(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】圧縮性及び復元性を高めた嵩高不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 3/147 20120101AFI20241106BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20241106BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20241106BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20241106BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20241106BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20241106BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20241106BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
D01F8/06
D01F8/14 Z
D01D5/08 C
A61F13/511 300
A61F13/514 100
A61F13/53 300
(21)【出願番号】P 2021529117
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 CZ2019050053
(87)【国際公開番号】W WO2020103964
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(73)【特許権者】
【識別番号】307036487
【氏名又は名称】ピーエフノンウーヴンズ チェク スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(73)【特許権者】
【識別番号】521221205
【氏名又は名称】ピーエフエヌ-ジーアイシー アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロウチロヴァ,ヤナ
(72)【発明者】
【氏名】マース,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】メチル,ズデニェク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】クラスカ,フランチシェク
(72)【発明者】
【氏名】カスパルコヴァ,パヴリナ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070317(JP,A)
【文献】米国特許第05855784(US,A)
【文献】国際公開第98/056969(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143834(WO,A1)
【文献】特開2018-171907(JP,A)
【文献】特表2018-522149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 3/147
D04H 3/16
D01F 8/06
D01F 8/14
D01D 5/08
A61F 13/511
A61F 13/514
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスなフィラメントを含む少なくとも1つの層から成る不織布であって,前記不織布は,
― 少なくとも第1ポリマー材料(A),及び第1ポリマー材料Aより低い融点を有する第2ポリマー材料(B)から成り,
― 前記第2ポリマー材料(B)は前記フィラメントの長手方向に延び,前記フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,
― 前記フィラメントは,5ミクロン以上且つ50ミクロン以下の中位繊維径を有し,
― 前記第1ポリマー材料(A)は,ポリエステル,ポリ乳酸,ポリエステルコポリマー,ポリ乳酸コポリマー及びこれらの混合物から成る群より選択されたポリマー材料から成るか,又はそのポリマー材料を主成分として含み;且つ,
― 前記第2ポリマー材料(B)は,ポリオレフィンから成る群より選択されたポリマー材料から成るか,又はそのポリマー材料を主成分として含み,
― 前記エンドレスなフィラメントの前記少なくとも1つの層は第2ポリマー材料(B)から形成したフィラメント間接着から成り,前記フィラメントの全成分はフィラメントの断面において前記フィラメントの各成分の重心が同一を含むほぼ同じ位置にある非捲縮性構成で配列しており,前記不織布の構造的な柔らかさは80(m
4mm
2g
-2)以上であり,以下の式で求め,
式中,
― 厚さは,欧州規格試験EN ISO 9073‐2:1995(WSP120.6に準拠)に従って以下のように修正して測定される,mmで表される不織構造体の厚さであり,
1.材料は,より強い力に曝されることなく,また圧力下で1日以上放置することなく製造現場から採取した試料上で測定した方がよく,そうでなければ測定前に材料を少なくとも24時間表面に自由に敷設しなければならず,
2.加重した機器の上部アームの総重量は130gであり,
― 坪量は,欧州規格試験EN ISO 9073‐1:1989(WSP130.1に準拠)に従って測定される,1平方メートル当たりのグラム数で表す前記不織構造体の坪量であり,
― 復元率は比(Tr)/(Ts)であり,式中,(Ts)は0.5kPaの予備負荷力を掛けて欧州規格試験EN ISO 9073‐2:1995に従って測定される不織構造体の初期厚さであり,(Tr)は2.5kPaの負荷を掛けてその後に解放した後に0.5kPaの予備負荷力を掛けて欧州規格試験EN ISO 9073‐2:1995に従って測定した不織構造体の復元した厚さであり,
― 圧縮率は,欧州規格試験EN ISO 964‐1に従って以下のように修正して測定される,不織構造体の初期厚さと5Nの負荷を掛けた不織構造体の厚さとの差をmmで表している,
1.生地の1層の厚さを測定し,
2.総厚さが少なくとも4mm,最適には総厚さ5mmになるように,重ねた生地試料を用意し,重ねた生地は少なくとも1枚の生地を含み,
3.重ねた生地試料の厚さを測定し
4.重ねた不織試料に,5mm/minの負荷速度で5Nの力を掛け,
5.クランプ移動距離を測定し,
6.下記式に従って弾性を計算する:
R(単位なし)=T1(mm)/T0(mm),又は,
R(%)=T1(mm)/T0(mm)×100%,
T1=5Nの負荷下でのクランプの移動距離[mm]=重ねた生地の圧縮程度であり,
T0=厚さ(EN ISO 9073‐2:1995に準拠,予備負荷力1.06Nを使用)[mm])である,
ことを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記フィラメントの長さと前記不織布の生地の長さとの比が1.2超:1である繊維の割合は20%以上であって,
前記比は,前記不織布の生地を,z方向で全厚を維持して,MDで8mm,CDで8mmを測定して切り取り,切り取った前記生地の片側から入り反対側へ出ているフィラメントを少なくとも20本測定し,前記フィラメントの長さと前記切り取った生地の長さとの比を計算し測定したことを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記フィラメントの長さと前記不織布の生地の長さとの比が1.5超:1である繊維の割合は10%以上であって,
前記比は,前記不織布の生地を,z方向で全厚を維持して,MDで8mm,CDで8mmを測定して切り取り,切り取った前記生地の片側から入り反対側へ出ているフィラメントを少なくとも20本測定し,前記フィラメントの長さと前記切り取った生地の長さとの比を計算し測定したことを特徴とする請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
前記フィラメントの長さと前記不織布の生地の長さとの比が2.5未満:1である繊維の割合が10%以上であって,
前記比は,前記不織布の生地を,z方向で全厚を維持して,MDで8mm,CDで8mmを測定して切り取り,切り取った前記生地の片側から入り反対側へ出ているフィラメントを少なくとも20本測定し,前記フィラメントの長さと前記切り取った生地の長さとの比を計算し測定したことを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の不織布。
【請求項5】
前記フィラメントは芯/鞘構造を有し,前記第1ポリマー材料(A)は芯を形成し,前記第2ポリマー材料(B)は鞘を形成することを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の不織布。
【請求項6】
前記第1ポリマー材料(A)と前記第2ポリマー材料(B)との質量比は50:50~90:10であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の不織布。
【請求項7】
坪量は5gsm以上であり,200gsm以下であることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の不織布。
【請求項8】
前記層の空隙量は,65%以上であることを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の不織布。
【請求項9】
以下の工程を含む不織布製造方法であって,
a)少なくとも第1ポリマー材料(A),及び第1ポリマー材料(A)より低い融点を有する第2ポリマー材料(B)を融解して紡糸ビームのノズルに供給する工程であって,前記第1ポリマー材料(A)は,ポリエステル,ポリ乳酸,ポリエステルコポリマー,ポリ乳酸コポリマー,及びこれらの混合物から成る群より選択されたポリマー材料から成るか,又はそのポリマー材料を主成分として含み,且つ,前記第2ポリマー材料(B)は,ポリオレフィンから成る群より選択されたポリマー材料から成るか,又はそのポリマー材料を主成分として含み,前記第1ポリマー材料(A)の融点と前記第2ポリマー材料(B)の融点との差は5℃より高く,前記ノズルは,全成分がフィラメントの断面において前記フィラメントの各成分の重心が同一を含むほぼ同じ位置にある非捲縮性構成に配列しているエンドレスなフィラメントを形成するように構成しており,前記第2ポリマー材料(B)はフィラメントの長手方向に延び,フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,フィラメント紡糸速度は3000~5500m/minの範囲にある,工程,
b)形成した前記フィラメントを,温度10~90℃の範囲の冷却風である流体媒体により冷却し,200~1300の範囲内のドローダウン比でフィラメントを延伸し,少なくとも第1ポリマー材料(A)を準安定的な結晶状態にする工程であって,前記準安定的な結晶状態は前記第1ポリマー材料(A)の可能な限り低いエネルギー状態で結晶化していない状態であり,且つ,
冷却風の質量流量をポリマーの質量流量で除した計算値は20~45である工程,
c)フィラメントを成形ベルト上に敷設し,不織フィラメント状バットを形成する工程,
d)不織フィラメント状バットを温度80~200℃の空気に20~5000ms間暴露することにより温度80~200℃範囲内で加熱し,不織フィラメント状バットの収縮を活性化し,少なくともポリマー材料(A)をより安定的な結晶状態に変換する工程
を含む方法。
【請求項10】
工程c)の後,工程d)の前に,不織フィラメント状バットを予備接着する工程を更に含み,前記予備接着は,フィラメントを温度80~180℃の範囲内で加熱し,前記ポリマー材料(B)を部分的に軟化させ,相互に交差するフィラメントの少なくとも一部の間に前記ポリマー材料(B)を接着することにより行うことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程b)において,前記フィラメントは,温度10~90℃の範囲内の流体媒体を用いて第1領域内で冷却して延伸し,次いで,温度10~80℃の範囲内の流体媒体を用いて第2領域内で冷却して延伸することを特徴とする請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
空気は初速度0.1~2.5m/sの範囲内で,バット内に,及び/又はバットに沿って移動させることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
工程d)において,前記不織フィラメント状バットは,機械方向及び横断方向に20%以下収縮するように,厚さが20%以上増加するように加熱することを特徴とする請求項9~11いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程d)において,前記不織フィラメント状バットは,前記ポリマー材料(B)が軟化して,相互に交差するフィラメントの少なくとも一部の間に前記ポリマー材料(B)を接着するように加熱することを特徴とする請求項9~12いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程d)の後に,前記不織フィラメント状バットは,前記ポリマー材料(B)が軟化して,相互に交差するフィラメントの少なくとも一部の間に前記ポリマー材料(B)を接着するように加熱することを特徴とする請求項9~13いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー材料(B)を接着する工程d)の後の加熱は,オメガドラム接着装置,もしくは平坦ベルト接着装置,もしくは多ドラム接着手段を使用して,及び/又は200~20000ms間,不織フィラメント状バット内に,及び/もしくはバットに沿って空気を移動させることにより行い,空気の温度は,100℃~250℃の範囲内であり,初速度は0.2~4.0m/sの範囲であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ドローダウン比は300~800の範囲内にあることを特徴とする請求項9~16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8いずれか1項記載の不織布から成る吸収性衛生用品であって,前記不織布は表面シート,捕捉層及び分配層,吸収性芯,裏面シート,並びに機械的封止のための装着領域のうちの少なくとも1つを形成することを特徴とする吸収性衛生用品。
【請求項19】
前記不織布は前記表面シート並びに捕捉及び分配層の少なくとも1方を形成し,前記表面シート並びに捕捉及び分配層は互いに接着されていることを特徴とする請求項18記載の吸収性衛生用品。
【請求項20】
前記不織布は前記表面シート並びに捕捉及び分配層を形成し,前記表面シート並びに捕捉及び分配層は一体化した材料であることを特徴とする請求項18又は19記載の吸収性衛生用品。
【請求項21】
前記不織布は前記芯を形成し,前記不織布の細孔は超吸収性ポリマーの粒子で少なくとも部分的に満たされていることを特徴とする請求項18又は19又は20記載の吸収性衛生用品。
【請求項22】
前記不織布は前記裏面シート及び前記装着領域を形成し,前記裏面シート及び前記装着領域は一体化した材料であることを特徴とする請求項18~20いずれか1項記載の吸収性衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非捲縮性断面を有する多成分繊維を含む,圧縮性及び復元性を高めた嵩高なスパンメルトタイプの不織布に関する。より具体的には,本発明は,エンドレスなフィラメントを含む少なくとも1つの層から成る不織布に関するものあって,前記不織布は,
― 少なくとも第1ポリマー材料,及び第1ポリマー材料Aより融点が低い第2ポリマー材料から成り,
― 前記第2ポリマー材料は前記フィラメントの長手方向に延び,フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,
― 前記エンドレスなフィラメントの少なくとも1つの層は第2ポリマー材料から形成したフィラメント間接着を含む。また,本発明は,このような不織布の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば,例えば,非対称な(捲縮性)断面を有する多成分の捲縮又はカールした繊維の利点は理解している。当産業では,ポリマーの特定の組み合わせが繊維内で好適な配置,いわゆる捲縮性断面を有して配列している場合,繊維は紡糸直後に捲縮 ― 自己捲縮するか,又は活性化,例えば熱活性化により誘発され得る特定レベルの潜在的捲縮性を持つことが良く知られている。また,特定のポリマー組成物の組み合わせは柔らかさ及び柔軟性に優れており,特定の他のポリマーの組み合わせは,良好な復元性に更に適していることも良く知られている。例えば,2016年9月3日出願の特許WO2018059610には,圧縮性と復元性との組み合わせが良好な嵩高層を作成するために,偏心芯/鞘配置でPET/PE組成物を使用することが記載されている。
【0003】
また,当業者であれば,特定の用途では,先進的な梳毛技術により同様の材料を製造できることも理解している。梳毛はいくつかの製造工程から成る周知の製法であり,この製法では,初めに繊維を製造し,次に短い(ステープル)繊維に切断し,場合により,繊維状の層を形成するために処理して配列し,次いで接着する。一方,スパンメルト製法は,単一工程でエンドレスなフィラメントから最終不織布を形成するライン製法である。梳毛した材料はステープル繊維から製造しており,不織層の縦横方向に配置したこれらの繊維の端部の数が多いことは,特定の用途にとっては望ましくない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は,比較的低い圧力で圧縮可能で,また圧力を解放したときに復元可能な嵩高不織布を達成することである。
【0005】
従来技術の前記及びいくつかの他の欠点は,エンドレスなフィラメントを含む少なくとも1つの層から成る不織布により解消し,前記不織布は,
― 少なくとも第1ポリマー材料,及び前記第1ポリマー材料より低い融点を有する第2ポリマー材料から成り,
― 前記第2ポリマー材料は前記フィラメントの長手方向に延び,前記フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,
― 前記エンドレスな前記フィラメントの前記少なくとも1つの層は第2ポリマー材料から形成したフィラメント間接着から成り,
前記フィラメントの全成分はフィラメントの断面を横断して非捲縮性構成で配列しており,
前記フィラメントの長さと前記生地の長さとの比が1.2超:1である繊維の割合は少なくとも20%以上であり,
前記フィラメントの長さと前記生地の長さとの比が1.5超:1である繊維の割合は少なくとも10%以上であり,
前記フィラメントの長さと前記生地の長さとの比が2.5未満:1である繊維の割合が少なくとも10%以上である。
【0006】
これら欠点はまた,エンドレスなフィラメントを含む少なくとも1つの層から成る不織布により解消され,前記不織布は,
― 少なくとも第1ポリマー材料,及び第1ポリマー材料より低い融点を有する第2ポリマー材料から成り,
― 前記第2ポリマー材料は前記フィラメントの長手方向に延び,フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,
― 前記エンドレスなフィラメントの少なくとも1つの層は第2ポリマー材料から形成したフィラメント間接着を含み,
― 前記不織布の構造的な柔らかさは80(m
4mm
2g
-2)以上,好ましくは100(m
4mm
2g
-2)以上,好ましくは110(m
4mm
2g
-2)以上,より好ましくは120(m
4mm
2g
-2)以上,より好ましくは130(m
4mm
2g
-2)以上,より好ましくは140(m
4mm
2g
-2)以上,最も好ましくは150(m
4mm
2g
-2)以上であり,以下の式で求め,
式中,
― 厚さは,mmで表す不織構造体の厚さであり,
― 坪量は,1平方メートル当たりのグラム数で表す前記不織構造体の坪量であり,
― 復元率は比(Tr)/(Ts)であり,式中,(Ts)は0.5kPaの予備負荷での不織構造体の初期厚さであり,(Tr)は2.5kPaの負荷を掛けてその後に解放した後に測定した不織構造体の復元した厚さであり,
― 圧縮率は,不織構造体の初期厚さと5Nの負荷を掛けた不織構造体の厚さとの差をmmで表している。
【0007】
好ましくは,前記第1ポリマー材料及び/又は第2ポリマー材料は,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリ乳酸,ポリエステルコポリマー,ポリ乳酸コポリマー,及びこれらの混合物から成る群より選択されたポリマー材料から成るか,又はそのポリマー材料を主成分として含み;第1ポリマー材料と第2ポリマー材料とは異なる。
【0008】
また,好ましくは,前記フィラメントは芯/鞘構造を有し,前記第1ポリマー材料は芯を形成し,前記第2ポリマー材料は鞘を形成する。
【0009】
前記第1ポリマー材料と前記第2ポリマー材料との質量比は50:50~90:10である。
【0010】
坪量は5gsm以上,好ましくは10gsm以上,より好ましくは20gsm以上,より好ましくは30gsm以上,有利には40gsm以上であり,好ましくは200gsm以下,好ましくは150gsm以下,好ましくは100gsm以下,最も好ましくは80gsm以下である。
【0011】
また,有利には,前記フィラメントの中位繊維径は5ミクロン以上;好ましくは10ミクロン以上;好ましくは15ミクロン以上;最も好ましくは20ミクロン以上;及び50ミクロン以下;好ましくは40ミクロン以下;最も好ましくは35ミクロン以下である。
【0012】
好ましくは,前記層の空隙量は,65%以上;好ましくは75%以上;より好ましくは80%以上;より好ましくは84%以上;より好ましくは86%以上;より好ましくは88%以上;最も好ましくは90%以上である。
【0013】
従来技術の前記欠点は,不織布製造方法により解消し,前記方法は,
以下の工程を含む方法であって,
a)少なくとも第1ポリマー材料,及び第1ポリマー材料より低い融点を有する第2ポリマー材料を融解して紡糸ビームのノズルに供給する工程であって,前記ノズルは,全成分がフィラメントの断面を横断して非捲縮性構成に配列しているエンドレスなフィラメントを形成するように構成しており,前記第2ポリマー材料はフィラメントの長手方向に延び,フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,フィラメント速度は3000~5500m/minの範囲にある工程,
b)形成した前記フィラメントを,温度10~90℃の範囲の流体媒体により冷却し,200~1300の範囲内のドローダウン比でフィラメントを延伸し,少なくとも第1ポリマー材料(A)を準安定的な結晶状態にする工程,
c)フィラメントを成形ベルト上に敷設し,不織フィラメント状バットを形成する工程,
d)不織フィラメント状バットを温度80~200℃範囲内で加熱し,不織フィラメント状バットの収縮を活性化し,少なくともポリマー材料(A)をより安定的な結晶状態に変換する工程とを含む。
【0014】
好ましくは,工程c)の後,工程d)の前に,不織フィラメント状バットを予備圧密する工程を更に含み,前記予備圧密は,フィラメントを温度80~180℃,好ましくは90℃~150℃,最も好ましくは110℃~140℃の範囲内で加熱し,ポリマー材料(B)を部分的に軟化させ,相互に交差するフィラメントの少なくとも一部の間にポリマー材料(B)を接着することにより行う。
【0015】
好ましくは,工程b)において,前記フィラメントは,温度10~90℃,好ましくは15~80℃,最も好ましくは15~70℃の範囲内の流体媒体を用いて第1領域内で冷却して延伸し,次いで,温度10~80℃,好ましくは15~70℃,最も好ましくは15~45℃の範囲内の流体媒体を用いて第2領域内で冷却して延伸する。
【0016】
好ましい実施例によると,工程d)において,不織フィラメント状バットは,温度80~200℃,好ましくは100~160℃の範囲内の空気に,20~5000ms,好ましくは30~3000ms,最も好ましくは50~1000ms間,バットを暴露することにより加熱する。空気は初速度0.1~2.5m/sの範囲,好ましくは0.3~1.5m/sの範囲内で,バット内に,及び/又はバットに沿って移動させる。
【0017】
好ましくは,工程d)において,前記不織フィラメント状バットは,機械方向及び横断方向に20%以下,好ましくは15%以下,より好ましくは13%以下,より好ましくは11%以下,最も好ましくは9%以下収縮するように,厚さが20%以上,好ましくは40%以上,より好ましくは60%以上,最も好ましくは100%以上増加するように加熱する。
【0018】
工程d)において,前記不織フィラメント状バットは,ポリマー材料が軟化して,相互に交差するフィラメントの少なくとも一部の間にポリマー材料を接着するように加熱してもよい。あるいは,工程d)の後に,前記不織フィラメント状バットは,ポリマー材料が軟化して,相互に交差するフィラメントの間にポリマー材料を接着するように加熱する。前記ポリマー材料(B)を接着する工程d)の後の加熱は,オメガドラム接着装置,もしくは平坦ベルト接着装置,もしくは多ドラム接着手段を使用して,及び/又は200~20000ms,好ましくは200~15000ms,最も好ましくは200~10000ms間,不織フィラメント状バット内に,及び/もしくはバットに沿って空気を移動させることにより行い,空気の温度は,100℃~250℃,好ましくは120℃~220℃の範囲内であり,初速度は0.2~4.0m/s,好ましくは0.4~1.8m/sの範囲である。
【0019】
好ましくは,第1ポリマー材料及び/又は第2ポリマー材料は,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリ乳酸,ポリエステルコポリマー,ポリ乳酸コポリマー及びこれらの混合物から成る群より選択されるポリマー材料から成るか,又はそれらを主成分として含み;第1ポリマー材料と第2ポリマー材料とは異なる。
【0020】
本発明の方法を実施する際は,前記ドローダウン比は300~800の範囲内にあることが有利である。
【0021】
従来技術の上記欠点は,上記で定義された不織布から成る吸収性衛生用品により解消され,前記不織布は表面シート,捕捉層及び分配層,吸収性芯,裏面シート,並びに機械的封止のための装着領域のうちの少なくとも1つを形成する。
【0022】
有利には,前記表面シート並びに捕捉及び分配層は互いに接着されている。
【0023】
さらに有利には,前記表面シート並びに捕捉及び分配層は一体化した材料である。
【0024】
さらに有利には,前記不織布の細孔は超吸収性ポリマーの粒子で少なくとも部分的に満たされている。
【0025】
さらに有利には,前記裏面シート及び前記装着領域は一体化した材料である。
【0026】
定義
用語「捕捉/分配層」又は「ADL」とは,通常,吸収性衛生用品中の材料層,典型的には不織布を指し,表面シートと吸収性芯との間にある。この層は流体を表面シートから芯へと,迅速に捕捉及び/又は分配するように設計している。この層は,「吸湿層」,「サージ層」,「補足層」又は「分配層」と称する場合もある。1つの副層(接着バット)から成るADL層を有する物品が知られている。また,2つ以上の副層を有する物品も知られている。理想的には,1つの副層は主に,表面シートから迅速に流体を引き離し,層全体で芯への方向や,また他の方向に流体を分配する。他の1つの/複数の副層は,芯から第1副層及び表面シートに向かって戻る流体の傾向を抑制し,即ち,表面シートの再湿潤を抑制又は防止する必要がある。これらの副層は通常,超吸収性材料を含まない。以下では,用語「補足‐分配層」(「ADL」)は,この層を形成する繊維状の副層(バット)の数とは関係なく,表面シートと吸収性芯との間に存在してこれらの捕捉及び分配機能を提供する層を指すために使用する。
【0027】
用語「バット」とは,様々な方法,例えばエアスルー接着やカレンダー処理等で行い得る製法である接着の前の状態に見られるフィラメントの形態の材料を指す。当該「バット」は個々のフィラメントで構成されており,このフィラメント間では,たとえフィラメントが特定の方法で予備接着/予備圧密されていても,通常は相互接着がまだ固定されていない。ここでは,この予備圧密は,スパンレイ製法におけるフィラメントの敷設中,又は直後に行う。しかし,この予備圧密により,依然として相当数のフィラメントが自由に移動し,再配置することが可能である。上記「バット」は,スパンレイ製法において数本の紡糸ビームからフィラメントを集積して形成した数個の階層から構成してもよい。
【0028】
用語「フィラメント」とは,主にエンドレスな繊維を指し,一方で,用語「ステープル繊維」とは,所定の長さへと切断した繊維を指す。
【0029】
用語「フィラメント間接着」とは,通常1つの領域で2本のフィラメントを接続する接着を指し,その領域ではフィラメントは互いに交差するか,又は互いに局所的に接近もしくは当接する。当該接着は2本を超えるフィラメントを接続するか,又は同じフィラメントの2つの部分を接続してもよい。
【0030】
用語「単一成分フィラメント」とは,単一のポリマー又はポリマー混合物から形成したフィラメントを指し,二成分又は多成分フィラメントとは区別する。
【0031】
「多成分繊維又はフィラメント」とは,複数の個別の区分から成る断面を有する繊維又はフィラメントを指し,これらの各区分は,異なるポリマー成分もしくはポリマー成分の異なる混合物,又はポリマー成分もしくはポリマー成分の混合物から成る。用語「多成分繊維/フィラメント」には,「二成分繊維/フィラメント」が含まれるが,これに限定されるものではない。多成分繊維の異なる成分は,繊維の断面を横断するほぼ明確に異なる領域に配列され,繊維の長さに沿って連続的に延びる。多成分繊維の全体的な断面は,例えば同軸小区分,芯‐鞘小区分,並列小区分,放射状小区分,海‐島小区分等の,任意の形状又は配列になった異なる成分の小区分に分割してもよい。「芯/鞘構造」を有する二成分フィラメントの断面は,それぞれがポリマー又はポリマー混合物から成る2つの個別の区分から成り,鞘のポリマー又はポリマー混合物成分は芯のポリマー又はポリマー混合物成分の周囲を取り囲む。
【0032】
「繊維径」の単位はμmで表す。用語「9000m当たりの繊維のグラム数(denier又はden)」又は「10000m当たりの繊維のグラム数」(dTex)は,採用した材料(単数又は複数)の密度により直径(円形と仮定した場合)と関連する繊維の繊度又は粗度を説明するために使用する。
【0033】
「フィルム」とは,1種以上のポリマーから形成した皮膚状又は膜状の材料層を意味し,主に圧密したポリマー繊維及び/又は他の繊維の布帛状構造から成るような形態は持たない。
【0034】
「機械方向」(MD) ― 不織布帛材料の製造及び不織布帛材料に関し,機械方向(MD)とは,布帛材料を製造する製造ラインを通る布帛材料の前進方向にほぼ平行な,布帛材料に沿った方向を指す。
【0035】
「交差方向」(CD) ― 不織布帛材料の製造及び不織布帛材料に関し,交差方向(CD)とは,布帛材料を製造する製造ラインを通る布帛材料の前進方向にほぼ垂直な,布帛材料に沿った方向を指す。
【0036】
「不織」又は「不織布」又は「不織布帛」は,方向性をもって,又は無作為に配向した繊維の製造シート又は布帛であり,これらの繊維は最初にバット状に形成し,次いで摩擦,結束,接着により圧密し,熱的に(例えば,エアスルー接着,カレンダー接着,超音波接着等),化学的に(例えば,接着剤の使用),機械的に(例えば,水流交絡等),又はこれらの組み合わせにより接着する。この用語には,撚り糸又はフィラメントで織った生地,編んだ生地,又は縫って接合した生地は含まれない。繊維は天然由来でも人工由来でもよく,ステープルフィラメント又は連続フィラメントであってもよく,製造現場で形成してもよい。市販繊維は直径約0.001mm未満から約0.2mm超であり,いくつかの異なる形態:短繊維(ステープル繊維又はチョップド繊維として知られる),連続した単一繊維(フィラメント又は単一フィラメント),連続フィラメントの無撚束(トウ),連続フィラメントの撚り束(撚り糸)で存在する。不織布は,ステープル繊維を用いた,メルトブロー処理,スパンボンド処理,スパンメルト処理,溶媒紡糸,電子紡糸,梳毛処理,フィルム細繊維化,融解フィルム細繊維化,エアレイ処理,ドライレイ処理,ウェットレイ処理,及び当技術分野で公知のこれらの製法の組み合わせなどの多くの製法により形成可能であるが,これらに限定されるものではない。不織布の坪量は通常,1平方メートル当たりのグラム数(gsm)で表す。
【0037】
本明細書における用語「吸収性衛生用品」とは,身体の排泄物を吸収又は保持する製品又は補助具;より具体的には,様々な身体の排泄物を吸収及び保持する目的で,使用者の身体に当てがい,又は身体の近傍に配置する製品又は補助具を指す。吸収性衛生用品には,使い捨ておむつ,おむつ用パンツ,失禁した大人用の下着やパッド,女性用衛生用品,介護用パッド,使い捨て交換パッド,よだれ掛け,包帯等が挙げられる。用語「排泄物」は,本明細書で使用している意味合いでは,即ち尿,血液,膣分泌物,母乳,汗及び便を指す。
【0038】
本明細書で使用しているように,用語「層」は,布帛の副成分又は要素を指す。「層」は,単一ビーム,又はほぼ同じ繊維を製造する2つ以上の連続したビーム上で作られた複数の繊維の形態であってもよい。例えば,ほぼ同じ設定及びポリマー組成である2つの連続して配列したスパンボンドビームは一緒に1つの層を製造できる。対照的に,例えば,2つのスパンボンドビームは,一方が単一成分繊維を製造し,他方が二成分繊維を製造する場合,2つの明確に異なる層を形成する。層の組成は,層を形成するために使用する樹脂(ポリマー)組成物の個々の設定及び成分を知ることにより,又は,例えば光学顕微鏡又はSEM顕微鏡を用いて不織布自体を分析することにより,又はDSC又はNMR法を用いて層の繊維を作るために使用する組成物を分析することにより,決定できる。
【0039】
「スパンボンド」製法は,ポリマーを連続フィラメントに直接変換することを含み,フィラメントをランダム配列敷設フィラメントに変換して不織バットを形成することを統合し,その後,不織バットを接着し,不織布を形成する不織布製造システムである。接着製法は,様々な方法,例えばエアスルー接着,カレンダー処理等で行うことが可能である。
【0040】
本明細書における「活性化」とは,準安定的な状態(例えば,可能な限り低いエネルギー状態で結晶化していない)にある繊維又はフィラメント又は繊維構造体を加熱した後,ゆっくりと冷却し,準安定的な状態を何らかの他の更に安定した状態(例えば,異なる結晶化相)に変化させる製法を指す。
【0041】
本明細書における用語「捲縮可能な断面」とは多成分繊維を指し,ここでは,異なる収縮特性を持つ複数の成分がその断面を横断して配列されており,活性化温度以上に加熱した後にゆっくりと冷却すると,繊維は捲縮し,これらの繊維は収縮力のベクトルに追従するようになる。これにより,繊維が開放されると,いわゆる螺旋状の捲縮が形成されるが,繊維が繊維層に含まれる場合は,繊維の相互接着により理想的な螺旋は形成されない。多成分繊維の場合,繊維断面における個々の成分それぞれの質量中心を(断面における面積/位置を考慮して)決定できる。理論に縛られることなく,本発明者らは,各成分の全ての面積の重心が
同一を含むほぼ同一点にあるとき,その繊維は非捲縮性であると考えている。例えば,中心芯/鞘構造を有する円形二成分繊維の場合,質量中心は断面の中心にある(
図2参照)。
【0042】
本明細書における用語「圧縮性」とは,「弾性」測定値で定義される負荷により不織布が圧縮される距離をミリメートル(mm)で表したものを指す。
【0043】
本明細書における用語「紡糸口金毛細管密度[1000/m]」とは,CDの距離1m毎に紡糸口金に配置した毛細管の数を指す。
【0044】
本明細書における用語「フィラメント速度」とは,フィラメントの繊維径,処理量,及びポリマー密度から計算した数値を指す。
【0045】
本明細書における用語「ドローダウン比」とは,毛細管断面積をフィラメント断面積で除して計算した数値を指す。フィラメント断面積を計算するために,見かけの直径に基づいて測定した繊維の繊度を用いる。他の真円でない断面はこの方法では計算できないことから,その場合は実際の断面を示すSEM画像の分析が必要となる。
【0046】
本明細書における用語「冷却風/ポリマーの比率」とは,冷却風の質量流量をポリマーの質量流量で除した計算値を指す。
【0047】
以下の添付概略図を参照して,本発明の好ましい実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図3】本発明の例示的な実施形態に従った層内フィラメントの無指向性
【
図4】実施例4の収縮と対比させた実施例2Fの収縮
【
図5】活性化前後の芯/鞘繊維断面のSEM顕微鏡写真
【
図6a】本発明に従った生地におけるフィラメント経路の例
【
図6b】本発明に従った生地におけるフィラメント経路の例
【
図6c】本発明に従った生地におけるフィラメント経路の例
【
図7】捲縮レベルが異なる複数の繊維層の顕微鏡写真
【
図9】生地断面 ― 実施例5A+D(本発明に従った実施例)
【
図10】生地断面 ― 本発明の例示的な実施形態に従った生地
【
図11A】本発明の例示的な実施形態に従った方法を実行するために好適な製造ライン
【
図11B】本発明の例示的な実施形態に従った方法を実行するために好適な製造ライン
【
図12】「フィラメントの長さと生地の長さとの比率」 ― b)と比較する例示的な画像
【0049】
発明を実施するための形態
本発明の目的は,比較的低い圧力で圧縮可能であり,また解放時に復元可能である嵩高不織布を実現することである。当業者であれば,捲縮繊維を用いてこのような材料を達成するための様々な方法に気付くであろう。これに対して,本発明者らは非捲縮性の断面を有するエンドレスな繊維を用いて,この効果を達成する課題に対して驚くべき解決策を見出した。
【0050】
本発明によれば,不織布は,主に非捲縮性断面を有するエンドレスなフィラメントから形成した少なくとも1つの層から成る。繊維は,多成分,好ましくは二成分とすることが可能である。理論に縛られることなく,本発明者らは,繊維断面を横断する成分により形成される表面の重心が他の成分のそれぞれの表面の重心と同一を含むほぼ同じ位置にあるとき,その断面は非捲縮性であると考えている。
【0051】
例えば,本発明に従った層は,円形断面,三葉形断面,星形断面等を有するエンドレスなフィラメントから主に構成できる(
図1参照)。当業者であれば,冷却してもほぼ捲縮せず,潜在的な捲縮も伴わないが繊維の加熱及びその後の冷却により活性化される可能性がある繊維断面の多くの可能な形状に気づくであろう。
【0052】
例えば,エンドレスなフィラメントは多成分フィラメントとすることが可能であり,断面における成分のレイアウトは,フィラメント断面内の1箇所に成分領域の重心がある芯/鞘(同心円)状,区画されたパイ状,又は任意の他のレイアウトである(
図2)。
【0053】
好ましくは,本発明に従った層は,円形状又は三葉形状を有する二成分の芯/鞘フィラメントから形成する。
【0054】
本発明によれば,エンドレスフィラメントは2つ以上の成分から形成し,1つの成分は復元特性に必要な一定レベルの強度及び靭性をもたらし,他方の成分は柔らかさをもたらし,また,個々のフィラメント間を接着することで結束性構造を維持することも可能である。例えば,第1成分は,ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル,又はポリ乳酸(PLA)などの脂肪族ポリエステル),ポリアミド,ポリウレタン,又はこれらのコポリマーもしくは好適な混合物の群から選択できる。第1成分がポリエステルコポリマー(coPET)又はポリ乳酸コポリマー(COPLA)も含むポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は本質的に成ることは,本発明の範囲内である。好ましくは,ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリ乳酸(PLA)はポリエステルとして使用する。
【0055】
例えば,第2成分は,ポリオレフィン(即ち,ポリプロピレン又はポリエチレン),低融点ポリマー,好適なポリマーのコポリマー又は混合物の群から選択できる。第2成分が,ポリエステルコポリマー(coPET)又はポリ乳酸コポリマー(COPLA)も含むポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は本質的に成ることは,本発明の範囲内である。好ましくは,ポリエチレン(PE)はポリオレフィンとして使用する。
【0056】
本発明に従った不織層の二成分フィラメントのための成分の好ましい組み合わせは,PET/PE,PET/PP,PET/CoPET,PLA/COPLA,PLA/PE,及びPLA/PPである。
【0057】
好ましい二成分フィラメントは,第1成分の質量と第2成分の質量との比が50:50~90:10である。
【0058】
別の実施形態では,成分は,フィラメント特性を改変するための添加剤を含むことも可能である。例えば,芯は,着色顔料や,例えば核剤を含むことも可能である。当業者であれば,核剤の特別な組み合わせによっては,ポリマー結晶化及び収縮挙動を有意なレベルまで変更できると分かることは理解しているものとする(例えば,1995年出願の米国特許第5753736号においてGajananにより示されている)。一方,例えば,白色着色剤として使用することが多い単純な二酸化チタンはポリマーの挙動に取るに足らない変化しかもたらさず,この変化は,必要な場合には,製法条件をわずかに調整することで容易に相殺することが可能である。
【0059】
鞘は,例えば,着色顔料や表面改質剤(例えば,絹のような手触りや感触を得るためのもの)を含むことが可能である。当業者であれば,特定の用途の要件に基づいて,多くの他の選択肢を実現するであろう。
【0060】
別の実施形態では,成分は特定量の異なるポリマーを含むことも可能である。例えば,第1成分(例えば芯)は,特定の少量の第2成分(例えば鞘)のポリマー(単数又は複数)を含むことが可能であり,又はその逆に,第2成分(例えば鞘)は,例えば少量の第1成分(例えば芯)のポリマー(単数又は複数)を含むことが可能である。的確なポリマーの組み合わせには,特定の含有量レベルを使用できる。例えば,Mooreは,ポリエステルにポリプロピレンを最大10%混合すると,安定した繊維が得られると教示している(3M innovative properties社出願の米国出願第2012088424号)。
【0061】
理論に縛られることなく,本発明者らは,所望の特性を有する生地を形成するための重要な特徴は2成分の組み合わせにより達成されると考えている。初めに,例えば芯を形成する本発明に従った不織構造体を形成するフィラメントの成分は,特定の条件下で収縮可能なポリマーAから成る。繊維形成工程中 ― 特に冷却及び延伸中,ポリマーAは後続の活性化により変化を受けるように設計している。例えば,ポリマーAを準安定的な状態(例えば,可能な限り低いエネルギー状態で結晶化していない)にしておき,次いで活性中に加熱し,その後ゆっくりと冷却することで,準安定状態が何らかの他の更に安定した状態(例えば,体積が更に小さい異なる結晶化相)に変化する。この変化により,繊維中心線の方向にベクトルを有すると考えられる内部収縮力が発生する。
【0062】
スパンメルト不織布内の繊維径は,ミリメートル及び/又はサブミリメートルの範囲にあり;一般的に繊維は無指向性であり(
図3参照),繊維間の自由部分も一般的にミリメートル及び/又はサブミリメートルの範囲にあるように繊維は互いに接触している。繊維間の結束は内部の力のベクトルに逆らい,そのベクトルに抗する最初の抵抗点を形成する。この抵抗点は,構造的収縮に対する閾値抵抗点と称してもよい。例えば,1本の繊維を適切な状態にして活性化させると,例えば,全3次元方向で不規則な弓形や波形を形成することが可能になる。対照的に,隣接する繊維の周囲構造に限定された繊維には,そのような自由度はない。
【0063】
本発明に従った層は二成分フィラメントから形成しており,第2成分は,より低い融点を有し,好ましくは,柔らかさ,心地よい肌触り,及び感触向上特性等の他の望ましい特性も提供するポリマーBから成る。ポリマー材料A及びポリマー材料Bの収縮特性は異なる必要があり,ポリマー材料B(好ましくは,フィラメントの鞘を形成する材料)の収縮能はポリマー材料A(好ましくは,フィラメントの芯を形成する材料)より低いことが好ましい。その結果,2種の隣接するポリマー材料内で作用する収縮力は異なる。理論に縛られることなく,本発明者らは,ポリマー材料A及びポリマー材料Bは常に異なる特徴を有するため,内部収縮力のベクトルは同一時点で同一になることはないと考えている。この力の不均一性により,収縮に対する第2の閾値抵抗点が形成される。この抵抗点は,繊維収縮に対する閾値抵抗点と定義することも可能である。例えば,単成分フィラメント(例えばPET)から形成した層,及び二成分フィラメント(例えばPET/PP)から同じ条件下で形成した層の挙動を比較すると,有意な差が見られる。同じ条件下で製造した同じサイズの2つの試料両方を,活性化温度120℃に同じ時間暴露した。単成分のPETは小さい平面状の物体へと縮小したが,対照的に,PET/PP構造では体積が増加した(CDとMDの減少は小さく,z方向の増加が大きい ― 表1及び
図4を参照)。
【表1】
【0064】
活性化を受けている本発明に従ったバット層のCD又はMDの収縮は,20%以下,好ましくは15%以下,好ましくは13%以下,より好ましくは11%以下,より好ましくは9%以下である。
【0065】
活性化を受けている本発明に従ったバット層のz方向増加は,20%以上,好ましくは40%以上,好ましくは60%以上,好ましくは80%以上,より好ましくは100%以上である。
【0066】
かなり簡単に言えば,バットの収縮レベルは単繊維の収縮レベルにより推定できる。
【0067】
活性化を受けている本発明に従ったバット層の体積変化は正であり;好ましくは体積変化は10%超,好ましくは15%超,より好ましくは20%超である。
【0068】
当業者であれば,スパンボンド処理などの繊細な製法が,繊維及び構造体の両方の収縮に逆らう特定の反力を誘発することも可能な様々な他の条件によっても影響され得ることは理解しているものとする。
【0069】
いわゆる捲縮性断面に配列した異なる収縮レベルを有するポリマーの特定の組み合わせが,いわゆる捲縮をもたらすことは当産業で周知である。この性質は即時的な自己捲縮でも潜在的捲縮でもよく,捲縮を示すためには繊維を活性化する必要がある(例えば,熱活性化)。
【0070】
捲縮性断面を有する繊維は,いわゆる螺旋捲縮を形成する規則的な捲縮をもたらす。かなり簡単に言えば,捲縮性断面を有する繊維は,収縮率の高い成分に向かう方向に曲がる傾向があり,これによりほぼ均一な螺旋捲縮が得られる。言い換えれば,捲縮性断面は,第1成分及び第2成分の内力ベクトルを互いに向かわせるように規則的にシフトさせる。理論に縛られることなく,本発明者らは,シフトの規則性が,自由な単繊維上での規則的な捲縮の主な理由であると考えている。対照的に,本発明者らの発明によれば,また非捲縮性断面を有する繊維に関する理論に縛られることなく,本発明者らは,第1成分及び第2成分の内部収縮力ベクトルが互いに規則的にシフトしないことにより繊維は任意の方向に不規則な弓形や波形を形成すると考えている。かなり簡単に言えば,繊維はその断面又は周辺の特定の部分に向かって曲がる一様な傾向を有さず,その結果,不規則な最終形状になる。活性化後,繊維断面はほぼ非捲縮性のままである。
図5を参照されたい。
【0071】
理論に縛られることなく,本発明者らは,内部収縮力が弱く,反力の繊維抵抗点閾値を超えられない場合,生地は変化しないままであると考えている。内部収縮力が十分に強く,反力のMD/CD抵抗点閾値全てを超えると,生地はMD/CD比に応じて収縮し,平坦構造を形成する。内部収縮力がただ繊維収縮抵抗点の閾値を超えるに十分な強さを有し,構造的MD/CD収縮抵抗点の閾値を超える程は強くないだけで,繊維は様々な方向にバネのように曲がり,主にz方向からの最も低い構造的抵抗に直面し,所望の嵩高構造を形成する。望ましい内部繊維収縮力は繊維の内部抵抗点より高いが,構造的MD‐CD収縮抵抗点の閾値より低い。
【0072】
本発明に従った層は,互いに多くの接点を有する多数の繊維から形成する。ミリメートル及び/又はサブミリメートルのスケールで見ると,本発明者らは,繊維,又はより好ましくは繊維のミリメートル及び/又はサブミリメートルの部分は,隣接する繊維により,活性化中に複数の力が独自に組み合わさるという独自の状況にあり,その結果,最終的な構造において非常に多様なフィラメント形状が得られる。対照的に,繊維はほぼ完全に平面的なMD/CDレベルに留まることができる。一方,繊維は「上方向」又は「下方向」に移動して,MD,CD,及びz方向の全てで大きな3D構造を形成できる。いくつかの例を
図6に示す。理論に縛られることなく,本発明によれば,本発明者らは,層内のフィラメント経路の多様性により最終的な特性に利点がもたらされると考えている。本発明によれば,巨視的なスケールでは層は均質である。層内で構成される多様なフィラメント形態及びそれらの相互作用が本発明の利点をもたらし,よって,層は所望の方法で外部作用(例えば,圧力及び開放,又は繊維を通る流体)に応答できる。
【0073】
かなり簡単に言えば,「フィラメントの長さと生地の長さとの」比により繊維経路を表することも可能である。
【0074】
本発明に従った不織布では:
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2超:1である繊維の割合は20%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2超:1である繊維の割合は30%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2超:1である繊維の割合は40%以上であり,より好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2超:1である繊維の割合は50%以上であり;
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5超:1である繊維の割合は10%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5超:1である繊維の割合は15%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5超:1である繊維の割合は20%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5超:1である繊維の割合は25%以上であり,より好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5超:1である繊維の割合は30%以上であり;
「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%超である繊維の割合は5%以上であり,好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%超である繊維の割合は10%以上であり,好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%超である繊維の割合は15%以上であり,より好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%超である繊維の割合は20%以上であり;
本発明に従った不織布では:
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満:1である繊維の割合は10%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満:1である繊維の割合は20%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満:1である繊維の割合は30%以上であり,好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満:1である繊維の割合は40%以上であり,より好ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満:1である繊維の割合は50%以上であり;
「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%未満である繊維の割合は5%以上であり,好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%未満である繊維の割合は10%以上であり,好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%未満である繊維の割合は15%以上であり,より好ましくは「生地の長さに対するフィラメントの長さの」比が200%未満である繊維の割合は20%以上である。
【0075】
本発明とは対照的に,捲縮性断面を有する繊維は規則的な形状 ― 螺旋状の捲縮を形成する傾向があり,この傾向では繊維は実質的に,より収縮性の高い材料から成る繊維の側に向かって規則的に曲がる傾向がある。これら繊維は隣接する繊維によっても制限されるが;規則的な力によりほぼ螺旋状になる。理論に縛られることなく,本発明者らは,内部収縮力が大きい程,単繊維の「長さ当たりの捲縮」単位が大きくなり,従って,生地構造に見られる螺旋部分が多くなると考えている。対照的に,捲縮レベルが低い場合,例えば1インチ当たり25個未満の捲縮(形成された螺旋の長さが1mm超の各単一「ラウンド」)の場合,繊維接触点間の自由空間は,螺旋の適切な部分の形成には不十分になり始め,一方,繊維の接触により発生した反力も比較的強くなる。設定した捲縮数は単なる例示であり,様々な繊維組成及び/又は製法条件によって異なる可能性があることは理解すべきである。1インチ当たり捲縮が約15個未満(形成された螺旋の長さが2mm超の各単一「ラウンド」)の場合,螺旋の部分を識別することは難しく,1インチ当たり捲縮が約10個未満(螺旋の長さが約2.5mm超の各単一「ラウンド」)の場合,繊維内の規則的な力は完全に反力に負け,内部収縮ベクトルのシフトに反して,規則的な捲縮形成に向かう傾向があるため,当該構造は完全に不規則であるように見える。しかし,規則的な内部収縮ベクトルのシフトにより発生する嵩高構造(捲縮性断面),及び非捲縮性繊維断面の場合の不規則な繊維収縮により発生する嵩高構造を駆動する異なるエンジンが存在することは理解すべきである。リヨン繊維の捲縮に基づく構造の違いの例を
図7に示す(2013年,Kunal Singha及びMrinal Singhaの記事Fiber Crimp Distribution in Nonwoven Structureで説明している(http://article.sapub.org/10.5923.j.fs.20130301.03.htmlで閲覧可能))。
【0076】
本発明に従った不織布と,捲縮繊維から形成した不織布とを区別する構造上の違いを,一般的な方法で説明することは複雑であるが,特に低い捲縮レベルの場合には,当業者であれば自信を持って自分が検査している生地のタイプを判断できる。例えば,
図7及び8の実施例7C(捲縮処理した)と05A+D(本発明に従った)とのSEM断面画像を比較する。
【0077】
不確実な場合,繊維断面における成分のレイアウトは最も重要な要素となる。このレイアウトは製造設定から分かってもよいし,「繊維断面タイプの推定」法で推定できる。
【0078】
本発明に従った層はいくつかの重要な特性を組み合わせており,これらは適切なバランスをとる必要がある。層自体は厚く弾性を有し(lofty),嵩高であり,層の厚さで説明できる方がよい。層自体は靭性でない方がよく;最終使用者にとって心地よく,快適なものである方がよい。例えば,衛生用吸収製品のADLとして,又は衣類の一部として使用する場合,柔らかく,かつ,厚く弾性を有する方がよい。そのため,圧力が掛かったとき(例えば,座ったとき),低い圧力でスムーズに圧縮する方がよい。これは,長さ単位(例えば,mm)での圧縮率で表せる。また,圧力から解放されたときには,層自体は復元した方がよく,つまり,復元率測定により表せる。上述した全ての特性のバランスは,構造的な柔らかさで表現できる。
構造的柔らかさ=(厚さ/坪量)×復元率×(圧縮率/坪量)×10e6
式中:
厚さの単位はミリメートル(mm)
坪量の単位は1平方メートル当たりのグラム(gsm)
復元率は単位のない比率
ミリメートル(mm)単位の圧縮率=圧縮率(単位の無い比率)×厚さ(mm)
本発明に従った層の構造的柔らかさは,40m
4mm
2g
-2以上;好ましくは80m
4mm
2g
-2以上;好ましくは100m
4mm
2g
-2以上,好ましくは110m
4mm
2g
-2以上,より好ましくは120m
4mm
2g
-2以上,より好ましくは130m
4mm
2g
-2以上,より好ましくは140m
4mm
2g
-2以上,有利には150m
4mm
2g
-2以上である。
【0079】
本発明に従った層の坪量は,5gsm以上,好ましくは10gsm以上,より好ましくは20gsm以上,より好ましくは30gsm以上,有利には40gsm以上である。本発明に従った層の坪量は,200gsm以下,好ましくは150gsm以下,好ましくは100gsm以下,最も好ましくは80gsm以下である。
【0080】
本発明に従った層の坪量に対する厚さ(1gsmに再計算した厚さ=厚さ(mm)/坪量(gsm))は,5e10-3以上,好ましくは10e10-3以上,より好ましくは12e10-3以上である。
【0081】
本発明に従った層の復元率は,0.8(元の厚さの80%の復元率に相当)以上,好ましくは0.82以上,より好ましくは0.84以上,最も好ましくは0.85以上である。
【0082】
本発明に従った層の層坪量1gsm当たりの圧縮率は,0.25ミクロン(0.00025mm)以上,好ましくは0.75ミクロン(0.00075mm)以上,好ましくは1.25ミクロン(0.00125mm)以上,より好ましくは1.75ミクロン(0.00175mm)以上である。従って,例えば,100gsmの層の圧縮性は,25ミクロン(0.025mm)以上,好ましくは75ミクロン(0.075mm)以上,好ましくは125ミクロン(0.125mm)以上,より好ましくは175ミクロン(0.175mm)以上である。
【0083】
本発明に従った層の弾性率は,5%以上,好ましくは8%以上,より好ましくは10%以上,より好ましくは13%以上,より好ましくは15%以上である。
【0084】
本発明に従った層は,5ミクロン以上;好ましくは10ミクロン以上;好ましくは15ミクロン以上;有利には20ミクロン以上の中位繊維径を有するフィラメントから成ることが最も好ましい。例示的な実施形態では,本発明に従った層は,50ミクロン以下,好ましくは40ミクロン以下,有利には,35ミクロン以下の中位繊維径を有するフィラメントから成る。
【0085】
繊維太さ,及び繊維太さの分布は,多くの他のパラメータに影響を与え得る。例えば,特定の用途では,均質な繊維太さの分布を利用することが可能であり,即ちここでは,複数の繊維がほぼ同じであり,それら繊維の中でベクトル力はほぼ同等であり,最終生地はほぼ均質である。このような材料は,例えば,衛生用途で有利である。例えば他の特定の用途では,広範な繊維太さの分布を利用することが可能であり,即ちここでは,生地内に厚い試料及び薄い試料が存在する。理論に縛られることなく,本発明者らは,特定のレベルから,太い繊維のベクトル力は細い繊維のベクトル力よりはるかに強いため,太い繊維が有力な活性化剤となり,不織布の最終状態を形成し,その反面,細い繊維のベクトル力は抑制され得ると考えている。太い繊維が内部骨格のようなものを形成している最終的な構造は,例えば濾過に有利になる可能性がある。太い繊維と細い繊維との組み合わせは,混合フィラメント(例えば,三井化学株式会社の出願WO2009145105に記載されている混合スパンボンド)を用いて,又は,太い繊維と細い繊維とが1つの構造体に融合できるように十分に各ビームからのバットが開放したままになる条件下で連続ビームを用いて,製造可能である。
【0086】
この発明の別の実施形態では,層はその空隙量により定義するものであり,この空隙量は,材料が占める嵩量に対する材料中の空隙空間の総体積の体積百分率として定義する。当業者であれば,空隙量が多くの様々な方法で測定可能であることは知っているものとする。本報告の目的では,記載した空隙量は既知の坪量(gsm),平均ポリマー密度,及び既知の嵩量(1平方メートルの生地厚さ又は2端面間隔(caliper))から計算する。
【0087】
本発明によれば,層の空隙量は65%以上;好ましくは75%以上;より好ましくは80%以上;より好ましくは84%以上;より好ましくは86%以上;より好ましくは88%以上;有利には90%以上である。
【0088】
本発明の別の実施形態では,顕微鏡画像(
図10)に示すように,厚く弾性を有し量感のある不織構造体は,表面から外側に突出している多数の単一フィラメントループ及び/又はループ束を備える。理論に縛られることなく,本発明者らは,表面のこれら「毛状物」は少なくとも2つの機能を有すると考えている:
a.例えば,捕捉分配層などの用途では,これらの毛状物は,厚く弾性を有するADL構造体を片面で表面シートと相互接続させ,他方の面で,ADLの下にある吸収性芯と相互接続するのために役立つ。吸収性製品における層の繊維状構造体のこの相互接続により,吸収性芯内へ向かう層内の流体輸送が改善される。
b.例えば,使用者の皮膚に直接接触することが必要な用途では,これらの毛状物は触知できる柔らかさを向上し,生地の肌触り及び/又は着用感を快適にする。例えば,衛生用途では,柔らかく,かつ,厚く弾性を有する表面シート及び/又は裏面シートにおいてこの利点は評価できる。例えば,防護服では,シートは使用者の皮膚に面する側に使用できる。
【0089】
おむつ,パンツ型おむつ,又はパッドのような使い捨て吸収性衛生用品は不織材料から形成した多数の繊維状要素から成る。このような不織布要素の例としては,表面シート,裏面シート,立ち上がりレッグギャザー,機械的な「面ファスナー」封止のための装着領域等が挙げられる。いくつかの吸収性衛生用品では,セルロース系毛羽立ちパルプと超吸水性ポリマーとの混合物から形成した従来の典型的な吸収性芯は,接着剤,超音波溶着,熱溶着等のような様々な手段によりこれら層に接着又は層間に挿入した超吸収性ポリマー粒子を含む不織層に取って代わられた。
【0090】
本発明に従った嵩高不織布/構造体は,広範な坪量で製造可能である。5~35gsmの比較的軽量な不織布は,人間の皮膚に接触し続ける材料の機械的要件である顕著な柔らかさ,柔軟性,及び弾性があるため,吸収性衛生用品の外層,例えば表面シートや裏面シートに理想的な特性を示す。
【0091】
本発明に従った不織布の顕著な嵩高及び開放表面構造は,機械的締結物の封止手段上にある「フック」用の「装着領域」として完璧な「ループ状」表面を提供する。本発明に従った材料は,裏面シートの上の装着領域として使用できるだけでなく,裏面シートの表面の一部を形成することも可能である。後者の場合,裏面シート及び装着領域は,両方の機能:「裏面シート」及び「装着領域」を果たす一体型の材料となる。吸収性物品における不織布装着領域は,例えば,Procter and Gamble社が出願した米国特許出願第2018318153号に記載されている。
【0092】
36~120gsmのような高い坪量で製造した本発明に従った不織布は,吸収性衛生用品における「捕捉層及び分配層」として優れた特性を提供する。構造の弾性及び復元性が有利になる優れた形状記憶により,特に夜間のような複数回の濡れがある場合,吸収性製品の液体(例えば尿)流動の管理を改善できる。吸収性物品における「補足分配層の使用」については,例えば,Procter and Gamble社が出願した米国特許出願第2018296402号に記載されている。
【0093】
両方とも本発明に従って形成した表面シートとADLとを組み合わせると,着用者の皮膚との接触面を形成する一体型材料,及び表面シートの下にあるサージ管理要素が形成される。この一体型材料のこれら2つの層は,別々に製造した後に互いに接着することも,1工程で多層材料として製造することも可能である。一体型表面シート及び吸収性物品は,例えば,Procter and Gamble社が出願した米国特許出願第2018311082号に記載されている。
【0094】
本発明に従った不織材料の開放構造により,空隙量が非常に多くなる。孔と呼ばれる繊維状構造体のこれらの空隙空間は超吸水性ポリマー粒子用の容器として使用できる。当業者であれば,例えば振動を加えて,粒子を繊維状構造体に導入する方法は知っているものとする。
【0095】
本発明は,連続フィラメントから,特に熱可塑性材料の連続フィラメントから不織布を製造する方法に関する。本発明の文脈では,連続フィラメントから形成したか,又は連続フィラメントから構成された不織布層を使用する。連続フィラメントが,その半エンドレスな長さのために,例えば10mm~60mmといったかなり短い長さを有するステープル繊維とは大きく異なることは公知である。
【0096】
本発明の推奨される実施形態は,少なくとも1つの不織層がスパンボンド製法によりスパンボンド不織布として形成されることを特徴とする。当該不織布は,数層から形成できる。本発明のこの実施形態は特に有効である。不織布層の多成分フィラメント又は二成分フィラメントは,紡糸装置又は紡糸口金により紡糸し,その後,好ましくは冷却するために,冷却装置内に通す。冷却装置内では,流体媒体,特に冷却風を用いてフィラメントを冷却することが都合よい。その後,紡糸したフィラメントを延伸装置に通し,フィラメントを延伸することは本発明の範囲内である。次いで,延伸したフィラメントをトレイに集積し ― 好ましくは成形移動ベルトに敷設して,不織バットを形成する。特に,ドローダウン比を制御するパラメータを調整することにより,収縮能が制御されたフィラメントを不織層内に形成できる。本発明の好ましい実施形態によれば,フィラメントの敷設を管理する保管装置として介在させる散布装置は延伸装置と集積場所との間に設置する。フィラメントの流れ方向に対して分岐して互いに反対側にある側壁を有する少なくとも1つの散布装置を利用することは,本発明の範囲内である。本発明の特に推奨される実施形態は,冷却装置及び延伸装置の駆動ユニットが閉鎖系として設計されていることを特徴とする。この閉鎖系では,冷却装置への冷却媒体又は冷却風の供給だけでなく,外部からの空気供給も行わない。このような閉鎖系はそれ自体,不織布製造において優れていることが実証されている。
【0097】
独創的な収縮についての本発明の技術的課題は,記載された閉鎖ユニットを使用する場合,また閉鎖ユニットを少なくとも特に好ましい実施形態である延伸装置と保管場所との間の散布装置に加えて使用する場合に,動作が特に確実になり,効果的に解消することが分かった。スパンボンド法により製造した不織シートの収縮能は,パラメータであるドローダウン比,冷却風/ポリマーの比率,及びフィラメント速度により非常に具体的に調整又は制御できることが既に示されている。
【0098】
既に定義しているように,スパンボンド製造法とは,ポリマーを連続フィラメントに直接変換し,次いでフィラメントを無作為に集積場所に敷設し,これらのフィラメントから成る不織層を形成する方法である。スパンボンド製法は,単一フィラメントの特性並びに最終不織布の特性の両方を定義する。完成した不織布を使用して,個々の不織布製法工程中に存在するレオロジー特性,ポリマー構造特性,及び収縮能などの,個々のフィラメントの様々な特性や状態を判定することは必ずしも可能ではない。一般的に,不織層の収縮能は,生地構造を崩壊させることなく,及び/又はフィラメントバットの長さ及び幅を大きく変化させることなく,単一フィラメントの収縮を利用してフィラメントバットの相対的な厚さを増加させることにより,嵩高な不織布を製造する能力を判定する。
【0099】
連続フィラメントの組成に異なる原料を利用することにより,及び/又は不織布の連続フィラメントの製造において異なる製法条件を設定することにより,及び/又は連続フィラメントに異なるフィラメント断面形状を利用することにより,及び/又は異なる入力材料間の質量比を調整することにより,及び/又は連続フィラメントを異なる配向で配置することにより,繊維の収縮能力が定義されることは本発明の範囲内である。
【0100】
本発明に従った方法の特に推奨される実施形態は,ほぼ非捲縮性の構成を有する芯‐鞘構成又は他の二成分繊維において,多成分フィラメント,特にほぼ非捲縮性の断面を有する二成分フィラメントから製造した不織布を特徴とする(
図2)。多成分又は二成分構成は,フィラメントの規則的な捲縮又はカールを開始できるフィラメント内の内部力を発生させないことが必須である。
【0101】
例えば芯を形成するフィラメントの第1成分は,特定の条件下で収縮可能なポリマー材料Aから成る。例えば鞘を形成するフィラメントの第2成分は,ポリマー材料Aとは異なるポリマー材料Bから成る。例えば,フィラメントは異なるポリマー又はポリマー混合物を含む。有利には,本発明の好ましい実施形態に従った,ポリマー材料Aの融点とポリマー材料Bの融点との差は5℃より高く,好ましくは10℃より高い。第1成分は,ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル由来,又はポリ乳酸(PLA)などの脂肪族ポリエステル由来),ポリアミド,ポリウレタン,又はこれらのコポリマーもしくは好適な混合物の群から選択できる。第1成分が,ポリエステルコポリマー(coPET)やポリ乳酸コポリマー(COPLA)も含むポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は本質的に成ることは本発明の範囲内である。ポリエステルとして,ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリ乳酸(PLA)を使用することが好ましい。
【0102】
第2成分は,ポリオレフィン(即ち,ポリプロピレン又はポリエチレン),低融点ポリマー,好適なポリマーのコポリマー又は混合物の群から選択できる。第2成分が,ポリエステルコポリマー(coPET)又はポリ乳酸コポリマー(COPLA)も含むポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は本質的に成ることは本発明の範囲内である。ポリオレフィンとして,ポリエチレン(PE)を使用することが好ましい。本発明に従った不織層における二成分フィラメントの成分の好ましい組み合わせは,PET/PE,PET/PP,PET/CoPET,PLA/COPLA,PLA/PE及びPLA/PPである。
【0103】
好ましい二成分フィラメントは,第1成分の質量と第2成分の質量との比が50:50~90:10である。本発明に従った製法の文脈では,機器を停止することなく製造中に芯‐鞘構成の質量比を自由に変更できる。
【0104】
捲縮性フィラメントより非捲縮性断面を有するフィラメントの方が,嵩高で,柔らかく,かつ,厚く弾性を有する材料を達成できるということにより,製法利点がもたらされる。非捲縮性繊維とは異なり,製造中に(自己)捲縮を示すフィラメントを制御することは容易ではない。捲縮性断面を持つフィラメントタイプのほとんどは,敷設工程中に,及び/又は活性化により捲縮を起こす。これらのフィラメントは,捲縮工程中に互いに相対的に移動することから,容易に互いに接触し,又は絡み合い,言い換えれば,互いに妨げ合う可能性がある。従って,自己捲縮フィラメントから成る不織層は,フィラメントの相対的な移動により繊維分布が不均一になるために,その設計は制限されがちである。その結果必要となる回避策には,処理量の低下,製造速度の低下,及びフィラメントを互いに固定するための特別な中間処理工程を伴うことが多い。
【0105】
本発明は自己捲縮フィラメントを利用しないため,はるかに均一な敷設を達成することが可能であり,これにより,所望の生地特性を維持しながら可能な限り低い坪量が可能になり,及び/又は,処理量がより多い製造ライン速度の高速化が可能になる。非捲縮性フィラメントを使用することで,製法の制御がはるかに容易になり,紡糸ノズル/紡糸ビームの製造コストが低減される。
【0106】
得られた不織層を熱的に予備接着し,即ち,予備圧密し,熱的に活性化し,熱接着することは本発明の範囲内である。熱活性化及び接着は好ましくは,少なくとも1つの高温流体の支援,及び/又は高温表面との接触により行う。高温表面は,特にローラーの一部であってもよい。熱活性化は,繊維質層の表面全体にわたって均一に収縮が起こるという条件下で行うことが望ましい。熱活性化は,熱風箱内で実施可能であり,又はバットをオーブンに通すことが可能である。熱活性化及び接着は,紫外線光,マイクロ波及び/又はレーザー照射によっても実行可能である。本「インライン」製法の文脈における熱接着は上流の製法工程が完了した直後に実施することも可能であるし,又は,熱的活性化及び接着の両方の製法工程を「オフライン」にして,よって上流の製法工程から切り離すことも可能であることは強調しておきたい。よって,熱活性化は原則として,別の時間及び場所で「オフライン」で実施できる。従って,まだ熱活性化されておらず,あまり嵩高でないままの不織布を,簡単かつ省スペースな方法で別の処理場所に搬送することが可能である。
【0107】
布帛/バットの予備圧密の望ましいレベルは製法条件に大きく依存する。バット内の繊維間結束のレベルを正しく設定し,それにより次の製造工程の要求に基づいてバット結束のレベルを制御することは重要である。ベルト自体で活性化させるライン製法の場合,望ましい結束レベルはむしろ低く,結束は,活性化工程中の繊維の望ましくない大きな動きにより生じる裂けや薄れを防止するためにのみ必要となる。特別な場合,例えば複数の繊維自体が,例えばその断面形状,もつれ率,又は材料組成により互いに接触しているか,又は下層と接触している非常に良好な結束を提供する場合,熱的な予備圧密がなくても,バットの結束は十分に良好になる可能性もある。他の場合では,例えば,製法を2工程に分割する場合や,完全に活性化する前に予備圧密したバットを例えばロールの形態で搬送する場合,結束の所望レベルは大幅に高くなり,従って,予備圧密レベルも大幅に高くする必要がある。繊維の製法条件を知っている当業者であれば,条件の特定の例に必要な予備圧密のレベルを容易に認識できるものとする。
【0108】
活性化温度は,成分(単数又は複数)A,好ましくは芯成分のガラス転移点と軟化点(ビカット軟化点ISO DEN 306)との間の範囲にあることが好ましい。成分の所与の組成ごとに最適な活性化温度が選択可能であることは理解すべきである。
【0109】
本発明は,不織フィラメントの収縮能が調整又は制御されたフィラメントを用いて形成した嵩高な不織布を提供する。収縮はバット全体に渡って均一に発生し,従って,当該製法は,均一で制御された収縮を確保する均一な不織布特性を提供する必要がある。
【0110】
冷却装置では,フィラメントは流体媒体,特に冷却風により冷却することが便利である。すでに述べたように,フィラメントの潜在的な収縮は,最終不織布の全長,幅,及び厚さに渡って均一に分布する必要がある。収縮特性はドローダウン比,冷却風/ポリマーの比率,及びフィラメント速度を調整することにより向上可能であり,よって,本発明では,これらのパラメータは個々のフィラメントそれぞれに対してほぼ均一である。
【0111】
形成された不織布が,スパンボンドビーム(1)上にそれぞれ形成された数層から成ることは,本発明の範囲内である。複数の層を積層し,一緒に少なくとも1つの成形ベルト(2)上で,最終接着装置(3)へ搬送することは理解されているものとする。
【0112】
フィラメント(4)は紡糸口金(5)から紡糸する。フィラメントの配列は,各フィラメントが非常に類似した質量及び非常に類似した冷却風温度を得られるように千鳥配列で最適化する。複数の紡糸口金は毛細管の数だけでなく,毛細管の直径(d)及び長さ(l)も異なる。長さ(l)は通常,毛細管の直径の倍数として計算し,本用途では,2~10l/dの範囲にある。毛細管の数は,所望の最終フィラメント径,及び所望の,又は計画した総ポリマー処理量と共に,所望のフィラメント紡糸速度に基づいて選択しなければならない。毛細管の数は1メートル当たり800~7000本で,フィラメント径は8~45μmの範囲である。毛細管径及びフィラメント速度は,最終的なフィラメントに適切なレベルの収縮能が生じ得るように選択する。フィラメント速度は3000~5500m/mimと定義すべきであり,毛細管径は200~1000μmとすべきであり,その結果,円形毛細管の場合,製法に適したドローダウン比は200~1300となり,ライン製造性のレベルが望ましくなり,円形毛細管の場合,製法に更に適したドローダウン比は300~800となる。非円形の毛細管は通常,毛細管形状及び表面積と体積との比率に大きく依存して,相対的に高いドローダウン比を示す。冷却風の体積及び温度は,適切なドローダウン比及び冷却条件を達成するために設定する。冷却風/ポリマーの比率は,本発明に役立つ20~45であると同定している。冷却風の体積及び温度は冷却装置(6)で制御する。温度は,冷却条件で収縮率を制御できるように10℃~90℃,好ましくは15℃~80℃に設定可能である。冷却条件は,フィラメントが紡糸時の融点からガラス転移点まで冷却される速度を規定する。例えば,冷却風の温度を高くすると,フィラメントの冷却が遅れる。本発明のように,冷却風の必要かつ有用な温度範囲を達成するためには,実際には,温度を個別に制御できる2つの異なる領域に冷却装置を分けると温度範囲の取り扱いが容易になる。紡糸口金に近い第1領域(6a)では,温度を10℃~90℃,好ましくは15℃~80℃,最も好ましくは15℃~70℃に設定できる。第1領域に近い第2領域(6b)では,温度を10℃~80℃,好ましくは15℃~70℃,最も好ましくは15℃~45℃に設定できる。
【0113】
その後,フィラメントはドローダウン領域(7)に導かれる。フィラメントは冷却風の風速により生じる引張力によりドローダウンする。冷却風の量及びドローダウン領域の調整可能な形状により,風速がフィラメント速度に変換される。フィラメント速度はポリマーの処理量と共にフィラメント直径を定義する。潜在的な収縮はフィラメント速度,ドローダウン比,及び冷却風/ポリマーの比率により制御する。
【0114】
次の工程では,フィラメントは,フィラメントの流動方向に対して分岐する側壁を備える散布装置(8)に導かれる。これらの壁は調整可能であり,単一フィラメントがMD/CD平面内で全方向に配向したフィラメント敷設配列を形成する均一な不織布を達成する方法で調整する。
【0115】
フィラメントの敷設は散布装置内でフィラメントを導く空気の影響を受けることは分かっている。空気は,明確なジグザグ敷設配列から真円のループ,更にはCD配向の楕円形構造まで,配列を作るために調整できる。フィラメントは成形ベルト上に敷設し,少なくとも1つの予備圧密装置(9)に搬送する。冷却風はフィラメント敷設層及び成形ベルト内を通り,工程の外に移動する。吸引空気の量は,フィラメント敷設を支援し,フィラメントバットが成形ベルト上に確実に固定されるように調整できる。予備圧密装置は散布装置に近接して配置する。フィラメントバットは散布装置から予備圧密装置までの途中で,吸引空気により制御する。フィラメントバットの予備圧密は熱風により行う。
【0116】
フィラメントバット上へ輸送されたエネルギーは,フィラメントが部分的にのみ軟化又は予備融解するように制御し,個々のフィラメント間に良好な結束を生む。フィラメントの良好な結束が得られれば,フィラメントバットは他の装置から更なる支援を受けずに,また搬送力の影響を受けたり破壊/損傷を受けることなく,成形ベルト上を搬送できる。この予備圧密製法は,多ビーム製造ライン上の別の敷設領域内にフィラメントバットを移行させるに十分な製法でもある。フィラメントに輸送したエネルギーは,フィラメントの収縮を活性化するには十分でない。
【0117】
本発明の方法では,予備圧密パラメータ,予備圧密温度,予備圧密風速,及び予備圧密時間のバランスについて説明する。予備圧密時間はフィラメントバットを予備圧密空気で処理する時間であると理解される。
【0118】
バットの予備圧密時間は1~10000ms,好ましくは2~1000ms,最も好ましくは4~200msであることが推奨される。
【0119】
この予備圧密装置で使用する予備圧密風速は,0.1~10m/s,好ましくは0.8~4m/sの範囲で調整可能である。予備圧密の予備温度は80℃~200℃,好ましくは100℃~180℃であることが推奨される。1実施形態では,予備圧密温度は90℃~150℃,特に110℃~140℃である。好ましい実施形態によれば,二成分フィラメントの不織層は,ポリエチレンテレフタレート(PET)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有し,ここでは予備圧密温度は,好ましくは110℃~160℃,特に120℃~150℃である。1実施形態では,不織層は,ポリエチレンテレフタレート(PET)製の芯成分,及びポリエチレンテレフタレートコポリマー(CoPET)製の鞘成分の二成分フィラメントから成り,予備圧密温度は好ましくは110℃~180℃である。不織層が,ポリ乳酸(PLA)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有する二成分フィラメントから成る場合,予備圧密温度は好ましくは80℃~130℃である。
【0120】
散布装置から製造ラインに更に進むと,フィラメントバットは少なくとも1つの活性化ユニット(10)に搬送される。フィラメントを熱風により活性化する。フィラメントの収縮性成分の実際の収縮はフィラメントの収縮性成分の温度と温度暴露の持続時間との関数であることが分かっている。収縮工程の速度はフィラメントの収縮性成分の温度に依存する。本発明では,収縮をゆっくりと導入するように製法が制御されているため,収縮からフィラメントバットに導入される力はフィラメント間の結束力より低い。この製法制御の結果,フィラメント構造密度が低下した結束性かつ均一な不織布構造体が得られ,また不織布の厚みも増加する。
【0121】
本発明の1実施形態は,予備圧密と活性化とを組み合わせた装置において,予備圧密及び/又は活性化時間,予備圧密及び/又は活性化風速,並びに予備圧密及び/又は活性化温度を制御することにより予備圧密及び活性化の製法工程を合体することである。
【0122】
この革新的な方法では,活性化パラメータ:活性化温度,活性化風速,活性化時間のバランスについて説明している。活性化時間は,フィラメントバットが活性化空気により処理される時間と理解している。これらのパラメータは,フィラメントの潜在的な収縮レベルに対応して,活性化時間,活性化温度,及び活性化風速の理想的な組み合わせを設定するために,前述の範囲内で変更することが可能である。
【0123】
バットの活性化時間は20~5000ms,好ましくは30~3000ms,最も好ましくは50~1000msが推奨される。
【0124】
この活性化ユニットで使用する活性化風速は,0.1~2.5m/s,好ましくは0.3~1.5m/sの範囲内で調整可能である。熱活性化の活性化温度は80℃~200℃,好ましくは100℃~160℃であることが推奨される。1実施形態では,活性化温度は90℃~140℃,特に110℃~130℃である。好ましい実施形態によれば,二成分フィラメントの不織層は,ポリエチレンテレフタレート(PET)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有し,活性化温度は,好ましくは90℃~140℃,特に100℃~140℃である。1実施形態では,不織層は,ポリエチレンテレフタレート(PET)製の芯成分,及びポリエチレンテレフタレートコポリマー(CoPET)製の鞘成分の二成分フィラメントから成り,活性化温度は好ましくは120℃~160℃である。不織層が,ポリ乳酸(PLA)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有する二成分フィラメントから成る場合,活性化温度は,好ましくは80℃~140℃である。
【0125】
本出願の革新的な方法では,接着装置(3)においてフィラメントバットを熱風で処理する最終接着手順について規定している。接着装置では,フィラメントバットの厚さを大幅に減少させることなく,また不織布の厚さ全体で接着勾配をほとんど起こさずに,単一層及び/又は複数層のフィラメントバットが全て接着される。フィラメントバットを軟化及び崩壊させることなく不織繊維間で所望の接着を達成するために接着温度は十分高くなければならないことから,不織布の残りの厚さ及び弾性は,接着温度に影響される。接着装置では,軟化点は低く力は弱いが不織フィラメントバットの完全性に影響を与えるに十分である所望の製法効果に,フィラメントバットへの接着温度及び接着力を適合させる必要がある。このことは,オメガドラム接着装置,平坦ベルト接着装置,並びに多ドラム接着手段のような複数の異なる装置で達成できる。
【0126】
接着した不織布は最終的に,巻取機(11)で巻き取る。もし不織布の表面特性を修正して,例えば流体搬送又は吸湿性能を向上させるのであれば,スプレー装置やキスロールは成形ベルトと最終接着装置との間,又は最終接着装置と巻取機との間に配置する。
【0127】
本発明の1実施形態は,接着装置の活性化及び/又は接着時間,活性化及び/又は接着風速,並びに活性化及び/又は接着温度を制御することにより,活性化と接着との製法工程を合体することである。
【0128】
本発明の方法では,接着パラメータである接着温度,接着風速,及び接着時間のバランスについて説明する。接着時間は,フィラメントバットを接着空気で処理する時間であると理解されている。これらのパラメータはフィラメントバットの接続能に対応して,接着時間,接着温度,及び接着風速の理想的な組み合わせを達成するために,前述の範囲内で変更することが可能である。
【0129】
バットの接着時間は200~20000ms,好ましくは200~15000ms,最も好ましくは200~10000msであることを推奨する。
【0130】
この接着ユニット装置で使用する接着風速は,0.2~4.0m/s,好ましくは0.4~1.8m/sの範囲で調整可能である。熱接着のための接着温度は100℃~250℃,好ましくは120℃~220℃であることを推奨する。1実施形態では,接着温度は90℃~140℃,特に110℃~130℃である。
【0131】
好ましい実施形態によれば,二成分フィラメントの不織層は,ポリエチレンテレフタレート(PET)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有し;接着温度は,好ましくは90℃~140℃,特に100℃~140℃である。1実施形態では,不織層は二成分フィラメントから成り,芯成分はポリエチレンテレフタレート(PET)から形成し,鞘成分はポリエチレンテレフタレートコポリマー(CoPET)から形成し,接着温度は好ましくは140℃~230℃である。
【0132】
不織層が,ポリ乳酸(PLA)製の芯成分,及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレン製の鞘成分を有する二成分フィラメントから成る場合,接着温度は好ましくは80℃~140℃である。前述の温度範囲は異なる個別の工程で使用可能であり,それにより,接着空気温度及び接着風速は前述の範囲内にあるが,接着装置の異なる領域では異なるレベルである。
【0133】
本発明は,本発明に従った不織布を,一方では比較的嵩高に設計して比較的厚さが大きいが,他方では十分な安定性を保持できるという知見に基づいている。本発明に従った層は,負荷又は圧力負荷に供した後に優れた弾性を示す。これらの有利な特性は,不織布の坪量が比較的低いと達成できる。
【0134】
本発明の方法は更に,比較的速い製造速度で,製法を中断することなく簡単な方法で不織布の連続的製造が可能であるという利点が特徴的である。不織布を製造するためのパラメータは非常に可変で柔軟性があり,製法中に調整可能であるため,製法を中断することなく可変な最終製品を製造できる。また,予備圧密,活性化,及び接着の工程は,パラメータに対して容易に変更できる。
【0135】
本発明の方法は,簡単な方法「インライン」で行える一方で,必要に応じて「オフライン」で容易に行うことも可能である。従って,予備圧密,収縮の活性化,及び最終接着は,何ら問題なく実際の積層体製造から切り離すことが可能である。要約すると,体積及び厚さの大きい非常に有利な3D構造の表面を有する革新的な生地を,簡単で安価かつ費用対効果の高い方法で,生地の圧縮強度を満足させて製造できることは注目すべきである。不織布又は得られた不織層の各種パラメータは製法中に変更可能であり,柔軟に調整可能である。
【0136】
実施例
本発明によれば,層は,例えばチェコ共和国,ズリーン・トマーシュ・ベタ大学,Centre of Polymer Systemsの実験室ラインで製造可能である。実験室ラインのモデルLBS‐300は,単一組成又は二組成(mono or bi compositions)のスパンボンド又はメルトブロー処理した繊維を製造できる。2台の押出機から成るそのモデルの押出システムはポリマーを最大450℃まで加熱できる。スパンボンド繊維は6×6cmの正方形領域に72個の穴(直径0.35mm;長さ1.4mm)を有するスパンボンドダイを用いて製造できる。二成分ダイの構成 ― 芯/鞘状,並列状,区画パイ状,又は海‐島状など,いくつかの可能性がある。システムは開放型であり;流入口システムの伸長空気圧は最大150kPaまで可能である。フィラメントはそのまま回収することも,又は0.7~12m/mimの速度でベルト上に敷設することも可能である。最終製品幅は最大10cmである。総処理率は0.02~2.70kg/hに設定可能である。製品の最終的な坪量は30~150g/m2に設定できる。カレンダーロールを使用して最大250℃の温度でバットを接着する選択肢もある。この実験室ラインは,実施例1~4に記載されている層の製造に使用した。
【0137】
実験室でのエアスルー接着(実施例1~4)をモデル化するために,標準的な据え付け型オーブンを使用した。静止雰囲気のオーブンと布地を通過するようにした空気流とでは存在する熱伝達条件が大きく異なること,またオーブンの開閉時に熱が失われることから,活性化時間は5分とした。
【0138】
実施例1 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,断面レイアウトが非捲縮性で,芯/鞘型の二成分フィラメントから成り,芯/鞘質量比は70:30であり,芯はPLA(Nature Works社製Ingeo)を用いて形成し,鞘はPP(Slovnaft社製Tatren HT 2511)を用いて形成している。本不織布は,ズリーン・トマーシュ・ベタ大学,Centre of Polymer Systemsの実験室ラインで製造した。芯押出機を最大240℃に加熱し(3領域をそれぞれ195℃,220℃,及び240℃に加熱),鞘押出機を最大235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,及び235℃に加熱)。紡糸ビームの温度は240℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/毛細管に設定した。フィラメントを温度20℃の空気で冷却した。流入口圧力を表2に示す。実施例1A,1C,1E,1Fの流入口圧力は100kPa,実施例1Bの流入口圧力は50kPa,実施例1Dの流入口圧力は150kPaであった。繊維を走行ベルトに集め;バットのgsmを130g/m
2に設定した。ベルトからのバットはサイズ10×7cmの試験試料へと切断した。
各試料を別々のオーブンに注意深く移し,設定した温度で5分間活性化した。実施例1A~1F各々の温度も表2に示す。
【表2】
実施例1B,1C,及び1Dは,繊維の延伸力(流入口圧力)の大きさにより収縮レベルを制御できる可能性を示している。この3例全てで冷却は同じである。理論に縛られることなく,本発明者らは,延伸力はフィラメントの特定の範囲の準安定的な結晶状態を誘発することに役立ち,その状態のうちのいくつかは他の状態よりも厚さを増加させるために望ましいものであると考えている。延伸力が弱いと,得られる繊維の靭性が相対的に低くなり,その結果,布帛の最終的な厚さが小さくなる可能性がある。一方,延伸力が強いと,体積変化するように誘導結晶化を設定するため,活性化時の収縮力が小さくなり,その結果,やはり最終的な厚さが小さくなる。実施例1Cで示すように延伸力がちょうど良い場合,最終的な生地の厚さのみならず,構造的な柔らかさも最大になる。フィラメント速度及びドローダウン比を調整することで,最適な条件が得られる。
実施例1A,1C,1E,及び1Fは,活性化温度により収縮レベルを制御できる可能性を示している。これらの正しい条件では,140℃で活性化した試料(+155%)で最終厚さが最良になることが分かるが,本発明に従った材料は複雑であり,重要な評価パラメータは構造的な柔らかさであり,非常に優れた試料は120℃で活性化される。
【0139】
実施例2 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,断面レイアウトが非捲縮性で,芯/鞘型の二成分フィラメントから成り,芯/鞘質量比は70:30であり,芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)を用いて形成し,鞘はPP(Slovnaft社製Tatren HT 2511)を用いて形成している。本不織布は,ズリーン・トマーシュ・ベタ大学,Centre of Polymer Systemsの実験室ラインで製造した。芯押出機を最大340℃に加熱し(3領域をそれぞれ340℃,335℃,及び325℃に加熱),鞘押出機を最大235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,及び235℃に加熱)。紡糸ビームの温度は305℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/毛細管に設定した。フィラメントを温度20℃の空気で冷却した。流入口圧力を表3に示す。繊維を走行ベルトに集め;バットのgsmを75g/m2に設定した。ベルトからのバットはサイズ10×7cmの試験試料へと切断した。各試料を別々のオーブンに注意深く移し,設定した温度で5分間活性化した。実施例2A~2Fに対応する異なる温度を表3に示す。
【0140】
実施例3 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,断面レイアウトが非捲縮性で,芯/鞘型の二成分フィラメントから成り,芯/鞘質量比は70:30であり,芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)を用いて形成し,鞘は95%のPP(Slovnaft社製Tatren HT 2511)と5%の白色マスターバッチ(PolyOne社製CC10084467BG)との混合物を用いて形成している。本不織布は,ズリーン・トマーシュ・ベタ大学,Centre of Polymer Systemsの実験室ラインで製造した。芯押出機を最大340℃に加熱し(3領域をそれぞれ340℃,335℃,及び325℃に加熱),鞘押出機を最大235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,及び235℃に加熱)。紡糸ビームの温度は305℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/毛細管に設定した。フィラメントを温度20℃の空気で冷却した。流入口圧力を表3に示す。繊維を走行ベルトに集め;バットのgsmを75g/m2に設定した。ベルトからのバットはサイズ10×7cmの試験試料へと切断した。各試料を別々のオーブンに注意深く移し,設定した温度で5分間活性化した。温度を表3に示す。
【0141】
実施例4 ― 比較例
本不織布は,断面レイアウトが非捲縮性で,芯/鞘型の二成分フィラメントから成り,芯及び鞘は両方ともPET(Invista社製5520タイプ樹脂)を用いて形成している。本不織布は,ズリーン・トマーシュ・ベタ大学,Centre of Polymer Systemsの実験室ラインで製造した。押出機を最大340℃に加熱した(3領域をそれぞれ340℃,335℃,及び325℃に加熱)。紡糸ビームの温度は305℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/毛細管に設定した。フィラメントを温度20℃の空気で冷却した。流入口圧力を表3に示す。繊維を走行ベルトに集め;バットのgsmを75g/m
2に設定した。ベルトからのバットはサイズ10×7cmの試験試料へと切断した。各試料を別々のオーブンに注意深く移し,設定した温度で5分間活性化した。温度を表3に示す。
【表3】
実施例2C及び3は上記実施例1B~Dと同じ原理を示している。実施例2A~Fは活性化温度で収縮レベルを制御できる可能性を示している。これらの正しい条件では,140℃で活性化した試料(+51%)で最終厚さが最良になることは明らかであり,同温度が構造的な柔らかさの観点からも最良であった。
実施例3及び比較例4は,本発明に従った材料における正しい鞘材料の重要性を示している。PET/PET材料は活性化時に大きく異なる挙動を示し,これが異なる収縮レベルにつながるということが明確に分かる(
図4参照)。本発明に従った試料は体積が47%増加し,また,良好な弾性及び復元性の数値を示した。対照的に,PET/PET試料は体積が56%減少し,わずかに曲がった硬質片へと収縮し,弾性又は復元性の数値は測定できなかった。また,フィラメントの長さも測定できなかった。
なお,上述の実施例1A~Eの場合と同様に,実施例2A~Fでは,CD及びMDの収縮レベルが10%未満であることに留意されたい。対照的に,厚さの増加はCD及びMD方向の減少よりはるかに大きい。実施例2F及び3では,構造的な柔らかさの非常に良好な値が得られ,また,許容レベルのCD及びMD収縮(15%)も得られる。
なお,実施例2~4で使用したPETは,少量のTiO
2(ポリマー製造者により艶消し剤(mating agent)として使用)を含んでいた。対照的に,実施例1で使用したPLAはTiO
2を一切含んでいない。
本発明の例示的な実施形態によれば,例えばドイツのTroisdorfにあるReifenhaeuser Reicofil社のパイロットライン上で,1層又は2層をインラインで製造できる。このラインを使用して,以下の本発明に従った実施例,即ち実施例5,6,8,9,10,11に記載の不織布を以下の標準設定で製造した:
予備圧密風速 2.3[m/s]
活性化風速 1.3[m/s]
接着風速 1.3[m/s]
焼入れ空気温度 20[℃]。
パイロットラインには2本のBiCoスパンボンドビームが設置されており,それぞれのビームには,BiCoコートハンガーダイを装備した2台の押出機が備えられる。押出システムにより,温度最大350℃で,ビーム1つ当たりの特定総処理量80~450kg/h/mの範囲内で様々なポリマーを処理できるようになる。様々な毛細管密度や毛細管形状を有する複数の紡糸口金が利用可能である。HILLS社の融解分配システムを有する紡糸パックを使用して,本発明に記載されている標準的な断面に加えて,1.1m幅の紡糸口金上で想像できるほぼあらゆる断面を形成できる。冷却,伸長,及び形成用の装置は,広範な冷却条件及び延伸条件に対応し,優れた均一フィラメントバットを確実に形成する今日の業界標準となっている。成形ベルトは最大で400m/minの製造速度で走行する。第1スパンボンドビームからの不織布層は,第2ビームからの層が第1ビームの上に積まれる前に,インラインで任意選択可能な予備圧密,活性化,及び/又は接着装置を通過する。第2ビームは,第1ビームと同様の,任意選択可能な予備圧密,活性化,及び接着のためのインライン装置を備えている。予備接着又は最終接着した製品はインラインのスリッター巻取機で巻き取るか,巻取前にドラム接着手段でインライン接着してもよい。不織布の表面特性を改変するためのキスロールによる界面活性剤処理はインラインでもオフラインでも利用可能である。
【0142】
実施例5 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,1つの円形芯/鞘タイプ二成分スパンボンドビーム上で製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はPE(Dow社のASPUN6834)を用いて製造した。実施例5A~5Dの各々の製法条件及び最終生地パラメータを以下の表4に示す。活性化及び接着は活性化領域及び接着領域を設定した単一の装置上で行った。
【表4】
実施例5A~Dは,最終的な生地特性における冷却風/ポリマー
の比
率,ドローダウン比,及びフィラメント速度の重要性を示している。延伸及び冷却が増加すると,生地厚さ,繊維径,更には構造的柔らかさが減少することが分かる。その一方で,最終製品の機械的特性は向上する。
【0143】
実施例6 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,次の2つの円形芯‐鞘タイプ二成分スパンボンドビーム上で製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)を用いて製造した。実施例6A~6Dの各々の製法条件及び最終生地パラメータを以下の表5に示す。活性化及び接着は活性化領域及び接着領域を設定した単一の装置上で行った。
【表5】
【0144】
実施例7 ― 比較例
本不織布は,捲縮性断面にレイアウトにした円形偏心芯/鞘タイプの二成分フィラメントから成り,芯はPETから形成し,鞘はPEから形成している。生地は熱風接着した。実施例7A~7C各々の生地パラメータを以下の表6に示す。
【表6】
実施例7A~Cは,比較可能なポリマー組成を有する1層の不織布を表す。しかし,これらの繊維は,
図8の生地断面に見られるように,本発明に従った実施例(5A+D)の断面 ―
図9と比較して,捲縮可能な断面及び捲縮を有する。実施例の構造的柔らかさは,生地厚さと同様,実施例5及び6と比較して大幅に低い。
【0145】
実施例8 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,次の2つの円形芯‐鞘タイプ二成分スパンボンドビームから製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はcoPET(Invista社製701kタイプ)を用いて製造した。実施例8A及び8B各々の製法条件及び最終生地パラメータを以下の表7に示す。活性化及び接着は活性化及び接着用の別々の装置を用いてベルト上でインラインで行った。
【0146】
実施例9 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,次の2つの円形芯‐鞘タイプ二成分スパンボンドビーム上で製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はcoPET(Invista社製701kタイプ)を用いて製造した。実施例9A~9C各々の製法条件及び最終生地パラメータを以下の表7に示す。活性化は単一工程で行い,接着は第2工程で異なる装置上で行った。実施例9A+Bの場合,接着は,ドラム上でインラインで活性化した直後に行った。実施例9Cの場合,接着はドラム上でオフラインで活性化した数日後に,別の装置で行った。
【表7】
実施例8及び9は接着条件の重要性を示している。実施例8は構造的柔らかさの高さに着目している。鞘ポリマー融点が前述の実施例より高いため,最適な接着温度は芯の活性化温度より高くなる。使用した接着温度(155℃)は最適活性化温度に近く,最適な接着レベルには達していない。また,機械的特性も低いレベルである。対照的に,実施例9は,機械的特性は良好であるが厚さ及び構造的柔らかさは低い最適な接着レベルに着目している。実施例9Cは,製法工程「活性化」と「接着」とを互いに分離できる可能性をシミュレーションし,オフラインで接着している。活性化後,製品は巻き取り,別の場所に搬送する。そこで製品を巻き戻し,最終接着を行う。
接着温度及び時間以外にも,他のパラメータ,特に接着段階での圧力(空気処理量からの圧力,不織布帛の張力からの圧力,補助ガイドローラからの圧力等を含む)も最終的な厚さに影響を与え,構造的な柔らかさを減少し得る。実施例9A+Bと9Cとの違いは,オンライン/オフラインの可能性のみならず,接着設定の違いの影響も表している。
【0147】
実施例10 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,次の2つの三葉形芯‐鞘タイプ二成分スパンボンドビーム上で製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はcoPET(Invista社製701kタイプ)を用いて製造した。製法条件及び最終生地パラメータを以下の表8に示す。活性化及び接着は活性化領域及び接着領域を設定した単一の装置上で行った。
【0148】
実施例11 ― 本発明に従った実施例
本不織布は,次の2つの円形芯‐鞘タイプ二成分スパンボンドビーム上で製造した。芯/鞘質量比は70/30であった。芯はPET(Invista社製5520タイプ樹脂)から製造し,鞘はcoPET(Trevira社製RT5032タイプ)を用いて製造した。実施例11A及び11Bの各々の製法条件及び最終生地パラメータを以下の表8に示す。活性化及び接着は活性化領域及び接着領域を設定した単一の装置上で行った。
【表8】
実施例10は異なる非円形のフィラメントを使用する可能性を示している。
実施例11A+Bは毛細管密度をより高くした紡糸口金も使用する可能性を示している。
【0149】
実施例12 ― 比較例
比較例として選択した不織布試料はTWE gtoup製の銘柄「TWE Hygiene」を用いて製造した。この不織布は芯‐鞘タイプの短い二成分繊維から成り,芯はPETから,鞘はPEから形成している(これまで,これら試料の材料の適格な推測は行われていたが,材料の深い実験室分析は行われていない)。生地は,梳毛技術により製造し,熱風接着により圧密した。実施例12A~12Cの各々の生地パラメータを以下の表9に示す。
【表9】
【0150】
本発明の目的は,比較的低い圧力で圧縮し,解放されたときに復元し得る嵩高不織布を実現することである。当業者であれば,長期的な開発の結果として,現代の梳毛材料も好適となり得ることを理解している。一方,梳毛材料はステープル繊維から製造しており,不織層を横断して沿うこれらの繊維の端部の数が多いことは,特定の用途にとって歓迎されないかもしれない。実施例12A~Cは,衛生用途で指定された3種の市販の梳毛生地の特性を示す。この試料一式と,比較ポリマー組成物での本発明の試料とを比較すると,梳毛材料の弾性は本発明よりやや高いが,その厚さは薄いために,圧縮性は本発明と同等以下であり,よって柔らかく,かつ,厚く弾性を有する実際の肌触り及び感触は本発明の材料と同等以上であることが分かる。
【0151】
試験方法
不織布帛の「坪量」は,欧州規格試験EN ISO 9073‐1:1989(WSP130.1に準拠)に従って測定する。測定には10枚の不織布帛層を使用し,試料面積サイズは10×10cm2である。
【0152】
不織材料の「厚さ」又は「端面間隔」は,欧州規格試験EN ISO 9073‐2:1995(WSP120.6に準拠)に従って以下のように修正して測定する。
1.材料は,より強い力に曝されることなく,また圧力下で(例えば製品ロール上で)1日以上放置することなく製造現場から採取した試料上で測定した方がよく,そうでなければ測定前に材料を少なくとも24時間表面に自由に敷設しなければならない。
2.加重した機器の上部アームの総重量は130gである。
【0153】
本明細書では加圧後の嵩高性の「復元」とは,負荷から解放した後の生地の厚さと,元の生地の厚さとの比率を指す。生地の厚さは,0.5kPaの予備負荷力を掛けてEN ISO 9073‐2:1995に従って測定する。復元測定の手順は以下の工程から成る:
1.10×10cmの測定生地試料を用意する。
2.1枚の生地の厚さを測定する。
3.0.5kPa(Ts)の予備負荷力を掛けて,重ねた5枚の生地の厚さを測定する。
4.重ねた5枚の生地シートを厚さ計(2.5kPa)に5分間載せる。
5.荷重を開放して5分間待つ。
6.0.5kPa(Tr)の予備負荷力を掛けて,重ねた5枚の生地の厚さを測定する。
7.次式に従って復元率を計算する:
復元率=Tr/Ts(単位なし)
Ts=元の試料の厚さ
Tr=復元した試料の厚さ
【0154】
本明細書において「圧縮率」とは,「弾性」測定で定義した負荷により不織布が圧縮されたmm単位の距離を指す。圧縮率はまた,弾性率(単位なし)×厚さ(mm)としても計算できる。不織布の「弾性率」は,欧州規格試験EN ISO 964‐1に従って以下のように修正して測定する。
1.生地の1層の厚さを測定する。
2.総厚さが少なくとも4mm,最適には総厚さ5mmになるように,重ねた生地試料を用意する。重ねた生地は少なくとも1枚の生地を含む。
3.重ねた生地試料の厚さを測定する。
4.重ねた不織試料に,5mm/minの負荷速度で5Nの力を掛ける。
5.クランプ移動距離を測定する。
6.下記式に従って弾性を計算する:
R(単位なし)=T1(mm)/T0(mm)
又は
R(%)=T1(mm)/T0(mm)×100%
T1=5Nの負荷下でのクランプの移動距離[mm]=重ねた生地の圧縮程度
T0=厚さ(EN ISO 9073‐2:1995に準拠,予備負荷力1.06Nを使用)[mm]。
【0155】
「フィラメントの長さと生地の長さとの比」は,3つの異なる方法で測定できる。
a)フィラメントの長さは,捲縮せずに線に沿って延長するように伸ばすことにより測定する。この方法は,接着が弱い程,良好である。
b)所与のレベルまで接着した生地では,フィラメントの長さを測定するために方法a)を使用することは不可能であるため,以下の推定を利用してもよい:
a.評価した層の写真を,繊維がよく見えるような倍率で得る。
b.1本の単一繊維を選択し,写真を通過するその繊維の経路,又は少なくともその写真の一部を通過する経路にマーキングする。
c.写真上に印を付けた繊維の長さを測定し,その実際の長さを推定する。
d.繊維に印を付けた生地の長さを測定する。
e.少なくとも20本の繊維について,フィラメントの推定長さと生地長さとの比(百分率)を計算する。
c)「不織材料の幾何学的繊維統計値を決定する方法」を使用した生地において:
a.分析用生地の幾何学描写では,MDで8mm,CDで8mmを測定し,z方向に試料の全厚を維持している。
b.切り取った試料範囲の片側に入り,反対側で出ていく繊維のみが測定対象である。
c.少なくとも20本のフィラメントを測定する必要がある。
d.フィラメントの長さと生地の長さとの比(百分率)を計算する。
【0156】
「繊維断面のタイプ」は繊維成形用ダイにより定義した製法条件から分かる。製法条件が不明な場合は,以下の推定を利用できる:
生地の試料を採取し,少なくとも20本の繊維の断面の写真を作成する。断面は,変形が予想される接着位置や他の繊維との接触箇所ではなく,繊維の自由部分で行う。断面毎に,成分の表面を成分毎に区分して画像上にマーキングする。平面物体の重心又は幾何学中心の決定に基づいて成分毎に質量中心を決定し,その位置を,繊維断面の幾何学中心を中心[0;0]としてデカルト座標系を用いて記録する。各繊維断面における各成分の質量中心の偏向(D)は下記式に従って計算する。
D=絶対値(x×y),式中,x及びyは質量中心の座標である。x及びyの値の一方が0になり,他方が0にならない場合,その試料は評価から除外する。
各成分について平均値及び標準偏差を計算する。
((平均偏向量)+(標準偏差))と全繊維断面表面との比が5%未満である場合,その繊維は非捲縮性であると考える。
((平均偏向量)-(標準偏差))と全繊維断面表面との比が5%未満である場合,その繊維は非捲縮性である予測する。
【0157】
層内の「繊維径の中央値」は,SI単位 ― マイクロメートル(μm)又はナノメートル(nm)で表す。中央値を求めるには,互いに5cm以上離れた少なくとも3箇所から不織布の試料を採取する必要がある。各試料では,観察した層毎に,少なくとも50本の個々の繊維の直径を測定する必要がある。例えば,(測定した繊維の直径に応じて)光学顕微鏡や電子顕微鏡を利用できる。1つの試料の繊維径が他の2つの試料と大きく異なる場合,試料全体を廃棄し,新しい試料を準備する必要がある。
円形繊維の場合,直径は繊維の断面の直径として測定する。それ以外の形状の繊維(例えば中空繊維や三葉状繊維)の場合は,測定した繊維毎に断面の表面積を求め,同じ表面積の円について再計算する。この理論上の円の直径が繊維の直径である。
全3種の試料から成る各層の測定値を一式の値にまとめ,次いでそこから中央値を決定する。繊維の50%以上が中央値以下の直径を有し,繊維の50%以上が中央値以上の直径を有するように活用する。所与の試料一式の値の中央値を特定するには,サイズに従って値を並べ,リストの中央にある値を取ることで十分である。試料一式の項目の数が偶数である場合,通常,中央値はN/2及びN/2+1の箇所にある値の算術平均値として決定する。
【0158】
本明細書において「空隙量」とは,材料が占める嵩量に対する材料中の空隙空間の総量を指す。
材料の嵩量は不織布の嵩量と等しく,下記式により生地厚さ(端面間隔)から計算できる:
嵩量(m3)=端面間隔(mm)/1000×1×1
材料中の空隙空間の総量は下記式により計算できる:
空隙空間=嵩量(m3)-有質量体積(m3)
総有質量体積は下記式により計算できる。
有質量体積(m3)=坪量(g/m2)/1000/質量密度(kg/m3)
式中,質量密度は,既知の組成,又はISO 1183‐3:1999の規格に従った測定値から計算できる。
そのため,空隙量は下記式により計算できる。
空隙量(%)=1-(坪量(g/m2)×端面間隔(mm))/質量密度(kg/m3)×100%
【0159】
「不織布の幾何学的繊維統計値を決定する方法」
以下では,幾何学的特性を特徴付けるために不織材料の試料を分析するソフトウェアベースの方法について説明する。本方法は,機械学習アプローチを使用し,試料に存在する個々の繊維を識別し,その後,これらの繊維の幾何学的分析を行い,材料の特性評価に適した統計値を取得する。その結果,繊維の配向及び密度分布が得られる。この分析ワークフローは,Math2Market社が開発したもので,GeoDictデジタル教材研究所の一部である。
工程1:試料の3次元μCT画像を得る
初めに,μCTスキャナーで不織試料をデジタル化し,3D画像を得る。3D画像は均一なデカルト格子から成り,各格子セル(体積要素,ボクセル)は,対応する箇所にある試料のX線減衰量を格納する。材料やμCT装置の構成に応じて,孔隙は通常,最も低い減衰量(最小のグレースケール値)を示し,材料相の値の方が大きい。
工程2:μCT画像を切り出し,孔空間から材料を分離する
更に分析するために,グレースケール画像をNon-Local Meansアプローチによりノイズフィルタリングする[1]。その後,その画像を大津アルゴリズムにより導出したグローバル閾値を用いて二値化する[2]。二値化により,各画像ボクセルは孔隙又は繊維材料のいずれかを含むものとして分類される。閾値を下回るグレー値のボクセルは孔隙として分類する。それ以外のボクセルは全て繊維材料に分類する。ノイズフィルタリング及び閾値設定の両方の操作では,GeoDictソフトウェアのImportGeoモジュールを使用する。
工程3:材料密度分布を分析する
更に,Z方向の材料密度分布を電子計算する。画像の各スライス(所与の深さZ)では,材料密度は,白色材料のボクセル数をスライス内の総ボクセル数で除算した数値として電子計算する。この分析は,GeoDictのMatDictモジュールを用いて行う。
工程4:ニューラルネットワークを応用して繊維中心線を識別する
μCT画像で個々の繊維を識別する際の主な課題は,二値化後に繊維を接触位置で空間的に分離させないことである。これにより,複数の対象(繊維)が誤って1本の繊維として分類されてしまうアンダーセグメンテーションが発生する。
繊維を分離するために,Math2Market社は,繊維の中心線曲線を識別するアプローチを開発した。これらの中心線は,元の画像と同じサイズの二値ボクセル画像で描写する。この画像では,繊維中心に対して約1~2ボクセルの範囲内にあるボクセルをマーキングする。
この目的のために,本発明者らはニューラルネットワークを用いた意味論的切り出しアプローチを利用した[3]。画像は,画像上を移動する3D摺動入力ウィンドウを考慮して分析する。各入力ウィンドウでは,入力ウィンドウを中心として,入力ウィンドウより小さい出力ウィンドウを定義する。ニューラルネットワークは入力ウィンドウの二値ボクセル値を分析し,出力ウィンドウのボクセル毎に予測値を生成する。予測値は,出力ウィンドウ内のボクセルが中心線の一部であるか否かを判定する。これら全ての出力ウィンドウの結果を組み合わせることで,元の画像の各材料ボクセルを分類する二値画像が得られる。この画像変換は,Tensorflowを利用してGeoDictのFiberFind-AIモジュールにより実行する[4]。
工程5:ニューラルネットワーク用学習データを作成する
上述の変換を実行するためにニューラルネットワークを学習する目的で,Math2Market社はGeoDictの確率的FiberGeo構造生成モジュールを使用して,不織材料の数個の人工3D画像を作成している。このモジュールは,一連の線分として繊維の分析的な幾何学描写を生成する。同時に,このモジュールは,工程2における二値化の結果と同等の繊維構造の二値画像を出力する。
分析的描写における繊維径を約2~3ボクセルに変更することで同様に,人工繊維構造に対応する中心線画像を得ることが可能になる。
次いで,これら対になった画像(繊維と中心線)は,繊維画像を中心線画像に変換するためのニューラルネットワークの学習に使用する。当該ネットワークは,繊維をその中心線曲線まで「収縮」させることを効果的に学習する。
工程6:繊維中心線をトレースして繊維の幾何学的描写を得る
それら繊維を各々の中心線まで収縮した後,各中心線は互いに接触していないと仮定する。次に,各成分が1本の繊維の中心線に対応すると仮定して,中心線画像の連結成分を分析することにより個々の中心線を互いに分離する。連結成分とは,全てが同色の材料ボクセルのサブセット,及び同色の接触ボクセルを追加しても拡大できない材料ボクセルのサブセットであると定義する。
各中心線では,一式のボクセルに渡って曲線をトレースし,対応する繊維の幾何学的描写を一連の連結線分(ポリライン)の形で得る。この工程は,GeodictのFiberFind-AIの一部でもある。
工程7:繊維の配向分布ヒストグラムを電子計算する
任意の平面(例えばXY平面)において配向分布を得るために,初めに各繊維線分をその平面に投影し,平面内の角度を電子計算する。次に,この配向ヒストグラムを全線分の角度に渡って電子計算する。最後に,この配向ヒストグラムを極座標プロットにより可視化する。ここではある角度での半径が,対応する配向の出現頻度に比例する。この分析を,残りの2つの平面(XZ及びYZ)についても繰り返す。
【0160】
産業上の利用可能
本発明は,圧縮性及び復元性が強化された嵩高不織布が必要とされる場合いつでも,― 例えば衛生産業においては吸収性衛生用品(例えば,ベビー用おむつ,失禁用製品,女性用衛生用品,交換パッド等)の様々な部位として,あるいは,ヘルスケアにおいては例えば,防護服,手術用カバーシート,下敷き,及び他のバリア材料製品の一部として利用可能である。更に,工業用途では,例えば,防護服の一部として,ろ過,断熱,包装,吸音,靴産業,自動車,家具等での使用も可能である。本発明は特に,エンドレスな繊維の要件と組み合わせた生地の嵩高性,圧縮性,及び復元性の向上が要件となる用途において有利に使用可能である。