接システム>
次に、本実施形態の吸引装置1を、溶接分野、特にアーク溶接における水素源吸引を目的とした溶接システム100に組み込んだ例について説明する。なお、この一例の溶接システム100は溶接作業だけではなく、付加製造にも用いることができる。即ち、溶接システム100を付加製造方法に適用すれば、溶接システム100によって溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより造形物を積層造形することが可能である。
【0070】
<本発明の吸引装置1を含む溶接システム例>
本実施形態に係る溶接システム100は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接によって溶接を行う装置である。消耗電極(以下、溶接ワイヤとも称する)とは、アーク溶接において、アーク熱やジュール発熱により溶融する電極を表す。また、ガスシールドアーク溶接とは、噴射したシールドガスにより溶接部を外気から遮断して溶接を行う溶接法である。そして、溶接システム100は、吸引装置1を備え、溶接部に噴射したシールドガスのうち溶接ワイヤの突出し長近傍の水素源を含むシールドガスを吸引し、吸引したシールドガスを外部に排出する。
【0071】
図10は、本実施の形態に係る溶接システム100の概略構成の一例を示す図である。
図10に示すように、本実施の形態に係る溶接システム100は、ワイヤ(溶接ワイヤ)101を用いてワーク100Wを溶接する溶接トーチ110と、シールドガスを吸引する吸引装置1と、吸引したシールドガスが流れる吸引シールドガス経路160と、を備える。
【0072】
溶接トーチ110は、溶接電源(不図示)から供給される溶接電流により溶接ワイヤ101に給電してワーク100Wを溶接する。溶接ワイヤ101としては、例えば、中心部に金属粉及びフラックスが添加されたフラックスコアードワイヤ、中心部に主として金属粉が添加されたメタルコアードワイヤ、鋼等の合金で構成されるソリッドワイヤが用いられる。溶接トーチ110は、シールドガス供給ノズル111と、吸引ノズル112と、コンタクトチップ114と、吸引経路115と、チップボディ117と、オリフィス118と、を備えている。
【0073】
オリフィス118は、シールドガス供給装置から送られるシールドガスを均一にするための絞りであり、溶接トーチ110内に配置されている。
【0074】
シールドガス供給ノズル111は、筒状の形状を有しており、筒状に形成されたチップボディ117のうち
図10の下側である開口側にはめ込まれることで固定されている。このシールドガス供給ノズル111は、溶接部に対してシールドガスを供給する。また、シールドガス供給ノズル111は筒状に形成されているため、シールドガスは、溶接部を包囲して外気から遮断するように供給される。
【0075】
吸引ノズル112は、シールドガス供給ノズル111の内部に配設され、筒状の形状を有しており、チップボディ117のうち
図10の下側となる開口側にはめ込まれることで固定されている。また、吸引ノズル112は、コンタクトチップ114から突き出されたワイヤ101のワイヤ突出し部102の周囲103を囲む構造をもち、且つワイヤ101の先端部に向けて開口113を有する。
図11は、溶接システム100における
図10のXI-XI線断面図である。
図11に示すように、ワイヤ突出し部102の周囲103を囲むように、吸引ノズル112が配置されている。
【0076】
ここで、吸引ノズル112は、ワイヤ101の先端方向、即ち、アーク106がある方向に向けて開口しており、ワイヤ先端部の近傍で放出された水素源104を含むシールドガスを吸引するように構成されている。吸引ノズル112は、後述する吸引経路115を介して吸引装置1の吸引噴出口5に接続される。水素源104を含むシールドガスは、吸引ノズル112によって吸引されることにより、溶接部外に向かう方向である矢印105の方向に流れて吸引され、溶接部外に排出されることとなる。
【0077】
ワイヤ101の先端部の近傍で放出された水素源104を吸引するには、吸引ノズル112を長くしてワイヤ101の先端部まで囲むように構成すれば良いが、アーク熱により吸引ノズル112が溶融する可能性がある。そのため、吸引ノズル112は、アーク熱の影響を考慮した長さで、ワイヤ101の先端部に向けて開口して構成される。吸引ノズル112としては、例えば、熱伝導に優れた銅合金や、耐熱に優れたセラミックスが用いられる。さらに、スパッタの付着を防止するためにクロムメッキ等が施されたものを用いても良い。
【0078】
コンタクトチップ114は、吸引ノズル112の内部に配設され、筒状の形状を有しており、チップボディ117のうち
図10の下側となる開口側にはめ込まれることで固定されている。このコンタクトチップ114は、ワイヤ101を案内するとともにワイヤ101に溶接電流を供給する。コンタクトチップ114内部には、ワイヤ101に接触可能な径のワイヤ送給路が形成されており、ワイヤ101に給電される。また、コンタクトチップ114は、着脱自在に取り付けられており、長時間の使用で消耗した場合は交換される。
【0079】
吸引経路115は、吸引ノズル112により吸引されたシールドガスを吸引装置1に導く。この吸引経路115は、チップボディ117に、例えば直径1.5mm程の穴を4箇所ドリルで穿孔して形成された通路であり、4箇所の穴による通路を円周方向の合流溝116で合流させ、その後、吸引シールドガス経路160を介して吸引装置1の吸引噴出口5に接続されている。ただし、吸引経路115としてはこのような構成に限られるものではなく、吸引ノズル112から吸引装置1にシールドガスや水素源104を導く経路を構成するものであれば、どのようなものでも良い。
【0080】
チップボディ117は、溶接トーチ110の本体部となるものであり、筒状の形状を有し、シールドガス供給ノズル111、吸引ノズル112、コンタクトチップ114を支持する。
【0081】
このような吸引装置1が組み込まれた溶接システム100においては、吸引装置1が経路切替部7の経路7Aを開いて吸引機能を発揮した場合、吸引噴出口5に接続された吸引シールドガス経路160、吸引経路115、及び吸引ノズル112を介してシールドガスの吸引が行われる。そして、吸引したシールドガスは、エジェクタ10の吐出口15から排気される。
【0082】
なお、本実施形態において用いられる圧縮ガスは圧縮エアを用いている。圧縮エアは、通常工場で用いられているゲージ圧0.5MPa程度としているが、この圧力が0.2MPaに変化したとしても、汎用エジェクタの動作圧力は様々であり、適切なものを選定することによって安定した吸引流量が確保される。
【0083】
以上の構成で、任意の期間溶接を行った後、吸引装置1の経路切替部7にて、経路7Aの開状態から経路7Bの開状態に切り替え、圧縮エアを吸引装置1の吸引噴出口5から流出させることによって、吸引シールドガス経路160及び吸引経路115を介して吸引ノズル112から圧縮エアが噴出する。この圧縮エアが噴出することによって、吸引装置1の汚染除去だけでなく、溶接トーチ110中の吸引シールドガス経路160、吸引経路115、及び吸引ノズル112の汚染も除去できる。なお、本実施形態の汚染は主にヒュームによるものである。
【0084】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0085】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置であって、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出される、
ことを特徴とする吸引装置。
本構成によれば、経路切替により圧縮ガスを吸引噴出口から噴出することができ、粉塵、水素源、ヒューム等が堆積して汚染された経路を清掃することができるので、メンテナンス性が良好である。また、構造が簡易的かつコンパクトで汎用性が高い。
【0086】
(2) 前記第一経路、前記第二経路、及び前記第三経路の各経路に含まれる前記管状部材は、各経路において、複数の管状部材を含み、
前記複数の管状部材は、各々着脱自在である
ことを特徴とする(1)に記載の吸引装置。
本構成によれば、メンテナンスが必要な管状部材のみ着脱して清掃又は交換することが可能である。
【0087】
(3) 前記第二経路は、フィルターを有し、
前記フィルターは、厚さ方向において互いに対向する第一面及び第二面を有し、
前記ガス又は前記エアロゾルが前記フィルターの前記第一面に流入する入口と、前記ガス又は前記エアロゾルが前記フィルターの前記第二面から流出する出口と、の距離は、前記厚さ方向に垂直な平面上において10cm以上である
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の吸引装置。
本構成によれば、フィルターによって異物を効率よく捕集できる。
【0088】
(4) 前記第二経路は、少なくとも一つの計器を有し、
さらに、前記第二経路は、前記計器に接続されている前記管状部材内に配置された圧力損失部材と、空圧回路外への流出方向にのみ流体の流れを許容する逆止弁と、のうち少なくとも一つを有する、
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載の吸引装置。
本構成によれば、仮に圧縮ガスが第二経路に流入した場合であっても、管状部材における圧力変化の急峻な変化が抑制され、計器の故障を防止することができる。
【0089】
(5) 前記第二経路は、少なくともフロート式流量計を有し、
前記フロート式流量計は、前記フロート式流量計のフロートの位置を監視するセンサを備える、
ことを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の吸引装置。
本構成によれば、第二経路におけるガス又はエアロゾルの吸込量を簡素な構成で監視できる。また、吸引量の変化を監視することで、メンテナンス時期が分かる。
【0090】
(6) 少なくとも、前記センサにより、予め定めた値以下への流量減少が検出されるとアラーム信号及び作業強制停止信号のうち少なくとも一つを出力する異常検出部を有する
ことを特徴とする(5)に記載の吸引装置。
本構成によれば、作業者が吸引量の異常に気付かず作業を続行することが抑制される。
【0091】
(7) 吸引装置を用いてガス又はエアロゾルを吸引する吸引方法であって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
を備え、
前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替えることにより、前記吸引噴出口の吸引機能と噴出機能とを切り替え、
前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、
前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスを噴出する、
ことを特徴とする吸引方法。
本構成によれば、経路切替により圧縮ガスを吸引噴出口から噴出することができ、粉塵、水素源、ヒューム等が堆積して汚染された経路を清掃することができるので、メンテナンス性が良好である。また、構成が簡易的かつコンパクトで汎用性が高い。
【0092】
(8) シールドガスを溶接部に供給するシールドガス供給ノズルと、前記シールドガスを吸引する吸引ノズルと、を有する溶接トーチと、
ガス又はエアロゾルを吸引する吸引装置と、
を備える溶接システムであって、
前記吸引装置は、
圧縮ガスが流入する流入口と、
前記ガス又は前記エアロゾルを吸引し、又は前記圧縮ガスを噴出する、吸引噴出口と、
駆動口と、吸込口と、吐出口と、を有するエジェクタと、
前記流入口と前記エジェクタの前記駆動口との間を繋ぐ管状部材を含む第一経路と、
前記吸引噴出口と前記エジェクタの前記吸込口との間を繋ぐ管状部材を含む第二経路と、
前記流入口と前記吸引噴出口との間を繋ぐ管状部材を含む第三経路と、
前記第二経路と前記第三経路との間に配置され、前記第二経路と前記第三経路との接続を切り替える経路切替部と、
を備え、
前記経路切替部によって前記第二経路が接続される場合、前記第一経路及び前記第二経路によって、前記吸引噴出口から前記ガス又は前記エアロゾルが吸引され、
前記経路切替部によって前記第三経路が接続される場合、前記第三経路によって、前記吸引噴出口から前記圧縮ガスが噴出され、
前記溶接トーチの前記吸引ノズルは、前記吸引装置の前記吸引噴出口に接続される
ことを特徴とする溶接システム。
本構成によれば、吸引装置の汚染除去だけでなく、溶接トーチ中のシールドガス供給ノズルや吸引ノズル等の汚染も除去できる。
【0093】
(9) (8)に記載の溶接システムを用いて溶接する溶接方法。
本構成によれば、吸引装置の汚染除去だけでなく、溶接トーチ中のシールドガス供給ノズルや吸引ノズル等の汚染も除去できる。
【0094】
(10) (8)に記載の溶接システムによって溶加材を溶融及び凝固させて形成される溶着ビードにより積層造形物を積層造形する付加製造方法。
本構成によれば、吸引装置の汚染除去だけでなく、溶接トーチ中のシールドガス供給ノズルや吸引ノズル等の汚染も除去できる。
【符号の説明】
【0095】
1 吸引装置
2 筐体
3 流入口
5 吸引噴出口
7 経路切替部
7A,7B 経路
8 結束バンド
9 六角穴付止ネジ(圧力損失部材)
10 エジェクタ
11 駆動口
13 吸込口
15 吐出口
17 ノズル
20 フィルター
21 第一面
23 第二面
25 入口
27 出口
31、33,35 逆止弁
37 電磁弁
41 流量計
43 真空度計
45 圧力計
51,53,55,57,59 分岐管
60 異常検出部
61 基準閾値設定器
63 異常判定器
65 異常表示器
67 作業停止制御部
70 吸引装置起動制御部
71 受信器
73 判定器
75 電磁弁駆動装置
100 溶接システム
100W ワーク
101 溶接ワイヤ
102 ワイヤ突出し部
103 周囲
104 水素源
105 矢印
106 アーク
110 溶接トーチ
111 シールドガス供給ノズル
112 吸引ノズル
113 開口
114 コンタクトチップ
115 吸引経路
116 合流溝
117 チップボディ
118 オリフィス
160 吸引シールドガス経路