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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】面発光型半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20241106BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/343
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021120296
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016164
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-02-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】金子 桂
(72)【発明者】
【氏名】角野 努
(72)【発明者】
【氏名】橋本 玲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真司
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047023(JP,A)
【文献】特開2008-311625(JP,A)
【文献】特開2001-308457(JP,A)
【文献】特開2003-273456(JP,A)
【文献】特開2009-231773(JP,A)
【文献】特開2012-227332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0143610(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0259981(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102142657(CN,A)
【文献】特開2013-004906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられ、前記活性層の上面に沿って並ぶ複数の凸部を含むフォトニック結晶層であって、前記複数の凸部は、第1凸部と、第2凸部と、を含み、前記第1凸部が設けられた第1領域と、前記第2凸部が設けられ、前記第1領域を囲む第2領域と、を有し、前記複数の凸部は、隣り合う前記第1凸部の間隔が隣り合う前記第2凸部の間隔よりも広くなるように設けられる、フォトニック結晶層と、
前記フォトニック結晶層上に設けられ、前記第1凸部および前記第2凸部を覆う第1層と、前記第1層上に設けられる第2層と、を含む第1導電形の第2半導体層であって、前記第1層の第1導電形不純物濃度は、前記第2層の第1導電形不純物濃度よりも低く、前記第1層は、隣り合う前記第1凸部の間にスペースを残して、前記第1凸部を覆い、前記活性層の前記上面に沿った方向において、隣り合う前記第2凸部の間隔と同じ幅を持って、隣り合う前記第2凸部の間に埋め込まれる部分を有し、前記第2層は、前記活性層の前記上面に沿った方向において、隣り合う前記第1凸部の間の前記スペースの幅と同じ幅を持って、前記スペース中に埋め込まれる部分を含む、第2半導体層と、
を備えた面発光型半導体発光装置。
【請求項2】
前記フォトニック結晶層は、前記第1領域と前記第2領域との間に設けられた第3領域をさらに含み、
前記複数の凸部は、前記第3領域に設けられる第3凸部であって、隣り合う前記第3凸部の間隔は、隣り合う前記第1凸部の間隔よりも狭く、隣り合う前記第2凸部の間隔よりも広い、第3凸部をさらに含み、
前記第2半導体層の前記第1層は、隣り合う前記第3凸部の間に別のスペースを残して、前記第3凸部を覆うように設けられる請求項1記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項3】
前記第2半導体層は、前記第1層と前記第2層との間に設けられた第3層をさらに含み、
前記第3層は、前記第1層の前記第1導電形不純物濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含み、前記第2層の前記第1導電形不純物濃度よりも低濃度の前記第1導電形不純物を含み、
前記第3層は、隣り合う前記第1凸部の間に前記スペースを残して、前記第1凸部を覆い、隣り合う前記第3凸部の間の前記別のスペースを埋め込むように設けられる請求項2記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1凸部および前記第2凸部は、円柱もしくは三角柱の形状を有する請求項1~3のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項5】
隣り合う前記第1凸部の間隔は、0.1~0.5マイクロメートルであり、
前記活性層の前記上面に垂直な方向おける前記第1凸部の高さは、0.8~2.0マイクロメートルである請求項1~4のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、面発光型半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型半導体発光装置には、光出力の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-332595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、高い光出力を有する面発光型半導体発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る面発光型半導体発光装置は、第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられたフォトニック結晶層と、前記フォトニック結晶層上に設けられた前記第1導電形の第2半導体層と、を備える。前記フォトニック結晶層は、前記活性層の上面に沿って並ぶ複数の凸部を含み、前記複数の凸部は、第1凸部と、第2凸部と、を含む。前記フォトニック結晶層は、前記第1凸部が設けられた第1領域と、前記第2凸部が設けられ、前記第1領域を囲む第2領域と、を有し、前記複数の凸部は、隣り合う前記第1凸部の間隔が隣り合う前記第2凸部の間隔よりも広くなるように設けられる。前記第2半導体層は、前記第1凸部および前記第2凸部を覆う第1層と、前記第1層上に設けられる第2層と、を含む。前記第1層の第1導電形不純物濃度は、前記第2層の第1導電形不純物濃度よりも低い。前記第1層は、隣り合う前記第1凸部の間にスペースを残して、前記第1凸部を覆い、前記活性層の前記上面に沿った方向において、隣り合う前記第2凸部の間隔と同じ幅を持って、隣り合う前記第2凸部の間に埋め込まれる部分を含む。前記第2層は、前記活性層の前記上面に沿った方向において、隣り合う前記第1凸部の間の前記スペースの幅と同じ幅を持って、前記スペース中に埋め込まれる部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る面発光型半導体発光装置を示す模式断面図である。
図2】実施形態に係る面発光型半導体発光装置を示す模式平面図である。
図3】実施形態に係る面発光型半導体発光装置のフォトニック結晶層を示す模式図である。
図4】実施形態に係る面発光型半導体発光装置の製造過程を示す模式断面図である。
図5】実施形態の変形例に係る面発光型半導体発光装置のフォトニック結晶層を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1(a)および(b)は、実施形態に係る面発光型半導体発光装置1を示す模式断面図である。面発光型半導体発光装置1は、例えば、面発光QCL(Quantum Cascade Laser)である。
【0010】
図1(a)に示すように、面発光型半導体発光装置1は、半導体基板10と、第1半導体層20と、活性層30と、フォトニック結晶層40と、第2半導体層50と、第3半導体層60と、表面電極70と、絶縁膜80と、裏面電極90と、を備える。また、面発光型半導体発光装置1は、発光領域100と、外壁領域110と、を含む。外壁領域110は、発光領域100を囲むように設けられる(図2(a)参照)。
【0011】
半導体基板10は、例えば、n形InP基板である。また、半導体基板10は、n形GaAs基板であっても良い。以下、半導体基板10をInP基板として説明する。GaAs基板を用いる場合は、GaAsに格子整合する半導体結晶を用いるか、または、半導体基板と半導体層との間の格子不整合を緩和するバッファ層が設けられる。
【0012】
第1半導体層20は、半導体基板10の上に設けられる。第1半導体層20は、例えば、n形InP層である。半導体基板10と第1半導体層20との間に、バッファ層となる半導体結晶層を設けても良い。
【0013】
活性層30は、第1半導体層20の上に設けられる。活性層30は、例えば、キャリアのサブバンド間遷移を生じさせる量子井戸構造を有する。活性層30は、例えば、シリコンをドープしたn形のIII-V族化合物半導体結晶を含み、電子のサブバンド遷移により発光する。
【0014】
活性層30は、例えば、量子井戸層および障壁層を、第1半導体層20の上面に直交する方向、例えば、Z方向に交互に積層した量子井戸構造を有する。量子井戸層は、例えば、InGaAs結晶を含み、障壁層は、例えば、AlInAs結晶を含む。
【0015】
フォトニック結晶層40は、活性層30の上に設けられる。フォトニック結晶層40は、特定の周期構造を有し、活性層30から放出される光の伝播方向を制御する。フォトニック結晶層40は、例えば、InGaAs結晶を含む。
【0016】
第2半導体層50は、フォトニック結晶層40の上に設けられる。第2半導体層50は、例えば、n形InP層である。第2半導体層50は、例えば、第1層50aおよび第2層50bを含む積層構造を有する。
【0017】
第3半導体層60は、第2半導体層50の上に設けられる。第3半導体層60は、例えば、n形InGaAs層である。第3半導体層60は、例えば、コンタクト層として設けられる。第3半導体層60は、表面電極70のコンタクト抵抗を低減する。
【0018】
表面電極70は、第3半導体層60の上に設けられる。表面電極70は、活性層30から放射される光を反射するように設けられる。これにより、活性層30から表面電極70に向かう光の伝播方向を、半導体基板10に向かう方向に反転させることができる。表面電極70は、例えば、金(Au)を含む。
【0019】
図1(a)に示すように、発光領域100は、第1半導体層20、活性層30、フォトニック結晶層40、第2半導体層50および第3半導体層60を含むメサ構造を有する。絶縁膜80は、メサ構造の側面を覆う。絶縁膜80は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0020】
外壁領域110は、発光領域100と同じ積層構造の半導体層を含む。発光領域100のメサ構造は、発光領域100と外壁領域110との間の半導体層を選択的に除去することにより形成される。
【0021】
発光領域100と外壁領域110との間には、第1半導体層20の一部が露出される。絶縁膜80は、発光領域100のメサ構造の側面、第1半導体層20の一部、および、外壁領域110を覆うように形成される。
【0022】
表面電極70は、絶縁膜80を介して、メサ構造の側面および第1半導体層20の一部を覆うように形成される。表面電極70は、メサ構造の側面を通って外部に向かう光も反射し、発光領域100の内部に戻すように設けられる。
【0023】
裏面電極90は、半導体基板10の発光領域100とは反対側の裏面上に設けられる。裏面電極90は、例えば、チタニウム(Ti)層と金(Au)層とを積層した構造を有する。Ti層は、半導体基板10とAu層との間に設けられる。
【0024】
面発光型半導体発光装置1では、表面電極70と裏面電極90との間に電流を流すことにより、活性層30にキャリア(電子)を注入する。活性層30は、量子井戸におけるキャリアのエネルギー緩和により生じた光、および、フォトニック結晶層40により導波された光による誘導放出によりQCL光を発生させる。QCL光は、半導体基板10の裏面から外部に放射される。QCL光の波長は、例えば、4.5マクロメートル(μm)である。
【0025】
図1(b)は、フォトニック結晶層40を示す部分断面図である。フォトニック結晶層40は、例えば、周期的に配置された複数の凸部40aおよび40bを有し、2次元回折格子として機能する。
【0026】
複数の凸部40aは、高電流密度領域HCDに設けられる。複数の凸部40bは、高電流密度領域HCDを囲む周辺領域PHRに設けられる。凸部40aおよび40bは、例えば、円柱状もしくは三角柱状に設けられる。
【0027】
第2半導体層50は、第1層50aと第2層50bとを含む積層構造を有し、フォトニック結晶層40の上に設けられる。第1層50aは、フォトニック結晶層40と第2層50bとの間に設けられる。第2層50bは、第1層50aの第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第1層50aの第1導電形不純物の濃度は、例えば、1×1015cm-3である。第2層50bの第1導電形不純物の濃度は、例えば、1×1017cm-3以上である。
【0028】
第1層50aは、フォトニック結晶層40の凸部40aおよび凸部40bを覆うように設けられる。第1層50aは、隣り合う凸部40aの間にスペースを残して、凸部40aを覆う。また、第1層50aは、隣り合う凸部40bの間に埋め込まれた部分を有する。隣り合う凸部40bの間に埋め込まれた部分の幅は、隣り合う凸部40bの間隔に等しい。
【0029】
第2層50bは、第1層50aの上に設けられ、凸部40aおよび凸部40bを覆う。第2層50bは、隣り合う凸部40aの間のスペースに埋め込まれた部分を有する。隣り合う凸部40aの間のスペースに埋め込まれた部分の幅は、隣り合う凸部40aの間のスペースの幅に等しい。
【0030】
言い換えれば、隣り合う凸部40aの間には、第2半導体層50の高濃度の第1導電形不純物を含む部分が延在し、隣り合う凸部40bの間には、そのような高濃度の第1導電形不純物を含む部分は設けられない。このため、高電流密度領域HCDにおいて、隣り合う凸部40aの間の電気抵抗が小さくなる。一方、周辺領域PHRでは、隣り合う凸部40bとの間に低濃度の第1導電形不純物を含む部分が埋め込まれ電気抵抗が高くなる。結果として、面発光型半導体発光装置1の駆動電流は、高電流密度領域HCDに主として流れ、周辺領域PHRに流れる電流は抑制される。
【0031】
フォトニック結晶層40は、凸部40aおよび凸部40bの材料と、第2半導体層50の材料との屈折率差により2次元回折格子として機能する。フォトニック結晶層40は、レーザ光の共振波長を選択し、レーザ光の射出角度を制御する機能を有する。
【0032】
フォトニック結晶層40は、レーザ光が活性層30と第1半導体層20との境界に概ね垂直な方向に放出されるように設けられる。「概ね垂直」とは、例えば、レーザ光の伝播方向の活性層30と第1半導体層20との境界に対する角度が81°以上99°以下であることを意味する。
【0033】
また、フォトニック結晶層40の周期構造の設計に従って、所望の波長の光が活性層30内で共振し、レーザ発振する。さらに、フォトニック結晶層40を設けることにより、電流注入時における、高電流密度領域HCDのキャリア密度と、周辺領域PHRのキャリア密度との間に差が生じる。これにより、活性層30における複素屈折率の虚数部が変化し、光共振のQ値を大きくすることができる。すなわち、活性層30から放射されるレーザ光の強度を高くすることができる。
【0034】
図2(a)および(b)は、実施形態に係る面発光型半導体発光装置1を示す模式平面図である。図2(a)は、面発光型半導体発光装置1の表面側を示す平面図である。図2(b)は、面発光型半導体発光装置1の裏面側を示す平面図である。
【0035】
図2(a)に示すように、半導体基板10(レーザチップ)の中央に、発光領域100が設けられる。高電流密度領域HCDは、発光領域100の中央に設けられ、周辺領域PHRは、発光領域100の外縁に沿って、高電流密度領域HCDを囲む。
【0036】
半導体基板10および発光領域100は、例えば、正方形の形状を有する。発光領域100の形状は、この例に限定される訳ではない。発光領域100は、例えば、円形であっても良い。半導体基板10のサイズLsbは、例えば、2000μmである。発光領域100のサイズLmrは、例えば、560μmである。
【0037】
外壁領域110は、発光領域100を囲むように設けられる。外壁領域110の外側のサイズLpw1は、例えば、1600μmである。外壁領域110の内側のサイズLpw2は、例えば、1200μmである。
【0038】
表面電極70は、外壁領域110の内側に設けられ、発光領域100を覆う。表面電極70は、例えば、正方形の平面形状を有する。表面電極70のサイズLfeは、例えば、1000μmである。
【0039】
図2(b)に示すように、裏面電極90は、例えば、正方形の枠状に設けられる。発光領域100は、半導体基板10の表面側において、裏面電極90の内側の中央に対応する位置に設けられる。なお、裏面電極90は、この例に限定される訳ではない。裏面電極90は、発光領域100から半導体基板10の裏面を通して出射されるレーザ光を遮らない形態であればよい。
【0040】
図3(a)~(c)は、実施形態に係る面発光型半導体発光装置1のフォトニック結晶層40を示す模式図である。図3(a)は、フォトニック結晶層40を示す断面図である。図3(b)は、高電流密度領域HCDにおける凸部40aの配置を例示する平面図である。図3(c)は、周辺領域PHRにおける凸部40bの配置を例示する平面図である。
【0041】
図3(a)に示すように、凸部40aおよび凸部40bのZ方向の高さTPは、例えば、0.8~2μmである。この例では、TP=0.85μmである。高電流密度領域HCDにおける隣り合う凸部40aの間隔DHは、例えば、0.1~0.5μmである。この例では、DH=0.45μmである。周辺領域PHRにおける隣り合う凸部40bの間隔DLは、例えば、0.2μmである。
【0042】
第2半導体層50の第1層50aは、凸部40aの頂部上に設けられた部分において、例えば、0.1~0.8μmのZ方向の層厚TLを有する。この例では、TL=0.13μmである。これにより、第1層50aは、隣り合う凸部40aの間にスペースを残して、凸部40aの頂部および側面を覆う。一方、第1層50aは、隣り合う凸部40bの間にスペースを残さないように埋め込まれる。
【0043】
図3(b)に示すように、凸部40aは、例えば、円柱状に設けられる。隣り合う凸部40aの間隔DHは、例えば、X-Y平面内における最小間隔である。例えば、複数の凸部40aをX方向およびY方向に等間隔に並べた場合、間隔DHは、X方向およびY方向の間隔である。
【0044】
図3(c)に示すように、凸部40bは、例えば、円柱状に設けられる。隣り合う凸部40bの間隔DLは、例えば、X-Y平面内における最小間隔である。例えば、複数の凸部40bをX方向およびY方向に等間隔に並べた場合、間隔DLは、X方向およびY方向の間隔である。
【0045】
X方向およびY方向に並んだ複数の凸部40bは、例えば、X-Y平面内の対角方向の間隔Ddを有する。間隔DdがX方向およびY方向の間隔DLよりも広い場合、第2半導体層50の第1層50aは、対角方向においても、隣り合う凸部40bの間にスペースを残すことなく埋め込まれることが好ましい。
【0046】
図4(a)~(c)は、実施形態に係る面発光型半導体発光装置1の製造過程を示す模式平面図である。図4(a)~(c)は、フォトニック結晶層40の上に第2半導体層50を形成する過程を表している。
【0047】
図4(a)に示すように、フォトニック結晶層40の凸部40aおよび凸部40bを覆うように、初期層50aaを形成する。初期層50aaは、例えば、分子線エピタキシャル成長(MBE成長)を用いて形成される。
【0048】
MBE成長において、分子線(MB)は、例えば、フォトニック結晶層40に垂直なZ方向に対して傾斜した方向から照射される。この間、フォトニック結晶層40は、例えば、X-Y平面内において回転される。このため、初期層50aaは、凸部40aおよび凸部40bのそれぞれの頂部および側面上に形成される。また、隣り合う凸部40a間および隣り合う凸部40b間にスペースを残し、その底面上にも形成される。
【0049】
図4(b)に示すように、MBE成長を継続し、初期層50aaの層厚を厚くすることにより、第1層50aを形成する。第1層50aは、隣り合う凸部40aの間にスペースを残して、複数の凸部40aを覆うように形成される。一方、第1層50aは、隣り合う凸部40bの間のスペースを埋め込み、複数の凸部40bを覆うように形成される。例えば、第1層50aの隣り合う凸部40bの間に埋め込まれた部分のX方向の幅は、隣り合う凸部40bの間隔DLと同じである。
【0050】
図4(c)に示すように、第1層50aの上に、第2層50bを形成する。第2層50bは、例えば、MBE成長を用いて形成される。第2層50bには、第1層50aの第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物がドーピングされる。第2層50bは、隣り合う凸部40aの間のスペースを埋め込むために十分な厚さに形成される。
【0051】
図5は、実施形態の変形例に係る面発光型半導体発光装置2のフォトニック結晶層40を示す模式断面図である。図中の矢印は、電流Id1~Id3の相対的な大きさを表している。
【0052】
図5に示すように、フォトニック結晶層40は、凸部40a、凸部40bおよび凸部40cを含む。凸部40aは、高電流密度領域HCDに設けられる。凸部40bは、周辺領域PHRに設けられる。凸部40cは、中間領域IMRに設けられる。中間領域IMRは、高電流密度領域HCDと周辺領域PHRとの間に設けられる。また、中間領域IMRは、高電流密度領域HCDを囲むように設けられる。
【0053】
中間領域IMRにおいて、複数の凸部40cは、X方向における隣り合う凸部40cの間隔DMが、例えば、隣り合う凸部40aの間隔DHよりも狭く、隣り合う凸部40cの間隔DLよりも広くなるように設けられる。中間領域IMRにおける間隔DMは、例えば、隣り合う凸部40cの最小間隔である。
【0054】
第2半導体層50は、第1層50aと、第2層50bと、第3層50cと、を含む。第3層50cは、第1層50aと第2層50bとの間に設けられる。第1層50a、第2層50bおよび第3層50cは、同じ材料、例えば、InPを含む。
【0055】
第3層50cは、第1層50aの第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第2層50bは、第3層50cの第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第1層50aの第1導電形不純物の濃度は、例えば、1×1015cm-3未満である。第2層50bの第1導電形不純物の濃度は、例えば、1×1017cm-3以上である。第3層50cの第1導電形不純物の濃度は、例えば、1×1015cm-3以上、1×1016cm-3未満である。
【0056】
第1層50aは、高電流密度領域HCDにおいて、隣り合う凸部40aの間に第1スペースSP1を残して、複数の凸部40aを覆う。また、第1層50aは、中間領域IMRにおいて、隣り合う凸部40cの間に第2スペースSP2を残して、複数の凸部40cを覆う。第1層50aは、隣り合う凸部40bの間を埋め込むように設けられ、複数の凸部40bを覆う。第1層50aは、隣り合う凸部40bの間隔DLと同じX方向の幅を有する埋め込み部を含む。
【0057】
第3層50cは、第1層50a上に設けられる。第3層50cは、高電流密度領域HCDにおいて、隣り合う凸部40aの間に第1スペースSP1を残して、複数の凸部40aを覆う。また、第3層50aは、中間領域IMRにおいて、隣り合う凸部40cの間の第2スペースSP2を埋め込むように設けられ、複数の凸部40bおよび複数の凸部40cを覆う。
【0058】
第2層50bは、第3層50c上に設けられる。第2層50bは、高電流密度領域HCDにおいて、隣り合う凸部40aの間の第1スペースSP1を埋め込むように設けられ、複数の凸部40a、複数の凸部40bおよび複数の凸部40bを覆う。
【0059】
面発光型半導体発光装置2において、高電流密度領域HCDに流れる電流Id1は、第2層50bの一部が埋め込まれた隣り合う凸部40aの間に主として流れる。電流Id1の電流密度は、周辺領域PHRに流れる電流Id2および中間領域IMRに流れる電流Id3の電流密度よりも高い。隣り合う凸部40cの間に第3層50cの一部が埋め込まれるため、中間領域IMRにおける電流経路の電気抵抗は、隣り合う凸部40bの間に第1層50aの一部が埋め込まれる周辺領域PHRにおける電流経路の電気抵抗よりも低い。このため、中間領域IMRにおける電流Id3の電流密度は、周辺領域PHRにおける電流Id2の電流密度よりも高い。
【0060】
このように、面発光型半導体発光装置2では、電流注入時における、高電流密度領域HCDのキャリア密度と、周辺領域PHRおよび中間領域IMRのキャリア密度との間に差が生じる。これにより、活性層30における複素屈折率の虚数部が変化し、光共振のQ値を大きくすることができる。すなわち、活性層30から放射されるレーザ光の強度を高くすることができる。
【0061】
なお、上記の実施形態では、第2半導体層50の第1層50aおよび第2層50bが同じ材料を含む場合について説明したが、第1層50aの材料と第2層50bの材料が異なっていても良い。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1、2…面発光型半導体発光装置、 10…半導体基板、 20…第1半導体層、 30…活性層、 40…フォトニック結晶層、 40a、40b、40c…凸部、 50…第2半導体層、 50a…第1層、 50aa…初期層、 50b…第2層、 50c…第3層、 60…第3半導体層、 70…表面電極、 80…絶縁膜、 90…裏面電極、 100…発光領域、 110…外壁領域、 HCD…高電流密度領域、 IMR…中間領域、 PHR…周辺領域、 SP1…第1スペース、 SP2…第2スペース
図1
図2
図3
図4
図5