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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車輪及び全方向移動装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B60B19/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021192897
(22)【出願日】2021-11-29
(65)【公開番号】P2023079420
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛治
(72)【発明者】
【氏名】牛島 裕二
(72)【発明者】
【氏名】矢田 渉
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 律也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107575(JP,A)
【文献】特開2018-122849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133960(US,A1)
【文献】特開2016-203680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0304163(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方向移動装置の車輪であって、
複数の関節部材が環状に接続されることによって形成された環状の芯体と、
前記芯体に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有し、
前記関節部材のそれぞれは、第1端及び第2端を有する軸部と、前記第1端に設けられた第1接続部と、前記第2端に設けられた第2接続部とを有し、
複数の前記フリーローラのそれぞれは、対応する前記関節部材の前記軸部に回転可能に支持され、
前記関節部材のそれぞれの前記第1接続部が、隣り合う前記関節部材の前記第2接続部に回動可能に接続され、
前記関節部材のそれぞれの前記第1端が、隣り合う前記関節部材の前記第2端に当接することによって隣り合う前記関節部材の回動範囲が規制され、
前記関節部材のそれぞれの前記第1端及び隣り合う前記関節部材の前記第2端の間に緩衝材が設けられている車輪。
【請求項2】
前記軸部は、前記第1端に第1端面を有し、
前記第1接続部は、前記第1端面から突出し、
前記第2接続部は、筒形に形成され、
前記関節部材のそれぞれの前記第1接続部は、隣り合う前記関節部材の前記第2接続部に挿入され、連結軸体によって前記第2接続部に回動可能に接続されている請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記緩衝材は、環状に形成され、前記第1接続部の周囲に配置されている請求項2に記載の車輪。
【請求項4】
前記第1端面には前記第1接続部を囲む受容溝が設けられ、
前記緩衝材は前記受容溝に配置されている請求項3に記載の車輪。
【請求項5】
前記緩衝材は、前記受容溝から外方に突出している請求項4に記載の車輪。
【請求項6】
前記緩衝材の主面は、前記第1端面と同一平面上に配置されている請求項4に記載の車輪。
【請求項7】
前記受容溝の幅は、前記緩衝材の幅よりも大きい請求項4~6のいずれか1つの項に記載の車輪。
【請求項8】
前記第1端には、前記第1端面を径方向に延長するフランジ部が設けられ、
前記フリーローラは、ベアリングを介して前記軸部に支持され、
前記ベアリングは、前記フランジ部と、前記軸部の外周面に装着されるスナップリングとによって前記軸部に固定される請求項2~7のいずれか1つの項に記載の車輪。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つの項に記載の車輪と、
フレームに回転可能に支持され、前記車輪の両側に配置され、前記車輪に駆動力を伝達する一対のドライブディスクと、
前記ドライブディスクのそれぞれを回転させる一対の電動モータとを有する全方向移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪及び全方向移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、環状の車輪と、一対のドライブディスクと、各ドライブディスクに設けられた複数のドライブローラと、各ドライブディスクを回転させる一対の電動モータとを有する全方向移動装置を開示している。車輪は、直列かつ環状に接続された複数の関節部材と、各関節部材に回転可能に支持された複数のフリーローラとを有する。各関節部材は、互いに所定の範囲で回動可能に接続されている。各関節部材が互いに回動して車輪が撓むことによって、フリーローラの接地面積を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5687174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隣り合う関節部材は、互いに回動し、かつ衝突することによって、衝突音を発生させるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、車輪及び車輪を使用した全方向移動装置において、関節部材の衝突音を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、全方向移動装置(3)の車輪(17)であって、複数の関節部材(35)が環状に接続されることによって形成された環状の芯体(36)と、前記芯体に回転可能に支持された複数のフリーローラ(37)とを有し、前記関節部材のそれぞれは、第1端(42)及び第2端(46)を有する軸部(41)と、前記第1端に設けられた第1接続部(43)と、前記第2端に設けられた第2接続部(47)とを有し、複数の前記フリーローラのそれぞれは、対応する前記関節部材の前記軸部に回転可能に支持され、前記関節部材のそれぞれの前記第1接続部が、隣り合う前記関節部材の前記第2接続部に回動可能に接続され、前記関節部材のそれぞれの前記第1端が、隣り合う前記関節部材の前記第2端に当接することによって隣り合う前記関節部材の回動範囲が規制され、前記第1端及び前記第2端の間に緩衝材が設けられている。
【0007】
この態様によれば、隣り合う関節部材が緩衝材を介して互いに衝突するため、衝突音を抑制することができる。
【0008】
上記の態様において、前記軸部は、前記第1端に第1端面(50)を有し、前記第1接続部は、前記第1端面から突出し、前記第2接続部は、筒形に形成され、前記関節部材のそれぞれの前記第1接続部は、隣り合う前記関節部材の前記第2接続部に挿入され、連結軸体(49)によって前記第2接続部に回動可能に接続されてもよい。
【0009】
この態様によれば、関節部材の構造を簡素にすることができる。
【0010】
上記の態様において、前記緩衝材は、環状に形成され、前記第1接続部の周囲に配置されてもよい。
【0011】
この態様によれば、緩衝材の脱落を防止することができる。
【0012】
上記の態様において、前記第1端面には前記第1接続部を囲む受容溝(66)が設けられ、前記緩衝材は前記受容溝に配置されてもよい。
【0013】
この態様によれば、緩衝材の位置を安定させることができる。
【0014】
上記の態様において、前記緩衝材は、前記受容溝から外方に突出してもよい。
【0015】
この態様によれば、緩衝材を厚くして緩衝作用を増加させることができる。
【0016】
上記の態様において、前記緩衝材の主面は、前記第1端面と同一平面上に配置されてもよい。
【0017】
この態様によれば、隣り合う関節部材の第1端と第2端との隙間を小さくすることができる。これにより、隣り合う関節部材の第1端と第2端との隙間に異物が進入することを防止することができる。
【0018】
上記の態様において、前記受容溝の幅は、前記緩衝材の幅よりも大きくてもよい。
【0019】
この態様によれば、圧縮された緩衝材が受容溝内において変形することができる。
【0020】
上記の態様において、前記第1端には、前記第1端面を径方向に延長するフランジ部(73)が設けられ、前記フリーローラは、ベアリング(75)を介して前記軸部に支持され、前記ベアリングは、前記フランジ部と、前記軸部の外周面に装着されるスナップリング(81)とによって前記軸部に固定されてもよい。
【0021】
この態様によれば、フランジ部と緩衝材とを近づけることができ、関節部材をコンパクトに形成することができる。また、緩衝材を軸部の径方向に拡張することができる。
【0022】
本発明の他の態様は、上記の車輪と、フレーム(15)に回転可能に支持され、前記車輪の両側に配置され、前記車輪に駆動力を伝達する一対のドライブディスク(16)と、前記ドライブディスクのそれぞれを回転させる一対の電動モータ(18)とを有する全方向移動装置を提供する。
【0023】
この態様によれば、全方向移動装置において、隣り合う関節部材の衝突音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、車輪及び車輪を使用した全方向移動装置において、関節部材の衝突音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る全方向移動装置を備えた台車の斜視図
図2】全方向移動装置の断面図
図3】全方向移動装置の側面図
図4】第1実施形態に係る関節部材及びフリーローラを示す斜視図
図5】第1実施形態に係る関節部材の断面図
図6】第1実施形態に係る関節部材の斜視図
図7】第1実施形態に係る関節部材の斜視図
図8】第1実施形態に係る関節部材の断面図
図9】第1実施形態に係る関節部材の拡大断面図
図10】第2実施形態に係る関節部材及びフリーローラの断面図
図11】第2実施形態に係る関節部材の斜視図
図12】第2実施形態に係る関節部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る全方向移動装置用の車輪、及び全方向移動装置の実施形態について説明する。以下の説明では、全方向移動装置を台車に適用した例について説明する。
【0027】
図1に示すように、台車1は、車体2と、車体2に設けられ、車体2を床面に沿った全方向に移動させる一対の全方向移動装置3と、車体2に設けられ、使用者の操作を受け付けるハンドル4と、ハンドル4に加わる荷重を検出する力覚センサ5と、力覚センサ5が検出した荷重に基づいて全方向移動装置3を制御する制御装置6とを有する。
【0028】
車体2の前部には、他の装置を支持するための支持台7が設けられている。支持台7に支持される装置は、例えば、X線スキャナー等の検査機器を含む。装置は、支持台7に締結されるとよい。車体2の後部の内部には、制御装置6、バッテリ、各種センサが設けられているとよい。
【0029】
一対の全方向移動装置3は車体2の後部の下部に設けられている。車体2の前部の下部には、サスペンション11を介して左右のキャスター12が支持されている。図1及び図2に示すように、各全方向移動装置3は、フレーム15と、フレーム15に回転可能に支持された一対のドライブディスク16と、一対のドライブディスク16の間に配置された環状の車輪17と、ドライブディスク16のそれぞれを回転させる一対の電動モータ18とを有する。一対のドライブディスク16は車輪17に駆動力を伝達する。
【0030】
図1に示すように、フレーム15は、車体2の下部に結合されたフレーム上部21と、フレーム上部21の左右両端から下方に延びた一対のフレーム側部22とを有する。図2に示すように、一対のフレーム側部22の下端には、左右に延びる支持軸23が架け渡されている。支持軸23には、一対のドライブディスク16が回転可能に支持されている。一対のドライブディスク16は支持軸23の軸線を中心として回転する。各ドライブディスク16は、支持軸23に対して左右方向における位置が規制されている。各ドライブディスク16は、左右方向に互いに距離をおいて対向している。
【0031】
ドライブディスク16は、環状の車輪17の両側にそれぞれ配置され、車輪17に摩擦力を与えて車輪17を中心軸線A1回り及び環状の軸線A2回りに回転させる。ドライブディスク16は、フレーム15に回転可能に支持される円盤状のベース25と、ベース25の外周部に互いに傾斜して回転可能に支持され、車輪17に接触する複数のドライブローラ26とを有する。ベース25は、支持軸23と同軸に配置されている。
【0032】
各ドライブディスク16の互いに相反する面にはドリブンプーリ28がそれぞれ設けられている。ドリブンプーリ28はドライブディスク16と同軸に設けられている。図1に示すように、車体2の下部には、ドライブディスク16のそれぞれを回転させる一対の電動モータ18が設けられている。各電動モータ18の駆動軸にドライブプーリ31が設けられている。ドライブプーリ31は、ベルト32を介して対応するドリブンプーリ28に連結されている。本実施形態では、4つのドライブディスク16に対応して4つの電動モータ18が設けられている。各電動モータ18が互いに独立して回転することによって、各ドライブディスク16が互いに独立して回転する。
【0033】
図2及び図3に示すように、車輪17は、環状をなし、一対のドライブディスク16の間にドライブディスク16と同軸に配置され、複数のドライブローラ26に接触し、中心軸線A1回り及び環状の軸線A2回りに回転可能となっている。図2図4に示すように、車輪17は、複数の関節部材35が環状に接続されることによって形成された環状の芯体36と、芯体36に回転可能に支持された複数のフリーローラ37とを有する。
【0034】
図5図8に示すように、関節部材35のそれぞれは、第1端42及び第2端46を有する軸部41と、第1端42に設けられた第1接続部43と、第2端46に設けられた第2接続部47とを有する。軸部41は、円柱状に形成され、軸線A3方向において第1端42及び第2端46を有する。軸部41は、第1端42に第1端面50を有する。第1端面50は、軸部41の軸線A3と略直交する平面であるとよい。関節部材35は、金属又は樹脂によって形成されているとよい。
【0035】
第1接続部43は、第1端面50から突出した突片である。第1接続部43は、円錐形に形成されてもよい。第1接続部43は、軸部41の軸線A3に沿って突出している。第1接続部43の幅は、先端側に向けて狭くなっている。
【0036】
第2接続部47は、筒形に形成されている。軸部41の第2端46には、軸部41の軸線A3に沿って凹んだ凹部53が形成されている。凹部53によって、軸部41の第2端46に筒形の第2接続部47が形成されている。第2接続部47は、軸部41の軸線A3に沿って延びている。
【0037】
図5及び図8に示すように、関節部材35のそれぞれの第1接続部43は、隣り合う関節部材35の第2接続部47に挿入され、連結軸体49によって第2接続部47に回動可能に接続されている。連結軸体49は、軸部41の軸線A3と直交する方向に延び、第2接続部47及び第1接続部43を貫通している。第1接続部43及び第2接続部47の互いに対応する部分には連結軸体49が挿入される貫通孔51、52が形成されている。連結軸体49は、基端に頭部54を有し、先端にスナップリング55が装着される。頭部54及びスナップリング55は、第2接続部47に形成された貫通孔52を通過できない大きさに形成されている。連結軸体49にスナップリング55が装着されることによって、連結軸体49は第2接続部47及び第1接続部43に保持される。これにより、関節部材35のそれぞれの第1接続部43が、隣り合う関節部材35の第2接続部47に回動可能に接続される。第1接続部43は凹部53よりも小さく形成され、第1接続部43は第2接続部47の内部において回動することができる。複数の連結軸体49は互いに平行に配置され、かつ車輪17の中心軸線A1と平行に配置されている。
【0038】
関節部材35のそれぞれの第1端42が、隣り合う関節部材35の第2端46に当接することによって隣り合う関節部材35の回動範囲が規制される。詳細には、第1端42は第1端面50において当接し、第2端46は第2接続部47の端面である第2端面48において当接するとよい。なお、第1接続部43と、凹部53の壁面とが当接することによって、隣り合う関節部材35の回動範囲が規制されてもよい。
【0039】
図5及び図7図9に示すように、第1端42と第2端46との間には緩衝材57が設けられている。緩衝材57は、可撓性を有する材料によって形成されている。緩衝材57は、加硫ゴム又は樹脂系エラストマーによって形成されているとよい。緩衝材57は、第1端面50において第1接続部43の周囲に設けられているとよい。緩衝材57は、環状に形成され、第1接続部43の周囲に配置されているとよい。緩衝材57は、所定の厚みを有するリング状に形成されているとよい。これにより、緩衝材57が第1接続部43に支持され、緩衝材57が関節部材35から脱落することが防止される。緩衝材57は、軸部41の軸線A3に直交する第1面61及び第2面62とを有するとよい。
【0040】
第1端面50には第1接続部43を囲む環状の受容溝66が設けられている。緩衝材57は受容溝66に配置されている。緩衝材57の第2面62は受容溝66の底部に当接しているとよい。緩衝材57の第2面62は受容溝66の底部に接着されてもよい。緩衝材57は、受容溝66から外方に突出しているとよい。すなわち、緩衝材57の主面をなす第1面61は、第1端面50よりも外方に配置されているとよい。この場合、緩衝材57を厚くして緩衝作用を増加させることができる。また、緩衝材57の主面をなす第1面61は、第1端面50と同一平面上に配置されてもよい。この場合、第1端42と第2端46との隙間を小さくすることができる。これにより、第1端42と第2端46との隙間に異物が進入することを防止することができる。
【0041】
図9に示すように、受容溝66の幅は、緩衝材57の幅よりも大きく形成されている。これにより、緩衝材57の内周面と受容溝66の内周壁との間、及び緩衝材57の外周面と受容溝66の外周壁との間の少なくとも一方には隙間71が形成される。これにより、緩衝材57は受容溝66内において変形することができる。具体的には、緩衝材57が第1端42と第2端46とによって圧縮されたときに、緩衝材57は隙間71に逃げることができる。
【0042】
第2接続部47の第2端面48の外径が受容溝66の外径よりも小さく、かつ第2接続部47の第2端面48の内径が受容溝66の内径よりも大きいとよい。この構成により、第2接続部47の第2端面48が第1端面50に直接に接触することが避けられる。
【0043】
第2接続部47の第2端面48は、常に緩衝材57に接触していてもよい。この場合、緩衝材57が変形可能な範囲内において隣り合う関節部材35は互いに回動することができる。他の実施形態では、隣り合う関節部材35が所定の回動位置にあるときに、第2接続部47の第2端面48が緩衝材57から離れてもよい。
【0044】
図5図8に示すように、第1端42には、第1端面50を径方向に延長するフランジ部73が設けられている。フランジ部73は円板状に形成されているとよい。フランジ部73の外径は軸部41の外径よりも大きい。フランジ部73は緩衝材57の径方向外方に配置されている。すなわち、フランジ部73と緩衝材57とは、軸部41の軸線A3に直交する平面に配置されている。
【0045】
図5に示すように、フリーローラ37は、ラジアルベアリングであるベアリング75を介して軸部41に支持されている。ベアリング75は、インナレース76と、アウタレース77と、インナレース76及びアウタレース77の間に介装された複数のボール78と、複数のボール78を保持するリテーナとを有する玉軸受であるとよい。ベアリング75は、フランジ部73と、軸部41の外周面に装着されるスナップリング81とによって位置決めされる。
【0046】
図5に示すように、フリーローラ37は、スリーブ82と、スリーブ82の外周面に設けられたゴムリング83とを有する。スリーブ82は金属によって形成されているとよい。ゴムリング83は、スリーブ82に加硫接着等によって接着されているとよい。スリーブ82は、ベアリング75のアウタレース77の外周面に固定されている。
【0047】
本実施形態では、スリーブ82は軸方向に並んだ2つのベアリング75を介して軸部41に回転可能に支持されている。スリーブ82の内周面の中央部には、径方向内方に突出すると共に周方向に延びた環状の係止凸部85が設けられている。係止凸部85は、2つのベアリング75の各アウタレース77に挟持されている。2つのベアリング75の各インナレース76の間には、スペーサ86が配置されている。2つのインナレース76は、軸方向においてフランジ部73とスナップリング81との間に配置され、軸部41に対して固定されている。このようにして、フリーローラ37はベアリング75を介して軸部41に回転可能に支持されている。
【0048】
車輪17の組立方法は以下のとおりである。最初に、各関節部材35の軸部41に2つのベアリング75、スペーサ86、及びフリーローラ37が装着され、スナップリング81によって固定される。次に、各関節部材35の受容溝66に緩衝材57が装着される。次に、関節部材35のそれぞれの第1接続部43が隣り合う関節部材35の第2接続部47に挿入され、連結軸体49によって第1接続部43と第2接続部47とが回動可能に接続される。これにより、環状の車輪17が形成される。
【0049】
図3に示すように、複数のフリーローラ37は、芯体36の円周方向に等間隔で配列されている。各フリーローラ37は、環状の芯体36の軸線A2(環状の軸線)を中心として回転可能に芯体36に支持されている。各フリーローラ37は、芯体36に対するそれぞれの位置において、芯体36の接線を中心として回転することができる。各フリーローラ37は、外力を受けて芯体36に対して回転する。
【0050】
図2及び図3に示すように、車輪17は、一対のドライブディスク16の外周部に沿って配置され、各ドライブディスク16に設けられた複数のドライブローラ26と接触している。各ドライブディスク16のドライブローラ26は、車輪17の内周部に接触し、左右両側から車輪17を挟持する。また、左右のドライブディスク16のドライブローラ26は、車輪17の内周部に接触することによって、ドライブディスク16の軸線を中心とした径方向への変位を規制する。これにより、車輪17は左右のドライブディスク16に支持され、車輪17(芯体36)の中心軸線A1は左右のドライブディスク16の軸線と概ね同軸に配置される。車輪17は、複数のフリーローラ37において、左右のドライブディスク16の複数のドライブローラ26に接触する。
【0051】
車輪17の下部に位置する複数のフリーローラ37は複数のドライブローラ26に下向きに押される。これにより、複数の関節部材35が回動し、芯体36が変形する。具体的には、車輪17は、長軸が水平方向に延び、短軸が上下方向に延びる楕円形状に変形する。すなわち、車輪17の下部及び上部の芯体36の曲率半径は、車輪17の上下方向における中間部の芯体36の曲率半径よりも大きくなる。これにより、複数のフリーローラ37の接地面積が増加する。その結果、全方向移動装置3の走破性が向上する。
【0052】
各全方向移動装置3において、一対のドライブディスク16が同一方向に同一の回転速度で回転する場合には、車輪17は一対のドライブディスク16と共に回転する。すなわち、車輪17は中心軸線A1を中心として前転又は後転する。このとき、ドライブディスク16のドライブローラ26及び車輪17のフリーローラ37は芯体36に対して回転しない。各全方向移動装置3において、一対のドライブディスク16間に回転速度差が生じる場合には、一対のドライブディスク16の回転に起因する円周(接線)方向の力に対し、この力に直交する向きの分力が左右のドライブローラ26から車輪17のフリーローラ37に作用する。ドライブローラ26の軸線がドライブディスク16の軸線に直交する面に対して傾斜しているため、ドライブディスク16間に回転速度差に起因して分力が生じる。この分力によって、ドライブローラ26がベース25に対して回転すると共に、フリーローラ37が芯体36に対して回転する。これにより、車輪17は、左右方向への駆動力を発生させる。
【0053】
左右の全方向移動装置3が前方に同じ速度で回転することによって、台車1が前進する。左右の全方向移動装置3が後方に同じ速度で回転することによって、台車1が後退する。左右の全方向移動装置3の前後方向への回転に速度が生じることによって、台車1は右方又は左方に旋回する。左右の全方向移動装置3の各車輪17のフリーローラ37が回転することによって、台車1は右方又は左方に平行移動する。
【0054】
図1に示すように、力覚センサ5は車体2とハンドル4との間に設けられている。制御装置6は、CPU等のプロセッサ、不揮発性メモリ(ROM)、及び、揮発性メモリ(RAM)等を含む電子制御装置(ECU)である。制御装置6は、プロセッサにおいて不揮発性メモリに格納されたプログラムに沿った演算処理を実行することによって、力覚センサ5によって検出された荷重及びモーメントに基づいて電動モータ18を制御する。これにより、乗員がハンドル4に荷重及びモーメントを加えると、全方向移動装置3が駆動されて、台車1が走行する。
【0055】
本実施形態に係る車輪17及び全方向移動装置3の効果について説明する。隣り合う関節部材35の第1端42と第2端46との間に緩衝材57が配置されているため、隣り合う関節部材35が互いに回動したときに、第1端42と第2端46は緩衝材57を介して当接する。これにより、第1端42と第2端46との衝突に起因する衝突音が抑制される。
【0056】
第1実施形態に係る車輪17において、緩衝材57は第2接続部47の第2端面48に結合されてもよい。また、緩衝材57は第2接続部47の凹部53の壁面に設けられてもよい。この場合、緩衝材57は凹部53内において第1接続部43の外面と第2接続部47の内面との間に挟持される。
【0057】
図10図12に示すように、第2実施形態に係る車輪100は、第1実施形態に係る車輪17と比較して、関節部材35及び緩衝材57の形状が異なり、他の構成は同じである。
【0058】
第1端面50は、フランジ部73によって軸部41の径方向に拡張されている。第1接続部43は、第1端面50に突設された一対の第1接続部43を含む。一対の第1接続部43は、互いに間隔をおいて配置されている。一対の第1接続部43は、第1端面50において外周部に配置されている。
【0059】
第2接続部47は、第2端46に設けられた第2接続部47を含む。第2接続部47は軸部41の軸線A3に沿って延びている。任意の関節部材35の第2接続部47は、隣り合う関節部材35の一対の第1接続部43の間に配置され、連結軸体49によって一対の第1接続部43に回動可能に接続される。
【0060】
第2接続部47の第2端面48は、連結軸体49に沿った方向から見て、第2接続部47の先端側に向けて幅が狭くなるように三角形状に形成されている。第1端面50と第2接続部47の端面とが互いに当接することによって、隣り合う関節部材35の回動範囲が規制されている。
【0061】
緩衝材57は、第2接続部47の端面及び第1端面50の少なくとも一方に接着されているとよい。緩衝材57は、第2接続部47の端面の適所に複数設けられてもよい。
【0062】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、100 :台車
3 :全方向移動装置
15 :フレーム
16 :ドライブディスク
17 :車輪
18 :電動モータ
26 :ドライブローラ
35 :関節部材
36 :芯体
37 :フリーローラ
41 :軸部
42 :第1端
43 :第1接続部
46 :第2端
47 :第2接続部
49 :連結軸体
50 :第1端面
57 :緩衝材
61 :第1面
62 :第2面
66 :受容溝
71 :隙間
73 :フランジ部
75 :ベアリング
81 :スナップリング
100 :車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12