(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】切込方法及び切込装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/08 20060101AFI20241106BHJP
B26D 1/22 20060101ALI20241106BHJP
B26D 5/02 20060101ALI20241106BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20241106BHJP
B26D 11/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B26D3/08 Z
B26D1/22
B26D5/02 A
B26D7/06 Z
B26D11/00
(21)【出願番号】P 2021197348
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2016230299の分割
【原出願日】2016-11-28
【審査請求日】2021-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】堀内 亮吾
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-158384号公報(JP,A)
【文献】実願平5-40117号(実開平7-11297号)のCD-ROM
【文献】特開4-360798号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム支持手段上を走行するフィルムに、切込刃を備えた加工ロールを押圧することでフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れ
、予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込方法であって、
前記加工ロール
は、前記切込刃を含めて一体に形成されて加工ロール軸受に取り付けられるよう構成されるとともにフィルムの表面に当接する当接円周部を有し、
前記切込刃が、前記当接円周部から外周側に周方向に
60μm以下の高さで突出して設けられ、
前記加工ロールを支持手段上を走行するフィルムに押圧する際に、前記フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧し、前記加工ロールの支持手段側への移動端が、前記当接円周部のフィルムへの当接によってのみ規定されて、切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むことを特徴とする切込方法。
【請求項2】
走行するフィルムの幅方向に前記加工ロールが複数設けられ、
前記複数の加工ロールの押圧力を、それぞれ独立して調整することを特徴とする請求項1に記載の切込方法。
【請求項3】
前記加工ロール支持手段が幅方向固定手段に支持され、走行するフィルムの幅方向の任意の位置に固定することを特徴とする請求項1または2に記載の切込方法。
【請求項4】
走行するフィルムを支持する支持手段と、支持手段側に突出しフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れる切込刃を備えた加工ロールと、前記加工ロールを支持手段側に押圧する加工ロール支持手段とを備えた
予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込装置であって、
前記加工ロール
は、前記切込刃を含めて一体に形成されて加工ロール軸受に取り付けられるよう構成されるとともにフィルムに当接することによって支持手段側への移動端を規定し切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むための当接円周部を有し、
前記切込刃が、前記当接円周部から外周側に周方向に
60μm以下の高さで突出して設けられ、
前記加工ロールが、走行するフィルムの幅方向に設けられ、
前記加工ロール支持手段が、前記加工ロールに対応して設けられ、支持手段側への押圧力を調整する押圧力調整機構を備え、
前記加工ロールは、前記フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧するよう構成されていることを特徴とする切込装置。
【請求項5】
前記加工ロールが複数設けられ、前記加工ロール支持手段が、前記複数の加工ロールに対応して独立して複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載の切込装置。
【請求項6】
前記加工ロール支持手段は、幅方向固定手段に支持され、走行するフィルムの幅方向の任意の位置に固定可能に構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の切込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持手段上を走行するフィルムに、切込刃を備えた加工ロールを押圧することでフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れ、予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込方法、及び、走行するフィルムを支持する支持手段と、支持手段側に突出しフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れる切込刃を備えた加工ロールと、前記加工ロールを支持手段側に押圧する加工ロール支持手段とを備えた予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のフィルムを用いたパウチ容器において、使用者が内容物を取り出す場合に、鋏等を使わずに手で開封できるようにフィルムに予め厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工を施したものが公知である。
このハーフカット加工は、レーザー照射あるいはロール刃による加工(特許文献1等参照)で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-196075号公報
【文献】特許第4468934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハーフカット加工は、薄いフィルムに対して切断しない範囲で厚み方向に切り込みを入れるものであるため、その切込量は数μm~60μmと極めて小さなものである。
切込量が浅いと開封性がスポイルされ、逆に切込量が深いとパウチ容器の製造時や充填後の輸送時等に破損する虞が生じるため、精度良く切込量を設定し、安定した切込量で加工する必要がある。
ところが、ロール刃を用いる場合は、フィルムに対する切込量の調整が難しく、レーザー照射の場合は、加工に必要な電力が多く、大がかりな設備が必要となるという問題があった。
切込量を精度よく設定するため、断面が矩形状又は台形状の基部と、基部上に突設された刃先部とからなる切込刃を有する切込加工装置(特許文献2等参照)が公知である。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、基部がフィルムに当接することで、切込量はある程度安定するが、加工ロール、支持ロールの僅かな真円度の低下や偏心回転の影響で、基部によるフィルムに対する押圧力が変化する。
また、加工ロールと支持ロールを両端部で接触させて押圧する構造であるため、加工ロール、支持ロールの撓みの影響によって軸方向の両端部と中央部で基部によるフィルムに対する押圧力が異なってしまう。
切り込まれる部分のフィルムの厚みは加工ロールに押圧されてわずかに薄くなるが、押圧力が変動するとフィルムの厚みも変動し、刃先部の突出量を正確に設定しても、切込量が一定にならないという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した問題点を解決するものであり、簡単な構成で、真円度の低下や偏心回転の影響を受けることなく、加工ロールによるフィルムに対する押圧力を正確に調整でき、フィルムの切込量を一定に保持可能な切込方法及び切込装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る切込方法は、支持手段上を走行するフィルムに、切込刃を備えた加工ロールを押圧することでフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れ、予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込方法であって、前記加工ロールは、前記切込刃を含めて一体に形成されて加工ロール軸受に取り付けられるよう構成されるとともにフィルムの表面に当接する当接円周部を有し、前記切込刃が、前記当接円周部から外周側に周方向に60μm以下の高さで突出して設けられ、前記加工ロールを支持手段上を走行するフィルムに押圧する際に、前記フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧し、前記加工ロールの支持手段側への移動端が、前記当接円周部のフィルムへの当接によってのみ規定されて、切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むことにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明に係る切込装置は、走行するフィルムを支持する支持手段と、支持手段側に突出しフィルムに厚み方向に貫通しない直線状かつ一定の深さの切り込みを入れる切込刃を備えた加工ロールと、前記加工ロールを支持手段側に押圧する加工ロール支持手段とを備えた予めフィルムの厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工の切込装置であって、前記加工ロールは、前記切込刃を含めて一体に形成されて加工ロール軸受に取り付けられるよう構成されるとともにフィルムに当接することによって支持手段側への移動端を規定切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むための当接円周部を有し、前記切込刃が、前記当接円周部から外周側に周方向に60μm以下一定の高さで突出して設けられ、前記加工ロールが、走行するフィルムの幅方向に設けられ、前記加工ロール支持手段が、前記加工ロールに対応して設けられ、支持手段側への押圧力を調整する押圧力調整機構を備え、前記加工ロールは、前記フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧するよう構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に係る切込方法によれば、加工ロールを支持手段上を走行するフィルムに押圧する際に、前記フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧し、加工ロールの支持手段側への移動端が当接円周部のフィルムへの当接によってのみ規定されて、切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むことにより、加工ロールや支持部材の真円度の低下や偏心回転の影響を受けることなく、また、加工ロールや支持部材の撓みの影響を受けることなく、加工ロールによるフィルムに対する押圧力を正確に調整でき、フィルムの切込量を一定に保持可能となる。
本請求項2に記載の構成によれば、走行するフィルムの幅方向に加工ロールが複数設けられ、複数の加工ロールの押圧力を、それぞれ独立して調整することにより、複数の切込みを同時に行う場合であっても、それぞれの切込量を一定に保持可能となる。
本請求項3に記載の構成によれば、加工ロールに対応して加工ロール支持手段が設けられ、前記加工ロール支持手段が幅方向固定手段に支持され、走行するフィルムの幅方向の任意の位置に固定することにより、切り込み位置の異なる仕様のフィルムに対して、加工ロール支持手段の位置を変更するだけで対応でき、加工ロールを取り替えることなく容易に調整することが可能となる。
【0009】
本請求項4に係る切込装置によれば、加工ロールは、前記切込刃を含めて一体に形成されて加工ロール軸受に取り付けられるよう構成されるとともにフィルムに当接することによって支持手段側への移動端を規定し切込刃の高さ分の一定の深さで直線状に切り込むための当接円周部を有し、切込刃が当接円周部から外周側に周方向に60μm以下の高さで突出して設けられ、加工ロールが走行するフィルムの幅方向に設けられ、加工ロール支持手段が加工ロールに対応して設けられ、支持手段側への押圧力を調整する押圧力調整機構を備え、加工ロールは、フィルム支持手段上を走行するフィルムに水平方向から押圧するよう構成されていることにより、加工ロールや支持部材の真円度の低下や偏心回転の影響を受けることなく、また、加工ロールや支持部材の撓みの影響を受けることなく、加工ロールによるフィルムに対する押圧力を正確に調整でき、フィルムの切込量を一定に保持可能となる。
本請求項5に記載の構成によれば、加工ロールが複数設けられ、加工ロール支持手段が、前記複数の加工ロールに対応して独立して複数設けられていることにより、複数の加工ロールの押圧力を、それぞれ独立して調整することにより、複数の切込みを同時に行う場合であっても、複数の加工ロールによる切込量をそれぞれ任意にかつ一定に保持可能となる。
本請求項6に記載の構成によれば、加工ロール支持手段は、幅方向固定手段に支持され、走行するフィルムの幅方向の任意の位置に固定可能に構成されていることにより、切り込み位置の異なる仕様のフィルムに対して、加工ロール支持手段の位置を変更するだけで対応でき、加工ロールを取り替えることなく容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切込装置の正面説明図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る切込装置の側面説明図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る切込装置の加工ロールの斜視説明図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る切込装置の加工ロールの断面説明図。
【
図6】
図5の押圧バネを最圧縮し(加工ロールを取り外し)た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る切込装置100は、
図1、2に示すように、走行するフィルムFを支持する支持手段である支持ロール101と、支持ロール101側に突出した切込刃を備えた加工ロール111と、加工ロール111を支持ロール101側に押圧する加工ロール支持手段110とを備えている。
加工ロール111は、
図3、4に示すように、フィルムFに当接することによって支持ロール101側への移動端を規定する当接円周部112を有し、切込刃113が当接円周部112から外周側に突出して設けられている。
加工ロール111は、走行するフィルムFの幅方向に複数(本実施形態では3つ)設けられ、加工ロール支持手段110が各加工ロール111に対応して独立して設けられている。
【0012】
加工ロール支持手段110は、
図1、2に示すように、支持ロール101の回転軸線と平行に設けられた幅方向固定手段である幅方向固定枠120に支持され、固定レバー117の操作によって幅方向の任意の位置に移動、固定可能に形成されている。
加工ロール支持手段110は、加工ロール111を回転可能に、かつ、支持ロール101方向に往復動可能に支持しており、押圧力調整機構114によって加工ロール111を支持ロール101方向に所定の押圧力で押圧可能に構成されている。
また、加工ロール支持手段110は、フィルムFに必要とされる切込加工の切り込み深さや切り込み形状に応じて、加工ロール111を交換可能に構成されている。
【0013】
さらに詳細に説明すると、加工ロール支持手段110は、
図5、6、7に示すように、固定ベース部材124と、固定ベース部材124に対して揺動軸122を中心に揺動可能に設けられた揺動ベース部材121と、固定ベース部材124を幅方向固定枠120に支持するための固定枠部125及び固定レバー117を有している。
加工ロール111は、揺動ベース部材121に加工ロール軸受123を介して回転可能に設けられている。
揺動ベース部材121は、調節ネジ116、調節ベース部材118、押圧バネ115を備えた押圧力調整機構114によって支持ロール101方向に所定の押圧力で押圧されるように構成されている。
押圧力の調節は、
図6、
図7に示すように、調節ネジ116の端部に設けられた調節ネジつまみ119を回転させることで調節ベース部材118を上下に移動させ、押圧バネ115の圧縮量を変更することで行われる。
【0014】
このように、加工ロール111が押圧力調整機構114により支持ロール101側に押圧され、その移動端が当接円周部112のフィルムFへの当接によってのみ規定されるため、切込刃113の当接円周部112から外周側に突出する高さを正確に設定するだけで、加工ロール111や支持ロール101の真円度の低下や偏心回転の影響や、幅方向固定枠120や支持ロール101の撓みの影響、加工ロール支持手段110の姿勢変化等の影響を受けることなく、所定の押圧力を正確に維持してフィルムFの切込量を一定に保持できる。
【0015】
なお、本実施形態では、切込刃113を、フィルムFの走行方向に平行な円周状の刃であるが、ジグザグ状や波状であってもよく、走行方向に平行あるいは所定の角度で断続的に形成されてもよく、フィルムFの幅方向に2本以上重複して形成されてもよい。
また、本実施形態では支持ロール101がフィルムFの支持手段であるが、フィルムFが摺動走行する平面状の支持手段であってもよい。
また、本実施形態では3つの加工ロール支持手段110を有したものを図示したが、加工ロール支持手段110の数はいくつであってもよく、各加工ロール111にそれぞれ適正に押圧力を付与できる構成であれば、1つの加工ロール支持手段110に複数の加工ロール111を支持させてもよい。
【符号の説明】
【0016】
100 ・・・ 切込装置
101 ・・・ 支持ロール(フィルム支持手段)
110 ・・・ 加工ロール支持手段
111 ・・・ 加工ロール
112 ・・・ 当接円周部
113 ・・・ 切込刃
114 ・・・ 押圧力調整機構
115 ・・・ 押圧バネ
116 ・・・ 調節ネジ
117 ・・・ 固定レバー
118 ・・・ 調節ベース部材
119 ・・・ 調節ネジつまみ
120 ・・・ 幅方向固定枠(幅方向固定手段)
121 ・・・ 揺動ベース部材
122 ・・・ 揺動軸
123 ・・・ 加工ロール軸受
124 ・・・ 固定ベース部材
125 ・・・ 固定枠部
F ・・・ フィルム