(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体装置および判定システム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/65 20230101AFI20241106BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241106BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241106BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241106BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241106BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241106BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241106BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
H04N23/65 100
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L27/146 A
H01L29/78 618B
H04N7/18 E
H04N23/611
(21)【出願番号】P 2021550717
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 IB2020058811
(87)【国際公開番号】W WO2021064511
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2019183928
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】井上 聖子
(72)【発明者】
【氏名】肝付 彩奈
(72)【発明者】
【氏名】鴇巣 敦哉
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-95886(JP,A)
【文献】特開2012-141922(JP,A)
【文献】特開2014-6700(JP,A)
【文献】特開2018-184707(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063545(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/102314(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/65
H04N 23/611
H04N 7/18
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出回路と、第1判定回路と、第2判定回路と、電源回路と、電源管理装置と、を有し、
前記検出回路は、撮像データを解析して、被写体が検知された場合は第1の値を選択し、前記被写体が検知されなかった場合は第2の値を選択する機能を有し、
前記検出回路により前記第1の値が選択された場合に、前記電源管理装置は、前記電源回路から前記第1判定回路へ電圧を供給させることにより、前記第1判定回路をオフモードからオンモードにする機能を有し、
前記検出回路により前記第2の値が選択された場合に、前記電源管理装置は、前記電源回路から前記第1判定回路へ電圧を供給しないことにより、前記第1判定回路をオフモードからオンモードにしない機能を有し、
前記第1判定回路は、前記検出回路にて前記第1の値が選択された場合に、前記撮像データに対して輪郭抽出を用いてヒトを検出する機能を有し、
前記第1判定回路にて前記ヒトが検出されなかった場合に、前記電源回路と、前記電源管理装置とは、休止状態に移行する機能を有し、
前記第2判定回路は、前記第1判定回路にて前記ヒトが検出された場合に、前記撮像データに対して特徴抽出を行い、前記ヒトの顔の認識を行った後、データベースと照合し、危険人物であるか否かを判断する機能と、前記危険人物であると判断した場合に、外部の端末に異常を知らせる信号を与える機能と、を有し、
前記第2判定回路にて前記危険人物であると判断しなかった場合に、前記電源回路と、前記電源管理装置とは、休止状態に移行する機能を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1判定回路は、前記第2判定回路よりも消費電力が低い半導体装置。
【請求項3】
撮像装置と、検出回路と、処理装置と、第2判定回路と、電源回路と、を有し、
前記処理装置は、第1判定回路と、電源管理装置と、プロセッサコアと、記憶回路と、を有し、
前記プロセッサコアは、前記第1判定回路へ命令を与える機能を有し、
前記記憶回路は、前記プロセッサコアにより生成されるデータを保持する機能を有し、
前記撮像装置は、撮像データを取得する機能を有し、
前記検出回路は、前記撮像データを解析して、被写体が検知された場合は第1の値を選択し、前記被写体が検知されなかった場合は第2の値を選択する機能を有し、
前記検出回路により前記第1の値が選択された場合に、前記電源管理装置は、前記電源回路から前記第1判定回路へ電圧を供給させることにより、前記第1判定回路をオフモードからオンモードにする機能を有し、
前記検出回路により前記第2の値が選択された場合に、前記電源管理装置は、前記電源回路から前記第1判定回路へ電圧を供給しないことにより、前記第1判定回路をオフモードからオンモードにしない機能を有し、
前記第1判定回路は、前記検出回路にて前記第1の値が選択された場合に、前記撮像データに対して輪郭抽出を用いてヒトを検出する機能を有し、
前記第1判定回路にて前記ヒトが検出されなかった場合に、前記電源回路と、前記電源管理装置とは、休止状態に移行する機能を有し、
前記第2判定回路は、前記第1判定回路にて前記ヒトが検出された場合に、前記撮像データに対して特徴抽出を行い、前記ヒトの顔の認識を行った後、データベースと照合し、危険人物であるか否かを判断する機能と、前記危険人物であると判断した場合に、外部の端末に異常を知らせる信号を与える機能と、を有し、
前記第2判定回路にて前記危険人物であると判断しなかった場合に、前記電源回路と、前記電源管理装置とは、休止状態に移行する機能を有し、
前記撮像装置は、マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する判定システム。
【請求項4】
請求項3において、前記第1判定回路は、前記第2判定回路よりも消費電力が低い判定システム。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記記憶回路は、第1のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する判定システム。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記記憶回路は、第1のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタを有し、
前記複数の画素回路のそれぞれは、光電変換デバイスと、第2のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、
前記光電変換デバイスの一方の電極は、前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第2の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうるもの全般を指す。よって、トランジスタやダイオードなどの半導体素子や、半導体素子を含む回路は半導体装置である。また、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、通信装置および電子機器などは、半導体素子や半導体回路を含む場合がある。よって、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、撮像装置、通信装置および電子機器なども、半導体装置と呼ばれる場合がある。
【背景技術】
【0004】
スマートフォンやタブレット端末などに代表される持ち運びが容易な情報端末の普及が進んでいる。情報端末の普及に伴い、様々な通信規格が制定されている。例えば、第4世代移動通信システム(4G)と呼ばれるLTE-Advanced規格の運用が開始されている。
【0005】
近年、IoT(Internet of Things)などの情報技術の発展により、情報端末で扱われるデータ量は増大する傾向にある。また、情報端末などの電子機器に通信速度の向上が求められている。
【0006】
IoTなどの様々な情報技術に対応するため、4Gよりも速い通信速度、多くの同時接続、短い遅延時間を実現する第5世代移動通信システム(5G)と呼ばれる新たな通信規格が検討されている。5Gでは、3.7GHz帯、4.5GHz帯、および28GHz帯の通信周波数が使用される。
【0007】
5Gに対応する半導体装置は、Siなど1種類の元素を主成分として用いる半導体や、GaとAsなど複数種類の元素を主成分として用いる化合物半導体を用いて作製される。さらに、金属酸化物の一種である酸化物半導体が注目されている。
【0008】
酸化物半導体では、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出されている(非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0009】
非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている。
【0010】
また、半導体装置の消費電力削減の技術として、例えば、パワーゲーティング(PG:Power Gating)、クロックゲーティング(CG:Clock Gating)、ボルテージスケーリング等が知られている。例えば、特許文献1には、DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)手法とPG手法のうち電力削減に有利となる手法を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一態様は、新規な半導体装置、または新規な半導体装置の動作方法を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、新規な判定システム、または新規な判定システムの動作方法を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、消費電力を削減すること、例えば休止状態の電力を削減することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、休止状態から通常状態へ復帰する処理に要する時間を短縮すること、あるいは、それに要するエネルギーを削減することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、判定を行う回路の消費電力を低減することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、判定を行うシステムの精度を向上することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、センサ素子により監視する対象物の安全性を高めることを課題の一とする。または、本発明の一態様は、対象物の監視を簡便に行うシステムを提供することを課題の一とする。
【0014】
なお、複数の課題の記載は、互いの課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全て解決する必要はない。また、列記した以外の課題が、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、これらの課題も、本発明の一態様の課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、検出回路と、第1判定回路と、第2判定回路と、電源回路と、電源管理装置と、を有し、検出回路は、第1のデータを解析して、第1の値または第2の値が選択される第1の判定を行う機能を有し、第1判定回路および第2判定回路は、画像の特徴抽出を行う機能を有し、第1の判定により第1の値が選択される場合に、電源管理装置は、電源回路から第1判定回路へ電圧を供給させる機能を有し、第1判定回路は、第1のデータを解析して第2の判定を行う機能を有し、第2判定回路は、第2の判定においてイベントの発生が検知された場合には、第1のデータを解析して第3の判定を行う機能を有する半導体装置である。
【0016】
また上記構成において、第1判定回路は、輪郭抽出を行う機能を有することが好ましい。
【0017】
また上記構成において、第1判定回路は、輪郭抽出を行う機能を有し、第2判定回路は、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、深層信念ネットワークから選ばれる一以上の手法を実行する機能を有することが好ましい。
【0018】
また上記構成において、アンテナを有し、第3の判定の結果を無線通信により送信する機能を有することが好ましい。
【0019】
また上記構成において、イベントは、輪郭抽出を用いたヒトの検出であることが好ましい。
【0020】
また上記構成において、第1判定回路は、輪郭抽出を用いてヒトの顔認証を行う機能を有することが好ましい。
【0021】
または、本発明の一態様は、撮像装置と、検出回路と、処理装置と、第2判定回路と、電源回路と、を有し、処理装置は、第1判定回路と、電源管理装置と、プロセッサコアと、記憶回路と、を有し、プロセッサコアは、第1判定回路へ命令を与える機能を有し、記憶回路は、プロセッサコアにより生成されるデータを保持する機能を有し、撮像装置は、第1のデータを取得する機能を有し、検出回路は、第1のデータを解析して、第1の値または第2の値が選択される第1の判定を行う機能を有し、第1判定回路および第2判定回路は、画像の特徴抽出を行う機能を有し、第1の判定により第1の値が選択される場合に、電源管理装置は、電源回路から第1判定回路へ電圧を供給させる機能を有し、第1判定回路は、第1のデータを解析して第2の判定を行う機能を有し、第2判定回路は、第2の判定においてイベントの発生が検知された場合には、第1のデータを解析して第3の判定を行う機能を有し、撮像装置は、マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する判定システムである。
【0022】
また上記構成において、記憶回路は、第1のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、第1のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有することが好ましい。
【0023】
また上記構成において、記憶回路は、第1のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、第1のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタを有し、複数の画素回路のそれぞれは、光電変換デバイスと、第2のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、光電変換デバイスの一方の電極は、第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、第2のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第2の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、第2のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有することが好ましい。
【0024】
また上記構成において、第1判定回路は、輪郭抽出を行う機能を有することが好ましい。
【0025】
また上記構成において、第1判定回路は、輪郭抽出を行う機能を有し、第2判定回路は、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、自己符号化器、深層ボルツマンマシン、深層信念ネットワークから選ばれる一以上の手法を実行する機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様により、新規な半導体装置、または新規な半導体装置の動作方法を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な判定システム、または新規な判定システムの動作方法を提供することができる。また、本発明の一態様により、消費電力を削減すること、例えば休止状態の電力を削減することができる。また、本発明の一態様により、休止状態から通常状態へ復帰する処理に要する時間を短縮すること、あるいは、それに要するエネルギーを削減することができる。また、本発明の一態様により、判定を行う回路の消費電力を低減することができる。また、本発明の一態様により、判定を行うシステムの精度を向上することができる。また、本発明の一態様により、センサ素子により監視する対象物の安全性を高めることができる。また、本発明の一態様により、対象物の監視を簡便に行うシステムを提供することができる。
【0027】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、本発明の一形態は、必ずしも、例示した効果の全てを有する必要はない。また、本発明の一形態について、上記以外の課題、効果、および新規な特徴については、本明細書の記載および図面から自ずと明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は、判定システムの構成例を示すブロック図である。
図2は、判定システムの構成例を示すブロック図である。
図3は、半導体装置の動作例を示すフロー図である。
図4Aおよび
図4Bは、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図5A乃至
図5Dは、半導体装置の電源管理の動作例を説明する図である。
図6は、半導体装置の電源管理の動作例を示すフローチャートである。
図7Aおよび
図7Bは、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図8は、プロセッサコアの構成例を示すブロック図である。
図9は、記憶回路の構成例を示す回路図である。
図10は、記憶回路の動作例を説明するタイミングチャートである。
図11は、キャッシュのメモリセルの構成例を示す回路図である。
図12は、メモリセルの動作例を説明するタイミングチャートである。
図13Aは、NOSRAMの構成例を示す機能ブロック図である。
図13Bは、メモリセルの構成例を示す回路図である。
図14Aは、メモリセルアレイの構成例を示す回路図である。
図14B、
図14Cは、メモリセルの構成例を示す回路図である。
図15Aは、DOSRAMのメモリセルの構成例を示す回路図である。
図15Bは、DOSRAMの積層構造例を示す図である。
図16Aおよび
図16Bは、ニューラルネットワークの構成例を示す図である。
図17は、半導体装置の構成例を示す図である。
図18は、メモリセルの構成例を示す図である。
図19は、オフセット回路の構成例を示す図である。
図20は、タイミングチャートである。
図21Aは、撮像装置を説明するブロック図である。
図21B、
図21Cは、画素回路を説明する回路図である。
図22Aは、ローリングシャッタの動作を説明する図である。
図22Bは、グローバルシャッタの動作を説明する図である。
図23Aおよび
図23Bは、画素回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図24Aおよび
図24Bは、画素回路を説明する回路図である。
図25は、読み出し回路を説明する回路図およびブロック図である。
図26Aおよび
図26Bは、画素を説明する断面図である。
図27A、
図27Bおよび
図27Cは、Siトランジスタを説明する図である。
図28Aおよび
図28Bは、画素を説明する断面図である。
図29A、
図29B、
図29Cおよび
図29Dは、OSトランジスタを説明する図である。
図30Aおよび
図30Bは、電子機器の一例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その説明の繰り返しは省略する。
【0030】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために図に反映しないことがある。
【0031】
また、上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
【0032】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0033】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流の入力または出力、電圧の入力または出力、もしくは、信号の受信または送信が行なわれる部位を言う。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0034】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0035】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0036】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、直接接続している場合と、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0037】
また、本明細書などにおいて、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0038】
なお、本明細書などにおいて、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0039】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位は互いに言い換えることが可能な場合が多い。本明細書などでは、特段の明示が無いかぎり、電圧と電位を言い換えることができるものとする。
【0040】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「絶縁体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「絶縁体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「絶縁体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0041】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「導電体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「導電体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「導電体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0042】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0043】
なお、本明細書等において、トランジスタの「オン状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に短絡しているとみなせる状態(「導通状態」ともいう。)をいう。また、トランジスタの「オフ状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に遮断しているとみなせる状態(「非導通状態」ともいう。)をいう。
【0044】
また、本明細書等において、「オン電流」とは、トランジスタがオン状態の時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。また、「オフ電流」とは、トランジスタがオフ状態である時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。
【0045】
また、本明細書等において、高電源電位(以下、「電源電位VDD」、「VDD」、「H電位」、または「H」ともいう)とは、低電源電位(以下、「電源電位VSS」、「VSS」、「L電位」、または「L」ともいう)よりも高い電位の電源電位を示す。また、VSSとは、VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位(以下、単に「GND」、または「GND電位」ともいう)をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0046】
また、本明細書等において、ゲートとは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0047】
また、本明細書等において、ソースとは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0048】
また、本明細書等において、ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0049】
また、図面などにおいて、配線および電極などの電位をわかりやすくするため、配線および電極などに隣接してH電位を示す“H”、またはL電位を示す“L”を付記する場合がある。また、電位変化が生じた配線および電極などには、“H”または“L”を囲み文字で付記する場合がある。また、トランジスタがオフ状態である場合、当該トランジスタに重ねて“×”記号を付記する場合がある。
【0050】
なお端子は、複数の端子の集合体を指す場合がある。複数の端子の集合体が有するそれぞれの端子には例えば独立した信号が与えられ、それぞれの端子に一以上の配線が電気的に接続される。
【0051】
トランジスタは、ゲート、ソース、およびドレインと呼ばれる3つの端子(ノード)を有する。ゲートは、トランジスタの導通状態を制御する制御端子として機能する端子である。ソースまたはドレインとして機能する一対の入出力端子(ノード)は、トランジスタの型及び各端子(ノード)に与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。一般的に、n型トランジスタでは、低い電位が与えられるノードがソースと呼ばれ、高い電位が与えられるノードがドレインと呼ばれる。逆に、p型トランジスタでは、低い電位が与えられるノードがドレインと呼ばれ、高い電位が与えられるノードがソースと呼ばれる。本明細書では、ゲート以外の2つの端子(ノード)を第1端子(ノード)、第2端子(ノード)と呼ぶ場合がある。
【0052】
本明細書では、回路構成やその動作の理解を容易にするため、トランジスタの2つの入出力端子(ノード)の一方をソースに、他方をドレインに限定して説明する場合がある。もちろん、駆動方法によっては、トランジスタの3つの端子に印加される電位の大小関係が変化し、ソースとドレインが入れ替わる場合がある。したがって、本発明の一態様において、トランジスタのソースとドレインの区別は、明細書および図面での記載に限定されるものではない。
【0053】
本明細書等において、能動素子(例えば、トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(例えば、容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であると言える。そして、接続先が特定されている態様が、本明細書等に記載されている場合、接続先が特定されていない発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数のケース考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。したがって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
【0054】
本明細書等において、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能が特定できれば、発明の態様が明確であると言える。そして、機能が特定された発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。したがって、ある回路について、機能を特定しなくても接続先を特定すれば、発明の一態様が開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定することで、発明の一態様が開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
【0055】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置、および半導体装置の適用例について説明する。
【0056】
<半導体装置の構成例>
以下に本発明の一態様の判定システムの一例を示す。本発明の一態様の判定システムは、半導体装置を有する。また本発明の一態様の判定システムは、半導体装置に加えて撮像装置を有することが好ましい。本発明の一態様の半導体装置は、処理装置を有する。本発明の一態様の処理装置は、パワーゲーティング動作によりその一部の回路の電源をオフモードにする機能を有する。オフモードとなった回路の電源は割り込み要求に従い、オンモードに復帰することができる。
【0057】
図1には半導体装置と、撮像装置等の装置とを有する判定システムの構成例を示す。
図1に示す半導体装置700は、撮像装置601に電気的に接続される。半導体装置700は、検出回路92、処理装置(PU:Processing Unit)20および判定回路91を有する。PU20は予備判定回路80を有する。判定回路91は、ニューラルネットワークを用いた演算を行う機能を有する。なお、予備判定回路80を第1判定回路、判定回路91を第2判定回路とそれぞれ呼ぶ場合がある。
【0058】
撮像装置601は、可視光を撮像する機能を有する。また撮像装置601は赤外光を撮像する機能を有することが好ましい。
【0059】
撮像装置601の撮像時に、光源を準備し、光源を被写体に照射してもよい。
【0060】
また
図1に示す構成例は表示装置602を有する。表示装置602は撮像装置601と電気的に接続される。表示装置602は、撮像装置601により撮像された映像を表示する機能を有する。表示装置602は例えば、表示部、および表示部を制御する駆動回路を有する。
【0061】
また
図1に示す構成例は端末603を有する。半導体装置700は、端末603と無線通信を行う機能を有することが好ましい。半導体装置700は例えば、無線通信のためのアンテナを有する。
【0062】
半導体装置700は、検出回路92、予備判定回路80、判定回路91、の順に段階的に解析を行うことができる。段階を経るほど、解析の精度が向上する。解析を行う段階を増やすほど、判断の精度を向上させることができる。
【0063】
一方、解析の精度が向上するほど演算回路の規模が増大し、半導体装置700の消費電力が増大する場合がある。よって、検出回路92または予備判定回路80において、解析が充分であると判断される場合には、次の段階に進まなくてもよい。段階が少ない方が半導体装置700の消費電力を、より低減することができる。
【0064】
本発明の一態様の半導体装置は、異常なイベントが発生したか否かを判断する機能を有する。また本発明の一態様の半導体装置において、判断は段階的に行われることが好ましい。この場合、初期の段階においてはイベントの発生の有無のみを判断し、発生したイベントが異常か否かの判断を行わなくてもよい。
【0065】
検出回路92には、撮像装置601の撮像データが与えられる。検出回路92は、二値分類を行う機能を有する。より具体的には、検出回路92は与えられるデータを解析し、イベントが発生したか否かを判断する機能を有する。また検出回路92は例えば、発生したイベントが異常か否かの判断は行わない。検出回路92は例えば、撮像データを解析し、第1の判定を行う。第1の判定は二値分類である。所定の基準を超えた場合に第1の値を選択し、超えない場合には第2の値を選択する。ここで所定の基準を超える、とは例えば撮像データを解析し、結果を数値化し、得られる数値が基準を超えることを指す。あるいは例えば、撮像データを解析し、イベントが発生したと判断されることを指す。検出回路92が行う第1の判定により、第1の値が選択される場合は、信号INTがPU20に与えられ、次のステップとして、撮像データは予備判定回路80において解析される。
【0066】
ここで一例として、撮像装置601を不審者の判別に用いる場合を考える。このような場合は例えば、撮像された映像に人物と推測される像が検知されれば「イベントが発生した」と判断してもよい。このとき、検出回路92においてイベントが発生した場合でも、撮像された人物が不審者であるとは限らない。イベントは簡易的な事象であっても構わない。例えばイベントを「被写体の移動を検知」としてもよい。あるいは例えばイベントを「被写体の検知」としてもよい。あるいは例えばイベントを「輝度の顕著な変化」としてもよい。
【0067】
検出回路92は、後述する予備判定回路80および判定回路91における演算よりも簡易的な演算を行う。例えば検出回路92は、撮像データの空間的な輝度分布を解析し、被写体の検知を行う。あるいは例えば検出回路92は、しきい値を設定し、得られるデータが該しきい値を超える場合はイベントが発生したと判断する。
【0068】
検出回路92は、イベントの発生に伴い信号INTをPU20に与える機能を有する。信号INTは割り込み処理を要求する信号である。PU20においてオフモードとなった回路、例えばプロセッサコアなどの回路の電源は割り込み要求に従い、オンモードに復帰することができる。その後、PU20は所望の命令を実行し、PU20が有する予備判定回路80において、異常なイベントが発生したか否かの判定を行う。具体的には例えば、予備判定回路80は撮像データの解析を行い、不審者が映っているか否かの判断を行う。
【0069】
PU20は予備判定回路80における解析を行わない場合には、パワーゲーティング動作によりその消費電力を大幅に低減することができる。
【0070】
PU20は命令を実行する機能を有する回路である。PU20の詳細な構成については後述する。
【0071】
なお、予備判定回路80は、被写体が不審者であるか否かの判定を行わず、被写体が「ヒト」であるか否かの判断のみを行ってもよい。そのような場合には、判定回路91において、被写体が不審者であるか否かの判定を行えばよい。
【0072】
予備判定回路80は例えば、被写体の輪郭抽出を行い、ヒトを検出する。輪郭抽出の手法として例えば、空間的な輝度の比較を用いることができる。具体的には例えば、HoG(Histogram of Oriented Gradient)とSVM(Support Vector Machine)を用いた解析を行うことができる。
【0073】
また予備判定回路80は例えば、被写体の時間的な変化、より具体的には例えば被写体のフレーム毎の変化を解析してもよい。被写体の時間的な変化を解析することにより、ヒトの動作が不審であるか否かの推察を行ってもよい。
【0074】
予備判定回路80は、判定回路91よりも低い消費電力で解析を行うことが好ましい。予備判定回路80は、判定回路91よりも規模の小さい演算を行うことが好ましい。予備判定回路80は、判定回路91よりも短い時間で演算を行うことが好ましい。
【0075】
予備判定回路80がニューラルネットワークを用いる場合には、判定回路91よりも演算の規模の小さい演算を行うことが好ましい。例えば、予備判定回路80および判定回路91がともに畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を行う場合には、予備判定回路80に用いる中間層の層数は、判定回路91に用いる中間層の層数よりも小さい。
【0076】
予備判定回路80において、撮像データ、あるいは撮像データが変換されたデータが解析され、第2の判定が行われる。第2の判定において、所定の基準を超えた場合には、次のステップとして、判定回路91において撮像データ、あるいは撮像データが変換されたデータが解析されることが好ましい。より具体的には例えば、第2の判定において異常なイベントが発生したと判定された場合には、判定の精度を向上させるために、さらに判定回路91において解析を行い、異常なイベントが発生したか否かの判定を行うことが好ましい。判定回路91は例えば、ニューラルネットワークを用いた演算を行う機能を有する。
【0077】
予備判定回路80で判定を行った後、判定回路91でさらに詳細な解析を行うことで判定の精度を向上させることができる。また、予備判定回路80であらかじめ判定を行い、異常なイベントが発生しなかったと判断された場合には、判定回路91における演算を行う必要がないため、半導体装置700の消費電力を低減することができる。
【0078】
判定回路91は、予備判定回路80よりも精度の高い演算を行うことができる。判定回路91は人工知能(Artificial Intelligence:AI)を用いた解析を行うことが好ましい。
【0079】
判定回路91は、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)等から選ばれる一の手法、または二以上を組み合わせた手法を実行し、撮像データの解析を行うことが好ましい。より具体的には判定回路91において、画像の特徴抽出にCNNを用いることができる。
【0080】
また判定回路91において、CNN等を用いた画像の特徴抽出を行う前に、画像の解像度を高める処理や、白黒画像のカラー化処理などを行ってもよい。カラー化の手法として例えば、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる手法を用いてもよい。
【0081】
判定回路91において、異常なイベントが発生したと判定された場合には、半導体装置700は、無線通信により端末603に、異常を知らせる信号を与える。また、異常を知らせる信号とともに、異常なイベントが発生したと判定された画像データを送信してもよい。この際に、解像度を高める処理や、カラー化処理を行った画像データを送信してもよい。
【0082】
図2を参照して、半導体装置の構成例を説明する。
図1に示す半導体装置700は、電源回路10、PU20、判定回路91および検出回路92を有する。半導体装置700は撮像装置601に電気的に接続される。
【0083】
PU20は命令を実行する機能を有する回路である。PU20は、1つのチップに集積された複数の機能回路を有する。PU20は、プロセッサコア30、電源管理装置(PMU)60、クロック制御回路65、パワースイッチ(PSW)70、予備判定回路80、メモリ81、回路82、インターフェース88およびバスライン89を有する。
【0084】
またPU20はキャッシュ40、およびパワースイッチ(PSW)71を有してもよい。キャッシュ40およびPSW71の詳細については、後述する。
【0085】
プロセッサコア30、PMU60、キャッシュ40、PSW70、PSW71、予備判定回路80、メモリ81、回路82およびインターフェース88はバスライン89を介して電気的に接続される。バスライン89を介して各回路は、信号のやり取りを行うことができる。プロセッサコア30は例えば、予備判定回路80に命令を与える機能を有する。
【0086】
メモリ81は、撮像装置601からPU20に与えられる撮像データを保持する機能を有する。メモリ81として、後述するOSトランジスタを用いて構成されたメモリを用いてもよい。
【0087】
インターフェース88は、PU20の外部の機器との信号のやり取りを行う機能を有する。
【0088】
インターフェース88は、検出回路92から与えられる割り込み信号INTを、バスライン89を介してプロセッサコア30およびPMU60に与える機能を有する。
【0089】
またインターフェース88はバスライン89を介してプロセッサコア30等からの信号を受信し、受信した信号に基づき、判定回路91に制御信号として信号OU1を与える機能を有する。また判定回路91は判定結果として信号IN1をインターフェース88に与える機能を有する。
【0090】
回路82は例えば、アナログ-デジタル変換回路(以下、AD変換回路)を有する。また回路82は、無線通信を行うための回路を有してもよい。無線通信を行うための回路として例えば、変調回路、復調回路等が挙げられる。
【0091】
図2には、電源回路10が、PU20と異なるチップに設けられている例を示している。電源回路10は、PU20に電源電位MVDDを入力する機能を有する。クロック制御回路65には、外部から基準クロック信号CLKが与えられる。クロック制御回路65は、PU20が有する各回路にクロック信号を与える機能を有する。また、外部からインターフェース88へ、割り込み処理を要求する割り込み信号である信号INTが入力されることにより、復帰シーケンスを実行することができる。PMU60は、制御信号を生成し、電源回路10に与える機能を有する。
【0092】
本発明の一態様の半導体装置において、処理装置が演算回路等で扱えるビット数は例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすることができる。
【0093】
クロック制御回路65は、基準クロック信号CLKが入力され、ゲーテッドクロック信号を生成し、出力する機能を有する。
【0094】
撮像装置601において撮像される撮像データは例えば、アナログデータである。撮像装置601がAD変換回路を有する場合には、撮像装置601により撮像されたアナログデータはAD変換回路により変換された後、半導体装置700に与えられることが好ましい。
【0095】
また、撮像装置601において撮像されたアナログデータがデジタルデータに変換されずに半導体装置700に与えられてもよい。その場合には例えば、半導体装置700は回路82が有するAD変換回路を用いて、データの変換を行ってもよい。
【0096】
検出回路92には例えばAD変換回路により変換されたデジタルデータが与えられる。あるいは検出回路92がアナログデータを解析する機能を有してもよい。
【0097】
また、予備判定回路80には例えばAD変換回路により変換されたデジタルデータが与えられる。あるいは予備判定回路80がアナログデータを解析する機能を有してもよい。
【0098】
また、判定回路91には例えばAD変換回路により変換されたデジタルデータが与えられる。あるいは判定回路91がアナログデータを解析する機能を有してもよい。
【0099】
<半導体装置の動作例>
図3に示すフローチャートを用いて、本発明の一態様の半導体装置の動作例を説明する。
【0100】
ステップS000において、処理を開始する。
【0101】
ステップS001において、検出回路92に撮像装置601の撮像データが与えられる。撮像データは例えば、監視を行う場所の静止画の画像、あるいは動画の映像である。
【0102】
ステップS002において、検出回路92は撮像データの解析を行う。解析の結果、検出回路92が「イベントが発生した」と判断した場合にはステップS003へ進む。「イベントは発生していない」と判断した場合にはステップS001へ戻る。ここでイベントの発生とは例えば、「ヒト」が検知される場合、あるいはさらに簡易的な事象が生じる場合である。簡易的な事象とは例えば前述した「被写体の移動を検知」、「被写体の検知」、「輝度の顕著な変化」等である。
【0103】
ステップS003において、検出回路92から信号INTがPU20に与えられ、PU20は復帰シーケンスを実行する。PU20の復帰後、撮像装置601の撮像データ、あるいは撮像装置601の撮像データに処理を加えたデータがPU20に与えられる。撮像データに加える処理とは例えば、信号の増幅、信号のアナログからデジタルへの変換処理、あるいはデジタルからアナログへの変換処理、信号の圧縮、信号の復元、等の処理から選ばれる一、あるいは複数の組み合わせを指す。
【0104】
ステップS004において、PU20が有する予備判定回路80が撮像データの解析を行う。撮像データの解析の一例としては例えば、HoGとSVMを用いた輪郭抽出による「ヒト」の検出を指す。
【0105】
ステップS005において、ステップS004の解析の結果、予備判定回路80が「イベントが発生した」と判断した場合には、ステップS006へ進む。「イベントは発生していない」と判断した場合には、ステップS009へ進む。
【0106】
ここで、予備判定回路80は、イベントの発生の有無のみでなく、発生したイベントが異常か否か、の判断を行ってもよい。例えば、輪郭抽出により「ヒト」を検出した後、検出された「ヒト」の顔認証を行ってもよい。
【0107】
ステップS009において、PU20が休止状態へ移行する。その後、ステップS001に戻る。
【0108】
ステップS006において、撮像装置601の撮像データ、あるいは撮像装置601の撮像データに処理を加えたデータが判定回路91に与えられ、判定回路91は、撮像データの解析を行う。具体的には例えば、CNNを用いた特徴抽出を行い、「ヒト」の顔の認識を行う。その後、認識された顔をデータベースと照合し、危険人物か否かを判断する。データベースは例えば、PU20または判定回路91が有する。あるいはデータベースは外部のサーバが有してもよい。外部のサーバとPU20は例えば、無線により通信を行い、サーバとPU20との間でデータの転送を行うことが好ましい。
【0109】
ステップS007において、ステップS006の解析の結果、判定回路91が異常なイベントが発生したと判断した場合には、ステップS008へ進む。異常なイベントは発生していないと判断した場合には、ステップS009へ進む。ここで異常なイベントの発生とは例えば、予期せぬ被写体が検出される場合を指す。あるいは異常なイベントの発生とは例えば、あらかじめ登録されたデータベースと一致する、あるいは一致する可能性が高い物体、被写体、ヒト等が検出される場合を指す。あるいは異常なイベントとは例えば、危険と判断される物体、被写体、ヒト等が検出される場合を指す。あるいは異常なイベントとは例えば、撮像データの解析の結果、認識された「ヒト」の顔が危険人物と一致する可能性が高いと判定回路91が判断することを指す。
【0110】
ステップS008において、半導体装置700は端末603に異常を知らせる信号を与える。ここで、半導体装置700は、異常を知らせる信号に加えて、危険人物と一致する可能性が高いと判断された「ヒト」の顔の画像を端末603に与えてもよい。
【0111】
以下に、プロセッサコア、記憶回路およびキャッシュについて詳述する。
【0112】
<プロセッサコア30、記憶回路31>
図4Aにはプロセッサコア30の構成の一例を示す。プロセッサコア30は、命令を処理することができる機能を有する回路であり、演算処理回路と呼ぶことが可能である。記憶回路31、および複数の組み合わせ回路32等を有しており、これらにより、各種の機能回路が構成されている。例えば、記憶回路31は、レジスタに含まれる。
図4A等において、記憶回路31の入力信号を信号D、出力信号を信号Qと記載する。
【0113】
図4Bに示すように、記憶回路31は、回路MemC1および回路BKC1を有する。回路MemC1は、プロセッサコア30が生成したデータを保持する機能を有し、例えば、フリップフロップ回路(FF)、ラッチ回路等で構成することができる。回路BKC1は、回路MemC1のバックアップ回路として機能することができ、電源が遮断されていても、またはクロック信号が遮断されていても長期間データを保持することが可能な回路である。このような記憶回路31を有することで、プロセッサコア30のパワーゲーティングを行うことが可能となる。電源を遮断する前に、記憶回路31において、回路MemC1のデータを回路BKC1に退避しておくことで、電源遮断時のプロセッサコア30の状態を保持することができるからである。電源供給が再開されると、回路BKC1で保持されているデータが回路MemC1に書き込まれるので、プロセッサコア30を電源遮断時の状態に復帰することができる。よって、電源供給の再開後、PU20は直ちに通常処理動作を行うことができる。
【0114】
回路BKC1は、1のトランジスタ(MW1)および1の容量素子(CB1)を有する保持回路を少なくとも有する。
図4Bに示す保持回路は、標準的なDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)の1T1C(1トランジスタ1容量素子)型メモリセルと同様な回路構成を有しており、書き込み、読み出し動作も同様に行うことができる。トランジスタMW1の導通状態を制御することで、容量素子CB1の充電、放電が制御される。トランジスタMW1をオフ状態とすることで、ノードFN1は電気的に浮遊状態となる。トランジスタMW1のオフ状態におけるドレイン電流(オフ電流)を極めて小さくすることで、ノードFN1の電位の変動を抑えることができるため、回路BKC1のデータ保持時間を長くすることができる。回路BKC1のデータ保持時間は、トランジスタMW1のリーク電流や、容量素子CB1の静電容量等で決まる。トランジスタMW1をオフ電流が極めて小さなトランジスタとすることで、PU20が稼働している期間は、回路BKC1をリフレッシュする必要がない。よって、回路BKC1を不揮発性記憶回路として用いることが可能となる。
【0115】
トランジスタMW1としてチャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体(Oxide Semiconductor:OS)を含むトランジスタ(「OSトランジスタ」または「OS-FET」ともいう。)を用いることが好ましい。酸化物半導体はバンドギャップが2eV以上であるため、オフ電流が著しく小さい。OSトランジスタでは、ソース-ドレイン間電圧が10Vの状態で、チャネル幅1μmあたりの規格化されたオフ電流を10×10-21A(10ゼプトA)以下とすることが可能である。トランジスタMW1をOSトランジスタとすることで、PU20が動作している期間は、回路BKC1は実質的に不揮発性記憶回路として機能させることができる。
【0116】
チャネルが形成される半導体層に用いる酸化物半導体膜は単層の酸化物半導体膜で形成してもよいし、積層の酸化物半導体膜で形成してもよい。チャネルが形成される半導体層を構成する酸化物半導体は、少なくともIn、Ga、SnおよびZnのうちの1種以上の元素を含有する酸化物であることが好ましい。このような酸化物としては、In-Sn-Ga-Zn酸化物や、In-Ga-Zn酸化物、In-Sn-Zn酸化物、In-Al-Zn酸化物、Sn-Ga-Zn酸化物、Al-Ga-Zn酸化物、Sn-Al-Zn酸化物、In-Zn酸化物、Sn-Zn酸化物、Al-Zn酸化物、Zn-Mg酸化物、Sn-Mg酸化物、In-Mg酸化物や、In-Ga酸化物、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等を用いることができる。
【0117】
また、酸化物半導体として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いることができる。
【0118】
回路BKC1は、電圧によってデータの書き込みを行うため、電流により書き込みを行うMRAM(磁気抵抗RAM)よりも書き込み電力を抑えることができる。また、ノードFN1の負荷容量でデータを保持しているため、フラッシュメモリのようなデータの書き換え回数の制限がない。
【0119】
回路BKC1において、データの書き込みに要するエネルギーは、容量素子CB1への電荷の充放電に伴うエネルギーに相当する。一方、MRAMなどの2端子の記憶素子を用いた記憶回路では、データの書き込みに要するエネルギーは、当該記憶素子に電流が流れる際に消費されるエネルギーに相当する。MRAMではデータの書き込み期間中に電流が流れ続けるため、データの書き込みに要するエネルギーが高くなる。このようなMRAMと比較して、回路BKC1は、データの書き込みで消費されるエネルギーを小さくすることができる。したがって、バックアップ回路をMRAMで構成した記憶回路と比較して、記憶回路31は、消費されるエネルギーを低減できるボルテージスケーリングおよびパワーゲーティングを行うことが可能な機会が多くなるため、PU20の消費電力を低減することができる。
【0120】
<電源管理>
PMU60は、パワーゲーティング動作、クロックゲーティング動作、およびボルテージスケーリング動作等を制御する機能を有する。より具体的には、PMU60は、電源回路10を制御することができる機能、記憶回路31を制御することができる機能、クロック制御回路65を制御することができる機能、およびPSW70を制御することができる機能を有する。そのため、PMU60は、これら回路(電源回路10、記憶回路31、クロック制御回路65、PSW70)を制御する制御信号を生成する機能を有する。PMU60は回路61を有する。回路61は、時間を計測することができる機能を有する。PMU60は、回路61で得られる時間に関するデータをもとに、電源管理を行うことができる機能を有する。
【0121】
PSW70は、PMU60の制御信号に従い、PU20への電源電位MVDDの供給を制御することができる機能を有する。ここでは、PSW70を介してPU20に供給される電源電位を電源電位VDDと呼ぶこととする。プロセッサコア30は複数の電源ドメインを有していてもよい。この場合、PSW70により、複数の電源ドメインへの電源供給を独立に制御できるようにすればよい。また、プロセッサコア30は、パワーゲーティングを行う必要のない電源ドメインを有していてもよい。この場合、この電源ドメインにPSW70を介さずに電源電位を供給してもよい。
【0122】
クロック制御回路65は、PMU60の制御信号に従い、プロセッサコア30へのクロック信号を遮断することができる機能を有している。電源回路10は、PMU60の制御信号に従い、電源電位VDDの電位の大きさを変更できる機能を有する。
【0123】
プロセッサコア30からPMU60に出力される信号SLPは、プロセッサコア30を休止状態に移行するトリガとなる信号である。PMU60は、信号SLPが入力されると、休止状態に移行するための制御信号を生成し、制御対象の機能回路に出力する。電源回路10は、PMU60の制御信号に基づいて、電源電位MVDDを通常動作時よりも低くする。休止状態が一定時間経過すると、PMU60は、PSW70を制御して、プロセッサコア30への電源供給を遮断する。プロセッサコア30が通常状態から休止状態に移行すると、PMU60は、プロセッサコア30の電源電位VDDを下げるボルテージスケーリング動作を行う。休止状態の期間が設定された時間を超えると、プロセッサコア30の消費電力をさらに低減するため、プロセッサコア30への電源電位VDDの供給を停止するパワーゲーティング動作を行う。以下、
図5、
図6を参照して、
図2に示す半導体装置の電源管理について説明する。
【0124】
図5は、電源線35の電位の変化を模式的に表している。電源線35は、PSW70を介して電源電位VDDが供給される配線である。図の横軸は通常状態から休止状態になった経過時間(time)であり、t0、t1等は時間を表している。図の縦軸は電源線の電位を表している。
図5Aは、休止状態でパワーゲーティングのみを実行した例であり、
図5Bは、休止状態でボルテージスケーリングのみを実行した例である。
図5C、
図5Dは、ボルテージスケーリングとパワーゲーティングとを実行する例である。通常状態では、電源回路10から供給される電源電位MVDDの大きさはVH1であるとする。
【0125】
また、以下では、PU20の電源モードを、電源オンモード、電源オフモード、低電源モードの3つのモードに区別する。電源オン(power on)モードとは、通常処理が可能な電源電位VDDをPU20に供給するモードである。電源オフ(power off)モードとは、PSW70により電源電位VDDの供給を停止するモードである。低電源(low power)モードは、電源オンモードよりも低い電源電位VDDを供給するモードである。
【0126】
図5Aの例を説明する。時間t0で、プロセッサコア30において休止状態に移行する処理が開始される。例えば、記憶回路31のバックアップが行われる。PMU60はPSW70を制御し、時間t1でプロセッサコア30への電源供給を遮断する。電源線35は自然放電して、その電位は0Vまで低下する。これにより、休止状態でのプロセッサコア30のリーク電流を大幅に低下することができるので、休止状態での消費電力(以下、待機電力と呼ぶ場合がある。)を削減することができる。外部からの割り込み要求等により通常状態に復帰する場合は、PMU60はPSW70を制御し、電源電位VDDの供給を再開させる。ここでは、時間t4で、電源電位VDDの供給が再開されている。電源線35の電位は上昇し、時間t6でVH1になる。
【0127】
図5Bの例の場合は、ボルテージスケーリングを行うため、時間t1で、PMU60が電源回路10を制御し、電源電位MVDDの電位がVH2に低下している。電源線35の電位はやがてVH2になる。時間t4で、電源電位MVDDがVH2からVH1に戻ると、電源線35の電位は上昇し、時間t5でVH1になる。
【0128】
図5Aの例の場合、休止状態から通常状態に復帰するのにかかる時間(オーバーヘッド時間)は、電源線35の電位が0VからVH1に上昇するのにかかる時間であり、また、復帰に要するエネルギーオーバヘッドは、電源線35の負荷容量を0VからVH1に充電するのに必要なエネルギーである。電源オフモードの期間(t1-t4)が十分に長ければ、PU20の待機電力の削減には、パワーゲーティングが有効である。他方、期間(t1-t4)が短いと、電源が遮断されることで削減できる電力よりも、通常状態に復帰するのに要する電力の方が大きくなり、パワーゲーティングの効果を得ることができない。
【0129】
図5Bに示すボルテージスケーリングの例では、休止状態では電源線35の電位はVH2であるため、
図5Aのパワーゲーティングの例よりも待機電力の削減量は少ない。他方、
図5Bの例では、電源線35の電位の変動が小さいため、
図5Aの例よりも通常状態に復帰するのにかかる時間は短く、かつ復帰に要するエネルギーが少ない。そこで、
図2に示す半導体装置では、PU20の待機電力の削減をより効率よく行うため、パワーゲーティングとボルテージスケーリングとを組み合わせた電源管理を可能とする。
図5C、および
図5Dに電源管理の例を示す。
【0130】
図5Cに示すように、まず、休止状態ではボルテージスケーリング動作が行われ、電源オンモードから低電源モードに移行する。
図5Bと同様に、時間t1で、PMU60が電源回路10を制御し、電源電位MVDDの電位をVH2に低下するため、電源線35の電位はやがてVH2になる。低電源モードに移行してから一定期間(t1-t3)経過後、PMU60はPSW70を制御し、電源オフモードとする。期間(t3-t4)は、PU20にVH2を供給しているよりも、通常状態に復帰するのに消費される電力を含んでもパワーゲーティングによってPU20の電源を遮断した方が電力を削減することが可能な期間である。
【0131】
例えば、電位VH2は、記憶回路31の回路MemC1でデータを保持することができる大きさの電源電位であり、電位VH3は、回路MemC1のデータが失われてしまう電位であるとする。
図2のPU20では、回路BKC1は、電源の供給が停止されている期間でもデータを保持することが可能な回路である。期間(t0-t1)で、記憶回路31のデータを回路BKC1に退避しておくことで、低電源モードにおいて、回路MemC1のデータが失われてしまう電位VH3までVDDを低下させることが可能である。これにより、PU20の待機電力をさらに削減することができる。
【0132】
PMU60は、割り込み要求等に基づいて、PU20を通常状態に復帰することができる機能を有する。PMU60は、電源回路10を制御しMVDDの大きさをVH1に昇圧し、また、PSW70を制御しPU20のVDDの供給を再開する。時間t4以降は電源オンモードである。時間t6で電源線35の電位が安定することで、時間t6以降に、PU20は通常動作が可能となる。
【0133】
図5Dには、時間t3よりも前に通常動作に復帰させる割り込み要求がある例を示す。時間t2以降は、電源オンモードである。時間t2で、PMU60は、電源回路10を制御しMVDDの大きさを電源オンモードの電位VH1に変更する。時間t3で、電源線35の電位はVH1まで上昇する。
【0134】
図5Cおよび
図5Dに示すように、休止状態において、電源線35の電位をVH1に戻すのに要する時間は、電源オフモードから電源オンモードに復帰させる方が、低電源モードから電源オンモードに復帰させるより長い。そのため、PMU60は、電源モードに応じて、プロセッサコア30を休止状態から通常状態に復帰させる動作のタイミングを調節できる機能を有している。これにより、プロセッサコア30を最短時間で休止状態から通常状態に復帰させることが可能になる。
【0135】
また、休止状態において、低電源モードから電源オフモードへの移行は、PMU60に設けられている回路61で時間を計測することで可能となる。PMU60は、PU20から信号SLPが入力されると、回路61で時間の計測を開始する。低電源モードにしてから所定の時間が経過すると、PMU60は、電源オフモードに移行する。PMU60の制御信号によりPSW70はオフとなり、VDDの供給を遮断する。このように、回路61の計測データに基づく割り込み要求により、低電源モードから電源オフモードへ移行することが可能である。以下、
図6を参照して、PMU60の電源管理動作例を説明する。
【0136】
PU20が通常動作を行っている。電源モードは電源オンモードであり、また、PMU60はアイドル状態(ステップS10)である。PMU60は信号SLPが入力されるまでアイドル状態であり、信号SLPの入力をトリガに、退避シークエンスを実行する(ステップS11)。
図6の退避シークエンスの例では、まず、PMU60は、クロック制御回路65に制御信号を出力し、クロック信号の出力を停止させる(ステップS12)。次に、データの退避を行わせるための制御信号を記憶回路31に出力する(ステップS13)。記憶回路31では、PMU60の制御信号に従い、回路MemC1で保持しているデータを回路BKC1に退避する。最後に、PMU60は、電源回路10を制御し、MVDDを低下させる。これらの動作により、電源モードは低電源モードに移行する(ステップS14)。信号SLPが入力されると、PMU60は内蔵している回路61を制御し、低電源モードの時間Taを計測する(ステップS15)。回路61を動作させるタイミングは、退避シークエンスを実行している間であれば任意であり、例えば、信号SLPが入力された時、クロック制御回路65に制御信号を出力する時、データ退避を開始する時、データ退避を終了した時、電源回路10に制御信号を出力する時などが挙げられる。
【0137】
退避シークエンスの実行後、PMU60はアイドル状態となり(ステップS16)、信号INTの入力の監視、クロック制御回路65の測定時間である時間Taを監視する。信号INTが入力されると復帰シークエンスに移行する(ステップS17)。時間Taが設定した時間TVSを超えているか否を判定している(ステップS18)。PMU60は、時間Taが時間TVSを超えていると、電源モードを電源オフモードに移行させる制御を行い(ステップS19)、超えていなければアイドル状態が維持される(ステップS16)。時間TVSは、低電源モードであるよりも電源オフモードにした方が、プロセッサコア30の待機電力を削減できるような時間にすればよい。
【0138】
ステップS19では、PMU60はPSW70にプロセッサコア30への電源供給を遮断させる制御信号を出力する。電源オフモードにした後は、再びPMU60は、アイドル状態となり(ステップS20)、信号INTの入力を監視する(ステップS21)。信号INTが入力されると、PMU60は復帰シークエンスを実行する。
【0139】
復帰シークエンスでは、まず、PMU60は電源オフモードから電源オンモードに移行させる(ステップS22)。PMU60は電源回路10を制御し、通常動作の電源電位を出力させる。かつ、PMU60はPSW70を制御し、プロセッサコア30へのVDDの供給を再開させる。次に、記憶回路31に制御信号を出力し、記憶回路31のデータを復帰させる(ステップS23)。記憶回路31は、PMU60の制御信号に従い、回路BKC1で保持されているデータを回路MemC1に書き戻す。PMU60は、クロック信号を出力させる制御信号をクロック制御回路65に出力する(ステップS24)。クロック制御回路65はPMU60の制御信号に従い、クロック信号の出力を再開する。
【0140】
ステップS17の判定処理から復帰シークエンスを実行する場合は、低電源モードから電源オンモードに復帰することとなり、ステップS21の判定処理から復帰シークエンスを実行する場合よりも、電源線35の電位を速く安定させることができる。そのため、PMU60では、ステップS17から復帰シークエンスに移行する場合は、ステップS21から復帰シークエンスに移行する場合よりも、ステップS23を実行するタイミングを早くしている。これにより、プロセッサコア30を休止状態から通常状態へ復帰させる時間を短くすることができる。
【0141】
以上述べたように、
図2に示す半導体装置の電源管理では、PU20が休止状態になると、まず、ボルテージスケーリング動作により、プロセッサコア30へ供給する電源電位を低くすることでリーク電流を削減しつつ、休止状態から通常状態へ復帰する処理の時間およびエネルギーのオーバーヘッドを抑えている。休止状態が一定期間続くと、パワーゲーティング動作を行い、プロセッサコア30のリーク電流を可能な限り抑えるようにしている。これにより、PU20の処理能力を低下させずに、PU20の休止状態での消費電力を削減することが可能になる。
【0142】
また処理装置(PU)20は、キャッシュ40、およびパワースイッチ(PSW)71を有してもよい。キャッシュ40はパワーゲーティングおよびボルテージスケーリングが可能であり、PU20の電源モードと連動してキャッシュ40の電源モードも変化する。PSW71は、キャッシュ40への電源電位MVDDの供給を制御する回路であり、PMU60により制御される。ここでは、PSW71を介してキャッシュ40に入力される電源電位をVDD_Mとしている。キャッシュ40には、プロセッサコア30と同様にPMU60からの制御信号、およびクロック制御回路65からゲーテッドクロック信号が入力される。
【0143】
<キャッシュ40>
キャッシュ40は、使用頻度の高いデータを一時的に記憶しておく機能を有する記憶装置である。
図7Aに示すキャッシュ40は、メモリアレイ41、周辺回路42、および制御回路43を有する。メモリアレイ41は、複数のメモリセル45を有する。制御回路43は、プロセッサコア30の要求に従って、キャッシュ40の動作を制御する。例えば、メモリアレイ41の書き込み動作、読み出し動作を制御する。周辺回路42は、制御回路43からの制御信号に従い、メモリアレイ41を駆動する信号を生成する機能を有する。メモリアレイ41は、データを保持するメモリセル45を有する。
【0144】
図7Bに示すように、メモリセル45は、回路MemC2および回路BKC2を有する。回路MemC2は、通常動作においてアクセス対象となるメモリセルである。例えば、SRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)のメモリセルを適用すればよい。回路BKC2は、回路MemC2のバックアップ回路として機能することができ、電源が遮断されていても、またはクロック信号が遮断されていても長期間データを保持することが可能な回路である。このようなメモリセル45を設けることで、キャッシュ40のパワーゲーティングを行うことが可能となる。電源を遮断する前に、メモリセル45において、回路MemC2のデータをBKC2に退避する。電源供給を再開した後、回路BKC2で保持されているデータを回路MemC2に書き戻すことで、PU20を電源遮断前の状態に高速に復帰させることが可能である。
【0145】
メモリセル45の回路BKC2も回路BKC1と同様に、1のトランジスタ(MW2)および1の容量素子(CB2)を有する保持回路を少なくとも有する。つまり、回路BKC2も標準的なDRAMの1T1C型メモリセルと同様な構成の保持回路を有する。トランジスタMW2はオフ電流が極めて小さいものである。トランジスタMW2には、トランジスタMW1と同様に、OSトランジスタを適用すればよい。このような構成により、回路BKC2も、電気的に浮遊状態であるノードFN2の電位の変動を抑えることができるため、回路BKC2は長期間データを保持することが可能である。回路BKC2のデータ保持時間は、トランジスタMW2のリーク電流や、容量素子CB2の静電容量等で決まる。トランジスタMW2をオフ電流が極めて小さなトランジスタとすることで、回路BKC2を、リフレッシュ動作が不要な不揮発性記憶回路として用いることが可能となる。
【0146】
PU20がキャッシュ40を有する場合には、
図6に示すステップS13では、記憶回路31およびキャッシュ40のデータの退避動作が行われる。ステップS19では、PSW70およびPSW71を制御し、プロセッサコア30およびキャッシュ40への電源供給を停止する。ステップS22では、PSW70およびPSW71を制御し、プロセッサコア30およびキャッシュ40への電源供給を再開する。ステップS23では、記憶回路31およびキャッシュ40のデータの復帰動作が行われる。
【0147】
<<プロセッサコアの構成例>>
図8にプロセッサコアの構成例を示す。
図8に示すプロセッサコア130は、制御装置131、プログラムカウンタ132、パイプラインレジスタ133、パイプラインレジスタ134、レジスタファイル135、算術論理演算装置(ALU)136、およびデータバス137を有する。プロセッサコア130とPMUやキャッシュ等の周辺回路とのデータのやり取りは、データバス137を介して行われる。
【0148】
制御装置131は、プログラムカウンタ132、パイプラインレジスタ133、パイプラインレジスタ134、レジスタファイル135、ALU136、データバス137の動作を統括的に制御することで、入力されたアプリケーションなどのプログラムに含まれる命令をデコードし、実行する機能を有する。ALU136は、四則演算、論理演算などの各種演算処理を行う機能を有する。プログラムカウンタ132は、次に実行する命令のアドレスを記憶する機能を有するレジスタである。
【0149】
パイプラインレジスタ133は、命令データを一時的に記憶する機能を有するレジスタである。レジスタファイル135は、汎用レジスタを含む複数のレジスタを有しており、メインメモリから読み出されたデータ、またはALU136の演算処理の結果得られたデータ、などを記憶することができる。パイプラインレジスタ134は、ALU136の演算処理に利用するデータ、またはALU136の演算処理により得られたデータなどを一時的に記憶する機能を有するレジスタである。
【0150】
図4Bの記憶回路31は、プロセッサコア130に含まれているレジスタに用いられている。
【0151】
<記憶回路の構成例>
図4Bに示す記憶回路31のより具体的な構成例を説明する。
図9は、記憶回路の構成の一例を示す回路図である。
図9に示す記憶回路100はフリップフロップ回路として機能する。
図9において、記憶回路100の入力信号を信号D、出力信号を信号Qと記載する。
【0152】
回路MemC1に標準的なフリップフロップ回路(FF)を適用することが可能であり、例えば、マスタースレーブ型のFFを適用することができる。そのような構成例を
図9に示す。FF110は、トランスミッションゲート(TG1、TG2、TG3、TG4、TG5)、インバータ回路(INV1、INV2、INV3、INV4)、およびNAND回路(NAND1、NAND2)を有する。信号RESETおよび信号OSRは、PMU60から出力される制御信号である。TG5には、信号OSRとその反転信号が入力される。TG1-TG4は、クロック信号CLKとその反転信号が入力される。TG1とINV1の代わりに1つのクロックドインバータ回路を設けてもよい。TG2とNAND2との代わりに、1つのクロックドNAND回路を設けてもよい。TG3とINV3との代わりに、クロックドインバータ回路を設けてもよい。TG5は、NAND1の出力ノードとノードNR1との間の導通状態を制御するスイッチとして機能する。ノードNB1は、回路BKC10の入力ノードと電気的に接続され、ノードNR1は回路BKC10の出力ノードと電気的に接続されている。
【0153】
図9に示す回路BKC10は、FF110のバックアップ回路として機能する。回路BKC10は、回路RTC10、および回路PCC10を有する。回路BKC10に入力される信号(OSG、OSC、OSR)は、PMU60から出力される制御信号である。電源電位VSSは、低電源電位であり、例えば接地電位(GND)や0Vとすればよい。FF110にも、BKC10と同様に電源電位VSS、電源電位VDDが入力されている。記憶回路100において、VDDの供給はPMU60により管理されている。
【0154】
回路RTC10は、トランジスタMW1、トランジスタMA1、トランジスタMR1、容量素子CB1、ノードFN1およびノードNK1を有する。回路RTC10はデータを保持する機能を有し、ここでは、3T型のゲインセル構造の記憶回路で構成している。トランジスタMW1は書き込みトランジスタであり、OSトランジスタである。トランジスタMR1は読み出しトランジスタであり、トランジスタMA1は、増幅トランジスタでありかつ読み出しトランジスタである。ノードFN1でデータが保持される。ノードNK1はデータの入力ノードである。ノードNR1は、回路RTC10のデータの出力ノードである。
【0155】
図9には、回路BKC10が、退避動作でFF110のスレーブ側のラッチ回路のデータを読み出し、かつ、復帰動作で保持しているデータをマスタ側のラッチ回路に書き戻す構成例を示す。退避するデータはマスタ側のラッチ回路のデータでもよい。また、スレーブ側のラッチ回路にデータを復帰してもよい。この場合、スレーブ側のラッチ回路にTG5を設ければよい。
【0156】
また、回路RTC10のトランジスタMR1およびトランジスタMA1は、n型でもp型でもよく、トランジスタMR1およびトランジスタMA1の導電型によって、信号OSRの電位および、トランジスタMA1に供給する電源電位のレベルを変更すればよい。また、FF110の論理回路を適宜設定すればよい。例えば、トランジスタMR1およびトランジスタMA1がp型トランジスタである場合は、マスタ側ラッチ回路で、NAND1とINV3とを入れ替え、スレーブ側ラッチ回路でINV2とNAND2とを入れ替えればよい。また、トランジスタMA1にVSSに変えてVDDを入力するようにすればよい。
【0157】
回路BKC10は、電圧によってデータの書き込みを行うため、電流により書き込みを行うMRAMよりも書き込み電力を抑えることができる。また、ノードFN1の負荷容量でデータを保持しているため、フラッシュメモリのようなデータの書き換え回数の制限がない。
【0158】
回路RTC10において、データの書き込みに要するエネルギーは、容量素子CB1への電荷の充放電に伴うエネルギーに相当する。一方、MRAMなどの2端子の記憶素子を用いた記憶回路では、データの書き込みに要するエネルギーは、当該記憶素子に電流が流れる際に消費されるエネルギーに相当する。よって、データの書き込み期間中に電流が流れ続けるMRAMなどを用いた場合に比べて、回路BKC10は、データの退避により消費されるエネルギーを小さくすることができる。そのため、バックアップ回路に回路BKC10を設けることで、MRAMを設ける場合と比較して、BET(損益分岐点到達時間,Break Even Time)を短くすることができる。その結果、消費されるエネルギーを低減できるパワーゲーティングを行う機会が増加し、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0159】
回路PCC10は、トランジスタMC1およびトランジスタMC2を有する。回路PCC10は、ノードFN1をプリチャージする機能を有する。回路PCC10は、設けなくてもよい。後述するように、回路PCC10を設けることで、回路BKC10のデータ退避時間を短くすることができる。
【0160】
<記憶回路の動作例>
図10は、記憶回路100の動作の一例を示すタイミングチャートであり、制御信号(信号SLP、信号RESET、クロック信号CLK、信号OSG、信号OSC、信号OSR)の波形、並びに、電源電位VDD、ノードFN1およびノードNR1の電位の変化を示す。
【0161】
[通常動作]
通常動作(Normal Operation)の期間について説明する。記憶回路100には、電源電位VDD、および信号CLKが供給されている。FF110が順序回路として機能している。信号RESETは高レベルが維持されるため、NAND1およびNAND2はインバータ回路として機能する。回路BKC1では、トランジスタMC1がオフ状態であり、トランジスタMC2およびトランジスタMW1がオン状態であるため、ノードFN1の電位は高レベルにプリチャージされている。
【0162】
[データ退避]
次に、バックアップ(Back up)の期間について説明する。まず、クロック信号CLKが停止される。これにより、ノードNB1のデータの書き換えが停止される。
図10の例では、ノードNB1の電位レベルは、ノードNR1の電位が高レベル(”1”)であれば、低レベル(”0”)であり、低レベル(”0”)であれば高レベル(”1”)である。信号OSCが高レベルの期間に、ノードNB1のデータがノードFN1に退避される。具体的には、トランジスタMC1およびトランジスタMW1がオン状態であるため、ノードFN1とノードNB1が電気的に接続されている。信号OSGを低レベルにして、トランジスタMW1がオフ状態にすることで、ノードFN1が電気的に浮遊状態となり、回路BKC10はデータの保持状態となる。ノードFN1の電位は、ノードNR1が低レベル(“0”)であれば高レベルであり、高レベル(”1”)であれば低レベルである。
【0163】
信号OSGを低レベルにすることでデータの退避が終了するので、信号OSGを低レベルにした後、直ちに、PU20のボルテージスケーリング動作を行うことができる。また、トランジスタMC2により、通常動作時にノードFN1を高レベルにプリチャージしているので、ノードFN1を高レベルにするデータ退避動作では、ノードFN1の電荷の移動が伴わない。このため、回路BKC10は、短時間で退避動作を完了させることができる。
【0164】
データ退避動作では、クロック信号CLKが非アクティブであればよく、
図10の例では、クロック信号CLKの電位を低レベルとしているが、高レベルとしてもよい。
【0165】
[ボルテージスケーリング、低電源モード]
次に、低電源(Low power)の期間について説明する。信号OSCの立下りに連動して、PMU60は、ボルテージスケーリング動作を行う。これにより記憶回路100は低電源モードに移行する。
【0166】
[パワーゲーティング、電源オフモード]
次に、電源オフ(Power off)の期間について説明する。低電源モードに移行してから一定期間経過したら、PMU60は、パワーゲーティング動作を行い、記憶回路100を電源オフモードにする。
【0167】
[電源オンモード]
次に、電源オン(Power on)の期間について説明する。割り込み要求に従い、PMU60は、記憶回路100を電源オンモードに復帰する。
図10の例では、VDDを供給する電源線の電位が安定すると、クロック信号CLKは高レベルになるようにしている。
【0168】
[データ復帰]
信号OSRが高レベルの期間にデータ復帰動作が行われる。信号RESETを高レベルとすることで、ノードNR1の電位は高レベル(”1”)にプリチャージされる。信号OSRを高レベルとすることで、TG5がハイインピーダンス状態となり、かつトランジスタMR1が導通状態となる。トランジスタMA1の導通状態はノードFN1の電位で決まる。ノードFN1が高レベルであれば、トランジスタMA1が導通状態であるため、ノードNR1の電位は低下し、低レベル(”0”)となる。ノードFN1が低レベルであれば、ノードNR1の電位は高レベルが維持される。つまり、休止状態に移行する前の状態に、FF110の状態が復帰される。
【0169】
以上述べたように、信号RESET、および信号OSRの立ち上がりにより、ノードNR1に高レベルのデータの書き戻し(Restore)ができる。そのため、記憶回路100は、復帰動作期間を短くすることができる。
【0170】
図10では、電源オフモードから電源オンモードに復帰している例を示している。低電源モードから電源オンモードに復帰する場合は、VDDを供給する電源線の電位が安定するまでの期間Tonが短くなる。この場合は、電源オフモードから復帰する場合よりも信号OSRの立ち上がりを早くするとよい。なお
図10において、バックアップの期間の開始後から、次の通常動作の期間が開始する前までの期間までをスリープ(Sleep)の期間と記載する。
【0171】
[通常動作]
次に、通常動作(Normal operation)の期間について説明する。クロック信号CLKの供給を再開することで、通常動作が可能な状態に復帰する。信号OSGを高レベルにすることで、ノードFN1は、回路PCC10によりプリチャージされ、高レベルとなる。
【0172】
<<キャッシュ>>
以下に、キャッシュ40をSRAMで構成する例を説明する。
【0173】
<メモリセルの構成例>
図11にキャッシュのメモリセルの構成の一例を示す。
図11に示すメモリセル120は、回路SMC20および回路BKC20を有する。回路SMC20は、標準的なSRAMのメモリセルと同様な回路構成とすればよい。
図11に示す回路SMC20は、インバータ回路INV11、インバータ回路INV12、トランジスタM11、およびトランジスタM12を有する。
【0174】
回路BKC20は、回路SMC20のバックアップ回路として機能する。回路BKC20は、トランジスタMW11、トランジスタMW12、容量素子CB11、容量素子CB12を有する。トランジスタMW11、MW12はOSトランジスタである。回路BKC20は2つの1T1C型の保持回路を有しており、ノードSN1とノードSN2にそれぞれデータが保持される。トランジスタMW11と容量素子CB11とでなる保持回路は、ノードNET1のデータをバックアップできる機能を有する。トランジスタMW12と容量素子CB12とでなる保持回路は、ノードNET2のデータをバックアップできる機能を有する。
【0175】
メモリセル120は電源電位VDDMC、VSSが供給されている。メモリセル120は、配線(WL、BL、BLB、BRL)と電気的に接続されている。配線WLには、信号SLCが入力される。データ書き込み時には、配線BL、配線BLBには、それぞれデータ信号D、データ信号DBが入力される。データの読み出しは、配線BLと配線BLBの電位を検出することで行われる。配線BRLには信号OSSが入力される。信号OSSはPMU60から入力される信号である。
【0176】
<メモリセルの動作例>
メモリセル120の動作の一例を説明する。
図12は、メモリセル120のタイミングチャートの一例である。
【0177】
[通常動作]
回路MemC2にアクセス要求が行われ、データの書き込み読み出しが行われる。回路BKC2では、信号OSSは低レベルであるため、ノードSN1およびノードSN2が電気的に浮遊状態となっており、データ保持状態である。
図12の例では、ノードSN1の電位は低レベル(”0”)であり、他方のノードであるノードSN2の電位は、高レベル(”1”)である。
【0178】
[データ退避]
信号OSSが高レベルにすることで、トランジスタMW11、MW12が導通状態となり、ノードSN1、SN2は、それぞれ、ノードNET1、NET2と同じ電位レベルとなる。
図12の例では、ノードSN1、SN2の電位は、それぞれ、高レベル、低レベルとなる。信号OSSが低レベルとなり、回路BKC20がデータ保持状態となり、データ退避動作が終了する。
【0179】
[ボルテージスケーリング、低電源モード]
信号OSSの立下りに連動して、PMU60は、ボルテージスケーリング動作を行う。これによりキャッシュ40は低電源モードに移行する。
【0180】
[パワーゲーティング、電源オフモード]
低電源モードに移行してから一定期間経過したら、PMU60は、パワーゲーティング動作を行い、キャッシュ40を電源オフモードにする。
【0181】
[データ復帰、電源オンモード]
割り込み要求に従い、PMU60はキャッシュ40を通常状態に復帰させる。信号OSSを高レベルにして、回路BKC20で保持されているデータを、回路SMC20に書き戻す。信号OSSが高レベルである期間中に、PMU60は、ボルテージスケーリング動作およびパワーゲーティング動作を行い、記憶回路100を電源オンモードに復帰する。
図10の例では、VDDを供給する電源線の電位が安定すると、クロック信号CLKは高レベルになるようにしている。VDDMCを供給する電源線の電位が安定したら、信号OSSを低レベルに戻し、データ復帰動作を終了させる。ノードSN1、SN2の状態は、休止状態になる直前の状態に復帰している。なお
図12において、バックアップの期間の開始後から、次の通常動作の期間が開始する前までの期間までをスリープ(Sleep)の期間と記載する。
【0182】
[通常動作]
VDDMCの供給が再開されることで、回路SMC20は通常動作が可能な通常モードに復帰する。
【0183】
以上述べたように、OSトランジスタを用いることで、電源が遮断されていても長期間データを保持することが可能なバックアップ回路を構成することができる。このバックアップ回路を備えることで、プロセッサコアおよびキャッシュのパワーゲーティングが可能となる。また、休止状態において、ボルテージスケーリングとパワーゲーティングを組み合わせた電源管理を行うことで、休止状態から通常状態へ復帰する処理に要するエネルギーおよび時間のオーバーヘッドを削減することができる。よって、処理装置の処理能力を低下させずに、電力の削減を効率よく行うことが可能となる。
【0184】
<メモリの一例>
以下に、本発明の一態様のOSトランジスタを用いたメモリについて説明する。
【0185】
本発明の一態様が有する蓄電装置は、メモリを有することが好ましい。メモリとして、OSトランジスタを用いたメモリ装置を適用することができる。例えば、以下に説明するNOSRAM(登録商標)、DOSRAM(登録商標)等を適用することができる。
【0186】
NOSRAMとは、メモリセルの書き込みトランジスタがOSトランジスタで構成されているゲインセル型DRAMのことである。NOSRAMはNonvolatile Oxide Semiconductor RAMの略称である。以下にNOSRAMの構成例を示す。
【0187】
図13AはNOSRAMの構成例を示すブロック図である。NOSRAM220には、パワードメイン212、213、パワースイッチ215乃至217が設けられている。パワードメイン212には、メモリセルアレイ230が設けられ、パワードメイン213にはNOSRAM220の周辺回路が設けられている。周辺回路は、制御回路231、行回路232、列回路233を有する。
【0188】
外部からNOSRAM220に電圧VDDD、電圧VSSS、電圧VDHW、電圧VDHR、電圧VBG2、クロック信号GCLK2、アドレス信号Address、信号CE、WE、PSE5が入力される。信号CE、信号WEはチップイネーブル信号、書き込みイネーブル信号である。信号PSE5は、パワースイッチ215乃至217のオンオフを制御する。パワースイッチ215乃至217は、パワードメイン213への電圧VDDD、電圧VDHW、電圧VDHRの入力をそれぞれ制御する。
【0189】
なお、NOSRAM220に入力される電圧、信号等は、NOSRAM220の回路構成、動作方法に応じて適宜取捨される。例えば、NOSRAM220にパワーゲーティングされないパワードメインを設け、信号PSE5を生成するパワーゲーティング制御回路を設けてもよい。
【0190】
メモリセルアレイ230は、メモリセル11、書込みワード線WWL、読出しワード線RWL、書込みビット線WBL、読出しビット線RBL、ソース線SLを有する。
【0191】
図13Bに示すように、メモリセル11は2T1C(2トランジスタ1容量)型のゲインセルであり、ノードSN1、トランジスタM1、M2、容量素子C1を有する。トランジスタM1は書き込みトランジスタであり、バックゲートを有するOSトランジスタである。トランジスタM1のバックゲートは、電圧VBG2を供給する配線BGL2に電気的に接続されている。トランジスタM2は読出しトランジスタであり、pチャネル型Siトランジスタである。容量素子C1はノードSN1の電圧を保持する保持容量である。
【0192】
電圧VDDD、電圧VSSSはデータ“1”、“0”を表す電圧である。なお、書込みワード線WWL、読み出しワード線RWLの高レベル電圧は、電圧VDHW、電圧VHDRである。
【0193】
図14Aにメモリセルアレイ230の構成例を示す。
図14Aに示すメモリセルアレイ230では、隣接する2行で1本のソース線が供給されている。
【0194】
メモリセル11は原理的に書き換え回数に制限はなく、データの書き換えを低エネルギーで行え、データの保持に電力を消費しない。トランジスタM1が極小オフ電流のOSトランジスタであるため、メモリセル11は長時間データを保持することが可能である。
【0195】
メモリセル11の回路構成は、
図13Bの回路構成に限定されない。例えば、読出しトランジスタM2を、バックゲートを有するOSトランジスタ、またはnチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、メモリセル11は3T型ゲインセルでもよい。例えば、
図14B、
図14Cに3T型ゲインセルの例を示す。
図14Bに示すメモリセル15は、トランジスタM3乃至M5、容量素子C3、ノードSN3を有する。トランジスタM3乃至M5は、書込みトランジスタ、読出しトランジスタ、選択トランジスタである。トランジスタM3はバックゲートを有するOSトランジスタであり、トランジスタM4、M5はpチャネル型Siトランジスタである。トランジスタM4、M5を、nチャネル型Siトランジスタまたはバックゲートを有するOSトランジスタで構成してもよい。
図14Cに示すメモリセル16では、3個のトランジスタはバックゲートを有するOSトランジスタで構成されている。
【0196】
ノードSN3は保持ノードである。容量素子C3はノードSN3の電圧を保持するための保持容量である。容量素子C3を意図的に設けず、トランジスタM4のゲート容量などで保持容量を構成してもよい。配線PDLはソース線SLに代わる配線であり、固定電圧、例えば、電圧VDDDが入力される。
【0197】
制御回路231は、NOSRAM220の動作全般を制御する機能を有する。例えば、制御回路231は、信号CE、信号WEを論理演算して、外部からのアクセスが書き込みアクセスであるか読み出しアクセスであるかを判断する。
【0198】
行回路232は、アドレス信号が指定する選択された行の書込みワード線WWL、読出しワード線RWLを選択する機能をもつ。列回路233は、アドレス信号が指定する列の書込みビット線WBLにデータを書き込む機能、および当該列の読出しビット線RBLからデータを読み出す機能をもつ。
【0199】
DOSRAMとは、1T1C型のメモリセルを有するRAMのことであり、Dynamic Oxide Semiconductor RAMの略称である。以下、
図15を参照して、DOSRAMについて説明する。
【0200】
図15Aに示すように、DOSRAM341のメモリセル16は、ビット線BL1(またはBLB1)、ワード線WL1、配線BGL6、PLに電気的に接続される。ビット線BLB1は、反転ビット線である。例えば、配線BGL6、PLには、電圧VBG6、VSSSが入力される。トランジスタM6、および容量素子C6を有する。トランジスタM6はバックゲートを有するOSトランジスタである。
【0201】
容量素子C6の充放電によってデータを書き換えるため、DOSRAM341には原理的には書き換え回数に制約はなく、かつ、低エネルギーで、データの書き込みおよび読み出しが可能である。また、メモリセル16の回路構成が単純であるため、大容量化が容易である。メモリセル16の書込みトランジスタがOSトランジスタであるので、DOSRAM341の保持時間はDRAMに比べて非常に長い。したがってリフレッシュの頻度を低減できる、あるいは、リフレッシュ動作を不要にすることができるため、リフレッシュ動作に要する電力を削減できる。
【0202】
図15Bに示すように、DOSRAM341において、メモリセルアレイ361は、周辺回路365上に積層することができる。これは、メモリセル16のトランジスタM6がOSトランジスタであるからである。
【0203】
メモリセルアレイ361には、複数のメモリセル16が行列状に配置され、メモリセル16の配列に応じて、ビット線BL1、BLB1、ワード線WL1、配線BGL6、PLが設けられている。周辺回路365には、制御回路、行回路、列回路が設けられる。行回路は、アクセス対象のワード線WLの選択等を行う。列回路は、BLとBLBとでなるビット線対に対して、データの書き込みおよび読出し等を行う。
【0204】
周辺回路365をパワーゲーティングするために、パワースイッチ371、373が設けられている。パワースイッチ371、373は、周辺回路365への電圧VDDD、VDHW6の入力をそれぞれ制御する。なお、電圧VDHW6はワード線WL1の高レベル電圧である。パワースイッチ371、373のオンオフは、信号PSE6で制御される。
【0205】
<演算回路の一例>
次に、ニューラルネットワークの演算に用いることが可能な半導体装置の構成例について説明する。
【0206】
図16Aに示すように、ニューラルネットワークNNは入力層ILy、出力層OLy、中間層(隠れ層)HLyによって構成することができる。入力層ILy、出力層OLy、中間層HLyはそれぞれ、1又は複数のニューロン(ユニット)を有する。なお、中間層HLyは1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の中間層HLyを有するニューラルネットワークはDNN(ディープニューラルネットワーク)と呼ぶこともでき、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習と呼ぶこともできる。
【0207】
入力層ILyの各ニューロンには入力データが入力され、中間層HLyの各ニューロンには前層又は後層のニューロンの出力信号が入力され、出力層OLyの各ニューロンには前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
【0208】
図16Bに、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロンNと、ニューロンNに信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロンNには、前層のニューロンの出力x
1と、前層のニューロンの出力x
2が入力される。そして、ニューロンNにおいて、出力x
1と重みw
1の乗算結果(x
1w
1)と出力x
2と重みw
2の乗算結果(x
2w
2)の総和x
1w
1+x
2w
2が計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x
1w
1+x
2w
2+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロンNから出力信号y=h(a)が出力される。
【0209】
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる(上記のx1w1+x2w2)。この積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよいし、ハードウェアによって行われてもよい。積和演算をハードウェアによって行う場合は、積和演算回路を用いることができる。この積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。積和演算回路にアナログ回路を用いる場合、積和演算回路の回路規模の縮小、又は、メモリへのアクセス回数の減少による処理速度の向上及び消費電力の低減を図ることができる。
【0210】
積和演算回路は、チャネル形成領域にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)によって構成してもよいし、チャネル形成領域に酸化物半導体を含むトランジスタ(以下、OSトランジスタともいう)によって構成してもよい。特に、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、積和演算回路のメモリを構成するトランジスタとして好適である。なお、SiトランジスタとOSトランジスタの両方を用いて積和演算回路を構成してもよい。以下、積和演算回路の機能を備えた半導体装置の構成例について説明する。
【0211】
図17に、ニューラルネットワークの演算を行う機能を有する半導体装置MACの構成例を示す。半導体装置MACは、ニューロン間の結合強度(重み)に対応する第1のデータと、入力データに対応する第2のデータの積和演算を行う機能を有する。なお、第1のデータ及び第2のデータはそれぞれ、アナログデータ又は多値のデジタルデータ(離散的なデータ)とすることができる。また、半導体装置MACは、積和演算によって得られたデータを活性化関数によって変換する機能を有する。
【0212】
半導体装置MACは、セルアレイCA、電流源回路CS、カレントミラー回路CM、回路WDD、回路WLD、回路CLD、オフセット回路OFST、及び活性化関数回路ACTVを有する。
【0213】
セルアレイCAは、複数のメモリセルMC及び複数のメモリセルMCrefを有する。
図17には、セルアレイCAがm行n列(m,nは1以上の整数)のメモリセルMC(MC[1,1]乃至[m,n])と、m個のメモリセルMCref(MCref[1]乃至[m])を有する構成例を示している。メモリセルMCは、第1のデータを格納する機能を有する。また、メモリセルMCrefは、積和演算に用いられる参照データを格納する機能を有する。なお、参照データはアナログデータ又は多値のデジタルデータとすることができる。
【0214】
メモリセルMC[i,j](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WD[j]、及び配線BL[j]と接続されている。また、メモリセルMCref[i]は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WDref、配線BLrefと接続されている。ここで、メモリセルMC[i,j]と配線BL[j]間を流れる電流をIMC[i,j]と表記し、メモリセルMCref[i]と配線BLref間を流れる電流をIMCref[i]と表記する。
【0215】
メモリセルMC及びメモリセルMCrefの具体的な構成例を、
図18に示す。
図18には代表例としてメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]を示しているが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefにも同様の構成を用いることができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefはそれぞれ、トランジスタTr11、Tr12、容量素子C11を有する。ここでは、トランジスタTr11及びトランジスタTr12がnチャネル型のトランジスタである場合について説明する。
【0216】
メモリセルMCにおいて、トランジスタTr11のゲートは配線WLと接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続され、ソース又はドレインの他方は配線WDと接続されている。トランジスタTr12のソース又はドレインの一方は配線BLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線VRと接続されている。容量素子C11の第2の電極は、配線RWと接続されている。配線VRは、所定の電位を供給する機能を有する配線である。ここでは一例として、配線VRから低電源電位(接地電位など)が供給される場合について説明する。
【0217】
トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、ノードNMとする。また、メモリセルMC[1,1]、[2,1]のノードNMを、それぞれノードNM[1,1]、[2,1]と表記する。
【0218】
メモリセルMCrefも、メモリセルMCと同様の構成を有する。ただし、メモリセルMCrefは配線WDの代わりに配線WDrefと接続され、配線BLの代わりに配線BLrefと接続されている。また、メモリセルMCref[1]、[2]において、トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、それぞれノードNMref[1]、[2]と表記する。
【0219】
ノードNMとノードNMrefはそれぞれ、メモリセルMCとメモリセルMCrefの保持ノードとして機能する。ノードNMには第1のデータが保持され、ノードNMrefには参照データが保持される。また、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMC[1,1]、IMC[2,1]が流れる。また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]、[2]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMCref[1]、IMCref[2]が流れる。
【0220】
トランジスタTr11は、ノードNM又はノードNMrefの電位を保持する機能を有するため、トランジスタTr11のオフ電流は小さいことが好ましい。そのため、トランジスタTr11としてオフ電流が極めて小さいOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、ノードNM又はノードNMrefの電位の変動を抑えることができ、演算精度の向上を図ることができる。また、ノードNM又はノードNMrefの電位をリフレッシュする動作の頻度を低く抑えることが可能となり、消費電力を削減することができる。
【0221】
トランジスタTr12は特に限定されず、例えばSiトランジスタ又はOSトランジスタなどを用いることができる。トランジスタTr12にOSトランジスタを用いる場合、トランジスタTr11と同じ製造装置を用いて、トランジスタTr12を作製することが可能となり、製造コストを抑制することができる。なお、トランジスタTr12はnチャネル型であってもpチャネル型であってもよい。
【0222】
電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefと接続されている。電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefに電流を供給する機能を有する。なお、配線BL[1]乃至[n]に供給される電流値と配線BLrefに供給される電流値は異なっていてもよい。ここでは、電流源回路CSから配線BL[1]乃至[n]に供給される電流をIC、電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICrefと表記する。
【0223】
カレントミラー回路CMは、配線IL[1]乃至[n]及び配線ILrefを有する。配線IL[1]乃至[n]はそれぞれ配線BL[1]乃至[n]と接続され、配線ILrefは、配線BLrefと接続されている。ここでは、配線IL[1]乃至[n]と配線BL[1]乃至[n]の接続箇所をノードNP[1]乃至[n]と表記する。また、配線ILrefと配線BLrefの接続箇所をノードNPrefと表記する。
【0224】
カレントミラー回路CMは、ノードNPrefの電位に応じた電流I
CMを配線ILrefに流す機能と、この電流I
CMを配線IL[1]乃至[n]にも流す機能を有する。
図17には、配線BLrefから配線ILrefに電流I
CMが排出され、配線BL[1]乃至[n]から配線IL[1]乃至[n]に電流I
CMが排出される例を示している。また、カレントミラー回路CMから配線BL[1]乃至[n]を介してセルアレイCAに流れる電流を、I
B[1]乃至[n]と表記する。また、カレントミラー回路CMから配線BLrefを介してセルアレイCAに流れる電流を、I
Brefと表記する。
【0225】
回路WDDは、配線WD[1]乃至[n]及び配線WDrefと接続されている。回路WDDは、メモリセルMCに格納される第1のデータに対応する電位を、配線WD[1]乃至[n]に供給する機能を有する。また、回路WDDは、メモリセルMCrefに格納される参照データに対応する電位を、配線WDrefに供給する機能を有する。回路WLDは、配線WL[1]乃至[m]と接続されている。回路WLDは、データの書き込みを行うメモリセルMC又はメモリセルMCrefを選択するための信号を、配線WL[1]乃至[m]に供給する機能を有する。回路CLDは、配線RW[1]乃至[m]と接続されている。回路CLDは、第2のデータに対応する電位を、配線RW[1]乃至[m]に供給する機能を有する。
【0226】
オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]及び配線OL[1]乃至[n]と接続されている。オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流量、及び/又は、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流の変化量を検出する機能を有する。また、オフセット回路OFSTは、検出結果を配線OL[1]乃至[n]に出力する機能を有する。なお、オフセット回路OFSTは、検出結果に対応する電流を配線OLに出力してもよいし、検出結果に対応する電流を電圧に変換して配線OLに出力してもよい。セルアレイCAとオフセット回路OFSTの間を流れる電流を、Iα[1]乃至[n]と表記する。
【0227】
オフセット回路OFSTの構成例を
図19に示す。
図19に示すオフセット回路OFSTは、回路OC[1]乃至[n]を有する。また、回路OC[1]乃至[n]はそれぞれ、トランジスタTr21、トランジスタTr22、トランジスタTr23、容量素子C21、及び抵抗素子R1を有する。各素子の接続関係は
図19に示す通りである。なお、容量素子C21の第1の電極及び抵抗素子R1の第1の端子と接続されたノードを、ノードNaとする。また、容量素子C21の第2の電極、トランジスタTr21のソース又はドレインの一方、及びトランジスタTr22のゲートと接続されたノードを、ノードNbとする。
【0228】
配線VrefLは電位Vrefを供給する機能を有し、配線VaLは電位Vaを供給する機能を有し、配線VbLは電位Vbを供給する機能を有する。また、配線VDDLは電位VDDを供給する機能を有し、配線VSSLは電位VSSを供給する機能を有する。ここでは、電位VDDが高電源電位であり、電位VSSが低電源電位である場合について説明する。また、配線RSTは、トランジスタTr21の導通状態を制御するための電位を供給する機能を有する。トランジスタTr22、トランジスタTr23、配線VDDL、配線VSSL、及び配線VbLによって、ソースフォロワ回路が構成される。
【0229】
次に、回路OC[1]乃至[n]の動作例を説明する。なお、ここでは代表例として回路OC[1]の動作例を説明するが、回路OC[2]乃至[n]も同様に動作させることができる。まず、配線BL[1]に第1の電流が流れると、ノードNaの電位は、第1の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位となる。また、このときトランジスタTr21はオン状態であり、ノードNbに電位Vaが供給される。その後、トランジスタTr21はオフ状態となる。
【0230】
次に、配線BL[1]に第2の電流が流れると、ノードNaの電位は、第2の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位に変化する。このときトランジスタTr21はオフ状態であり、ノードNbはフローティング状態となっているため、ノードNaの電位の変化に伴い、ノードNbの電位は容量結合により変化する。ここで、ノードNaの電位の変化をΔVNaとし、容量結合係数を1とすると、ノードNbの電位はVa+ΔVNaとなる。そして、トランジスタTr22のしきい値電圧をVthとすると、配線OL[1]から電位Va+ΔVNa-Vthが出力される。ここで、Va=Vthとすることにより、配線OL[1]から電位ΔVNaを出力することができる。
【0231】
電位ΔVNaは、第1の電流から第2の電流への変化量、抵抗素子R1の抵抗値、及び電位Vrefに応じて定まる。ここで、抵抗素子R1の抵抗値と電位Vrefは既知であるため、電位ΔVNaから配線BLに流れる電流の変化量を求めることができる。
【0232】
上記のようにオフセット回路OFSTによって検出された電流量、及び/又は電流の変化量に対応する信号は、配線OL[1]乃至[n]を介して活性化関数回路ACTVに入力される。
【0233】
活性化関数回路ACTVは、配線OL[1]乃至[n]、及び、配線NIL[1]乃至[n]と接続されている。活性化関数回路ACTVは、オフセット回路OFSTから入力された信号を、あらかじめ定義された活性化関数に従って変換するための演算を行う機能を有する。活性化関数としては、例えば、シグモイド関数、tanh関数、softmax関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができる。活性化関数回路ACTVによって変換された信号は、出力データとして配線NIL[1]乃至[n]に出力される。
【0234】
上記の半導体装置MACを用いて、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。以下、積和演算を行う際の半導体装置MACの動作例を説明する。
【0235】
図20に半導体装置MACの動作例のタイミングチャートを示す。
図20には、
図18における配線WL[1]、配線WL[2]、配線WD[1]、配線WDref、ノードNM[1,1]、ノードNM[2,1]、ノードNMref[1]、ノードNMref[2]、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位の推移と、電流I
B[1]-I
α[1]、及び電流I
Brefの値の推移を示している。電流I
B[1]-I
α[1]は、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]に流れる電流の総和に相当する。
【0236】
なお、ここでは代表例として
図18に示すメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目して動作を説明するが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefも同様に動作させることができる。
【0237】
まず、時刻T01-T02において、配線WL[1]の電位がハイレベル(High)となり、配線WD[1]の電位が接地電位(GND)よりもVPR-VW[1,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。また、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位が基準電位(REFP)となる。なお、電位VW[1,1]はメモリセルMC[1,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。また、電位VPRは参照データに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[2,1]の電位がVPR-VW[1,1]、ノードNMref[2]の電位がVPRとなる。
【0238】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],0は、次の式で表すことができる。ここで、kはトランジスタTr12のチャネル長、チャネル幅、移動度、及びゲート絶縁膜の容量などで決まる定数である。また、VthはトランジスタTr12のしきい値電圧である。
【0239】
IMC[1,1],0=k(VPR-VW[1,1]-Vth)2(E1)
【0240】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],0は、次の式で表すことができる。
【0241】
IMCref[1],0=k(VPR-Vth)2(E2)
【0242】
次に、時刻T02-T03において、配線WL[1]の電位がローレベル(Low)となる。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位が保持される。
【0243】
なお、前述の通り、トランジスタTr11としてOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、トランジスタTr11のリーク電流を抑えることができ、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位を正確に保持することができる。
【0244】
次に、時刻T03-T04において、配線WL[2]の電位がハイレベルとなり、配線WD[1]の電位が接地電位よりもVPR-VW[2,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。なお、電位VW[2,1]はメモリセルMC[2,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[2,1]の電位がVPR-VW[2,1]、ノードNMref[2]の電位がVPRとなる。
【0245】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],0は、次の式で表すことができる。
【0246】
IMC[2,1],0=k(VPR-VW[2,1]-Vth)2(E3)
【0247】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],0は、次の式で表すことができる。
【0248】
IMCref[2],0=k(VPR-Vth)2(E4)
【0249】
次に、時刻T04-T05において、配線WL[2]の電位がローレベルとなる。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位が保持される。
【0250】
以上の動作により、メモリセルMC[1,1]、[2,1]に第1のデータが格納され、メモリセルMCref[1]、[2]に参照データが格納される。
【0251】
ここで、時刻T04-T05において、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流を考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流が供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICref、配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,0とすると、次の式が成り立つ。
【0252】
ICref-ICM,0=IMCref[1],0+IMCref[2],0(E5)
【0253】
配線BL[1]には、電流源回路CSからの電流が供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。また、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに電流が流れる。電流源回路CSから配線BL[1]に供給される電流をIC,0、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,0とすると、次の式が成り立つ。
【0254】
IC-ICM,0=IMC[1,1],0+IMC[2,1],0+Iα,0(E6)
【0255】
次に、時刻T05-T06において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となる。このとき、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11には電位VX[1]が供給され、容量結合によりトランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。なお、電位VX[1]はメモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]に供給される第2のデータに対応する電位である。
【0256】
トランジスタTr12のゲートの電位の変化量は、配線RWの電位の変化量に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた値となる。容量結合係数は、容量素子C11の容量、トランジスタTr12のゲート容量、及び寄生容量などによって算出される。以下では便宜上、配線RWの電位の変化量とトランジスタTr12のゲートの電位の変化量が同じ、すなわち容量結合係数が1であるとして説明する。実際には、容量結合係数を考慮して電位VXを決定すればよい。
【0257】
メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]の容量素子C11に電位VX[1]が供給されると、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。
【0258】
ここで、時刻T05-T06において、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],1は、次の式で表すことができる。
【0259】
IMC[1,1],1=k(VPR-VW[1,1]+VX[1]-Vth)2(E7)
【0260】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[1,1]=IMC[1,1],1-IMC[1,1],0増加する。
【0261】
また、時刻T05-T06において、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],1は、次の式で表すことができる。
【0262】
IMCref[1],1=k(VPR+VX[1]-Vth)2(E8)
【0263】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[1]=IMCref[1],1-IMCref[1],0増加する。
【0264】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,1とすると、次の式が成り立つ。
【0265】
ICref-ICM,1=IMCref[1],1+IMCref[2],1(E9)
【0266】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流ICが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,1とすると、次の式が成り立つ。
【0267】
IC-ICM,1=IMC[1,1],1+IMC[2,1],1+Iα,1(E10)
【0268】
そして、式(E1)乃至式(E10)から、電流Iα,0と電流Iα,1の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0269】
ΔIα=Iα,1-Iα,0=2kVW[1,1]VX[1](E11)
【0270】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]とVX[1]の積に応じた値となる。
【0271】
その後、時刻T06-T07において、配線RW[1]の電位は基準電位となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0272】
次に、時刻T07-T08において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となり、配線RW[2]の電位が基準電位よりもVX[2]大きい電位となる。これにより、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[1]が供給され、容量結合によりノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。また、メモリセルMC[2,1]、及びメモリセルMCref[2]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[2]が供給され、容量結合によりノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位がそれぞれVX[2]上昇する。
【0273】
ここで、時刻T07-T08において、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],1は、次の式で表すことができる。
【0274】
IMC[2,1],1=k(VPR-VW[2,1]+VX[2]-Vth)2(E12)
【0275】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[2,1]=IMC[2,1],1-IMC[2,1],0増加する。
【0276】
また、時刻T07-T08において、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],1は、次の式で表すことができる。
【0277】
IMCref[2],1=k(VPR+VX[2]-Vth)2(E13)
【0278】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[2]=IMCref[2],1-IMCref[2],0増加する。
【0279】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,2とすると、次の式が成り立つ。
【0280】
ICref-ICM,2=IMCref[1],1+IMCref[2],1(E14)
【0281】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流ICが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,2とすると、次の式が成り立つ。
【0282】
IC-ICM,2=IMC[1,1],1+IMC[2,1],1+Iα,2(E15)
【0283】
そして、式(E1)乃至式(E8)、及び、式(E12)乃至式(E15)から、電流Iα,0と電流Iα,2の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0284】
ΔIα=Iα,2-Iα,0=2k(VW[1,1]VX[1]+VW[2,1]VX[2])(E16)
【0285】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]と電位VX[1]の積と、電位VW[2,1]と電位VX[2]の積と、を足し合わせた結果に応じた値となる。
【0286】
その後、時刻T08-T09において、配線RW[1]、[2]の電位は基準電位となり、ノードNM[1,1]、[2,1]及びノードNMref[1]、[2]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0287】
式(E11)及び式(E16)に示されるように、オフセット回路OFSTに入力される差分電流ΔIαは、第1のデータ(重み)に対応する電位VWと、第2のデータ(入力データ)に対応する電位VXの積の項を有する式から算出することができる。すなわち、差分電流ΔIαをオフセット回路OFSTで計測することにより、第1のデータと第2のデータの積和演算の結果を得ることができる。
【0288】
なお、上記では特にメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目したが、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの数は任意に設定することができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefの行数mを任意の数iとした場合の差分電流ΔIαは、次の式で表すことができる。
【0289】
ΔIα=2kΣiVW[i,1]VX[i](E17)
【0290】
また、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの列数nを増やすことにより、並列して実行される積和演算の数を増やすことができる。
【0291】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。なお、メモリセルMC及びメモリセルMCrefとして
図18に示す構成を用いることにより、少ないトランジスタ数で積和演算回路を構成することができる。そのため、半導体装置MACの回路規模の縮小を図ることができる。
【0292】
半導体装置MACをニューラルネットワークにおける演算に用いる場合、メモリセルMCの行数mは一のニューロンに供給される入力データの数に対応させ、メモリセルMCの列数nはニューロンの数に対応させることができる。例えば、
図16Aに示す中間層HLyにおいて半導体装置MACを用いた積和演算を行う場合を考える。このとき、メモリセルMCの行数mは、入力層ILyから供給される入力データの数(入力層ILyのニューロンの数)に設定し、メモリセルMCの列数nは、中間層HLのニューロンの数に設定することができる。
【0293】
なお、半導体装置MACを適用するニューラルネットワークの構造は特に限定されない。例えば半導体装置MACは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、オートエンコーダ、ボルツマンマシン(制限ボルツマンマシンを含む)などに用いることもできる。
【0294】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、ニューラルネットワークの積和演算を行うことができる。さらに、セルアレイCAに
図18に示すメモリセルMC及びメモリセルMCrefを用いることにより、演算精度の向上、消費電力の削減、又は回路規模の縮小を図ることが可能な集積回路を提供することができる。
【0295】
本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0296】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の判定システムに適用可能な撮像装置について説明する。
【0297】
図21Aには撮像装置の構成例を示す。画素回路331はマトリクス状に並べて設けられ、配線351を介して駆動回路332(Driver)と電気的に接続される。駆動回路332は、画素回路331のデータ取得動作および選択動作などの制御を行うことができる。駆動回路332には、例えば、シフトレジスタなどを用いることができる。
【0298】
また、画素回路331は、配線352を介して読み出し回路311(RC)と電気的に接続される。読み出し回路311は、ノイズを削減する相関二重サンプリング回路(CDS回路)およびアナログデータをデジタルデータに変換するA/Dコンバータを有する。
【0299】
読み出し回路311は例えばメモリと電気的に接続される。メモリは、読み出し回路311から出力されたデジタルデータを保持することができる。
【0300】
読み出し回路311が有するA/Dコンバータは、所定のビット数分の二値データを並列出力する。したがって、A/Dコンバータは、当該ビット数分のメモリセルと接続される。例えば、A/Dコンバータの出力が8ビットである場合、8個のメモリセルと接続される。
【0301】
<画素回路>
図21Bは、画素回路331の一例を説明する回路図である。画素回路331は、光電変換デバイス240と、トランジスタ103と、トランジスタ104と、トランジスタ105と、トランジスタ106と、容量素子108を有することができる。なお、容量素子108を設けない構成としてもよい。
【0302】
光電変換デバイス240の一方の電極(カソード)は、トランジスタ103のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ103のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ104のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの一方は、容量素子108の一方の電極と電気的に接続される。容量素子108の一方の電極は、トランジスタ105のゲートと電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ106のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0303】
ここで、トランジスタ103のソースまたはドレインの他方、トランジスタ104のソースまたはドレインの一方、容量素子108の一方の電極、およびトランジスタ105のゲートを接続する配線をノードFDとする。ノードFDは電荷検出部として機能させることができる。
【0304】
光電変換デバイス240の他方の電極(アノード)は、配線121と電気的に接続される。トランジスタ103のゲートは、配線127と電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの他方は、配線122と電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの他方は、配線123に電気的に接続される。トランジスタ104のゲートは、配線126と電気的に接続される。トランジスタ106のゲートは、配線128と電気的に接続される。容量素子108の他方の電極は、例えばGND配線などの基準電位線と電気的に接続される。トランジスタ106のソースまたはドレインの他方は、配線352と電気的に接続される。
【0305】
配線127、126、128は、各トランジスタの導通を制御する信号線としての機能を有することができる。配線352は出力線としての機能を有することができる。
【0306】
配線121、122、123は、電源線としての機能を有することができる。
図21Bに示す構成では光電変換デバイス240のカソード側がトランジスタ103と電気的に接続する構成であり、ノードFDを高電位にリセットして動作させる構成であるため、配線122は高電位(配線121よりも高い電位)とする。
【0307】
図21Bでは、光電変換デバイス240のカソードがノードFDと電気的に接続する構成を示したが、
図21Cに示すように光電変換デバイス240のアノード側がトランジスタ103のソースまたはドレインの一方と電気的に接続する構成としてもよい。
【0308】
当該構成では、ノードFDを低電位にリセットして動作させる構成であるため、配線122は低電位(配線121よりも低い電位)とする。
【0309】
トランジスタ103は、ノードFDの電位を制御する機能を有する。トランジスタ104は、ノードFDの電位をリセットする機能を有する。トランジスタ105はソースフォロア回路として機能し、ノードFDの電位を画像データとして配線352に出力することができる。トランジスタ106は画像データを出力する画素を選択する機能を有する。
【0310】
画素回路331が有するトランジスタ103乃至106にはOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ電流が極めて小さい特性を有する。特に、トランジスタ103、104にオフ電流の小さいトランジスタを用いることによって、ノードFDで電荷を保持できる期間を極めて長くすることができる。そのため、回路構成や動作方法を複雑にすることなく、全画素で同時に電荷の蓄積動作を行うグローバルシャッタ方式を適用することができる。
【0311】
<撮像装置の動作方式>
図22Aはローリングシャッタ方式の動作方法を模式化した図であり、
図22Bはグローバルシャッタ方式を模式化した図である。Enはn列目(nは自然数)の露光(蓄積動作)、Rnはn列目の読み出し動作を表している。
図22A、
図22Bでは、1行目からM行目(Mは自然数)までの動作を示している。
【0312】
ローリングシャッタ方式は、露光とデータの読み出しを順次行う動作方法であり、ある行の読み出し期間と他の行の露光期間を重ねる方式である。露光後すぐに読み出し動作を行うため、データの保持期間が比較的短い回路構成であっても撮像を行うことができる。しかしながら、撮像の同時性がないデータで1フレームの画像が構成されるため、動体の撮像においては画像に歪が生じてしまう。
【0313】
一方で、グローバルシャッタ方式は、全画素で同時に露光を行って各画素にデータを保持し、行毎にデータを読み出す動作方法である。したがって、動体の撮像であっても歪のない画像を得ることができる。
【0314】
画素回路にSiトランジスタなどの比較的オフ電流の大きいトランジスタを用いた場合は、電荷検出部から電荷が流出しやすいためローリングシャッタ方式が多く用いられる。Siトランジスタを用いてグローバルシャッタ方式を実現するには、別途メモリ回路にデータを格納させるなど、複雑な動作を高速で行わなければならない。一方で、画素回路にOSトランジスタを用いた場合は、電荷検出部からのデータ電位の流出がほとんどないため、容易にグローバルシャッタ方式を実現することができる。なお、本発明の一態様の撮像装置をローリングシャッタ方式で動作させることもできる。
【0315】
なお、画素回路331は、OSトランジスタおよびSiトランジスタを任意に組み合わせて構成であってもよい。または、すべてのトランジスタをSiトランジスタとしてもよい。
【0316】
<画素回路の動作>
【0317】
次に、
図21Bに示す画素回路の動作の一例を
図23Aのタイミングチャートを用いて説明する。なお、本明細書におけるタイミングチャートの説明においては、高電位を“H”、低電位を“L”で表す。配線121には常時“L”が供給され、配線122、123には常時“H”が供給されている状態とする。
【0318】
期間T1において、配線126の電位を“H”、配線127の電位を“H”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ103、104が導通し、ノードFDには配線122の電位“H”が供給される(リセット動作)。
【0319】
期間T2において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“H”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ104が非導通となってリセット電位の供給が遮断される。また、光電変換デバイス240の動作に応じてノードFDの電位が低下する(蓄積動作)。
【0320】
期間T3において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“L”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ103が非導通となり、ノードFDの電位は確定し、保持される(保持動作)。このとき、ノードFDに接続されるトランジスタ103およびトランジスタ104にオフ電流の小さいOSトランジスタを用いることによって、ノードFDからの不必要な電荷の流出を抑えることができ、データの保持時間の延ばすことができる。
【0321】
期間T4において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“L”、配線128の電位を“H”とすると、トランジスタ106が導通し、トランジスタ105のソースフォロア動作によりノードFDの電位が配線352に読み出される(読み出し動作)。
【0322】
【0323】
図21Cに示す画素回路は、
図23Bのタイミングチャートに従って動作させることができる。なお、配線121、123には常時“H”が供給され、配線122には常時“L”が供給されている状態とする。基本的な動作は、上記の
図23Aのタイミングチャートの説明と同様である。
【0324】
本発明の一態様においては、
図24A、
図24Bに例示するように、トランジスタにバックゲートを設けた構成としてもよい。
図24Aは、バックゲートがフロントゲートと電気的に接続された構成を示しており、オン電流を高める効果を有する。
図24Bは、バックゲートが定電位を供給できる配線と電気的に接続された構成を示しており、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。
【0325】
また、
図24A、
図24Bを組み合わせるなど、それぞれのトランジスタが適切な動作が行えるような構成としてもよい。また、バックゲートが設けられないトランジスタを画素回路が有していてもよい。
【0326】
<読み出し回路>
図25は、画素回路331に接続される読み出し回路311の一例を説明する図であり、CDS回路400の回路図およびCDS回路400と電気的に接続されるA/Dコンバータ410のブロック図を示している。なお、
図25に示すCDS回路よびA/Dコンバータは一例であり、他の構成であってもよい。
【0327】
CDS回路400は、電圧変換用の抵抗401、容量結合用の容量素子402、電位V0を供給するトランジスタ403、A/Dコンバータ410に供給する電位を保持するトランジスタ404および電位保持用の容量素子405を有する構成とすることができる。CDS回路400は、入力が画素回路331と電気的に接続され、出力がA/Dコンバータ410のコンパレータ回路(COMP)と電気的に接続される。
【0328】
配線352の電位がVres(画素回路331がリセット状態)のとき、ノードN(トランジスタ403、404および容量素子402の接続点)の電位をV0とする。そして、ノードNをフローティングとして、配線352の電位がVdata(画素回路331が画像データを出力)になると、ノードNの電位は、V0+Vdata-Vresとなる。したがって、CDS回路400では、画素回路331が出力する撮像データの電位からリセット状態のときの電位を差し引くことができ、ノイズ成分を削減することができる。
【0329】
A/Dコンバータ410は、コンパレータ回路(COMP)およびカウンター回路(COUNTER)を有する構成とすることができる。A/Dコンバータ410では、CDS回路400からコンパレータ回路(COMP)に入力される信号電位と、掃引される基準電位(RAMP)とが比較される。そして、コンパレータ回路(COMP)の出力に応じてカウンター回路(COUNTER)が動作し、複数の配線353にデジタル信号が出力される。
【0330】
[積層構造1]
次に、撮像装置の積層構造について、断面図を用いて説明する。
【0331】
図26Aは、層502および層503を有する積層体の断面図の一例である。
【0332】
<層502>
層502は、シリコン基板に形成された画素回路331を有する。ここでは、画素回路331の一部として、トランジスタ103、トランジスタ104、容量素子108および光電変換デバイス240を示している。
【0333】
光電変換デバイス240は、シリコン基板に形成されたpn接合型のフォトダイオードであり、p型領域243およびn型領域244を有する。光電変換デバイス240は埋め込み型フォトダイオードであり、n型領域244の表面側に設けられたp型領域241によって暗電流を抑えノイズを低減させることができる。なお、p型領域241としてp型領域243を用いてもよい。p型領域243に比べて、p型領域241は抵抗が低いことが好ましい。またp型領域243に比べて、n型領域244は抵抗が低いことが好ましい。また、p型領域243、p型領域241およびn型領域244において、p型領域とn型領域を入れ替えてもよい。
【0334】
トランジスタ103およびトランジスタ104は、シリコン基板に形成されたトランジスタである。トランジスタ103およびトランジスタ104は、ゲートとして機能する導電層と、シリコン基板に形成されるソース、ドレイン、およびソースとドレインの間に位置するチャネル形成領域と、ゲートとして機能する導電層とチャネル形成領域との間に設けられるゲート絶縁層と、を有する。なお、
図26Aに示す例においては、トランジスタ103およびトランジスタ104のソース領域およびドレイン領域がn型領域により形成されている。
【0335】
層502には、絶縁層242および絶縁層245が設けられる。絶縁層242は、素子分離層としての機能を有する。絶縁層245は、キャリアの流出を抑制する機能を有する。
【0336】
シリコン基板には画素を分離する溝が設けられ、絶縁層245はシリコン基板上面および当該溝に設けられる。絶縁層245が設けられることにより、光電変換デバイス240内で発生したキャリアが隣接する画素に流出することを抑えることができる。また、絶縁層245は、迷光の侵入を抑制する機能も有する。例えば、絶縁層245が溝を有することにより、隣接する画素からの迷光の侵入が抑制される場合がある。したがって、絶縁層245により、混色を抑制することができる。なお、シリコン基板の上面と絶縁層245との間に反射防止膜が設けられていてもよい。
【0337】
素子分離層は、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法、またはSTI(Shallow Trench Isolation)法等を用いて形成することができる。絶縁層245としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコンなどの無機絶縁膜、ポリイミド、アクリルなどの有機絶縁膜を用いることができる。なお、絶縁層245は多層構成であってもよい。
【0338】
図26Aに示す例においては、光電変換デバイス240のn型領域244(カソードに相当)は、トランジスタ103のソースまたはドレインの一方としても機能することができる。
【0339】
また、層502には、絶縁層222、223、226、227、配線121、電極129aおよび電極129bが設けられる。絶縁層222は保護膜としての機能を有する。絶縁層223、227は、層間絶縁膜および平坦化膜としての機能を有する。電極129aおよび電極129bはそれぞれ、容量素子108の電極としての機能を有する。絶縁層226は、電極129aと電極129bに挟まれ、容量素子108の誘電体層としての機能を有する。電極129aは絶縁層223内に設けられたプラグを介して、トランジスタ103のソースまたはドレインの他方と電気的に接続される。配線121は電源線としての機能を有する。p型領域243(アノード)は配線121と電気的に接続される。
【0340】
保護膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などを用いることができる。層間絶縁膜および平坦化膜としては、例えば、酸化シリコン膜などの無機絶縁膜、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの有機絶縁膜を用いることができる。容量素子の誘電体層としては、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などを用いることができる。
【0341】
図26Aに示すSiトランジスタはシリコン基板にチャネル形成領域を有するプレーナー型である。なお、Siトランジスタは、
図27Aに示すようにフィン型であってもよい。
図27Bには、
図27Aに示すA1-A2の断面(チャネル幅方向の断面)を示す。
【0342】
または、
図27Cに示すように、シリコン薄膜の半導体層545を有するトランジスタであってもよい。半導体層545は、例えば、シリコン基板210上の絶縁層546上に形成された単結晶シリコン(SOI(Silicon on Insulator))とすることができる。
【0343】
なお、デバイス間の電気的な接続に用いられる配線、電極およびプラグとして用いることのできる導電体には、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を適宜選択して用いればよい。当該導電体は単層に限らず、異なる材料で構成された複数の層であってもよい。
トロンチウム等を有してもよい。
【0344】
<層503>
層503は、層502上に形成される。層503は、遮光層251、光学変換層250およびマイクロレンズアレイ255を有する。
【0345】
遮光層251は、隣接する画素への光の流入を抑えることができる。遮光層251には、アルミニウム、タングステンなどの金属層を用いることができる。また、当該金属層と反射防止膜としての機能を有する誘電体膜を積層してもよい。
【0346】
光学変換層250には、カラーフィルタを用いることができる。カラーフィルタにR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、C(シアン)、M(マゼンタ)などの色を画素別に割り当てることにより、カラー画像を得ることができる。
【0347】
また、光学変換層250に波長カットフィルタを用いれば、様々な波長領域における画像が得られる撮像装置とすることができる。
【0348】
例えば、光学変換層250に可視光線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば、赤外線撮像装置とすることができる。また、光学変換層250に近赤外線の波長以下の光を遮るフィルタを用いれば、遠赤外線撮像装置とすることができる。また、光学変換層250に可視光線の波長以上の光を遮るフィルタを用いれば、紫外線撮像装置とすることができる。
【0349】
また、光学変換層250にシンチレータを用いれば、X線撮像装置などに用いる放射線の強弱を可視化した画像を得る撮像装置とすることができる。被写体を透過したX線等の放射線がシンチレータに入射されると、フォトルミネッセンス現象により可視光線や紫外光線などの光(蛍光)に変換される。そして、当該光を光電変換デバイス240で検知することにより画像データを取得する。また、放射線検出器などに当該構成の撮像装置を用いてもよい。
【0350】
シンチレータは、X線やガンマ線などの放射線が照射されると、そのエネルギーを吸収して可視光や紫外光を発する物質を含む。例えば、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、Gd2O2S:Eu、BaFCl:Eu、NaI、CsI、CaF2、BaF2、CeF3、LiF、LiI、ZnOなどを樹脂やセラミクスに分散させたものを用いることができる。
【0351】
光学変換層250上にはマイクロレンズアレイ255が設けられる。マイクロレンズアレイ255が有する個々のレンズを通る光が直下の光学変換層250を通り、光電変換デバイス240に照射されるようになる。マイクロレンズアレイ255を設けることにより、集光した光を光電変換デバイス240に入射することができるため、効率よく光電変換を行うことができる。マイクロレンズアレイ255は、可視光に対して透光性の高い樹脂またはガラスなどで形成することが好ましい。
【0352】
また、トランジスタ103およびトランジスタ104として、OSトランジスタを用いてもよい。
図26Bに示す積層構造は層502および層503を有し、層502は、Si基板に設けられた素子を含む層562と、OSトランジスタを含む層563を有する。
図26Bに示す層562は、Si基板上に設けられた光電変換デバイス240を有する。また
図26Bでは層562にSiトランジスタを示さないが、
図28Aに示すように層562がトランジスタ105を有してもよい。また図示しないが層562はトランジスタ106を有してもよい。あるいはトランジスタ105、トランジスタ106等をOSトランジスタとし、層563に設けてもよい。
【0353】
OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、容量素子108に蓄積された電荷を長時間、保持することができる。
【0354】
OSトランジスタは、Siトランジスタや、Si基板に設けられた光電変換デバイス240と積層して設けることができる。よって、回路の集積化を行うことができる。また、光電変換デバイス240の面積を大きくすることができる。OSトランジスタについては
図29に詳述する。
【0355】
図28Bに示す構成は、層502が層562、層563に加えて層561を有する。層561は光電変換デバイス240として、セレン系材料を光電変換層とするpn接合型フォトダイオードを用いる場合の構成例である。一方の電極として層566aと、光電変換層として層566b、566cと、他方の電極として層566dを有する。層561は、層563上に直接形成することができる。なお、層561が有する光電変換デバイス240として、有機光導電膜を用いた場合もトランジスタとの接続形態は同様となる。
【0356】
層563が有するトランジスタ102およびトランジスタ103上には絶縁層541が設けられる。層566aは絶縁層541に埋設された領域を有する。
【0357】
図28Bの層562では、Siトランジスタとしてフィン型のトランジスタを有する例を示す。
図28Bに示す例では、層562にトランジスタ105およびトランジスタ106が設けられる。
【0358】
なお、
図28Aおよび
図28Bに示すSiトランジスタとOSトランジスタの積層構造は、上述した処理装置(PU)が有するSiトランジスタとOSトランジスタの構成にも適用することができる。例えば、同一のシリコン基板上に、撮像装置の画素回路と、上述の処理装置を含む半導体装置と、を作製することができる。よって例えば、同一チップに撮像装置の画素回路および駆動回路と、本発明の一態様の判定システムが有する半導体装置を設けることができる。本発明の一態様の判定システムが有する構成を、一つのチップに設けることにより例えば、チップの面積を縮小することができる。あるいは例えば、撮像装置の画素回路および駆動回路と、処理装置(PU)等を含む半導体装置と、を同じ工程を用いて作製できるため、チップの製造に要するコストを小さくすることができる。また、本発明の一態様の判定システムが有する構成を、一つのチップに設けることにより例えば、半導体装置が有するメモリ回路や判定回路への画像の転送に要するエネルギーを小さくでき、演算効率を向上させることができる場合がある。
【0359】
図29AにOSトランジスタの詳細を示す。
図29Aに示すOSトランジスタは、酸化物半導体層および導電層の積層上に絶縁層を設け、当該半導体層に達する溝を設けることでソース電極705およびドレイン電極706を形成するセルフアライン型の構成である。
【0360】
OSトランジスタは、酸化物半導体層に形成されるチャネル形成領域、ソース領域703およびドレイン領域704のほか、ゲート電極701、ゲート絶縁膜702を有する構成とすることができる。当該溝には少なくともゲート絶縁膜702およびゲート電極701が設けられる。当該溝には、さらに酸化物半導体層707が設けられていてもよい。
【0361】
OSトランジスタは、
図29Bに示すように、ゲート電極701をマスクとして半導体層にソース領域およびドレイン領域を形成するセルフアライン型の構成としてもよい。
【0362】
または、
図29Cに示すように、ソース電極705またはドレイン電極706とゲート電極701とが重なる領域を有するノンセルフアライン型のトップゲート型トランジスタであってもよい。
【0363】
トランジスタ102、103はバックゲート535を有する構造を示しているが、バックゲートを有さない構造であってもよい。バックゲート535は、
図29Dに示すトランジスタのチャネル幅方向の断面図のように、対向して設けられるトランジスタのフロントゲートと電気的に接続してもよい。なお、
図29Dは
図21Aのトランジスタを例として示しているが、その他の構造のトランジスタも同様である。また、バックゲート535にフロントゲートとは異なる固定電位を供給することができる構成であってもよい。
【0364】
OSトランジスタが形成される領域とSiトランジスタが形成される領域との間には、水素の拡散を防止する機能を有する絶縁層543が設けられる。トランジスタ105、106のチャネル形成領域近傍に設けられる絶縁層中の水素は、シリコンのダングリングボンドを終端する。一方、トランジスタ102、103のチャネル形成領域の近傍に設けられる絶縁層中の水素は、酸化物半導体層中にキャリアを生成する要因の一つとなる。
【0365】
絶縁層543により、一方の層に水素を閉じ込めることでトランジスタ105、106の信頼性を向上させることができる。また、一方の層から他方の層への水素の拡散が抑制されることでトランジスタ102、103の信頼性も向上させることができる。
【0366】
絶縁層543としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0367】
本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0368】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用した電子機器の例について説明する。
【0369】
図30Aは監視カメラであり、支持台951、カメラユニット952、保護カバー953等を有する。カメラユニット952には回転機構などが設けられ、天井に設置することで全周囲の撮像が可能となる。本発明の一態様の判定システムが有する撮像装置として、カメラユニット952を用いることができる。また、カメラユニット952が本発明の一態様の半導体装置と電気的に接続されることにより、撮像された情報から不審者を特定することができる。なお、監視カメラとは慣用的な名称であり、用途を限定するものではない。例えば監視カメラとしての機能を有する機器はカメラ、またはビデオカメラとも呼ばれる。
【0370】
図30Bは、飛行体の一例を示している。
図30Bに示す飛行体6500は、プロペラ6501、カメラ6502、およびバッテリ6503などを有し、自律して飛行する機能を有する。
【0371】
例えば、カメラ6502で撮影した画像データは、電子部品6504に記憶される。電子部品6504は、画像データを解析し、移動する際の障害物の有無などを察知することができる。カメラ6502としては複数種類の方式の撮像装置を用いてもよい。本発明の一態様の判定システムが有する撮像装置として、カメラ6502を用いることができる。また、カメラ6502が本発明の一態様の半導体装置と電気的に接続されることにより、撮像された情報から不審者を特定することができる。
【0372】
本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0373】
:ACTV:活性化関数回路、BGL2:配線、BGL6:配線、BKC1:回路、BKC2:回路、BKC10:回路、BKC20:回路、BL:配線、BLref:配線、BL1:ビット線、BLB:配線、BLB1:ビット線、C1:容量素子、C3:容量素子、C6:容量素子、C11:容量素子、C21:容量素子、CA:セルアレイ、CB1:容量素子、CB2:容量素子、CB11:容量素子、CB12:容量素子、CLD:回路、CM:カレントミラー回路、CS:電流源回路、HLy:中間層、IL:配線、ILref:配線、ILy:入力層、INV11:インバータ回路、INV12:インバータ回路、INV2:インバータ回路、INV3:インバータ回路、INV4:インバータ回路、M1:トランジスタ、M11:トランジスタ、M12:トランジスタ、M2:トランジスタ、M3:トランジスタ、M4:トランジスタ、M5:トランジスタ、M6:トランジスタ、MA1:トランジスタ、MAC:半導体装置、MC:メモリセル、MCref:メモリセル、MC1:トランジスタ、MC2:トランジスタ、MemC1:回路、MemC2:回路、MemC20:回路、MR1:トランジスタ、MW1:トランジスタ、MW2:トランジスタ、MW11:トランジスタ、MW12:トランジスタ、OFST:オフセット回路、OLy:出力層、PCC10:回路、PDL:配線、R1:抵抗素子、RBL:ビット線、RTC10:回路、RWL:ワード線、SMC20:回路、Tr11:トランジスタ、Tr12:トランジスタ、WBL:ビット線、WD:配線、WDref:配線、WL:配線、WL1:ワード線、WLD:回路、WWL:ワード線、10:電源回路、11:メモリセル、15:メモリセル、16:メモリセル、20:PU、30:プロセッサコア、31:記憶回路、32:回路、35:電源線、40:キャッシュ、41:メモリアレイ、42:周辺回路、43:制御回路、45:メモリセル、60:PMU、61:回路、65:クロック制御回路、70:PSW、71:PSW、80:予備判定回路、81:メモリ、82:回路、88:インターフェース、89:バスライン、91:判定回路、92:検出回路、100:記憶回路、102:トランジスタ、103:トランジスタ、104:トランジスタ、105:トランジスタ、106:トランジスタ、108:容量素子、110:FF、120:メモリセル、121:配線、122:配線、123:配線、126:配線、127:配線、128:配線、129a:電極、129b:電極、130:プロセッサコア、131:制御装置、132:プログラムカウンタ、133:パイプラインレジスタ、134:パイプラインレジスタ、135:レジスタファイル、136:ALU、137:データバス、210:シリコン基板、212:パワードメイン、213:パワードメイン、215:パワースイッチ、217:パワースイッチ、220:NOSRAM、222:絶縁層、223:絶縁層、226:絶縁層、227:絶縁層、230:メモリセルアレイ、231:制御回路、232:行回路、233:列回路、240:光電変換デバイス、241:p型領域、242:絶縁層、243:p型領域、244:n型領域、245:絶縁層、250:光学変換層、251:遮光層、255:マイクロレンズアレイ、311:回路、331:画素回路、332:駆動回路、341:DOSRAM、351:配線、352:配線、353:配線、361:メモリセルアレイ、365:周辺回路、371:パワースイッチ、373:パワースイッチ、400:CDS回路、401:抵抗、402:容量素子、403:トランジスタ、404:トランジスタ、405:容量素子、410:A/Dコンバータ、502:層、503:層、535:バックゲート、541:絶縁層、543:絶縁層、545:半導体層、546:絶縁層、561:層、562:層、563:層、566a:層、566b:層、566c:層、566d:層、601:撮像装置、602:表示装置、603:端末、700:半導体装置、701:ゲート電極、702:ゲート絶縁膜、703:ソース領域、704:ドレイン領域、705:ソース電極、706:ドレイン電極、707:酸化物半導体層、951:支持台、952:カメラユニット、953:保護カバー、6500:飛行体、6501:プロペラ、6502:カメラ、6503:バッテリ、6504:電子部品