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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20241106BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241106BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20241106BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20241106BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20241106BHJP
【FI】
H01H36/00 J
G06F3/044 120
G06F3/041 660
G06F3/041 400
G01R31/50
G01R31/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021144028
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037347
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】半田 吉紀
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-48448(JP,A)
【文献】特開2011-2250(JP,A)
【文献】特開2007-225443(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
G01V 3/08
H03K 17/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に対する人体の接触又は接近を検出する第1電極と、前記第1電極に対して対向配置された第2電極とに電圧を印加し、電圧が印加された前記第1電極の静電容量変化に基づき、前記操作面に対するユーザ操作を検出する検出装置であって、
前記第1電極への電圧印加後に前記第1電極の静電容量変化を検出している最中に、前記第2電極を強制的に接地状態に切り換えることにより、前記第2電極を接地電位とする切換部と、
接地後の前記第1電極から得られる検出信号の値と、接地前後の前記第1電極から得られる前記検出信号の差とに基づき、前記第1電極の断線有無と、前記第2電極の断線有無とを判定する判定部と
を備えている検出装置。
【請求項2】
前記第1電極への電圧印加時、前記第2電極の電位を前記第1電極と同電位とするバッファ部を備えている
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記切換部は、前記第2電極及び前記バッファ部を繋ぐ接続線から分岐する分岐配線を接地することにより、前記第2電極を強制的に接地電位にする
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1電極へ電圧を印加するとともに前記第1電極の静電容量変化を監視する操作判定処理を繰り返すことにより、前記操作面に対するユーザ操作を検出する容量算出部を備え、
前記第2電極を強制的に接地電位に引き込んで断線有無を判定する一連の断線検出処理は、前記操作判定処理とは独立した処理として設定されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記操作判定処理及び前記断線検出処理の少なくとも一方は、ユーザ操作が有ったと検出するのに必要な静電容量変化が生じる時間よりも短い時間の処理に設定されている
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記断線検出処理及び前記操作判定処理は、1つの組とされて周期的に繰り返し実行される
請求項4又は請求項5に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の静電容量変化によってユーザ操作を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式の操作検出装置が周知である(特許文献1参照)。この種の操作検出装置は、センサ電極及びキャンセル電極を備えている。キャンセル電極は、センサ電極及び基準点の間に発生する寄生容量を減少させる。また、操作検出装置の制御部は、センサ電極に駆動信号を印加するとともに、キャンセル電極に対し、駆動信号と同一波形の信号を印加して、センサ電極の静電容量の変化からユーザ操作を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-037348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御部は、センサ電極及びキャンセル電極に対し、それぞれ配線で接続されている。このため、どちらか一方でも配線が断線してしまうと、センサ電極に対するユーザ操作を検出することができないため、センサ電極及びキャンセル電極の両方の断線を検出したいニーズがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する検出装置は、操作面に対する人体の接触又は接近を検出する第1電極と、前記第1電極に対して対向配置された第2電極とに電圧を印加し、電圧が印加された前記第1電極の静電容量変化に基づき、前記操作面に対するユーザ操作を検出する構成であって、前記第1電極への電圧印加後に前記第1電極の静電容量変化を検出している最中に、前記第2電極を強制的に接地状態に切り換えることにより、前記第2電極を接地電位とする切換部と、接地後の前記第1電極から得られる検出信号の値と、接地前後の前記第1電極から得られる前記検出信号の差とに基づき、前記第1電極の断線有無と、前記第2電極の断線有無とを判定する判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1電極及び第2電極の両方の断線を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態の検出装置の構成図である。
図2】第1スイッチ部の動きを示す作動図である。
図3】タッチ操作時の第1電極の静電容量変化を示す波形図である。
図4】電極群に発生する静電容量を示す説明図であり、(a)は非操作時の図、(b)は操作時の図である。
図5】(a)は第1電極及び第2電極が断線していないときの状態図であり、(b)は断線非発生時に第2電極を接地電位としたときの状態図である。
図6】(a)は第1電極が断線したときの状態図であり、(b)は第1電極断線時に第2電極を接地電位としたときの状態図である。
図7】(a)は第2電極が断線したときの状態図であり、(b)は第2電極断線時に第2電極を接地電位としたときの状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
[本開示の全体構成]
図1に示すように、検出装置1は、操作面2に対する人体(ユーザ)の接触又は接近を検出する。検出装置1は、例えば、車載用の場合、車両のステアリングホイールのリム部(図示略)に設けられている。この場合、検出装置1は、ユーザがステアリングホイールのリム部をタッチ操作(握り操作)したか否かを検出することが好ましい。操作面2は、例えば、曲面状、又は平面状のいずれでもよい。
【0009】
検出装置1は、操作面2に対する人体の接触又は接近を検出する第1電極3と、第1電極3に対して対向配置された第2電極4とを備えている。第1電極3は、ユーザ操作を検出するセンサ電極である。第2電極4は、第1電極3を電気的に遮蔽するシールド電極である。検出装置1は、第1電極3及び第2電極4に電圧を印加し、電圧が印加された第1電極3の静電容量変化に基づき、操作面2に対するユーザ操作を検出する。このように、検出装置1は、第1電極3の静電容量変化によってユーザ操作を検出する静電容量式(自己容量方式)である。
【0010】
第1電極3及び第2電極4の各々は、シート状に形成されるとともに、絶縁性シート状のフィルム(誘電体:図示略)を介して重ねられている。これにより、第1電極3及び第2電極4は、層状に配置されたシート形状に形成されている。第1電極3及び第2電極4は、互いに対向する面の面積が同等、或いは、第1電極3よりも第2電極4の方が大きく(広く)形成されている。これにより、第1電極3は、第2電極4によって覆われた状態をとる。このため、第1電極3は、第2電極4とは反対側の面に人体が接触又は接近することにより、誘導される静電容量が変化する。
【0011】
検出装置1は、検出装置1の作動を制御するコントローラ7を備えている。コントローラ7は、コントローラ7を作動させる制御部8と、制御部8及び電極群(第1電極3及び第2電極4)の間に設けられた第1スイッチ部9とを備えている。制御部8は、例えば、マイクロコンピュータである。コントローラ7は、第1配線10を介して第1電極3に接続され、第1配線10から分岐する第2配線11を介して第2電極4に接続されている。
【0012】
制御部8は、第1電極3の静電容量を取得して操作判定処理を実行する容量算出部13を備えている。操作判定処理は、第1電極3の静電容量の変化に基づき、操作面2に対するユーザ操作(人体の接触、接近など)を検出する処理である。容量算出部13は、第1スイッチ部9を介して、第1電極3の充電と、第1電極3からの静電容量のデータ入力とを交互に切り換えることにより、操作判定処理を実行する。このように、容量算出部13は、第1電極3へ電圧を印加するとともに第1電極3の静電容量変化を監視する操作判定処理を繰り返すことにより、操作面2に対するユーザ操作を検出する。
【0013】
第1スイッチ部9は、可動する第1接点14が第1電極3に接続され、固定の第2接点15が定電流源16に接続され、もう1つの固定の第3接点17がA/Dコンバータ18を介して制御部8に接続されている。第1スイッチ部9は、第2接点15が給電側端子であり、第3接点17が検出側端子である。第1スイッチ部9の第1接点14は、第1配線10を介して第1電極3に接続されている。第1スイッチ部9の第1接点14が第2接点15に接続された場合、定電流源16が第1電極3に接続され、第1電極3が定電流源16によって充電される。第1電極3は、定電流源16によって充電されることにより、静電容量に応じた電圧が発生する。
【0014】
第1スイッチ部9の第1接点14が第3接点17に接続された場合、第1電極3は、A/Dコンバータ18を介して制御部8に接続される。これにより、第1電極3から制御部8には、第1電極3に発生した静電容量に応じた検出信号Svが出力される。本例の場合、定電流源16を使用しているので、第1電極3の電荷は常に一定であり、検出信号Svは第1電極3に発生する静電容量に応じた電圧レベルをとる。
【0015】
容量算出部13は、第1スイッチ部9を定電流源16に接続する処理と、第1スイッチ部9を制御部8に接続する処理とを、メイン周期(メインループ)ごとに交互に繰り返すことにより、第1電極3から検出信号Svを取得する。容量算出部13は、このように第1電極3から断続的に入力した検出信号Svの変動を確認することにより、操作面2に対するユーザ操作の有無の判定、すなわち、タッチ操作のオンオフの検出を実行する。
【0016】
検出装置1は、第2電極4を第1電極3と同電位とするバッファ部21を備えている。バッファ部21は、例えば、オペアンプである。オペアンプは、例えば、シャットダウン機能付きのボルテージフォロアであることが好ましい。バッファ部21は、第1配線10から分岐して第2電極4に繋がる第2配線11上に配置されている。すなわち、バッファ部21は、入力側が第1配線10に接続され、出力側が第2電極4に接続されている。バッファ部21は、制御部8からの電力によって作動する。バッファ部21は、出力側がハイインピーダンスとなっていることが好ましい。
【0017】
[断線検出機能の概要]
検出装置1は、電極配線の断線を検出する機能(断線検出機能)を備えている。断線検出処理は、例えば、操作判定処理とは独立した処理として設定されているとともに、周期的に実行されることが好ましい。具体的には、断線検出処理は、制御部8のメイン周期内の1処理であって、操作判定処理と1つの組とされて周期的に繰り返し実行される。断線検出処理は、第1電極3から延びる第1配線10の断線有無と、第2電極4から延びる第2配線11(具体的には、後述する接続線24)の断線有無との両方を検出する。
【0018】
検出装置1は、断線検出処理の実行タイミングにおいて第2電極4を強制的に接地状態に切り換えて第2電極4を接地電位とする切換部23を備えている。切換部23は、第1電極3への電圧印加後に第1電極3の静電容量変化を検出している最中に、第2電極4を強制的に接地状態に切り換えて第2電極4を接地電位とすることが好ましい。切換部23は、第2電極4及びバッファ部21を繋ぐ接続線24から分岐する分岐配線25を接地することにより、第2電極4を強制的に接地電位にする。接続線24は、第2配線11の一部分である。
【0019】
切換部23は、第2電極4の接地のオンオフを切り換える第2スイッチ部26と、第2スイッチ部26の接続状態を切り換える接地処理部27とを含む。第2スイッチ部26は、例えば、コントローラ7に設けられている。接地処理部27は、例えば、制御部8に設けられている。
【0020】
第2スイッチ部26は、一方の端子が接続線24を介してバッファ部21の出力側に接続され、他方の端子がGNDに接続されている。接地処理部27は、第2スイッチ部26のスイッチ状態を切り換えることにより、バッファ部21の出力側と第2電極4との間の中間端子28を、GNDに対してローインピーダンスとなる接地状態と、GNDに対してハイインピーダンスとなる非接地状態とのいずれかに設定する。
【0021】
制御部8は、切換部23による第2電極4の接地状態への移行を通じて第1電極3及び第2電極4の断線有無を判定する判定部29を備えている。判定部29は、例えば、制御部8に設けられている。判定部29は、第2電極4の接地後の第1電極3から得られる検出信号Svの値と、第2電極4の接地前後に第1電極3から得られる検出信号Svの差ΔCとに基づき、第1電極3の断線有無と、第2電極4の断線有無とを判定する。本例の場合、判定部29は、断線有無の判定を、A/Dコンバータ18から入力するデジタル状の検出信号Svに基づき実行する。
【0022】
次に、本実施形態の検出装置1の作用について説明する。
図1に示す通り、容量算出部13は、操作判定処理のとき、第1スイッチ部9の第1接点14を給電側である第2接点15に接続して、第1電極3を充電する。このとき、容量算出部13は、バッファ部21を作動状態として、第2電極4を第1電極3と同電位にする。また、接地処理部27は、第2スイッチ部26をオフして、第2電極4を接地しない状態としておく。
【0023】
図2に示すように、容量算出部13は、規定時間の間、第1電極3の充電を行うと、次に第1スイッチ部9の第1接点14を検出側である第3接点17に接続する。これにより、第1電極3に発生した電圧(静電容量)に応じた検出信号SvがA/Dコンバータ18を介して制御部8に入力される。従って、容量算出部13は、第1電極3で検出された静電容量に基づく検出信号Svを取得する。検出信号Svは、例えば、第1電極3の静電容量データである。なお、容量算出部13は、A/Dコンバータ18から検出信号Svを取得すると、第1電極3を放電することが好ましい。容量算出部13は、A/Dコンバータ18から検出信号Svを取得すると、この検出信号Svを用いて、タッチ判定を実行する。
【0024】
図3に示すように、容量算出部13は、制御部8において予め設定されたメイン周期(メインループ)ごとに操作判定処理を繰り返し実行する。同図に示されるように、メイン周期は、ユーザ操作が有ったと検出するのに必要な静電容量変化を生じる時間(同図の「Ta」)よりも短い時間(同図の「Tb」)の処理に設定されている。すなわち、メイン周期の処理時間は、タッチ操作のオンオフ検出(タッチON-OFF検出)に必要な静電容量変化が生じる時間よりも短い時間に設定されている。よって、メイン周期内の1処理である操作判定処理も、ユーザ操作が有ったと検出するのに必要な静電容量変化が生じる時間よりも短い時間の処理に設定されている。
【0025】
また、断線検出処理は、メイン周期の単位で実行される処理であって、本例の場合、操作判定処理と1つの組とされて繰り返し実行される。よって、1つのメイン周期内において、断線検出処理と操作判定処理とが1回ずつ実行される。なお、図の例の場合、断線検出処理を操作判定処理よりも先に実行するようにしたが、これを入れ替えてもよい。また、メイン周期内に、断線検出処理及び操作判定処理以外の他の処理を含めてもよい。
【0026】
図4(a)、(b)に示すように、通常、静電容量式の検出装置1は、第1配線10に第1寄生容量Cp1が発生し、第1電極3及びGNDの間に第2寄生容量Cp2が発生し、第2電極4及びGNDの間に第3寄生容量Cp3が発生する。また、第1電極3及び第2電極4の間には、電極間静電容量Cccが発生する。第1電極3の全面に第2電極4が対向配置されている。また、第1電極3及びGNDの間に第2電極4が存在することにより、シールド機能が発揮される。
【0027】
操作判定処理のとき、バッファ部21が作動状態とされるとともに、第2スイッチ部26がオフされている。これにより、コントローラ7の第1スイッチ部9は、第1電極3のみならず、バッファ部21を介して第2電極4にも接続される。このとき、第1スイッチ部9の第1接点14が給電側の第2接点15に接続された状態をとっていれば、バッファ部21が第1電極3及び第2電極4を同電位(略同電位も含む)とする。よって、第1電極3及び第2電極4の間の電極間静電容量Cccが略ゼロとみなせる。また、第1電極3の第2寄生容量Cp2が第2電極4によって抑制される。
【0028】
図4(a)に示す通り、ユーザの人体が操作面2(第1電極3)に接触又は接近していない場合、第1電極3に生じる静電容量は、第1寄生容量Cp1及び第2寄生容量Cp2の合成容量よりも小さくなる。
【0029】
一方、図4(b)に示す通り、ユーザの人体が操作面2(第1電極3)に接触又は接近する場合、第1電極3に生じる静電容量は、ユーザの人体が操作面2に接触又は接近していないときの値に、第1電極3及び人体の間に発生する静電容量Ctを合成した容量となる。このように、人体が接触又は接近した際の第1電極3の静電容量は、人体が接触又は接近しない際の静電容量よりも大きくなる。
【0030】
容量算出部13は、第1電極3の充電後、第1スイッチ部9の第1接点14を検出側の第3接点17に接続して、第1電極3からA/Dコンバータ18を介して、第1電極3の静電容量変化に基づく検出信号Svを入力する。本例の場合、バッファ部21の出力側がハイインピーダンスに設定されているので、第2電極4に蓄積された電荷が、検出信号Svに影響を及ぼすことを抑制することが可能となる。
【0031】
容量算出部13は、検出信号Svのデータを取得し終えると、検出信号Svに基づき、タッチの操作判定を実行する。このとき、容量算出部13は、検出信号Svが大きく変動する場合、タッチ操作(人体の接触又は接近)があったと判定する。一方、容量算出部13は、検出信号Svが変動しない場合、タッチ操作(人体の接触又は接近)がなかったと判定する。容量算出部13は、前述の電極充電、検出信号Svの取得、及びタッチ判定を繰り返して、操作面2に対する人体の接触又は接近を検出する。
【0032】
図5(a)、(b)に示すように、コントローラ7は、操作判定処理とは別の所定タイミングのとき、断線検出処理を実行する。断線検出処理は、タッチ操作のオンオフ検出中に第2スイッチ部26の接続状態を素早く切り換えることにより、瞬間的に実行されることが好ましい。断線検出処理のときも、第1スイッチ部9を電源側→検出側に接続する処理が実行される。断線検出処理は、操作判定処理とともに周期的に実施されてもよいし、複数の操作判定処理のうち1回のみ実施されてもよい。また、断線検出処理は、定期的に実施されることに限定されず、不定期に実施されてもよい。このように、断線検出処理の実施タイミングは、特に限定されるものではない。
【0033】
図5(a)に示す通り、断線検出処理を実施する前の電極間静電容量Ccc、すなわち操作判定処理中の電極間静電容量Cccは、第2電極4のシールド機能が働いて、小さい値である「Cn1」をとる。よって、第1電極3及び第2電極4の近くに導体31が存在していても、電極間静電容量Cccは、導体31に影響を受け難い。
【0034】
図5(b)に示す通り、接地処理部27は、断線検出処理を実行するタイミングとなったとき、第2スイッチ部26をオンして第2電極4をGNDに接続するとともに、バッファ部21の作動を停止する。このとき、第2電極4は、第1電極3と電気的に切り離されて、接地状態をとる。第2電極4が接地状態となったとき、第1電極3及び第2電極4の間の電極間静電容量Cccは、第2寄生容量Cp2及び第3寄生容量Cp3に対して、大きな値である「Cn2」をとる。
【0035】
判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された後、第1電極3の値を確認することにより、第1電極3の断線有無を判定する。本例の場合、第1電極3の断線として、第1配線10の断線が検出される。判定部29は、第2電極4がGNDに接地された際、第1電極3から第1スイッチ部9及びA/Dコンバータ18を介して入力する検出信号Svに基づき、第1電極3の断線有無を判定する。
【0036】
断線検出処理で第2電極4がGNDへ接地された場合、第1電極3に断線が発生していなければ、電極間静電容量Cccが「Cn1」→「Cn2」に変化する分、検出信号Svの電圧レベルが低くなる。よって、判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された際、第1電極3の検出信号Svが大きく変動していれば(第1電極用の断線判定閾値以上となれば)、第1電極3に断線が発生していないと判定する。
【0037】
判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された後、接地前後の第1電極3の差ΔCを確認することにより、第2電極4の断線有無を判定する。本例の場合、第2電極4の断線として、第2配線11(具体的には、接続線24)の断線が検出される。判定部29は、第2電極4がGNDに接地された際、第1電極3から第1スイッチ部9及びA/Dコンバータ18を介して入力する検出信号Svに基づき、第2電極4の断線有無を判定する。
【0038】
断線検出処理で第2電極4がGNDへ接地された場合、第2電極4に断線が発生していなければ、電極間静電容量Cccが「Cn1」→「Cn2」に変化する分、接地前後の第1電極3の静電容量の差ΔCが大きくなる。よって、判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された際、接地前後の第1電極3の検出信号Svの電圧差が大きく変動すれば(第2電極用の断線判定閾値以上となれば)、第2電極4に断線が発生していないと判定する。
【0039】
図6(a)に、第1電極3(第1配線10)に断線が発生したときの状態を図示する。同図に示す通り、第1電極3に断線が発生すると、第1電極3がコントローラ7から電気的に切り離されるので、A/Dコンバータ18からコントローラ7に入力される検出信号Svは、第1寄生容量Cp1のみに準じた値となる。すなわち、A/Dコンバータ18からコントローラ7には、高い電圧値の検出信号Svが入力される。
【0040】
図6(b)に示すように、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された場合、第1電極3に断線が発生していれば、A/Dコンバータ18からコントローラ7に入力される検出信号Svは、第1寄生容量Cp1に準じた電圧のまま変化しない。すなわち、検出信号Svの電圧レベルは、高いままとなる。よって、判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された際、第1電極3の検出信号Svが大きく変動しなければ(第1電極用の断線判定閾値未満となれば)、第1電極3に断線が発生していると判定する。
【0041】
図7(a)に、第2電極4(接続線24)に断線が発生したときの状態を図示する。同図に示す通り、第2電極4に断線が発生すると、第2電極4が無効化されてシールド機能を満足しなくなる。このため、第1電極3が導体31に影響を受ける。本例の場合、断線検出処理を実施する前の電極間静電容量Cccは、大きな値の「Cn3」となる。よって、A/Dコンバータ18からコントローラ7に入力される検出信号Svは、低い電圧値に変化する。
【0042】
図7(b)に示すように、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された場合、第2電極4に断線が発生していると、第2電極4が機能せず、第1電極3が導体31に影響を受けたままの状態が継続される。本例の場合、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された後の電極間静電容量Cccは、大きな値の「Cn4」となる。
【0043】
このため、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地されたとしても、A/Dコンバータ18からコントローラ7に入力される検出信号Svは、大きな値の電極間静電容量Cccに準じた電圧のまま変化せず、電圧レベルが低いままとなる。よって、判定部29は、断線検出処理で第2電極4がGNDに接地された際、接地前後の検出信号Svの電圧差が小さければ(第2電極用の断線判定閾値未満となれば)、第2電極4に断線が発生していると判定する。
【0044】
容量算出部13は、第1電極3及び第2電極4の両方とも断線していない場合、操作判定処理を継続する。一方、容量算出部13は、第1電極3及び第2電極4のうち、少なくとも一方が断線している場合、操作判定処理を中断又は停止する。よって、第1電極3及び第2電極4の少なくとも一方が断線してしまっている状況下で、ユーザ操作の検出を実行させずに済むので、操作判定の精度を向上することが可能となる。
【0045】
上記実施形態の検出装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)検出装置1は、操作面2に対する人体の接触又は接近を検出する第1電極3と、第1電極3に対して対向配置された第2電極4とに電圧を印加し、そして、電圧が印加された第1電極3の静電容量変化に基づき、操作面2に対するユーザ操作を検出する。検出装置1の切換部23は、第1電極3への電圧印加後に第1電極3の静電容量変化を検出している最中に、第2電極4を強制的に接地状態に切り換えることにより、第2電極4を接地電位とする。検出装置1の判定部29は、接地後の第1電極3から得られる検出信号Svの値と、接地前後の第1電極3から得られる検出信号Svの差ΔCとに基づき、第1電極3の断線有無と、第2電極4の断線有無とを判定する。
【0046】
本例の構成によれば、第2電極4を接地した後、第1電極3から得られる検出信号Svが大きく変動していなければ、第1電極3に断線が生じていると判定することが可能である。第2電極4を接地したとき、その接地前後の第1電極3から得られる検出信号Svの差ΔCが小さければ、第2電極4に断線が生じていると判定することが可能である。よって、第1電極3及び第2電極4の両方の断線を検出できる。
【0047】
(2)検出装置1は、第1電極3への電圧印加時、第2電極4の電位を第1電極3と同電位とするバッファ部21を備えている。この構成によれば、第1電極3及び第2電極4の間の静電容量を略ゼロとみなすことが可能となるので、ユーザ操作の検出精度の向上に寄与する。
【0048】
(3)切換部23は、第2電極4及びバッファ部21を繋ぐ接続線24から分岐する分岐配線25を接地することにより、第2電極4を強制的に接地電位にする。この構成によれば、第2電極4をGNDに直接引き込むので、第2電極4を接地電位に落とすことができる。
【0049】
(4)検出装置1の容量算出部13は、第1電極3へ電圧を印加するとともに第1電極3の静電容量変化を監視する操作判定処理を繰り返すことにより、前記操作面に対するユーザ操作を検出する。第2電極4を強制的に接地電位に引き込んで断線有無を判定する一連の断線検出処理は、操作判定処理とは独立した処理として設定されている。この構成によれば、操作判定処理と断線検出処理とをそれぞれ独立した1つの処理として管理することが可能となるので、これら処理を複雑化させずに済む。
【0050】
(5)操作判定処理及び断線検出処理の少なくとも一方は、ユーザ操作が有ったと検出するのに必要な静電容量変化が生じる時間よりも短い時間の処理に設定されている。よって、ユーザが操作面2をタッチ操作する最中であっても、タッチ操作有無や断線有無を瞬時に判定することができる。
【0051】
(6)断線検出処理及び操作判定処理は、1つの組とされて周期的に繰り返し実行される。この構成によれば、操作面2へのユーザ操作有無や、第1電極3及び第2電極4の断線有無を定期的に監視するので、これらを直ちに検出することができる。
【0052】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・断線検出処理は、第1電極3の断線判定と第2電極4の断線判定とを同時に実行することに限定されない。例えば、第1電極3を充電して第1電極3から検出信号Svを取得する1ターンごとに、第1電極3の断線判定と第2電極4の断線判定とを交互に実施してもよい。
【0053】
・操作判定処理は、少なくとも充電後の第1電極3から検出信号Svを取得する処理を含んでいればよい。
・検出装置1は、バッファ部21が省略されてもよい。
【0054】
・検出装置1は、車載用に限定されず、他の機器や装置に使用されてもよい。
・容量算出部13、切換部23、及び判定部29は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0055】
・容量算出部13、切換部23、及び判定部29は、独立したプロセッサから構成されてもよいし、機能の一部分が共用のプロセッサから構築されてもよい。このように、容量算出部13、切換部23、及び判定部29は、独立した機能ブロックに限らず、1つの機能ブロックから構成されてもよいし、一部分が共用された機能ブロックから構成されてもよい。
【0056】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0057】
1…検出装置、2…操作面、3…第1電極、4…第2電極、13…容量算出部、21…バッファ部、23…切換部、24…接続線、25…分岐配線、29…判定部、Sv…検出信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7